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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  G21C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G21C
審判 全部申し立て 2項進歩性  G21C
管理番号 1112902
異議申立番号 異議2003-71218  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-12 
確定日 2004-12-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3343447号「原子炉圧力容器の搬出方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3343447号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3343447号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成6年8月26日に特許出願され、平成14年8月23日にそれらの発明について特許の設定登録がなされ、その後、それらの特許について、石川島播磨重工業株式会社より特許異議申立てがなされ、これを受けて平成16年1月20日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年3月29日に訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
訂正事項a
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の、
「原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と炉内構造物と該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドとCRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記炉内構造物と前記CRDハウジングが取付けられた状態のままの前記原子炉圧力容器を、前記γシールドと一体で、大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。」を、
「原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内の炉内構造物と、該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと、CRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し、前記炉内構造物と前記CRDハウジングが取付けられた状態のままの前記原子炉圧力容器を、前記γシールドと一体で、大型揚重機を用いて前記原子炉格納容器内から前記原子炉建屋外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。」
訂正事項b
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に記載の、
「原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と炉内構造物と該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドとCRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記原子炉圧力容器、前記炉内構造物、前記CRDハウジング及び前記γシールドを一体の大型ブロックとして、大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。」を、
「原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内の炉内構造物と、該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと、CRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し、前記原子炉圧力容器、前記炉内構造物、前記CRDハウジング及び前記γシールドを一体の大型ブロックとして、大型揚重機を用いて前記原子炉格納容器内から前記原子炉建屋外の外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。」と訂正する。
訂正事項c
訂正前の明細書の段落【0062】に記載の、「また、請求項3に示す本発明によれば、搬出途中で放射線に汚染された水が周囲環境へ飛散するのを未然に防止することができる。」を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、訂正前の構成要件である「炉内構造物」を「原子炉圧力容器内の炉内構造物」に限定し、さらに、訂正前の請求項1の発明に「前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し」という構成要件を付加し、さらに、訂正前の構成要件である「原子炉建家外へ」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「原子炉格納容器内から前記原子炉建屋外へ」に訂正するもので、これらのい訂正は、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明に相当する。
そして、上記訂正は、新規事項の追加に該せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項bは、上記訂正事項aと同様に、訂正前の構成要件である「炉内構造物」を「原子炉圧力容器内の炉内構造物」に限定し、さらに、訂正前の請求項1の発明に「前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し」という構成要件を付加し、さらに、訂正前の構成要件である「原子炉建家外へ」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「原子炉格納容器内から前記原子炉建屋外へ」に訂正するもので、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明に相当する。
