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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07B
管理番号 1111991
審判番号 不服2003-11957  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-26 
確定日 2005-02-10 
事件の表示 平成 9年特許願第233433号「非接触式自動改札機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月16日出願公開、特開平11- 73529〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月29日の出願であって、平成15年5月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月26日に審判請求がなされるとともに、同日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正書が提出されたものである。

2.平成15年6月26日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年6月26日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 非接触式自動改札機の本体を構成する筐体の改札通路の入口側に設けられたアンテナを介して非接触式カードとの間で非接触式でデータの授受を行って入出場を行う非接触式自動改札機において、
前記アンテナを外部から目視可能に設けるとともに、そのアンテナの設置部分に照明部を設け、その照明部は入出場を許可するときは、例えば青色に照明し、入出場を不許可とするときは、入出場を許可するときと異なる照明色、例えば赤色に照明するものであることを特徴とする非接触式自動改札機。」
と補正された。

上記補正は、出願時の明細書の「筐体Hの前側の上部には、利用者が所持するカードCとの間で無線通信によりデータを送受するための後述するトランスミッタに接続されたアンテナaが外部から目視可能に設けられている。」(段落【0007】)及び、「また、その演算処理の結果、利用者の通過を許可できないときは、ドアDが閉じられるとともに、照明部2は、赤色で点滅点灯し、スピーカ4及び表示画面5を介して入出場できない旨が案内される。なお、照明部2の照明は、入出場を許可できるときに青色に点灯させるようにしてもよい。」(段落【0015】)との記載に基づいて、補正前の「本体に設けられたアンテナ」及び、「その照明部は入出場の許可又は不許可に応じて色が変化するものであること」を、限定したものであるから、新規事項の追加には該当せず、特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合し、かつ、同条第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由には、次の刊行物が引用された。
・特開平8-55249号公報(以下、「引用例1」という。)
・実願平2-127202号(実開平4-82764号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)

(3)引用例に記載されている事項
引用例1には、無線カード処理装置に関して、図面ととに、以下の事項の記載が認められる。
・「記録機能等のデータ処理機能を設けたカードは、定期券、プリペイドカード、セキュリティ用等各種用途に使用されつつある。……上述のような問題点の多い磁気カードに代わって非接触式でデータの通信が実行できるIC等を搭載したカードが注目されるようになった(以下無線カードと称する)。」(段落【0002】)
・「即ち、例えば、無線カード処理装置1は、電子回路2の機能によって、アンテナ3から予め設定された所定の呼びかけ信号を継続して送信している。アンテナ収納ケース3Fの所定距離内に接近した無線カードはこの呼びかけ信号を受信すると、予め設定された応答信号を発信する。
この応答信号を受信した無線カード処理装置1は受信した応答信号を判別してこの無線カードシステムとして適正な無線カードであるかどうかを判定し、適正な無線カードであると所定の通信を開始する。
即ち、この無線カード処理装置の構成条件によってはOKランプを点灯し、無線カードに記録された記録内容から所定番地のデータを読み出し、このデータを判定し、また、このデータによって所定の処理を実行する。」(段落【0005】)
・「また、アンテナ3に接近した無線カード4が所定のカードとは異なる場合にもOKランプを点灯しない。」(段落【0006】)
・「図1(A)は無線カード処理装置1が無線カード4と非接触で通信するためのアンテナ3を内部に収納したアンテナ収納ケース3Aを上面から見た状況を示す。アンテナ収納ケース3A以外の無線カード処理装置1に属する電子回路2等の要素装置、および無線カード処理装置等を含む無線カードシステムに所属するその他の要素装置類は本発明の本質には直接関係せず、無線カード処理装置1の機能は図10によって前述した機能と同様に説明できるので、その図示説明は省略している。
図1(B)はアンテナ収納ケース3Aを側面から見た状況を示している。
図1(A)及び(B)において、3aは無線カードの提示目標で、これは無線カードを提示する位置であって、詳細を後述する所定直径、所定高さの円錐台状に形成される。なお、アンテナ収納ケース3A表面の提示目標は暖色系の色彩で彩色し、提示目標の周辺部の色彩は中間色で彩色されている。
また、図1(B)において、φaは無線カード4とアンテナ3それぞれの構造寸法と特性で定まる通信有効エリアの外域を示している。通信有効エリアの外域φaは同図ではアンテナ収納ケース3Aの上方向のみしか示してないが、アンテナ収納ケース3Aのほぼ面上を含めて立体的に形成されている。
無線カード4と無線カード処理装置1との通信を有効に実行できるようにするために、無線カード4に内在される通信用のアンテナ3は無線カード処理装置1に内蔵されるアンテナよりも小さく形成されており、無線カード4は通信有効エリアの外域φaよりも適切な比率で小さく形成されている。
アンテナ収納ケース3A上に設けた提示目標3aは当然アンテナ機能表面部の所定範囲またはアンテナ機能表面部近傍に形成されている。
なお、通信有効エリアの外域φaの内部は、無線カードとの通信が可能な通信適正位置である。」(段落【0010】)

