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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B30B
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B30B
管理番号 1112847
審判番号 訂正2003-39186  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-12-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-09-04 
確定日 2005-03-18 
事件の表示 特許第2533486号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
昭和61年 4月 4日 特許出願(特願昭61-76644号)
平成 8年 6月27日 特許権の設定の登録
同 9年 3月11日 特許異議の申立て(9-71089号)
同 9年12月26日 訂正の請求
同10年 4月 3日 特許異議の決定(訂正容認、請求項1及び2
を維持)
同 11年12月28日 特許無効の審判の請求(11-35794号)
同12年 9月22日 審決(「本件審判の請求は、成り立たない。」)
同12年11月15日 出訴(平成12年(行ケ)第436号)
同14年 6月18日 判決(「特許庁が平成11年審判第35794
号事件について平成12年9月22日にした審
決中、請求項第1項に関する部分を取り消す。
」)
同15年 2月10日 審決(「特許第2533486号の特許請求の
範囲第1項に記載された発明についての特許を
無効とする。」)
同15年 3月24日 出訴(平成15年(行ケ)第108号)
同 13年12月28日 特許無効の審判の請求(2001-35559
号)
同14年10月29日 審決(「特許第2533486号の特許請求の
範囲第1項、第2項に記載された発明について
の特許を無効とする。」)
同14年12月 6日 出訴(平成14年(行ケ)第610号)
同 15年 9月 4日 本件訂正の審判の請求
同15年12月18日 訂正拒絶の理由の通知
同16年 2月23日 訂正審判における手続補正書及び意見書の提出

第2 審判請求書の補正の適否
上記平成16年2月23日付訂正審判における手続補正書による手続補正は、上記平成10年4月3日の特許異議の決定により訂正が認められた訂正明細書(平成10年10月15日発行の特許異議決定公報に添付された訂正明細書参照。)を平成15年9月4日付審判請求書に添付された全文訂正明細書のとおりに訂正するというものを、平成16年2月23日付訂正審判における手続補正書に添付された全文訂正明細書のとおりに訂正すると補正するものである。
具体的には、特許請求の範囲について、
「(1)被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出することにより前記ラム位置を検出して前記モータの回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む複数位置を記憶設定し、該記憶設定された位置間の速度を制御することを特徴とする電動プレス。
(2)被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段と、その回転量に対応して前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む複数位置を設定する設定手段と、該設定したデータを複数記憶する記憶手段とを備え、記憶された位置から次の移動する位置に対して前記モータの回転速度を制御することを特徴とする電動プレス。」と訂正することから、
「(1)被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出することにより前記ラム位置を検出して前記モータの回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む前記ラムの複数位置を記憶設定し、該記憶設定された位置間の速度を制御することを特徴とする電動プレス。
(2)被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段と、その回転量に対応して前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む前記ラムの複数位置を設定する設定手段と、該設定したデータを複数記憶する記憶手段とを備え、記憶された位置から次の移動する位置に対して前記モータの回転速度を制御することを特徴とする電動プレス。」と訂正することに補正するものである。
(下線は、補正により変更された事項を明確にするために付したものである。)
