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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1112943
異議申立番号 異議2003-73411  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-24 
確定日 2005-01-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3420799号「カラーフィルタ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3420799号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3420799号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年8月12日に特許出願され、平成15年4月18日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人・葛城範子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年9月21日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、「前記熱処理後の着色層とブラックマトリックスにおいて前記保護層が形成されるべき保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるようにUVオゾン処理を行った後に形成されたものである」とあるのを、「前記熱処理後の着色層とブラックマトリックスにおいて前記保護層が形成されるべき保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるように、酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理を行った後に形成されたものである」と訂正する。
イ.訂正事項2
発明の詳細な説明の段落「0011」について、「前記熱処理後の着色層とブラックマトリックスにおいて前記保護層が形成されるべき保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるようにUVオゾン処理を行った後に形成されたものである」とあるのを、「前記熱処理後の着色層とブラックマトリックスにおいて前記保護層が形成されるべき保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるように、酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理を行った後に形成されたものである」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1は、「UVオゾン処理」を、「酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理」に限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項2は、上記訂正事項1の訂正に伴い、発明の詳細な説明中の記載を、特許請求の範囲の記載に適合させようとするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1及び2はいずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116条による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立て及び取消理由の概要
(A)本件特許明細書には記載不備があるから、本件特許は特許法第36条第4項及び同条第5項第1号の規定に違反してなされたものである。
(B)本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、刊行物1乃至3(異議申立人が提出した甲第1号証乃至甲第3号証)に記載された各発明に基いて当業者が容易になし得た発明であるから、本件請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

4.特許異議申立て理由のうち(A)についての判断
(1)発明の詳細な説明に記載された接触角の測定対象が、請求項1で規定している測定対象とは異なるものとなっているから、発明の詳細な説明には当業者が容易にその実施をすることができる程度にその発明の目的、構成及び効果が記載されておらず、また、請求項1の記載は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されているもの」ではないとする点について、
