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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G05B
管理番号 1112960
異議申立番号 異議2003-73273  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-01-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3443184号「プログラマブルコントローラ用プログラム作成装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3443184号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3443184号の請求項1に係る発明についての出願は、平成6年10月6日に特許出願され、平成15年6月20日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人・水谷昭雄より特許異議の申立てがなされ、平成16年7月17日付けで取消の理由が通知され、平成16年8月19日付けで再度の取消の理由が通知されたところ、その指定期間内である平成16年10月20日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
(1) 訂正事項a
【特許請求の範囲】の【請求項1】について、
「入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラム作成装置であって、
作成されたプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、
入力状態を設定する入力状態設定手段と、
前記入力状態設定手段により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、
前記プログラム記憶手段に記憶されたプログラムの命令リストを表示する命令リスト表示手段と、
前記命令リスト表示手段により表示された命令リストのうち実行すべき命令を指示する命令指示手段と、
前記命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を変更可能な状態変更手段とを備えたプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置。」
とあるのを、
「入力リフレッシュ、ユーザプログラムの1スキャン実行および出力リフレッシュを繰り返し行い、入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラム作成装置であって、
前記1スキャン実行されるユーザプログラムを、ユーザにより作成されたラダー図に従って作成するユーザプログラム作成部と、 前記ユーザプログラム作成部により作成された前記ユーザプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、
入力状態を設定する入力状態設定手段と、
前記入力状態設定手段により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、
前記プログラム記憶手段に記憶された前記ユーザプログラムの命令リストを表示する命令リスト表示手段と、
前記命令リスト表示手段により表示された命令リストのうち実行すべき命令を指示する命令指示手段と、
前記命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態をユーザの変更要求により変更可能な状態変更手段とを備えたプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置。」
と訂正する。

(2)訂正事項b
明細書の段落【0020】の記載について、
「【0020】
【課題を解決するための手段】 本発明に係るプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置は、入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラム作成装置であって、作成されたプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、入力状態を設定する入力状態設定手段と、入力状態設定手段により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、プログラム記憶手段に記憶されたプログラムの命令リストを表示する命令リスト表示手段と、命令リスト表示手段により表示された命令リストのうち実行すべき命令を指示する命令指示手段と、命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、命令実行手段による1ステップの命令の実行後、状態記憶手段に記憶された入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、命令実行手段による1ステップの命令の実行後、状態記憶手段に記憶された入力状態、出力状態および内部状態を変更可能な状態変更手段とを備える。」
とあるのを、
「【0020】
【課題を解決するための手段】 本発明に係るプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置は、入力リフレッシュ、ユーザプログラムの1スキャン実行および出力リフレッシュを繰り返し行い、入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラム作成装置であって、 前記1スキャン実行されるユーザプログラムを、ユーザにより作成されたラダー図に従って作成するユーザプログラム作成部と、前記ユーザプログラム作成部により作成された前記ユーザプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、入力状態を設定する入力状態設定手段と、前記入力状態設定手段により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、前記プログラム記憶手段に記憶された前記ユーザプログラムの命令リストを表示する命令リスト表示手段と、前記命令リスト表示手段により表示された命令リストのうち実行すべき命令を指示する命令指示手段と、前記命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態をユーザの変更要求により変更可能な状態変更手段とを備える。」
と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1) 上記訂正事項aは、請求項1について、「プログラマブルコントローラ用プログラム」を具体的に限定し、また、「ユーザプログラム作成部」につき限定し、これに伴って、2箇所の「プログラム」の記載について、そこで作成された「ユーザプログラム」であることを限定し、さらに「変更可能な状態変更手段」につき具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項bは、上記訂正事項aとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

(2) 上記訂正事項aについては、特許明細書の段落番号【0007】〜【0010】と図5、【0027】〜【0029】と図1、【0034】〜【0039】と図1〜図3にそれぞれ記載されているから、上記訂正事項a及びbは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.むすび
前記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3-1.申立ての理由の概要
(1) 特許異議申立人は、本件請求項1に係る発明の特許は、その明細書が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきである旨を主張している。
(2) 特許異議申立人は、本件請求項1に係る発明は、下記の甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その特許は取り消されるべきである旨を主張している。