この手続補正について検討すると、上記訂正明細書の特許請求の範囲についての訂正事項は、「前記ラムの」という限定事項が付されていないものから該限定事項が付されたものに変更されているので、この手続補正は、明らかに審判請求書の要旨を変更するものである。
したがって、上記手続補正は、特許法第131条第2項の規定に適合しないので、認められない。

第3 請求の要旨
上記第2のとおり、上記訂正審判における手続補正書による手続補正は認められないので、本件訂正の審判の請求の要旨は、上記訂正明細書を、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものとして、上記平成15年9月4日付審判請求書に添付された全文訂正明細書のとおり、すなわち、次のとおり訂正することを求めるものである。
1 訂正事項1
上記訂正明細書の特許請求の範囲第1項に記載された
「被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む複数位置を記憶設定し、該記憶設定された位置間の速度を制御することを特徴とする電動プレス。」を、
「被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出することにより前記ラム位置を検出して前記モータの回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む複数位置を記憶設定し、該記憶設定された位置間の速度を制御することを特徴とする電動プレス(以下「訂正発明1」という。)。」と訂正する。
(下線は、訂正された事項を明確にするために付したものである。)
2 訂正事項2
同第2項に記載された
「被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段と、その回転量に対応して前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む複数位置を設定する設定手段と、該設定したデータを複数記憶する記憶手段とを備え、記憶された位置から次の移動する位置に対して前記モータの回転速度を制御することを特徴とする電動プレス。」を、
「被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータを設け、該モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換する機構を備え、前記モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段と、その回転量に対応して前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む複数位置を設定する設定手段と、該設定したデータを複数記憶する記憶手段とを備え、記憶された位置から次の移動する位置に対して前記モータの回転速度を制御することを特徴とする電動プレス(以下「訂正発明2」という。)。」と訂正する。
(下線は、訂正された事項を明確にするために付したものである。)
3 訂正事項3
同第3項を削除する。
4 訂正事項4
上記訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された
「前記モータの回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、」(上記特許異議決定公報第21頁第15,16行参照。)を、
「前記モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出することにより前記ラム位置を検出して前記モータの回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、」と訂正する。
5 訂正事項5
同発明の詳細な説明に記載された
「この電圧V3のより」(同公報第25頁第11行参照。)を、
「この電圧V3により」と訂正する。
6 訂正事項6
同発明の詳細な説明に記載された
「前記モータ4の回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、」(同公報第28頁第17,18行参照。)を、
「前記モータ4の回転量を該モータ4に連結されたエンコーダ7で検出することにより前記ラム5位置を検出して前記モータの回転量を前記ラムの昇降量として適宜制御し、」と訂正する。
7 訂正事項7
同発明の詳細な説明に記載された
「複数位置を正確に制御でき、」(同公報第28頁第26行参照。)を、
「複数位置を正確に制御できる。つまり、位置制御が正確にできる。」と訂正する。
8 訂正事項8
同発明の詳細な説明に記載された
「前記モータ4の回転量を検出して」(同公報第29頁第4行参照。)を、
「前記モータ4の回転量を該モータ4に連結されたエンコーダ7で検出して」と訂正する。
9 訂正事項9
同発明の詳細な説明に記載された