そして、上記訂正は、新規事項の追加に該せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項cは、訂正前の特許明細書の段落【0062】に記載の、「また、請求項3に示す本発明によれば、搬出途中で放射線に汚染された水が周囲環境へ飛散するのを未然に防止することができる。」を削除するもので、明りょうでない記載の釈明に該当し、また、この訂正は、新規事項の追加に該せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する第126条第2項及び第3項に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
(1)本件発明1乃至3
上記2.で示したように上記訂正は認められるから、本件特許の請求項1乃至3係る発明(以下、「本件発明1」乃至「本件発明3」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内の炉内構造物と、該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと、CRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し、前記炉内構造物と前記CRDハウジングが取付けられた状態のままの前記原子炉圧力容器を、前記γシールドと一体で、大型揚重機を用いて前記原子炉格納容器内から前記原子炉建屋外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。
【請求項2】
原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内の炉内構造物と、該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと、CRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し、前記原子炉圧力容器、前記炉内構造物、前記CRDハウジング及び前記γシールドを一体の大型ブロックとして、大型揚重機を用いて前記原子炉格納容器内から前記原子炉建屋外の外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項記載の原子炉圧力容器の搬出方法において、前記原子炉圧力容器内の炉水を抜いた状態で前記搬出を行うことを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。」

(2)異議申立の理由の概要
異議申立人石川島播磨重工業株式会社は、理由1乃至3により、本件発明1乃至3が特許を受けることができない旨主張するところ、その理由1乃至3の概要は次のとおりである。
[理由1]特許法第29条第1項第3号違反について
刊行物1:「デコミッショニング技報」No.7(平成5年3月15日発行)P83〜90(異議申立人提示の甲第1号証)
本件発明1乃至3は、刊行物1に記載された発明である。
[理由2]特許法第29条第2項違反について
刊行物1:「デコミッショニング技報」No.7(平成5年3月15日発行)P83〜90(同第1号証)
刊行物2:特開平6-230188号公報(同甲第2号証)
刊行物3:「日本原子力学会誌」Vol.29,No.7(1987年7月30日発行)第19〜28頁(同甲第3号証)
刊行物4:特開昭64-66372号公報(同甲第4号証)
本件発明1乃至3は、刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものである。
[理由3]特許法第17条第2項違反について
平成13年12月28日付けの手続補正は、特許法17条第2項に規定す要件を満たしていない。

(3)刊行物に記載された発明の概要
刊行物1には、原子力船「むつ」から原子炉室を撤去する方式に関して、原子炉室を「むつ」船体から切り離し、原子炉容器、格納容器、遮蔽体等を内蔵したまま、一体として保管建家へ搬送する原子炉室撤去方法が記載されている。
刊行物2には、原子炉圧力容器を原子炉建家外へ搬出する際の原子炉圧力容器の搬出方法が記載されている。
刊行物3には、JPR-3原子炉の撤去方式に関して、生体遮蔽体を含む原子炉本体を一括して撤去する方法が記載されている。
刊行物4には、生体遮蔽コンクリートを切断し、基部から切り離した後、炉内構造物及び圧力容器を生体遮蔽コンクリートに包んだままで搬出する方法が記載されている。

(4)当審の判断
[理由1]及び[理由2]について
本件発明1乃至3と刊行物1乃至4に記載の発明とを対比すると、刊行物1乃至4には、原子炉圧力容器をγシールドと一体で原子炉格納容器から搬出する際に、γシールドの重量を原子炉圧力容器に支持させる点、及びその手段として、前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤを通す、のいずれかの手段を用いる点についての記載がないばかりか、それらの構成を示唆する記載もない。
本件発明1乃至3は、この構成により、本件明細書記載の格別な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、異議申立人が提出した刊行物1乃至4に記載された発明であるとは認められず、また、本件発明1乃至3が、刊行物1乃至4に記載された発明基いて当業者が容易に発明できたとすることもできない。
[理由3]について
平成13年12月28日付けの手続補正が、特許法17条第2項に規定する要件を満たしていない点は、上記訂正により解消された。

4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