甲第1号証:実願平4-40223号(実開平5-92804号)のCD-ROM
甲第2号証:特開平4-218808号公報
甲第3号証:特開平6-83668号公報

3-2.特許異議の申立てについての判断
(1) 前記3-1. (1) の理由について
本件請求項1に係る発明は、「命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行」するものであるから、少なくとも、ユーザプログラムの命令の1ステップずつを順次実行する限りにおいて、その発明を実施することができる。
したがって、本件請求項1に係る特許は、その明細書が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであるとすることはできない。

(2) 前記3-1. (2) の理由について
(ア) 本件発明
前記2.のとおり、前記訂正は認められるから、本件特許第3443184号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成16年10月20日に提出された訂正請求書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「入力リフレッシュ、ユーザプログラムの1スキャン実行および出力リフレッシュを繰り返し行い、入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラム作成装置であって、
前記1スキャン実行されるユーザプログラムを、ユーザにより作成されたラダー図に従って作成するユーザプログラム作成部と、
前記ユーザプログラム作成部により作成された前記ユーザプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、
入力状態を設定する入力状態設定手段と、
前記入力状態設定手段により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、
前記プログラム記憶手段に記憶された前記ユーザプログラムの命令リストを表示する命令リスト表示手段と、
前記命令リスト表示手段により表示された命令リストのうち実行すべき命令を指示する命令指示手段と、
前記命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態をユーザの変更要求により変更可能な状態変更手段とを備えたプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置。」

(イ) 甲各号証に記載された発明
甲第1号証の段落【0001】、【0002】、【0004】〜【0010】及び図1〜3を参照すれば、そこには、
「入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラマブルコントローラのソフト作成装置であって、
作成されたプログラムを記憶する主メモリ1-2と、
入力状態を設定するキーボード入力部1-4と、
前記キーボード入力部1-4により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、
前記プログラム記憶手段に記憶されたプログラムのラダー図を表示するラダー図表示部1-3と、
動作タイムチャート表示部1-3と、
を備えたプログラマブルコントローラのソフト作成装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

甲第2号証には、プログラムのデバッグに関し、特に段落【0022】に、「このように定義した閉ループ処理の1周分をステップと称する。通常はステップからステップへは連続的に移行するが、シミュレーションを1ステップずつ実行することも可能で、その場合には手順#10で入力点状態を強制的に書き換え、手順#11でこれを外部記憶装置へ出力する。センサではなく機械を制御するスイッチ類に割り付けられた入力点に関してこれを行う場合が普通である。」と記載されている。

甲第3号証には、プログラムのデバッグに関し、特に段落【0005】に、「そして、ソフトウエア逐次実行装置5は、逐次実行中にキーボード3からソフトウエア1中の変数の値を参照するデバッグコマンドが入力されると、記憶領域8からその値を参照し、CRT4のコマンド入力画面7に表示する(図4参照)。
また、ソフトウエア逐次実行装置5は、逐次実行中にキーボード3からソフトウエア1中の変数の値を変更するデバッグコマンドが入力されると、記憶領域8に、変更後の値を再設定する。
その後、使用者からの指示により逐次実行動作を繰り返す。」と記載されている。

(ウ) 対比・判断
本件発明と引用発明とを比較すると、引用発明には、少なくとも、本件発明の構成である「前記命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態をユーザの変更要求により変更可能な状態変更手段」が存在しない。そして、この構成は、甲第2号証、甲第3号証にも記載がなく、また、これが自明であるとも、本件出願時に周知であったということもできない。
本件発明は上記構成を備えることにより、明細書記載の格別の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることができず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

