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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1112927
異議申立番号 異議2003-71454  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-02-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-02 
確定日 2004-12-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3353477号「純水リンス方法及び半導体装置の製造方法」の請求項1乃至4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3353477号の請求項1乃至4に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3353477号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、平成6年7月13日の特許出願であって、平成14年9月27日にその発明について特許権の設定の登録がされ、その後、平成15年6月2日に特許異議申立人湯口保浩より全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、全請求項に係る特許に対して取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月18日に特許異議意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正事項
前記訂正請求による訂正事項は、設定登録時の願書に添付した明細書又は図面(以下「特許明細書等」という。)の特許請求の範囲に記載された下記(1)の訂正前の特許請求の範囲を、下記(2)の訂正後の特許請求の範囲に訂正するものである。
(1)訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 薬液処理した後のウエハを純水でリンスする方法であって、
常温の純水で前記ウエハをリンスし、次いで高温の純水で当該ウエハをリンスした後、常温の純水で当該ウエハをリンスすることを特徴とする純水リンス方法。
【請求項2】請求項1記載の純水リンス方法において、
前記高温の純水は、その温度が50℃〜沸点までの間の所定温度に設定されることを特徴とする純水リンス方法。
【請求項3】請求項1記載の純水リンス方法において、
前記高温の純水は、その温度が65℃〜沸点までの間の所定温度に設定されることを特徴とする純水リンス方法。
【請求項4】薬液処理した後のウエハを純水リンスすることを含む半導体装置の製造方法であって、
常温の純水で前記ウエハをリンスし、次いで高温の純水で当該ウエハをリンスした後、常温の純水で当該ウエハをリンスすることを特徴とする半導体装置の製造方法。」
(2)訂正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 薬液処理した後のウエハを純水でリンスする方法であって、
常温の純水で前記ウエハをリンスし、次いで高温の純水を用いて当該高温の純水の比抵抗が回復するまで当該ウエハをリンスした後、常温の純水で当該ウエハをリンスする
ことを特徴とする純水リンス方法。
【請求項2】請求項1記載の純水リンス方法において、
前記高温の純水は、その温度が50℃〜沸点までの間の所定温度に設定されることを特徴とする純水リンス方法。
【請求項3】請求項1記載の純水リンス方法において、
前記高温の純水は、その温度が65℃〜沸点までの間の所定温度に設定されることを特徴とする純水リンス方法。
【請求項4】薬液処理した後のウエハを純水リンスすることを含む半導体装置の製造方法であって、
常温の純水で前記ウエハをリンスし、次いで高温の純水を用いて当該高温の純水の比抵抗が回復するまで当該ウエハをリンスした後、常温の純水で当該ウエハをリンスする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項は、請求項1及び4に記載された高温の純水でウエハをリンスすることについて、当該高温の純水の比抵抗が回復するまでリンスする時間的な長さを限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものである。
