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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G02B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1112904 |
異議申立番号 | 異議2003-72004 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-05-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-08 |
確定日 | 2004-12-13 |
異議申立件数 | 4 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3375325号「カラー液晶ディスプレー装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3375325号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3375325号の請求項1乃至7に係る発明についての出願は、平成12年8月25日に特許出願され、平成14年11月29日にそれらの発明について特許の設定登録がなされ、その後、それらの特許について、三菱化学株式会社、苗村正、葛城範子及び久保田和夫より特許異議申立てがなされ、これを受けて平成16年3月16日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年5月25日に訂正請求書が提出されたが、この訂正請求はその後取り下げられ、さらに、平成16年7月9日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年9月21日に訂正請求書が提出されたものである。 2.訂正の適否 (1)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1中の「0.5重量%から7重量%まで」を「0.5重量%を超え4.7重量%まで」と訂正する。 訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1中の「表示色系」を「表色系」と訂正する。 訂正事項c 特許請求の範囲の請求項1中の「満たす」を「満たし、前記少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06である」と訂正する。 訂正事項d 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 訂正事項e 特許請求の範囲の元の請求項6および請求項7の番号を繰り上げるとともに、元の請求項6中の「請求項1ないし5」を「請求項1ないし4」と訂正するとともに、元の請求項7中の「請求項1ないし6」を「請求項1ないし5」と訂正する。 訂正事項f 明細書第0017段落中の「0.5重量%から7重量%まで」を「0.5重量%を超え4.7重量%まで」と訂正し、「表示色系」を「表色系」と訂正し、「満たす」を「満たし、前記少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06である」と訂正する。 訂正事項g 明細書第0021段落を削除する。 訂正事項h 明細書第0031段落中の「0.5〜7重量%、好ましくは3〜7重量%である。ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が0.5重量%未満では、得られる着色組成物を用いて、EBU規格の色特性を具備し、膜厚が2.5μm以下の青色フィルタセグメントを形成することが困難である。一方、ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が7重量%を越えると、得られる着色組成物を用いて形成される青色フィルタの色度座標のx値が、EBU規格の0.15を越えて規格から外れてしまう。好ましくは、青色着色料中のジオキサジンバイオレット顔料の含有量は6重量%を超えない。」を「0.5重量%を超え4.7重量%まで、好ましくは3〜4.7重量%である。ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が0.5重量%以下では、得られる着色組成物を用いて、EBU規格の色特性を具備し、膜厚が2.5μm以下の青色フィルタセグメントを形成することが困難である。一方、ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が4.7重量%を越えると、得られる着色組成物を用いて形成される青色フィルタの色度座標のx値が、EBU規格の0.15を越えて規格から外れてしまうおそれがある。」と訂正する。 訂正事項i 明細書第0059段落中の「表示色系」を「表色系」と訂正する。 訂正事項j 明細書第0099段落の表1中の「実施例2」を「参考例1」と訂正し、「実施例3」を「実施例2」と訂正し、「実施例4」を「参考例2」と訂正する。 訂正事項k 明細書第0099段落の表1の「EBU規格」の行で、「赤」についてのxの値「0.640」を「0.64」と訂正し、「赤」についてのyの値「0.330」を「0.33」と訂正する。 訂正事項l 明細書第0099段落の表1の「EBU規格」の行で、「緑」についてのxの値「0.290」を「0.29」と訂正し、「緑」についてのyの値「0.600」を「0.60」と訂正する。 訂正事項m 明細書第0099段落の表1の「EBU規格」の行で、「青」についてのxの値「0.150」を「0.15」と訂正し、「青」についてのyの値「0.060」を「0.06」と訂正する。 (2)訂正の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (ア)上記訂正事項aについては、元の請求項1中の「0.5重量%から7重量%まで」を減縮して「0.5重量%を超え4.7重量%まで」と訂正しようとするものである。 従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に該当する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 従って、上記訂正事項aは特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (イ)上記訂正事項bおよびiについては、特許請求の範囲の請求項1および明細書第0059段落中にそれぞれある「表示色系」を誤記の訂正を目的としてそれぞれ「表色系」と訂正しようとするものである。 明細書の第0014段落には、「そこで、本発明の目的は、現行の材料では実現困難な、1〜2.5μmの膜厚でEBU規格の青についての色度座標値xおよびyを満足し得る青色フィルタセグメントを含むカラーフィルタと特定のバックライトユニットを組み合わせたカラー液晶ディスプレー装置を提供することにある。」とあり、第0015段落には、「本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、銅フタロシアニン顔料とジオキサジンバイオレット顔料とを特定の比率で含有する青着色組成物が、膜厚が2.5μm以下であってもEBU規格の青色特性を満足し得る青色フィルタを生成し得ることを見いだした。本発明は、この知見に基づく。」とあり、第0016段落には、「また、本発明者らは、本発明の青色フィルタを含むカラーフィルタと、三波長域発光型蛍光ランプを光源とする特定の光強度分布を有するバックライトを発するバックライトユニットとを組み合わせることにより、EBU規格の色特性を具備するカラー液晶ディスプレーが得られることを見いだした。」とあり、さらに第0100段落には「以上述べたように、本発明により、EBU規格の色特性を具備し、膜厚が2.5μm以下の青のカラーフィルタが形成できるようになり、その結果色度特性においてEBU規格を満足させるカラー液晶ディスプレーが提供される。」とあるところ、 明細書の第0009段落〜第0010段落には、「一方、EBU規格の受像三原色は下記のように定められている。 赤: x=0.64;y=0.33 緑: x=0.29;y=0.60 青: x=0.15;y=0.06 なお、x=X/(X+Y+Z)であり、y=Y/(X+Y+Z)であり、X,Y,ZはXYZ表色系における3刺激値である。」とあり、 上記「XYZ表示色系」は、「XYZ表色系」の誤記であることが明らかである。 従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正に相当するものである。 