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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 発明同一 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L |
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管理番号 | 1112945 |
異議申立番号 | 異議2003-73862 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-12-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-30 |
確定日 | 2005-01-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3471220号「半導体発光装置」の請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3471220号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第3471220号の請求項1ないし15に係る発明についての出願は、平成10年5月27日に特許出願され、平成15年9月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、同年12月30日に寺田卓司より特許異議の申立てがなされ、平成16年8月20日付で取消理由通知がなされ、その指定期間内である同年10月26日に訂正請求がなされたものである。 2 訂正の適否についての判断 2.1 訂正事項 平成16年10月26日になされた訂正請求は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載事項を訂正することを求めるものであり、その内容には以下の(1)〜(5)の訂正事項がある。 (1)請求項1を 「リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」 と訂正する。 (2)請求項2を 「リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」 と訂正する。 (3)請求項3を 「リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」 と訂正する。 (4)請求項4を 「リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」 と訂正する。 (5)請求項5及び7を削除する。 2.2 訂正の適否についての判断 上記(1)及び(3)の訂正事項は、請求項1及び3に、「前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し」とあるように、「端部」が「ボール部」と「ネック部」とを有することが記載されているところ、同請求項に記載された「前記第1の封止体は、その表面が、前記端部を横切るように設けられた」中にある「端部」を「ネック部」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記(2)及び(4)の訂正事項は、請求項2及び4に、「前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し」とあるように、「端部」が「発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部」と「ワイアよりも直径が太い部分」とを有することが記載されているところ、同請求項に記載された「前記第1の封止体は、その表面が、前記端部を横切るように設けられた」中にある「端部」を「ワイアよりも直径が太い部分」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記(1)〜(4)の訂正事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0053】、【0054】及び【0064】等に記載された事項を根拠に訂正したものであるから、新規事項の追加に該当するものではなく、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 次に、上記(5)の訂正事項は、請求項の削除を目的とするものであり、新規事項の追加に該当するものでも、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 なお、全文訂正明細書には、上記(1)〜(5)による訂正に伴い必要となった、請求項の繰り上げ、引用請求項の訂正、及び特許請求の範囲と整合をとるための発明の詳細な説明の訂正がなされているが、これは明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当するものでも、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2.3 むすび 以上のとおりであるから、上記各訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3 特許異議の申立てについての判断 3.1 申立ての理由の概要及び取消理由通知 申立人寺田卓司は、訂正前の本件の請求項1〜15に係る発明につき、次の(ア)〜(エ)の理由により、特許を取り消すべきであると主張している。 (ア)請求項1〜4に係る発明は、甲第1号証(国際公開98/05078号パンフレット)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (イ)請求項1〜6、8〜15に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証(特開昭61-156826号公報)に記載された発明並びに周知事項(甲第3〜5号証(特開平7-326639号公報、特開平8-102468号公報及び特開平6-224267号公報)を参照)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (ウ)請求項1〜2に係る発明は、特願平10-101243号(特開平11-298047号、甲第7号証)の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 (エ)請求項7に係る発明は、特許法第41条第3項の規定により出願公開されたとみなされた特願平10-35273号[出願公開された優先権主張を伴う特願平11-39262号(特開2000-286455号、甲第6号証)を参照。]の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 そして、当審において、上記異議の申立ての内容を含めて、以下の取消理由を通知した。 本件特許第3471220号の請求項1〜15に係る特許は、合議の結果、以下の理由によって取り消すべきものと認められます。これについて意見がありましたら、この通知の発送の日から60日以内に意見書の正本1通及びその副本2通を提出して下さい。 理 由 1)本件の請求項1〜6、8〜15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2)本件の請求項1〜6、8〜15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3)本件の請求項1〜15に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:国際公開98/05078号パンフレット(甲第1号証) 刊行物2:特開昭61-156826号公報(甲第2号証) 刊行物3:特開平7-326639号公報(甲第3号証) 刊行物4:特開平8-102468号公報(甲第4号証) 刊行物5:特開平6-224267号公報(甲第5号証) 出願1:特許法第41条第3項の規定により出願公開されたとみなされた特願平10-35273号[出願公開された優先権主張を伴う特願平11-39262号(特開2000-286455号)を参照。](甲第6号証) 出願2:特願平10-101243号(特開平11-298047号)(甲第7号証) 上記刊行物1〜5及び上記出願1、2の出願当初の明細書又は図面には、特許異議申立人寺田卓司の特許異議申立書の10頁36行〜14頁5行の「2 先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明」に記載された発明が記載されている。 本件の請求項1〜6、8〜15に係る発明は、同特許異議申立書14頁8行〜16頁12行に記載された理由により上記刊行物1に記載されたものであり、また上記刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、さらに上記出願1の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と同一のものである。なお、上記特許異議申立書14頁8行〜16頁12行には、本件の請求項3〜6、8〜15に係る発明が上記出願1の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と同一のものであるとの主張はなされていないが、請求項3、4に係る発明においてリードフレームにカップ部を設けた点及び従属形式の請求項5、6、8〜15の記載事項については、上記出願1の出願当初の明細書又は図面に記載されているか、もしくは記載されていなくても周知又は設計的事項であるから、本件の請求項3〜6、8〜15に係る発明についても上記出願1の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と同一であるといえる。 