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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G07G
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G07G
管理番号 1112376
審判番号 不服2003-16303  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-25 
確定日 2005-02-23 
事件の表示 平成 6年特許願第170410号「売上データ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月19日出願公開、特開平 8- 16928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年6月30日の出願であって、平成15年7月31日付け(発送日:同年8月5日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月25日に審判請求がなされるとともに、同日に手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月25日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年8月25日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】 取引された売上データを記憶する売上データ記憶手段と、店のスタンプイメージデータを記憶するスタンプイメージ記憶手段と、レシートに印字される広告イメージデータを記憶する広告イメージ記憶手段と、レシート上における広告印字を有効とするか否かを任意に指定する指定手段と、上記スタンプイメージ記憶手段から読み出されたスタンプイメージデータの印字されたレシート上に、1取引で取引された売上データを印字する売上データ印字手段と、上記スタンプイメージデータ及び上記売上データの印字されたレシートの発行に際して、上記広告印字を有効とする指定が事前になされているか否かを判別する判別手段と、上記広告印字の有効指定がなされている場合には、上記広告イメージ記憶手段に記憶された広告イメージデータを読み出し、当該広告イメージデータを上記レシート上に追加印字した上でレシート発行し、上記広告印字の有効指定がなされていない場合には、上記広告イメージ記憶手段における広告イメージデータの記憶の有無によらず、上記広告イメージデータの印字されない上記レシートをそのまま発行するレシート発行手段と、を具備したことを特徴とする売上データ処理装置。」

(2)補正の適否
ア.新規事項について
本件補正後の請求項1には、広告イメージデータの印字について、「広告印字を有効とする指定が事前になされているか否かを判別する判別手段と、上記広告印字の有効指定がなされている場合には、上記広告イメージ記憶手段に記憶された広告イメージデータを読み出し、当該広告イメージデータを上記レシート上に追加印字した上でレシート発行し、上記広告印字の有効指定がなされていない場合には、上記広告イメージ記憶手段における広告イメージデータの記憶の有無によらず、上記広告イメージデータの印字されない上記レシートをそのまま発行するレシート発行手段とを具備した」点が記載されている。

しかし、この点に関して、出願当初の明細書には、各広告イメージデータに有効期限を設定し、各広告イメージデータが有効期限内にあるか否かを判別し、有効期限内にある広告イメージデータをイメージメモリから読み出し、当該広告イメージデータをレシート上に追加印字した上でレシートを発行し、すべての広告イメージデータが有効期限を過ぎている場合には、広告イメージデータの印字は行わず、カレンダをレシート上に追加印字した上でレシートを発行する点が記載されているのみである(【請求項2】、段落【0004】、段落【0009】、段落【0011】、段落【0013】)。

したがつて、本件補正は、出願当初の明細書又は図面に記載された範囲内においてしたものではない。

イ.補正の目的について
本件補正後の請求項1には、スタンプイメージデータ及び売上データをレシート上に印字した後に、広告印字を有効とする指定がなされているか否かを判別し、有効指定がなされている場合には、広告イメージデータをレシート上に追加印字し、有効指定がなされていない場合には、広告イメージデータをレシート上に追加印字しない旨が記載されている。

しかし、本件補正前の請求項1には、まず、広告印字設定がなされているか否かを判別し、広告印字設定がなされていると判別された際は、売上データをレシート上に印字すると共に、スタンプイメージ及び広告画像イメージをレシート上に印字し、広告印字設定がなされていないと判別された際は、売上データをレシート上に印字すると共に、スタンプイメージのみをレシート上に印字する旨が記載されている。

したがって、本件補正は、補正前の請求項1を限定的に減縮することを目的とするものではない。

また、本件補正は、補正前の請求項1以外の請求項を限定的に減縮することを目的とするものでも、請求項の削除を目的とするものでも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでも、誤記の訂正を目的とするものでもない。

ウ.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反し、また、同法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年8月25日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「【請求項1】 取引された売上データを記憶する売上データ記憶手段と、店のスタンプイメージを記憶すると共に、広告画像イメージを記憶するイメージ記憶手段と、レシート上に広告印字するか否かを予め任意に設定する設定手段と、レシート発行時に、上記広告印字の設定がなされているか否かを判別する判別手段と、上記判別手段で広告印字設定がなされていると判別された際は、取引された売上データをレシート上に印字すると共に、上記イメージ記憶手段から上記スタンプイメージ及び上記広告画像イメージを共に読み出して上記レシート上に印字するよう制御する第1印字制御手段と、上記判別手段で広告印字設定がなされていないと判別された際は、取引された売上データをレシート上に印字すると共に、上記イメージ記憶手段内の各イメージの内でスタンプイメージのみを読み出して上記レシート上に印字するよう制御する第2印字制御手段と、を具備したことを特徴とする売上データ処理装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平2-44494号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

・「本発明は、レシートにコマーシャルメッセージを印字できる電子式キャッシュレジスタに関する。」(第1頁右下欄第3-4行)