原子炉圧力容器の搬出方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内の炉内構造物と、該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと、CRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し、前記炉内構造物と前記CRDハウジングが取付けられた状態のままの前記原子炉圧力容器を、前記γシールドと一体で、大型揚重機を用いて前記原子炉格納容器内から前記原子炉建屋の外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。
【請求項2】
原子力発電所内原子炉建屋の原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内の炉内構造物と、該原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと、CRDハウジングを原子炉建屋外に搬出する原子炉圧力容器の搬出方法において、
前記原子炉圧力容器のノズル内に差し込んで前記ノズルに溶接固定された鋼棒を支持材でγシールドの開口に固定する、前記ノズルに溶接固定された前記支持材を前記開口に固定する、前記原子炉圧力容器と前記γシールドの間にコンクリートを流し込んで前記原子炉圧力容器と前記γシールドを結合する、及び前記γシールドの前記開口にワイヤ通す、のいずれかにより、前記γシールドの重量を、前記原子炉圧力容器に支持させ、前記γシールドを、原子炉格納容器内の前記γシールドを支持する原子炉圧力容器ペデスタルから取外し、前記原子炉圧力容器、前記炉内構造物、前記CRDハウジング及び前記γシールドを一体の大型ブロックとして、大型揚重機を用いて前記原子炉格納容器内から前記原子炉建屋の外へ搬出することを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項記載の原子炉圧力容器の搬出方法において、前記原子炉圧力容器内の炉水を抜いた状態で前記搬出を行うことを特徴とする原子炉圧力容器の搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、原子力発電所の原子炉圧力容器、炉内構造物及びRPVの周囲に円筒状をなして配置されている放射線遮蔽体の搬出に係り、特に原子炉圧力容器の搬出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子炉圧力容器(以下、RPVという)は、原子力発電所の最重要機器であり、一般に原子力発電所の耐用寿命もRPVの設計寿命に依存している。原子力発電所が耐用寿命を迎えた場合、その原子力発電所を解体し廃炉にしなければならない。原子力発電所の廃炉技術では、RPV,炉内構造物,RPVの周囲に円筒状をなして配置されている放射線遮蔽体(以下、γシールドという),CRDハウジング、原子炉格納容器内の配管や各種機器等を原子力発電所の原子炉建屋内でそれぞれ分割解体したのち、原子炉建屋外へ搬出する工法を取っている。
【0003】
特開昭60-91299号公報は、上記廃炉技術の1例で切断機を使用してRPVを分割解体する解体装置の例を示している。又、特開平3-18799号公報は、旋回駆動装置,昇降駆動装置,支持駆動装置を備えた切断装置を使用しRPVの解体を行うシステムの例を示している。尚、炉内構造物を解体する際の解体方法については、特開昭60-24499号公報に示されている。
【0004】
一方、電気需要供給上、廃炉にした原子力発電所の発電能力を補うためには、新たな発電所の設置が必要となる。しかし、新たな発電所を建設するには、長い工事期間と莫大なコストがかかる。又、新たな原子力発電所を建設するためには、立地条件を満たす立地候補計画,立地近接住民の同意等のさまざまな課題をクリアにしていく必要がある。従って、現在稼働している経年原子力発電所の耐用寿命を延長することが重要課題となってきている。
【0005】
経年原子力発電所では、RPV及び炉内構造物を除いて、各設備・機器の補修,取替が適時行われており、リフレッシュ化されて寿命延長策が講じられているが、耐用寿命期間内でのプラント運転を行う考え方に立った場合、RPV及び炉内構造物を取替えることは必要なかった。
【0006】
上記のように耐用寿命を延長しようとする場合、RPV、炉内構造物及びCRDハウジングを取替える工事が必要となる。γシールド自体はそのまま継続して使用することができるが、RPVの取替工事を行うには構造上取外さざるを得ない。耐用寿命の延長に際しては、いかにプラント停止期間を短縮して「RPV及び炉内構造物取替工事」をいかに短期間で行うかが課題となる。長期間に亘る供用期間を終えたRPV及び炉内構造物は強烈な放射能を帯びており、取替工事を短期間で行うためには、まず、「RPV及び炉内構造物搬出作業」をいかに短期間で行うかが課題となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
原子力発電所の廃炉技術に関しては、前に示したような技術が知られているが、RPV及び炉内構造物を新しいものと交換するという条件でRPV及び炉内構造物を搬出することを考慮したものはない。このため、上記従来技術には、原子力発電所の寿命を延長するという工事に適用しようとする場合、下記の問題があった。
【0008】
▲1▼.原子力発電所を寿命延長する際の搬出工法としては、廃炉技術を応用してRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジング等の機器を原子炉建屋内で分割解体し搬出する工法が考えられていたが、この方法では搬出に長い工事期間と莫大なコストがかかる。
【0009】
▲2▼.原子力発電所の耐用寿命を延長する場合、上記▲1▼の工法により分割解体し搬出する工法を採用した場合、プラント停止期間が長期化する。
【0010】
本発明の目的は、原子力発電所の耐用寿命を延長する工事を実施する場合、プラント停止期間をできるだけ短縮することができる原子炉圧力容器の搬出方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、炉内構造物とCRDハウジングが取付けられた状態のままの原子炉圧力容器を、原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと一体で、大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出することによって達成される。