本件の請求項7に係る発明は、同特許異議申立書16頁14〜25行に記載された理由により上記出願2の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と同一のものである。 3.2 訂正明細書の請求項1ないし13に係る発明 訂正明細書の請求項1ないし13に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものであって、訂正前の請求項5及び7が削除されたことから、訂正前の請求項8が請求項5に、また訂正前の請求項9〜15が請求項7〜13に対応することになる。 「【請求項1】リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」(以下、「本件発明1」という。) 「【請求項2】リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」(以下、「本件発明2」という。) 「【請求項3】リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」(以下、「本件発明3」という。) 「【請求項4】リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。」(以下、「本件発明4」という。) 「【請求項5】前記リードフレームの前記カップ部は、その内壁面の少なくとも一部が荒面仕上げとされていることを特徴とする請求項3又は4記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明5」という。) 「【請求項6】前記ボール部は、50〜100μmの高さを有し、 前記ネック部は、10〜100μmの高さを有することを特徴とする請求項1又は3のいずれかに記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明6」という。) 「【請求項7】前記第1の封止体は、前記発光素子から放出される第1の波長の光を前記蛍光体が吸収して前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を放出するものとして構成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明7」という。) 「【請求項8】前記第1の封止体は、無機系接着剤からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明8」という。) 「【請求項9】前記無機系接着剤は、アルカリ金属珪酸塩、燐酸塩、コロイダルシリカ、シリカゾル、水ガラス、Si(OH)n 、SiO2 、及びTiO2 からなる群から選択されたいずれかにより構成されていることを特徴とする請求項8記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明9」という。) 「【請求項10】前記第2の封止体は、ガラス転移温度が150℃以上の材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明10」という。) 「【請求項11】前記リードフレームは、100W/(m・K)以下の熱伝導率を有する材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明11」という。) 「【請求項12】前記リードフレームは、鉄系の材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明12」という。) 「【請求項13】前記リードフレームのアウターリード部は、半田外装メッキされていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の半導体発光装置。」(以下、「本件発明13」という。) 3.3 甲号証の記載事項 甲第1号証には、次の(a)〜(h)事項が記載されている。 (a)「図1の発光ダイオード100は、マウント・リード105とインナーリード106とを備えたリードタイプの発光ダイオードであって、マウント・リード105のカップ部105a上に発光素子102が設られ、カップ部105a内に、発光素子102を覆うように、所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング樹脂101が充填された後に、樹脂モールドされて構成される。ここで、発光素子102のn側電極及びp側電極はそれぞれ、マウント・リード105とインナーリード106とにワイヤー103を用いて接続される。」(13頁21行〜14頁3行) (b)「本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。」(17頁9〜11行) (c)「特に、蛍光体が含有されたコーティング部とモールド部材とをそれぞれ同一材料を用いたとしても、どちらか一方に蛍光体が入ることによる熱膨張係数の違いにより、それらの界面においては、導電性ワイヤーは断線し易い。そのために導電性ワイヤーの直径は、25μm以上がより好ましく、発光面積や取り扱い易さの観点から35μm以下が好ましい。導電性ワイヤーの材質としては、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金が挙げられる。このような材質、形状からなる導電性ワイヤーを用いることにより、ワイヤーボンディング装置によって、各発光素子の電極と、インナー・リード及びマウント・リードとを容易に接続することができる。」(26頁13〜22行) (d)「発光素子が配置されるマウント・リードのカップ部の表面を鏡面状とし、表面に反射機能を持たせても良い。この場合の表面粗さは、0.1S以上0.8S以下が好ましい。」(27頁18〜20行) (e)「また、マウント・リード上に複数の発光素子を積置する場合は、発光素子からの発熱量が多くなるため熱伝導度がよいことが求められ、その熱伝導度は、0.01cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅、メタライズパターン付きセラミック等が挙げられる。」(27頁22行〜28頁3行) (f)「コーティング部の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが適する。」(29頁3〜5行) (g)「モールド部材104の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。」(29頁23〜25行) (h)「14. カップ部とリード部とを有するマウント・リードと、前記マウント・リードのカップ内に載置されかつ一方の電極がマウント・リードに電気的に接続されたLEDチップと、該LEDチップの他方の電極と電気的に接続されたインナー・リードと、前記LEDチップを覆うように前記カップ内に充填された透光性のコーティング部材と、前記マウント・リードのカップ部と、前記インナーリードと該LEDチップの他方の電極との接続部分とを含み、前記コーティング部材で覆われたLEDチップを被覆するモールド部材とを有する発光ダイオードであって、前記LEDチップの発光層が窒化物系化合物半導体であり、かつ前記コーティング部材がフォトルミネッセンス蛍光体を含み、該フォトルミネッセンス蛍光体がY、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体からなるフォトルミネッセンス蛍光体を含むことを特徴とする発光ダイオード。」(57頁16行〜58頁6行、請求項14) 甲第2号証には、次の(i)〜(k)の事項が記載されている。 (i)「第1の樹脂8の膜厚は、金属細線6の半球状のネールヘッド部の上部までは覆わない厚さにする。このことを第2図を参照しながら更に詳しく説明する。金属細線6の半球状の接合部分の最上部A点は通常金属細線6を電極3に接合した際に最も細くなる部分であり、第1の樹脂8の表面Bは第1の樹脂8を設置した際に生じる盛上がる点である。」(2頁右上欄4〜11行) (j)「B点はA点より下方に位置する様に第1の樹脂8の膜厚を決定する。ただし、第1の樹脂8を余り薄くすると本発明の目的を達成できず、また逆に第1の樹脂を厚くして t1>t2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) を満足する様に設定すると温度サイクルストレスによる金属細線6のA点における断線現象を呈してしまう。」(2頁右上欄16行〜同頁左下欄3行) (k)「一般的には、t2は60μmないし100μm程度であり、従って本発明の実施例ではt1は30μmないし50μm程度とする。」(2頁左下欄4〜6行) 甲第3号証には、次の(l)の事項が記載されている。 (l)「図6に示すように、ボンディングツール10Bが下降して初期ボール21がパッド41に接触し、超音波熱圧着によりパッド41に圧着ボール22が形成される(第1ボンディング)。」(段落【0014】) 甲第4号証には、次の(m)の事項が記載されている。 (m)「図1の(a)に示す工程では、キャピラリ13を通じて繰り出された金属ワイヤ14の先端部を放電によって溶かし、該部にボール15を形成している。図1の(b)に示す工程では、キャピラリ13を用いてボール15を半導体チップ16の電極パッド17に、熱圧着法または超音波溶接法を適用してボンディングしている。」(段落【0013】) 甲第5号証には、次の(n)、(o)の事項が記載されている。 (n)「図2(a)に示すように、半導体チップ1の上面に形成された電極パッド(不図示)に、キャピラリ2の押下力によってボール3を圧接し、さらに超音波や熱を加えてボール3を電極パッドに圧着させる。」(段落【0008】) (o)「このとき、ボール3の上側には、キャピラリ2の先端に形成されたインサイドチャンファ部4(図2参照)によって必ずコーン部5と呼ばれる円錐部分が形成され、且つそのコーン部5の周辺には平坦部6が形成される。」