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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1113004
異議申立番号 異議2002-72242  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-13 
確定日 2005-02-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3266137号「遊技機における制御回路基板の収納ケース」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3266137号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3266137号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)についての出願は、平成2年12月15日に特許出願された特願平2-410815号出願の一部を、平成11年3月23日に新たな特許出願とし、平成14年1月11日にその発明について特許権の設定登録がなされ、この特許に対し、鈴木暁子、村尾健司及び高橋正人よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、取消し理由を通知したところ、平成15年4月7日に特許異議意見書が提出されたものである。

2.本件特許発明
本件特許第3266137号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。
「遊技動作を制御する制御回路基板を内部に収納する収納ケースにおいて、
前記制御回路基板の電子部品が実装される部品面のほぼ全域を前記収納ケースの合成樹脂製の透明板から透視し得るようにする一方、
前記収納ケースの底板部に基板を固定する基板固定ピンを突設し、該基板固定ピンにより前記収納ケースの底板部と前記制御回路基板のハンダ面との間に空間を形成すると共に、該空間のほぼ全域を側方から透視し得るようにしたことを特徴とする遊技機における制御回路基板の収納ケース。」

3.引用刊行物記載の発明
(1)取消理由に引用した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-14014号(実開昭63-122469号)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の記載が認められる。
引用刊行物1:(異議申立人鈴木暁子提出の甲第1号証、異議申立人村尾健司提出の甲第3号証、異議申立人高橋正人提出の甲第1号証)
(1-a)「ROMの交換や回路の変更等により、電子技術者であれば、法律の規制による検定を受けたパチンコ遊技機の遊技内容を、賭博性の高いものに簡易に改造することができる。このため、かかる不正を防止し、ROMの交換等による改造をすることができないように、パチンコ遊技機の電子部品を収納するケースは封印紙により封印されている。」(2頁15行〜3頁2行)、
(1-b)「第1図は本考案の1実施例であるパチンコ遊技機の制御部の拡大斜視図である。第1図において、制御部3は後述する封印紙が貼られたCPUやROM等の電子部品と、その電子部品が配置されているプリント基板10と、電子部品やプリント基板を収納する上部蓋11aと底板11bとを有するケース11とを含む。12はケース11内部のプリント基板10に配置されたCPUやROM等に貼られた封印紙の異状の有無や封印番号を検査するために上部蓋11aに設けられた透明な観察窓である。」(6頁9〜19行)、
(1-c)「尚、上記の本実施例では、上部蓋の一部にやや大きめの観察窓を設けたが、本考案はこれに限定されるものではなく、・・・反対に、上部蓋の上面全部を観察窓としたり、上部蓋全体を観察窓としてもよい。」(8頁17行〜9頁2行)、
(1-d)「観察窓として使用する材質は、静電気を帯びない材質で、且つ透明な材質たとえば金属の粉を混ぜた導電性のある樹脂等が好ましい。」(9頁3〜5行)、
(1-e)「以上説明したように本考案によれば、遊技内容を制御するCPUやROM等の電子部品に施された封印の状態を、電子部品を収納ケースに収納したままで、ケースの外側から簡易に検査することができるので、関係機関等が封印の異状の有無や封印番号の検査を確実に、しかも簡易且つ迅速に行うことができるパチンコ遊技機を提供することができる。」(9頁12〜19行)。
上記「上部蓋全体を観察窓としてもよい」(上記(1-c)参照)及び「観察窓として使用する材質は、・・・透明な材質たとえば金属の粉を混ぜた導電性のある樹脂等が好ましい。」(上記(1-d)参照)の記載から、引用刊行物1には、上部蓋1aを透明な樹脂で形成し、上部蓋1a全体を観察窓とした構成が記載されているといえる。
