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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない D06P
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない D06P
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない D06P
審判 全部無効 判示事項別分類コード:821 訂正を認める。無効としない D06P
管理番号 1111834
審判番号 無効2002-35348  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-08-22 
確定日 2003-08-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1987690号着色剤の特許無効審判事件について、併合の審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第1987690号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成5年3月17日に出願され、平成7年11月8日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
そして、平成10年3月30日に大日精化工業株式会社より「請求項1に係る発明の特許を無効とする」との審決を求める審判請求がなされ、平成10年9月1日付けで訂正請求がなされ、平成10年10月21日付けで「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決がなされた。
その後、平成14年8月22日に株式会社中部パイル工業所(以下、「請求人1」という。)から無効2002-35348号審判事件として、また、平成14年8月29日にオーケー化成株式会社(以下、「請求人2」という。)から無効2002-35361号審判事件として、それぞれ、本件の請求項1、2に係る発明の特許を無効とする旨の審決を求める審判請求がなされ、被請求人より訂正請求書及び答弁書が提出され、前記各審判事件の請求人より弁ぱく書が提出され、その後、審理を併合の上、平成15年5月9日に口頭審理がなされ、両当事者から上申書が提出されたものである。

2.訂正の可否に対する判断
2-1.訂正事項
(あ)請求項1の「着色剤」を、「模様現出用着色剤」と訂正する。
(い)請求項2を削除する。
(う)明細書の段落番号0001の「およびその製造方法」を削除する。
(え)明細書の段落番号0011の「着色剤」を、「模様現出用着色剤」と訂正する。
(お)明細書の段落番号0012の「帯電防止剤もしくは滑剤または両者併用」を、「帯電防止剤と滑剤を両者併用」と訂正する。
(か)明細書の段落番号0018の「以上述べた帯電防止剤と滑剤は、それぞれ単独で用いてもよく、または両者併用してもよい。」を、「以上述べた帯電防止剤と滑剤は、両者併用する。」と訂正する。

2-2.訂正の適否
訂正事項(あ)は、明細書の段落番号0001、0010、0020の「この発明・・・模様現出用着色剤・・・」なる記載に基づき、請求項1の「着色剤」を限定するものであり、訂正事項(い)は、請求項を削除するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項(う)〜(か)は、特許請求の範囲の記載に対応する部分の明細書の記載を、特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第134条第2項ただし書、及び同条第5項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件特許発明に係る特許に対する判断
3-1.本件特許発明
前記訂正により、訂正前の請求項1は減縮され、請求項2は削除されたので、本件特許に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであり、平成15年5月9日の口頭審理において陳述されたとおりの、請求項1に記載された素材をそこに記載された処理剤で後処理したものである。
「未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とし、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤。」

3-2.請求人の主張
請求人1は、(1)訂正前の請求項1、2に係る特許発明は、証拠方法2〜4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができないものであり、(2)訂正前の請求項1、2に係る特許発明は、証拠方法1〜5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と主張し、
請求人2は、(3)訂正前の請求項1、2に係る特許発明は、証拠方法6に記載された発明と証拠方法7〜11に記載された内容に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、(4)訂正前の請求項1、2に係る特許発明は、証拠方法12、またはさらに証拠方法13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、(5)明細書の段落番号0018の記載は、請求項1の記載と矛盾し、特許法第36条第4項に規定する要件を満足するものでなく、(6)平成10年9月1日付けの訂正に係る、明細書の段落番号0017の「外部滑剤」を「滑剤」とする訂正は、証拠方法14、15の記載からみて、特許請求の範囲を拡張するものであるから、平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に違反してなされたものである、と主張し、
それぞれ、本件の特許は無効とされるべきであると主張する。
そして、請求人1、2および被請求人は、以下の証拠方法を提示した。
証拠方法1:特開平4-146266号公報(請求人1の甲第1号証)
証拠方法2:繊維学会編「繊維便覧-加工編-第2版第6刷」丸善株式会社(平成3年7月10日発行)p.990(請求人1の甲第2号証)
証拠方法3:飯沼憲政著「フロック加工の実際(初版第2刷)」株式会社高分子刊行会(昭和60年2月10日発行)p.118,130,132〜135(請求人1の甲第3号証)
証拠方法4:米国特許第5,187,202号明細書(請求人1の甲第4号証)
証拠方法5:繊維学会編「繊維便覧-原料編-第2刷」丸善株式会社(昭和45年10月30日発行)p.411(請求人1の甲第5号証)
証拠方法6:特開昭53-63442号公報(請求人2の甲第2号証)
証拠方法7:飯沼憲政著「フロック加工の実際(初版第2刷)」株式会社高分子刊行会(昭和60年2月10日発行)p.1、97、104、105、111〜114、119、122、123、126〜137、157〜160(請求人2の甲第3号証の1)
証拠方法8:証拠方法1に同じ(請求人2の甲第3号証の2)
証拠方法9:株式会社金原パイル工業の証明書、請求人2の甲第3号証の3)、
証拠方法10:水口寿生編「珪素の化学工業」化学工業時報社出版部(昭和59年11月10日発行)p.47〜51、61〜63(請求人2の甲第3号証の4)、
証拠方法11:「合成樹脂工業 4/90 VOL.37.No.4」(株)合成樹脂工業新聞社(平成2年4月10日発行)、p.174〜175(請求人2の甲第3号証の5)
証拠方法12:特開平3-12435号公報(請求人2の甲第4号証の1)
証拠方法13:証拠方法4に同じ(請求人2の甲第4号証の2)
証拠方法14:牧廣他著「図解プラスチック用語辞典」(株)日刊工業新聞社(昭和59年1月31日初版2刷発行)p.109(請求人2の甲第5号証の1)、
証拠方法15:「マグローヒル 科学技術用語大事典 第3版」(株)日刊工業新聞社(1996年9月30日発行)p.298(請求人2の甲第5号証の2)。
証拠方法16:試験報告書(平成14年11月14日)(請求人1に対する乙第1号証)
証拠方法17:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典2オカキ」(初版):昭和37年6月15日第2刷発行:共立出版株式会社発行:738一739頁、「コロイドけいさん-珪酸」の欄(請求人1に対する乙第2号証)
証拠方法18:扶桑化学工業株式会社ホームページ:「超高純度コロイダルシリカ」及び「コロイダルシリカとは」:ホームページアドレス:http://www.fusokk.co.jp/cs/goods/goodssyousai/1131.html、及びhttp://www.fusokk.co.jp/cs/jigyoubu/electric2一body.html:2002年9月18日(請求人1に対する乙第3号証)
証拠方法19:飯沼憲政著:「フロック加工の実際」:昭和60年2月10日第2刷発行:高分子刊行会刊:目次、1頁及び134頁〜136頁(請求人1に対する乙第4号証)
証拠方法20:点描調と御影石調との模様の違い(請求人1に対する乙第5号証)
証拠方法21:東リ(株)(塩ビ床材等)、広島化成(株)(ゴム床材等)小津塗料工業(株)(塗料)宛の請求人発行請求書の控(請求人1の参考資料の1)
証拠方法22:コロイダルシリカの滑剤効果及び乙1号証追試に関する試験成績書及びその製造サンプル(愛知県産業技術試験所)(請求人1の参考資料の2A)
証拠方法23:2A着色剤混入成形体サンプル(名南サービス(株)製造)(請求人1の参考資料の2B)
証拠方法24:天然花崗岩のサンプル(請求人1の参考資料の3)
証拠方法25:平成10年審判第35124号における甲第1号証特開平03-012435号公報(請求人1の参考資料の4)
証拠方法26:繊維学会編「繊維便覧-原料編-」丸善(昭和45年10月30日第2刷発行)p.531、618〜619、673、744〜745、826(請求人1の参考資料の5)
証拠方法27:特開昭49-000564号公報(請求人1の参考資料の6)
証拠方法28:特開昭49-085400号公報(請求人1の参考資料の7)
証拠方法29:小田良平他著「繊維用油剤」日本繊維機械学会(昭和49年9月1日)p.227(請求人1の参考資料の8)
証拠方法30:飯沼憲政著「フロック加工の実際」高分子刊行会(昭和60年2月10日第2刷)p.105〜109、132〜137、147〜150、157〜158(被請求人の請求人1、2に対する参考資料1)
証拠方法31:ダイセル・ヒュルス株式会社の「ナイロン12樹脂ダイアミドR 射出成形」に係るカタログ、p.10(被請求人の請求人1、2に対する参考資料2)
証拠方法32:三菱レイヨン株式会社の「アクリベットR アクリコンR」に係るカタログ:(被請求人の請求人1、2に対する参考資料3)
証拠方法33:電気化学工業株式会社の「デンカABS」に係る総合カタログ、p.7(被請求人の請求人1、2に対する参考資料4)
証拠方法34:試験報告書(平成14年11月14日)(被請求人の請求人2に対する乙第1号証)
証拠方法35:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典2 オカキ」共立出版株式会社(昭和37年6月15日初版第2刷)p.738〜739「コロイドけいさん-珪酸」の欄(被請求人の請求人2に対する乙第2号証)
証拠方法36:扶桑化学工業株式会社ホームページ「超高純度コロイダルシリカ」及び「コロイダルシリカとは」(ホームページアドレス:http://www.fusokk.co.jp/cs/goods/goods_syousai/113_1.html、及びhttp://www.fusokk.co.jp/cs/jigyoubu/electric2_body.html、2002年9月18日(被請求人の請求人2に対する乙第3号証)
証拠方法37:甲第4号証の2の和訳文(被請求人の請求人2に対する乙第4号証)
証拠方法38:点描調、御影石調、マーブル調の模様の違い(平成14年11月15日)(被請求人の請求人2に対する乙第5号証)
証拠方法39:被請求人の請求人2に対する乙第1号証(証拠方法34)の実験を検証するため請求人会社において実施した実験結果を示す報告書(請求人2の甲第6号証)
証拠方法40:フェノチアジン誘導体事件判決記事(写)(請求人2の甲第7号証の1)
証拠方法41:あられ菓子事件判決記事(写)(請求人2の甲第7号証の2)
証拠方法42:クリップ事件判決記事(写)(請求人2の甲第7号証の3)
証拠方法43:試験サンプル(現物) 検乙1の1及び1の2(本件発明により得られた着色剤とポリプロピレン樹脂とをミキサーで混合したもの、及び混合物を成形して得たプレート)(被請求人の請求人2に対する検乙第1号証)
証拠方法44:試験サンプル(現物) 検乙2の1、2の2、及び2の3(滑剤を使用せずに帯電防止剤のみで処理した着色剤とポリプロピレン樹脂とをミキサーで混合したもの、当該混合時に発生する糸玉、及び混合物を成形して得たプレート)(被請求人の請求人2に対する検乙第2号証)
証拠方法45:試験サンプル(現物) 検乙3の1、3の2、及び3の3(帯電防止剤及び滑剤で処理しないレーヨン糸とポリプロピレン樹脂とをミキサーで混合したもの、当該混合時に発生する糸玉、及び混合物を成形して得たプレート)(被請求人の請求人2に対する検乙第3号証)
証拠方法46:試験サンプル(現物) 検乙4(滑剤を使用せずに帯電防止剤のみで処理した着色剤とポリプロピレン樹脂と滑剤とをミキサーで混合し成形して得たプレート)(被請求人の請求人2に対する検乙第4号証)
証拠方法47:試験サンプル(現物の写し) 検乙5(米国特許第5187202号のクレーム追試によるプレート)(被請求人の請求人2に対する検乙第5号証)
証拠方法48:試験サンプル(現物) 検乙6の1及び6の2(米国特許第5187202号の実施例1の混合物、及び混合物を成形して得たプレート)(被請求人の請求人2に対する検乙第6号証)
証拠方法49:試験サンプル(現物) 検乙7の1及び7の2(滑剤を使用せずにコロイダルシリカを使用して処理したレーヨン糸とポリプロピレン樹脂とをミキサーで混合したもの、及び混合物を成形して得たプレート)(被請求人の請求人2に対する検乙第7号証)