(段落【0009】) 甲第6号証には、次の(p)の事項が記載されている。 (p)「図2に示すようにLEDチップ203周辺を上述と同様の蛍光物質202を含有した熱可塑性樹脂201で射出成形封止した後、注型成形にて透光性のエポキシ樹脂をモールド部材208として外側に形成した以外は実施例1と同様にして発光ダイオード200を形成させた。」(段落【0040】) 甲第7号証には、次の(q)〜(u)の事項が記載されている。 (q)「マウント・リードのカップ上に配置された発光素子と、該発光素子の電極とインナー・リードを電気的に接続するワイヤと、前記カップ内に充填された色変換部材と、前記マウント・リード及びインナー・リードの先端をモールド部材で被覆した発光装置であって、少なくとも発光素子上に形成された色変換部材は発光素子の電極上にワイヤボンディングされたボール部の上端よりも低く充填されていることを特徴とする発光装置。」(【請求項2】) (r)「本発明は、色変換部材102とモールド部材103の界面のずれなどに対してワイヤ104よりも強いボール部101(ワイヤ径よりも太いボール部)を利用して発光素子105の導通を確保するものであるから発光素子105への影響を少なくする範囲で種々選択することができる。色変換部材102とモールド部材104との熱収縮や熱膨張率等の違いなどが大きければ発光素子105の電極に近くボール部101の径が大きい部位に色変換部材102とモールド部材103との界面を形成する、或いはボール部101自体を大きくすることで断線を防ぐことができる。」(段落【0021】) (s)「モールド部材103の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や低融点ガラスなどが好適に用いられる。ワイヤへの応力を考慮した場合、収縮や膨張などが少ないものが望ましい。」(段落【0029】) (t)「InxAlyGa1-x-yN(ただし、0≦x、0≦y、x+y≦1)を発光層として形成させた窒化物半導体としては、比較的高いエネルギを高輝度に発光させることができるため、蛍光体を励起させる発光素子として好適に利用することができる。以下、窒化物半導体素子について詳述する。窒化物半導体を用いた発光素子用の基板にはサファイアC面の他、R面、A面を主面とするサファイア、その他、スピネル(MgA12O4)のような絶縁性の基板の他、SiC(6H、4H、3Cを含む)、Si、ZnO、GaAs、GaN結晶等の材料を用いることができる。結晶性の良い窒化物半導体を比較的簡単に形成させるためにはサファイヤ基板(C面)やGaN単結晶を用いることが好ましい。」(段落【0033】) (u)「次に、銅入り鉄の平板を押圧加工及び打ち抜きによりタイバで接続されたマウント・リード及びインナー・リードを形成させる。マウント・リード及びインナー・リードに銀メッキを施した後、ダイボンド機器を用いて上述のLEDチップをエポキシ樹脂を用いてマウント・リードのカップ内にマウントさせる。エポキシ樹脂を硬化後、直径30μmの金線を用いてLEDチップの電極とボールボンディングする。第1のボンディングとしてLEDチップ上にボールボンディングされた金線はインナー・リード或いはマウント・リードのカップ外部に第2のボンディングとしてステッチボンディングされる。」(段落【0046】) 3.4 対比・判断 3.4.1 新規性及び進歩性について 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比する。 甲第1号証に記載された「マウント・リード105」、「導電性ワイヤー103」、「コーティング部101」及び「モールド部材104」が、それぞれ本件発明1の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」及び「第2の封止体」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成された半導体発光装置」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明1では、ワイアの端部が、ワイアの主たる部分よりも径が太く、またボール部及びネック部を有しており、第1の封止体の表面がネック部を横切るように設けられているのに対して、甲第1号証には、ワイアの端部が、ワイアの主たる部分よりも径が太く、またボール部及びネック部を有すること、及び第1の封止体の表面がネック部を横切るように設けられていることについて、明記されていない点 上記相違点について検討する。 甲第1号証に記載の発明では、ワイアがボンディングにより発光素子に接続されていることから、ワイアはその端部がその主たる部分よりも径が太いものと一応考えられるものの、ワイアの端部がボール部とネック部との両方を有しているとまではいえない。また、甲第1号証の図1には、第1の封止体の表面がワイヤの端部のあたりを横切ることが示されているものの、第1の封止体の表面がネック部を横切ることまでは、同図から看取できない。 このように、甲第1号証には、上記相違点に係る本件発明1の構成を示唆するものがなく、また上記相違点が単なる構成上の微差であるとはいえないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、上記相違点に関して、甲第2号証には、樹脂封止型半導体装置において、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が、金属細線6の半球状のネールヘッド部を横切るようにすることにより、温度サイクルストレスによる金属細線6の断線を防ぐことが記載されているものの、金属細線6の接続端部がボール部とネック部とを有し、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が金属細線6のネック部を横切ることは、同甲号証に記載されておらず、甲第3〜5号証をみても、これらにはワイヤボンディングに関する事項が記載されているすぎず、二つの樹脂の界面がワイヤ端部のネック部を横切ることについて何ら記載されていないから、甲第1号証に記載された発明に甲第2〜5号証に記載された事項を適用して本件発明1の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 本件発明2と甲第1号証に記載された発明とを対比する。 甲第1号証に記載された「マウント・リード105」、「導電性ワイヤー103」、「コーティング部101」及び「モールド部材104」が、それぞれ本件発明2の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」及び「第2の封止体」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成された半導体発光装置」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明2では、ワイアの端部が、発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、第1の封止体の表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられているのに対して、甲第1号証には、ワイアの端部が、発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部及びワイアよりも直径が太い部分を有していること、及び第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられていることについて、明記されていない点 上記相違点について検討する。 甲第1号証に記載の発明では、ワイアがボンディングにより発光素子に接続されていることから、ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部を有しているものと一応考えられるが、ワイアの端部が他にワイアよりも直径が太い部分を有しているとまではいえない。また、甲第1号証の図1には、第1の封止体の表面がワイアの端部のあたりを横切ることが示されているものの、第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切ることまでは、同図から看取できない。 このように、甲第1号証には、上記相違点に係る構成を示唆するものがなく、また上記相違点が単なる構成上の微差であるとはいえないから、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、上記相違点に関して、甲第2号証には、樹脂封止型半導体装置において、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が、金属細線6の半球状のネールヘッド部を横切るようにすることにより、温度サイクルストレスによる金属細線6の断線を防ぐことが記載されているものの、金属細線6の接続端部がボール部とネック部とを有し、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が金属細線6のネック部を横切ることは、同甲号証に記載されておらず、甲第3〜5号証をみても、これらにはワイヤボンディングに関する事項が記載されているすぎず、二つの樹脂の界面がワイヤ端部のネック部を横切ることについて何ら記載されていないから、甲第1号証に記載された発明に甲第2〜5号証に記載された事項を適用して本件発明2の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 本件発明3と甲第1号証に記載された発明とを対比する。 