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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1111183
異議申立番号 異議2003-70787  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-01-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-24 
確定日 2005-01-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3328225号「ファクシミリ装置、それを用いた保守システム及びその障害通知方法」の請求項1、5、6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3328225号の請求項1、5、6に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3328225号の請求項1、請求項5、及び請求項6に係る発明についての出願は、平成11年6月18日に特許出願され、平成14年7月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人市東勇より特許異議の申し立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月20日に訂正請求がされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成16年10月19日に手続補正が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、平成16年10月19日付けの手続補正書で、訂正請求書の訂正事項A、及び訂正明細書の【請求項1】の記載である「ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信するファクシミリ装置であって、前記装置異常発生を通知する電子メールが前記自装置に係る情報を含むことを特徴とするファクシミリ装置。」を、
「ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置の各種設定情報および通信履歴情報を含む装置異常発生を通知する電子メールを送信することを特徴とするファクシミリ装置。」
と補正しているが、当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、平成15年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合しないので、当該補正は認められない。
(「訂正事項の追加は、特許請求の範囲の減縮に該当するが訂正請求書の要旨を変更するものであって、特許法第131条第2項で認められない補正である」とする東京高裁判決平成8年(行ケ)第222号、または特許庁のホームページ審判情報「訂正の補正に関する運用変更のお知らせ」を参照。)

2-2.訂正の内容
平成16年7月20日付けの訂正請求書において、特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項A
[請求項1]の記載
「ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信することを特徴とするファクシミリ装置。」
を、
「ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信するファクシミリ装置であって、前記装置異常発生を通知する電子メールが前記自装置に係る情報を含むことを特徴とするファクシミリ装置。」
と訂正する。
これに伴い、[請求項1]の記載と[課題を解決するための手段]の記載との整合をとるために、特許掲載公報第2頁右欄第4行目(段落番号0005)の記載
「本発明の請求項1に係るファクシミリ装置は、ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信する。」
を、
「本発明の請求項1に係るファクシミリ装置は、ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信するファクシミリ装置であって、前記装置異常発生を通知する電子メールが前記自装置に係る清報を含む。」
と訂正する。

2-3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)明細書の記載事項
上記訂正事項に関連する記載として、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0024】には、
「【0024】主制御部10からのメッセージ編集指示の通知を受けたメッセージ編集部14は、設定・履歴記憶部13を参照して、装置の各種設定情報および通信履歴情報を取得し、装置の各種設定情報および通信履歴情報を含む装置異常の発生を通知するメッセージを編集・作成する。メッセージ編集部14は、メッセージの編集が完了すると、メッセージの編集完了を主制御部10に通知する。」と記載されている。
(2)判断
特許明細書の記載からすると、請求項1の記載を、「ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置の各種設定情報および通信履歴情報を含む装置異常発生を通知する電子メールを送信することを特徴とするファクシミリ装置。」と訂正するならば、明細書に基づいた特許請求の範囲の減縮となると認められるがそのように訂正されていない。
訂正された請求項1では、「装置異常発生を通知する電子メールが前記装置に係る情報を含む」と訂正しているが、この「前記装置に係る情報」としては、明細書記載からすると「装置の各種設定情報および通信履歴情報」だけでなければならない。
しかし、この「装置に係る情報」には、「装置の各種設定情報および通信履歴情報」以外にも、装置に係る情報ならば何でも含まれてしまうこととなる。例えば、装置に係る情報としては、装置の製造番号、装置管理番号、装置の管理者、装置の設置場所、装置故障時の連絡先等が考えられる。
よって、上記訂正事項Aは、特許請求の範囲の減縮し、その記載を明りょうにしたものとは認められない。また、「前記自装置に係る情報」は、願書に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ、これらから、当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項でもない。

2-4.むすび
以上のとおりであるから、当該訂正は、平成15年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する同第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.特許異議申立について
3-1.本件発明
特許第3328225号の請求項1、請求項5、及び、請求項6に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、請求項5、及び、請求項6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項5】 請求項1,2,または3記載のファクシミリ装置と、
前記ファクシミリ装置を収容する電子メールシステムと、
前記電子メールシステムに収容され、前記装置異常発生通知先の電子メールアドレスとして自己の電子メールアドレスを指定した電子メールを前記電子メールシステムを介して前記ファクシミリ装置へ送信する前記ファクシミリ装置のメーカの保守サービスセンタとを備えることを特徴とするファクシミリ装置の保守システム。
【請求項6】 請求項5記載のファクシミリ装置の保守システムにおける障害通知方法において、
あらかじめ、前記保守サービスセンタから前記装置異常発生通知先の電子メールアドレスとして自己の電子メールアドレスを指定した電子メールを、前記電子メールシステムを介して前記ファクシミリ装置へ送信し、前記ファクシミリ装置に当該電子メールアドレスを記憶させておき、
前記ファクシミリ装置で自装置の異常発生を検出すると、前記記憶した電子メールアドレスに従い前記保守サービスセンタ宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信することを特徴とする障害通知方法。」