3-3.各証拠方法の記載
証拠方法1(特開平4-146266号公報):
「本発明は、植毛用パイルや、プラスチックスまたはゴムなどに混和する短繊維などに関する。」(1頁左下欄12〜13行)、
「従来、植毛用パイルや、プラスチックスまたはゴムなどに混和する短繊維など(・・・)は、天然繊維や人造繊維を切断、または粉砕(以下、単に切断という)して製造し、通常、そのままの状態で使用していた。ときに何らかの処理を加えることもあるが、それは繊維表面の帯電防止、「ぬれ」性の向上、接着性の改良や、パイルを使用した製品を柔軟化するためのものであった。」(1頁左下欄20行〜同頁右下欄4行参照)
「パイルは、1本づつがばらばらになっていることが取扱い上も、パイルを使用した製品の品質にとっても好ましい。しかし、パイルは、往々にして相互に絡み合って、フロック(羽毛状の団塊)を形成し、取扱い上の障害になったり、製品の均一性を低下せしめている。」(1頁右下欄8〜14行)
「パイルがフロックを形成する原因は、一つにはパイルの静電気にあることが知られていて、従来から必要に応じ、パイルに帯電防止処理を施していた。しかし、帯電防止処理を施したパイルにあってもフロック形成が少なからず発生し、生産性と品質向上を阻害していた。本発明の目的は、フロックを形成しにくいパイルを提供することにある。」(2頁左上欄3〜10行)
「本発明者は、パイルの分散性を改良するために、フロックの形成原因を仔細に追求した結果、パイルの微細形状に問題のあることを突き止めた。すなわち、パイルを製造するために、繊維を切断すると、繊維の切断された端面に、たとえば釘頭状の扁平突起部分が形成され、これがパイルの良好な分散を阻害していることが判明した。」(2頁左上欄19行〜同頁右上欄5行)
「繊維を切断、または粉砕して製造されたパイルにおいて、切断または粉砕によって発生しているパイル端面の扁平突起部分を、薬液処理によって除去したことを特徴とする分散性を向上したパイル」(特許請求の範囲)
「実施例1 3デニールのポリエステル繊維をギロチンタイプのカッターで長さ1mmに切断し、パイルに加工した。・・・、このパイル1kgを・・・水酸化ナトリウム水溶液中に、約30分間浸漬した。浸漬後、パイルを水洗、中和し、脱水、乾燥した。・・・。得られた処理パイルを走査型電子顕微鏡で観察したが、・・・切断面の扁平突起部は消失していた。・・・、この処理パイルを、シリカゲル(・・・)30cc/リットル、珪酸ソーダ10cc/リットル、ぎ酸5cc/リットル、カチオン系界面活性剤0.3cc/リットルを混合した水溶液に浸漬した後、脱水、乾燥して植毛用パイルに加工した。」(3頁左上欄8行〜同頁右上欄11行)。

証拠方法2(繊維学会編「繊維便覧-加工編-第2版第6刷」):
「6・4 フロック加工布 接着剤を塗布した基布にフロック(flock、毛羽、パイルともいう)を散布、吹付、振動あるいは高電圧の静電気を利用して固着したものである。これらの方法のうち静電現象を利用する方法がおもに用いられるので静電植毛、電気植毛、あるいは単に電着とも呼んでいる。 6・4・1 パイル 粉砕パイルを除き一般にナイロン、レーヨンのトウを切断し、染色後電場で飛昇しやすいように前処理する。パイルの・・・飛昇をよくするには繊維が剛直で、電気的に良導体であること、繊維表面がなめらかであることが必要である。このため普通、無機塩類2〜8%(ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなど)、界面活性剤0.1〜2.0%(アニオン系、カチオン系、両性系)、有機ケイ素(コロイダルシリカ)の混合液を用いて前処理する。有機ケイ素は分離をよくする効果がある。パイル長は衣料用には0.5〜1.0mm、資材用には0.5〜2.0mm、敷物用には3.0〜8.0mm(15d程度)が普通である。」(990頁24〜36行参照)。

証拠方法3(飯沼憲政著「フロック加工の実際(初版第2刷)」):
現在使用されているパイルのデニールと長さは、例として、レーヨンでは0.7〜15デニール、長さ0.3〜5.0mm、ナイロンでは0.7〜80デニール、長さ0.3〜10.0mmであること(118頁9〜27行参照)
「9 パイルの電着処理 9-1 パイルの電着処理 ・・・カット・染色された短繊維に、電気的に作用する薬品を、付着あるいは吸着させ、良好な飛昇効果を持たせるのが、このパイル電着処理の目的になるのである。パイルが電界内において良好な飛昇効果を保つためには、・・・適当な処理剤で、人為的に良好にさせる必要があるわけである。通常処理剤としては、無機塩類、各種界面活性剤(帯電防止効果を持つもの)有機珪素、などがあり、これらは単独または数種の併用によって使用される。・・・。1)電気伝導度・誘電率 ・・・。2)分離性 処理されたパイルが、電気的に満足であってもパイル相互の分離(分散)が容易に行われなければ、パイル同志が絡みあいを生じ、飛昇性が妨げられる。分離性は、電着処理剤、粘着、吸湿、などによって左右される。無機塩類・有機珪素・などの使用では、比較的分離性は良好であるが、繊維によっては、十分満足する電着効果をあげ得ることができない事があり、最近では各種界面活性剤の利用というものが普通になっている。疎水性繊維の場合、活性剤の多くは単独使用では分離性に問題があり(活性剤の“ぬめり”が生じ、分離性が悪い)、無機塩類・有機珪素・の併用で、適度の分離性を保持させている。」(132頁1行〜133頁22行参照)。