甲第1号証に記載された「マウント・リード105」、「導電性ワイヤー103」、「コーティング部101」及び「モールド部材104」が、それぞれ本件発明3の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」及び「第2の封止体」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成された半導体発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明3では、ワイアの端部が、ワイアの主たる部分よりも径が太く、またボール部及びネック部を有しており、第1の封止体の表面がネック部を横切るように設けられているのに対して、甲第1号証には、ワイアの端部が、ワイアの主たる部分よりも径が太く、またボール部及びネック部を有すること、及び第1の封止体の表面がネック部を横切るように設けられていることについて、明記されていない点 上記相違点について検討する。 甲第1号証に記載の発明では、ワイアがボンディングにより発光素子に接続されていることから、ワイアはその端部がその主たる部分よりも径が太いものと一応考えられるものの、ワイアの端部がボール部とネック部との両方を有しているとまではいえない。また、甲第1号証の図1には、第1の封止体の表面がワイヤの端部のあたりを横切ることが示されているものの、第1の封止体の表面がネック部を横切ることまでは、同図から看取できない。 このように、甲第1号証には、上記相違点に係る本件発明3の構成を示唆するものがなく、また上記相違点が単なる構成上の微差であるとはいえないから、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、上記相違点に関して、甲第2号証には、樹脂封止型半導体装置において、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が、金属細線6の半球状のネールヘッド部を横切るようにすることにより、温度サイクルストレスによる金属細線6の断線を防ぐことが記載されているものの、金属細線6の接続端部がボール部とネック部とを有し、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が金属細線6のネック部を横切ることは、同甲号証に記載されておらず、甲第3〜5号証をみても、これらにはワイヤボンディングに関する事項が記載されているすぎず、二つの樹脂の界面がワイヤ端部のネック部を横切ることについて何ら記載されていないから、甲第1号証に記載された発明に甲第2〜5に記載された事項を適用して本件発明3の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 本件発明4と甲第1号証に記載された発明とを対比する。 甲第1号証に記載された「マウント・リード105」、「導電性ワイヤー103」、「コーティング部101」及び「モールド部材104」が、それぞれ本件発明4の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」及び「第2の封止体」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成された半導体発光装置」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明4では、ワイアの端部が、発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、第1の封止体の表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられているのに対して、甲第1号証には、ワイアの端部が、発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部及びワイアよりも直径が太い部分を有していること、及び第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられていることについて、明記されていない点 上記相違点について検討する。 甲第1号証に記載の発明では、ワイアがボンディングにより発光素子に接続されていることから、ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部を有しているものと一応考えられるが、ワイアの端部が他にワイアよりも直径が太い部分を有しているとまではいえない。また、甲第1号証の図1には、第1の封止体の表面がワイアの端部のあたりを横切ることが示されているものの、第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切ることまでは、同図から看取できない。 このように、甲第1号証には、上記相違点に係る構成を示唆するものがなく、また上記相違点が単なる構成上の微差であるとはいえないから、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、上記相違点に関して、甲第2号証には、樹脂封止型半導体装置において、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が、金属細線6の半球状のネールヘッド部を横切るようにすることにより、温度サイクルストレスによる金属細線6の断線を防ぐことが記載されているものの、金属細線6の接続端部がボール部とネック部とを有し、第1の樹脂8と第2の樹脂7との界面が金属細線6のネック部を横切ることは、同甲号証に記載されておらず、甲第3〜5号証をみても、これらにはワイヤボンディングに関する事項が記載されているすぎず、二つの樹脂の界面がワイヤ端部のネック部を横切ることについて何ら記載されていないから、甲第1号証に記載された発明に甲第2〜5号証に記載された事項を適用して本件発明4の技術的事項とすることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 本件発明5〜13と甲第1号証に記載された発明とを対比する。 本件発明5〜13は、本件発明1〜4のいずれかの技術的事項をすべて引用するものであるから、本件発明1〜4と同様に、甲第1号証に記載された発明ではなく、また甲第1号証に記載された発明に甲第2〜5号証に記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 3.4.2 先願明細書に記載された発明との同一性について 本件発明1と特願平10-101243号(特開平11-298047号、甲第7号証)の出願当初の明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明とを対比する。 先願明細書に記載された「マウント・リード106」、「ワイヤ104」、「色変換部材102」及び「モールド部材103」が、それぞれ本件発明1の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」及び「第2の封止体」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部を有する半導体発光装置」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明1では、ワイアの端部がボール部の他にネック部を有し、第1の封止体の表面がネック部を横切るように設けられているのに対して、先願明細書に記載された発明では、第1の封止体の表面がボール部を横切るように設けられているものの、ワイアの端部がボール部の他にネック部を有し、第1の封止体の表面がネック部を横切ることについては、先願明細書に記載がない点 上記相違点について検討する。 ワイアの端部がボール部の他にネック部を有することが、例えば甲第3〜5号証等から周知であったとしても、第1の封止体の表面がネック部を横切ることまでは周知とみることができないから、本件発明1が先願明細書に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 本件発明2と先願明細書に記載された発明とを対比する。 先願明細書に記載された「マウント・リード106」、「ワイヤ104」、「色変換部材102」、「モールド部材103」及び「ボール部101」が、それぞれ本件発明1の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」、「第2の封止体」及び「前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部を有する半導体発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明2では、ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部の他にワイアよりも直径が太い部分を有し、第1の封止体の表面が、ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられているのに対して、先願明細書に記載された発明では、第1の封止体の表面が、発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部を横切るように設けられているものの、ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部の他にワイアよりも直径が太い部分を有し、第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切ることについては、先願明細書に記載がない点 上記相違点について検討する。 ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部の他にワイアよりも直径が太い部分を有することが、例えば甲第3〜5号証等から周知であったとしても、第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切ることまでは周知とみることができないから、本件発明2が先願明細書に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 本件発明3と先願明細書に記載された発明とを対比する。 