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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G04B |
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管理番号 | 1111169 |
異議申立番号 | 異議2003-73220 |
総通号数 | 63 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2003-01-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-18 |
確定日 | 2004-11-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3433749号「時計」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3433749号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3433749号「時計」の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成4年4月6日に出願した特願平4-84013号の一部を平成14年5月7日に新たな特許出願として出願され、平成15年5月30日にその特許権の設定登録がなされたものであり、その後、平成15年12月18日にシチズン時計株式会社により請求項1及び2に係る特許について特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その所定の期間内である平成16年8月24日に特許異議意見書と共に、訂正請求書が提出されたものである。 2.訂正の適否について (1)訂正の内容 ア.訂正事項a 請求項1に係る記載「不貫通で底部を有した下穴」を、「不貫通で底部を有したストレートの下穴」と訂正する。 イ.訂正事項b 明細書の段落0005中の記載「不貫通で底部を有した下穴」を、「不貫通で底部を有したストレートの下穴」と訂正する。 ウ.訂正事項c 明細書の段落0015中の記載「【発明の効果】」を削除する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aについて; 当該訂正は、請求項1に係る発明の構成要素である「不貫通で底部を有した下穴」について、「不貫通で底部を有したストレートの下穴」と、さらに限定を加えるものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、これは、特許明細書の段落0008及び0009の記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 訂正事項bについて; 訂正事項bは、訂正事項aとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 訂正事項cについて; 明細書の段落0014において、「【発明の効果】」という見出しを既に記載しており、段落0014ないし段落0020において本件発明の効果を記載していることは明らかであるから、段落0015に記載された「【発明の効果】」は誤記であることは明らかである。したがって、訂正事項cの段落0015中の「【発明の効果】」という記載を削除することは誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 (3)むすび したがって、上記各訂正事項による訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)本件発明 上述のとおり、本件訂正請求は認められるので、本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりの次のものである(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)。 【請求項1】 外周に段部と、不貫通で底部を有したストレートの下穴とが設けられた時計用ネジ受けが、時計用地板にアセンブルされ、他の部品が前記時計用地板に積層された状態でセルフタッピンネジが前記下穴にねじこまれて、前記他の部品が前記セルフタッピンネジにより前記時計用地板に締結されており、その際前記下穴における底部側には前記セルフタッピンネジが螺合されない部分が構成され、かつ、前記下穴の底部から前記時計用ネジ受けの開口部までの距離は、前記時計用地板の上面から前記開口部までの距離よりも短く構成されていることを特徴とする時計。 【請求項2】 請求項1において、前記外周には回転止め用ローレット部が設けられていることを特徴とする時計。 (2)引用刊行物に記載された発明 当審が平成16年6月15日付けで通知した取消しの理由において引用した刊行物1である特開昭60-66178号公報(申立人が提出した甲第1号証)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a.