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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41F
管理番号 1111171
異議申立番号 異議2003-72402  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-10-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-25 
確定日 2004-11-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3392420号「多色印刷機」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3392420号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願からの主だった経緯を箇条書きにすると次のとおりである。
・平成7年3月15日 本件国際出願(米国出願に基づく優先権主張平成6年3月15日)
・平成15年1月24日 特許第3392420号として設定登録(請求項1〜6)
・平成15年11月28日付け 当審にて請求項1〜6に係る特許に対して取消理由を通知
・平成16年6月9日 訂正請求書提出(以下「本件訂正請求」という。)

第2 訂正の許否の判断
1.訂正事項
[訂正事項1] 訂正前請求項1記載の「複数の印刷胴は、直径が等しく」、「圧胴のセグメント部分と同じ長さで等しい数の周方向の印刷セグメント部分を有し」、「印刷胴と整合するように配置され」、「回転中に連続的に印刷接触状態にて」(2箇所)、「前記圧胴の回転数が前記印刷胴のセグメント部分の数と同じであり」及び「圧胴の単一の把持部で各シートに印刷される」との各記載を「複数の印刷胴は、それぞれの印刷胴の直径が等しく」、「圧胴のセグメント部分と同じ長さでかつ複数の印刷胴の間で等しい数の周方向の印刷セグメント部分を有し」、「回転中に連続的に印刷状態にて」(2箇所)、「圧胴と整合するように配置され」、「前記圧胴は前記印刷胴のセグメント部分の数と同じ数だけ回転し」及び「圧胴の1回の把持で各シートに印刷される」とそれぞれ訂正する。
[訂正事項2] 訂正前請求項2,4を削除する。
[訂正事項3] 訂正前請求項3を請求項2と改めた上で、「請求項1又は2に記載の」とあるのを「請求項1に記載の」と訂正する。
[訂正事項4] 訂正前請求項5を請求項3と改め、独立形式の請求項に改めた上で、「単一のシートに多数のデザインを印刷する方法であって、
複数の版胴と印刷胴との組合せが、セグメント状にされた単一の圧胴の周囲に配置され、前記版胴と印刷胴は、それらの直径とそれらのセグメントの数とが等しく、
等しい直径の回転する各印刷胴上の等しい長さの対応する数の印刷セグメントに、各版胴の多数のセグメントからの複数のカラーデザインを繰り返し塗布することと、
前記各印刷セグメントからのカラーデザインを、圧胴のセグメントに相次いで保持されたシートの上に写すこととを備え、
前記圧胴のセグメントの数は、前記各印刷胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく、
前記圧胴の表面に前記シートを運んで、前記圧胴を一つの印刷胴のセグメントの数に等しい数だけ回転させることと、を備え、
それにより、圧胴により相次いで運ばれるシートが前記各印刷胴から連続的にカラーデザインで印刷されるようにした、方法。」と訂正する。
[訂正事項5] 訂正前請求項6を請求項4と改めた上で、「請求項3に記載の方法において、前記圧胴のセグメントの数は3であり、シートを、前記圧胴のセグメントに一つ置きに供給し、かつ前記圧胴のセグメントから搬出する段階を備えている方法。」と訂正する。

2.訂正目的の適否、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1のうち、「印刷胴と整合するように配置され」を「圧胴と整合するように配置され」と訂正することは誤記の訂正であり、残余の事項は明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認める。
訂正事項2及び訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
訂正事項4については、訂正後請求項3を訂正前請求項4,5と比較すると、訂正前の「連続的なシート」及び「連続したシート」との文言では、いわゆる長尺の連続紙とも解されることから、これを避けるために「圧胴のセグメントに相次いで保持されたシート」及び「圧胴により相次いで運ばれるシート」などと訂正することを含むから、訂正事項4の残余の事項も含めて明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認める。
訂正事項5については、「前記圧胴のセグメントの数は3であり、」との文言を追加することによって、特許請求の範囲を減縮するとともに、訂正前の「交互に」との表現が明りょうでないため、これを明りょうにすることを目的とするものと認める。
訂正事項1〜5が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であり、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは明らかである。

3.訂正の許否の判断の結論
以上のとおり、本件訂正請求は、平成15年改正前特許法120条の4第2項、並びに同第3項で準用する同法126条2項及び3項が読み替えられて準用される平成6年改正前特許法126条1項但し書き及び2項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