先願明細書に記載された「マウント・リード106」、「ワイヤ104」、「色変換部材102」及び「モールド部材103」が、それぞれ本件発明3の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」及び「第2の封止体」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部を有する半導体発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明3では、ワイアの端部がボール部の他にネック部を有し、第1の封止体の表面がネック部を横切るように設けられているのに対して、先願明細書に記載された発明では、第1の封止体の表面がボール部を横切るように設けられているものの、ワイアの端部がボール部の他にネック部を有し、第1の封止体の表面がネック部を横切ることについては、先願明細書に記載がない点 上記相違点について検討する。 ワイアの端部がボール部の他にネック部を有することが、例えば甲第3〜5号証等から周知であったとしても、第1の封止体の表面がネック部を横切ることまでは周知とみることができないから、本件発明3が先願明細書に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 本件発明4と先願明細書に記載された発明とを対比する。 先願明細書に記載された「マウント・リード106」、「ワイヤ104」、「色変換部材102」、「モールド部材103」及び「ボール部101」が、それぞれ本件発明4の「リードフレーム」、「ワイア」、「第1の封止体」、「第2の封止体」及び「前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部」に相当する。 してみれば、両者は、「リードフレームと、前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、を備え、前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部を有する半導体発光装置」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本件発明4では、ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部の他にワイアよりも直径が太い部分を有し、第1の封止体の表面が、ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられているのに対して、先願明細書に記載された発明では、第1の封止体の表面が、発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部を横切るように設けられているものの、ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部の他にワイアよりも直径が太い部分を有し、第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切ることについては、先願明細書に記載がない点 上記相違点について検討する。 ワイアの端部が発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部の他にワイアよりも直径が太い部分を有することが、例えば甲第3〜5号証等から周知であったとしても、第1の封止体の表面がワイアよりも直径が太い部分を横切ることまでは周知とみることができないから、本件発明4が先願明細書に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 本件発明5〜13と先願明細書に記載された発明とを対比する。 本件発明5〜13は、本件発明1〜4のいずれかの技術的事項をすべて引用するものであるから、本件発明1〜4と同様に、先願明細書に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 なお、訂正前の請求項7に係る発明は、訂正の結果削除されたので、上記「3.1 申立ての理由の概要及び取消理由通知」の(エ)の理由による異議申立てについては、その対象が存在しなくなった。 4 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件の請求項1ないし13に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 半導体発光装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。 【請求項2】 リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。 【請求項3】 リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。 【請求項4】 リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする半導体発光装置。 【請求項5】 前記リードフレームの前記カップ部は、その内壁面の少なくとも一部が荒面仕上げとされていることを特徴とする請求項3又は4記載の半導体発光装置。 【請求項6】 前記ボール部は、50〜100μmの高さを有し、 前記ネック部は、10〜100μmの高さを有することを特徴とする請求項1又は3記載の半導体発光装置。 【請求項7】 前記第1の封止体は、前記発光素子から放出される第1の波長の光を前記蛍光体が吸収して前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を放出するものとして構成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体発光装置。 【請求項8】 前記第1の封止体は、無機系接着剤からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体発光装置。 【請求項9】 前記無機系接着剤は、アルカリ金属珪酸塩、燐酸塩、コロイダルシリカ、シリカゾル、水ガラス、Si(OH)n、SiO2、及びTiO2からなる群から選択されたいずれかにより構成されていることを特徴とする請求項8記載の半導体発光装置。 【請求項10】 前記第2の封止体は、ガラス転移温度が150℃以上の材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体発光装置。 【請求項11】 前記リードフレームは、100W/(m・K)以下の熱伝導率を有する材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の半導体発光装置。 【請求項12】 前記リードフレームは、鉄系の材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の半導体発光装置。 【請求項13】 前記リードフレームのアウターリード部は、半田外装メッキされていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の半導体発光装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、半導体発光装置に関する。より詳細には、本発明は、窒化ガリウム系半導体発光素子を搭載した発光装置であって、半田付けに対する耐熱性や信頼性が顕著に改善された半導体発光装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 半導体発光装置は、コンパクト且つ低消費電力であり、信頼性に優れるなどの多くの利点を有し、近年では、種々ので高い発光輝度が要求される室内外の表示板、鉄道/交通信号、車載用灯具などについても広く応用されつつある。 【0003】 これらの半導体発光装置のうちで、窒化ガリウム系半導体を用いた発光装置が最近、注目されている。窒化ガリウム系半導体は、直接遷移型のIII-V族化合物導体であり、比較的短い波長領域において高効率で発光させることができるという特徴を有する。 【0004】 なお、本願明細書において「窒化ガリウム系半導体」とは、BxInyAlzGa(1-x-y-z)N(O≦x≦1、O≦y≦1、O≦z≦1、O≦x+y+z≦1)のIII-V族化合物半導体を含み、さらに、V族元素としては、Nに加えてリン(P)や砒素(As)などを含有する混晶も含むものとする。例えば、InGaN(x=0、y=0.3、z=0)も「窒化ガリウム系半導体」に含まれるものとする。 【0005】 窒化ガリウム系半導体は、組成x、y及びzを制御することによってバンドギャップを大きく変化させることができるために、LEDや半導体レーザの材料として有望視されている。特に、青色や紫外線の波長領域で高輝度に発光させることができれば、各種光ディスクの記録容量を倍増させることができる。さらに、このような短波長の光を用いて蛍光体を励起させれば、発光波長の自由度が極めて高い光源を実現することができる。すなわち、可視光から赤外光までの幅広い波長領域において自由に発光波長を選択することが可能となり、表示装置のフルカラー化も容易に実現できる。そこで、窒化ガリウム系半導体を発光層に用いた窒化ガリウム系半導体発光素子は、その初期特性や信頼性の向上に向けて急速に開発が進められている。 【0006】 図4は、窒化ガリウム系半導体発光素子を搭載した従来の半導体発光装置の概略構成を表す断面図である。すなわち、同図(a)は全体断面図であり、同図(b)はその要部断面図である。 【0007】 同図の半導体発光装置においては、リン脱酸銅などの銅系の材料で形成されたリードフレーム102のカップ部に窒化ガリウム系半導体発光素子104がマウントされている。