そして、訂正事項は、特許明細書等の段落【0013】及び段落【0019】に記載の事項より、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項の訂正によって発明の目的が変更されるのものでもないので、訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるので、前記訂正は、特許法第120条の4第2項並びに同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについての判断
1 特許異議の申立て及び取消しの理由の概要
(1)特許異議の申立ての理由の概要は、請求項1乃至4に係る発明は、特許異議申立人が証拠として提出した甲第1号証:「’93最新液晶プロセス技術」,株式会社プレスジャーナル,平成4年10月1日,p.226,227(以下「引用例1」という。)、甲第2号証:前田和夫著,「最新LSIプロセス技術」,株式会社工業調査会,1983年7月25日,p.119,123及び甲第3号証:特開平4-354334号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1乃至4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものというものである。
また、請求項2の記載は、不明確であり、請求項2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから取り消されるべきものというものである。
(2)当審で通知した取り消しの理由の概要は、請求項1乃至4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきものという上記特許異議の申立ての理由の概要と同様の趣旨のものである。
2 本件発明
前記第2の3のとおり訂正が認められたので、本件の請求項1乃至4に係る発明(以下「本件発明1乃至4」という。)は、前記第2の1の(2)訂正後の特許請求の範囲の項の請求項1乃至4に記載のとおりのものと認める。
3 引用例記載事項
引用例1及び2には、次の事項が記載されていると認める。
(1)引用例1
ア 第226頁左欄第2-8行
「LCD基板の洗浄については、・・・ここではその中の洗浄装置について紹介する。」
イ 第226頁右欄第3-10行
「ディップ+US洗浄は・・・液(水)温は40℃〜60℃の範囲内が最も効果がある・・・上下スプレーシャワーは、・・・最終的な仕上げを行うのに必要である」
ウ 第227頁図1
洗剤スクラブ処理の後、純水スクラブ、純水ディップ+US、上下シャワースプレーという3つの連続した洗浄工程を行う洗浄ラインの構成例。
また、上下シャワースプレーについては、純水を用いている旨明記されていないが、最終的な仕上げを行うのに必要な工程であることから、純水を用いているものと解される。
さらに、純水スクラブ及び上下シャワースプレーに用いる純水の温度については、何ら記載されていないが、純水ディップ+USに用いる純水の温度については、40℃〜60℃と記載されていることから判断して、純水ディップ+USに用いる純水のみ加温し、純水スクラブ及び上下シャワースプレーに用いる純水は加温しないもの、すなわち常温であると解される。
以上のとおりであるので、引用例1には、次の「純水洗浄方法」及び「LCD基板装置の製造方法」が記載されていると認める。
洗剤スクラブ洗浄後のLCD基板を純水で洗浄する方法であって、
常温の純水で前記LCD基板を純水スクラブ洗浄をし、次いで40℃〜60℃までの間の所定温度の純水を用いて当該LCD基板を純水ディップ+US洗浄をした後、常温の純水で当該LCD基板を上下シャワースプレー洗浄をする
純水洗浄方法。(以下「引用例1記載の第1発明」という。)
洗剤スクラブ洗浄後のLCD基板を純水洗浄することを含むLCD基板装置の製造方法であって、
常温の純水で前記LCD基板を純水スクラブ洗浄をし、次いで40℃〜60℃までの間の所定温度の純水を用いて当該LCD基板を純水ディップ+US洗浄をした後、常温の純水で当該LCD基板を上下シャワースプレー洗浄をする
LCD基板装置の製造方法。(以下「引用例1記載の第2発明」という。)
(2)引用例2
ア 段落【0001】
「本発明は、例えば半導体ウエハのような被処理体に付着している付着物を完全に除去可能な洗浄方法及び洗浄装置に関するものである。」