第3 特許異議申立についての判断
1.本件発明の認定
訂正が認められるから、本件の特許請求の範囲1〜4に係る発明(以下、特許請求の範囲1〜4を請求項1〜請求項4といい、請求項番号に対応して「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付した訂正明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲1〜4に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】 印刷機にして、
複数の周方向のセグメント部分を有していて、前記セグメント部分の各々には、印刷する一枚のシートを把持する手段が設けられた、回転可能な圧胴と、
前記圧胴の周囲に装着されかつ配置されていて、前記圧胴に印刷可能に接触したり離れたりする、複数の回転可能な印刷胴とを備え、
前記複数の印刷胴は、それぞれの印刷胴の直径が等しく、圧胴のセグメント部分と同じ長さでかつ複数の印刷胴の間で等しい数の周方向の印刷セグメント部分を有し、前記印刷胴の回転中に連続的に印刷状態にて前記圧胴と整合するように配置され、
前記圧胴のセグメント部分の数が、各印刷胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく、かつ前記把持手段が、前記圧胴の各セグメント部分の上に印刷するべきシートを保持し、前記圧胴は前記印刷胴のセグメント部分の数と同じ数だけ回転し、
前記印刷機は、前記印刷胴のそれぞれと接触したり離れたりするように装着されかつ配置された、複数の分割された回転可能な版胴を備え、
前記版胴は関連する印刷胴と等しい直径であり、かつ回転中に連続的に印刷状態にて印刷胴と整合するように配置された同じ数のセグメント部分を有し、
異なったカラー印刷媒体物を前記版胴のセグメント部分に塗布する手段と、
回転中に前記圧胴の連続するセグメント部分に印刷されるべきシートを供給するシート供給手段と、
回転中に前記把持手段と関連して、印刷されたシートを前記圧胴の連続したセグメント部分から取り除き、続いて、前記印刷胴の全てのセグメント部分を印刷するようにする搬送手段と、
それにより、多種類の色彩が前記圧胴の1回の把持で各シートに印刷される、印刷機。」
【請求項2】 請求項1に記載の印刷機において、前記各版胴が単一のプレートと把持手段とを備え、前記単一のプレートが色彩間の適切な印刷を確実にするように、複数の分離したセグメントを備えている印刷機。
【請求項3】 単一のシートに多数のデザインを印刷する方法であって、
複数の版胴と印刷胴との組合せが、セグメント状にされた単一の圧胴の周囲に配置され、前記版胴と印刷胴は、それらの直径とそれらのセグメントの数とが等しく、
等しい直径の回転する各印刷胴上の等しい長さの対応する数の印刷セグメントに、各版胴の多数のセグメントからの複数のカラーデザインを繰り返し塗布することと、
前記各印刷セグメントからのカラーデザインを、圧胴のセグメントに相次いで保持されたシートの上に写すこととを備え、
前記圧胴のセグメントの数は、前記各印刷胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく、
前記圧胴の表面に前記シートを運んで、前記圧胴を一つの印刷胴のセグメントの数に等しい数だけ回転させることと、を備え、
それにより、圧胴により相次いで運ばれるシートが前記各印刷胴から連続的にカラーデザインで印刷されるようにした、方法。
【請求項4】 請求項3に記載の方法において、前記圧胴のセグメントの数は3であり、シートを、前記圧胴のセグメントに一つ置きに供給し、かつ前記圧胴のセグメントから搬出する段階を備えている方法。」

2.引用刊行物記載の発明
取消理由に引用した中村信夫著「印刷機械」123頁(昭和54年2月7日、印刷学会出版部より改訂第7刷発行。異議申立人が提出した甲第2号証。以下「引用例1」という。)には、
「特殊の機構として,圧胴が版胴の1.5倍になっている4色刷りの機械がある。・・・第162図において,右側が圧胴,左側の上下の2個は版胴である。その直径は圧胴の2/3で,その円周上にはそれぞれ2組の版が取り付けてある。すなわち,下の版胴にはAとC,上の版胴にはBとDがつけてある。そこで,圧胴の押圧面1にくわえられた紙は,圧胴の最初の1/3回転でAの色が刷られ,次の1/3回転目でBの色が刷られる。さらに次の1/3回転目は印刷が行われずに回転を続けて1回目の回転を終わる。第2回転目の最初の1/3回転目では下の版胴は1.5回転しているので,今度はCの色が刷られ,続いて次の1/3回転でDの色が刷られて排紙が行なわれる。結局,圧胴の2回転で1枚の紙がつめにくわえられたまま,共通の圧胴面で加圧されながらA〜Dの4色の印刷が完了する。これを繰り返すと,Dの版を刷られるつど4色刷りができ上がって排紙される。なお,給紙は圧胴の2/3回転ごとに行なわれる。
A〜Dのインキ装置には着脱装置があって,それぞれに対応する版面がきたときにのみ接近してインキ着けを行なう。」との記載がある。

上記記載と第162図図示によれば、引用例1に記載の印刷機は次のようなものと認定できる。
「2組の版を取り付けた版胴2個と、各版胴の1.5倍の直径を有し3分割する位置に紙をくわえるつめを有する1つの圧胴を備え、
4個の版にはそれぞれ異なる色のインク装置が設けられており、
圧胴の2/3回転ごとに紙を給紙する機構を備え、
圧胴が2回転することによって、圧胴にくわえられた紙が2度各版胴に加圧され4色刷りが完了する印刷機。」(以下「引用発明1」という。)

また、上記印刷機を用いた印刷方法は次のようなものと認定できる。
「2組の版を取り付けた版胴2個と、各版胴の1.5倍の直径を有し3分割する位置に紙をくわえるつめを有する1つの圧胴を備えた印刷機を用いた印刷方法であって、
圧胴の2/3回転ごとに紙を給紙し、
圧胴にくわえられた紙は圧胴の2回転によって2度各版胴に加圧され4色刷りを完了する印刷方法。」(以下「引用発明2」という。)