そうすると、引用刊行物1には、遊技内容を制御するCPUやROM等の電子部品が配置されているプリント基板10を内部に収納するケース11において、ケース11は、電子部品やプリント基板を収納する上部蓋11aと底板11bとを有し、ケース11の上部蓋11aを透明な樹脂で形成し、上部蓋1a全体を観察窓としたパチンコ遊技機におけるプリント基板のケース(以下、「引用刊行物1の発明」という。)が記載されていると認められる。
(2)取消理由に引用した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平2-45079号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の記載が認められる。
(2-a)「第4図は、前記遊技制御部2を示す分解斜視図である。
遊技制御部2は、上ケース4および下ケース8からなる回路基板ケースと、その回路基板ケース内に収納される回路基板6とからなる。回路基板6は、基板本体16の表面と裏面にグランドライン40(第6図)を付設して構成されている。その回路基板6には、制御回路の主要部であるMPU,RAM44と、制御回路の主要部であるROM46とが取付けられている。」(4頁左上欄11〜20行)、
(2-b)「回路基板6の四隅には、グランド延在取付孔38a,38dと取付孔38b,38cとが設けられている。なお、グランドライン延在取付孔38aと取付孔38bは、第5図を参照。」(4頁右上欄16〜19行)、
(2-c)「下ケース8は、導電性材料の一例の金属で形成されており、下面板26の四隅に導電性の取付部36a,36b,36c,36dが設けられている。なお、導電性材料としては、合成樹脂であってもよい。この取付部36a,36b,36c,36dが前記回路基板6に形成されている取付孔38a,38b,38c,38dに合致し、ビス止めされ、回路基板6が下ケース8に固定される。」(4頁右上欄20行〜同頁左下欄7行)、
(2-d)「遊技制御部2の取付状態では、流下樋カバー58と下面板26との間に第1空間部78が形成され、下面板26と回路基板6との間に第2空間部80が形成され、さらに回路基板6と上面板11との間に第3空間部82が形成される。」(5頁左下欄3〜7行)。
そして、引用刊行物2に記載された「MPU,RAM44とROM46」が遊技動作を制御していることは当業者にとって明らかであるから、上記記載によると、引用刊行物2には、遊技動作を制御する、MPU,RAM44とROM46とが取付けられた回路基板6を収納する回路基板ケースにおいて、回路基板ケースは、上ケース4および下ケース8からなり、下面板26の四隅に四隅には、導電性の取付部36a,36b,36c,36dが設けられ、この取付部36a,36b,36c,36dと前記回路基板6に形成されている取付孔38a,38b,38c,38dとを合致させ、ビス止めし、下面板26と回路基板6との間に第2空間部80を形成した状態で回路基板6を下ケース8に固定した遊技機における回路基板の回路基板ケース(以下、「引用刊行物2の発明」という。)が記載されていると認められる。
(3)取消理由に引用した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平2-249572号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、「次に、この実施例の要部である制御回路基板用ボックス30の構成について第1図及び第2図を参照して説明する。図において、制御回路基板用ボックス30は、前記したように合成樹脂によって全体的に箱状に成型されており、これは、3つの部材から構成されている。すなわち、前記入賞球集合カバー26の裏面に固定される長方形状の固定板31と、該固定板31のほぼ全面を覆う被覆カバー32と、該被覆カバー32の下方に形成された端子接続開口40を覆う配線引出しカバー33とから構成されている。・・・また、係合凸壁34の内側の四隅には、制御回路基板50を係止するための基板取付ボス35a〜35dが突設され、該基板取付ボス35a〜35dに制御回路基板50の四隅に穿設した取付穴51a〜51dを合致させた後、図示しないビスで固定することにより制御回路基板50を固定板31に固定している。」(3頁左下欄7行〜同頁右下欄7行)と記載されており、引用刊行物3には、制御回路基板用ボックス30の固定板31に基板取付ボス35a〜35dを突設し、基板取付ボス35a〜35dにより制御回路基板50を固定板31に固定することが記載されているといえる。

4.対比・判断
(1)引用刊行物1の発明との対比
本件発明と引用刊行物1の発明とを対比すると、引用刊行物1の発明の「遊技内容を制御するCPUやROM等の電子部品が配置されているプリント基板10」、「ケース11」及び「パチンコ遊技機」は、本件発明の「遊技動作を制御する制御回路基板」、「収納ケース」及び「遊技機」に相当している。
また、引用刊行物1の発明の「ケース11の上部蓋11a」は、透明な樹脂で形成されていて、全体が観察窓とされているから、プリント基板10に配置されているCPUやROM等の電子部品のほぼ全域を見ることができる。