本件特許明細書0025段落に記載のように、「低分子量シロキサン被膜」は最も洗浄除去が困難な物質の一つとして形成したものであり、該「低分子シロキサン被膜」は、汚染膜の一例として形成し、UVオゾン処理の程度を調べたものである。そして、請求項1においても、発明の詳細な説明においても、UVオゾン処理を行った後に塗布される2-エトキシエタノールに対する接触角を規定している。そのため、「発明の詳細な説明に記載された接触角の測定対象が、請求項1で規定している接触角の測定対象とは全く異なるもの」であるとはいえず、また、発明の詳細な説明には当業者が容易にその実施をすることができる程度にその発明の目的、構成及び効果が記載されていないものとはいえない。

(2)本件特許明細書の実施例(0032段落〜0046段落)の記載は、請求項1の「保護層は、前記熱処理後の着色層とブラックマトリックスにおいて前記保護層が形成されるべき保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるようにUVオゾン処理を行った後に形成されたものである」ことを示す記載となっているものではないから、請求項1の記載は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されているもの」ではないとする点について、
発明の詳細な説明の0027段落〜0029段落には、図5に関して、保護層形成領域の保護層樹脂の塗布溶媒である2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるようにUVオゾン処理を行うことが記載されている。また、保護層とブラックマトリックスとを熱処理することも、発明の詳細な説明の0036段落に記載されている。
したがって、前記実施例には保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が具体的に記載されていないことを以て、請求項1の記載は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されているもの」ではないということはできない。

(3)本件の請求項1の「2-エトキシエタノール」は、本件発明においていかなる目的のために使用するものであるのか、請求項1の記載からは明確でないとする点について、
本件の請求項1は、UVオゾン処理の程度を示す一つのパラメータとして、UVオゾン処理後に塗布される「2-エトキシエタノール」に対する接触角を規定したものである。そして、発明の詳細な説明の0027段落には、「2-エトキシエタノール」は、保護層樹脂塗布溶媒であることが記載されており、請求項1においては、UVオゾン処理後に塗布されるものの一つとして「2-エトキシエタノール」を用いてその接触角を規定している。そのため、請求項1に記載される「2-エトキシエタノール」がいかなる目的のために使用するものであるのかは明確でないとはいえない。

5.特許異議申立て理由のうち(B)についての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明(本件発明)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に特定されるとおりのものである。(上記2.(1)訂正の内容参照。)

(2)異議申立人提出の証拠に記載された発明/平成16年7月9日付けの取消理由で引用された刊行物に記載された発明
刊行物1;特開平4-96001号公報(異議申立人が提出した甲第3号証)
刊行物2;特開平5-11107号公報(同甲第1号証)
刊行物3;特開昭63-298242号公報(同甲第2号証)

(3)対比・判断
本件発明と上記刊行物1乃至3に記載された各発明とを比較検討する。
本件発明は、(a)着色層とブラックマトリックスとの双方を熱処理し、かつ、着色層とブラックマトリックスとの双方をUVオゾン処理すること、及び、(b)酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理すること、を特徴とするものである。
上記構成(a)により、保護層形成領域と保護層樹脂の塗布液とのぬれ性が良好となり、保護層と他の層との密着性が高くなるという効果を奏する。
上記構成(b)により、UVオゾン処理により発生する酸素ラジカルの量を調整する作用を有し、その結果、保護層形成領域、特に着色層表面を荒らすことなく洗浄し、UVオゾン処理時に副反応が生じることを防止できるという効果を奏する。
これに対して、刊行物1には、カラーフィルターの製造に関して、着色層をポストベークして、各着色層を形成後、拭いて洗浄し、その後保護層を形成することにより、基板上及びパターン状着色樹脂層上の着色樹脂の残渣を除去することが記載されている。しかしながら、刊行物1にはブラックマトリックスを用いる記載はなく、また、本件発明の「(a)着色層とブラックマトリックスとの双方を熱処理し、かつ、着色層とブラックマトリックスとの双方をUVオゾン処理すること」の記載はなく、さらに、本件発明の「(b)酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理すること」の記載もない。