3.本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「つめ」は本件発明1の「印刷する一枚のシートを把持する手段」に相当し、引用発明1の「圧胴」はこのつめによって3分割されており、3つのセグメント部分を有するといえるから、本件発明1の「複数の周方向のセグメント部分を有していて、前記セグメント部分の各々には、印刷する一枚のシートを把持する手段が設けられた、回転可能な圧胴」と異ならない。
引用発明1の「版胴」は、圧胴の周囲に装着されかつ配置されていて、圧胴に印刷可能に接触したり離れたりする(そのことは自明である。)、複数の回転可能な胴である点で、本件発明1の「印刷胴」と一致する(以下、この限度で共通するという意味で、本件発明1の「印刷胴」と引用発明1の「版胴」を「接触胴」ということにする。)。
引用発明1の接触胴(版胴)は2個あり、その直径は等しく、「2組の版を取り付けた」ことは2個の印刷セグメント部分を有するといえる。また、引用発明1の圧胴の直径は各接触胴(版胴)のそれの1.5倍であり、セグメント数が圧胴では3、接触胴では2である(このセグメント数の関係は、本件発明1の「前記圧胴のセグメント部分の数が、各印刷胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく」との関係を、「印刷胴」を「接触胴」としたときに満たす。)から、接触胴(版胴)の各セグメント部分の長さは圧胴のセグメント部分の長さと同じである。
引用発明1の接触胴(版胴)がその「回転中に連続的に印刷接触状態にて前記圧胴と整合するように配置され」ていること、及び引用発明1の圧胴が接触胴(版胴)のセグメント部分の数と同じ数だけ回転(2回転)することにより「多種類の色彩が前記圧胴の1回の把持で各シートに印刷される」ことは明らかである。
そして、引用発明1の「異なる色のインク装置」は、本件発明1の「異なったカラー印刷媒体物を前記版胴のセグメント部分に塗布する手段」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、
「印刷機にして、
複数の周方向のセグメント部分を有していて、前記セグメント部分の各々には、印刷する一枚のシートを把持する手段が設けられた、回転可能な圧胴と、
前記圧胴の周囲に装着されかつ配置されていて、前記圧胴に印刷可能に接触したり離れたりする、複数の回転可能な接触胴とを備え、
前記複数の接触胴は、それぞれの接触胴の直径が等しく、圧胴のセグメント部分と同じ長さでかつ複数の接触胴の間で等しい数の周方向の印刷セグメント部分を有し、前記接触胴の回転中に連続的に印刷状態にて前記圧胴と整合するように配置され、
前記圧胴のセグメント部分の数が、各接触胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく、かつ前記把持手段が、前記圧胴の各セグメント部分の上に印刷するべきシートを保持し、前記圧胴は前記接触胴のセグメント部分の数と同じ数だけ回転し、
異なったカラー印刷媒体物を版胴のセグメント部分に塗布する手段と、
それにより、多種類の色彩が前記圧胴の1回の把持で各シートに印刷される、印刷機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本件発明1の「接触胴」は「印刷胴」であり、これとは別に「前記印刷胴のそれぞれと接触したり離れたりするように装着されかつ配置された、複数の分割された回転可能な版胴を備え」、「前記版胴は関連する印刷胴と等しい直径であり、かつ回転中に連続的に印刷状態にて印刷胴と整合するように配置された同じ数のセグメント部分を有」するのに対し、引用発明1では「版胴」が「接触胴」となっているため上記構成を備えない点。
〈相違点2〉本件発明1が「回転中に前記圧胴の連続するセグメント部分に印刷されるべきシートを供給するシート供給手段と、回転中に前記把持手段と関連して、印刷されたシートを前記圧胴の連続したセグメント部分から取り除き、続いて、前記印刷胴の全てのセグメント部分を印刷するようにする搬送手段」を備えるのに対し、引用発明1は「シート供給手段」に相当する「給紙機構」を備える(引用発明1の「紙」が本件発明1の「シート」に相当する。)ものの、圧胴の2/3回転ごとに給紙するため「圧胴の連続するセグメント部分に印刷されるべきシートを供給する」とはいえず、したがって「印刷されたシートを前記圧胴の連続したセグメント部分から取り除き、続いて、前記印刷胴の全てのセグメント部分を印刷するようにする搬送手段」を備えるともいえない点。

4.相違点についての判断及び本件発明1の進歩性の判断
(1)相違点1について
本件優先日(平成6年3月15日)当時、版胴と圧胴間に印刷胴を配した印刷機は例をあげるまでもなく周知である。そればかりか、取消理由に引用した特開平3-143634号公報(異議申立人の提出した甲第1号証であり、以下「引用例2」という。)第5図には、それぞれ2つのセグメントを有する版胴7及びゴム胴6(本件発明1の「印刷胴」に相当する。)、並びにこれら胴の1.5倍の径を有し3つのセグメントを有する圧胴を備えた印刷機が図示されている。
引用発明1において、上記周知技術又は引用例2記載の発明に従い、版胴と圧胴間に印刷胴を配する(接触胴を印刷胴とすることに等しい)ことが当業者にとって想到容易であることは明らかである。その場合、版胴と印刷胴とは接触したり離れたりするように装着されかつ配置され、回転中に連続的に印刷接触状態にて印刷胴と整合するように配置されることは技術常識である。さらに、直径及びセグメント数について、版胴と印刷胴を等しくすることは、引用例2第5図のとおり極めて自然な配置形態にすぎない。
したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は当業者にとって想到容易である。
特許権者は、「刊行物1(決定注;引用例2)は1989年10月31日に出願されておりその時点で刊行物2(決定注;引用例1)は既に知られているにも拘わらず、刊行物1には版胴と印刷胴との組合せを複数組配置することについての教示はなく且つそのようなことは示唆もない。従って、このような版胴と印刷胴との組合せを複数組配置することは当業者が容易に想到し得るものではないことが証明されるであろう。」(訂正請求書6頁17〜21行)と主張している。なお、この主張は訂正後の請求項1に係る発明が独立特許要件を有する旨の主張の一部であるが、平成11年法律41号により、特許異議申立がされている請求項について訂正がされた場合、その請求項については独立特許要件の判断をしないこととなった。そのため、特許権者の上記主張を、本件発明1(及び本件発明2〜4)の進歩性の主張と理解しておく。
特許権者の主張は、当業者であれば先行技術をすべて知悉しており、何らかの著作又は発明を行うに当たって、先行技術の利点を漏れなく著作又は発明に反映させることを前提とした主張である。しかし、当業者といえどもすべての先行技術を知悉しているわけではなく、先行技術の利点を漏れなく著作又は発明に反映させるわけもないことは、例えば特許出願される発明の中でも、先行技術と同一であったり出願発明よりも技術的に進んだ先行技術が存在したりすることから明らかである。特許権者の主張は前提において誤っており、到底採用できない。