「本発明は、・・・・・小型電池時計に適した回路ブロックとコイルブロックの導通構造に関する」(公報第1頁左下欄第14〜17行) b.「第4図の実施例において、地板1に植立されたピン2にステータ3,磁心4は案内され、回路基板側に銅箔6aを圧着したコイルリード基板6は磁心4に接着されており、鋼箔6aにはコイル9の巻線の端末処理を施こしてある。導通部材である導通ピン12を、絶縁部材であるプラスチック等で覆ったスペーサー11は、回路基板7とコイルリード基板6の間に、地板1に植立されたピン2に案内される。この回路基板はポリイミド或いはガラス繊維入エポキシ基板の磁心側に銅箔7aを圧着したものである。周知のMOS?IC、水晶ユニットを実装した回路基板7とその上部に位置する回路基板押え8は、地板1に植立されたピン2に案内される。回路基板7とコイルリード基板6は、ねじ10によって導通ピン2に圧接し導通する。スペーサー11は他の部品に接着されずに投げ込み方式で組み入れる。ねじ10による締め付け力は、回路基板押え8、回路基板7を通して導通ピン12コイルリード基板6へと加わる。」(公報第2頁左下欄第9行〜同右下欄第7行) c.「次に本考案を有効に活用したムーブメント全体の実施例を示す。第9図はムーブメント断面図で左上が回路部、左下が切換部右上が電池、右下が輪列部となっている。第10図は輪列とその周辺部の平面図・・・・・101は時計体の基枠である地板」(公報第3頁右上欄第7〜14行) そして、第4図には、ピン2に設けられてねじ10が螺合される穴は不貫通であって、その底部側には、前記ねじ10が螺合されない部分が描かれており、穴の底部からピン2の開口部までの距離は、地板1の上面から前記開口部までの距離よりも短く描かれており、ピン2の一端側には外周に段部が形成されていることがみてとれる。 したがって、上記刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「外周に段部と、不貫通で底部を有した穴とが設けられたピン2が、地板1に植立され、ステータ3・磁心4・コイルリード基板6・スペーサー11・回路基板7・回路基板押さえ8等が前記地板1に積層された状態でねじ10が前記穴にねじこまれて、前記ステータ3・磁心4・コイルリード基板6・スペーサー11・回路基板7・回路基板押さえ8等が前記ねじ10により前記地板1に締め付けられており、その際前記穴における底部側には前記ねじ10が螺合されない部分が構成され、かつ、前記穴の底部から前記ピン2の開口部までの距離は、前記地板1の上面から前記開口部までの距離よりも短く構成されている小型電池時計。」 また、同刊行物4である実願昭56-170956号(実開昭58-76173号)のマイクロフィルム(申立人が提出した甲第6号証)には、第3ないし5図と共に次の事項が記載されている。 d.「つば部16は、第3図に示すように、その周面に平面的な部分16aをもたせた形状にすることもできる。柱10には、その長さ方向にねじ穴19が設けられ、該ねじ穴にネジ20が螺着され、表部材14が地板12に固定される。このネジ20の螺着に際して、柱10は回動することなく係合部16において他方の固定部材に固定された状態にある。第3図に示した柱10のつば状の係合部16に代えて、第4、5図に示すように、つば状の係合部16’の全周にセレーションを切欠いて形成することもできる。」(明細書第4頁第1〜12行) 4.対比・判断 〈本件発明1について〉 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「段部」、「穴」、「ピン2」、「地板1」、「植立され」、「ステータ3・磁心4・コイルリード基板6・スペーサー11・回路基板7・回路基板押さえ8等」、「締め付けられ」、「ピン2の開口部」及び「小型電池時計」は、それぞれ本件発明1における「段部」、「下穴」、「時計用ネジ受け」、「時計用地板」、「アセンブルされ」、「他の部品」、「締結され」、「時計用ネジ受けの開口部」及び「時計」に相当する。また、本件発明1における「セルフタッピンネジ」と引用発明における「ねじ10」は、所謂「雄ネジ」といえるものである。 よって、両者は、次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 外周に段部と、不貫通で底部を有した下穴とが設けられた時計用ネジ受けが、時計用地板にアセンブルされ、他の部品が前記時計用地板に積層された状態で雄ネジが前記下穴にねじこまれて、前記他の部品が前記雄ネジにより前記時計用地板に締結されており、その際前記下穴における底部側には前記雄ネジが螺合されない部分が構成され、かつ、前記下穴の底部から前記時計用ネジ受けの開口部までの距離は、前記時計用地板の上面から前記開口部までの距離よりも短く構成されている時計。 【相違点】 (イ)本件発明1においては、雄ネジがセルフタッピンネジであり、下穴はストレートでネジ部を有していないのに対し、引用発明においては、雄ネジはセルフタッピンネジでなく、穴(下穴)はストレートかどうか明確でなく、かつネジ部を有している点。 