イ 段落【0014】
「加熱温度としては、60℃以上が好ましい。」
ウ 段落【0026】
「ノズル9の先端からオゾンを含む純水を噴霧化して半導体ウエハに吹き付けた。その際ヒーター7,8により純水を70℃に加熱した。」
上記記載事項より、引用例2には、次の事項が記載されていると認める。
ウエハの洗浄において、70℃の高温の純水を用いること。(以下「引用例2記載の技術的事項」という。)
4 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用例1記載の第1発明とを対比すると、引用例1記載の第1発明の「洗剤スクラブ洗浄」は、薬液の一種である洗剤を用いた処理であることから、本件発明1の「薬液処理」に相当していることが明らかである。
また、本件発明1の高温の純水とは、特許明細書等の記載事項より、50℃〜沸点までの所定温度を意味するものであるから、本件発明1の高温の純水と引用例1記載の第1発明の40℃〜60℃までの間の所定温度の純水とは、50℃〜60℃までの間の所定温度の温度、すなわち高温であることで共通している。
さらに、本件発明1のウエハと引用例1記載の第1発明のLCD基板とは、基板であることに限り共通しており、本件発明1のリンスは、洗浄であることに限り引用例1記載の第1発明と共通しており、本件発明1の常温の純水でウエハをリンスすることと引用例1記載の第1発明の常温の純水でLCD基板を純水スクラブ洗浄をすることとは、常温の純水を用いて基板を洗浄することに限り共通している。
以上のとおりであるので、両者は、次の「純水洗浄方法」で一致している。
薬液処理した後の基板を純水で洗浄する方法であって、
常温の純水を用いて基板を洗浄し、次いで高温の純水を用いて当該基板を洗浄した後、常温の純水で当該基板を洗浄する
純水洗浄方法。
そして、両者は、次の点で相違している。
基板が、本件発明1では、ウエハであるのに対し、引用例1記載の第1発明では、LCD基板である点。(以下「相違点1」という。)
常温、高温及び常温の純水を用いた洗浄が、本件発明1では、リンスであるのに対し、引用例1記載の第1発明では、スクラブ洗浄であり、ディップ+US洗浄であり、上下シャワースプレー洗浄である点。(以下「相違点2」という。)
高温の純水を用いた洗浄を、本件発明1では、当該高温の純水の比抵抗が回復するまでおこなうのに対し、引用例1記載の第1発明では、そのようなものではない点。(以下「相違点3」という。)
上記相違点について、以下検討する。
ア 相違点1について
本件発明1のウエハも引用例1記載の第1発明のLCD基板も、共に各種電子デバイスの製造に供されるものであり、共に高い清浄化レベルが要求されるものであって、技術的に親近性があることから、引用例1記載の第1発明のLCD基板の純水洗浄方法をウエハの純水洗浄方法に採用することに、格別の困難性は見当たらない。
イ 相違点2について
純水を用いたウエハの洗浄方法として、常温の純水を用いたリンス、高温の純水を用いたリンスは、例えば前記甲第2号証第123頁 図2.1.9自動洗浄装置のシステム構成図に記載されているように、それぞれ従来周知の事項であるので、引用例1記載の第1発明のLCD基板の純水洗浄方法をウエハの純水洗浄方法に採用するに際し、スクラブ洗浄、ディップ+US洗浄及び上下シャワースプレー洗浄をそれぞれリンスに変更、すなわち常温の純水を用いたリンス、高温の純水を用いたリンス及び常温の純水を用いたリンスに変更することは、当業者であれば容易に想到することができたことである。
ウ 相違点3について
純水を用いたウエハのリンスにおいて、当該純水の比抵抗が回復するまで当該ウエハをリンスすることは、例えば、実公昭62-42535号公報、特開平3-233930号公報等に記載されているように、従来周知の事項であり、また、この従来周知の事項を高温の純水に採用することを妨げる事情も見当たらないことから、高温の純水を用いたリンスに上記従来周知の事項を採用し、当該高温の純水の比抵抗が回復するまで当該ウエハをリンスすることも、当業者であれば容易に想到することができたことである。
エ 本件発明1の作用効果について
本件発明1の奏する作用効果は、引用例1記載の第1発明及び上記各従来周知の事項から当業者が予測できる程度のものであって、格別のものではない。
オ むすび
以上のとおりであるので、本件発明1は、引用例1記載の第1発明及び上記各従来周知の事項に基いて当業者が容易の発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