刊行物2には、カラーフィルターの製造に関して、ブラックマトリックス形成後、酸素存在下UVオゾン処理し、その後、各着色層を形成することにより、基板表面上の有機物の汚れを除去し、基板と着色層との密着性を改良することが記載されている。しかしながら、刊行物2は、ブラックマトリックスはエアーで乾燥するものであるし、また、本件発明の「(a)着色層とブラックマトリックスとの双方を熱処理し、かつ、着色層とブラックマトリックスとの双方をUVオゾン処理すること」の記載はなく、さらに、本件発明の「(b)酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理すること」の記載もない。
刊行物3には、カラーフィルターの製造に関して、着色層を現像し、ポストベーク後、紫外線オゾン処理することにより、基板上の非画像部において、有機顔料微粒子が感光性樹脂中に分散されたものを分解除去することが記載されている。しかしながら、刊行物3にはブラックマトリックス及び保護膜を形成する記載はなく、また、本件発明の「(a)着色層とブラックマトリックスとの双方を熱処理し、かつ、着色層とブラックマトリックスとの双方をUVオゾン処理すること」の記載はなく、さらに、本件発明の「(b)酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理すること」の記載もない。
このように、刊行物1乃至3に記載された発明はいずれも、本件発明の構成(a)或いは構成(b)を具備するものではなく、当然(a)、(b)両方の構成を具備するものではない。
したがって、上記(a)、(b)両方の構成を有する本件発明は、上記(a)、(b)のいずれの構成も具備するものではない刊行物1乃至3に記載された各発明に基いて、当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由、その証拠及び平成16年7月9日付けの取消理由、その証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
カラーフィルタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板と、該基板上に形成された着色層およびブラックマトリックスと、前記着色層と前記ブラックマトリックスとを覆うように設けられた保護層とを備え、前記保護層は、前記着色層と前記ブラックマトリックスとを熱処理し、さらに前記熱処理後の着色層とブラックマトリックスにおいて前記保護層が形成されるべき保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるように、酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理を行った後に形成されたものであることを特徴とするカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はカラーフィルタに係り、特に構成層間の密着性が高く耐久性に優れたカラーフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フラットディスプレーとして、モノクロあるいはカラーの液晶ディスプレイが注目されている。液晶ディスプレイには、3原色の制御を行うためにアクティブマトリックス方式および単純マトリックス方式とがあり、いずれの方式においてもカラーフィルタが用いられている。そして、カラーの液晶ディスプレイは構成画素部を3原色(R,G,B)とし、液晶の電気的スイッチングにより3原色の各光の透過を制御してカラー表示を行うものである。
【0003】
このカラーフィルタは、透明基板上に各着色層と保護層と透明電極(ITO)を形成して構成されている。これらの各層の中で保護層は、前記着色層をセル組み工程中での各種溶媒処理等から保護し、またセル組み後液晶中に着色層から不純物が溶出するのを防ぐ役割を担っている。加えて、透明電極(ITO)をスパッタにより形成中に、高温とITOの応力歪みに耐えて、クラックやしわが発生しないことが必要である。さらに、保護層は、着色層表面の凹凸(±0.3〜1.0μm)を覆い、カラーフィルタ表面を±0.1μm以下の平滑面にする機能が必要である。
【0004】
保護層は、通常光硬化性あるいは、熱硬化性の樹脂を溶媒等で希釈してスピンコート法で塗布、形成する。このとき、着色層及びその周囲のガラス表面が露出している部分の表面が、清浄な状態になっていなければならない。仮に、保護層塗布前に着色層及びその周辺部のガラス表面露出部分が汚染されていると、スピンコート時に溶媒で希釈された保護膜樹脂をはじき、保護層にピンホールを生じ、保護層としての機能の喪失や、保護層表面の平滑性が劣化の原因となる。また、比較的軽度の汚染であって、保護層の下地(着色層及びその周囲のガラス露出部分)に対する密着性の低下が生じ、透明電極膜(ITO)形成後に、ITOの応力歪みに保護層が耐えられず、ITOのしわ、クラックを生じたり、セル組み工程中に保護層が剥離したりする。
【0005】
このような理由により、保護層塗布前に、着色層及びその周囲のガラス露出部は、完壁に汚染が取り除かれている必要があり、従って、保護層塗布前の着色層が形成済みのガラス基板の洗浄状態の良否は、極めて大きな意味を持つ。
【0006】
従来においては、トリクレン等の溶媒を使い、保護層形成前に、着色層を形成したガラス基板の溶媒超音波洗浄等を行ない、ガラス基板の汚染を取り除いていて、カラーフィルタを形成した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