そこで、上記相違点(イ)について検討する。 時計の組立構造において時計の部品をセルフタッピンネジによって締結して取り付けることは慣用手段(例えば、実願昭56-77988号(実開昭57-190489号)のマイクロフィルム、実公昭47-16165号公報(申立人が提出した甲第4号証)、実願昭49-113658号(実開昭51-40367号)のマイクロフィルム(申立人が提出した甲第3号証)等参照)であり、また、セルフタッピンネジがねじ込まれる下穴をストレートとすることも慣用手段(例えば、特開昭50-35563号公報、特開平2-142910号公報等参照;いずれの公報も従来例の記載箇所参照)であるから、引用発明における雄ネジと下穴による締結手段に代えて上記慣用手段を適用して本件発明1の構成とする点に格別の困難性は認められない。 なお、特許権者は、平成16年8月24日付けの特許異議意見書において、「本件出願発明の特徴は、『ストレートの下穴とが設けられた時計用ネジ受け』という構成(以下、構成Aという)、および『前記下穴における底部側には前記セルフタッピンネジが螺合されない部分が構成され、かつ、前記下穴の底部から前記時計用ネジ受けにおける前記下穴の開口側上端までの距離は、前記時計用地板の上面から前記上端部までの距離よりも短く構成されている』という構成(以下、構成Bという)を併用することにより、『セルフタッピンネジによる時計用部品の締結作業を行うにあたり、ネジゆるみが発生しにくく、かつ、充分な強度を兼ね備えた時計用ネジ受けを提供することにより、時計用地板の変形等の影響をなくして、時計の信頼性を向上させることができる』という特有の作用効果を奏するものである。」と主張している。しかしながら、引用発明に上記慣用手段を適用することに困難性はなく、しかも上述したように引用発明に慣用手段を適用して構成したものにおいても、前記構成A及びBを有していることは明らかであって、特許権者が主張する作用効果を奏するものと認められる。したがって、特許権者の主張は採用することはできない。 〈本件発明2について〉 本件発明2は本件発明1の構成に加えて、「外周には回転止め用ローレット部が設けられている」点の構成を備えたものであるから、本件発明2と引用発明を対比すると、上記相違点(イ)と次の相違点(ロ)を有する。 【相違点】 (ロ)本件発明2では時計用ネジ受けの外周に回転止め用ローレット部が設けられているのに対し、引用発明では、ピン2の外周に当該ローレットが設けられていない点。 相違点(イ)についての判断は上記〈発明1について〉で検討したとおりであるので、次に相違点(ロ)について検討すると、地板にアセンブルされたつば部を有する時計用ネジ受け(柱10が相当)の一端に設けられたねじ穴にネジ(ネジ20が相当)をねじこんで時計の部品を固定するに際し、時計用ネジ受けが回転しないように前記つば部の外周にローレット(セレーションが相当)を設けることは上記刊行物4に記載されており、該技術手段を引用発明のピン2のつば部の外周に適用することに格別の困難性は認められない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、上記刊行物1及び4に記載された発明並びに慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 時計 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 外周に段部と、不貫通で底部を有したストレートの下穴とが設けられた時計用ネジ受けが、時計用地板にアセンブルされ、他の部品が前記時計用地板に積層された状態でセルフタッピンネジが前記下穴にねじこまれて、前記他の部品が前記セルフタッピンネジにより前記時計用地板に締結されており、その際前記下穴における底部側には前記セルフタッピンネジが螺合されない部分が構成され、かつ、前記下穴の底部から前記時計用ネジ受けの開口部までの距離は、前記時計用地板の上面から前記開口部までの距離よりも短く構成されていることを特徴とする時計。 【請求項2】 請求項1において、前記外周には回転止め用ローレット部が設けられていることを特徴とする時計。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、セルフタッピングネジによりメネジ成形を行う時計用ネジ受けを使用した時計に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来の時計用ネジ受けは、製造工程でメネジ成形を行っていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上記従来技術では、時計用ネジ受けの製造工程で下穴加工した後タップを使用しメネジ成形を行っているため、時計用ネジ受けを製造するのに時間がかかり、コストが高くなってしまう。 