(2)相違点2について
引用例2には、「第5図の圧胴505は、ゴム胴6に対し1.5倍の径を有しており、更に外周に3つの巻付面505a、505b、505cを設けていることにある。第5図の実施例においても、圧胴505が2回転する間、爪は紙を咥えたままでおり、それにより各巻付面上の紙はそれぞれ転写面6a、6bを通過し、圧胴が2回転する間に3枚の紙の二色刷りが可能となる。」(6頁左上欄16行〜右上欄3行)との記載がある。
この記載によれば、圧胴が2回転する間、3枚の紙は圧胴に咥えられたままであるから、圧胴が2回転するに先だって3枚の紙(本件発明1の「シート」に相当する。)が給紙される(給紙中印刷はされない)と考えるべきである。引用例2記載の圧胴のセグメント数は3であるから、3枚の紙を給紙する以上、「圧胴の連続するセグメント部分に印刷されるべきシートを供給するシート供給手段」及び「把持手段と関連して、印刷されたシートを前記圧胴の連続したセグメント部分から取り除き、続いて、前記印刷胴の全てのセグメント部分を印刷するようにする搬送手段」を備えると解すべきである。さらに、シートの供給と取り外しを回転中に行うことは、印刷機の常套手段である。
そして、引用発明1と引用例2記載の印刷機を比較すると、圧胴が3セグメントを有し(3枚の紙をくわれることができる)、1つの接触胴が2セグメントを有する点で共通する(これら共通点は本件発明1にも共通する。)ものであり、他方、圧胴と接触する接触胴の数及び印刷胴の有無で相違するものの、これら相違が給紙及び排紙に直接関わるような相違でないことは明らかである。
そうであれば、引用発明1の給紙機構(及び当然備える排紙機構)として、圧胴の2/3回転ごとに給紙することに代えて、引用例2記載の技術を適用して、相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。

(3)本件発明1の進歩性の判断
相違点1及び相違点2に係る本件発明1の構成は、いずれも当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明1は引用発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

5.本件発明2の進歩性の判断
本件発明2は、本件発明1に「前記各版胴が単一のプレートと把持手段とを備え、前記単一のプレートが色彩間の適切な印刷を確実にするように、複数の分離したセグメントを備えている」との限定を加えるものである。
取消理由に引用した特開平4-334452号公報(異議申立人の提出した甲第3号証であり、以下「引用例3」という。)には、「版胴12は、B(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の4色の刷版28をその外周に所定の間隔、例えば等間隔で配置するためのシリンダである。この版胴12の外周には全周に亘って版材29を取り付けることができ、・・・この版胴12は版材29を巻く分だけ細くつくられ、この版胴12の外周に版材29を引っ張ってぴったりと巻き付けて固定される。図1では版材29は版材供給装置26によって版胴12の外周に引っ張って固定されるが、本発明はこれに限定されず、図4に示すように1枚の版材29を版胴12の全外周に亘って巻き付け、引っ張って固定するための版クランプ(図示せず)等を用いてもよく、版材29の版胴12への固定法は、特に制限的ではなく、上記の他にも従来公知の方法はいずれも適用可能である。」(段落【0019】)との記載があり、ここに記載の「1枚の版材29」及び「版クランプ」は本件発明2の「単一のプレート」及び「把持手段」にそれぞれ相当する。また、引用例3記載の「1枚の版材29」には「B(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の4色の刷版28」が形成されているから、本件発明2の「単一のプレートが色彩間の適切な印刷を確実にするように、複数の分離したセグメントを備えている」との構成を備えている。仮に、本件発明2の「色彩間の適切な印刷を確実にするように、複数の分離した」がセグメント間に仕切りがあることを意味するとしても、その程度のことは設計事項にすぎない。
そして、引用発明1の版胴及びそこに装着すべき刷版として、引用例3記載のものを採用する(引用発明1の版胴は2セグメントであるから、4つの刷版は不要であり、当然2つの刷版に変更する)ことは当業者にとって想到容易であり、かかる構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明2は引用発明1及び引用例2,3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

6.本件発明3の進歩性の判断
(1)本件発明3と引用発明2の一致点及び相違点の認定
3.で述べたことを踏まえれば、引用発明2が、「単一のシートに多数のデザインを印刷する方法」であること、複数の版胴(接触胴)がセグメント状にされた単一の圧胴の周囲に配置され、前記複数の版胴(接触胴)はそれらの直径とセグメントの数とが等しいこと、複数の版胴(接触胴)の各セグメントが「印刷セグメント」といえること、「各印刷セグメントからのカラーデザインを、圧胴のセグメントに相次いで保持されたシートの上に写すこと」、圧胴のセグメントの数は、各接触胴(版胴)のセグメント部分の数にある整数を掛けて一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しいこと、圧胴の表面にシートを運んで前記圧胴を一つの接触胴(版胴)のセグメントの数に等しい数だけ回転させること、及び圧胴により相次いで運ばれるシートが各接触胴(版胴)から連続的にカラーデザインで印刷されるようにした方法であることは明らかである。
したがって、本件発明3と引用発明2は、
「単一のシートに多数のデザインを印刷する方法であって、
複数の接触胴が、セグメント状にされた単一の圧胴の周囲に配置され、前記接触胴は、それらの直径とそれらのセグメントの数とが等しく、
等しい直径の回転する各接触胴上の等しい長さの対応する数の印刷セグメントからのカラーデザインを、圧胴のセグメントに相次いで保持されたシートの上に写すこととを備え、
前記圧胴のセグメントの数は、前記各接触胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく、
前記圧胴の表面に前記シートを運んで、前記圧胴を一つの接触胴のセグメントの数に等しい数だけ回転させることと、を備え、
それにより、圧胴により相次いで運ばれるシートが前記各接触胴から連続的にカラーデザインで印刷されるようにした、方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点3〉本件発明3の「接触胴」は「印刷胴」であり、これとは別に複数の版胴があり、版胴と印刷胴はそれらの直径とそれらのセグメントの数とが等しくとされており(この構成により、請求項3に直接記載はないものの、版胴と印刷胴の数は等しいものと認める。)、等しい直径の回転する各印刷胴上の等しい長さの対応する数の印刷セグメントに、各版胴の多数のセグメントからの複数のカラーデザインを繰り返し塗布することとされているのに対し、引用発明2では「版胴」が「接触胴」となっているため上記構成を備えない点。