すなわち、上記訂正事項bおよびiは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (ウ)上記訂正事項cについては、特許請求の範囲の請求項1中の「満たす」を特許請求の範囲の減縮を目的として「満たし、前記少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06である」と訂正しようとするものである。 「前記少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06である」は、明細書の第0009段落〜第0010段落に「一方、EBU規格の受像三原色は下記のように定められている。 赤: x=0.64;y=0.33 緑: x=0.29;y=0.60 青: x=0.15;y=0.06」とあり、第0052段落に「カラーフィルタとバックライトユニットとを具備するカラー液晶ディスプレーの色特性は、主に、 … カラーフィルタを通過するバックライトの光の特性により決まり、 … 。また、色特性は、人の視覚特性から(X,Y,Z)や(L* ,a* ,b *)などの座標で表すことができ、カラーテレビや液晶ディスプレーなどの分野では、色度を(x,y)で表すことが多く、標準色となるNTSCやEBUにおける三原色も(x,y)で表現されている。」とあるように、明細書に記載されていたものである。 従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に該当する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項cは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 従って、上記訂正事項cは特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (エ)上記訂正事項dについては、上記訂正事項aに示す通りに請求項1を減縮したことに合わせて請求項5を削除しようとするものであり、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に該当する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項dは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 従って、上記訂正事項dは特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (オ)上記訂正事項eについては、請求項5の削除に伴い元の請求項6および請求項7の番号を繰り上げるとともに、引用従属請求項の番号を訂正しようとするものであって、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する不明りょうな記載の釈明に相当するものである。 すなわち、上記訂正事項eは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (カ)上記訂正事項fについては、上記訂正事項a、bおよびcに合わせて明細書第0017段落の記載を訂正しようとするものであって、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する不明りょうな記載の釈明に相当するものである。 すなわち、上記訂正事項fは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (キ)上記訂正事項gについては、上記訂正事項aに合わせて明細書第0021段落の記載を削除しようとするものであって、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する不明りょうな記載の釈明に相当するものである。 すなわち、上記訂正事項gは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (ク)上記訂正事項hについては、上記訂正事項aに合わせて明細書第0031段落の記載を訂正しようとするものであって、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する不明りょうな記載の釈明に相当するものである。 すなわち、上記訂正事項hは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (ケ)上記訂正事項jについては、上記訂正事項aおよびcに合わせて明細書第0099段落中表1の記載を訂正しようとするものであって、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する不明りょうな記載の釈明に相当するものである。 すなわち、上記訂正事項jは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (コ)上記訂正事項k〜mについては、誤記の訂正を目的として、明細書第0099段落の表1において、それぞれ「EBU規格」の行で、「赤」についてのxの値「0.640」を「0.64」と訂正し、「赤」についてのyの値「0.330」を「0.33」と訂正し、「緑」についてのxの値「0.290」を「0.29」と訂正し、「緑」についてのyの値「0.600」を「0.60」と訂正し、「青」についてのxの値「0.150」を「0.15」と訂正し、「青」についてのyの値「0.060」を「0.06」と訂正しようとするものである。 従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正に相当するものである。 すなわち、上記訂正事項k〜mは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項から第4項の規定に適合するものである。 (3)むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する第126条第2項及び第3項に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立についての判断 (1)本件発明 上記2.で示したように上記訂正は認められるから、本件特許の請求項1乃至6に係る発明(以下、「本件発明1」乃至「本件発明6」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)1μmから2.5μmまでの厚さを有し、少なくとも1つの赤色フィルタセグメント、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントおよび少なくとも1つの青色フィルタセグメントを備え、該少なくとも1つの青色セグメントは、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる着色料担体と、該着色料担体に分散された銅フタロシアニン顔料およびジオキサジンバイオレット顔料からなる青色着色料を含み、かつ該ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が、該青色着色料の全量を基準として0.5重量%を超え4.7重量%までである青色着色組成物から形成されたカラーフィルタと、(B)三波長域発光型蛍光ランプを光源として有するバックライトユニットを備え、該バックライトユニットから出射されるバックライトの光強度の波長に対する分布I(λ)が以下の条件: 0.35≦α≦0.5 (ここで、αは、式: 【数1】 (λ:波長; (λ)、 (λ)、 (λ):XYZ表色系の等色関数) で表される。)を満たし、前記少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06であることを特徴とするカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項2】 該ジオキサジンバイオレット顔料が、C.I. Pigment Violet23であることを特徴とする請求項1に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項3】 該銅フタロシアニン顔料の80重量%以上が、C.I. PigmentBlue 15:6により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項4】 カラーフィルタが1μmから2.0μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項5】 該青色フィルタセグメントが、着色料担体により提供される樹脂質バインダーと、10重量%から40重量%までの青色着色料を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項6】 該蛍光ランプが、Sr5 (PO4 )3 Cl:Eu、(SrCaBa)5 (PO4 )3 Cl:Eu、およびBaMg2 Al16O27:Euからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の青発光蛍光体を20から55重量%までの範囲内で、LaPO4 :Ce,Tbおよび(CeTb)MgAl14O19からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の緑発光蛍光体を20から55重量%までの範囲内で、Y2 O3 :Euからなる赤発光蛍光体を20から45重量%までの範囲内で配合した蛍光体層を有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のカラー液晶ディスプレー装置。」 (2)平成16年3月16日付け取消理由通知の概要 [理由A]特許法第36条第4項および同条第6項第2号違反について (ア)異議申立人苗村正が提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件特許明細書には記載不備があるから、本件は特許法第36条第4項および同条第6項第2号の規定に違反する。 (イ)異議申立人久保田和夫が提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件特許明細書には記載不備があるから、本件は特許法第36条第4項および同条第6項第2号の規定に違反する。 [理由B]特許法第29条第2項違反について 刊行物1;特開平11-38613号公報(異議申立人三菱化学株式会社が提出した甲第1号証、異議申立人苗村正が提出した甲第2号証) 刊行物2;「月刊 ディスプレイ」1996,Vol.2,No.5,(株)テクノタイムズ社、平成8年5月1日発行、19〜27頁(異議申立人三菱化学株式会社が提出した甲第2号証) 刊行物3;特開平8-162070号公報(異議申立人三菱化学株式会社が提出した甲第3号証) 刊行物4;特開平10-246884号公報(異議申立人苗村正が提出した甲第1号証) 刊行物5;特開平9-97017号公報(同甲第3号証) 刊行物6;特開平11-142640号公報(異議申立人葛城範子が提出した甲第1号証) 刊行物7;「月刊 ディスプレイ」1997,Vol.3,No.2,(株)テクノタイムズ社、平成9年2月1日発行、53〜60頁(同甲第2号証) 刊行物8;特開平9-139190号公報(同甲第3号証) 刊行物9;日本色彩学会編「新編色彩科学ハンドブック」財団法人東京大学出版会、1989年11月25日 6刷(第2回改訂)発行、68頁、92,93頁、1452,1453頁、1456頁(異議申立人三菱化学株式会社が提出した甲第4号証) 刊行物10;JIS Z8701-1982(異議申立人苗村正が提出した甲第5号証の1) 刊行物11;日本色彩学会編「新編色彩科学ハンドブック(第2版)」財団法人東京大学出版会、1998年6月10日初版発行、17〜47頁、63頁(同甲第5号証の2) 刊行物12;JIS Z8725-1987(同甲第5号証の3) 刊行物13;大田登著「色再現工学の基礎」(株)コロナ社、1997年9月10日 初版第1刷発行、8〜23頁(同甲第5号証の4) 刊行物14;JIS Z8724-1983(異議申立人葛城範子が提出した参考資料1) (ア)異議申立人三菱化学株式会社が提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件請求項1乃至7に係る発明(以下、「本件発明1乃至7」という。)は、刊行物9に記載の発明を基に刊行物1乃至3に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明である。 (イ)異議申立人苗村正が提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件発明1乃至6は、刊行物10乃至13に記載の発明を基に刊行物1及び4に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明であり、また、本件発明7は、刊行物10乃至13に記載の発明を基に刊行物1及び4乃至5に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明である。 また、刊行物5には色温度6400Kの記載があるから、本件発明1乃至6は、刊行物10乃至13に記載の発明を基に刊行物1及び4乃至5に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明である。 (ウ)異議申立人葛城範子が提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件発明1乃至6は、刊行物14に記載の発明を基に刊行物6及び7に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明であり、また、本件発明7は、刊行物14に記載の発明を基に刊行物6乃至8に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明である。 (エ)本件発明1乃至7は、刊行物9乃至14に記載の発明を基に刊行物1乃至8に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明である。 (3)当審の判断 [理由A] (ア)異議申立人苗村正は、本件請求項1〜7には、導光板や拡散板を含むバックライトユニットは何ら規定されておらず、また、発明の詳細な説明にも記載がないから、特許を受けようとする発明が明確ではなく、さらに、本件特許が当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張する。しかしながら、本件特許明細書の段落[0066]及び明細書に添付の図2の記載からみて、バックライトユニットは、光源のほかに導光板または拡散板を備えるものであることが実質的に開示されているから、上記異議申立人の主張は理由がない。 (イ)異議申立人久保田和夫は、本件特許の請求項1に記載されたXYZ表示色系の等色関数がいかなるものか記載されておらず、また、その波長の積分範囲の根拠が不明であるから、本件特許明細書には不備がある旨主張するが、上記訂正により前記不備は解消された。 [理由B] 本件発明1に係るカラー液晶ディスプレー装置は、「ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が、該青色着色料の全量を基準として0.5重量%を超え4.7重量%までである青色着色組成物から形成されたカラーフィルタ」であって、「少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06である」ことを特徴とするものであるが、刊行物1乃至14には、本件発明1が特徴とする上記構成について、開示されていないばかりか、それを示唆する記載もない。そして、本件発明1は、この構成により、EBU(European Broadcasting Union)規格の色特性を具備し、膜厚が2.5μm以下の青のカラーフィルタが形成できるという顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、刊行物1乃至14に記載の発明に基づいて、あるいは、それらを組み合わせて容易に発明することができたものとすることはできない。 また、本件発明2乃至6は、いずれも本件発明1を引用するものであるが、上記のとおり、本件発明1が刊行物1乃至14に基づいて、あるいは、それらを組み合わせて容易に発明することができたものとすることはできないから、本件発明2乃至6も、同様に、刊行物1乃至14に記載の発明に基づいて、あるいは、それらを組み合わせて、容易に発明することができたものとすることはできない。 4.まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1乃至6に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また他に請求項1乃至6に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 カラー液晶ディスプレー装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)1μmから2.5μmまでの厚さを有し、少なくとも1つの赤色フィルタセグメント、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントおよび少なくとも1つの青色フィルタセグメントを備え、該少なくとも1つの青色セグメントは、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる着色料担体と、該着色料担体に分散された銅フタロシアニン顔料およびジオキサジンバイオレット顔料からなる青色着色料を含み、かつ該ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が、該青色着色料の全量を基準として0.5重量%を超え4.7重量%までである青色着色組成物から形成されたカラーフィルタと、(B)三波長域発光型蛍光ランプを光源として有するバックライトユニットを備え、該バックライトユニットから出射されるバックライトの光強度の波長に対する分布I(λ)が以下の条件: 0.35≦α≦0.5 (ここで、αは、式: 【数1】 で表される。)