証拠方法4(米国特許第5,187,202号明細書):
「熱可塑性支持体に模造石効果を与えるためのコンセントレート」(1欄2〜4行参照)
「クレーム1.約10〜125ミルの長さおよび約1〜約25デニールの繊度を有するセルロース短繊維またはフロックと、シリコーン液、グリセロール可塑剤、エポキシ可塑剤、脂肪酸の金属塩、ワックス、およびこれらの2つまたはそれ以上の混合物から選ばれる少なくとも1つの分散補助剤、とを含む添加剤コンセントレート。
クレーム2.(A)約80重量%までの少なくとも1つのキャリヤー;(B)約10〜125ミルの長さおよび約1〜約25デニールの繊度を有するセルロース短繊維またはフロック少なくとも約5重量%;および(C)シリコーン液、グリセロール可塑剤、エポキシ可塑剤、脂肪酸の金属塩、ワックス、およびこれらの2つまたはそれ以上の混合物から選ばれる少なくとも1つの分散補助剤少なくとも約1重量%、を含む添加剤コンセントレート。
クレーム3.キャリヤー(A)が、約50重量%までの量で存在する少なくとも1つの無機充填剤を含んでいる、クレーム2に係る添加剤コンセントレート。
クレーム4.キャリヤー(A)が、少なくとも約20重量%の量で存在する少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含んでいる、クレーム2に係る添加剤コンセントレート。
クレーム11.少なくとも1つのカップリン剤(D)が2重量%の量で存在する、クレーム2に係る添加剤コンセントレート。」(8欄13〜63行参照)
「この組成物が、任意にその他の通常の成分、例えば充填剤、補強材料、難燃剤、UV安定剤、酸化防止剤、顔料、染料、帯電防止剤、離型剤等を含むことも、本発明の範囲内にある。」(5欄30〜34行参照)
「成分(A)、(B)、(C)、および、任意に(D)および他の任意添加剤を含む模造石添加剤コンセントレートは、当業者によく知られている技術によって調製することができる。例えば特に有用な方法は、これらの成分と添加剤とを均質に混合することである。均質に混合するとは、この混合物が連続または主たる相中に最終的に分割されかつ均質に分散された分散相を生じるのに十分な機械的剪断および熱エネルギーをもって調製することを意味する。・・・。これらは例えば、通常の混合装置、例えば高速ミキサー(ヘンシェル)、微粉砕機(mill)、バンバリーミキサー、ブラベンダートルクレオメークー等である。例えばドライカラー添加剤コンセントレートは、高剪断ミキサーにおいてグラニュール粒および/または粉末の形態でこれらの成分を均質混合することによって調製することができる。その他の適切な混合装置には、ディスクパックプロセッサーおよび様々な種類の押出し装置が含まれる。後者には、連続ミキサー;一軸スクリュー混練押出し機;前進ねじ付き配合機、円筒ブッシュ、および/または左ねじ要素が含まれるスクリューを有する、逆転非かみ合い二軸スクリュー押出し機;同時回転かみ合い二軸スクリュー押出し機;および混練ブロック要素の1つまたはそれ以上のセクションが含まれるスクリュを有する押出し機が挙げられる。押出し装置の種類に応じて、ブレンド、混合、および/または押出しのうちの1つまたはそれ以上が、同じコンセントレートに対して用いられてもよい。1つの実施態様において、本発明の模造石べレット化コンセントレートは、少なくとも約20重量%であって約80重量%までの少なくとも1つの熱可塑性キャリヤー(A)、少なくとも約5重量%であって約30重量%までのセルロース短繊維またはフロック(B)、少なくとも約5重量%であって約10重量%までの少なくとも1つのワックス(C)、0〜約2重量%までのカップリング剤(D)、および0〜約40重量%の任意添加剤および/または充填剤を溶融ブレンドすることによって調製されてもよい。」(5欄41行〜6欄12行参照)
「実施例5 支持体熱可塑性ポリマー(LDPF)を、下記のように実施例3のペレット化コンセントレートとブレンドする。」(7欄59〜62行参照)。

証拠方法5(繊維学会編「繊維便覧-原料編-第2刷」)
「繊維油剤(仕上剤) 繊維に対して整経、紡績、製編、染色その他の工程を円滑に行ないうるような性質を与えるために付与するものである。従って柔軟性、平滑性、適当な摩擦性、帯電防止性など、幾多の要求が目的別に存在し、おのおの目的に適合した仕上剤が使用されている。従来レーヨン工業において使用される仕上剤は高級アルコール系の硫酸エステルを主体とし、これに中性油を配合したものが大部分であったが、最近では非イオン系のものが適宜配合使用され、ときによっては両性活性剤なども使用されるようである。」(411頁1〜7行)。

証拠方法6(特開昭53-63442号公報、請求人2の甲第2号証):
「特許請求の範囲 (1)合成樹脂単独或いはこれに更に合成ゴムを配合したものを主体とする基体ペーズトに対して発色材として、この基体ペーズトとは異色に着色された有機化学繊維の短繊維を加えてこの短繊維を上記ペーズト中に分散懸架せしめたことを特徴とする合成樹脂系塗床用組成物。・・・(6)発色材の繊維長が0.1〜7.0mm、太さ0.5〜50DY(デニール)である特許請求の範囲第1項又は第5項記載の組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明は合成樹脂系の流し塗り展べ用床塗料に着色せる有機化学繊維の短繊維からなる発色材を分散懸架させることによって、従来、此種床塗料に於いては表現し得なかった特異な繊維による色柄模様を与えようとするものである。」(2頁左上欄15〜19行)
「本発明に於ける発色材となる有機化学繊維の短繊維とは、・・・等の合成繊維又はセルロース系再生繊維(・・・)、タンパク質系再生繊維(・・・)、半合成繊維(・・・)を含み[・・・]、その繊維長は0.1〜7.0mmの範囲のものに、望ましくカットされたものである。ただし本発明の短繊維とは繊維講学上の長繊維に対する短繊維の分類上の実際長に限定されるものではなく、基体ペースト中で分散を阻害するような編倚的な絡みや、集塊を生ずることのない同時に塗床表面より毛羽立ちをもたらさないような比較的短い繊維長と解されるべきである。これらの短繊維は、また、基体ペースト内に於ける帯電防止の見地から、少なくとも、一般に適用されている帯電防止手段が採られるべきであり、一例を挙げると界面活性剤による処理液[・・・]中に繊維を浸漬して后取上げた后絞溢乾燥する。この短繊維のペースト中に於ける分散懸架性を支援するための分散付与や凝集防止の夫々の処理は、上記帯電防止と共に好ましく採択されるものであるが、このような諸処理を本発明遂行のために、特別に行なう必要はなく、好都合にも、市販の静電電着加工用の合成繊維、即ち、静電植毛に使用される着色された合成短繊維を適用することが出来るもので、所望長へのカッティングをこれら植毛用繊維に自由に施せば、、市販ルートより本発明発色材が製造され得る。・・・本発明の基体ペーストと組み合わせて更に次のような特筆されるべき点がある。即ち、(イ)比重特性・・・基体ペースト中におけるこの合成短繊維の・・・比重のバランスを適切なものとする必要がある・・・。(ロ)形状材質特性・・・形状的なものと・・・材質的なこととによってペースト中で・・・適度な分散性を有するものである。」(3頁左上欄12行〜同頁右下欄11行参照)