発光素子104のマウントは、接着剤106を用いて行われる場合が多い。また、リードフレーム102のアウターリード部102Aには、銀(Ag)メッキが施されることが多い。 【0008】 発光素子104の上部には、図示しない電極が設けられ、それぞれワイア108,108によってリードフレーム102に接続されている。また、リードフレームのカップ部は、発光素子104を覆うように第1の封止体110により封止されている。第1の封止体110としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が用いられることが多い。ここで、第1の封止体110に蛍光体を混入し、窒化ガリウム系半導体発光素子104からの短波長の光を波長変換して所定の波長の光を取り出すこともできる。また、リードフレーム102の頭部全体は、第2の封止体112により封止され、発光素子104を保護するとともに光を集光したり拡散するようにされている。第2の封止体112としては、エポキシ樹脂が用いられることが多い。 【0009】 このように第1の封止体110と第2の封止体112とを用いたいわゆる「2重モールド構造」は、特に、蛍光体を利用した半導体発光装置の場合に重要である。すなわち、半導体発光素子104から放出された光を高い効率で波長変換し集光して外部に放出するためには、蛍光体を発光素子104の周囲に高い密度で配置することが望ましい。仮に、図4において、第2の封止体112にまで蛍光体を混入させると光の放出源が広がってしまい、レンズとしての集光効果が得られなくなるという問題が生ずる。従って、図4に示したような「2重モールド構造」において、発光素子104の周囲の第1の封止体110のみに蛍光体を混入するようにすることが必要とされる。 【0010】 このような「2重モールド構造」の半導体発光装置は、発光素子104から放出された短波長の光が第1の封止体に混入された蛍光体により波長変換され、さらに第2の封止体により集光または拡散されて外部に取り出される。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、このような半導体発光装置を実用に供するためには、リードフレーム102のアウターリード部102Aを半田付けすることにより、所定の基板やソケットなどに実装する必要がある。 【0012】 しかし、本発明者が独自に行った試作検討の結果、図4に示したような従来の半導体発光装置は、耐熱性が十分でなく、実装時の半田付けによって各種の異常が生ずることが分かった。具体的には、実装時の半田付けによってワイア108の断線や、光取り出し効率の低下などの不具合が生じた。そして、この原因をさらに詳しく検討した結果、半田付けにともなう加熱により、封止体110,112が膨張することが原因であることが分かった。 【0013】 すなわち、半田付け実装時の加熱により、封止体110,112が膨張してワイア108が断線するという不具合を生じやすいことが分かった。特に、窒化ガリウム系半導体発光素子の場合には、GaAs系発光素子などと異なり、ひとつの素子に対しワイア108を2本用いる必要がある。その結果として、窒化ガリウム系半導体発光装置の場合、ワイアを1本しか用いない他の発光素子と比べてワイア断線の確率が2倍に増えるという問題がある。 【0014】 また、図4に示した半導体発光装置は、蛍光体を混合した第1の封止体110を発光素子載置済みのリードフレームのカップ部に充填し、さらに第2の封止体112で全体を封止する2重モールド構造を有する。このような2重モールド構造は、前述したように、蛍光体を発光素子104の周囲に高密度に配置するために極めて便利な構成である。ところが第1の封止体110と第2の封止体112の熱膨張係数が異なる場合は、半田付け実装時の加熱で2つの封止体が別々の膨張率で膨張する。そして、これらの界面においてワイア108に大きな剪断応力がかかり断線などの不具合を生じやすかった。 【0015】 また、封止体112の成形時や半田付け実装時に2つの封止体110,112の界面や、封止体とリードフレーム102のカップ部の内壁面との界面に隙間が生じ、その界面での反射ロスにより発光素子104やその周囲の蛍光体から放出された光が効率よく外部へ取り出せない不具合が発生した。 【0016】 さらに、従来の半導体発光装置は、このような耐熱性の問題を有するために、封止後にアウターリード102Aに半田メッキを施すことが極めて困難であった。そのために代替手段として予め銀(Ag)メッキが施されたリードを用いる場合が多かった。しかし、アウターリードに半田メッキを施すことができないために、実装時の半田付け工程において、半田の「濡れ」が十分でなく、歩留まりが低下するという問題が生ずる。 【0017】 本発明は、以上説明したような本発明者が独自に認識した種々の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、耐熱性が高く、実装工程においても安定して半田付けを行うことができる窒化ガリウム系半導体発光装置を提供することにある。 【0019】 【課題を解決するための手段】 本発明の半導体発光装置は、 リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする。 また本発明の半導体発光装置は、 リードフレームと、 前記リードフレームの上に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記発光素子を覆うようにその周囲に設けられ、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその周囲に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする。 【0020】 あるいは本発明の半導体発光装置は、 リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ネック部を横切るように設けられたことを特徴とする。 あるいはまた本発明の半導体発光装置は、 リードフレームと、 前記リードフレームに設けられたカップ部の底部に載置された窒化ガリウム系半導体発光素子と、 前記リードフレームの電極端子と前記発光素子とを接続するワイアと、 前記カップ部の少なくとも一部に充填され、蛍光体を含有する第1の封止体と、 前記第1の封止体を覆うようにその上に設けられた第2の封止体と、 を備え、 前記ワイアは、その主たる部分よりも径が太いものとして構成された端部を前記発光素子との接続部において有し、 前記端部は、前記ワイアのボンディングにより形成され、前記発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部、及び前記ワイアよりも直径が太い部分を有し、 前記第1の封止体は、その表面が、前記ワイアよりも直径が太い部分を横切るように設けられたことを特徴とする。 【0021】 ここで、前記リードフレームの前記カップ部は、その内壁面の少なくとも一部が荒面仕上げとされていてもよい。 【0022】 前記ボール部は、50〜100μmの高さを有し、前記ネック部は、10〜100μmの高さを有するものであってもよい。 【0023】 前記第1の封止体は、前記発光素子から放出される第1の波長の光を前記蛍光体が吸収して前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を放出するものとして構成されていてもよい。 【0024】 また、前記第1の封止体は、無機系接着剤からなるものであってよい。 【0025】 前記無機系接着剤は、アルカリ金属珪酸塩、燐酸塩、コロイダルシリカ、シリカゾル、水ガラス、Si(OH)n、SiO2、及びTiO2からなる群から選択されたいずれかにより構成されていてもよい。 【0026】 前記第2の封止体は、ガラス転移温度が150℃以上の材料により構成されていてもよい。 【0027】 また、前記リードフレームは、100W/(m・K)以下の熱伝導率を有する材料により構成されていてもよい。 【0028】 また、前記リードフレームは、鉄系の材料により構成されていてもよい。 【0029】 また、前記リードフレームのアウターリード部は、半田外装メッキされていてもよい。 【0030】 【発明の実施の形態】 本発明においては、リードフレームの材料として、従来用いられていた銅系の材料よりも熱伝導率の低い材料を用いる。このような材料としては、例えば、鉄を主成分とした鉄系の材料を挙げることができる。このようにすることにより実装半田付けの際の封止体の加熱を抑制し、ワイアの断線などの不具合を防止することができる。さらに、本発明においては、第1の封止体と第2の封止体との界面の位置を調節することにより、ワイアの断線を顕著に低減することができる。 【0031】 以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。 図1は、本発明の窒化ガリウム系半導体発光装置の概略構成を表す断面図である。すなわち、同図(a)は全体断面図であり、同図(b)はその要部断面図である。 【0032】 本発明の半導体発光装置においては、従来の銅系の材料よりも熱伝導率の低い材料で形成されたリードフレーム12を用いる。リードフレーム12の材料としては、鉄の他に、例えば、いわゆる「42アロイ」などの鉄系の合金材料を挙げることができる。リードフレーム12のカップ部には、窒化ガリウム系半導体発光素子14がマウントされている。発光素子14のマウントは、例えば、接着剤16を用いて行うことができる。接着剤16の材料としては、ワイアボンディング工程における加熱に耐えられるような耐熱性を有する無機系材料を用いることが望ましい。また、接着剤16に所定の蛍光体を混入しても良い。 【0033】 発光素子14の上部には、図示しない電極が設けられ、それぞれワイア18,18によってリードフレーム12に接続されている。