本件発明2と引用例1記載の第1発明とを対比すると、本件発明2は、高温の純水の温度について、「50℃〜沸点までの間の所定温度」と限定している。
これに対し、引用例1記載の第1発明の純水の温度は、40℃〜60℃までの間の所定温度であり、本件発明2と引用例1記載の第1発明とは、50℃〜60℃までの間の所定温度で一致しているので、本件発明2と引用例1記載の第1発明とは、純水の温度が高温であることで一致している。
したがって、本件発明2は、本件発明1についてと同様に、引用例1記載の第1発明及び上記各従来周知の事項に基いて当業者が容易の発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
本件発明3と引用例1記載の第1発明とを対比すると、本件発明3は、高温の純水の温度について、「65℃〜沸点までの間の所定温度」と限定しており、上記相違点1乃至3に加え、本件発明3では高温の純水の温度が65℃〜沸点までの間の所定温度であるのに対し、引用例1記載の第1発明では40℃〜60℃までの間の所定温度である点(以下「相違点4」という。)で、両者は相違している。
そこで、相違点4について検討すると、前記3の(2)のとおり、引用例2には、ウエハの洗浄において、70℃の高温の純水を用いるという技術的事項が記載されているので、ウエハの洗浄に用いる高温の純水の温度として、引用例2記載の技術的事項を採用し、相違点4に係る本件発明3の所定温度に含まれる温度とすることに、格別の困難性は見当たらない。
また、本件発明3の奏する作用効果は、引用例1記載の第1発明、引用例2記載の技術的事項及び上記各従来周知の事項から当業者が予測できる程度のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明3は、引用例1記載の第1発明、引用例2記載の技術的事項及び上記各従来周知の事項に基いて当業者が容易の発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
本件発明4と引用例1記載の第2発明とを対比すると、本件発明4の半導体装置と引用例1記載の第2発明のLCD基板装置とは、基板装置であることに限り共通しており、本件発明1についての検討と同様に、両者は、次の「半導体装置の製造方法」で一致している。
薬液処理した後の基板を純水洗浄することを含む基板装置の製造方法であって、
常温の純水で前記基板を洗浄し、次いで高温の純水を用いて当該基板を洗浄した
基板装置の製造方法。
そして、上記相違点1乃至3に加え、基板装置が、本件発明4では半導体装置であるのに対し、引用例1記載の第2発明ではLCD基板装置である点(以下「相違点5」という。)で、両者は相違している。
上記相違点1乃至3については、既に検討したとおりであるので、相違点5について、以下検討する。
相違点5についても、上記相違点1と同様に、本件発明4の半導体装置も引用例1記載の第2発明のLCD基板装置も、共に各種電子デバイスの製造に供されるものであり、共に高い清浄化レベルが要求されるものであって、技術的に親近性があることから、引用例1記載の第2発明のLCD基板装置の製造方法を半導体装置の製造方法に採用することに、格別の困難性は見当たらない。
また、本件発明4の奏する作用効果は、引用例1記載の第2発明及び上記各従来周知の事項から当業者が予測できる程度のものであって、格別のものではない。
以上のとおりであるので、本件発明4は、引用例1記載の第2発明及び上記各従来周知の事項に基いて当業者が容易の発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本件発明1乃至4は、引用例1記載の第1発明、引用例1記載の第2発明、引用例2記載の技術的事項及び上記各従来周知の事項に基いて当業者が容易の発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件の請求項1乃至4に係る特許は、特許異議申立人が主張する特許法第36条第6項第2号規定違反について検討するまでもなく、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
純水リンス方法及び半導体装置の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 薬液処理した後のウエハを純水でリンスする方法であって、