を満たし、前記少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06であることを特徴とするカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項2】 該ジオキサジンバイオレット顔料が、C.I.Pigment Violet23であることを特徴とする請求項1に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項3】 該銅フタロシアニン顔料の80重量%以上が、C.I.PigmentBlue15:6により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項4】 カラーフィルタが1μmから2.0μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項5】 該青色フィルタセグメントが、着色料担体により提供される樹脂質バインダーと、10重量%から40重量%までの青色着色料を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【請求項6】 該蛍光ランプが、Sr5(PO4)3Cl:Eu、(SrCaBa)5(PO4)3Cl:Eu、およびBaMg2Al16O27:Euからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の青発光蛍光体を20から55重量%までの範囲内で、LaPO4:Ce,Tbおよび(CeTb)MgAl14O19からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の緑発光蛍光体を20から55重量%までの範囲内で、Y2O3:Euからなる赤発光蛍光体を20から45重量%までの範囲内で配合した蛍光体層を有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のカラー液晶ディスプレー装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、カラーフィルタと特定のバックライトユニットを組み合わせてなる液晶ディスプレー装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 基本的に、カラー液晶ディスプレー装置は、第1の透明電極層が形成された第1の透明基板と第2の透明電極層が形成された第2の透明基板との間に封入された液晶層を備える。カラーフィルタ層は、通常、第2の透明基板と第2の透明電極との間に形成される。第1および第2の透明基板の外側には、それぞれ、第1および第2の偏光板が設けられている。第1の偏光板の外側にはバックライト光源を含むバックライトユニットが設置されている。 【0003】 このような液晶ディスプレー装置において、第1および第2の電極層間に印加する電圧を画素毎に調整することにより、第1の偏光板を通過したバックライトユニットからの光の偏光度合いを制御して、第2の偏光板を通過する光量をコントロールすることにより表示が行われる。 【0004】 従って、バックライトの発光スペクトルとカラーフィルタの分光特性が、カラー液晶ディスプレーの色特性を決定する重要な因子となっている。 【0005】 従来、カラーフィルタとしては、耐熱性、耐光性等の諸耐性にすぐれた顔料分散型カラーフィルタが用いられている。また、バックライトユニットとしては、演色性にすぐれた三波長域発光型蛍光ランプ(以後「三波長ランプ」ということがある)を光源とするバックライトユニットが広く用いられている。これらの顔料分散型カラーフィルタおよび高演色性バックライトの出現により、カラー液晶ディスプレー装置は、液晶カラーテレビやカーナビゲーション用の表示装置として、また液晶ディスプレー一体型のノートパソコンとして大きな市場を形成するに至っている。更に、近年、省エネ、省スペースという特長を活かした、デスクトップパソコン用のモニターとしても普及し始めており、従来のCRTモニターに代わるディスプレーとして注目されている。 【0006】 しかし、現状ではCRTの表示性能は液晶ディスプレーより高く、特にCRTの表示色の欧州規格であるEBU(European Broadcasting Union)規格を満足する液晶ディスプレーがまだ出現しておらず、この規格達成がテレビジョンの分野あるいはマルチメディア用ディスプレーの分野で、液晶ディスプレーが大きく普及する一つの鍵となっている。 【0007】 カラーテレビでは、(1)受像(カラーカメラ)、(2)伝送、(3)受像(受像機)のプロセスを通じて、被写体の形、動き、色相が受像画面上に再現されている。従って、色相も含めた画像信号の伝送方式が規格化されている。この方式の代表的なものはNTSC(National Television System Committee)方式であり、アメリカ、カナダ、日本がこの方式でテレビ放送を行っている主要な国である。一方、ヨーロッパでは、EBUが方式および規格を定めている。 【0008】 カラーテレビの再現色域を決定するのは、受像機の三原色(受像三原色)の色度であり、カラーカメラが持つべき分光特性もこれによって定まる。NTSC方式の受像三原色は、XYZ表色系における色度座標xおよびyについて、下記のように定められている。 【0009】 赤: x=0.67;y=0.33 緑: x=0.21;y=0.71 青: x=0.14;y=0.08 一方、EBU規格の受像三原色は下記のように定められている。 【0010】 赤: x=0.64;y=0.33 緑: x=0.29;y=0.60 青: x=0.15;y=0.06 なお、x=X/(X+Y+Z)であり、y=Y/(X+Y+Z)であり、X,Y,ZはXYZ表色系における3刺激値である。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、現在実用化されているカラー液晶ディスプレーの色度はNTSC方式をベースとしており、上に述べたようにEBU規格の色度を満足する液晶ディスプレーはまだ実用化されていない。具体的には、赤と緑については、現行の顔料分散型の着色組成物からなるカラーフィルタと三波長ランプからのバックライトとの組合せにより、比較的容易にEBU規格を達成可能である。しかし、青についてEBU規格を達成するには、現行の銅フタロシアニン顔料を用いた着色組成物からなる青色カラーフィルタと三波長ランプからのバックライトとの組合せでは青色カラーフィルタの膜厚を相当厚くする必要があり、現行のカラーフィルタの膜厚が一般に1〜2.5μmであることを考えると、非実用的である。 【0012】 さらに詳しく説明すると、現在一般に用いられている三波長ランプを光源とするバックライトユニットを具備するカラー液晶ディスプレー用に、現行の青色の着色組成物を用いてEBU規格を満たす青のカラーフィルタを形成しようとするとその膜厚を5〜9μmとする必要がある。これは以下のような事情から不適切である。 【0013】 すなわち、一般にカラーフィルタの膜厚は、薄すぎると十分な彩度が出ず、厚すぎるとパターン形状が悪くなる。感光性の顔料分散レジストの場合、膜厚が大きいと、光硬化していない部分を溶解除去するために必要な時間が長くなるため、パターンの周辺部の直線性がサイドエッチングにより悪くなる。また、感光性の顔料分散レジスト自体、光吸収が大きく、パターンを形成するための露光の際、光が十分に底部まで達し得ず、膜の底部は未硬化のままとなる。そのために、膜厚の増加とともに未硬化層部分の膜厚も大きくなり、その結果サイドエッチング量が大きくなって、膜断面は逆テーパ形状になりやすくなる。カラーフィルタが逆テーパ状断面を有すると、その上に形成される透明電極が不連続となり、断線が生じ、液晶ディスプレーの表示に障害が起こる。また、第1色のフィルタセグメントまたは第2色のフィルタセグメントが逆テーパ状断面を有すると、次に形成されるカラーフィルタセグメントにムラが生じ易くなる。このサイドエッチングを抑えるために露光時間を短くすると、非露光部の除去が不充分となり、残渣を残し、現像のラチチュード(許容範囲)が狭くなる。