また、原子炉圧力容器、炉内構造物、CRDハウジング及びγシールドを一体の大型ブロックとして、大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出することによっても達成される。
このとき、その搬出時には、原子炉圧力容器内の炉水を抜いた状態で搬出を行うことが望ましい。
【0012】
上記目的はまた、炉内構造物,CRDハウジング等を取り付けたままで原子炉圧力容器を大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出し、さらに、γシールドを分解することなく円筒状の一体としたままで大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出することによっても達成される。
【0013】
原子炉建屋としては、原子炉圧力容器上方の原子炉建屋天井部に取外し可能な閉鎖手段を備えた開口部を設け、該開口部の内径を前記原子炉圧力容器の放射線遮蔽体の外径より大きくしておくことが望ましい。
【0014】
また、原子炉圧力容器の搬出に際しては、原子炉建屋に隣接しかつ該原子炉建屋上部に延びて前記開口部を覆う原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋を配設し、原子炉建屋上部の原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋の天井下面と原子炉建屋屋上面の間の間隔は、原子炉圧力容器の高さより大きくし、原子炉建屋側壁と原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋側壁の間隔は原子炉圧力容器の放射線遮蔽体の外径より大きくしておくことが望ましい。
【0015】
原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋としては、その側壁上部の一部及び該側壁の一部に連続する天井部の一部を、段階的に開閉可能とするか、原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋の内部に向かって、互いに連続した状態のままで段階的に移動可能としておくことが望ましい。
【0016】
【作用】
本発明によれば、前記炉内構造物と前記CRDハウジングが取付けられた状態のままの前記原子炉圧力容器が、前記原子炉圧力容器の周囲に円筒状をなして配置されたγシールドと一体で、大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出されるので、原子炉圧力容器をそれらの部材を原子炉建屋内で解体する時間が不要となり、全体として原子炉建屋外へRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジング等を搬出するのに要する時間が短縮される。前記原子炉圧力容器、前記炉内構造物、前記CRDハウジング及び前記γシールドを大型ブロックとして、大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出する場合も同様である。
【0017】
また、炉内構造物,CRDハウジング等を取り付けたままで原子炉圧力容器を大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出し、さらに、γシールドを分解することなく円筒状の一体としたままで大型揚重機を用いて原子炉建屋外へ搬出するようにしても、搬出の回数は全体を一体で搬出する場合よりも増えるが、原子炉建屋内での原子炉圧力容器やγシールドの解体は省略されるので、全体としての搬出に要する時間は短縮される。
【0018】
原子炉圧力容器上方の原子炉建屋天井部に取外し可能な閉鎖手段を備えた開口部を設け、該開口部の内径を前記原子炉圧力容器の放射線遮蔽体の外径より大きくしておけば、原子炉圧力容器やγシールドの搬出の際の天井の開口部を形成する作業が容易になり、作業に要する時間が短縮される。
【0019】
原子炉建屋に隣接しかつ該原子炉建屋上部に延びて前記開口部を覆う原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋を配設し、原子炉建屋上部の原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋の天井下面と原子炉建屋屋上面の間の間隔を、原子炉圧力容器の高さより大きくし、原子炉建屋側壁と原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋側壁の間隔を原子炉圧力容器の放射線遮蔽体の外径より大きくしておくと、原子炉建屋外に吊りあげた原子炉圧力容器を原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋内で移動させることができ、原子炉建屋及び原子炉圧力容器から外部環境に放出される放射性物質の量を少なくできる。
【0020】
原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋(以下、遮蔽建屋も同じ)として、その側壁上部の一部及び該側壁の一部に連続する天井部の一部を、部分毎に開閉可能としておくと、起倒するジブを備えた揚重機を用いる場合、遮蔽建屋の側壁上部の一部及び該側壁の一部に連続する天井の一部を開いてそこにジブが入り込む形でジブを傾斜させることができる。こうすると、揚重機を原子炉建屋に接近させて配置することができ、揚重機の吊りあげ半径を小さくすることができる。原子炉圧力容器を吊りあげて原子炉建屋外部に移動させる場合、ジブが立ち上がるにつれてジブが遮蔽建屋の天井部及び側壁部を貫く部分が移動するから、その部分を順次開き、他の部分を順次閉じてゆけば、原子炉建屋及び原子炉圧力容器から外部環境に放出される放射性物質の量を少なくできる。また、側壁上部の一部及び該側壁の一部に連続する天井部の一部を部分毎に開閉可能とするのではなく、ジブが遮蔽建屋に入り込む部分の天井部及び側壁部を帯状につながった屈曲可能な壁面で構成し、図20の紙面手前側及び奥側の紙面と平行な壁面との接続部を空気が漏れない状態を保って段階的に摺動できるようにしておくと、放射性物質の放出がさらに少なくなる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を詳細に説明する。★