トリクレン等の溶媒による超音波洗浄法の洗浄力はきわめて強力であり、保護層のピンホール欠陥、密着性不良の原因となるガラス基板の汚染をほとんど除去することが可能であった。
【0008】
しかし、近年、地球環境に対する影響の問題がクローズアップされつつあり、多量の溶媒を使用し揮発した溶媒が大気中に放出される恐れの強い上記溶媒による超音波洗浄法は問題視されている。従って、将来の環境基準をクリアーし、地球環境に対するダメージを最小限に抑えるため、現在においては、各種溶媒洗浄は逐次より環境への影響の少ない水系の界面活性剤洗浄にきりかわりつつある。
【0009】
ところが、水系の界面活性剤洗浄法は、洗浄力において、溶媒洗浄法に大きく劣り、非水溶性の油性系の汚れや高分子樹脂系の汚れがおとしきれず、シリコーン系の汚染に至ってはまったく洗浄不能となってしまい、保護層のピンホール欠陥、密着性不良の原因となるという問題があった。
【0010】
本発明は、上述のような事情を考慮してなされたものであり、溶媒洗浄以上の洗浄力を持ち、しかも溶媒を使用しないことにより、地球環境への影響の少ない洗浄が可能で、かつ、層構成間の密着性が高く耐久性に優れたカラーフィルタを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は、基板と、該基板上に形成された着色層およびブラックマトリックスと、前記着色層と前記ブラックマトリックスとを覆うように設けられた保護層とを備え、前記保護層は、前記着色層と前記ブラックマトリックスとを熱処理し、さらに前記熱処理後の着色層とブラックマトリックスにおいて前記保護層が形成されるべき保護層形成領域の2-エトキシエタノールに対する接触角が7°以下となるように、酸素及び不活性ガスの混合気体を用いてUVオゾン処理を行った後に形成されたものであるような構成とした。
【0012】
【作用】
ガラス基板上に形成されたブラックマトリックス層および着色層を覆うようにして設けられた保護層は、予めUVオゾン処理を行った後に形成する。上記のUVオゾン処理は、水系の界面活性剤洗浄では、除去不可能なシリコーン系の汚染も除去することができる。この処理により、保護層形成時のピンホール欠陥発生率を大幅に減少することが可能であり、また保護層とブラックマトリックス層、着色層およびその周囲のガラス表面露出部との密着性も大きく向上し、ITOのしわやクラック欠陥の発生を防止し、セル組み工程中の保護層の剥離も防ぐことが可能となる。また、溶媒洗浄工程を無くすことが出来るので、地球環境への影響も最小限に抑えることが出来る。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタを使用したアクティブマトリックス方式による液晶ディスプレイ(LCD)の一例を示す斜視図であり、図2は同じく概略断面図である。図1および図2において、LCD1はカラーフィルタ10と透明ガラス基板20とをシール材30を介して対向させ、その間に捩れネマティック(TN)液晶からなる厚さ約5〜10μm程度の液晶層40を形成し、さらに、カラーフィルタ10と透明ガラス基板20の外側に偏光板50,51が配設されて構成されている。
【0014】
図3はカラーフィルタ10の拡大部分断面図である。図3においてカラーフィルタ10は、透明基板13上にブラックマトリックス14を形成したブラックマトリックス基板12と、このブラックマトリックス基板12のブラックマトリックス14間に形成された着色層16と、このブラックマトリックス14と着色層16を覆うように設けられた保護層18および透明電極19を備えている。このカラーフィルタ10は透明電極19が液晶層40側に位置するように配設されている。そして、着色層16は赤色パターン16R、緑色パターン16G、青色パターン16Bからなり、各着色パターンの配列は図1に示されるようにモザイク配列となっている。尚、着色パターンの配列はこれに限定されるものではなく、三角配列、ストライプ配列等としてもよい。
【0015】
また、透明ガラス基板20上には表示電極22が各着色パターン16R、16G、16Bに対応するように設けられ、各表示電極22は薄膜トランジスタ(TFT)24を有している。また、各表示電極22間にはブラックマトリックス14に対応するように走査線(ゲート電極母線)26aとデータ線26bが配設されている。
【0016】
このようなLCD1では、各着色パターン16R、16G、16Bが画素を構成し、偏光板51側から照明光を照射した状態で各画素に対応する表示電極をオン、オフさせることで液晶層40がシャッタとして作動し、着色パターン16R、16G、16Bのそれぞれの画素を光が透過してカラー表示が行われる。
【0017】
カラーフィルタ10を構成するブラックマトリックス基板12の透明基板13としては、石英ガラス、低膨張ガラス、ソーダライムガラス等の可撓性のないリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有するフレキシブル材等を用いることができる。このなかで、特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるLCD用のカラーフィルタに適している。