かかる事情から、カラーフィルタの膜厚は1.0〜2.5μm、好ましくは1.0〜2.0μmとすべきである。 【0014】 そこで、本発明の目的は、現行の材料では実現困難な、1〜2.5μmの膜厚でEBU規格の青についての色度座標値xおよびyを満足し得る青色フィルタセグメントを含むカラーフィルタと特定のバックライトユニットを組み合わせたカラー液晶ディスプレー装置を提供することにある。 【0015】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、銅フタロシアニン顔料とジオキサジンバイオレット顔料とを特定の比率で含有する青着色組成物が、膜厚が2.5μm以下であってもEBU規格の青色特性を満足し得る青色フィルタを生成し得ることを見いだした。本発明は、この知見に基づく。 【0016】 また、本発明者らは、本発明の青色フィルタを含むカラーフィルタと、三波長域発光型蛍光ランプを光源とする特定の光強度分布を有するバックライトを発するバックライトユニットとを組み合わせることにより、EBU規格の色特性を具備するカラー液晶ディスプレーが得られることを見いだした。 【0017】 すなわち、本発明によれば、(A)1μmから2.5μmまでの厚さを有し、少なくとも1つの赤色フィルタセグメント、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントおよび少なくとも1つの青色フィルタセグメントを備え、該少なくとも1つの青色セグメントは、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる着色料担体と、該着色料担体に分散された銅フタロシアニン顔料およびジオキサジンバイオレット顔料からなる青色着色料を含み、かつ該ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が、該青色着色料の全量を基準として0.5重量%を超え4.7重量%までである青色着色組成物から形成されたカラーフィルタと、(B)三波長域発光型蛍光ランプを光源として有するバックライトユニットを備え、該バックライトユニットから出射されるバックライトの光強度の波長に対する分布I(λ)が以下の条件: 0.35≦α≦0.5 (ここで、αは、式: 【数2】 で表される。)を満たし、前記少なくとも1つの青色フィルタセグメントを透過した前記バックライトのXYZ表色系における色度座標のx値がEBU規格の0.15であり、y値がEBU規格の0.06であることを特徴とするカラー液晶ディスプレー装置が提供される。 【0018】 ジオキサジンバイオレット顔料は、C.I.Pigment Violet23であることが好ましい。 【0019】 また、銅フタロシアニン顔料の80重量%以上が、C.I.Pigment Blue15:6により構成されることが好ましい。 【0020】 本発明のカラーフィルタは、1μmから2.0μmまでの厚さを有することが好ましい。 【0021】 【0022】 本発明のカラーフィルタにおける青色フィルタセグメントは、着色料担体により提供される樹脂質バインダーと、10重量%から40重量%までの青色着色料を含有することが好ましい。 【0023】 【0024】 【0025】 【0026】 本発明のカラー液晶ディスプレー装置において、蛍光ランプは、Sr5(PO4)3Cl:Eu、(SrCaBa)5(PO4)3Cl:Eu、およびBaMg2Al16O27:Euからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の青発光蛍光体を20から55重量%までの範囲内で、LaPO4:Ce,Tbおよび(CeTb)MgAl14O19からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の緑発光蛍光体を20から55重量%までの範囲内で、Y2O3:Euからなる赤発光蛍光体を20から45重量%までの範囲内で配合した蛍光体層を有することが好ましい。 【0027】 【発明の実施の形態】 本発明のカラーフィルタは、少なくとも1つの赤色フィルタセグメント、少なくとも1つの緑色フィルタセグメント、および少なくとも1つの青色フィルタセグメントを含み、1μmから2.5μmまでの、好ましくは1μmから2μmまでの厚さを有する。 【0028】 青色フィルタセグメントは、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる群の中から選ばれた着色料担体と、この着色料担体中に分散された青色着色料を含有する青色着色組成物から形成される。青色着色料は、銅フタロシアニン顔料およびジオキサジンバイオレット顔料からなる。着色料担体は、得られる青色フィルタセグメントにおいて樹脂質バインダーを提供する。 【0029】 本発明に使用される銅フタロシアニン顔料には、α型、β型、ε型等の結晶質銅フタロシアニン顔料が含まれる。なかでも、最大透過波長が最も短波長側にあるため、ε型銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue15:6)が好適に用いられる。特に、使用する銅フタロシアニン顔料の80重量%以上がC.I.Pigment Blue15:6により構成されることが好ましい。C.I.Pigment Blue15:6の比率が銅フタロシアニン顔料の80重量%未満の場合には、y値が大きくなり、EBU規格のy=0.06に合わせるのが困難となる傾向となる。 【0030】 銅フタロシアニン顔料とともに本発明の青色着色料を構成するジオキサジンバイオレット顔料は、銅フタロシアニン顔料に少量添加することにより青色カラーフィルタセグメントの膜厚を増加させずにy値を小さくする働きをするものであり、C.I.Pigment Violet23が好適に用いられる。 【0031】 本発明において、ジオキサジンバイオレット顔料の含有量は、青色着色料(銅フタロシアニン顔料+ジオキサジンバイオレット顔料)の全量を基準として、0.5重量%を超え4.7重量%まで、好ましくは3〜4.7重量%である。ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が0.5重量%以下では、得られる着色組成物を用いて、EBU規格の色特性を具備し、膜厚が2.5μm以下の青色フィルタセグメントを形成することが困難である。一方、ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が4.7重量%を越えると、得られる着色組成物を用いて形成される青色フィルタの色度座標のx値が、EBU規格の0.15を越えて規格から外れてしまうおそれがある。 【0032】 本発明の青色着色料を分散させる着色料担体は、上に述べたように、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれ、その前駆体には、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独または2種以上混合して用いることができる。 【0033】 本発明のカラーフィルタ用着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化するときには、光開始剤等が添加される。 【0034】 熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。 【0035】 感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン-無水マレイン酸共重合物やα-オレフィン-無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。 【0036】 モノマーおよびオリゴマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。 【0037】 光開始剤としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン等のアセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光開始剤、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光開始剤、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系光開始剤およびカルバゾール系光開始剤、イミダゾール系光開始剤等が用いられる。 【0038】 上記光開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α-アシロキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物も併用することができる。 