3-3.むすび
以上のとおりであるから、異議申立の理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プログラマブルコントローラ用プログラム作成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】入力リフレッシュ、ユーザプログラムの1スキャン実行および出力リフレッシュを繰り返し行い、入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラム作成装置であって、
前記1スキャン実行されるユーザプログラムを、ユーザにより作成されたラダー図に従って作成するユーザプログラム作成部と、
前記ユーザプログラム作成部により作成された前記ユーザプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、
入力状態を設定する入力状態設定手段と、
前記入力状態設定手段により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、
前記プログラム記憶手段に記憶された前記ユーザプログラムの命令リストを表示する命令リスト表示手段と、
前記命令リスト表示手段により表示された命令リストのうち実行すべき命令を指示する命令指示手段と、
前記命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、
前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態をユーザの変更要求により変更可能な状態変更手段と
を備えたプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プログラマブルコントローラ用プログラムを作成するプログラム作成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】被制御機器をシーケンシャルに制御するためにプログラマブルコントローラが用いられている。図4は一般的なプログラマブルコントローラの構成を示すブロック図である。
【0003】図4のプログラマブルコントローラ100は、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(ランダムアクセスメモリ)12、ROM(リードオンリメモリ)13、入力部14、出力部15および通信インタフェース16を含む。
【0004】入力部14にはスイッチ、センサ等の入力機器が接続され、出力部15には電磁開閉器、リレー、ソレノイド、モータ等の出力機器が接続される。ROM13には、プログラマブルコントローラ100の全体の動作を制御するためのシステムプログラムが記憶されている。
【0005】RAM12は、ユーザプログラム記憶部121およびデータ記憶部122を含む。ユーザプログラム記憶部121には、被制御機器をシーケンシャルに制御するためのユーザプログラムが記憶される。データ記憶部122には、デバイス情報およびその他の各種データが記憶される。ここで、デバイス情報とは、入力機器から入力部14への入力状態、出力部15から出力機器への出力状態およびユーザプログラム上で設定される内部リレー(入力リレー、出力リレーおよび補助リレー)、タイマ、カウンタ、データメモリ等の状態(以下、内部状態と呼ぶ)を示す情報であり、デバイスとは、デバイス情報を格納するために設けられたメモリ上の領域を指す名称である。
【0006】CPU11は、ROM13に記憶されたシステムプログラムに従ってプログラマブルコントローラ100内の各部分を制御するとともに、ユーザプログラム記憶部121に記憶されたユーザプログラムを実行する。
【0007】図5はプログラマブルコントローラ100の基本的な動作を示すフローチャートである。まず、入力機器の状態を入力部14に入力し、その入力状態をRAM12のデータ記憶部122に書き込む(ステップS1)。これを入力リフレッシュと呼ぶ。
【0008】次に、データ記憶部122の各デバイス情報に基づいてユーザプログラム記憶部121に格納されたユーザプログラムを1スキャン実行する(ステップS2)。ここで、1スキャンとはメインルーチンの1回分の命令を実行することをいう。ユーザプログラムの実行によりデータ記憶部122の各デバイス情報が更新される。
【0009】その後、データ記憶部122の出力状態を読み出し、その出力状態を出力部15を介して出力機器に出力する(ステップS3)。これを出力リフレッシュと呼ぶ。
【0010】上記の入力リフレッシュ(ステップS1)、ユーザプログラムの1スキャンの実行(ステップS2)および出力リフレッシュ(ステップS3)を繰り返し行うことにより、被制御機器がシーケンシャルに制御される。