(2)相違点3についての判断及び本件発明3の進歩性の判断
本件発明1と本件発明3はカテゴリーが異なり、相違点1と相違点3とはそのカテゴリー相違に起因して異なる相違点として現れたにすぎない。相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは当業者にとって想到容易であることは4.(1)で述べたとおりであり、同様の理由により、相違点3に係る本件発明3の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。
また、この構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
すなわち、本件発明3は引用発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

7.本件発明4の進歩性の判断
本件発明4は、本件発明3に「前記圧胴のセグメントの数は3であり、シートを、前記圧胴のセグメントに一つ置きに供給し、かつ前記圧胴のセグメントから搬出する段階を備えている」との限定を付加したものである。
しかし、引用発明2では圧胴のセグメント数は3であって、圧胴の2/3回転ごとに紙を給紙しており、2/3回転ごとに紙を給紙することと、「シートを、前記圧胴のセグメントに一つ置きに供給」することに相違はない。また、引用発明2が4色刷り完了後に圧胴から印刷後の紙を搬出する段階を備えることは明らかである(搬出しない限り、圧胴の2/3回転ごとに紙を給紙することは不都合である。)。
すなわち、本件発明4の上記限定構成は、既に引用発明2に備わっており、新たな相違点を構成するものではない。
したがって、本件発明4も引用発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本件発明1〜本件発明4はすべて、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1〜請求項4に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)4条2項の規定により、請求項1〜請求項4に係る特許は取り消されなければならない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
多色印刷機
【発明の詳細な説明】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、共通の圧胴を備える幾つかのオフセット装置により表紙の版を作製するオフセット輪転印刷機の改良に関する。より具体的には、本発明は、セグメント状に形成された共通の圧胴を備える、セグメント状の版胴及びブランケット胴を利用する、上記型式の紙差し型の多色印刷機に関する。
2.従来の技術の説明
従来技術の印刷機は、オフセット印刷、または直接印刷用に設計されているかどうかを問わずに、多年に亙って多色印刷に利用されている。かかる機械に伴う最も一般的な二つの問題点がある。即ち、(1)印刷すべき色の数に対応して、その関係するインキローラと共に、版胴及びブランケット胴の数を増やさなければならないこと。(2)ある種のシステムにおいては、版胴、またはブランケット胴の何れかに同時に多数の有色インキを塗布しなければならないことである。
印刷胴及びインキロールシステムの数が増すことは、当然に、印刷機の寸法及び複雑さを著しく増し、従って、製造及び工程の費用が増すことになる。近年、あらゆる種類の印刷機を含んで、工業的な処理装置の「フートプリント」を少なくする努力が為されている。
単一の版胴、またはブランケット胴の表面に多数の色を付与すること、即ち、「分配」することに伴う問題点は、周知であり、主として、インキが移動し、即ち、にじんで色の間の境界を不鮮明にする傾向を伴うものである。多数の圧胴を利用するとき、または印刷すべき紙を一方の把持機構から別の把持機構に移すことを必要とするときに更に別の問題が生ずる。正確に見当合わせをすることは、各把持動作に伴って益々、困難となる。
ローゼン(Rosen)への米国特許第1,085,224号には、多数のブランケット胴B及び多数の版胴Cが、その関係する湿し機構及びインキ機構と共に、セグメント状に形成した圧胴Aの周りに配置された、オフセット印刷装置の一例が記載されている。この配置において、版胴Cの各々は、一つの色しか転写しない。その結果、かなり複雑で且つ高価な印刷機となる。フォートランディシュ・マシュネン・ファブリック(Vogtlandische Maschinen Fabrik)への英国特許第259157号及びフォートランディシュ・マシュネンファブリック(Vogtlandische Maschinenfabrik)へのドイツ国特許第402059号は、オフセット版胴及びブランケット胴の組み合わせ体が一つの色しか転写しない複雑な多色印刷機の更なる例である。
シュルツ(Schultz)及びその他の者への再発行米国特許第15286号及びモーブレイ(Mowbray)への米国特許第684450号には、共に、幾つかの異なる有色インキが、印刷すべき紙に転写される前に単一のブランケットに付与される多色印刷機の例が記載されている。シュルツの特許において、例えば、三つの版胴1の各々は、異なる色のデザインであり、これら三つの色の全ては、圧胴15により支持された紙に印刷される前に、胴8の各ブランケット9乃至11に付着される。モーブレイの特許において、版g、または版胴Gは、印刷すべき紙を支持する圧胴に版から転写される前に、色版から多色のデザインを受け取る。この型式の多色印刷は、色が混じり合ったり、湿ったインキが重なり合わさったときにデザインが変形することが多い。
発明の概要