証拠方法7(飯沼憲政著「フロック加工の実際(初版第2刷)」、請求人2の甲第3号証の1):
「9 パイルの電着処理 9-1 パイルの電着処理 ・・・カット・染色された短繊維に、電気的に作用する薬品を、付着あるいは吸着させ、良好な飛昇効果を持たせるのが、このパイル電着処理の目的になるのである。パイルが電界内において良好な飛昇効果を保つためには、・・・適当な処理剤で、人為的に良好にさせる必要があるわけである。通常処理剤としては、無機塩類、各種界面活性剤(帯電防止効果を持つもの)有機珪素、などがあり、これらは単独または数種の併用によって使用される。・・・。1)電気伝導度・誘電率 ・・・。2)分離性 処理されたパイルが、電気的に満足であってもパイル相互の分離(分散)が容易に行われなければ、パイル同志が絡みあいを生じ、飛昇性が妨げられる。分離性は、電着処理剤、粘着、吸湿、などによって左右される。無機塩類・有機珪素・などの使用では、比較的分離性は良好であるが、繊維によっては、十分満足する電着効果をあげ得ることができない事があり、最近では各種界面活性剤の利用というものが普通になっている。疎水性繊維の場合、活性剤の多くは単独使用では分離性に問題があり(活性剤の“ぬめり”が生じ、分離性が悪い)、無機塩類・有機珪素・の併用で、適度の分離性を保持させている。」(132頁1行〜133頁22行参照)
「9-2 パイルの電着処理に使用される薬品 電着処理に使用される薬品としては、前に述べたように、・・・などの条件を満たすことができるものであることが必要で、次のように各種繊維により適当に配合されて用いられる。a)無機塩類 塩化ナトリウム(・・・)・塩化バリウム(・・・)・塩化マグネシュウム(・・・)・硫酸マグネシュウ(・・・)・珪酸ソーダー(・・・)・炭酸ソーダ(・・・)・硫酸ナトリウム(・・・)など b)界面活性剤(帯電防止効果のあるもの) アニオン活性剤(陰イオン) ノンイオン活性剤(非イオン) 両性活性剤 c)有機珪素 コロイダルシリカ d)その他 アルミナゾル」(134頁下から2行〜135頁14行参照)
「2 パイルとしての具備条件・・・・・101 1)繊維にねじれ・彎曲のないこと・・・・・101 2)カッティングにおいて融着がおきないこと・・・・・102 3)染色が容易であること・・・・・104 4)接着性のよいこと・・・・・105 5)繊維の軟化点が130℃以上であること・・・・・106 6)電着処理が容易におこない得るとともにその効果が満足に発揮できるもの・・・・・107 7)価格が適当であること・・・・・109 9 パイルの電着処理・・・・・132 9-1 パイルの電着処理・・・・・132 9-2 パイル電着処理に使用される薬品・・・・・134」(目次ページ参照)。

証拠方法8(証拠方法1に同じ、請求人2の甲第3号証の2)

証拠方法9(株式会社金原工業の証明書、請求人2の甲第3号証の3):
株式会社金原工業は染色したパイルを製造販売している製造メーカーであること。
静電植毛用パイルとプラスチック着色剤使用メーカーに納入するパイルは、平成5年3月16日以前から、繊維材料、繊維径、繊維長さ、色、処理剤など同一の品種の原料を使用し、同一の加工方法で製造された、同じ品質の製品であること。

証拠方法10(水口寿生編「珪素の化学工業」、請求人2の甲第3号証の4)
「1900年初頭に至り有機ケイ素化学の基礎を築いたNottinngham大学のF.S.Kipping教授らの研究により、シロキサン結合を主鎖とする有機ケイ素重合物に対して始めてシリコーンの名称が与えられた。」(47頁右欄5〜9行)
「シリコーンにはオイル、エラストマーおよびレジンの3態がある。・・・。我国における用途分野は機械、電気電子、輸送機器、建築建材、化学、ゴムプラスチック、塗料、油剤、紙パルプ、医用品、化粧品、食品、日曜雑貨等とあらゆる産業分野に及んでいる。」(48頁右欄34行〜49頁左欄3行参照)
「シリコーンの界面特性も特長的で、撥水性、消泡性、離型性にすぐれている。」(50頁右欄2〜4行)
「シリコーンの特性を効果的に利用している事例としては撥水、離型、電気絶縁、繊維処理、顔料表面処理、・・・・等が挙げられる。」(50頁右欄15〜20行参照)
「シリコーンはすぐれた光沢性、耐候性を持っているのでポリッシュとして自動車、床、家具等に賞用されている。基本的には有機ワックス、シリコーン、研磨剤、乳化剤、溶剤および水からなるエマルション型処理剤が使用に便で効果的である。」(51頁左欄32〜37行)。

証拠方法11(「合成樹脂工業 4/90 VOL.37.No.4」、請求人2の甲第3号証の5)
「特集II プラスチック着色剤の新たな展開と応用事情 マーブル調模様着色剤」(174頁上欄参照)
「今までに知られている高級化=脱プラスチック・イメージの外観を得るための手段としては、メッキ、塗装、印刷などの2次加工法とは別に、・・・。3)アルミフレーク、パイル等を顔料と併用して御影石調の風合いを得る。・・・。などの方法が直接成型法として知られている。」(174頁右下欄2〜14行参照)。

証拠方法12(特開平3-12435号公報、請求人2の甲第4号証の1)
「着色短繊維による斑点又は斑線模様を有する加硫ゴム組成物」(特許請求の範囲参照)
「着色後、帯電防止のため処理を施されたものの使用が好ましい。又繊維にゴムとの接着性を向上させるための処理を施されたものの使用が好ましい。」(2頁左下欄11〜14行)
実施例 表1 SBR ステアリン酸 ナイロン繊維黒15デニール0.5mm長さ等を配合して床材を製造すること。

証拠方法13:証拠方法4に同じ(請求人2の甲第4号証の2)

証拠方法14(牧廣他著「図解プラスチック用語辞典」、請求人2の甲第5号証の1):
滑剤は型離れをよくする薬剤であり、内部滑剤と外部滑剤があること。

証拠方法15(「マグローヒル 科学技術用語大事典 第3版」、請求人2の甲第5号証の2):
滑剤は、プラスチックの成形中や成形後、ただちにプラスチック表面上に浸出して内部潤滑剤として作用すること。

証拠方法16〜29
(省略)

証拠方法30(飯沼憲政著「フロック加工の実際」高分子刊行会、被請求人の請求人1、2に対する参考資料1):
植毛用パイルとしては、接着性や接着強度に優れ(目次頁、105頁24〜26行、108頁10〜23行参照))、接着強度低下が少ないこと(147頁10行〜148頁19行、158頁6〜7行参照))が望まれること。

証拠方法31〜49
(省略)

3-4.対比・判断
3-4-1.請求人1の(1)、(2)の主張について:
本件特許発明における「5〜100μm」という限定は、特許明細書の「有機繊維は、繊維径(直径)が5〜100μmであり・・・・前記繊維径は、比重が約1.5のレーヨン、同1.38のポリエステル、同1.14のナイロンなどの場合、慣用される繊維の太さとして1〜50デニール(以下、dと略記する)であってよい。」(段落番号0015参照)との記載からみて、レーヨン、ポリエステル、ナイロンについては1〜50デニール程度と解される。
したがって、以下においては、繊維径(直径)5〜100μmは1〜50デニールに相当するとして検討する。

証拠方法1について;
「植毛用パイルやプラスチックまたはゴムなどに混和する短繊維などに関する」と記載され、「3デニールのポリエステル繊維をカッターで長さ1mmに切断し、パイルに加工した。」と記載され、従来技術として、前記短繊維は、ときにその表面に帯電防止、「ぬれ」性の向上、接着性の改良、および製品の柔軟化、のための処理を施して使用される、と記載されていることからみて、証拠方法1には、本件特許発明の「未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とし、表面処理した前記有機繊維」という構成を満足する有機繊維を植毛用パイルやプラスチックまたはゴムなどに混和する短繊維として使用することが記載されているということができる。
しかし、前記「帯電防止、ぬれ性の向上、接着性の改良、および製品の柔軟化、のための処理」との記載は、処理に用いる具体的な薬剤までを示すものでなく、処理の目的からみて、滑剤の使用が示唆されているとすることはできないから、帯電防止剤と滑剤を併用して処理することまで示唆しているとすることはできず、前記従来技術の記載が、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維」という構成を示唆しているとすることはできない。
また、特許請求の範囲には、前記短繊維の団塊化(フロック化)を防止するために、短繊維切断面の扁平突起部を除去する発明が記載されているものの、当該突起部の除去は滑剤処理とは全く別異のものであるから、滑剤の使用を示唆しているとすることはできず、扁平突起部を除去後にカチオン系界面活性剤で処理するとの実施例の記載も、さらに滑剤で処理することを示唆するものでないから、前記発明が、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維」という構成を示唆しているとすることはできない。
さらに、本件特許発明は、「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維」という構成を採用することにより、明細書に記載されたとおりの(段落番号0020、0021、0049、0050、0062参照)、模様現出用着色剤としての使用において、混合槽に付着せず、糸玉といわれるような塊状凝集を起こさず、成形体表面に細密な単繊維がそれぞれ確認できる状態でランダムに分散した点描画風の着色を施すことができ、優れた装飾性をもたらしうるという効果(以下、「本件特許発明効果」という。)を奏したものであるところ、証拠方法1には、短繊維を被着色剤と混合する際の混合機の槽壁への付着や糸玉の発生や装飾性と処理剤の関係について何ら記載するところがないから、証拠方法1に前記した本件特許発明効果が示唆されているとすることはできない。
したがって、証拠方法1が、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維」という構成および前記した本件特許発明効果を示唆しているとすることはできない。