【0011】上記のようなプログラマブルコントローラ100において、ユーザプログラムの作成は、例えば、プログラム作成装置上で、図6に示すようなラダー図を用いて行われる。図6において、X1,X2,X3,X4,X5,Y1,Y2はデバイス番号を示す。デバイスX1,X2,X3,X5は操作時にオンする接点を示し、デバイスX4は操作時にオフする接点を示す。この例のa部では、デバイスX1の状態を入力し、その状態とデバイスX2の状態とのAND演算を行い、その演算結果をデバイスY1に出力する。
【0012】プログラム作成装置によりラダー図がユーザプログラムに変換され、RAM12のユーザプログラム記憶部121に格納される。ユーザプログラムのデバッグの際には、パーソナルコンピュータ等からなるデバッグ装置200をRS-232C、RS-422等のインタフェース規格に従うシリアル回線を用いてプログラマブルコントローラ100の通信インタフェース16に接続する。
【0013】そして、ユーザプログラム記憶部121に記憶されたユーザプログラムを1スキャンずつ実行しながら、デバッグ装置200に接続されたCRTディスプレイや液晶表示装置にラダー図を表示し、デバッグ装置200からの遠隔操作によりデータ記憶部122に記憶されたデバイス情報を変更するとともに、データ記憶部122内のデバイス情報を通信インタフェース16を介してデバッグ装置200に適宜読み出す。このように、ユーザは、ラダー図を見ながらデバイス情報を変更することによりデバッグ作業を行う。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記のような方法では、ユーザプログラムの1スキャンの実行速度に比べてデバッグ装置200とプログラマブルコントローラ100との間のデータの通信速度が遅いので、データの欠落やデータ化けが生じるとともに、画面に表示されたラダー図の状態とプログラマブルコントローラ100の実際の状態とが異なる場合が生じる。このため、ユーザプログラムにおいてデバッグすべき箇所をラダー図により判別することは難しく、熟練した技術者でないとデバッグ作業が困難である。
【0015】そこで、プログラマブルコントローラに接続することなくパーソナルコンピュータ上でプログラマブルコントローラのシミュレーションを行いつつユーザプログラムを作成およびデバッグすることができるソフト作成装置が提案されている。
【0016】このソフト作成装置においては、ユーザは、パーソナルコンピュータ上でラダー図を作成するとともにそのラダー図からプログラマブルコントローラの動作を予想して予めタイムチャートを作成しておく。そして、パーソナルコンピュータ上でユーザが作成したラダー図に基づいてプログラマブルコントローラの動作をシミュレーションし、そのシミュレーション結果をタイムチャートとして表示する。
【0017】ユーザは、予め作成していたタイムチャートをシミュレーション結果により得られたタイムチャートと照合し、それらが異なっていればラダー図を修正する。以上の作業を繰り返しながら正しいラダー図を作成する。
【0018】このようなソフト作成装置においては、プログラマブルコントローラに接続することなくユーザプログラムの作成およびデバッグを行うことができるので、データ通信によるデータの欠落やデータ化けの問題が生じない。しかしながら、ユーザプログラムの1スキャンの実行の前後の状態しか確認することができず、実行中の状態の変化をトレースすることができない。そのため、熟練した技術者でないとラダー図およびタイムチャートによるユーザプログラムの作成およびデバッグは容易ではない。
【0019】本発明の目的は、ユーザプログラムの作成作業およびデバッグ作業を容易にかつ正確に行うことができるプログラム作成装置を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明に係るプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置は、入力リフレッシュ、ユーザプログラムの1スキャン実行および出力リフレッシュを繰り返し行い、入力状態、出力状態および内部状態に関連して動作するプログラマブルコントローラ用プログラムを作成する際にシミュレータとして機能するプログラム作成装置であって、前記1スキャン実行されるユーザプログラムを、ユーザにより作成されたラダー図に従って作成するユーザプログラム作成部と、前記ユーザプログラム作成部により作成された前記ユーザプログラムを記憶するプログラム記憶手段と、入力状態を設定する入力状態設定手段と、前記入力状態設定手段により設定された入力状態ならびに出力状態および内部状態を記憶する状態記憶手段と、前記プログラム記憶手段に記憶された前記ユーザプログラムの命令リストを表示する命令リスト表示手段と、前記命令リスト表示手段により表示された命令リストのうち実行すべき命令を指示する命令指示手段と、前記命令指示手段による指示ごとに命令を1ステップずつ実行する命令実行手段と、前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態を表示する状態表示手段と、前記命令実行手段による1ステップの命令の実行後、前記状態記憶手段に記憶された前記入力状態、出力状態および内部状態をユーザの変更要求により変更可能な状態変更手段とを備える。