「また、前記ラム5の位置設定値を変更せしめる位置変更手段を備えると、被加工物の高さ等に応じて良好に対応できるプレス機を提供できる。」(同公報第29頁第16,17行参照。)を削除する。

第4 訂正拒絶の理由の概要
平成15年12月18日付けで通知した訂正拒絶の理由の概要は、訂正発明1及び訂正発明2は、本件特許に係る出願の出願前日本国内において頒布された刊行物である実願昭54-167317号(実開昭56-83340号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)及び実願昭59-93350号(実開昭61-9603号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)に記載された発明並びに従来周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、本件訂正の審判の請求は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合していないというものである。

第5 引用例記載事項
1 引用例1
引用例1には、以下のとおり記載されている。
(ア)実用新案登録請求の範囲
「(1)圧入工程の終りにおいてスリーブの端部を嵌合穴の底部に所定量だけ喰込ませるようにしたスリーブ圧入装置であって、圧入用のラムと、このラムに螺合する送りねじと、この送りねじを回転するサーボモータと、前記ラムが所定量移動する度にパルスを発生するパルス発生器と、前記スリーブの端部が嵌合穴の底部に当接した状態で前記ラムが停止したことを検出する検出装置と、この検出装置によって前記ラムの停止が検出されるまで前記サーボモータを所定の回転トルクで回転させるとともに前記検出装置によって前記ラムの停止が検出されたことによって前記サーボモータの回転トルクを増大せしめて前記サーボモータを再び回転させ前記パルス発生器から所定数のパルスが送出されたときに前記サーボモータの回転を停止する制御装置とによって構成されることを特徴とするスリーブ圧入装置。」
(イ)明細書第3頁第9-20行
「第1図において11は、装置本体10に上下動可能に案内されたラムで、このラム11は装置本体10に軸承された送りねじ12に螺合しており、送りねじ12は歯車13,14を介してサーボモータ15の出力軸に連結されている。また、サーボモータ15の後端部には、サーボモータ15の回転速度を検出する速度検出器16と、サーボモータ15の出力軸が所定量回転する度にパルスを発生するパルス発生器17とが取付けられている。なお、LS0は原点検出用のリミットスイッチを示しLS1はスリーブSの先端が工作物Wの端面よりも所定量だけ手前の位置に来たことを検出するリミットスイッチを示す。」
(ウ)明細書第4頁第1行-第6頁第20行
「第2図はサーボモータ15の回転を制御する制御回路を示すもので、ゲートG1,G2,G3を介して与えられる速度指令電圧と速度検出器16から出力される速度電圧との偏差を演算する演算器20と、サーボモータ15に流れる電流がゲートG4,G5を介して与えられる基準電流値を越えると演算器20の出力を低減する電流比較器21と、演算器20の出力に応じた速度でサーボモータ15を回転させる駆動回路22と、パルス発生器17からのパルスの送出が停止されたことを検出する停止検出回路23と、アンドゲートAGを介して入力されるパルス発生器17からのパルスを計数し計数値が設定器24に設定された値と等しくなると信号を出力するカウンタ25と、ゲートG1〜G5およびアンドゲートAGの開閉を制御するシーケンス制御回路26とによって構成されている。なお、前記シーケンス制御回路26は第3図に示すように、5個のフリップフロップFF1〜FF5とオアゲートOGとによって構成される。
今、起動スイッチSTARTが押圧されると、フリップフロップFF1とFF3がセットされゲートG1とG4が開かれる。これにより早送り速度に応じた速度指令電圧VS1が演算器20に与えられ、サーボモータ15が早送り速度で回転してラム11が、リミットスイッチLS1が閉成されるまで早送り速度で下降される。リミットスイッチLS1が閉成されるとフリップフロップFF1がリセットされ、フリップフロップFF2がセットされるため、ゲートG1に替つてゲートG2が開かれる。これにより、圧入速度に応じた速度指令電圧VS2が演算器20に与えられるようになり、ラム11の下降速度が圧入速度に減速される。そして、圧入が開始されるとサーボモータ15に加わる負荷が増大してサーボモータ15に流れる電流が、ゲートG4を介して電流比較器21に与えられている圧入基準電流値IS1まで増大する。この圧入基準電流値IS1はスリーブSの先端突起Saが工作物Wに形成された嵌合穴Waの底部に当接するとラムの移動が停止するような値に設定されているため、スリーブSの先端突起Saが嵌合穴Waの底部に当接するとラム11の下降が停止される。