【0004】 本発明は、ネジにいわゆるセルフタッピングネジを使用することにより、時計用ネジ受けのメネジ成形を製造工程から、組立工程時に移すことにより、時計用ネジ受けを安価に製造することを特徴とする、時計用ネジ受けを提供する。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明の時計は、外周に段部と、不貫通で底部を有したストレートの下穴とが設けられた時計用ネジ受けが、時計用地板にアセンブルされ、他の部品が前記時計用地板に積層された状態でセルフタッピンネジが前記下穴にねじこまれて、前記他の部品が前記セルフタッピンネジにより前記時計用地板に締結されており、その際前記下穴における底部側には前記セルフタッピンネジが螺合されない部分が構成され、かつ、前記下穴の底部から前記時計用ネジ受けの開口部までの距離は、前記時計用地板の上面から前記開口部までの距離よりも短く構成されていることを特徴とする。また、本発明の時計は、前記外周には回転止め用ローレット部が設けられていることを特徴とする。 【0006】 また、本発明の時計は、前記外周部には回転止め用ローレット部が設けられていることを特徴とする。 【0007】 【実施例】 以下、本発明の実施例を図1、図2により説明する。 【0008】 時計用ネジ受けにはメネジが設けられておらず、案内付きストレートの下穴が設けられている。時計用ネジ受けは、自動旋盤により製造された後、時計用の地板にアセンブルされる。アセンブル時には、時計用ネジ受けがネジ締め時に回転しないように、時計用ネジ受けに設けられている回転止め用ローレット部13により、地板に固定される。地板はプラスチック製であり、時計用ネジ受けに設けられたローレット部が食い込むようになっている。 【0009】 時計用ネジ受け11にはメネジが設けられておらず、案内付きストレートの下穴が設けられている。時計用ネジ受け11は、自動旋盤により製造された後、時計用の地板12にアセンブルされる。アセンブル時には、時計用ネジ受け11がネジ締め時に回転しないように、時計用ネジ受け11に設けられている回転止め用ローレット部11aにより、地板12に固定される。地板12はプラスチック製であり、時計用ネジ受け11に設けられたローレット部13が食い込むようになっている。 【0010】 図2は、前記のように本発明による時計用ネジ受け11が地板12にアセンブルされた後、他の部品22,23,24が組み込まれ、セルフタッピングネジ21により締め付けられ、セルフタッピングネジ21と地板12との間で固定されている図である。 【0011】 地板12にアセンブルされた時計用ネジ受け11に、他の部品22,23,24が部品に設けられている穴で位置出しされ、適切な位置に組み込まれる。他の部品22,23,24が組み込まれた後、ドライバー25によりセルフタッピングネジ21が締められる。この時、時計用ネジ受け21に設けられたストレートの下穴にセルフタッピングネジ21によりメネジ部21aが成形され、ネジ締めされる。セルフタッピングネジ21と、時計用ネジ受け11の間でネジ締めされたことにより、セルフタッピングネジ21と地板12との間に他の部品が固定される。図3は、従来の時計用ネジ受け31と時計用の地板32がアセンブルされている図である。 【0012】 時計用ネジ受けには、製造工程でメネジ加工がされており、メネジ部31aが設けられている。メネジ加工は自動旋盤により下穴加工され、その後タップを使用してメネジ部が設けられる。時計用ネジ受けは、自動旋盤により製造された後、時計用の地板にアセンブルされる。アセンブル時には、時計用ネジ受けがネジ締め時に回転しないように、時計用ネジ受けに設けられている回転止め用ローレット部31bにより、地板に固定される。地板はプラスチック製であり、時計用ネジ受けに設けられたローレット部が食い込むようになっている。 【0013】 図4は、前記のように従来の時計用ネジ受けが地板にアセンブルされた後、他の部品42,43,44が組み込まれ、オネジ41によりオネジと地板の間で固定されている図である。 【0014】 【発明の効果】 本発明によれば、以下の効果を有する。 (第1の効果) 1)前記下穴における底部側には前記セルフタッピンネジが螺合されない部分が構成されているので、前記螺合されない部分にメネジ部が形成されている場合に比べて、時計用ネジ受けの中空部の肉厚が厚くなるので、前記中空部の機械的強度を向上することができる。2)また、前記下穴の底部から前記時計用ネジ受けの開口部までの距離Aは、前記時計用地板の上面から前記開口部までの距離Bよりも短く構成されている。そのため、前記距離Aが前記距離Bよりも長く構成されている場合に比べて、前記中空部が形成されていない底部によって、時計用ネジ受けの半径方向における梁の役割をなしているので、前記中空部の機械的な強度を向上させることができる。ゆえに、本発明によれば、上記1)及び2)によって前記中空部の機械的な強度が向上するので、前記下穴にセルフタッピンネジがねじこまれるとき、時計用ネジ受けに圧縮力が作用して時計用ネジ受け自体が座屈変形したり、前記下穴が半径方向に拡径されたりすることが抑止される。