・「本発明は、入力装置を介して入力された各販売商品の販売データをメモリに登録処理し、登録締め操作に応じて登録結果を印字したレシートを発行する電子式キャッシュレジスタにおいて、現在の日時を計時する時計回路と、複数のメッセージデータをそれぞれのメッセージ印字期間に対応して記憶するメッセージテーブルと、登録締め操作に応じて時計回路の現在日時とメッセージテーブルの各メッセージ印字期間とを比較する日時比較手段と、この日時比較手段により現在日時を含むメッセージ印字期間が存在することを検知するとその期間に対応するメッセージデータをレシートに印字するメッセージ印字制御手段とを備えたものである。」(第2頁右上欄第3-16行)

・「このような手段を講じた電子式キャッシュレジスタであれば、登録締め操作が行なわれると現在の日時が含まれるメッセージ印字期間が設定されているか否かが判断され、設定されている場合にはそのメッセージ印字期間に対応するメッセージデータがメッセージテーブルから読出されてレシートに自動的に印字される。」(第2頁右上欄第18行ー左下欄第4行)

・「前記プリンタ12には、文字や数字等をレシートおよびジャーナルに印字するための印字ヘッドのほかに、レシートを切断するためのカッタ、レシートに店名や「御計算書」等のロゴなどを印刷するためスタンプが組込まれている。」(第3頁左上欄第1-5行)

・「一方、上記CPU1はモードスイッチ6により「登録」モードが選択されている状態で、キーボード8からの各入力キー信号により第5図に示す流れ図にしたがって一人の客に対する販売登録業務を実行するようにプログラム構成されている。すなわち、ST11にて1つの販売商品の販売点数、販売金額および部門コードが入力されると、販売登録ファイル31に対し入力された販売点数、販売金額を該当部門コード別に累積登録するとともに、販売金額を合計器32に加算する。また、プリンタ12により部門コードおよび販売金額をレシートおよびジァーナルに印字する。
ST12にてその客に対する販売登録の締めを宣言する預/現計キー24が入力されると、販売登録ファイル31に対し合計器32内の合計金額を取引別に累積登録する。また、この合計金額をプリンタ12によってレシートおよびジャーナルに印字出力する。しかる後、プリンタ12のカッタを動作させてレシートを切断することによりレシート発行口からその客の販売データおよび合計金額等を印字したレシートを発行する.
次いで、プリンタ12のスタンプを動作させて店名や「御計算書」等のロゴを発行レシートの次なるレシートに印刷する。さらに、時計回路5から読取った現在の日付を同レシートに印字する。次に、時計回路5の現在日時をメッセージテーブル34の各メッセージ印字期間と比較する。そして、現在日付が含まれるメッセージ印字期間が存在した場合には、その印字期間に対応するメッセージデータをメッセージテーブル34から読出してプリンタ12によりレシートに印字する。存在しない場合には何も行なわない。以上で一人の客に対する販売登録業務を終了する。」(第3頁右下欄第19行ー第4頁右上欄第11行)

・「したがって、本実施例によれば、複数種類のコマーシャルメッセージを期間に応じて選択的にレシートに印字させる場合において、前もってメッセージテーブル34を作成しておくことにより、必要な時期になるとその時期に対応する内容のコマーシャルメッセージが自動的にレシートに印字出力される。」(第4頁右下欄第4-10行)

これらの記載及び図面を参照すると、引用例1には次の発明が記載されている(以下、「引用例1発明」という。)。

「取引された販売データを記憶する販売データ記憶手段と、店名等のロゴが刻まれたスタンプと、コマーシャルメッセージを記憶するメッセージテーブルと、コマーシャルメッセージの印字期間を予め任意に設定する設定手段と、レシート発行時に、現在日時と上記印字期間とを比較する日時比較手段と、上記日時比較手段で現在日時を含む印字期間が存在すると判別された際は、取引された販売データが印字されたレシート上に、上記メッセージテーブルから上記コマーシャルメッセージを読み出して店名等のロゴと共に印字するよう制御する印字制御手段と、上記日時比較手段で現在日時を含む印字期間が存在しないと判別された際は、取引された販売データが印字されたレシート上に、上記店名等のロゴのみを印字するよう制御する印字制御手段と、を具備した電子式キャッシュレジスタ。」

また、原査定の拒絶の理由に引用した特開平4-232591号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

・「【発明の構成】本発明によるPOS端末装置は、レシート情報およびジャーナル情報をレシート用紙およびジャーナル用紙に夫々印字する印字手段を有するPOS端末装置であって、前記レシート用紙に印字すべきスタンプ情報をイメージ情報として入力する入力手段と、前記入力手段により入力された前記イメージ情報を格納する格納手段とを設け、前記格納手段に格納された前記イメージ情報を前記印字手段によって前記レシート用紙に印字するようにしたことを特徴とする。」(第2頁右欄第25-33行)

(3)対比
本願発明と上記引用例1発明とを比較する。

引用例1発明の「販売データ」は本願発明の「売上データ」に相当し、同様に「電子式キャッシュレジスタ」は「売上データ処理装置」に相当する。

また、引用例1発明のスタンプに刻まれた「店名等のロゴ」と本願発明の「店のスタンプイメージ」は、共に「店のスタンプ情報」の点で一致し、引用例1発明の「コマーシャルメッセージ」と本願発明の「広告画像イメージ」は、共に「広告情報」の点で一致する。