ラム11の下降が停止されるとパルス発生器17からパルスが送出されなくなり、検出回路23から信号が出力される。これにより、フリップフロップFF3がリセットされ、フリップフロップFF4がセットされてゲートG4に替わつてゲートG5が開かれるため、電流比較器21に喰込基準電流値IS2が与えられる。この喰込基準電流値IS2はスリーブSの先端突起Saを嵌合穴Waの底部に喰込ませるのに充分な駆動トルクが得られるような値に設定されているため、サーボモータ15は再び回転を開始し、ラム11を高い推力で下降させる。また、これと同時にアンドゲートAGが開かれるため、カウンタ25はパルス発生器17から出力されるパルスを計数し、スリーブSの先端突起Saが指定された量だけ喰込んでその計数値が設定器24の値に一致すると圧入完了信号PESを出力する。これにより、フリップフロップFF2がリセットされフリップフロップFF5がセットされてゲートG3が開かれ後退早送りに応じた速度指令電圧-VS3が演算器20に与えられる。これにより、サーボモータ15が逆転され、ラム11が上昇端まで後退して圧入動作を完了する。」
上記記載事項及び圧入装置の構成を示す縦断面図である第1図の記載からみて、引用例1には、次の「スリーブ圧入装置」の発明が記載されていると認める。
工作物Wに対して昇降可能なラム11及び回転量を制御することができるサーボモータ15を設け、該サーボモータ15の回転量をラム11の直線運動に変換する歯車13、14及び送りねじ12を備え、リミットスイッチLS1及びサーボモータ15の回転量を該サーボモータ15に連結されたパルス発生器17によりラム位置を検出する手段を備え、リミットスイッチLS1をラム11の先端に取り付けられたスリーブSが工作物Wの端面より所定量だけ手前のラム11位置を検出する位置に設け、該スリーブSが工作物Wの嵌合穴Waの底部に当接したことを検出した後に指定された量だけスリーブの先端突起Saが嵌合穴Waの底部に喰込む位置のサーボモータ15の回転量に相当するパルス発生器17のパルス数を設定し、リミットスイッチLS1によりラム11を検出するまでは、該ラム11を早送り速度で下降するようにサーボモータ15を回転させ、リミットスイッチLS1によりラム11を検出した後は、ラム11の下降速度を圧入速度に減速し、該圧入速度でラム11を下降するようにサーボモータ15を回転させ、ラム11の先端のスリーブSが工作物Wの嵌合穴Waの底部に当接したことを検出した後は、該サーボモータ15に流れる電流を圧入基準電流値まで増大させることにより、ラム11を高い推力で下降させ、指定された量だけスリーブの先端突起Saが嵌合穴Waの底部に喰込む位置に設定したパルスを計数後、ラム11の下降を停止するように該サーボモータ15を回転させるようにしたサーボモータ駆動のスリーブ圧入装置(以下「引用例1記載の発明」という。)。
2 引用例2
引用例2には、以下のとおり記載されている。
(ア)明細書第2頁第11行-第3頁第4行
「ところで、上記のように構成された成形プレスで成形品を製造する場合の成形工程は、第2図に示すように、油圧シリンダ(油圧駆動装置)2のストロークSに従って、可動盤3がその上限位置aから移動することによって、無負荷高速下降工程A、予圧工程B、定速度加圧工程C、定圧加圧工程D、離型工程E、高速上昇行程Fに分けられるが、これらの工程A、B、C、D、E、Fのうち、無負荷高速下降工程A、予圧工程B、定速度加圧工程C、離型工程E、高速上昇行程Fにおいては、可動盤3が油圧駆動装置2によって各工程に個別に設定された一定速度で移動せしめられ、かつ定圧加圧工程Dにおいては、一定圧力(最大圧力)で可動盤3は下方に押圧せしめられている。」
(イ)明細書第4頁第11行-第5頁第3行
「第3図中10は、従来周知の成形プレスの可動盤(可動体)であり、この可動盤10の上面に立設したラック11に、アブソリュート型ロータリーエンコーダ等の位置検出装置12の回転軸12aに装着したピニオン13及びインクリメンタル型ロータリーエンコーダ等の速度検出装置14の回転軸14aに装着した該ピニオン13より小径のピニオン15がそれぞれ噛合されている。また、上記可動盤10の上面に、油圧シリンダ(駆動装置)16のピストンロッド17の先端が連結されており、この油圧シリンダ16に圧油を供給する油圧回路18が油圧シリンダ16に連設されている。」
(ウ)明細書第5頁第14-20行
「上記位置検出装置12と速度検出装置14と圧力検出装置23とは、制御装置24に電気的に接続されており、各検出装置12、14、23で得られた可動盤10の位置情報、速度情報及び加圧力情報は、制御装置24に送られ、入力装置25によりあらかじめ入力された設定値(位置、速度、加圧力)と比較されるようになっている。」
(エ)明細書第6頁第6行-第7頁第6行
「次に上記のように構成された可動体駆動用油圧装置の作用について説明する。