常温の純水で前記ウエハをリンスし、次いで高温の純水を用いて当該高温の純水の比抵抗が回復するまで当該ウエハをリンスした後、常温の純水で当該ウエハをリンスする
ことを特徴とする純水リンス方法。
【請求項2】 請求項1記載の純水リンス方法において、前記高温の純水は、その温度が50℃〜沸点までの間の所定温度に設定される
ことを特徴とする純水リンス方法。
【請求項3】 請求項1記載の純水リンス方法において、前記高温の純水は、その温度が65℃〜沸点までの間の所定温度に設定される
ことを特徴とする純水リンス方法。
【請求項4】 薬液処理した後のウエハを純水リンスすることを含む半導体装置の製造方法であって、常温の純水で前記ウエハをリンスし、次いで高温の純水を用いて当該高温の純水の比抵抗が回復するまで当該ウエハをリンスした後、常温の純水で当該ウエハをリンスする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体からなるウエハを薬液洗浄した後に純水でリンスする方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造工程では、その殆ど全ての工程でウエハ表面に汚染物質が付着する。上記ウエハ表面への汚染物質の付着は、半導体装置の歩留りを低下させる要因になるため、半導体装置製造のプロセスフロー中には、ウエハの洗浄工程が繰り返し挿入される。
【0003】上記ウエハの洗浄工程では、様々な薬液を用いてウエハの薬液処理が行われ、この薬液処理の後にはウエハ表面に付着した残留薬液を除去する純水リンスが行われる。この純水リンスは、水槽内にオーバーフロー状態で供給される純水中に上記ウエハを浸漬するか、または上記ウエハの洗浄面に純水をスプレー供給することによって行われる。上記純水は高温または常温で用いられ、高温の純水を用いた場合には常温の純水と比較してウエハ表面の残留薬液を早く除去することができるためリンス時間を短縮化することができる。それと共に、純水中でのバクテリアの増殖が防止され、清浄度が保たれた純水でウエハのリンスを行うことが可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の純水リンスには、以下のような課題があった。すなわち、高温の純水を用いたリンスでは、ウエハ表面に局所的に残留している薬液と高温の純水との反応によって当該ウエハ表面での薬液による局所的な反応が促進される。これによって例えばウエハ表面にエッチングムラのような薬液処理効果のバラツキが生じてしまう。一方、常温の純水を用いたリンスでは、高温の純水を用いた場合と比較してウエハ表面に付着している残留薬液を除去するのに時間が掛かる。このため、上記の純水リンス工程が、薬液処理を含めた洗浄工程全体の律速となり、当該洗浄工程のスループットを低下させる要因になる。
【0005】さらに、常温の純水は、ウエハ表面に対するエッチング作用が弱い。このため、常温の純水によるリンスには、例えば残留薬液中から再付着してウエハ表面に残留する汚染物質を除去する効果は無い。近年、半導体装置の高集積化に伴い、デバイス構造の微細化が進展している。このため、上記のようにして洗浄薬液中から持ち出された汚染物質のウエハ表面への残留が、製品の歩留りや信頼性に大きな影響を及ぼすようになってきている。
【0006】そこで、本発明は、上記の課題を解決する純水リンス方法及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の純水リンス方法及び半導体装置の製造方法は、薬液処理したウエハを、先ず常温の純水でリンスし、次いで高温の純水でリンスする。また、高温の純水でウエハをリンスした後に、常温の純水でリンスを行う。
【0008】上記高温の純水は、50℃〜沸点までまたは65℃〜沸点までの間の所定温度に設定される。
【0009】
【作用】上記純水リンス方法及び半導体装置の製造方法では、先ず常温の純水でリンスしたウエハを高温の純水でリンスすることから、ウエハ表面の残留薬液の大部分が常温の純水によって除去された後に高温の純水でウエハがリンスされる。このため、残留薬液と高温の純水との反応を防止した状態で、当該高温の純水によって残りの残留薬液が除去される。そして、高温の純水中ではウエハ表面のエッチングとウエハ表面の酸化とが進行することから、ウエハ表面の汚染物質が除去されると共にウエハ表面に自然酸化膜が形成される。