証拠方法2について;
「パイル 粉砕パイルを除き一般にナイロン、レーヨンのトウを切断し、染色後電場で飛昇しやすいように前処理する。」と記載され、「パイル長は衣料用には0.5〜1.0mm、資材用には0.5〜2.0mm、敷物用には3.0〜8.0mm(15d程度)が普通である。」と記載され、「無機塩類2〜8%(ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなど)、界面活性剤0.1〜2.0%(アニオン系、カチオン系、両性系)、有機ケイ素(コロイダルシリカ)の混合液を用いて前処理する。」と記載されていることからみて、証拠方法2には、本件特許発明で素材とする有機繊維(以下、「有機短繊維」という。)を、無機塩類(ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなど)、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性系)および有機ケイ素(コロイダルシリカ)の混合液で処理して、フロック加工布用の短繊維とすることが記載されているといえる。
しかし、フロック加工布用の短繊維は、模様現出用着色剤と異なるものであるから、証拠方法2が、本件特許発明に係る「模様現出用着色剤」を記載しているとすることはできない。
また、無機塩類(ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなど)、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性系)および有機ケイ素(コロイダルシリカ)の混合液で処理するとの記載は、界面活性剤が帯電防止の機能を有するものであることからみて、前記有機短繊維を帯電防止剤と有機ケイ素(コロイダルシリカ)とを併用した処理剤で処理することを示しているといえるものの、当該処理に用いる「有機ケイ素(コロイダルシリカ)」は、無機塩類や界面活性剤で具体例を示すのに用いられている括弧により「コロイダルシリカ」が明記され、有機ケイ素とコロイダルシリカの関係を含めた更なる記載がないことを考慮すると、「有機ケイ素」がシリコーンオイルの上位概念としても用いられることを前提としても、当該「有機ケイ素」と同義であるとすることはできないうえに、前記処理剤により処理された有機短繊維が接着剤を塗布された基布に固着されるフロック加工布に用いられることをも考慮すると、前記した界面活性剤と併用されるとされる「有機ケイ素(コロイダルシリカ)」が滑剤として機能するシリコーンオイルを示唆しているとすることはできない。
したがって、前記した「界面活性剤と有機ケイ素(コロイダルシリカ)との混合液で処理する」との記載が、帯電防止剤と滑剤を併用した処理剤で処理することを示唆しているとすることはできない。
また、「有機ケイ素は分離をよくする効果がある」との記載も、当該「有機ケイ素」を界面活性剤と併用することを示すものでなく、当該「有機ケイ素」が、直前に記載された、界面活性剤と併用するとされる「有機ケイ素(コロイダルシリカ)」の「有機ケイ素」と同義であるとしても、前記したように、その内容は不明であり、シリコーンオイルや滑剤を示唆しているとすることはできないから、前記有機ケイ素に係る記載が、帯電防止剤と滑剤を併用して処理することを示唆しているとすることはできない。。
してみると、証拠方法2が、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維」という構成を示唆しているとすることはできない。
さらに、証拠方法2には、帯電防止剤や滑剤を模様現出用着色剤の処理に使用した場合の効果については何ら記載がなく、帯電防止剤と滑剤を併用した場合の効果について示唆するところもないから、証拠方法2が前記した本件特許発明効果を示唆しているとすることはできない。
よって、証拠方法2が、本件特許発明について記載しているとすることも、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維」という構成、および前記した本件特許発明効果を示唆しているとすることもできない。

証拠方法3について;
「パイルのデニールと長さは、例として、レーヨンでは0.7〜15デニール、長さ0.3〜5.0mm、ナイロンでは0.7〜80デニール、長さ0.3〜10.0mmである」と記載され、「カット・染色された短繊維に、電気的に作用する薬品を、付着あるいは吸着させ、良好な飛昇効果を持たせるのが、このパイル電着処理の目的になる・・・。最近では各種界面活性剤の利用というものが普通になっている。疎水性繊維の場合、活性剤の多くは単独使用では分離性に問題があり(活性剤の“ぬめり”が生じ、分離性が悪い)、無機塩類・有機珪素・の併用で、適度の分離性を保持させている。」と記載されているから、証拠方法3には、本件特許発明の前記有機短繊維の表面を、電界内における良好な飛昇効果を持たせるべく、界面活性剤と有機珪素で処理して、フロック加工布用の短繊維とすることが記載されているといえる。
しかし、フロック加工布用の短繊維は、模様現出用着色剤と異なるものであるから、証拠方法3に、本件特許発明が記載されているとすることはできない。
また、前記「有機珪素」は、以下の理由により、シリコーンオイルを示しているとすることができず、シリコーンオイルが滑剤として機能することを考慮しても、前記「有機珪素」が滑剤を示唆しているとすることができないうえに、証拠方法3には模様現出用着色剤と処理剤の関係について記載するところもないから、証拠方法3が、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維」という構成および前記した本件特許発明効果を示唆しているとすることはできない。
すなわち、前記「有機珪素」は、界面活性剤の“ぬめり”により分散性が悪くなるとの問題を解消するために用いるとされるものであるから、“ぬめり”の解消に役立つと考えられないオイル状のシリコーンオイルを包含すると解することができないうえに、証拠方法3として引用された頁に続く頁(p.134〜135、下記証拠方法7参照)には、前記電着処理で使用する薬品を具体的に説明するとして、「a)無機塩類 塩化ナトリウム(・・・)・塩化バリウム(・・・)・塩化マグネシュウム(・・・)・硫酸マグネシュウ(・・・)・珪酸ソーダー(・・・)・炭酸ソーダ(・・・)・硫酸ナトリウム(・・・)など b)界面活性剤(帯電防止効果のあるもの) アニオン活性剤(陰イオン) ノンイオン活性剤(非イオン) 両性活性剤 c)有機珪素 コロイダルシリカ d)その他 アルミナゾル」と記載され、前記「有機珪素」に対応するものとして「c)有機珪素 コロイダルシリカ」が記載されているところ、「a)無機塩類」、「b)界面活性剤(帯電防止効果のあるもの)」、「d)その他」等の欄では具体例が示されている部分に、「c)有機珪素」の欄では、「コロイダルシリカ」が記載され、「コロイダルシリカ」が独立した欄とされていないことからみて、前記「有機珪素」は、コロイダルシリカを具体例とするものとも解され、シリコーンオイル等の上位概念として用いられることのある「有機ケイ素」と異なるとも解されるから、前記「有機珪素」がシリコーンオイルを包含するものとして使用されていると断定することはできない。
さらに、前記フロック加工は短繊維を接着剤が塗布された基材に固着するものであること、証拠方法3の引用されていない頁には、植毛用の短繊維としては接着性や接着強度に優れ(目次頁、105頁24〜26行、108頁10〜23行、証拠方法7、証拠方法30参照)接着強度低下が少ないこと(147頁10行〜148頁19行、158頁6〜7行、証拠方法30参照))が望まれる旨が記載されていること、短繊維を固着又は接着するに際して、短繊維の表面に固着や接着をし難い処理を施してから固着又は接着することは考え難いこと、証拠方法14には滑剤は型離れをよくする薬剤であると記載されていること、シリコーンオイルは、オイル状であり、証拠方法10に記載されるように離型性に優れたものとして知られていること、を併せ考えると、前記「有機珪素」がシリコーンオイルを示唆しているとすることはできない。

証拠方法4について;
「熱可塑性支持体に模造石効果を与えるためのコンセントレート」と記載され、「約10〜125ミルの長さおよび約1〜約25デニールの繊度を有するセルロース短繊維またはフロック、・・・とを含む添加剤コンセントレート」と記載されているから、証拠方法4には、本件特許発明の前記有機短繊維を模造石効果を与えるための添加剤として用いることが記載されているといえる。
しかし、前記添加剤は、前記有機繊維とキャリヤーと分散補助剤(シリコーン液、グリセロール可塑剤、エポキシ可塑剤、脂肪酸の金属塩、ワックス、およびこれらの2つまたはそれ以上の混合物から選ばれる少なくとも1つ)と他の任意の添加成分(充填剤、補強材料、難燃剤、UV安定剤、酸化防止剤、顔料、染料、帯電防止剤、離型剤等)を含むコンセントレートとして使用されるというもので、通常の混合装置や押出し装置により製造され、ペレットで例示される、一体化された均質な混合物として使用するとされるものであり、表面処理された有機短繊維を分離して模様現出用着色剤として使用することを示唆するものでもない。
また、証拠方法4には、前記有機繊維を帯電防止剤と滑剤で表面処理したときに、どのような効果がもたらされるかについて記載するところはないから、証拠方法4が、本件特許発明効果を示唆しているとすることはできない。
してみると、証拠方法4が、本件特許発明について記載しているとすることはできず、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤」という構成および前記した本件特許発明効果を示唆しているとすることはできない。