成形プレスの可動盤10が・・・ピストンロッド17は下降を開始し、それに伴って、可動盤10は下降し始める。そして、位置検出装置12及び速度検出装置14の各出力とあらかじめ入力装置25により制御装置24に入力されている設定値とを比較して、該各出力が設定値に一致するように制御装置24はサーボポンプ19に対して指令を与える。従って、可動盤10は、高速下降工程、予圧工程、速度可変加圧工程の各工程において、それぞれあらかじめ決められた設定値に基づいて下降速度が制御され、・・・制御される。」
上記記載事項、従来の成形プレスの成形工程を示す説明図である第2図及び可動体駆動用油圧装置の一実施例を示す概略構成図である第3図の記載からみて、引用例2には、成形プレスにおいて、上下動する可動盤の複数の位置情報を設定し、記憶し、記憶された位置情報に基づいて可動盤の移動速度等を制御するという技術的事項が記載されていると認める。

第6 対比
訂正発明2と引用例1記載の発明を対比する。
1 引用例1記載の発明における「工作物W」は、訂正発明2における「被加工物」に相当し、同様に、「サーボモータ15」は「モータ」に、及び、「サーボモータ駆動のスリーブ圧入装置」は「電動プレス」にそれぞれ相当することが明らかである。
2 引用例1記載の発明における「リミットスイッチLS1及びサーボモータ15の回転量を該サーボモータに連結されたパルス発生器17によりラム位置を検出する手段」は、ラム位置を検出する位置検出手段であることに限り、訂正発明2における「モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段」と一致している。
3 引用例1記載の発明におけるリミットスイッチLS1を設けた「ラム11の先端に取り付けられたスリーブSが工作物Wの端面より所定量だけ手前のラム11位置を検出する位置」は、訂正発明2における「ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点」に相当し、引用例1記載の発明における「スリーブSが工作物Wの嵌合穴Waの底部に当接したことを検出した後に指定された量だけスリーブの先端突起Saが嵌合穴Waの底部に喰込む位置」は、訂正発明2における「加圧を終了させる定位置停止点」に相当する。
また、引用例1記載の発明における上記の位置にリミットスイッチLS1を設けること及び上記喰込む位置の「サーボモータ15の回転量に相当するパルス発生器17のパルス数を設定」することは、訂正発明1における「加圧点と・・・定位置停止点とを含む複数位置を設定する設定手段と・・・を備え」ることに相当する。
4 引用例1記載の発明における「リミットスイッチLS1によりラム11を検出するまでは、ラム11を早送り速度で下降するようにサーボモータ15を回転させ、リミットスイッチLS1によりラム11を検出した後は、ラム11の下降速度を圧入速度に減速し、該圧入速度でラム11を下降するようにサーボモータ15を回転させ、ラム11の先端のスリーブSが工作物Wの嵌合穴Waの底部に当接したことを検出した後は、該サーボモータ15に流れる電流を圧入基準電流値まで増大させることにより、ラム11を高い推力で下降させ、指定された量だけスリーブの先端突起Saが嵌合穴Waの底部に喰込む位置に設定したパルスを計数後、ラム11の下降を停止するように該サーボモータ15を回転させる」は、訂正発明2における「位置から次の移動する位置に対して前記モータの回転速度を制御する」に相当する。
5 引用例1記載の発明における「歯車13、14及び送りねじ11」が、「サーボモータ15」の回転を直線運動に変換するものであることは、当業者に明らかである。
したがって、両者は、以下の「電動プレス」で一致する。
被加工物に対して昇降可能なラム及び回転量を制御することができるモータを設け、該モータの回転量を直線運動に変換する機構を備え、前記ラム位置を検出する位置検出手段と、前記ラムが下降する方向の任意の位置に加圧力を加えるべき加圧点と加圧を終了させる定位置停止点とを含む複数位置を設定する設定手段とを備え、位置から次の移動する位置に対して前記モータの回転速度を制御する電動プレス。
そして、以下の点で相違する。
相違点1
モータの回転量を直線運動に変換するために、訂正発明2では、ネジ機構にて直接直線運動に変換しているのに対して、引用例1記載の発明では、歯車13、14及び送りねじ12にて直線運動に変換している点。
相違点2
訂正発明2では、回転量を制御することができるモータが、回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータであり、また、ラム位置を検出する位置検出手段が、モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段であるのに対し、引用例1記載の発明では、そのようになっていない点。
相違点3
訂正発明2では、加圧点と定位置停止点との位置をモータの回転量に対応して設定しているのに対し、引用例1記載の発明では、そのようになっていない点。