3-2.申立の理由の概要
異議申立人市東勇は、本件請求項1、請求項5、及び請求項6に係る発明についての特許に対して、証拠として甲第1号証(特開平5-347677号公報)、甲第2号証(特開平7-297826号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明は甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、請求項1、請求項5、及び請求項6に係る発明は、甲第1号証並びに甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であって、それらの発明に係る特許は取り消されるべき旨主張している。

3-3.引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消の理由に引用された刊行物1(特開平5-347677号公報、以下、「引用例1」という。)には、以下のことが記載されている。
(1)「【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために本発明のファクシミリ装置では、用紙の残量を検出する手段と、コンピュータネットワークインターフェースと、電子メールの宛先を記憶する手段と、電子メールの送受信を制御する手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
【実施例】図1は本発明のファクシミリ装置の構成を表すブロック図である。読み取り部4、印刷部5、通信制御部6の他にコンピュータネットワークインターフェース1、電子メール宛先記憶部2、用紙残量検出部7があり、これらのシステム全体をコントロール部3で制御する。
【0007】図2は本発明のファクシミリ装置8がLANに接続されて利用される形態を表す図である。LAN上にはパーソナルコンピュータ9やワークステーション10が接続されている。」(引用例1の2頁1欄36行〜同頁2欄3行、段落【0005】〜【0007】)
(2)「【0009】以上述べた電子メールの機能をふまえて本発明の説明に戻る。図1のブロック図において、ファクシミリの送信の際には読み取り部4で読み取られ符号化された原稿のデータはコントロール部3の制御により通信制御部6に送られ、一般公衆回線へのデータとなって送信される。一方、受信の際には逆に通信制御部6で受け取ったデータが印刷部5で印刷されるが、この際に用紙残量検出部7により適宜用紙の残量を考慮する。また、ネットワークインターフェース1を通して電子メールのやり取りを行なうが、これに必要な電子メールの宛先は電子メール宛先記憶部2に貯える。このデータの例を図3に示す。各行の宛先データは「:」で区切られた2個のデータからそれぞれなり、1番目が電子メールで送られる情報の種類を区別するフラグ、2番目は前記電子メールの宛先となっている。前記フラグの種類としては3種類あり、「A」は用紙の残量が少なくなったことを電子メールで通知することを示すフラグ、「B」は用紙の残量が少なくなった後で受信するファクシミリデータを電子メールで転送することを示すフラグ、「C」は受信するファクシミリデータを用紙の残量に関係なく電子メールで転送することを示すフラグである。フラグによるこれらの情報は電子メールで宛先に転送される。
【0010】上述のファクシミリ通信で受信したデータを印刷部5に送る処理の流れを図4の従って説明する。図4の15では図3の宛先データの中のフラグ「C」をもつものを探し、受信したファクシミリ通信のデータを電子メールによって指定された宛先に発信する。この電子メールの発信は用紙の残量の判定の前に行なわれるので通常の状態でも実行される。次に図4の16で用紙の残量を判定し、これがあらかじめ設定しておいた所定の値よりも少ないかどうかによって以降の処理を変える。仮に所定の値よりも大きい場合には図4の19によって通常の印刷を行なう。しかし所定の値より小さい場合には印刷は行なわず、まず図4の17に示すように図3の宛先データの中のフラグ「A」を探し、宛先に対して用紙の残量が少なくなったことを通知する電子メールを発信する。そして、図4の18に示すように図3の宛先データの中のフラグ「B」を探し、その宛先に対してファクシミリ通信で受信したデータを電子メールで送る。この一連の処理により用紙の有無やファクシミリ通信の内容を離れた場所で知ることができ、また内容によって受け取る宛先を変えることができるので、例えば用紙を補給することを特定の人にまかせるような場合には連絡が円滑に行なわれることになる。電子メールの受信はコンピュータ上で行なわれるので、必ずしも送られた瞬間に読む必要はなく不在の場合にも対応できる。
【0011】図5は本発明のファクシミリ装置に対して離れた場所にいる人が電子メールによっていくつかの要求を行なう際の処理の流れを説明するフローチャートである。要求とは例えば離れた場所にいる人がその時点のファクシミリの内部に記憶されている宛先データを知りたいということや、以前に設定した電子メールの宛先などを修正したいということである。これを実現するために電子メールの本文に「GET」や「MOD」といったあらかじめ決めておいたコマンドを書いて本発明のファクシミリ装置に発信する。このようなメールを受け取ると図5の処理に従ってコマンドの要求を実行する。図5の20で要求が電子メール宛先記憶部2のデータの送信要求かを判断し、そうならば21のようにデータを要求元の宛先に発信する。通常電子メールでは発信者の宛先もコントロール・データとして存在するので、発信者の宛先も送信したデータから知ることができる。また、宛先データの送信要求でなかった場合は宛先データの修正要求かどうかを22で判断すし、そうならば23で修正、そうでなければ終了する。これらの処理によって、離れたところにいる人も瞬時にファクシミリ装置の履歴を知ることができ、また設定に関してもファクシミリ装置のある場所まで出向く必要がなくなる。
【0012】
【発明の効果】以上述べたように、本発明ではファックス用の印字用紙の残量を示す機能とコンピュータネットワークよる電子メールの機能をもつ構成にしたので、ファクシミリにおいて実行される通信の状態を通信と同時に知ることができる。また、用紙の残量の状態をリアルタイムに離れた場所で知ることができるだけでなく、それ以降のファクシミリ通信の内容を電子メールで受け取ることによってメモリの容量などの限界に左右されずに、また特別な装置を付加することなく通信を継続することが可能になる。」(引用例1の2頁2欄33行〜3頁4欄20行、段落【0009】〜【0012】)