加えて、本発明によれば、上記1)及び2)により、前記中空部の機械的な強度が向上するので、たとえば時計用ネジ受けを時計用地板に圧入してアセンブルした場合、時計用地板側から前記下穴の半径方向に圧縮力が作用して、前記下穴が変形することを抑止できる。その結果、適切な締結状態(締め付けトルク、ネジゆるめトルク、固定力等)を確保することが可能となり、時計に要求される固定機能の信頼性を向上させることが可能となる。 (第2の効果) さらに、本発明によれば、前記距離Aは、前記距離Bよりも短く構成されているので、時計用地板や他の部品が、前述の座屈変形や下穴の拡径の影響を受けて変形することを防止できる。その結果、時計用地板や他の部品の変形が、より一層抑止されることになるので、時計に要求される固定機能の信頼性をより一層向上させることが可能となる。 【0015】 本発明によれば、前記他の部品が前記セルフタッピングネジにより前記時計用地板に締結された際に、前記セルフタッピングネジの先端と前記下穴の底部との間に空隙部が設けられているので、タッピング時に発生する削り屑を貯留できるスペースを確保しながら前記削り屑を密閉することができる。ゆえに、削り屑が例えば時計輪列や回路接点部など時計体内部に侵入することを防ぐことができ、指針止まり、時刻指示ずれ、電気的導通不良などの致命的な欠陥をなくすことが可能となる。また、前記削り屑を貯留できるスペースを確保しているので、削り屑がセルフタッピングネジの先端と前記下穴の底部との間にはさまって、セルフタッピングネジが途中でねじこめなくなるという事態を回避でき、セルフタッピングネジの頭部と前記他の部品との間に隙間を生じることなく確実に締結作業を行うことができる。 【0016】 また、時計用ネジ受けは不貫通で底部を有した下穴が設けられているので、下穴が貫通された時計用ネジ受けに比べて、セルフタッピングネジがねじこまれるとき、時計用ネジ受けの下穴が半径方向に拡径されることを抑止できる。すなわち、前記底部によって時計用ネジ受けの中空部が支持され梁の役割をなしているので、下穴が貫通された時計用ネジ受けに比べて、前記中空部の機械的強度を向上させることができる。ゆえに、前述のような下穴が半径方向に拡径されることが抑止され、下穴の円筒度が精度良い状態で維持される。 【0017】 また、時計用ネジ受けは不貫通で底部を有した下穴が設けられているので、下穴が貫通された時計用ネジ受けに比べて、セルフタッピングネジがねじこまれるとき、前記下穴の軸線方向に生じる圧縮力によって、時計用ネジ受け自体が座屈変形されることを抑止できる。すなわち、下穴に設けられた底部の長さ分だけ下穴の軸線方向の丈が短くなって、下穴が貫通された時計用ネジ受けに比べて、時計用ネジ受けの中空部の丈を短くできるので、前記圧縮力による座屈変形が抑止される。 【0018】 よって、前述の座屈変形や下穴の拡径が抑止されるので、適切な締結状態(締付けトルク、ネジゆるめトルク、固定力等)を確保することが可能となり、時計に要求される機能の信頼性を向上させることができる。 【0019】 さらに、前記底部の位置は、前記時計用地板より上側の位置になっているので、時計用地板が前述の座屈変形や下穴の拡径の影響を直接蒙ることを防止できる。よって、時計用地板や他の部品の変形が抑止されるので、時計に要求される機能の信頼性をより一層向上させることができる。 【0020】 したがって、本発明によれば、時計用部品のネジ締結における組立性向上及び信頼性向上をもたらすことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による時計用ネジ受け、地板のアセンブルされた断面図。 【図2】本発明による時計用ネジ受けを利用した時計の一部組立断面図。 【図3】従来の時計用ネジ受け、地板のアセンブルされた断面図。 【図4】従来の時計用ネジ受けを利用した時計の一部組立断面図。 【符号の説明】 11…時計用ネジ受け、12…時計用の地板、21…セルフタッピングネジ、21a…メネジ部、22,23,24…他の部品、11a…回転止め用ローレット部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-09-28 |
出願番号 | 特願2002-131993(P2002-131993) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(G04B)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 櫻井 仁、佐々木 正章 |
特許庁審判長 |
江藤 保子 |
特許庁審判官 |
杉野 裕幸 三輪 学 |
登録日 | 2003-05-30 |
登録番号 | 特許第3433749号(P3433749) |
権利者 | セイコーエプソン株式会社 |
発明の名称 | 時計 |
代理人 | 須澤 修 |
代理人 | 上柳 雅誉 |
代理人 | 上柳 雅誉 |
代理人 | 須澤 修 |
代理人 | 藤綱 英吉 |
代理人 | 渡辺 喜平 |
代理人 | 藤綱 英吉 |