相違点4
訂正発明2では、設定したデータを複数記憶する記憶手段を備え、モータの回転速度の制御を記憶された位置から次の位置に対して行っているのに対し、引用例1記載の発明では、そのようになっていない点。

第7 当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
1 相違点1について
モータの回転量をネジ機構にて直接直線運動に変換することは、例示するまでもなく周知の技術的事項であるから、引用例1記載の発明において、モータの回転量をラムの直線運動に変換する機構として、歯車13、14及び送りねじ12に代えて、回転量を直接直線運動に変換するネジ機構を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
2 相違点2について
モータの回転量を被移動体の直線運動に変換するものにおいて、モータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して被移動体の位置を検出する位置検出手段は、例えば、「NCシステム事典」、株式会社朝倉書店、1983年11月5日発行、p.11、図1.5送り軸駆動系の方式の(b)セミクローズドループ系、特開昭59-32340号公報等に記載されているように周知の技術的事項であるから、引用例1記載の発明におけるリミットスイッチLS1及びパルス発生器17によるラム位置を検出する位置検出手段に代えてモータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段を採用することに、格別の困難性は見当たらない。
また、このようにモータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出するのであるから、モータを回転量を数値制御することができるパルスにて制御するモータとすることにも、格別の困難性は見当たらない。
3 相違点3について
上記2の相違点2についてで検討したようにモータの回転量を該モータに連結されたエンコーダで検出して前記ラム位置を検出する位置検出手段を備えるのであるから、加圧点と定位置停止点とを含む複数位置をモータの回転量に対応して設定することは、当然になされることであり、格別の困難性は見当たらない。
4 相違点4について
引用例2には、上記第5の2のとおりの技術的事項が記載されており、その技術的事項の可動盤は、訂正発明2のラムに相当することが明らかであるので、引用例2には、成形プレスにおいて、上下動するラムの複数の位置情報を設定し、記憶し、記憶された位置情報に基づいてラムの移動速度等を制御するという技術的事項が記載されていることになり、また、引用例2に記載の成形プレスと引用例1記載の発明とは、プレスの技術分野で共通している。
そうすると、引用例1記載の発明に、引用例2に記載の技術的事項を採用して、設定手段で設定されたデータを複数記憶する記憶手段を備え、そして、モータの回転速度の制御を記憶された位置から次の位置に対して行うようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
5 訂正発明の効果について
訂正発明2の効果は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術的事項及び上記周知の技術的事項から当業者が予測することができる程度のものであって格別なものとはいえない。

第8 むすび
以上のとおり、訂正発明2は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術的事項及び上記周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、訂正発明1について判断するまでもなく、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合していない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-16 
結審通知日 2004-03-19 
審決日 2004-03-30 
出願番号 特願昭61-76644
審決分類 P 1 41・ 121- Z (B30B)
P 1 41・ 856- Z (B30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 扇谷 高男川端 修刑部 俊  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 神崎 孝之
平田 信勝
登録日 1996-06-27 
登録番号 特許第2533486号(P2533486)
発明の名称 電動プレス  
代理人 山田 智重  
代理人 岩堀 邦男  
代理人 辻 実  

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