【0018】
ここで、本発明のカラーフィルタ10の製造例を図4を参照して説明する。図4に示される例において、先ず透明基板13上にブラックマトリックス14を形成したブラックマトリックス基板12の赤色パターン16Rを形成すべき位置に赤色インキRを印刷する(図4(A))。この印刷は、例えば、赤色の着色層に対応した凹部を備えた凹版とブランケットとを用いて凹版オフセット印刷により行うことができる。
【0019】
同様にして、ブラックマトリックス基板12の緑色パターン16Gを形成すべき位置に緑色インキGを印刷し、青色パターン16Bを形成すべき位置に青色インキBを印刷する(図4(B))。
【0020】
次に、赤色インキR、緑色インキG、青色インキBを硬化させて、各着色パターン16R、16G、16Bからなる着色層16を基板上に形成する(図4(C)。
【0021】
上記のようにして着色層16を形成した後、ブラックマトリックス14と着色層16を覆うように保護層18を形成する。本発明のカラーフィルタの保護層は、保護層形成領域にUVオゾン処理を施した後に形成されたものであることを特徴とする。
【0022】
UVオゾン処理の原理は、以下の通りである。
【0023】
【数1】

上記の反応によって発生した酸素ラジカルが、ガラス基板上の不純物と反応し、洗浄効果を発現する。また、短波長紫外線をガラス基板に照射することにより、不純物が励起、分解され、酸素ラジカルとの反応を促進させる。
【0024】
ここで、好適なUVオゾン処理の条件を以下に示す。
照射光分光特性:184.9nm、253.7nmの輝線を持つ短波長紫外線
照射光強度 :5〜30mW/cm2
照射時間 :5〜20min
使用ガス :酸素、窒素(不活性ガス)混合気体
酸素含有率 :20〜100%
ガス流量 :0〜10ml/min
温 度 :15〜50℃
このようなオゾン処理により、溶媒で希釈された保護層樹脂に対するぬれが向上し、スピンコート時の保護層樹脂塗布性が大きく改善される。UVオゾン処理時間に対するガラスの洗浄効果を図5に示す。そのときの各条件を以下に示す。
【0025】
1)UVオゾン処理条件
照射光分光特性:184.9nm、253.7nmの輝線を持つ短波長紫外線
照射光強度 :14mW/cm2
照射時間 :0,1,3,5,10,20min
使用ガス :酸素、窒素混合気体
酸素含有率 :20%
ガス流量 :0ml/min
温 度 :30℃
2)試料ガラス作製条件
試料ガラスは、UVオゾン処理前に、最も洗浄除去も困難な物質の一つである低分子量シロキサ(シリコーン)皮膜を、下記の方法で形成したものを使用した。
【0026】
(シリコーン皮膜形成条件)
溶剤超音波洗浄したガラスに、重合度4〜20の低分子量シロキサン8000ppm含むシリコーンゴムを10kg/cm2の圧力で1秒圧着してシリコーン皮膜形成。
【0027】
3)UVオゾン処理による洗浄度測定方法
保護層樹脂塗布溶媒(スピンコート時の希釈溶媒)である、2-エトキシエタノールを使い、上記試料ガラスの接触角を測定し、試料表面の洗浄度を調べた。通常試料ガラスの表面が清浄であるほど、2-エトキシエタノールに対する接触角が小さくなる。接触角は、液滴下1min後に測定した。ちなみに、上記試料の低分子量シロキサン皮膜形成前の溶剤洗浄したガラス表面の接触角は、7°であった。
【0028】
図5に示されるように、上記条件で5min以上UVオゾン処理を行うことにより、低分子量シロキサン皮膜形成前の溶媒洗浄を行ったガラスと同様な2-エトキシエタノールに対する塗れ性(洗浄度)が得られていることがわかる。ただし、グラフからは分からないが20minより長くUVオゾン処理を行うと、着色層がUV光によりダメージを受け、ITO形成後に欠陥を生じる原因となる。これらの具体的な実施例は、後に示す。
【0029】
以上のようなUVオゾン処理により、保護層形成領域の保護層樹脂の塗布溶媒に対する接触角が7°以下となり、スピンコート時の保護膜樹脂の塗れ性が向上し、ピンホール欠陥が減少し、また、保護層樹脂硬化後の保護層と下地のブラックマトリックス層、着色層及びその周囲の基板ガラス露出部との密着性が向上する。
【0030】
保護層18は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の透明樹脂を用いて形成する(図4(E))。保護層18の厚さは0.5〜50μm程度が望ましい。このような保護層18により、カラーフィルタ10の表面平滑化、信頼性の向上、および液晶層40への汚染防止等が可能となる。
【0031】
次に、上記保護層18上に透明電極(ITO)19を形成する(図4(F))。この透明電極19は、酸化インジウムスズ(ITO)膜を、蒸着法、スパッタ法等の公知の方法により形成することができ、厚さは、200〜2000Å程度が望ましい。
【0032】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(実施例)
透明基板としてコーニング社製7059ガラス(厚さ=1.1mm)を用い、スピンコート法(回転数=1600r.p.m.)により下記組成の感光性レジストを透明基板上に塗布し、その後、70℃、10分間の条件で乾燥(プレベーク)して感光性レジスト層(厚さ=0.6μm)を形成した。