【0039】 本発明の青色着色組成物は、銅フタロシアニン顔料とジオキサジンバイオレット顔料とを上記比率で混合したのち、得られた顔料混合物を、必要に応じて上記光開始剤とともに、着色料担体中に既知の方法で微細に分散して製造することができる。また、本発明の青色着色組成物は、銅フタロシアニン顔料とジオキサジンバイオレット顔料とを別々に着色料担体に分散したものを、ジオキサジンバイオレット顔料の含有量が上記比率となるように両者を混合して製造することもできる。 【0040】 本発明の青色着色組成物には、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が1〜2.5μmとなるように塗布して青色フィルタセグメントを形成することを容易にするために溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-n-アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独にもしくは混合して用いる。 【0041】 本発明の青色着色組成物は、グラビアオフセット用印刷インキ、水無しオフセット用印刷インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材の形態で調製することができる。青色着色レジスト材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂または感光性樹脂とモノマー、光開始剤を含有する組成物中に本発明の青色着色料を分散させたものである。 【0042】 本発明の青色着色料は、好ましくは、青色フィルタセグメントをフォトリソグラフ法により形成する場合には、青色着色組成物中に1.5〜7重量%の割合で含有され、青色フィルタセグメントを印刷法により形成する場合には、青色着色組成物中に1.5〜40重量%の割合で含有される。いずれにしろ、青色着色料は、最終青色フィルタセグメント中に好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜40重量%の割合で含有され、その残部は、着色料担体により提供される樹脂質バインダーから実質的になる。 【0043】 本発明の青色着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。 【0044】 既述のように、本発明のカラーフィルタは、少なくとも1つの赤色フィルタセグメント、少なくとも1つの緑色フィルタセグメントおよび少なくとも1つの青色フィルタセグメントを含み、ここで、青色フィルタセグメントは本発明の青色着色組成物を用いて形成される。赤色フィルタセグメントおよび緑色フィルタセグメントは通常の赤色の着色組成物および通常の緑色の着色組成物を用いてそれぞれ形成することができる。特に、1〜2.5μmの膜厚でもEBU規格を満足する赤色フィルタセグメントを提供し得る赤色組成物は、本発明の青色着色料の代わりに、例えばC.I.Pigment Red254とC.I.Pigment Red177の混合物を用いて得られる組成物である。赤色顔料としては、C.I.Pigment Red7、C.I.Pigment Red14、C.I.Pigment Red41、C.I.Pigment Red48:1、C.I.Pigment Red48:2、C.I.Pigment Red48:3、C.I.Pigment Red48:4、C.I.Pigment Red146、C.I.Pigment Red178、C.I.Pigment Red184、C.I.Pigment Red185、C.I.Pigment Red187、C.I.Pigment Red200、C.I.Pigment Red202、C.I.Pigment Red208、C.I.Pigment Red210、C.I.Pigment Red246、C.I.Pigment Red255、C.I.Pigment Red264およびC.I.Pigment Red272も使用することができる。また、1〜2.5μmの膜厚でもEBU規格を満足する緑色フィルタセグメントを提供し得る緑色組成物は、本発明の青色着色料の代わりに、例えばC.I.Pigment Green36とC.I.Pigment Yellow150、C.I.Pigment Yellow139またはC.I.Pigment Yellow13との混合物を用いて得られる組成物である。 【0045】 本発明のカラーフィルタは、印刷法またはフォトリソグラフィー法により、透明基板上に形成することができる。 【0046】 透明基板としては、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板が用いられる。 【0047】 印刷法による各フィルタセグメントの形成は、上記各種の印刷インキとして調製した着色組成物の印刷と乾燥を繰り返すだけでパターン化ができるため、カラーフィルタの製造法としては、低コストで量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。 【0048】 印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、ブランケットの膨潤、溶解等があると、それに伴うパターンの再現性の低下や透明性の低下を招くので印刷インキの溶剤の選択には、種々の注意を要する。さらに、印刷機上でのインキの流動性の制御も重要であり、分散剤や体質顔料によるインキ粘度の調整も行うことができる。 【0049】 フォトリソグラフィー法により各フィルタセグメントを形成する場合は、上記溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材として調製した着色組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が1〜2.5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。その後溶剤あるいはアルカリ現像液に浸漬するかもしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去してパターン形成をした後、同様の操作を他色について繰り返して、カラーフィルタを製造することができる。さらに、着色レジスト材の重合を促進するため、加熱を施すことも必要に応じ行える。 【0050】 現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。 【0051】 なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色レジスト材を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ可溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。 【0052】 カラーフィルタとバックライトユニットとを具備するカラー液晶ディスプレーの色特性は、主に、カラーフィルタの透過スペクトルおよびカラーフィルタを通過するバックライトの光の特性により決まり、バックライトのスペクトル強度分布とカラーフィルタの透過スペクトル分布との積により決定される。また、色特性は、人の視覚特性から(X,Y,Z)や(L*,a*,b*)などの座標で表すことができ、カラーテレビや液晶ディスプレーなどの分野では、色度を(x,y)で表すことが多く、標準色となるNTSCやEBUにおける三原色も(x,y)で表現されている。 【0053】 光源のエネルギーの波長分布I(λ)、カラーフィルタの透過スペクトルT(λ)、および人の視覚特性を表す等色関数: 【0054】 【数3】 【0055】 と、色度(x,y)との関係は次のように表される。 【0056】 【数4】 (λは、波長) 【0057】 本発明のカラー液晶ディスプレー装置は本発明のカラーフィルタとバックライトユニットとを具備し、バックライトから出射されるバックライトが以下の条件を備えていることが必要である。 【0058】 0.35≦α≦0.5 ここで、αは、式: 【0059】 【数5】 【0060】 で示される。 【0061】 EBU規格の青は色純度が高い、即ち、xが所定の値のときに、yの値が小さいことが重要であり、等色関数: 【0062】 【数6】 【0063】 のカーブと青のカラーフィルタの透過スペクトルの重なりが大きいことが必要となる。ここでαは、バックライトの光のエネルギー分布の形状を表すパラメーターであり、バックライトの可視域でのエネルギーのうちの、 【0064】 【数7】 【0065】 との重なり部分の比率に相当するものであり、α値を上記範囲内に設定することにより対応するバックライトはEBU規格に適正に合致するものとなる。 