ワイアの材料としては、金(Au)またはアルミニウム(Al)を用いることができる。ワイア径は、応力に対する機械的強度を確保するため直径30μm以上のものが望ましい。また、リードフレームのカップ部には、発光素子14を覆うように第1の封止体20が充填されている。ここで、第1の封止体20に蛍光体や散乱剤を混入し、窒化ガリウム系半導体発光素子14からの短波長の光を波長変換して所定の波長の光を取り出すこともできる。 【0034】 紫外線領域の光で効率良く励起される蛍光体としては、例えば、赤色の発光を生ずるものとしては、Y2O2S:Eu、青色の発光を生ずるものとしては、(Sr、Ca、Ba、Eu)10(PO4)6・Cl2、緑色の発光を生ずるものとしては、3(Ba、Mg、Eu、Mn)O・8Al2O3などを挙げることができる。これらの蛍光体を適当な割合で混合すれば、可視光領域の殆どすべての色調を表現することもできる。 【0035】 また、青色領域の波長の光受けて波長変換し、より長波長の光を放出する蛍光体としては、前述した無機蛍光体の他に有機蛍光体を挙げることができる。有機蛍光体としては、例えば、赤色の発光を生ずるものとしては、rhodamine B、緑色の発光を生ずるものとしては、brilliantsulfoflavine FFなどを挙げることができる。 【0036】 リードフレーム14の頭部全体は、第2の封止体22により封止され発光素子14を保護するとともに、光を集光したり拡散することができる。 【0037】 さらに、リードフレーム12のアウターリード部12Aには、半田メッキが施され実装工程における半田付けを容易に行えるようにされている。 【0038】 本発明の半導体発光装置も「2重モールド構造」を有するので、発光素子14から放出された短波長の光を、第1の封止体に混入された蛍光体により高い効率で波長変換し、さらに第2の封止体により集光または拡散して外部に取り出すことができる。 【0039】 以下に、本発明の半導体発光装置において用いるリードフレーム12について詳細に説明する。リードフレーム12の材料として用いる鉄系の材料は、図4に示したような従来の発光装置のリードフレームの材料である銅系の材料よりもはるかに低い熱伝導率を有するという特徴がある。 【0040】 銅系の材料と鉄系の材料の熱伝導率の一例を示すと以下の如くである。 ここで、「KLF-1」とは銅(Cu)合金の製品名(神戸製鋼所)であり、ニッケル(Ni)を約3.0%、シリコン(Si)を約0.7%含有する。一方、「42アロイ」は、鉄(Fe)合金の名称であり、ニッケルを約42%含有する。上述のデータから、銅系の「KLF-1」は、鉄系の「42アロイ」の10倍以上高い熱伝導率を有することが分かる。 【0041】 従って、本発明において「鉄」や「42アロイ」などの鉄系のリードフレームを用いることにより、半田付けの際にアウターリード部を加熱してもその熱が封止体に伝わりにくくなり、ワイアの断線や光取り出し効率の低下は生じない。 【0042】 本発明者は、種々の半導体発光装置を試作し、そのアウターリード部を半田付けする際の加熱特性を調べた。 【0043】 図2は、半田付け時間と発光素子の周囲の温度との関係を表すグラフ図である。同図においては、鉄系のリードフレームを用いた半導体発光装置と銅系のリードフレームを用いた半導体発光装置の加熱特性をそれぞれ示した。ここで用いたリードフレームは、板厚0.5mmのプレスフレームによるものであり、半導体発光装置のリードフレームとしては、当業者の間で多く用いられているものである。 【0044】 一般に、アウターリード部の半田付けや半田メッキに要する時間は最大で5秒程度である。図2から、従来の銅系リードフレームの場合においては、5秒間の半田付けによって発光素子の周囲が170℃〜200℃まで加熱されるのに対して、本発明において用いる鉄系のリードフレームの場合には、最大温度が約145℃程度に抑えられていることが分かる。このように、従来よりも温度上昇を抑制した結果、封止体の熱膨張を抑制し、ワイアの断線や光取り出し効率の低下を防止することができる。 【0045】 本発明は、特に窒化ガリウム系半導体と蛍光体とを具備する発光装置に適用して効果的である。つまり、このような発光装置においては、蛍光体を発光素子の周囲に高い密度で配置するために、2重モールド構造を採る必要がある。本発明によれば、このような2重モールド構造においても、封止体の加熱を抑制することができ、ワイアの断線や光取り出し効率の低下を防止することができるからである。 【0046】 さらに、本発明によれば、封止体20,22のガラス転移温度を150℃まで低下させることができる。すなわち従来よりも低いガラス転移温度を有する材料を用いることができるために、本発明によれば、封止体の選択の範囲が広がり、従来よりも熱膨張係数の小さい材料や残留応力の小さい材料などを用いることができるようになるという効果も得られる。 【0047】 さらに、本発明によれば、不具合を生ずることなくアウターリード部12Aに半田メッキを施すことができる。その結果として、実装工程の半田付けを安定して行うことができるようになる。 【0048】 ここで、封止樹脂として広く用いられている有機材料としてエポキシ樹脂がある。この樹脂のガラス転移温度は、約150℃である。従って、前述のように典型的な半田付け時間である5秒間の間に150℃を超えないようにすることが望ましい。図2に示したデータから試算した結果、このためには、リードフレームの材料の熱伝導率が100W/(m・K)以下であることが望ましいことが分かった。 【0049】 次に、本発明の第1の封止樹脂20に関して詳細に説明する。 本発明者の試作検討の結果、第1の封止体20としては、無機系の接着剤が適していることが分かった。これらの無機系の接着剤は、Si(OH)nや、SiO2、TiO2などの無機材料が有機溶媒などのに媒体中に分散され、媒体の乾燥蒸発によって、無機材料が接着あるいは埋め込み材料として作用するものである。無機接着剤の具体例としては、アルカリ金属珪酸塩、燐酸塩、コロイダルシリカ、シリカゾル、水ガラスなどを挙げることができる。また、これらの他に、無機接着剤の溶質としては、Si(OH)nや、SiO2、TiO2などの無機化合物を挙げることができる。さらに、これら以外にも、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、すず(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)などの酸化化合物を挙げることができる。このような酸化化合物としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)などを挙げることができる。さらに、これらの無機化合物を混合したものでも良い。 【0050】 これらの無機化合物を溶媒中に分散させた無機系接着剤は、硬化温度のわりに耐熱性が高く、比較的短時間で硬化させることができるという特徴を有する。すなわち、従来の樹脂封止工程と同程度の100〜150℃程度の加熱工程で硬化し、硬化後の耐熱温度としてはだいたい200〜1000℃以上を実現できる。また、硬化時間も20〜30分程度と比較的短時間である。また、硬化時の水分の蒸発により体積が収縮するために、含有させた蛍光体層を半導体発光素子14やカップ部の内壁面に薄く形成することができる。さらに、粘度が低いので硬化時に蛍光体が沈殿しやすく、蛍光体層を薄く均一に形成できるという特徴も有する。 【0051】 このような無機系接着剤と比較すると、従来第1の封止体として用いられていたエポキシ樹脂の場合には、ガラス転移温度を超えると線膨張係数が急増するためにワイアの断線を生じやすいという問題があった。また、シリコーン樹脂の場合には、一般に第2の封止体に比べ線膨張係数が大きいため、加熱時に外側の第2の封止体やリードフレームとの界面において剥離が発生しやすいという問題があった。これに対して、本発明において用いる無機系接着剤は、線膨張係数が比較的小さく、また薄膜状に塗布されるため体積自体も比較的小さい。よって温度変化による体積変化量は比較的小さく、これらの問題点を解消することもできる。 【0052】 また、第1の封止体として有機系の樹脂を用いる場合には、エポキシ樹脂のように、ガラス転移温度が150℃以上の樹脂を用いることが望ましい。 【0053】 さらに、本発明においては、図1(b)に示したように、第1の封止体20をリードフレーム12のカップ内に充填するに際して、ワイアのボンディングボール部またはネック部などの太くなっている部分が封止体の表面を貫くように充填量を調節する。すなわち、ワイア18を半導体発光素子14にボンディングすると、その接続部分にボール部18Aとネック部18Bとが形成される。 【0054】 ここで、ボール部18Aは、ボンディングの前にワイアの先端が溶融されて球状に形成され、しかる後に、超音波を印加しながら発光素子14の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部分である。また、ネック部18Bは、ボンディング装置のキャピラリの先端部の内部口径が大きい部分に対応して形成された直径が太い部分である。ボール部18Aの高さは、概ね50〜100μm程度である場合が多い。一方、ネック部18Bの長さ(高さ)は、ボンディングの際に用いるキャピラリの先端開口形状に依存し、概ね数10〜100μmである場合が多い。 【0055】 これらの太い部分は、剪断応力に対する機械的な耐久性も高い。従って、ワイア18のうちで、これらの太い部分が第1の封止体20の表面を貫くようにすれば、第1の封止体20と第2の封止体22との熱膨張率の差により封止体の界面において剪断応力が働いても、ワイア18の断線を防止することができる。このための封止体20としては、無機系コーティング剤などを用いると充填量の調節が容易で良好な薄膜を形成できる。