以上の記載から、引用例1には、
「一般公衆回線に接続され、ファクミリの送受信を行う通信制御部6と、用紙の残量を検出する用紙残量検出部7と、LANに接続されているコンピュータネットワークインターフェース1と、電子メールの宛先を記憶する電子メール宛先記憶部2と、これらのシステム全体を制御するコントロール部3とを備えたファクシミリ装置において、
用紙の残量が少なくなったとき、電子メール宛先記憶部2に蓄えられ、対応する宛先に対して用紙の残量が少なくなったことを通知する電子メールを発信することができ、
さらに、ファクシミリの内部に記憶されている宛先データ等のファクシミリ装置の履歴を知りたいとき、また、以前に設定した電子メールの宛先などを修正したいときには、ファクシミリ装置に対して離れた場所にいる人が電子メールによって行うことができることを特徴とするファクシミリ装置。」
の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3-4.対比・判断
(1)請求項1について
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と、引用例1記載の発明とを比較すると、
引用例1の「コンピュータネットワークインターフェース」は、本件発明1の「電子メールを送受信する手段」に、引用例1の「電子メール宛先記憶部」は電子メールの宛先を記憶しているから、本件発明1の「電子メールアドレスを記憶し」にそれぞれ相当し、
引用例1では、用紙の残量が少なくなったことを電子メールで通知する電子メールの宛先等の、以前に設定した電子メールの宛先などを修正したいときには、ファクシミリ装置に対して離れた場所にいる人が電子メールを送って、電子メールの宛先を修正することができることが記載されており、これは、通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶することに相当するから、
両者は、
「ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置の特定の状態通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の特定の状態を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置の状態を通知する電子メールを送信することを特徴とするファクシミリ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
装置の特定の状態とその通知が、本件発明1では、自装置の異常発生であり、電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信するのに対して、引用例1では、通知する装置の状態が用紙の残量であり、ファクシミリ装置の用紙の残量を検出し、用紙の残量が少なくなったときに、電子メールアドレス宛に電子メールによって通知する点。

上記相違点1を検討すると、
用紙の残量が少なくなったことを検出することは、次に用紙切れが起こり印刷ができなくなるという装置の異常が発生する前段階を検出していることであるから、用紙の残量が少なくなったことを検知し、それを通知すということから、自装置の異常発生を検出し、異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信するようにすることは当業者が容易に考えられることである。