そして、このことから、引用例1発明の「スタンプ」は、「店のスタンプ情報を保持する手段」と、また、引用例1発明の「メッセージテーブル」は、「広告情報を記憶する記憶手段」と言えるし、本願発明の「イメージ記憶手段」は、「店のスタンプ情報を保持する手段」であり、かつ「広告情報を記憶する記憶手段」と言える。

更に、引用例1発明の「コマーシャルメッセージの印字期間を予め任意に設定する設定手段」は、印字期間によりレシート上にコマーシャルメッセージを印字するか否かが定まるのであるから、本願発明の「レシート上に広告印字するか否かを予め任意に設定する設定手段」の下位概念に相当し、引用例1発明の「現在日時と印字期間とを比較する日時比較手段」は、現在日時を含む印字期間が存在するならレシート上にコマーシャルメッセージを印字し、存在しないなら印字しないのであるから、本願発明の「広告印字の設定がなされているか否かを判別する判別手段」の下位概念に相当し、また、引用例1発明の「日時比較手段で現在日時を含む印字期間が存在すると判別された際」及び「日時比較手段で現在日時を含む印字期間が存在しないと判別された際」は、「存在すると判別された際」にはコマーシャルメッセージを印字し、「存在しないと判別された際」にはコマーシャルメッセージを印字しないのであるから、それぞれ本願発明の「判別手段で広告印字設定がなされていると判別された際」および「判別手段で広告印字設定がなされていないと判別された際」の下位概念に相当する。

したがつて、両者は、

「取引された売上データを記憶する売上データ記憶手段と、店のスタンプ情報を保持する手段と、広告情報を記憶する記憶手段と、レシート上に広告印字するか否かを予め任意に設定する設定手段と、レシート発行時に、上記広告印字の設定がなされているか否かを判別する判別手段と、上記判別手段で広告印字設定がなされていると判別された際は、店のスタンプ情報と広告情報とをレシート上に印字するように制御する印字制御手段と、上記判別手段で広告印字設定がなされていないと判別された際は、店のスタンプ情報のみをレシート上に印字するように制御する印字制御手段と、を具備した売上データ処理装置。」の点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、「店のスタンプ情報」は「店のスタンプイメージ」であり、「広告情報」は、「広告画像イメージ」であって、共にイメージ記憶手段に記憶されるのに対して、引用例1発明では、「広告情報」は、コマーシャルメッセージであり、記憶手段に記憶されるが、「店のスタンプ情報」は、店名等のロゴであり、スタンプに刻まれたものである点。

[相違点2]
本願発明では、「判別手段で広告印字設定がなされていると判別された際」には、「取引された売上データをレシート上に印字する」と共に、「イメージ記憶手段からスタンプイメージ及び広告画像イメージを共に読み出してレシート上に印字するよう制御する第1印字制御手段」と、「判別手段で広告印字設定がなされていないと判別された際」には、「取引された売上データをレシート上に印字する」と共に、「イメージ記憶手段内の各イメージの内でスタンプイメージのみを読み出して上記レシート上に印字するよう制御する第2印字制御手段」とを具備したのに対して、引用例1発明では、「判別手段で広告印字設定がなされていると判別された際」には、取引された売上データが印字されたレシート上に、メッセージテーブルからコマーシャルメッセージを読み出して店名等のロゴと共に印字するよう制御する印字制御手段と、「判別手段で広告印字設定がなされていないと判別された際」には、取引された売上データが印字されたレシート上に、店名等のロゴのみを印字するよう制御する印字制御手段とを具備した点。

(4)相違点についての判断

相違点1について、
引用例2には、スタンプ情報をイメージ情報とし、イメージ格納手段に格納する点が記載されている。

したがって、引用例1発明において、「店のスタンプ情報」である店名等のロゴを「店のスタンプイメージ」とし、イメージ記憶手段に記憶すること、また、「広告情報」についても、コマーシャルメッセージに代えて「広告画像イメージ」を採用し、上記イメージ記憶手段に記憶することは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2について、
「取引された売上データをレシート上に印字する」時期を、「広告印字の設定がなされているか否かを判別」する前とするか、「広告印字の設定がなされているか否かを判別」した後とするかは、単なる設計事項である。

また、「店のスタンプ情報」を「店のスタンプイメージ」とし、「広告情報」を「広告画像イメージ」として、共にイメージ記憶手段に記憶する以上、これらの情報を印字する場合には、上記イメージ記憶手段から読み出すことは、当然のことである。

したがつて、引用例1発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1、及び、引用例2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1、及び、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、及び、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-13 
結審通知日 2004-12-21 
審決日 2005-01-05 
出願番号 特願平6-170410
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07G)
P 1 8・ 572- Z (G07G)
P 1 8・ 561- Z (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大河原 裕  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 井上 哲男
櫻井 康平
発明の名称 売上データ処理装置  

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