図1は、沸騰水型軽水炉の原子炉圧力容器及び炉内構造物の断面図である。原子炉圧力容器(RPV)1内の各機器は、一般に炉内構造物2と呼ばれている。炉内構造物2は、蒸気乾燥器(ドライヤー)3,セパレータ(気水分離器、シュラウドヘッドを含む)4,炉心シュラウド5,炉心支持板6,上部格子板7,シュラウドサポート8等から構成されており、炉心部を形成する炉内各機器を収納するとともに、炉心に入る原子炉冷却材の流れを導くための仕切りとなって、炉心への原子炉冷却材流路,気水混合物との流路,および内蔵された気水分離器にて分離された水と蒸気のため必要な流路とを形成し、これにより原子炉冷却水の循環回路を与えるものである。
【0022】
図2は、原子炉圧力容器の断面図である。RPV1には、主蒸気ノズル9,給水ノズル10,炉心スプレイノズル11,再循環入口ノズル12,再循環出口ノズル13,各種計装ノズル14,ドレン/ベントノズル15が設けられており、各ノズルには各系統配管がつながっている。
【0023】
図3は、原子炉格納容器の断面図である。原子炉格納容器(以下PCVと称す)16内には、RPV1の外周に設けた放射線遮蔽体17(以下γシールドと称す),RPV1の基礎であるRPVペデスタル18,PCV上部を上下に仕切るバルクヘッドプレート19,ラジアルビ-ム27,サポ-ト28がある。尚、RPVペデスタル18内には、制御棒駆動装置20(以下CRDと称す),中性子束検出器21(以下ICMと称す)を支持するビーム22,CRDハウジング23,ICMハウジング24,上記CRDハウジング23を支持するCRDハウジングサポート25がある。
【0024】
上記γシールド17と上記RPVペデスタル18の接続部は、γシールド円周上、2か所のγシールド基礎ボルト29にて固定されている。γシールド17上部には、RPVの耐震用サポートであるRPVスタビライザと、PCVの耐震用サポートであるPCVスタビライザ30が設けられている。
【0025】
図4は、原子炉建屋の断面図である。原子炉建屋31内には、原子炉ウエル32に近接した使用済燃料プール33,ドライヤーセパレータプール34(以下D/Sプールと称す)が設けられている。
【0026】
図5を参照して本発明の実施例を説明する。
【0027】
まず、手順40で発電機が解列されて原子力発電所の定期検査が始まり、手順41で原子炉開放作業が行われる。原子炉開放作業は、炉心内の燃料を取扱うために必要なクリティカル作業であり、主に、原子炉格納容器蓋を取外すPCVヘッド取外し作業、原子炉圧力容器蓋37(以下RPVヘッドと称す)を取外すRPVヘッド取外し作業,蒸気乾燥器3を取外すドライヤー取外し作業,セパレータ4を取外すセパレータ取外し作業が実施される。
【0028】
次に、手順42で炉心内の全数燃料取出作業が行われる。全数燃料取出作業は、炉心内に装荷されている燃料全数を使用済燃料プール33の使用済燃料ラック56へ移動させる作業である。RPV及び炉内構造物の搬出を実施する場合は、燃料そのものが放射能線源であるため、燃料を装荷した状態でRPV及び炉内構造物を原子炉建屋外へ搬出するには、大気中の放射能汚染の危険性があること並びにRPV表面線量を下げるために全数燃料取出作業が実施されるのである。
【0029】
燃料の全数取りだしが終了したら、手順43の原子炉復旧作業に進み、ドライヤー3とセパレータ4を炉心シュラウド5に取付けるドライヤー&セパレータ取付作業及びRPVヘッド37の取付け作業が行われる。
【0030】
次に、手順44のRPVとγシールドの解体が行われる。手順44は、γシールド取付けラジアルビーム及びサポートの切断44a、RPVノズル部と配管切断44b、γシールドのRPVへの固定44c、γシールド基礎ボルトハツリ44d、ダクト、操作床等搬出44e、バルクヘッドプレート切断44f、PCVスタビライザ切断44g等を含んでいる。
【0031】
手順44に並行して、RPVペデスタル内で手順45が実施される。手順45は、CRDハウジングサポート取外し45a、ケーブル取外し45b、CRDハウジング及びICMハウジング取外し45c、CRDハウジングビーム取外し45dなどを含んでいる。
【0032】
また、手順43の原子炉復旧作業が終わったら、原子炉建屋天井部に、γシールド17の外径よりも大きい開口部57が設けられる(手順47)。開口部57を設けるには、その前に、図20に示すように、原子炉建屋31に隣接しかつ該開口部57を覆う位置にまで延びる原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋(以下、クリーンルームという)60を設置する(手順46)必要があるが、原子炉建屋の安全性に直接影響しない部分については発電機解列前に設置工事を開始してもよい。クリーンルーム60の天井60Aの下面と原子炉建屋31の屋上面との間隔Hは原子炉圧力容器の高さよりも大きい値に設定され、側壁60Bと原子炉建屋31の側壁との間隔Bはγシールド17の外径よりも大きい値に設定される。開口部57は、プラント建設段階で、予め部材の取外しが容易なように計画しておくのが望ましい。クリーンルーム60の設置と同時に大型揚重機58が所定の位置に設置される(手順48)。また、図22に示すように、大型揚重機58の起倒部材58Aが吊り上げ位置に傾斜したときクリーンルーム60に入り込めるように、クリーンルーム60の側壁60B上部の一部と該側壁の一部に連続する天井部60Aの一部は、起倒部材58Aの幅だけ部分的に側方に移動して開口を形成するように構成されている。起倒部材58Aが側壁60B及び天井部60Aを貫く部分で側壁60B及び天井部60Aが部分的に開放され、他の部分は閉じられていて、起倒部材58Aの傾斜が変わるにつれて、開放部分の位置が変えられる。天井部は両側(紙面に垂直な方向)に半分づつ移動するようにしてあり、揚重機の吊り具が通過するときは、再び吊り具の幅だけ開閉される。
【0033】