引用例2には、非接触で情報の授受を行う無線式情報媒体を乗車券や定期券として使用する検札装置に関して、図面とともに、以下の事項の記載が認められる。
・「近年、情報記憶媒体の小型化が進み、名刺サイズのカードに情報記憶装置と無線装置を組み込んだ無線カードが実用化されている。さらに、この無線カードに駅改札等で乗車券や定期券に利用することも考えられている。」(2頁12行〜同16行)
・「上記構成による検札装置では、情報読み取り装置の読み取り範囲に可視光を照射するようにしているので、利用者は読取範囲を目で認識することができるようになり、これによって読取誤りが低減され、信頼性を向上させることができる。」(4頁10行〜同14行)
・「この考案は光源15を設け、上記情報読取書込装置13の読取可能な範囲、すなわちアンテナaと無線カード12とで電波が有効に届く範囲に向けて可視光を照射するようにしたことを特徴とする。」(5頁13行〜同17行)
・「装置全体はコ字状に形成され、外側の上面、側面、底面はシールド板Aを折曲して形成される。このシールド板Aに対して、プラスチック樹脂カバーBを装着する。その内部には上部、下部、側部にループアンテナC1〜C3を配置し、同じく内部に配置された読取書込装置13の基板Dに接続する。また、コ字内部の端部両端の近傍にそれぞれ複数個の光源Eを配列する。各光源Eはそれぞれ基板Dと共通の電源(図示せず)に接続される。光源Eの照射方向は、図示矢印の方向とする。上記の構成によれば、アンテナC1〜C3から放射される電波はシールド板Aによって四方に散乱せず、コ字開放方向にのみ放射される。また、光源Eから放射された光はコ字内部周囲に照射されるため、その範囲は電波放射範囲とほぼ一致する。」(6頁3行〜同17行)
・「また、上記光源は、ゲート許可/拒否の表示も可能である。例えば、色でOK、NGの結果を識別表示させたり、点灯/点滅により識別表示させることができる。」(7頁10行〜同13行)

(4)対比・判断
引用例1には、上記摘示した事項及び図面に示されたものからみて、次の発明が記載されているものと認められる。
「定期券、プリペイドカード等に使用される非接触式でデータの通信が実行できるIC等を搭載した無線カード4に使用する無線カード処理装置1に設けられた台形のアンテナ収納ケース3Fのアンテナ3を介して無線カード4との間で無線でデータの授受を行う無線カード処理装置において、
前記アンテナ3を収納するアンテナ収納ケース3Fを目視可能に設けるとともに、そのアンテナ収納ケース3F上のアンテナ機能表面部の通信適正位置に暖色系の彩色した無線カードの提示目標3aを設け、適正な無線カードであるときにOKランプを点灯し、所定のカードと異なる場合はOKランプを点灯しないようにした無線式カード処理装置。」

そこで、本願補正発明1と引用例1に記載された発明とを対比し、検討する。

引用例1に記載された発明の「アンテナ3」は、本願補正発明1の「アンテナ」に相当し、引用例1に記載された発明の「無線カード4」は、本願補正発明1の「非接触式カード」に相当し、引用例1に記載された発明の「暖色系の彩色した無線カードの提示目標3a」は、色彩によって、アンテナの設置部分を標識するものであるから、本願補正発明1の、例えば青色或いは赤色の照明によってアンテナの設置部分を標識する「照明部」に相当しているものといえる。また、本願補正発明1の入出場を許可するときは、適正な非接触式カードであり、不許可とするときは、所定の非接触式カードとは異なるカードであるから、引用例1に示された、適正な無線カードのときは、本願補正発明1の「許可するとき」に相当するし、引用例1に示された、所定のカードとは異なるときは、本願補正発明1の「不許可とするとき」に相当するものと認められ、その時点灯に用いられる「OKランプ」は、該許可と不許可とを識別する照明部といえるから、そのOKランプの「点灯又は点灯しないこと」は、本願補正発明1の照明部による異なる照明色の「照明」に相当しているものといえる。そして、本願補正発明1の非接触式自動改札機は、非接触式カード処理装置の一つといえるから、両者は、次の点で一致しているものと認められる。
〈一致点〉
「非接触式カード処理装置の本体に設けられたアンテナを介して非接触式カードとの間で非接触式でデータほ授受を行う非接触式データ処理装置において、
前記アンテナの設置部分を目視可能に設けるとともに、そのアンテナの設置部分に色彩による標識をし、照明部によって、許可するときと、不許可とするときとを異なる照明をする非接触式カード処理装置。」