本発明は、必要とされるオフセット印刷胴の数を著しく少なくし、また、印刷すべき紙を一回だけ圧胴の表面に把持するだけでよい、多色印刷用のオフセット印刷装置を提供するものである。印刷される色の数は、容易に変更が可能であり、ブランケット胴から印刷すべき紙に一色しか転写されないようにすることができる。本発明によれば、複数の版胴が提供され、その版胴の各々には、そのセグメントの各々がその特有の色、またはデザインを有する多数のセグメント部分を備える単一の版が設けられている。その版胴の各々は、二つの色に対する一つの版把持機構及び一つの版があればよいから、その二つの色を正確に見当合わせすることが確実とされる。同一径の関係するブランケット胴には、各版胴が設けられ、ブランケット胴は、セグメント状に形成した版胴から個々の色の像を直接、受け取るため同一数のセグメント部分を備えている。一般的なセグメント状の圧胴は、印刷すべき多数の紙を把持し且つ保持する。
一般的な圧胴は、セグメント錠に形成されており、その各セグメント部分の周方向への伸長程度、即ち、その長さは、ブランケット胴における単一のセグメント部分の周方向長さに等しい。圧胴におけるセグメント部分の数は、任意のブランケット胴の上におけるセグメントの数に任意の整数を掛けて、更に一つのセグメント部分を加えた値に等しい。この配置において、印刷すべき紙は、圧胴の一つのセグメント部分におけるグリッパ機構に運ばれ、任意の一つのブランケット胴における色の数に等しい回転数の間、圧胴の上に留まっている。このように、各紙は、圧胴が回転する毎に、各ブランケット胴から一つの色を受け取る。例えば、4色印刷装置の場合、二つの版胴及び適合する二つのブランケット胴には、各々の版が設けられ、ブランケット胴は、二つのセグメント部分に仕切られ、そのセグメント部分の各々は、別個の色を有する。単一の圧胴には、三つのセグメント部分が設けられ、そのセグメント部分の各々は、版胴及びブランケット胴における任意の一つのセグメント部分と周方向長さが等しい。これらの紙は、この場合、圧胴のセグメント部分に選択的に供給され、その胴が二回転する間に、即ち、両方のブランケット胴からの二つの色が印刷される迄、圧胴の表面に留まっている。これらの紙には、各回転毎に、各ブランケット胴から一つの色が印刷される。次に、その四つの全ての色が印刷された後に、排出機構が選択的な方法にて各紙を圧胴から除去する。
本発明は、版胴の表面に周知の方法で像を形成するために既存のデジタル制御による電子式の像形成技術を利用するものとして説明する。この好適な電子式の像形成組立体は、ニューヨーク州、ハドソンのプレステック・インコーポレーテッド(Presstek Inc.)が製造するような電子磁気の放射線のパルス発生源を利用するレーザ像形成装置である。しかしながら、印刷機の内部に、または印刷機の外部にある、任意の公知の版像形成技術を利用することが可能であることが理解されよう。例えば、ニューヨーク州、ニューヨークのトーレ・カンパニー(Toray Company)により販売されているような従来の乾式の印刷版を利用することが可能である。この場合、印刷版は、印刷機外にて像を形成し、その後に、印刷のために版胴に取り付けられる。
図面の簡単な説明
図1は、印刷胴、給紙機構及び紙排出機構を示す、本発明の概略図である。
図2乃至図8は、4色印刷装置において圧胴が二回転することを通じて一枚の紙を印刷するサイクルを示す図である。
好適な実施の形態の詳細な説明
説明の目的のため、本発明は、当該技術分野で周知である、オフセット印刷方法を利用する、4色の印刷装置に関して本明細書にて説明する。図1には、第一の版胴1及び第二の版胴2がそれぞれ第一のブランケット胴3及び第二のブランケット胴4と協働し得るように取り付けられており、これらのブランケット胴3及び4は、以下に説明する方法にて単一の圧胴6と協働する。また、この装置は、全体として、符号7で示した給紙機構を備えており、該給紙機構は、紙コンベヤ8と、転写胴9とを備えている。印刷された紙は、印刷後に、符号11で図示した紙排出装置により圧胴6から除去される。図示するように、この実施の形態において、版胴の各々には、二つの別個の色のセグメント部分に仕切られた単一の版を取り付けるための単一のグリッパが設けられている。その版胴の各々には、二つの別個の組みの色ロールが設けられている。このため、胴1には、色ロール12、13が設けられ、また、版胴2には、色ロール14、16が設けられている。
以下に説明する各種の胴及びロールは、図面の簡略化のために概略図で図示されているが、勿論、これらの胴及びロールは、軸受にて軸支し且つ公知の方法にて必要な動力作動の駆動機構に接続されることが理解されよう。この点に関して、版胴及びブランケット胴の各々には、版胴1、2に対する符号17、18で図示した従来の偏心軸受、及びブランケット胴3、4に対する軸受19、21がそれぞれ設けられている。これらの偏心軸受による取り付けは、当該技術分野で周知の方法により、胴を動かして刷りのオン・オフを行うことを可能にする。
版胴1に関しては、単一の版が二つのセグメント部分22、23に仕切られているのが理解されよう。該版は、通常、シリコーン等が被覆されたアルミニウム面を備えるように形成された従来の設計とすることができ、そのシリコーン等は、像形成装置により腐食させて除去し、所望のデザインのパターンを形成し、そのパターンにインキロールシステム12、13によりインキが付与される。この工程は、従来技術で周知であり、本発明の一部を構成するものではない。一例として、セグメント部分22には、フォームローラ22によりマゼンタインキが付与され、セグメント部分23には、フォームローラ13によりシアンインキが付与されるようにする。上述したように、この好適な実施の形態は、別個の把持機構を備える個々の版ではなくて、二つのカラーセグメント部分に仕切られた単一の版を利用するものである。把持機構が一つしかないから、色間の適正に見当合わせが確実となる。二つの版胴の間の色同士を適正に見当合わせするためには、少なくとも一方の版胴は、その他方の版胴に関して周方向に且つ横方向に調節可能でなければならない。