なお、大型揚重機58の起倒部材58Aが吊り上げ位置に傾斜したときクリーンルーム60に形成される前記開口をできるだけ小さくするために、該当部分の側壁及び天井部を連続した屈曲可能な帯状に構成し、クリーンルーム60の紙面に平行な壁面との接続部を摺動可能なように構成しておいてもよい。図37は、このような帯状の壁面を用いた例を示すもので、破線で示される壁面60Cは、帯状の壁面を最大限にクリーンルーム60の内側に移動させた状態を、壁面60Dは起倒部材58がやや起き上がってきたときの帯状の壁面の位置を示している。いずれの場合も、破線で示される帯状の壁面より揚重機側のクリーンルーム60部分は外部に開放され、原子炉建屋側の部分は外部に対して閉じられている。
【0034】
クリーンルーム60の内部に向かって移動可能に構成し、図22に点線で示される位置に壁面を移動させるようにしてもよい。吊り具の移動に対してはさきに述べたように、該帯状の壁面の中央に、揚重機の吊り具が通過するとき、吊り具の幅だけ開いて吊り具通路を形成する開閉手段が設けられている。
【0035】
手順44、45、46、47及び手順48が終了したら手順49に進んで、RPV搬出が行われる。手順49では、RPV1内に入っている炉水(原子炉冷却材)の水抜き(49a),RPV据付けボルトの取外し(49b)、RPV1,炉内構造物2,γシールド17,CRDハウジング23を一体化した大ブロックでの吊り上げ(49c)、原子炉建屋外への搬出(49d)が行われる。RPVノズル部と配管の切断の時は、予めRPV内側からプラグによる水止めを行うか、RPV水抜き後にノズル部の切断を行うかの、いずれかとなるが、放射線遮蔽の点からは、前者が好ましい。
【0036】
尚、RPV搬出は、上述の炉水の水抜き作業を行わず、RPV1内に炉水が入った状態で行ってもよい。その場合、RPV内の炉水は、RPV1,炉内構造物2,γシールド17,CRDハウジング等を原子炉建屋外へ搬出する際の放射線を遮蔽する効果もある。但し、上記炉水が入った状態にて搬出を実施する場合、RPV1に設けられた各ノズル9〜15からの水漏れを防止するために、先に述べたように各ノズル部にプラグをして配管を切断したのち、各ノズル9〜15に外部から蓋を取り付けておく必要がある。
【0037】
又、RPV1,炉内構造物2,γシールド17,CRDハウジング23等を一体化した大ブロックとすると、γシールドが本来、遮蔽体であるため、原子炉建屋外へ搬出する際のRPV1,炉内構造物2から放出される放射線に対する遮蔽効果も向上する。
【0038】
RPV1とγシールド17の解体作業44は、以下の手順を含んで行われる。なお、記載の順序は作業の順序を規定したものではなく、順序が入れ替わってもよく、並行作業があってもよい。図6〜図18を参照して各作業を説明する。
【0039】
a.ラジアルビーム27とサポート28の切断作業44aを行う(図6のA、B部及びA,B部詳細を示す図7,8参照)。サポート28の取外しの際は、γシールド17に埋め込まれたボルトからナットを取外し、サポート28を取外す。ラジアルビーム27を取外す際は、図示のボルト27’を取外してラジアルビーム27を分離する。
【0040】
b.RPVノズル部9〜15とそのノズル部に取付けられた配管の切断作業44bを行う(図6のC,D,E,F,G部及びその詳細を示す図9〜図13並びに図14,15参照)。RPVノズル部9〜15と配管の切断の例を図14、図15を参照して説明する。図14はRPVノズル部9〜15とγシールド17の位置関係を示す。γシールド17には、RPVノズル部9〜15の位置に開口が形成され、各ノズルはこの開口内に入り込んだ形の配管67に接続されている。RPV1の外周には、γシールド17との間になる位置に、金属保温材66が装着されており、配管外面には金属保温材66’が装着されている。γシールド17の前記開口の金属保温材66’の外側はシールドプラグ64で塞がれている。配管の切断の場合、まず、配管の外周に装着されている金属保温材66’を切断して取外し、次いでシールドプラグ64を切断して取り外す。その後配管67を、所定の位置、例えばノズルと配管の接合位置とγシールド17外部の適当な位置で切断し、撤去する。配管67撤去後、γシールド17の前記開口の外面に仮遮蔽板68を蓋をするように取り付ける。図15は仮遮蔽板68を設けた状態である。配管68を切断したあとのノズルからはRPV1内部の放射線が出て来るので、仮遮蔽板68は放射線遮蔽として有効であり、鉛板などを用いるのが効果的である。
【0041】
c.γシールド17の重量をRPVに支持させる。
【0042】
γシールド17の重量をRPVに支持させる方法としては種々の方法が適用できる。図16に示すように、配管67を取り外したあとのノズルの穴に金属の丸棒、例えば鋼棒71を差し込んでノズルに溶接固定し、この鋼棒71を開口69に支持材70で固定して、γシールド17の重量を鋼棒71及び支持材70を介してRPVに支持させるようにしてもよい。また、鋼棒71を用いず、支持材70を直接ノズルの端部に溶接固定し、この支持材70を開口69に固定してγシールド17の重量を支持材70を介してRPVに支持させるようにしてもよい。また、RPV1とγシールド17の間にコンクリートを流し込んで固め、これで両者を結合してγシールド17の重量をRPVに支持させるようにしてもよい。また、γシールド17の開口69にワイヤロープを通してγシールド17の重量をRPVに支持させるようにしてもよい。
【0043】
d.γシールド17をRPVペデスタルに位置決めする基礎ボルト29のハツリ作業44dを行う(図6のA部及びA部詳細を示す図7参照)。RPVペデスタル18に埋め込まれている基礎ボルト周囲のコンクリートを取り除き、γシールド17とRPVペデスタルを分離する。
【0044】
e.ダクト63及び操作床等の搬出作業44eを行う(図6のH部及びH部詳細を示す図7参照)。
【0045】
f.バルクヘッドプレート19の切断作業44fを行う(図6のI部及びI部詳細を示す図18参照)。バルクヘッドプレート19は、床板をなす円環状の部分と床板下面にあって床板を補強している補強材からなり、切断はPCV本体に近い位置で、床板及び補強材の双方をPCV本体から分離する。
【0046】
g.PCVスタビライザ30の切断作業44gを行う。PCVスタビライザ30の切断により、PCV本体とγシールド17が分離される。
【0047】
一方、RPVとγシールドの解体作業44と同時に、RPVペデスタル18内の解体作業45が以下の手順で実施される(図3参照)。
【0048】
a.CRDハウジングサポート25の撤去作業45aを行う。