【0066】 バックライトの光源としては、現在ほとんど三波長ランプが用いられている。三波長ランプの発光スペクトルは、赤、緑、青に発光する蛍光体の種類、配合、コーティング方法によって決定される。カラー液晶ディスプレーでは、三波長ランプをバックライトユニットに組み込んで用いられるが、この際、光源から出た光は導光板や拡散板を通してディスプレーの画面全体に均一な輝度を有する面発光体となる。ただし、この導光板や拡散板を光が通ることにより、散乱等によって、光源のスペクトルの短波長側の強度が一般に低下する。従って、本発明でバックライトに要求される条件とは三波長ランプそのものの発光スペクトルではなく、バックライトユニットから出て液晶ディスプレー装置に入射する光としての発光スペクトルに要求される条件である。 【0067】 α値は、バックライトの発光エネルギーのうちの青に効く成分に相当し、それが大きいほど青に有効な成分の比率が向上する。従って、α値が大きければ大きいほどディスプレーとして青が再現し易くなり、小さければ出にくくなる。α値が0.35より小さいときは、実質的にEBU規格に合致する青の色は達成されない。つまり、カラー液晶ディスプレーは赤、緑、青全てがオンの時に、3色の合成(加色混合)で白である必要があり、α値が0.35より小さい場合には青成分が小さくなるため、白が青の補色である黄色味を帯びてくる。これを補正するには、カラーフィルタの緑と赤の透過率を下げる必要があり、ディスプレーとしては、バックライトの利用効率の低く、暗い画面になってしまう。従って、α値は0.35以上、好ましくは0.4以上であることが必要である。 【0068】 一方、α値が0.5を越えると、逆に青のカラーフィルタの透過率を下げる必要が生じ、ディスプレーとしては、やはり暗い画面となってしまう。従って、α値は0.5以下、好ましくは、0.45以下であることが必要である。 【0069】 なお、ディスプレー装置においてカラーフィルタ以外の偏光板等の部材、要素が存在するために、ディスプレーの色度がわずかに変化することがあるが、色度は、本発明の範囲内で修正することができる。 【0070】 バックライトのα値は、光源である三波長ランプに使用する蛍光体の種類と配合割合により上記範囲内に設定することができる。すなわち、青発光蛍光体、緑発光蛍光体および赤発光蛍光体を混合してランプ管内壁に塗布することにより白色発光ランプが得られるが、使用する蛍光体の配合比により発光スペクトルが決定される。青発光蛍光体の量を多くすると、発光光は青みがかり、色温度が上昇し、他方赤発光蛍光体の量を多くすると色温度が低下する。バックライト光源としての三波長ランプの色温度は5000K以上、30000K以下が好ましい。そのような色温度を提供するためには、青発光蛍光体を20〜55重量%の範囲内で、緑発光蛍光体を20〜55重量%の範囲内で、赤発光蛍光体を20〜45重量%の範囲内で配合することが好ましい。青発光蛍光体としては、Sr5(PO4)3Cl:Eu、(SrCaBa)5(PO4)3Cl:Eu、および/またはBaMg2Al16O27:Euを用いることが好ましく、緑発光蛍光体としては、LaPO4:Ce,Tbおよび/または(CeTb)MgAl14O19を用いることが好ましく、赤発光蛍光体としてはY2O3:Euを用いることが好ましい。 【0071】 図1は、本発明のカラーフィルタを適用し得るカラー液晶ディスプレー装置の概略断面図を示す。図1に示す装置10は、ノート型パソコン用のTFT駆動型液晶ディスプレー装置の典型例であって、離間対向して配置された一対の透明基板11および21を備え、それらの間には、液晶組成物(例えば、TNもしくはSTN液晶組成物)LCが封入されている。第1の基板11の内面には、TFT(薄膜トランジスタ)アレー12が形成されており、その上には例えばITOからなる透明電極層13が形成されている。透明電極層13の上には、配向層14が設けられている。また、透明基板11の外面には、偏光板15が形成されている。 【0072】 他方、第2の透明基板21の内面には、本発明のカラーフィルタ22が形成されている。カラーフィルタ22を構成する各赤、緑、青のフィルタセグメントは、ブラックマトリックス(図示せず)により分離されている。カラーフィルタ22を覆って例えばITOからなる透明電極層23が形成され、透明電極層23を覆って配向層24が設けられている。また、透明基板21の外面には、偏光板25が形成されている。 【0073】 三波長ランプ31を備えたバックライトユニット30は、第1の透明基板11の外側で偏光板15と密接して設けられている。 【0074】 図2は、図1のバックライトユニット30の斜視図である。バックライトユニット30は、三波長ランプ31、導光板33および導光板33の上面に設けられた拡散板34を備える。三波長ランプ31は、導光板33の一側面33aに面して設けられ、その全長にわたって、導光板33の側面33aに対応する部分を除きランプリフレクタ32により囲まれている。また、導光板33は、側面33aを除く他の3つの側面および底面が反射板35により覆われている。三波長ランプ31からの光は、ランプリフレクタ32により導光板33に導かれ、拡散板34を経て面状光となって偏光板15から液晶層LCへと入射する。反射板35は、導光板33へ入射した光を効率よく拡散板34に指向させる。 【0075】 次に、実施例により、本発明を説明する。なお、実施例中、「部」は、「重量部」を意味する。 【0076】 まず、実施例および比較例に用いたバックライトユニット、顔料分散体、着色レジスト材について説明する。 【0077】 <バックライトユニット1> 赤色蛍光体としてY2O3:Euを31.2重量%、緑色蛍光体としてLaPO4:Ce,Tbを57.0重量%、青色蛍光体として(SrCaBa)5(PO4)3Cl:Euを11.8重量%の割合で混合機を用いて混合した。混合された蛍光体をニトロセルロースを溶解した酢酸ブチル中に投入し、よく混合してサスペンジョンを作った。これを管径32mmのガラス管内壁に塗布し、蛍光体を乾燥させた後、500℃で焼成し、40ワットの直管型蛍光ランプを作製した。この蛍光ランプを用いてバックライトユニット1を作製した。このバックライトユニット1からの発光スペクトルは図3に示す通りであり、α値は0.27であった。 【0078】 <バックライトユニット2> 赤色蛍光体としてY2O3:Euを40重量%、緑色蛍光体としてLaPO4:Ce,Tbを25重量%、青色蛍光体として(SrCaBa)5(PO4)3Cl:Euを35重量%の割合で混合機を用いて混合した。混合された蛍光体をニトロセルロースを溶解した酢酸ブチル中に投入し、よく混合してサスペンジョンを作った。これを管径32mmのガラス管内壁に塗布し、蛍光体を乾燥させた後、500℃で焼成し、40ワットの直管型蛍光ランプを作製した。この蛍光ランプをバックライトユニット1の蛍光ランプの代わりに組み込んでバックライトユニット2を作製した。このバックライトユニット2からの発光スペクトルは図4に示す通りであり、α値は0.39であった。 【0079】 <バックライトユニット3> 赤色蛍光体としてY2O3:Euを25重量%、緑色蛍光体としてLaPO4:Ce,Tbを25重量%、青色蛍光体としてSr5(PO4)3Cl:Euを50重量%の割合で混合機を用いて混合した。混合された蛍光体をニトロセルロースを溶解した酢酸ブチル中に投入し、よく混合してサスペンジョンを作った。これを管径32mmのガラス管内壁に塗布し、蛍光体を乾燥させた後、500℃で焼成し、40ワットの直管型蛍光ランプを作製した。この蛍光ランプをバックライトユニット1の蛍光ランプの代わりに組み込んでバックライトユニット3を作製した。このバックライトユニット3からの発光スペクトルは図5に示す通りであり、α値は0.54であった。 【0080】 次に、銅フタロシアニンおよびジオキサジンバイオレットの分散体の製法を以下に記す。なお、使用したアクリルワニスはモノマー組成がスチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル=20/20/30/30(重量比)で、分子量が約40000のアクリル樹脂の20重量%シクロヘキサノン溶液であった。 【0081】 <銅フタロシアニン顔料分散体> 下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して銅フタロシアニンの分散体を調製した。 【0082】 ε型銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue15:6)(東洋インキ製造社製「リオノールブルー ES」) 60部 分散剤(アビシア社製「ソルスパーズ20000」) 6部 アクリルワニス 200部 シクロヘキサノン 134部。 