証拠方法5について;
繊維に対して整経、紡績、製編、染色その他の工程を円滑に行ないうるような性質を与えるために中性油や界面活性剤等の繊維油剤(仕上剤)で処理することが記載されているにすぎず、整経、紡績、製編を必要としない短繊維に前記処理を施すことが必要であるとするものでも、得られた短繊維を模様現出用着色剤として使用することを示唆するものでもない。
また、模様現出用着色剤と処理剤の関係について記載するところもないから、証拠方法4が、前記した本件特許発明効果を示唆しているとすることはできない。
したがって、証拠方法5が、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤」という構成および前記した本件特許発明効果を示唆しているとすることはできない。

むすび
してみると、証拠方法1〜5のいずれにも、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤」という構成および前記した本件特許発明効果についての記載も示唆もなく、証拠方法1〜5を総合しても、当該構成および効果が当業者にとって容易であったとすることはできない。
以上のとおりであるから、本件特許発明が、証拠方法2〜4に記載された発明であるとすることも、証拠方法1〜5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
なお、請求人1は、本件特許発明は、実質的な効果を奏しない場合を含むから、当業者が容易に発明できたものであるとも主張するが、前記したとおり、本件特許発明の構成は当業者に容易に想到できるものでないうえに、提示されたいずれの証拠方法からも予期し得ない効果を奏しているのであるから、前記主張は採用できない。
よって、請求人1の、本件特許発明は特許法第29条第1項または第2項の規定により特許を受けることができないものであるとの主張は、採用することができない。

3-4-2.請求人2の主張について:
3-4-2-1.前記(3)の主張について:
証拠方法6には、繊維長が0.1〜7.0mmで、太さ0.5〜50デニールの着色短繊維からなる色柄模様付用の発色材に係る発明が記載され、前記着色短繊維にはペースト内に於ける帯電防止のための処理と分散懸架性を支援するための分散付与や凝集防止の処理を施すことが好ましいことが記載されている。
そして、前記繊維長および太さは「繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mm」に包含され、「色柄模様付用の発色材」は「模様現出用着色剤」に相当するものである。
してみると、証拠方法6には、「未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維に帯電防止処理と分散懸架性を支援するための処理を施した模様現出用着色剤」に係る発明が記載されているといえる。
しかし、前記した分散懸架性を支援するための処理については、分散付与や凝集防止の処理であるとする以外に、具体的な説明はなく、当該処理が、一般に、界面活性剤等による帯電防止処理に加えて滑剤で処理することを示すとされているわけでもないから、前記処理が滑剤での処理を示唆しているとすることはできず、証拠方法6の前記内容が本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤」を示唆しているとすることはできない。

また、証拠方法6には、前記処理を特別に行う必要はなく、市販の静電電着加工用の合成繊維に所望長へのカッティングを施して前記着色剤とすることができるとの記載もあり、当該記載も、前記着色剤との内容から、本件特許発明の「未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とする模様現出用着色剤」という構成を示しているということができる。
しかし、当該着色剤は、「前記処理を特別に行う必要はなく」というのであるから、前記処理において用いる処理剤が付着しないカッティング面を有すると解されるうえに、前記「市販の静電電着加工用の合成繊維」に施される処理がなされるとしても、以下に示すように、市販の静電電着加工用の合成繊維において、短繊維を帯電防止剤と滑剤で後処理することを示す証拠はないから、当該記載が、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤」を示唆しているとすることはできない。
すなわち、証拠方法6には、前記市販の静電電着加工用の合成繊維の処理について詳細に記載するところはなく、それが帯電防止剤と滑剤による後処理であるとの記載はなく、証拠方法7〜11の記載をみても、証拠方法7は、静電植毛用のパイルの表面を有機珪素と界面活性剤で処理するとするものの、証拠方法3について上記したとおりの理由で、帯電防止剤と滑剤で処理することを示すものとすることができず、証拠方法8は、証拠方法1と同じものであり、パイルの表面を界面活性剤と滑剤で処理することを示すものでなく、証拠方法9は、静電植毛用パイルとプラスチック着色剤用パイルが同一の加工方法で製造されることを証明するものの、加工方法の内容を示すものでなく、証拠方法10は、シリコーンがシロキサン結合を主鎖とする有機ケイ素重合物の名称であり、撥水性、消泡性、離型性に優れ、電気絶縁、繊維処理、顔料表面処理等の多くの分野で用いられることを示すにすぎず、証拠方法11は、パイルと顔料を併用して御影石調の風合いを得ることを示しているにすぎないものであるから、証拠方法7〜11の記載を併せ考えても、前記「市販の静電電着加工用の合成繊維」が、帯電防止剤と滑剤で後処理されることを示唆するとすることはできない。
そして、本件特許発明は、証拠方法6〜11から示唆されない前記構成を採用することにより、前記した本件特許発明効果を奏するものである。

してみると、本件特許発明は、証拠方法6に記載された発明と証拠方法7〜11に記載された内容に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできず、請求人2の前記(3)の主張は採用できない。

3-4-2-2.前記(4)の主張について:
証拠方法12には、着色短繊維による模様を有する加硫ゴム組成物において、着色短繊維に帯電防止処理やゴムとの接着性を向上させるための処理を施した後、着色剤等の各種添加剤と共に混合すること、および、実施例として、ナイロン繊維黒:15デニール0.5mm長さ、添加剤:ステアリン酸を使用することが記載され、着色短繊維は、模様現出用着色剤に相当するから、証拠方法12には、「繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維からなる模様現出用着色剤」という構成を有する点において本件特許発明と共通する発明が記載されているといえる。
しかし、前記ステアリン酸等の添加剤は、着色短繊維と混合して加硫ゴム組成物とするものであり、当該ゴム組成物を着色剤とするものでも、当該ゴム組成物から帯電防止処理やステアリン酸等の添加剤で処理された着色短繊維を分離して着色剤とするものでもないから、証拠方法12に記載の発明が、帯電防止剤とステアリン酸や滑剤で表面処理した着色短繊維を模様現出用着色剤として用いることを示唆しているとすることはできない。
証拠方法13は、証拠方法4と同じものであり、前記したとおりの理由で、有機繊維を界面活性剤と滑剤で後処理して模様現出用着色剤とすることを示唆するものでない。
してみると、証拠方法12、13を総合しても、本件特許発明の「帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤」という構成が示唆されるとすることはできない。

また、本件特許発明は、証拠方法12、13から示唆されない前記構成を採用することにより、前記した本件特許発明効果を奏するものである。

したがって、本件特許発明が、証拠方法12、またはさらに証拠方法13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
よって、請求人2の前記(4)の主張は採用できない。

3-4-2-3.前記(5)の主張について:
明細書の段落番号0018の記載は、前記の訂正により補正され、請求項1の記載と矛盾する点は解消した。
したがって、(5)の主張は理由がない。

3-4-2-4.前記(6)の主張について:
特許請求の範囲で使用する滑剤という用語は、明細書の段落番号0017における滑剤の定義からみて、有機繊維の表面に密着し、繊維同士の絡み合いを防ぐように作用するものであることは明かである。
しかし、前記段落番号0017には、「いわゆる外部滑剤」なる表現も用いられており、証拠方法14、15を参照すると、特許請求の範囲に記載された滑剤という用語は、内部滑剤をも含むとの解釈も可能であることを考慮すると、明細書の記載は、この点で明りょうでないものであったということもできる。
してみると、段落番号0017における「外部滑剤」を「滑剤」とする訂正は、特許請求の範囲に記載された滑剤が前記定義で明らかにされたとおりのものであることを明確にしたものであると解することができ、明りょうでない記載の釈明に該当し、前記訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。
したがって、前記訂正は、特許請求の範囲を拡張するものでなく、平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に違反してなされたものでないから、(6)の主張は理由がない。