【0049】
b.CRD20とICM21のケーブル取外し作業45bを行う。
【0050】
c.CRDハウジング23とICMハウジング24の取外し作業45cを行う。 d.上記ハウジングビーム22の取外し作業45dを行う。
【0051】
以上で述べた、RPVとγシールドの解体作業44,RPVペデスタル内の解体作業45が終了したのち、次に、RPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの大型ブロック化による一体搬出作業49が行われる。RPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの大型ブロック化による一体搬出作業49を行うに当たっては、原子炉建屋31の天井部への開口部57の設置(手順47)(図19参照),原子炉建屋31の近傍部への大型揚重機58の設置(手順48)(図20参照)が必須条件となる。
【0052】
手順49のRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの大型ブロック化による一体搬出作業では、RPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの構造物が原子炉建屋31の近傍部に設置した大型揚重機58にて吊り上げられ、それから原子炉建屋外へ搬出される(図22〜図26参照)。
【0053】
ここで、図19に示す原子炉建屋天井部に開口部57を設ける際には、放射能が外部に漏れないように蓋もしくは開閉式シャッタ等を開口部上部に設けるのが望ましい。
【0054】
大型揚重機58の設置に際しては、自らの自重とRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジング吊り上げ時の重量に耐えるように地面に砂利を敷きつめ、その上に鉄板を敷くことにより地盤強化の対策を講じておく。
【0055】
尚、図20に示すように、原子炉建屋31外へRPVを搬出する際、原子炉建屋31に隣接して放射能遮蔽効果(放射性物質の外部環境への放出抑制効果)のあるクリーンルーム60を設け、その中でRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングからなる大型ブロックを移動させる。また、クリーンルーム60の天井部には、大型揚重機の吊り具(吊り上げ用ワイヤー)が移動可能なようにワイヤー通路を設けておくとともに、先に述べたように、揚重機58の起倒部材58Aであるジブが入り込めるように天井部及び側壁上部にジブの幅よりやや広めの開口を設け、併せてこの開口を閉鎖する手段を設けておく。
【0056】
RPVの放射線が前記開口より放出される現象については、上空へのスカイシャインが考えられるが、地上への到達は、RPV表面線量(10〜100mSv)の10のマイナス4乗程度であり、環境への影響は十分に無視できると推定される。
【0057】
尚、原子炉建屋31より搬出されたRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングを一体化した大型ブロックの保管は、図21に示すように、クリーンルーム60下部に設けた廃棄物保管ピット59へ格納し保管する方法と、クリーンルーム60内に設置した大型除染装置61によりRPV表面及びγシールド等を除染し環境へ影響しない程度まで線量を低減したうえでクリーンルーム60外へ搬出し原子力発電所敷地内に設けた廃棄物処理設備へ持ち込み保管する方法のいずれでもよい。
【0058】
但し、クリーンルーム60外へ搬出する場合、クリーンルーム下部に搬出用開口を設けておく必要がある。
【0059】
上記によりRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングを一体化した大型ブロック化による搬出作業が終了する。
【0060】
以上に示したのはRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングを一体化した大型ブロックとして搬出することを示した例であるが、RPV,炉内構造物,及びCRDハウジングをまとめて一体として、またγシールドを一体として、それぞれ搬出する場合についても上記工法を適用できるのは言うまでもない。例えば、図27〜図31はRPV,炉内構造物,及びCRDハウジングを一体として原子炉建屋外へ搬出した例であり、図32〜図36はγシールドを一体として原子炉建屋外へ搬出した例である。但し、γシールドをRPVと別個に一体として搬出する場合は、γシールドもしくはRPVの搬出前に、RPVのノズル部9〜15の配管を、γシールドに当らないように短く切り落しておく必要がある。
【0061】
上述の方法を採用することにより、RPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングを据付けられた状態のまま一体で搬出を行うことができ、RPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジング等の搬出時間の大幅な低減を行うことができる。また、原子炉格納容器や原子炉建屋の内部で、RPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングなどの放射能を帯びた部材が解体されないので、放射能を帯びた塵の原子炉格納容器や原子炉建屋の内部での飛散が少なく、寿命延長のための各種工事の実施に対する障害が少なくなる。
【0062】
【発明の効果】
請求項1又は2に示す本発明によれば、搬出時間を低減して、寿命延長工事の際のプラント停止期間を短縮する効果がある。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【図面の簡単な説明】
【図1】
沸騰水型軽水炉の原子炉圧力容器及び炉内構造物の例を示す縦断面図である。
【図2】
図1のA-A矢視横断面図である。
【図3】
沸騰水型軽水炉の原子炉格納容器の内部構造の例を示す縦断面図である。
【図4】
沸騰水型軽水炉を用いた原子力発電所の原子炉建屋の例を示す断面図である。
【図5】
本発明の実施例を示すフローチャートである。
【図6】
原子炉格納容器内の主要な作業の位置を示す断面図である。
【図7】