【0033】
(感光性レジストの組成)
・ポリビニルアルコール4.47重量%水溶液(日本合成化学工業製ゴーセナールT-330)
…1000重量部
・ジアゾ樹脂5重量%水溶液(シンコー技研製D-011)
…57.1重量部
次に、感光性レジスト層に対してブラックマトリックス用のフォトマスク(線幅=45μm)を介して露光を行った。露光装置は大日本スクリーン(株)製のプロキシミティー露光装置を使用し、露光量は50mJ/cm2とした。その後、常温の水を用いてシャワー現像(現像時間=45秒間)を行い、その後、100℃、30分間の熱処理(ポストベーク)を施してブラックマトリックス用の線幅45μmのレリーフ画像を形成した。
【0034】
次に、この透明基板を塩化パラジウム水溶液(日本カニゼン製レッドシューマー、5倍希釈液)に4分間浸漬し、上記のレリーフ画像を触媒含有レリーフとした。
【0035】
その後、この基板をホウ素系還元剤を含む常温のニッケルメッキ液(奥野製薬製ニッケルメッキ液トップケミアロイB-1)に4分間浸漬して黒色レリーフを形成した後、200℃、1時間の熱処理を施してブラックマトリックス基板とした。
【0036】
次に、上記のブラックマトリックス基板に下記のように着色層を形成した。すなわち、版深6μm、幅110μmのストライプ状の凹部を有する版、及びシリコーンブランケットを用い、凹版オフセット印刷法により、ブラックマトリックス基板上のブラックマトリックス間に、下記インキ組成物S-1,S-2,S-3をこの順序で印刷し、それぞれブルー、グリーン、レッドの110μm幅のストライプパターンを印刷形成した。その後、前記基板を200℃で30分間加熱することにより、インキ組成物を熱硬化させて膜厚2〜3μmの着色層を得た。
【0037】
インキ組成物(S-1)
顔 料 ・リオノールブルーES(東洋インキ製造(株)C.I.Pigment Blue15:6)
…14.2重量部
・リオノゲンバイオレットRL(東洋インキ製造(株)C.I.Pigment Violet23)
…0.8重量部
ワニス ・ポリエステルアクリレート樹脂(東亜合成化学工業(株)アロニックスM7100)
…52.5重量部
・ジアリルフタレートプレポリマー(ダイソー(株)ダップA)
…22.5重量部
モノマー ・トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー
…10.0重量部
インキ組成物(S-2)
顔 料 ・リオノールグリーン2YS(東洋インキ製造(株)C.I.Pigment Green36)
…15.0重量部
・セイカファーストイエロー2700(大日精化(株)C.I.Pigment Yellow83)
…5.0重量部
ワニス ・ポリエステルアクリレート樹脂(東亜合成化学工業(株)アロニックスM7100)
…47.6重量部
・ジアリルフタレートプレポリマー(ダイソー(株)ダップA)
…20.4重量部
モノマー ・トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー
…12.0重量部
インキ組成物(S-3)
顔 料 ・クロモフタルレッドA3B(チバ・ガイギー製C.I.Pigment Red177)
…16.0重量部
・セイカファストイエロー2700(大日精化工業(株)C.I.Pigment Yellow83)
…4.0重量部
ワニス ・ポリエステルアクリレート樹脂(東亜合成化学工業(株)アロニックスM7100)
…46.2重量部
・ジアリルフタレートポリマー(ダイソー(株)ダップA)
…19.8重量部
モノマー ・トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー
…14.0重量部
次に、着色層とブラックマトリックス層を覆うように保護層を形成した。
【0038】
保護層の形成は、まず、下記の条件で処理時間を0,1,3,5,10,20minと6種類変えたサンプルを作った。
(UVオゾン処理条件)
UVランプ :KYOKKO製SGL-900HUオゾン
照射光分光特性:184.9nm、253.7nmの輝線を持つ短波長紫外線
照射光強度 :14mW/cm2
照射時間 :0,1,3,5,10,20min
使用ガス :酸素、窒素混合系
酸素含有率 :20%
ガス流量 :0ml/min
温 度 :30℃
次に、下記に示される組成の塗布液をスピンコート法(回転数=1500rpm)により上記のオゾン処理を施した6種類のサンプルに塗布した。
【0039】
(保護層形成用の塗布液組成)
・光硬化性アクリレートオリゴマー(o-クレゾールノボラックエポキシアクリレート(分子量1500〜2000)
… 35重量部
・クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 … 15重量部
・多官能重合性モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)DPHA)
… 50重量部
・重合開始剤(チバガイギー製イルガキュアー) … 2重量部