そうすると、本件発明と引用刊行物1の発明とは、遊技動作を制御する制御回路基板を内部に収納する収納ケースにおいて、前記制御回路基板の電子部品が実装される部品面のほぼ全域を前記収納ケースの合成樹脂製の透明板から透視し得るようにした遊技機における制御回路基板の収納ケースで一致し、
本件発明では、「収納ケースの底板部に基板を固定する基板固定ピンを突設し、該基板固定ピンにより前記収納ケースの底板部と前記制御回路基板のハンダ面との間に空間を形成すると共に、該空間のほぼ全域を側方から透視し得るようにし」ているのに対し、引用刊行物1の発明では、制御回路基板(プリント基板10)が収納ケース(ケース11)にどのように取付けられているか不明である点で構成が相違する。
上記相違点について検討するに、収納ケースの底板部に、基板固定ピンを突設し、該基板固定ピンにより前記収納ケースの底板部に制御回路基板を取付けることは周知であり(例えば、引用刊行物2、3参照。)、引用刊行物1の発明において、制御回路基板(プリント基板10)をこの周知な手段によって収納ケース(ケース11)の底板部(底板11b)に取付けるよう構成することは当業者なら容易に想到できることである。
しかも、引用刊行物1の発明において、制御回路基板(プリント基板10)を、底板部(底板11b)に突設した基板固定ピンによって底板部(底板11b)に取付けたものは、底板部と前記制御回路基板のハンダ面との間に空間が形成され、その空間のほぼ全域を、全体が観察窓とされた上部蓋11aから透視できることになる。
そして、引用刊行物1の発明の効果は、遊技内容を制御するCPUやROM等の電子部品に施された封印の状態を、電子部品を収納ケースに収納したままで、ケースの外側から簡易に検査することができるものであり(上記(1-e)参照、この効果は本件発明の効果と同じである。)、しかも、底板部と制御回路基板のハンダ面との間の空間のほぼ全域を透視できれば、ジャンパー線による制御回路基板への不正行為を見つけることができることは明らかであるから、本件発明が奏する効果は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術から予測できる程度のことであって、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)引用刊行物2の発明との対比
本件発明と引用刊行物2の発明とを対比すると、
引用刊行物2の発明の「回路基板6」、「回路基板ケース」及び「取付部36a,36b,36c,36d」は、本件発明の「制御回路基板」、「収納ケース」及び「基板固定ピン」に相当している。
そうすると、本件発明と引用刊行物2の発明とは、
遊技動作を制御する制御回路基板を内部に収納する収納ケースにおいて、
前記収納ケースの底板部に基板を固定する基板固定ピンを突設し、該基板固定ピンにより前記収納ケースの底板部と前記制御回路基板との間に空間を形成するようにした遊技機における制御回路基板の収納ケースで一致し、
本件発明では、制御回路基板の電子部品が実装される部品面のほぼ全域を前記収納ケースの合成樹脂製の透明板から透視し得るようにする一方、収納ケースの底板部と前記制御回路基板のハンダ面との間に形成した空間のほぼ全域を側方から透視し得るようにしているのに対し、引用刊行物2の発明では、収納ケース(回路基板ケース)が制御回路基板の電子部品が実装される部品面のほぼ全域を前記収納ケースの合成樹脂製の透明板から透視し得るように構成されていない点で構成が相違する。
上記相違点について検討するに、
引用刊行物2の発明では、下面板26と回路基板6との間に第2空間部80が形成されており、制御回路基板(回路基板6)は通常下面においてハンダ付けされているから、引用刊行物2の発明において、収納ケースの底板部と前記制御回路基板のハンダ面との間に空間が形成されていると認められる。
そして、収納ケース内の電子部品等を見ることができるようにするため、上ケース(上部蓋11a)を透明な合成樹脂で形成することは引用刊行物1に記載されているから、引用刊行物2の発明において、上ケース4を透明な合成樹脂で形成するようにして、上記相違点における本件発明のように構成することは当業者なら容易に想到できることである。
そして、本件発明が奏する効果は、引用刊行物2及び1に記載された発明から予測できる程度のことであって、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明は、引用刊行物2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-02 
出願番号 特願平11-77271
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉村 尚石井 哲土屋 保光  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡部 葉子
鉄 豊郎
登録日 2002-01-11 
登録番号 特許第3266137号(P3266137)
権利者 株式会社三洋物産
発明の名称 遊技機における制御回路基板の収納ケース  
代理人 山田 強  

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