図6のA部に示すγシールド,ラジアルビーム、RPVペデスタルの関連詳細を示す断面図である。
【図8】
図6のB部に示すサポートの詳細を示す断面図である。
【図9】
図6のC部に示すノズル、配管、金属保温材及びγシールドの関連詳細を示す断面図である。
【図10】
図6のD部に示すノズル、配管及び金属保温の関連詳細を示す断面図である。
【図11】
図6のE部に示すノズル、配管、金属保温材及びγシールドの関連詳細を示す断面図である。
【図12】
図6のF部に示すノズル、配管、金属保温材及びγシールドの関連詳細を示す断面図である。
【図13】
図6のG部に示すノズル、配管、金属保温材及びγシールドの関連詳細を示す断面図である。
【図14】
ノズル、配管、金属保温材及びγシールドの関連の例を示す断面図である。
【図15】
配管切断後に設けられるγシールドの蓋を示す断面図である。
【図16】
γシールドの重量をRPVに支持させる方法の例を示す断面図である。
【図17】
図6のH部に示すダクトの切断位置の例を示す断面図である。
【図18】
図6のI部に示すバルクヘッドプレートのRPV,PCVとの関連を示す断面図である。
【図19】
図4に示す原子炉建屋天井に開口部を設けた例を示す断面図である。
【図20】
大型揚重機を原子炉建屋近傍部に設置し、原子炉建屋に接してクリーンルームを設置した状態を示す断面図である。
【図21】
図20に示すクリーンルームに廃棄物保管ピット及び大型除染装置を設置した例を示す断面図である。
【図22】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図23】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図24】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図25】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図26】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,γシールド,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図27】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図28】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図29】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図30】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図31】
本発明を適用してRPV,炉内構造物,CRDハウジングの一体物を原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図32】
本発明を適用してγシールドを原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図33】
本発明を適用してγシールドを原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図34】
本発明を適用してγシールドを原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図35】
本発明を適用してγシールドを原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図36】
本発明を適用してγシールドを原子炉建屋外へ搬出する状態を示す断面図である。
【図37】
原子炉圧力容器搬出用遮蔽建屋の側壁の一部及び該側壁の一部に連続する天井部の移動の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 原子炉圧力容器(RPV) 2 炉内構造物
3 ドライヤー 4 セパレータ
5 炉心シュラウド 6 炉心支持板
7 上部格子板 8 シュラウドサポート
9 主蒸気ノズル 10 給水ノズル
11 炉心スプレイノズル 12 再循環入口ノズル
13 再循環出口ノズル 14 各種計装ノズル
15 ドレン/ベントノズル 16 原子炉格納容器(PCV)
17 放射線遮蔽体(γシールド) 18 RPVペデスタル
19 バルクヘッドプレート 20 制御棒駆動装置(CRD)
21 中性子束検出器(ICM) 22 ビーム
23 CRDハウジング 24 ICMハウジング
25 CRDハウジングサポート 27 ラジアルビーム
28 サポート 29 γシールド基礎ボルト
30 PCVスタビライザ 31 原子炉建屋
32 原子炉ウエル 33 使用済燃料プール
34 ドライヤーセパレータプール(D/Sプール)
37 RPVヘッド 56 使用済燃料ラック
57 開口部 58 大型揚重機
59 廃棄物保管ピット 60 遮蔽効果のあるクリーンルーム
61 大型除染装置 63 ダクト
64 シールドプラグ 65 レストレイント
66,66’ 金属保温材 67 配管
68 仮遮蔽板 69 開口
70 支持材 71 鋼棒
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-18 
出願番号 特願平6-201788
審決分類 P 1 651・ 113- YA (G21C)
P 1 651・ 121- YA (G21C)
P 1 651・ 55- YA (G21C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 瀬川 勝久
末政 清滋
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3343447号(P3343447)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 原子炉圧力容器の搬出方法  
代理人 作田 康夫  
代理人 作田 康夫  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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