・エポキシ硬化剤(ゼネラルエレクリトック製UVE1014)
… 2重量部
・2-エトキシエタノール …200重量部
そして、この塗布膜に対して大日本スクリーン(株)製のブロキシミティ露光装置を使用し、露光量15mJ/cm2で全面露光を行った。その後、180℃、60minのプリベークを行った。上記の条件で塗布した保護層の硬化後の厚さは、通常(汚染のない状態)で2.0μmとなる。
【0040】
さらに、保護層を形成した6種類のサンプルの保護層上にスパッタリング法により0.4μmのITO層を形成し、試料1〜6を得た。次に、上記サンプルを温度250℃で、1時間加熱し、カラーフィルタとしての信頼性テストを行った。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(信頼性試験結果)
表1に、信頼性試験結果を示す。
UVオゾン処理0min(試料1)のサンプルは、保護層形成時のスピンコート法で保護層樹脂を塗布した段階で、塗布液を完全にはじいてしまい、保護層を形成することが出来なかった。これは、着色層形成時にシリコーン製のブランケットで、印刷を行った時、ブランケットの低分子シロキサンがガラス、及び着色層表面に転写したためシロキサンの汚染膜が形成され塗布液に対するぬれ性が極端に低下したことに起因すると推測される。
【0043】
UVオゾン処理1min、3min(試料2、3)のサンプルも、程度の差はあるが、基板上の汚染が取り除き切れずに、保護層の塗布性が不良で、欠陥が多く発生している。また、保護層が塗布可能であった部分でも保護層と下地の着色層の密着性が不良で、そのためITO膜形成後の信頼性試験の結果ITO表面にしわが発生している。
【0044】
UVオゾン処理5min、10min(試料4、5)では、処理により、基板上の汚染がほぼ取り除かれたために、保護層の塗布性も良好で、また、保護層と下地のブラックマトリックス層、着色層及びその周囲のガラス露出部分との密着性も良好でカラーフィルタとしての信頼性も充分で実用に供するものであった。
【0045】
UVオゾン処理20min(試料6)では、汚染は充分に取り除かれているため、保護層の塗布性という観点からは、欠陥は生じなかった。しかし、処理時間が長過ぎ、有機物(アクリル系ポリマー)である着色層がUV光によりダメージを受け脆くなったため、その結果ITO形成後の信頼性試験で、ITOのしわが発生してしまった。
【0046】
以上の結果より、本実験の条件においては、保護層形成前の5min以上20min未満のUVオゾン処理を行うことにより、必要にして充分な信頼性を有するカラーフィルタが得られることが分かった。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば基板上に形成された着色層及びブラックマトリックス層を覆うように設けられた保護層は、予めUVオゾン処理を行った後に形成したものであり、上記UVオゾン処理により、保護層形成領域と保護層樹脂の塗布液とのぬれ性が良好となり、保護層と他の層との密着性が高くなり、カラーフィルタの信頼性が向上する。また、溶剤洗浄により保護層形成前の処理を行っていた従来の方法に比べ、UVオゾン処理法は、地球環境に対する影響も極めて小さく、将来の環境基準にも充分対応可能と思われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラーフィルタを使用したアクティブマトリックス方式による液晶ディスプレイの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示される液晶ディスプレイの概略断面図である。
【図3】図1に示される液晶ディスプレイに用いられているカラーフィルタの拡大部分断面図である。
【図4】本発明のカラーフィルタの製造の一例を説明するための工程図である。
【図5】UVオゾン処理時間に対するガラス洗浄効果を示す図である。
【符号の説明】
10…カラーフィルタ
12…ブラックマトリックス基板
13…透明基板
14…ブラックマトリックス
16…着色層
16R,16G,16B…着色パターン
18…保護層
19…透明電極
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-20 
出願番号 特願平5-200505
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G02B)
P 1 651・ 532- YA (G02B)
P 1 651・ 534- YA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 峰 祐治  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 瀬川 勝久
辻 徹二
登録日 2003-04-18 
登録番号 特許第3420799号(P3420799)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 カラーフィルタ  
代理人 石川 泰男  
代理人 石川 泰男  

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