概略図で図示するように、これらのフォームローラは、二つのフォームローラのカム24、26により、版胴1と整合し且つ非整合状態となるように動かさなければならない。インキローラを使用するときのこの機構及びその方法は、当業者に十分に理解されよう。説明の目的のため、この装置は、乾式の像版を利用するものであるが、この装置は、湿らせ装置を利用するインキ付与装置と共にでも同等に機能することも理解されよう。勿論、ローラカムは、適正な色のインキのローラを適正な版のセグメント部分と見当合わせし、また、胴が回転するとき、ローラを持ち上げてその他方の版のセグメント部分と非接触状態にさせる機能があることも理解されよう。版胴2は、図示した色の組み合わせを除いて、上述した版胴1に略等しい。該胴2には、セグメント部分27、28を有する単一の版が設けられ、これらのセグメント部分は、選択的に色ロール14、16と係合し、一例とした図示するように黄色及び黒色のデザイン面を提供する。これらの色ロールは、上述のように、ローラカム29、31により作動される。
上述したオフセットブランケット胴3、4には、偏心軸受19、21がそれぞれ設けられており、これら偏心軸受は、胴6による刷りをオン・オフし得るように胴を動かすことを許容する。これらのブランケット胴3、4は、版胴1、2と同一の径であり、そのブランケット胴の各々は、二つのブランケット胴を含み得るようにセグメント状に形成されている。これらのブランケット胴は、上述した胴1、2の版の個々のセグメント部分と周方向への長さが等しい。該ブランケット胴3は、第一のブランケット32と、第二のブランケット33とを備えており、これらのブランケットは、版胴2の版セグメント部分27、28と整合し且つこれらの版セグメント部分と協働する。このため、これらの版胴1、2のセグメント部分は、それぞれの4つの色デザインをブランケット胴の関係するセグメント部分に転写する働きをする。
圧胴6は、版胴及びブランケット胴よりも大径であり、三つのセグメント部分a-cに仕切られ、そのセグメント部分の各々は、ブランケット胴の外周の1/2に等しい外周長さを有している。
上述したように、このシステムは、4色の印刷装置に関するものである。印刷可能である色の数を増やすため、版胴及びブランケット胴における色セグメント部分の数を簡単に増すことが可能である。同様に、図示したセグメント部分と同数のセグメント部分を備える、追加的な組みの版胴及びブランケット胴の組み合わせ体を追加することも可能である。何れの場合でも、圧胴6の径は、任意の一つのブランケット胴におけるセグメント部分の数にある整数を掛けて、それに追加的なセグメント部分を一つ加えた数のセグメント部分を任意の一つのブランケット胴に含めることが可能なように選択する。このように、以下に説明するように、供給される紙に対して常に一つの追加的なブランクのセグメント部分があることになる。
図1に図示するように、これらの紙は、給紙コンベヤ8により積み重ね体37から供給される。該コンベヤは、送られる紙を転写胴9に導入し、該胴が、周知の方法にて、圧胴6の一つのセグメント部分のグリッパ機構に供給する。この説明から理解されるように、この図示した4色印刷機の実施の形態において、給紙機構は、一枚の紙を回転する圧胴6の異なるセグメント部分に供給し得るように制御される。同様に、これら紙は、排出装置11により異なる方法で圧胴のセグメント部分から除去して、積み重ね体38の上に置かれる。この配置の場合、圧胴の異なるセグメント部分のグリッパ機構により取り上げられた各紙は、二回転する間の全体に亙って、即ち、各ブランケット胴の二つの色が印刷される迄、胴の表面の上に留まっている。最初に回転する間に、紙が各ブランケット胴から一つの色を拾い上げ、圧胴が二回目に回転する間に、その他の二つの色が拾い上げられる。この二回目の回転の終了時に、紙は、排出機構11により除去され且つ積み重ねられる。圧胴が最初に回転する間に、双方のブランケット胴は、該圧胴の単一のブランクセグメント部分が通過する間に、上述したように、偏心軸受19、21により持ち上げられて刷り状態から離れる。これと代替的に、ブランケット胴は、最初に回転する間に、持ち上げられて刷り状態から離れ、次に、全てのセグメント部分に紙が供給される二回目の回転のときに、圧胴に押し付けられる。
図2乃至図8に図示するように、紙に4色のデザインを付与する間に単一の紙を循環させる状態が図示されている。図2乃至図8において、圧胴6のセグメント部分は、セグメントa、b、cとして図示されている。プレート胴1、2、及びブランケット胴3、4は、各セグメントにより付与される色であって、また、図1の版胴及びブランケット胴のセグメント部分について図示した色に対応する色を示し得るように標識が付されている。図2に図示するように、印刷すべき紙39は、最初に、図3に図示するように、圧胴のセグメント部分aのグリッパ機構により拾い上げられ、ブランケット3の黒セグメント部分Bで印刷され、その後に、ブランケット胴4からマゼンタ色Mを受け取る。また、このセグメント部分aのこの移動中、給紙機構は、セグメント部分bをスキップし、そのセグメント部分bをブランク、または空の状態にままにする。ブランケット胴3、4は、刷りを停止し、セグメント部分bに接触しない。図4に図示するように、第二の紙41は、セグメント部分cのグリッパ機構に供給され、このセグメント部分は、図5に図示するように・黒及びマゼンタが印刷され、セグメント部分aは、紙フィーダによりスキップされる。セグメントaにおける紙39は、黄色Y、シアンCという色で二回目の印刷が為される。図6に図示するように、セグメント部分bには、次に、紙42が供給され、図7に図示するように、セグメント部分cには、紙が供給されず、紙39は、排出機構11に解放されて積み重ねられる。図8には、第三の紙43が前進するとき、セグメント部分aのグリッパ機構にその紙が供給される状態が図示されている。次に、この過程は、繰り返され、紙フィーダ機構は、その他のセグメント部分に供給し、排出システム11は、その上に4つの色が印刷されたその他の紙を除去する。