【0083】 <ジオキサジンバイオレット顔料分散体> 下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過してジオキサジンの分散体を調製した。 【0084】 ジオキサジンバイオレット(C.I.Pigment Violet23)(東洋インキ製造社製「リオノゲンバイオレット RL」) 60部 分散剤(アビシア社製「ソルスパーズ20000」) 6部 アクリルワニス 200部 シクロヘキサノン 134部。 【0085】 次に、これらの分散体を用いて銅フタロシアニンとジオキサジンバイオレットの配合比を変えた下記青色レジスト材を調製した。 【0086】 <青色レジスト材1> 下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、ジオキサジンバイオレットの配合量が青色着色料の2重量%である青色レジスト材1を得た。 【0087】 銅フタロシアニン分散体 190部 ジオキサジンバイオレット分散体 4部 トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」) 18部 光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」) 4部 増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB-F」) 2部 シクロヘキサノン 200部。 【0088】 <青色レジスト材2> 銅フタロシアニン分散体を186部、ジオキサジンバイオレット分散体を8部用いた以外は、青色レジスト材1と同様の方法でジオキサジンバイオレットの配合量が青色着色料の4重量%である青色レジスト材2を得た。 【0089】 <青色レジスト材3>銅フタロシアニン分散体を182部、ジオキサジンバイオレット分散体を12部用いた以外は、青色レジスト材1と同様の方法でジオキサジンバイオレットの配合量が青色着色料の6重量%である青色レジスト材3を得た。 【0090】 <青色レジスト材4> 銅フタロシアニン分散体を178部、ジオキサジンバイオレット分散体を16部用いた以外は、青色レジスト材1と同様の方法でジオキサジンバイオレットの配合量が青色着色料の8重量%である青色レジスト材4を得た。 【0091】 <青色レジスト材5> 銅フタロシアニン分散体を193部、ジオキサジンバイオレット分散体を1部用いた以外は、青色レジスト材1と同様の方法でジオキサジンバイオレットの配合量が青色着色料の0.5重量%である青色レジスト材5を得た。 【0092】 <青色レジスト材6> 銅フタロシアニン分散体を194部用い、ジオキサジンバイオレット分散体を用いなかった以外は、青色レジスト材1と同様の方法でジオキサジンバイオレットの配合量が青色着色料の0重量%である青色レジスト材6を得た。 【0093】 緑色レジスト材および赤色レジスト材は、組成がそれぞれ下記組成となるように、青色レジスト材と同様の方法で調製した。 【0094】 <緑色レジスト材> 緑色顔料:C.I.Pigment Green36(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン 6YK」) 11部 黄色顔料:C.I.Pigment Yellow150(バイエル社製「ファンチョンファーストエロー Y-5688」) 8部 アクリルワニス 102部 トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」) 14部 光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」) 4部 増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB-F」) 2部 シクロヘキサノン 257部。 【0095】 <赤色レジスト材> 赤色顔料:C.I.Pigment Red254(チバガイギー社製「イルガフォーレッド B-CF」) 18部 赤色顔料:C.I.Pigment Red177(チバガイギー社製「クロモフタールレッド A2B」) 2部 アクリルワニス 108部 トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」) 13部 光開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー907」) 3部 増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB-F」) 1部 シクロヘキサノン 253部。 【0096】 上記着色レジスト材をガラス基板の一方の表面上にスピンコーターを用いて塗布し、70℃、20分熱風オーブンで乾燥した後、幅100μmのストライプ状の開口部を有するフォトマスクを介して紫外線露光し、5%炭酸ナトリウム水溶液で未露光部を洗い流し、230℃、30分熱風オーブンでベークして、それぞれ100μm幅のストライプ状のカラーフィルタを作製した。なお、この際、カラーフィルタの色度がEBU規格にできるだけ近くなるように膜厚を設定した。 【0097】 次に、得られたカラーフィルタ上に透明ITO電極層を形成し、その上にポリイミド配向層を形成した。このガラス基板の他方の表面に偏光板を形成した。他方、別の(第2の)ガラス基板の一方の表面にTFTアレーおよび画素電極を形成し、この第2の基板の他方の表面に偏光板を形成した。 【0098】 こうして準備された2つのガラス基板を電極層同士が対面するよう対向させ、スペーサビーズを用いて両基板の間隔を一定に保ちながら位置合わせし、液晶組成物注入用開口部を残すように周囲を封止剤で封止した。開口部から液晶組成物を注入し、開口部を封止した。このようにして作製したカラー液晶ディスプレー装置を前記各バックライトユニットと組み合わせてカラー液晶パネルを得た。このパネル上に表示された色特性を測定したところ、下記表1に示す結果を得た。この表1において、Yは、表示色の明度を示す。一般に、カラーフィルタは、再現色域、明度が高いほど、色特性が良好である。通常、カラーフィルタは、膜厚を厚くすると色濃度が高くなる結果、再現色域が広がるとともに、明度が低下する。すなわち、同じ再現色域であれば、Y値が大きいほど、色特性が良好なカラーフィルタとなる。 【0099】 【表1】 【0100】 【発明の効果】 以上述べたように、本発明により、EBU規格の色特性を具備し、膜厚が2.5μm以下の青のカラーフィルタが形成できるようになり、その結果色度特性においてEBU規格を満足させるカラー液晶ディスプレーが提供される。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のカラーフィルタを適用したカラー液晶ディスプレー装置の概略断面図。 【図2】 図1に示すカラー液晶ディスプレー装置に使用されるバックライトユニットを示す斜視図。 【図3】 バックライト1の発光スペクトルを示すグラフ。 【図4】 バックライト2の発光スペクトルを示すグラフ。 【図5】 バックライト3の発光スペクトルを示すグラフ。 【符号の説明】 10…カラー液晶ディスプレー装置 11,21…透明基板 12…TFTアレー 13,23…透明電極 14,24…配向層 15,25…偏光板 22…カラーフィルタ 30…バックライトユニット 31…三波長ランプ 32…ランプリフレクタ 33…導光板 34…拡散板 35…反射板 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-11-24 |
出願番号 | 特願2000-255526(P2000-255526) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(G02B)
P 1 651・ 121- YA (G02B) P 1 651・ 537- YA (G02B) |
最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
鹿股 俊雄 |
特許庁審判官 |
瀬川 勝久 柏崎 正男 |
登録日 | 2002-11-29 |
登録番号 | 特許第3375325号(P3375325) |
権利者 | 凸版印刷株式会社 東洋インキ製造株式会社 |
発明の名称 | カラー液晶ディスプレー装置 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 近藤 久美 |
代理人 | 松田 寿美子 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 長谷川 一 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 南野 雅明 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 幸長 保次郎 |