したがって、本件発明1は、引用例1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)請求項5について
請求項5に係る発明(以下、「本件発明5」という。)と、引用例1記載の発明とを比較すると、上記相違点1に加えて、下記の点で相違する。
(相違点2)
本件発明5は、ファクシミリ装置を収容する電子メールシステムと、前記電子メールシステムに収容され、装置異常発生通知先の電子メールアドレスとして自己の電子メールアドレスを指定した電子メールを前記電子メールシステムを介してファクシミリ装置へ送信するファクシミリ装置のメーカの保守サービスセンタとを備えるファクシミリ装置の保守システムであるのに対して、引用例1のものは、ファクミリ装置がLANに接続され、LAN上にはパーソナルコンピュータやワークスデーションが接続されているが、メーカの保守サービスセンタについては記載されていない点。

上記相違点2を検討すると、ファクシミリ装置を電子メールシステムに接続することは周知のことであり格別のことではない。
引用例1には、3頁3欄24〜26行に「例えば用紙を補給することを特定の人にまかせるような場合には連絡が円滑に行われることになる」と記載されているように、装置を管理保守する人を特定して連絡すること、即ち、保守する人に電子メールで通知することが記載されている。
さらに、ファクシミリ装置が保守を必要とするときに電子メールを用いてサービスマンあるいはサービスセンタに知らせることは周知のことである。例えば、特開平10-207304号公報(サービスマンによるメンテナスが必要なときに、電子メールを送信している。)、特開平11-46278号公報、特開平10-173819号公報(ファクシミリ装置とサービスセンタとをコンピュータ通信網で接続し保守データを送受信している。)等を参照。
したがって、引用例1のものにおいて、ファクシミリ装置を電子メールシステムを介して保守サービスセンタに接続し、それを保守システムとすることは、当業者が容易に考えられることである。

したがって、本件発明5は、引用例1記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求項6について
請求項6に係る発明(以下、「本件発明6」という。)と、引用例1記載の発明とを比較すると、上記相違点1、2に加えて、下記の点で相違する。
(相違点3)
本件発明6のものは、ファクシミリ装置の保守システムにおける障害通知方法において、あらかじめ、前記保守サービスセンタから前記装置異常発生通知先の電子メールアドレスとして自己の電子メールアドレスを指定した電子メールを、前記電子メールシステムを介して前記ファクシミリ装置へ送信し、前記ファクシミリ装置に当該電子メールアドレスを記憶させておき、前記ファクシミリ装置で自装置の異常発生を検出すると、前記記憶した電子メールアドレスに従い前記保守サービスセンタ宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信するのに対して、引用例1のものはそのようなことが記載されていない点。

上記相違点3を検討すると、上記のように、ファクシミリ装置が保守を必要とするときに電子メールを用いてサービスマンあるいはサービスセンタに知らせることは周知のことである。また、引用例1には、例えば用紙を補給することを特定の人にまかせること、電子メールによって、以前に設定した電子メールの宛先等を修正できることが記載されている。
これらのことより、本件発明6のように、保守サービスセンタから装置異常発生通知先の電子メールアドレスとして自己の電子メールアドレスを指定した電子メールを、電子メールシステムを介してファクシミリ装置へ送信し、ファクシミリ装置に当該電子メールアドレスを記憶させておき、ファクシミリ装置で自装置の異常発生を検出すると、記憶した電子メールアドレスに従い保守サービスセンタ宛てに装置異常発生を通知する電子メールを送信するようにすることは当業者が容易に考えられることである。

したがって、本件発明6は、引用例1記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-5.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、請求項5、及び、請求項6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


(なお、平成16年10月19日付けの手続補正書のように、「ファクシミリ用回線とは別回線で電子メールを送受信する手段を有し、装置異常発生通知先の電子メールアドレスを通知する電子メールを受信すると、当該電子メールアドレスを記憶し、自装置の異常発生を検出すると記憶した電子メールアドレス宛てに装置の各種設定情報および通信履歴情報を含む装置異常発生を通知する電子メールを送信することを特徴とするファクシミリ装置。」と補正したとしても、引用例1には、ファクミリ装置の履歴を電子メールで送ることが記載されているから、「装置の各種設定情報および通信履歴情報」を送ることは当業者が容易に考えられることと認められる。)
 
異議決定日 2004-11-09 
出願番号 特願平11-172029
審決分類 P 1 652・ 121- ZB (H04N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 手島 聖治  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
江頭 信彦
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3328225号(P3328225)
権利者 日本電気通信システム株式会社
発明の名称 ファクシミリ装置、それを用いた保守システム及びその障害通知方法  
代理人 河合 信明  
代理人 机 昌彦  
代理人 谷澤 靖久  

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