【0010】そして、ウエハを高温の純水でリンスした後に常温の純水でリンスする場合には、ウエハの温度が常温にまで冷却されて活性度が低く抑えられた状態で純水リンスが終了する。
【0011】また、上記高温の純水の温度を、50℃から沸点までの間の所定温度にした場合には、常温の純水中で形成された自然酸化膜の少なくとも表面層がエッチングされる。一方、上記高温の純水の温度を、65℃〜沸点までの間の所定温度にした場合には、ウエハ表面の自然酸化膜がエッチングされる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1の工程図に基づいて説明する。ここで、純水リンスを行うウエハ1は薬液処理を行ったものであり、表面には当該薬液処理の際にウエハ1に付着した薬液が残留している。このウエハ1を、半導体装置の製造工程において純水リンスする場合には、図1(1)に示すように、先ず純水槽2内に常温の純水10をオーバーフロさせながら供給する。そして、この常温の純水10中に、上記ウエハ1を浸漬することによってウエハ1のリンスを行う。ここでは、例えば約1分間のリンスを行う。
【0013】次に、図1(2)に示すように純水槽2内に、高温の純水20をオーバーフロさせながら供給する。これによって、ウエハ1を高温の純水20でリンスする。ここでは、例えば高温の純水20の比抵抗が回復するまでリンスを行う。
【0014】上記の後、図1(3)に示すように、純水槽2内に、常温の純水30をオーバーフローさせながら供給する。これによって、ウエハ1を常温の純水30でリンスする。
【0015】上記純水リンス方法では、先ず常温の純水10でリンスしたウエハ1を高温の純水20でリンスすることから、ウエハ1表面の残留薬液の大部分が常温の純水10によって除去された後に高温の純水20でウエハ1がリンスされる。このため、ウエハ1表面に局所的に付着している残留薬液と高温の純水20との反応を防止した状態で、当該高温の純水20によって残りの残留薬液が除去される。そして、高温の純水中20ではウエハ1表面のエッチングとウエハ1表面の酸化とが進行することから、ウエハ1表面の汚染物質が除去されると共にウエハ1表面に自然酸化膜が形成される。
【0016】さらに。上記のような状態のウエハ1を、再び常温の純水30でリンスするため、ウエハ1の温度が常温にまで冷却されてウエハ表面の活性度が低く抑えられた状態で純水リンスが終了する。
【0017】ここで、上記高温の純水20の温度は、例えば以下のように設定する。図2のグラフは、自然酸化膜上に吸着するパーティクルとして微粒子状にしたシリコンチップで故意に汚染させたウエハを、高温の純水でリンスした場合のパーティクル除去の純水温度依存性のグラフを示す。このグラフから、純水の温度が50℃以上になるとパーティクルの除去効率が大幅に上昇することがわかる。このことから、高温の純水の温度を、50℃〜沸点までの間の所定温度に設定する。ここでは、例えば60□とする。図3には、60℃の純水でのパーティクル除去のリンス時間依存性を示すグラフである。このグラフから、60℃の純水では、15分以上のリンス時間で、パーティクルの除去効率が上昇することがわかる。そこで、ここでは、高温の純水(20)によるリンス時間を、15分以上でかつ純水の比抵抗が回復するまでの時間に設定する。
【0018】上記のように、50℃〜沸点までの間に高温の純水(20)の温度を設定した場合には、図4に示すようにウエハ1のリンスが行われる。先ず図4(1)に示すように、高温の純水(20)でリンスするウエハ1の表面には、上述のように自然酸化膜1aが形成される。この自然酸化膜1a上には、例えばパーティクル状の汚染物質2が付着している。上記純水リンスでは、高温の純水(20)の温度を、パーティクルの除去率から50℃〜沸点までの間の所定温度に設定した。このことから、上記高温の純水(20)によるリンスでは、図4(1)に示すように、自然酸化膜1aの表面層がエッチングされて当該自然酸化膜1aと共にこの自然酸化膜1a上に付着した汚染物質2が除去される。そして、上記と同様に高温の純水(20)中では、新たな自然酸化膜の成膜が進むため、図4(2)に示すように、ウエハ1の表面は新たに成膜された表面を有する自然酸化膜1bで覆われる。