また、ワイア18のボンディングに際して、ボール部18Aやネック部18Bができるだけ太く、また、これらの高さをできるだけ確保するように、キャピラリの形状やボンディングの条件を適宜調節すれば、さらにワイア18の断線を効果的に防止することもできる。 【0056】 或いは、第1の封止樹脂20がワイア18の全体を覆い尽くすように充填してもよい。すなわち、第1の封止体20によりワイア全体が覆われていれば、界面の剪断応力がワイア18に働くことが解消される。 【0057】 本発明によれば、このように第1の封止樹脂の表面の位置を制御することにより、2重モールド構造においても耐熱性を十分に確保することができるようになる。 【0058】 さらに、第1の封止体20は、発光素子14のマウント用の接着剤16とほぼ同一の熱膨張率を有することが望ましい。このようにすれば、発光素子14に無用な応力が印加されることがなくなる。 【0059】 一方、第2の封止体22としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。ここで、エポキシ樹脂のガラス転移温度は、約150℃である。従って、図2に関して前述したように、従来の半導体発光装置においては、半田付けの際に、そのガラス転移温度をはるかに超えた温度に加熱されるという問題があったが、本発明においては、そのガラス転移温度を超えずに半田付けを行うことができる。 【0060】 また、第2の封止体22としては、エポキシ樹脂の他にも、第1の封止体20とほぼ同一の熱膨張率を有する材料とすれば、これらの界面で生ずる剪断応力を抑制することができる。その結果して、ワイアの断線や、界面での隙間の形成による光の取り出し効率の低下を防止することができる。 【0061】 一方、リードフレーム12のカップ部の内壁面は、封止体20との密着性を増し光の散乱率を上げるため荒面仕上げにしても良い。 【0062】 本発明者は、図1に示した半導体発光装置と図4に示した従来の半導体発光装置とを試作してその半田付け加熱試験を行った。ここでは、発光装置のアウターリード部を溶融半田槽に10秒間浸漬して、ワイアの断線不良を評価した。以下にその結果を示す。 ここで、各項目の分母は発光装置の試験数であり、分子はワイア断線不良を生じた発光装置の数である。従来の発光装置の場合には、280℃程度の温度から断線不良が生じ、半田温度が上昇するにつれて断線不良が増大している。これに対して、本発明によれば、温度340℃で浸漬時間が10秒という極めて過酷な条件においてもワイアの断線不良は全く生ずることが無く、耐熱性が極めて優れていることがわかる。 【0063】 次に、本発明の第2の実施の形態にかかる半導体発光装置について説明する。 図3は、本発明の第2の実施の形態にかかる半導体発光装置を表す概念図である。すなわち、同図(a)は全体断面図であり、同図(b)はその要部断面図である。 図3に示した半導体発光装置においても、従来の銅系の材料よりも熱伝導率の低い材料で形成したリードフレーム12’の上に窒化ガリウム系半導体発光素子14がマウントされ、第1の封止体20と第2の封止体22とによって封止された2重モールド構造を有する。前述した図1の発光装置と同一の部分には同一の符合を付して詳細な説明は省略する。 【0064】 ここで、図1に示した発光装置との違いは、リードフレーム12’にカップ部が設けられていない点である。すなわち、図3の発光装置においては、リードフレームの頭部は平坦であり、その表面に発光素子14がマウントされている。発光素子14の周囲は、第1の封止体20により覆われ、その内部に混入された蛍光体により波長変換が行われる。また、第1の封止体20は、その表面がワイア18のうちの太いネック部18Bを横切るように設けられている。ここで、ボール部18Aを横切るように第1の封止体20を設けても良い。本実施形態においても、ワイアのボール部18Aまたはネック部18Bが第1の封止体20の表面を貫くように形成することにより、第1の封止体20と第2の封止体22との界面に剪断応力が働いてもワイアが断線することが防止される。 【0065】 また、第1の封止体20を発光素子14の周囲にコンパクトに形成することにより、蛍光体を高い密度で配置することができ、波長変換効率や第2の封止体22による集光効率を上げることができる。 【0066】 以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。たとえば、前述した具体例においては、2重モールド構造の場合を例示したが、この他にも例えば、3重モールド構造であっても良い。すなわち、第1の封止体と第2の封止体との間に第3の封止体が介在してなる構成であっても良い。 【0067】 また、リードフレーム、発光素子、ワイア、封止体などの形状についても、図示したもの以外に適宜用いて同様の効果を得ることができる。 【0068】 【発明の効果】 本発明によれば、ワイアに径の太い部分を設け、半導体発光素子の周囲を覆う封止体の表面がその径の太い部分を横切るように構成することにより、ワイアの断線を顕著に低減し、製造歩留まりが飛躍的に向上するとともに、半導体発光装置の信頼性も飛躍的に改善される。ここで、ワイアの端部は、ワイアのボンディングにより形成されたボール部及びネック部を有するものであってもよく、あるいは、ワイアのボンディングにより形成され、発光素子の電極に加圧して接続した際につぶれた先端部及びワイアよりも直径が太い部分を有するものであってもよい。 【0069】 あるいは、リードフレームに設けられたカップ部の底部に窒化ガリウム系半導体発光素子が載置され、カップ部の少なくとも一部に、蛍光体を含有する第1の封止体が充填され、第1の封止体を覆うようにその上に第2の封止体が設けられていても同様の効果を奏する。 【0070】 さらに、本発明によれば、リードフレームにカップ部が設けられている場合、その内壁面の少なくとも一部を荒面仕上げにすることにより、封止体との密着性を改善し界面剥離による光反射のロスを防ぐことができる。 【0071】 また、従来は、封止体の中に蛍光体を高濃度で混入させると母体の封止体から熱膨張率が変化する場合があった。これに対して、本発明によれば、上記のような施策をした上で封止体や接着剤に混入すれば、耐熱性や光取り出し効率の問題が解決できる。 【0072】 さらに、本発明によれば、発光素子の周囲を覆う封止体として、無機接着剤を用いることにより、硬化温度のわりに耐熱性が高く、比較的短時間で硬化させることができる。すなわち、従来の樹脂封止工程と同程度の100〜150℃程度の加熱工程で硬化し、硬化後の耐熱温度としてはだいたい200〜1000℃以上を実現できる。また、硬化時間も20〜30分程度と比較的短時間である。また、硬化時の水分の蒸発により体積が収縮するために、含有させた蛍光体層を半導体発光素子14やカップ部の内壁面に薄く形成することができる。さらに、粘度が低いので硬化時に蛍光体が沈殿しやすく、蛍光体層を薄く均一に形成できるという特徴も有する。 【0073】 また、本発明によれば、鉄系のリードフレームを用いることにより、半田付けに対する耐熱性が著しく向上する。 【0074】 さらに、本発明によれば、従来は不可能だったアウターリードへの半田外装メッキにより、ボード等への半田実装が容易となる。またリードカット時に露出した切り口を外装メッキで保護できるため、切り口から母材(特に鉄を使用する場合)が腐食を起こすという不具合を未然に防止できる。 【0075】 また、本発明によれば、封止体のガラス転移温度を150℃より高く設定することにより、半田耐熱性が著しく向上する。 【0076】 以上説明したように、本発明によれば、半田耐熱性が高く、信頼性が高い半導体発光装置を提供することができるようになり、産業上のメリットは多大である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の窒化ガリウム系半導体発光装置の概略構成を表す断面図である。すなわち、同図(a)は全体断面図であり、同図(b)はその要部断面図である。 【図2】 半田付け時間と発光素子の周囲の温度との関係を表すグラフ図である。 【図3】 本発明の第2の実施の形態にかかる半導体発光装置を表す概念図である。すなわち、同図(a)は全体断面図であり、同図(b)はその要部断面図である。 【図4】 窒化ガリウム系半導体発光素子を用いた従来の半導体発光装置の概略構成を表す断面図である。すなわち、同図(a)は全体断面図であり、同図(b)はその要部断面図である。 【符号の説明】 12、102 リードフレーム 12A、102A アウターリード 14、104 窒化ガリウム系半導体発光素子 16、106 接着剤 18、108 ワイア 18A ボール部 18B ネック部 20、110 第1の封止体 22、112 第2の封止体 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-12-20 |
出願番号 | 特願平10-145824 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L) P 1 651・ 161- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 土屋 知久、金高 敏康 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
町田 光信 吉田 英一 |
登録日 | 2003-09-12 |
登録番号 | 特許第3471220号(P3471220) |
権利者 | 株式会社東芝 |
発明の名称 | 半導体発光装置 |
代理人 | 佐藤 一雄 |
代理人 | 佐藤 政光 |
代理人 | 佐藤 政光 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |
代理人 | 橘谷 英俊 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |
代理人 | 橘谷 英俊 |
代理人 | 佐藤 一雄 |