しかし、次の点で相違している。
〈相違点〉
・相違点1
非接触式カード処理装置が、本願補正発明1では、「非接触式自動改札機」であるのに対し、引用例1に記載された発明は、定期券、プリペイドカードに利用されるものであるとは認められるものの、「非接触式自動改札機」であるとは明示されていない点。
・相違点2
アンテナが、本願補正発明1では、「非接触式自動改札機の本体を構成する筐体の改札通路の入口側に設けられ」ているのに対し、引用例1に記載されたものにはこのような構成が記載されていない点。
・相違点3
目視可能な構成について、本願補正発明1では、「アンテナを外部から」目視可能に構成しているのに対し、引用例1に記載されたものは、アンテナを収納した台形のアンテナ収納ケース3Aが目視可能であって、アンテナ自体が外部から目視可能であるとは明示されていない点。
・相違点4
アンテナの設置部分の色彩による標識について、本願補正発明1は、照明の色による「照明部を設け」ているのに対し、引用例1に記載されたものは、暖色系の彩色した提示目標3aを設けている点。
・相違点5
照明部について、本願補正発明1は、「アンテナの設置部分に照明部を設け」て、さらに、「入出場を許可するときは、例えば青色に照明し、入出場を不許可とするときは、入出場を許可するときと異なる照明色、例えば、赤色に照明するものである」のに対し、引用例1に記載されたOKランプは、その設置部分についての明示はなく、さらに、適正な無線カードであるときにOKランプを点灯し、所定のカードと異なるときはOKランプを点灯しないようにするとは記載されているものの、照明色を、例えば青色とか、赤色に変えたものではない点。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点1について
非接触式自動改札機は、例えば、上記引用例2、特開平7-311864号公報、特開平5-298509号公報、特開平3-268195号公報に示されるように周知なものである。そして、引用例1に記載された無線式カード処理装置が、定期券に利用し得るものであるから、非接触式自動改札機に適用し得たものというべきであって、この相違点1の構成は、格別のものとはいえない。
・相違点2について
非接触式自動改札機において、アンテナを、非接触式自動改札機の本体を構成する筐体の改札通路の入口側に設けたものも、前述の特開平7-311864号公報、特開平5-298509号公報、特開平3-268195号公報に示されるように周知なものであって、格別の構成とはいえない。
・相違点3について
無線通信によるデータ授受を行うアンテナ設置の位置を利用者に知らせるためであるから、本願補正発明1のように、アンテナ自体を目視可能とするか、引用例1に示されたように、アンテナを収納したアンテナ収納ケース3Aを目視可能とするかは、単なる設計事項というべきである。
・相違点4について
非接触式自動改札機において、アンテナの設置部分に照明部を設けることは、例えば、上記引用例2、特開平7-311864号公報、特開平8-263706号公報、特開平9-6935号公報に示されるように周知の技術であり、引用例1に示された暖色系の彩色した提示目標3aに代えて、照明部によるものとすることは、当業者が適宜採用し得たものである。
・相違点5について
上記引用例2には、「ゲート許可/拒否の表示も可能である。例えば、色でOK、NGの結果を識別表示させたり、点灯/点滅により識別表示させること」が記載されており、また、特開平7-311864号公報には、「乗車カード15のデータを読取りチェックをし、正常データと判定すれば、開閉扉を開放し改札許容し(n10〜n12ステップ)、……発光器14を「白色」から「緑色」に色別変化させて適正データであることを明瞭に知らせる(n15〜n16ステップ)。……異常カードと判定して開閉扉を閉じ、改札規制する(n17ステップ)。……発光器14を「白色」から「赤色」に色別変化させて不適な乗車カードであることを知らせる(n18〜n19ステップ)。」(段落【0025】〜【0028】)と記載されていることからみて、非接触式自動改札機において、アンテナの設置部分に照明部を設けて、その照明部の照明を用いて、入出場を許可するとき、不許可するときとで、照明部の照明色を変えることは、周知な技術と認められる。
そうすると、引用例1に記載された、OKランプ(照明部)を、アンテナの設置部分を照明する照明部とし、その照明色を適宜選択することによって、相違点5の構成も、当業者が容易に想到し得たものといえる。

そして、本願補正発明1の効果についても、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得たものである。

したがって、本願補正発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年6月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成14年4月16日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、【請求項1】に係る発明を「本願発明1」という。)
「【請求項1】 非接触式自動改札機の本体に設けられたアンテナを介して非接触式カードとの間で非接触式でデータの授受を行って入出場を行う非接触式自動改札機において、
前記アンテナを外部から目視可能に設けるとともに、そのアンテナの設置部分に照明部を設け、その照明部は入出場の許可又は不許可に応じて色が変化するものであることを特徴とする非接触式自動改札機。」
(1)引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、前記「2.(2)引用例」に示したものであり、その引用例には、前記「2.(3)引用例に記載されている事項」に記載したとおりものが記載されている。

(2)対比・判断
本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明1の「非接触式自動改札機の本体を構成する筐体の改札通路の入口側」の構成の「を構成する筐体の改札通路の入口側」を省略するとともに、本願補正発明1の「その照明部は入出場を許可するときは、例えば青色に照明し、入出場を不許可とするときは、入出場を許可するときと異なる照明色、例えば赤色に照明するものであること」の構成の照明部の照明の色を省略して、その上位概念である「その照明部は入出場の許可又は不許可に応じて色が変化するものであること」としたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-18 
結審通知日 2004-11-30 
審決日 2004-12-17 
出願番号 特願平9-233433
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07B)
P 1 8・ 575- Z (G07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大河原 裕  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 非接触式自動改札機  
代理人 石井 光正  

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