【0021】
【0022】
【0023】
【作用】本発明に係るプログラマブルコントローラ用プログラム作成装置においては、プログラム記憶手段に記憶されたプログラムの命令リストが命令リスト表示手段により表示される。ユーザが表示された命令リストのうち実行すべき命令を命令指示手段により指示すると、命令指示手段による指示ごとに命令が命令実行手段により1ステップずつ実行され、状態記憶手段に記憶された入力状態、出力状態および内部状態が状態表示手段により表示される。したがって、ユーザは、プログラムの命令の実行の前後における入力状態、出力状態および内部状態の変化を正確に把握することができる。また、ユーザは、命令実行手段による1ステップの命令の実行後、状態記憶手段に記憶された入力状態、出力状態または内部状態を状態変更手段により変更することができる。【0024】このように、命令リストを見ながらプログラムの命令を1ステップずつ実行して入力状態、出力状態および内部状態の変化をトレースすることによりプログラムの作成作業およびデバッグ作業が容易になる。
【0025】また、このプログラム作成装置によれば、プログラマブルコントローラに接続することなくプログラムの作成作業およびデバッグ作業を行うことが可能になるので、プログラム作成装置とプログラマブルコントローラとの間のデータ通信によるデータの欠落やデータ化けが生じない。
【0026】
【実施例】図1は本発明の一実施例によるプログラム作成装置の構成を示すブロック図である。
【0027】図1のプログラム作成装置1は、ユーザプログラム作成部2、ユーザプログラム記憶部3、デバイス状態記憶部4、デバイス状態変更部5、デバイス状態表示部6、ニモニック表示部7、ニモニック実行部8、実行指示部9および通信インタフェース10を含む。
【0028】ユーザプログラム作成部2は、ユーザが作成したラダー図に従ってユーザプログラムを作成し、ユーザプログラム記憶部3に格納する。デバイス状態記憶部4には、入力機器からの入力状態、出力機器への出力状態、および内部リレー、タイマ、カウンタ、データレジスタ等の内部状態が記憶される。以下、これらの入力状態、出力状態および内部状態をデバイス状態と呼ぶ。デバイス状態変更部5は、ユーザの操作によりデバイス状態記憶部4に記憶されるデバイス状態を設定または変更する。デバイス状態表示部6は、デバイス状態記憶部4に記憶されるデバイス状態を表示する。
【0029】ニモニック表示部7は、ユーザプログラム記憶部3に記憶されるユーザプログラムをニモニックリストに変換し、そのニモニックリストを表示する。実行指示部9は、ニモニック表示部7により表示されたニモニックリストのうちユーザが指定した1ステップの実行をニモニック実行部8に指示する。ニモニック実行部8は、実行指示部9により指示されたニモニックを1ステップずつ実行する。
【0030】ユーザプログラム記憶部3に記憶されたユーザプログラムは、通信インタフェース10を介して図4のプログラマブルコントローラ100のユーザプログラム記憶部121に転送することができる。
【0031】図2は図1のプログラム作成装置1により表示される表示画面の一例を示す図である。画面20には、ニモニック表示部7によりニモニック表示ウィンドウ21が表示され、デバイス状態表示部6によりデバイス状態表示ウィンドウ22およびタイミングチャート表示ウィンドウ23が表示される。
【0032】ニモニック表示ウィンドウ21にはユーザプログラム記憶部3に記憶されたユーザプログラムのニモニックリストが表示される。デバイス状態表示ウィンドウ22にはデバイス状態記憶部4に記憶されたデバイス状態が表示され、タイミングチャート表示ウィンドウ23には、デバイス状態記憶部4に記憶されたデバイス状態の変化がタイミングチャートで表示される。
【0033】ニモニック表示ウィンドウ21において、実行指示部9により指定された次に実行すべきニモニックのステップが枠24で表示される。また、ユーザは、画面20の下部に表示された「値変更」の欄をカーソル25で指定することにより、デバイス状態記憶部4に記憶されたデバイス状態をデバイス状態変更部5により変更することができる。
【0034】次に、図1のプログラム作成装置1のデバッグ時の動作を図3のフローチャートを参照しながら説明する。まず、ニモニック表示部7が、ユーザプログラム記憶部3に記憶されたユーザプログラムのニモニックリストをニモニック表示ウィンドウ21に表示する(ステップS11)。ユーザからデバイス状態の変更が要求されると(ステップS12)、デバイス状態変更部5が、デバイス状態記憶部4に記憶されるデバイス状態を変更する(ステップS13)。そして、デバイス状態表示部6が、デバイス状態表示ウィンドウ22に変更後のデバイス状態を表示するとともに、タイミングチャート表示ウィンドウ23のタイミングチャートを変更し(ステップS14)、ステップS12に戻る。