上述したように、4色の印刷装置に関して本発明の実施の形態を説明したが、版胴、またはブランケット胴におけるセグメント部分の数を増やすか、または追加的な版胴とブランケット胴との組み合わせ体を提供することにより、一定の制限範囲内で色印刷の容量を拡張することが可能である。ブランケット胴における色セグメント部分の数が増えれば、上述した関係に従い、圧胴6におけるセグメント部分の数もこれに対応して増える。また、上述したように、一枚の紙に多色印刷するために必要とされる回転数もこれに伴って増える、即ち、各紙は、任意の一つのブランケット胴における色の数に等しい回転数にて回転させる。紙に全ての色が印刷されたならば、その紙は、排出装置により除去され、別の紙が空のセグメント部分に供給される。
本発明の印刷装置は、多色オフセット印刷装置のコスト及び効率を著しく向上させるものであり、例えば、上述したこの実施の形態は、5つの印刷胴だけを使用するだけで4色の印刷を可能にするものであることが理解される。セグメント状に形成した圧胴、及び紙の供給と排出とを選択的に行うことは、多数のセグメント部分を有する版胴及びブランケット胴と組み合わさって、多色印刷が為されるときの速度を著しく速めることができる。例えば、この実施の形態において、紙は、4色を得るために二回転のみする間に圧胴の上に保持することができる。同様に、6色の印刷装置は、6つの色を拾い上げるために紙を三回転させるだけでよい。
好適な実施の形態に関して、本発明を説明した。この明細書を読み且つ理解することにより、当業者には、その変形例及び代替例が明らかであろう。請求の範囲に含まれるかかる全ての変形例及び代替例を包含することを意図するものである
(57)【特許請求の範囲】
1. 印刷機にして、
複数の周方向のセグメント部分を有していて、前記セグメント部分の各々には、印刷する一枚のシートを把持する手段が設けられた、回転可能な圧胴と、
前記圧胴の周囲に装着されかつ配置されていて、前記圧胴に印刷可能に接触したり離れたりする、複数の回転可能な印刷胴とを備え、
前記複数の印刷胴は、それぞれの印刷胴の直径が等しく、圧胴のセグメント部分と同じ長さでかつ複数の印刷胴の間で等しい数の周方向の印刷セグメント部分を有し、前記印刷胴の回転中に連続的に印刷状態にて前記圧胴と整合するように配置され、
前記圧胴のセグメント部分の数が、各印刷胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく、かつ前記把持手段が前記圧胴の各セグメント部分の上に印刷するべきシートを保持し、前記圧胴は前記印刷胴のセグメント部分の数と同じ数だけ回転し、
前記印刷機は、前記印刷胴のそれぞれと接触したり離れたりするように装着されかつ配置された、複数の分割された回転可能な版胴を備え、
前記版胴は関連する印刷胴と等しい直径であり、かつ回転中に連続的に印刷状態にて印刷胴と整合するように配置された同じ数のセグメント部分を有し、
異なったカラー印刷媒体物を前記版胴のセグメント部分に塗布する手段と、
回転中に前記圧胴の連続するセグメント部分に印刷されるべきシートを供給するシート供給手段と、
回転中に前記把持手段と関連して、印刷されたシートを前記圧胴の連続したセグメント部分から取り除き、続いて、前記印刷胴の全てのセグメント部分を印刷するようにする搬送手段と、
それにより、多種類の色彩が前記圧胴の一回の把持で各シートに印刷される、印刷機。
2. 請求項1に記載の印刷機において、前記各版胴が単一のプレートと把持手段とを備え、前記単一のプレートが色彩間の適切な印刷を確実にするように、複数の分離したセグメントを備えている印刷機。
3. 単一のシートに多数のデザインを印刷する方法であって、
複数の版胴と印刷胴との組合せが、セグメント状にされた単一の圧胴の周囲に配置され、前記版胴と印刷胴は、それらの直径とそれらのセグメントの数とが等しく、
等しい直径の回転する各印刷胴上の等しい長さの対応する数の印刷セグメントに、各版胴の多数のセグメントからの複数のカラーデザインを繰り返し塗布することと、
前記各印刷セグメントからのカラーデザインを、圧胴のセグメントに相次いで保持されたシートの上に写すこととを備え、
前記圧胴のセグメントの数は、前記各印刷胴のセグメント部分の数にある整数を掛けて、一つの追加的なセグメント部分を加えた値に等しく、
前記圧胴の表面に前記シートを運んで、前記圧胴を一つの印刷胴のセグメントの数に等しい数だけ回転させることと、を備え、
それにより、圧胴により相次いで運ばれるシートが前記各印刷胴から連続的にカラーデザインで印刷されるようにした、方法。
4. 請求項3に記載の方法において、前記圧胴のセグメントの数は3であり、シートを、前記圧胴のセグメントに一つ置きに供給し、かつ前記圧胴のセグメントから搬出する段階を備えている方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-07-05 
出願番号 特願平7-524089
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41F)
最終処分 取消  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 清水 康司
津田 俊明
登録日 2003-01-24 
登録番号 特許第3392420号(P3392420)
権利者 ヒース・カスタム・プレス・インコーポレーテッド
発明の名称 多色印刷機  
代理人 小林 泰  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 増井 忠弐  
代理人 大坪 隆司  
代理人 小林 泰  
代理人 内田 博  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 内田 博  
代理人 社本 一夫  
代理人 増井 忠弐  
代理人 今井 庄亮  
代理人 社本 一夫  
代理人 今井 庄亮  

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