4.むすび
以上のとおりであるから、請求人1、2の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
着色剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とし、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、合成樹脂成形品、紙、塗料などに添加する着色剤に関し、特に繊維の色調を模様として現出させる模様現出用の着色剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、合成樹脂、紙、塗料などに添加される着色剤として、無機顔料、有機顔料または染料が知られている。このうち顔料は、被着色基材に分散配合されて光を反射、吸収し所定の色調を付与し、通常、被着色基材を均一な色調で無模様に着色するものである。この種の着色剤の多くは、通常10μm程度の粒子であるが、粒子径が小さいほど表面積は大きくなるので、0.02μm〜5μm程度として着色力を効率良く高めたものが普及している。
【0003】
また、着色剤のうち、染料は、溶解して用いるものであって、被着色基材に色素の粒子が見えることはなく、均一な色調で無模様に着色されるのは、前記した顔料と同様である。
【0004】
本願の発明者は、着色されたものの表面に、斑点または糸状模様を現出させるようにして、商品価値を高めて多様の需要に応じることができる模様現出用着色剤を特開平2-68373号公報で開示した。
【0005】
この着色剤は、ビスコース誘導体のセロハンフィルムまたはビスコースレーヨンを素材とし、その欠点である吸水性を防止するために反応性染料で染色した繊維を適当な長さに揃えて裁断したものであり、混合添加された熱可塑性樹脂成形品に斑点または糸状の模様を現出させることができる。
【0006】
そして、上記した模様現出用着色剤のうち、レーヨンなどの繊維の太さが50デニール以下で1mm以下の微細で短寸の糸状のものは、合成樹脂などの被着色基材に混在した状態で、繊維が成形体表面にランダムに並んで点描画風に着色することができるので、独特の色調を呈する極めて装飾性に富んだ成形品を得ることのできるものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した点描画風の模様現出用着色剤は、被着色材料と混合機で攪拌すると、激しく静電気を発生して混合機の槽壁に強力に付着するので、添加効率が極めて悪いという問題点がある。
【0008】
また、この着色剤は、乾式にて裁断された後、繊維同士が塊状に絡み合って、いわゆる糸玉と呼ばれるようになり、着色剤として効率良く機能しないものであった。
【0009】
このような着色剤は、特に経時的にも安定した品質が要求される塗料やプラスチック添加用の着色剤として利用することは困難である。
【0010】
そこで、この発明は上記した問題点を解決し、所定の太さと長さの有機繊維を用いた模様現出用着色剤を、混合容器に付着しないものとし、しかもそれが糸玉といわれるような塊状凝集を起こさないものとして、効率よく成形体などを点描画風に着色できる着色剤とすることを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とし、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤としたのである。
【0012】
また、上記着色剤は、繊維径が5〜100μmの未染色または染色された有機繊維のトウに含水させ、このトウを繊維長0.1〜2mmに裁断した後、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理することによって製造できる。以下にその詳細を述べる。
【0013】
この発明に用いる有機繊維は、所定の繊維径(直径)と繊維長を有するものであれば、特に限定することなく使用でき、具体的には、綿、絹、カボック、羊毛、亜麻、大麻、ラミ、ジュート、椰子などの天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル、アラミドなどの合成繊維、アセテートなどの半合成繊維、レーヨン、ビニロンなどの再生繊維を挙げることができる。
【0014】
このうち、レーヨン、ビニロン、ポリエステル、アセテートなどの繊維は、延伸することにより、一見して絹のような素晴らしい光沢を備えた着色剤となり、これを用いてパールカラー状の着色を施すことができる。また、黄麻などの糸を染色したり、艶消し糸を使用することにより、艶消しの色調を現出する着色剤とすることもできる。
【0015】
このような有機繊維は、繊維径(直径)が5〜100μmでありかつ繊維長が0.1〜2mmのものを使用する。なぜなら、上記した所定範囲未満の細径かつ短いものでは、点描画風に着色できず一色の単色となるので好ましくなく、これに対して、前記所定範囲を越える大径かつ長いものでは、成形体表面に繊維が並列するので、点描画風に着色できないからである。なお、前記繊維径は、比重が約1.5のレーヨン、同1.38のポリエステル、同1.14のナイロンなどの場合、慣用される繊維の太さとして1〜50デニール(以下、dと略記する)であってよい。
【0016】
この発明に用いる帯電防止剤は、有機繊維の表面に緻密な分子層を形成して電気の表面漏洩抵抗を小さくする、いわゆる帯電防止剤であり、各種の界面活性剤を使用できる。また、水溶性無機物を用いてもよく、このものは、帯電防止性と共に、物理的に繊維同士の接触を妨げる作用もある。具体例としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、または、水溶性無機物としてケイ酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0017】
この発明に用いる滑剤は、有機繊維の表面に密着し、繊維同士の絡み合いを防ぐように作用する滑剤であって、滑剤として公知の脂肪酸またはその塩、高級脂肪族アルコール、脂肪族アマイド、金属石鹸、またはシリコーンオイル、フッ素オイル、植物油、鉱油、合成油を用いることができる。このうち、脂肪族アマイド、脂肪族ビスアマイド、金属石鹸を水系の乳化物として使用して好ましい結果を得ており、また、潤滑油の配合割合は20重量%以下が好ましいことが判明している。
【0018】
以上述べた帯電防止剤と滑剤は、両者併用する。なぜなら、繊維の種類によって静電気の発生率が異なり、または繊維径によって繊維同士の絡み合いの程度が異なるので、最適な状態となるように適宜処理剤を選択することが望ましいからである。特に、10d以下の細い繊維のものは、通常、帯電防止剤と滑剤を併用することが必要である。
【0019】
なお、この発明の着色剤に、所期の効果を阻害しない範囲で、周知の充填剤を添加したり、汎用の顔料を併用してもよいのは勿論である。
【0020】
【作用】
この発明の模様現出用着色剤は、トウの裁断時に含水状態にすることで、裁断時に水が、繊維同士またはその繊維と裁断刃を潤滑して静電気の発生が抑制される。また、被着色基材と混合機で攪拌したとき、添加された帯電防止剤によって、有機繊維に静電気が発生し難いので、混合機の槽壁に付着せずまた飛散せず、添加効率が改善される。裁断された有機繊維は、滑剤を介して繊維同士が潤滑されるので、塊状に絡み合わず、いわゆる糸玉が発生しない。
【0021】
したがって、所定の太さと繊維長を有する極めて微細な繊維状の着色剤として、繊維が成形体表面にランダムに分散し、点描画風に着色する機能が極めて優れた着色剤となる。さらに、このような着色剤は、塗料添加用の着色剤としても安定した品質を保つ。
【0022】
【実施例】
〔実施例1〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に水分を含ませて、約50重量%含水品とし、これを裁断機で長さ0.5mmに裁断した。
【0023】
上記裁断された繊維を材料として、次の▲1▼〜▲4▼に示す手順および組成比率で染色を行なった。
【0024】
(a-1)染色工程
▲1▼ 水800gにケイ酸ナトリウム20gと硫酸ナトリウム30gを溶かして溶液を調整し、前記の裁断した繊維400g(含水率50重量%)を添加した。
【0025】
▲2▼ 40℃に加温した後に反応性染料(日本化薬社製:ブルーRS)5gを入れ、攪拌した。
【0026】
▲3▼ これを脱水した後、水1000gを投入して水洗した後、40℃の温水500gと共に固定剤(日本化薬社製:カヤフィックス)16gを添加して10分間混合し、フィックス処理を行なった。
【0027】
▲4▼ 脱水、水洗(2回)の後、さらに脱水して水分を50重量%とした。
【0028】
上記裁断および染色を経た繊維400gに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0029】

帯電防止剤(日本油脂社製:エレガンT0F100水溶液) 5g
金属石鹸 (旭電化社製:アデカファインエフコデスーパーZ、45%水分散品)
10g
変性シリコーンオイル(東レ社製:SH3746、乳化品) 5g
〔実施例2〕
実施例1において、レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に代えてレーヨン繊維(大和紡績社製:17μm(3d))を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして染色および表面処理を行ない、着色剤を得た。
【0030】
〔実施例3〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に代えて、レーヨン繊維(大和紡績社製:17μm(3d))を用い、さらに染色工程(a)で反応性染料(日本化薬社製:ブルーRS)に代えて反応性染料(日本化薬社製:ミカシオンスカーレットGS)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして染色および表面処理を行ない、着色剤を得た。
【0031】
〔実施例4〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に水分を含ませて、約50重量%含水品とし、これを裁断機で長さ0.5mmに裁断した。
【0032】
上記裁断された繊維を材料として、次の▲1▼〜▲4▼に示す手順および組成比率で染色を行なった。
【0033】
(a-2)染色工程
▲1▼ 水600gに硫酸ナトリウム30gと炭酸ナトリウム14gとを溶かして溶液を調整し、前記の裁断した繊維400g(乾燥重量200g)を添加した。
【0034】
▲2▼ 90℃に加温した後に直接染料(日本化薬社製:グリンGG、ブラウンMA)15gを入れ、40分間攪拌した。
【0035】
▲3▼ これに固定剤(日本化薬社製:カヤフィックスM)10gを添加して10分間混合し、フィックス処理を行なった。
【0036】
▲4▼ 脱水した後、水1000gを投入して水洗した後、さらに脱水して水分を約50重量%とした。
【0037】
上記裁断および染色を経た繊維500gに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0038】