【0019】また、上記高温の純水(20)の温度は、例えば以下のように設定しても良い。図5のグラフは、特に自然酸化膜中に取り込まれ易いFeによって故意に汚染させたウエハを、上記高温の純水(20)によるリンスと同様に各温度の純水中に浸漬した後のFeの濃度を示している。このグラフから、65℃までは純水の温度に伴ってFeの除去効率が上昇することがわかる。このことから、高温の純水(20)の温度は、65℃から沸点までの間の所定温度に設定する。ここでは、例えば65℃とする。また、図6のグラフは、65℃の純水でのFe除去のリンス時間依存性を示すグラフである。このグラフから、65℃の純水では、5分以上のリンス時間で、Feの除去効率が上昇することがわかる。そこで、ここでは、高温の純水(20)によるリンス時間を、5分以上でかつ純水の比抵抗が回復するまでの時間に設定する。
【0020】上記のように、65℃〜沸点までの間に高温の純水(20)の温度を設定した場合には、図7に示すようにウエハ1のリンスが行われる。先ず図7(1)に示すように、高温の純水(20)でリンスするウエハ1の表面には、上述のように自然酸化膜1aが形成されている。この自然酸化膜1aはその表面に汚染物質2が付着しその内部に汚染物質3が取り込まれている。ここでは、特に酸化膜中に取り込まれ易いFeの除去効率から、高温の純水(20)の温度を65℃〜沸点までの問の所定温度に設定している。このことから、上記高温の純水(20)によるリンスでは、自然酸化膜1aの大部分がエッチングされて当該自然酸化膜1aと共に汚染物質2,3が除去される。また、高温の純水(20)中では、上記自然酸化膜1aのエッチングと共に新たな自然酸化膜の成膜が進むため、図7(2)に示すように、ウエハ1の表面は新たに成膜された自然酸化膜1cで覆われる。
【0021】上記実施例では、純水槽中にオーバーフロー状態で供給される純水中にウエハを浸漬するディップ方式を例にとって説明した。しかし、ウエハに純水を吹きつけるスプレー方式にも適用可能である。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明の純水リンス方法及びこの純水リンスを行う半導体装置の製造方法によれば、先ずウエハ表面を常温の純水でリンスした後に高温の純水でリンスすることによって、ウエハ表面に局所的に付着している残留薬液と高温の純水との反応を防止しながらリンス時間の短縮化を図ることが可能になる。したがって、ウエハ表面のエッチングムラを防止した状態で洗浄工程のスループットを向上させることができる。また、上記高温の純水でのリンスでは、ウエハ表面のエッチングと自然酸化膜の形成とが進行することによって、ウエハ表面の汚染物質が除去された清浄な自然酸化膜をウエハ表面に形成することが可能になる。したがって、半導体装置の歩留りの向上を図ることができる。そして、ウエハを高温の純水でリンスした後に常温の純水でリンスした場合には、ウエハ表面の活性度を低く抑えて純水リンスを終了することが可能になり、純水リンスを終了した後のウエハに汚染物質が吸着することを防止できる。また、上記高温の純水を50℃〜沸点の間の所定温度にした場合には、ウエハ表面の自然酸化膜上に付着する汚染物質を除去することが可能になる。一方、上記高温の純水を65℃〜沸点の間の所定温度にした場合には、上記汚染物質と共に上記自然酸化膜中に取り込まれている汚染物質を除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例を説明する工程図である。
【図2】パーティクル除去の純水温度依存性のグラフである。
【図3】パーティクル除去のリンス時間依存性のグラフである。
【図4】実施例によるウエハ表面層の変化を示す図である。
【図5】Fe除去の純水温度依存性のグラフである。
【図6】Fe除去のリンス時間依存性のグラフである。
【図7】実施例によるウエハ表面層の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 ウエハ
10,30 常温の純水
20 高温の純水
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-10-28 
出願番号 特願平6-185447
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 鈴木 孝幸
岡野 卓也
登録日 2002-09-27 
登録番号 特許第3353477号(P3353477)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 純水リンス方法及び半導体装置の製造方法  
代理人 船橋 国則  
代理人 船橋 国則  

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