【0035】ステップS12において、ユーザからデバイス状態の変更が要求されない場合には、ステップS15に進む。ステップS15において、ユーザから実行指示部9を介してニモニックの1ステップの実行が要求されると、ニモニック実行部8は、ユーザプログラム記憶部3に記憶されたユーザプログラムのうち実行指示部9により指示されたニモニックの1ステップを実行する(ステップS16)。ニモニックの1ステップの実行により、デバイス状態記憶部4に記憶されるデバイス状態が変更される。
【0036】デバイス状態表示部6は、デバイス状態表示ウィンドウ22に変更後のデバイス情報を表示するとともに、タイミングチャート表示ウィンドウ23にデバイス状態の変化をタイミングチャートとして表示する(ステップS17)。また、ニモニック表示部7は、ニモニック表示ウィンドウ21に次に実行すべきニモニックの1ステップを枠24で表示し(ステップS18)、ステップS12に戻る。
【0037】このようにして、ユーザは、ニモニック表示ウィンドウ21に表示されたニモニックリストのニモニックを1ステップずつ実行しながら、各ステップの実行の前後におけるデバイス状態の変化をデバイス状態表示ウィンドウ22およびタイミングチャート表示ウィンドウ23によりトレースすることができる。
【0038】また、ニモニックの1ステップの実行ごとにデバイス状態の変化を見ながらデバイス状態変更部5によりデバイス状態記憶部4に記憶されるデバイス状態を変更するとともに、ユーザプログラム記憶部3に記憶されるユーザプログラムを修正することができる。
【0039】このように、ニモニックリストを見ながらユーザプログラムの1スキャンの実行の途中におけるデバイス状態の変化を正確にかつ容易に把握することができるので、プログラム作成作業およびデバッグ作業が容易になる。
【0040】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、表示された命令リストの命令を1ステップずつ実行しながら実行の前後の入力状態、出力状態および内部状態をトレースすることができるので、命令リストを見ながらプログラムの1スキャンの途中における実行状態を正確に把握することができる。また、プログラマブルコントローラに接続することなくプログラムの作成作業およびデバッグ作業を行うことができるので、データ通信によるデータの欠落やデータ化けが生じない。
【0041】したがって、プログラムの作成およびデバッグを容易にかつ正確に行うことができ、プログラマブルコントローラ用プログラムの作成作業およびデバッグ作業の効率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるプログラム作成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のプログラム作成装置の表示画面の一例を示す図である。
【図3】図1のプログラム作成装置のデバッグ時の動作を示すフローチャートである。
【図4】プログラマブルコントローラの構成を示すブロック図である。
【図5】プログラマブルコントローラの基本的な動作を示すフローチャートである。
【図6】ラダー図の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 プログラム作成装置
2 ユーザプログラム作成部
3 ユーザプログラム記憶部
4 デバイス状態記憶部
5 デバイス状態変更部
6 デバイス状態表示部
7 ニモニック表示部
8 ニモニック実行部
9 実行指示部
10 通信インタフェース
20 表示画面
21 ニモニック表示ウィンドウ
22 デバイス状態表示ウィンドウ
23 タイミングチャート表示ウィンドウ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-17 
出願番号 特願平6-242563
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 梶本 直樹  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 安池 一貴
三友 英二
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3443184号(P3443184)
権利者 株式会社キーエンス
発明の名称 プログラマブルコントローラ用プログラム作成装置  

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