帯電防止剤(日本油脂社製:エレガンT0F100水溶液) 10g
低分子量ポリエチレンワックス(三洋化成社製:パーマリンPN) 25g
金属石鹸 (旭電化社製:ステアリン酸カルシウム、アデカファインエフコデスーパーC)
25g
〔実施例5〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に代えて、レーヨン繊維(大和紡績社製:17μm(3d))を用いたこと以外は、実施例4と全く同様にして染色および表面処理を行ない、着色剤を得た。
【0039】
〔実施例6〕
ポリエステル繊維(ユニチカ社製:32μm(10d)、黒色原着品)に水分を含ませて、約20重量%含水品とし、これを裁断機で長さ1mmに裁断した。
【0040】
上記裁断を経た繊維1000kgに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0041】

帯電防止剤(日本油脂社製:エレガンT0F100水溶液) 2.5g
ラウリン酸(日本油脂社製:NAA-312乳化液) 25g
低分子量ポリエチレンワックス(三洋化成社製:パーマリンPN) 50g
〔実施例7〕
ナイロン6繊維(東レ社製:61μm(30d)、イエロー原着品)に水分を含ませて、約20重量%含水品とし、これを裁断機で長さ2mmに裁断した。
【0042】
上記裁断を経た繊維1000kgに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0043】

ステアリン酸カルシウム(アデカファインエフコデスーパーC) 30g
硫酸マグネシウム 80g
上記した実施例1〜7の有機繊維の種類と染色剤の色調を表1にまとめた。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1、3、6または7を用いてプラスチック成形品を以下の要領で製造し、その色調を調べた。
【0046】
[実験例1]
ポリプロピレン100重量部に対して、流動パラフィン0.3重量部を混合機にて3分間混合し、次いで実施例を1重量部、実施例3を0.3重量部、ステアリン酸亜鉛で分散処理した酸化チタンRを0.5重量部添加して15分間混合し、常法による射出成形にて板状の成形品を製造した。
【0047】
[実験例2]
実施例6の2重量部とカーボンブラック0.3重量部を乾式混合したものに、ポリスチレン100重量部を混合し、さらに流動パラフィン0.3重量部を混合機にて3分間混合し、常法による射出成形にて板状の成形品を製造した。
【0048】
[実験例3]
実施例1の1重量部と、実施例3の1重量部と、実施例7の1重量部と、酸化チタン0.5重量部を乾式混合したものに、低分子量ポリエチレン100重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、さらに流動パラフィン0.3重量部を混合機にて3分間混合し、成形温度180℃の射出成形にて板状の成形品を製造した。
【0049】
この結果、実験例1では、ブルー色とスカーレット色の単繊維がそれぞれ確認でき、点描画風の色調であると共に、見る角度によっては混合色のバイオレット色に着色されていた。
【0050】
また、実験例2では、全体的にカーボンブラックによる黒色系であり、さらに光沢のある黒色の単繊維が点描画風にはっきりと認められる独特の色調に着色されていた。
【0051】
実験例3では、イエロー、ブルー、スカーレット各色の単色が判別でき、見る角度によってグリーンやバイオレットに見える色調であった。
【0052】
この発明の模様現出用塗料の実施例について、以下に述べる。
【0053】
〔実施例8〕
塗料の原材料および配合割合(重量%)を一括して以下に示す。
【0054】
(1)増粘成分;カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学社製:CMC-1150の0.5重量%を50℃の水道水99.5重量%に攪拌しながら混合溶解したもの)
12重量%
(2)混合着色剤;実施例1 0.2重量%
実施例7 0.3〃
酸化チタンR型(堺化学社製) 0.5〃
コーンスターチ(日本コーンスターチ社製) 1.0〃
(3)造膜成分;スチレン・アクリルエマルジョン(Net.49%)(サンデン化学社製:サイピノールE-16)
20.4〃
水 1.8〃
乳化剤(花王社製:レベノールWZ) 0.03〃
造膜助剤(ベンジルアルコール) 1.8〃
(スチレン・アクリルエマルジョンを攪拌しながら先に乳化した水、乳化剤、造膜助剤を徐々に添加した)
(4)凍結防止剤;エチレングリコール 0.5〃
(5)防腐剤;(ICI社製:プロクセルGXL) 0.04〃
(6)防腐剤;(ICI社製:デンシルS-25) 0.02〃
(7)消泡剤;(サンノプコ社製:ノプコ8034L) 0.02〃
(塗料の製造方法)
上記した造膜成分(3)を収容した混合槽に造粘剤(1)を入れ、攪拌しながら混合着色剤(2)を投入し、さらに原料(4)、(5)、(6)、(7)を順次混合してアクリル系エマルジョン塗料を得た。
【0055】
〔実施例9〕
実施例8において、混合着色剤を以下の(8)の成分とした以外は、全く同様にしてアクリル系エマルジョン塗料を得た。
【0056】
(8)混合着色剤;実施例3 0.2重量%
実施例4(グリーン) 0.3〃
実施例4(ブラウン) 0.1〃
〔実施例10〕
塗料の原材料および配合割合(重量%)を一括して以下に示す。
【0057】
(1)混合着色剤;実施例3 0.1重量%
実施例5 0.1〃
実施例6 0.1〃
白の分散カラー(涛和化学社製:ホワイトAE)
0.4〃
(2)パルプ(山陽国策パルプ社製:W200) 6.0〃
(3)消泡剤;(サンノプコ社製:ノプコ8034) 0.32〃
(4)増粘剤;カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学社製:CMC-1150の0.5重量%を50℃の水道水99.5重量%に攪拌しながら混合溶解したもの)
60〃
(5)造膜剤;ウレタンエマルジョン(バイエル社製:DLP、Net.46%)
40〃
(6)防腐剤;(ICI社製:プロクセルGXL) 0.24〃
(7)防徽剤;(ICI社製:デンセルS-25) 0.24〃
(塗料の製造方法)
混合着色剤(1)とパルプ(2)を乾式で混合し、混合槽へ原料(3)、(4)、(5)を投入し、攪拌しながら前記混合された(1)と(2)を投入して10分間混合し、さらに防腐剤(6)、防黴剤(7)を添加して3分間混合してウレタン塗料を得た。
【0058】
[実験例4〜6]
実施例8〜10の塗膜の色調を調べるため、硬質塩化ビニルの清浄面に、各実施例の塗料をそれぞれエアスプレーにて塗装し、50℃で20分間乾燥して塗装した。
【0059】
この結果、実験例4(実施例8の塗料)は、ブルー、イエローの各色が点描画風に認められ、見る角度によってはグリーンに見える装飾性の高い塗膜を形成した。
【0060】
実験例5(実施例9の塗料)は、スカーレット、グリーン、ブラウンのそれぞれの単繊維が肉眼で確認でき、見る角度によってはブラウン系、またはグリーン系の黒色に見える装飾性の高い塗膜を形成した。
【0061】
実験例6(実施例10の塗料)は、ブラック、ブラウン、スカーレットのそれぞれの単繊維が肉眼で確認でき、見る角度によっては黒色系の赤またはブラウンに見える装飾性の高い塗膜を形成した。
【0062】
【効果】
この発明は、以上説明したように、所定の繊維径と繊維長の有機繊維を素材として、帯電防止剤と滑剤を両者併用してこれを表面処理した有機繊維からなる着色剤としたので、合成樹脂、紙、塗料などの被着色用基材に混合した場合に、混合槽に付着せずに添加効率がよく、しかもそれ自体が糸玉といわれるような塊状凝集を起こさないので、被着色物の表面に細密な繊維がランダムに並んで点描画風の色調で着色できる優れた装飾性のある着色剤となり、産業上利用価値の高いものであるといえる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-06-13 
結審通知日 2003-06-18 
審決日 2003-07-04 
出願番号 特願平5-57191
審決分類 P 1 112・ 821- YA (D06P)
P 1 112・ 121- YA (D06P)
P 1 112・ 531- YA (D06P)
P 1 112・ 113- YA (D06P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 西川 和子
佐藤 修
登録日 1995-11-08 
登録番号 特許第1987690号(P1987690)
発明の名称 着色剤  
代理人 歌門 章二  
代理人 浅村 肇  
代理人 歌門 章二  
代理人 湊谷 秀光  
代理人 中尾 充  
代理人 浅村 皓  
代理人 井沢 洵  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 安藤 克則  
代理人 安藤 克則  
代理人 尾崎 雄三  

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