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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02F
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G02F
審判 一部申し立て 特174条1項  G02F
管理番号 1113005
異議申立番号 異議2002-72588  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-12-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-22 
確定日 2005-02-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3276557号「液晶表示装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、平成15年3月31日にされた異議の決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決〔平成15年(行ケ)第208号、平成16年1月28日判決言渡し〕があったので、さらに審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3276557号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3276557号についての手続の概要は次のとおりである。

出願 平成8年5月23日
拒絶理由通知 平成13年8月7日発送
手続補正 平成13年10月3日
特許査定 平成14年1月22日
設定登録 平成14年2月8日
公報発行 平成14年4月22日
異議申立て 平成14年10月22日(請求項1〜3)
異議の決定 平成15年3月31日 (請求項1〜3取消)
決定取消の判決 平成16年1月28日
取消理由通知 平成16年2月24日(3月5日発送)
意見書 平成16年4月27日

2.取消理由の概要
平成16年2月24日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1:本件は、平成8年5月23日に特許出願がなされ、明細書について平成13年10月3日付けで手続補正がなされたものであるが、当該手続補正は、少なくとも下記の点で本件願書に最初に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲内でなされたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。したがって、本件請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第1項第1号の規定に該当し、取り消すべきものである。

上記手続補正においては、特許請求の範囲及び段落【0007】、【0013】に新たに「画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が一定に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」との記載が追加され、また、段落【0011】に「ソース側端子15、ゲート側端子16をともにパネルの上側の一辺に並置し、それらが並置された1辺と対向する辺(下側の辺)の端部近傍に亘って導電パターン12を引き回し」との記載が追加され、さらに段落【0012】に「ソース側端子、ゲート側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って引き回され」との記載が追加されているが、これらについての記載は本件願書に最初に添付した明細書または図面になく、これらの補正が本件願書に最初に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲内でなされたものであると認めることができない。

理由2:本件特許明細書は、下記の点で特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしてない。したがって、本件請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第1項第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

本件請求項1ないし3に係る発明は、その特許請求の範囲に記載されるように、「TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子3が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」という事項を構成要件とするものであるが、ここで「対向する辺の端部」とは、TFTアレイ基板の下側の辺の両端部のことであるから、その近傍である「対向する辺の端部近傍」とは、結局のところ、TFTアレイ基板の下側両隅の角部のことであると認められる。
しかしながら、本件明細書及び図面には、TFTアレイ基板の下側両隅の角部についての記載はなく、さらには、導電パターンをこのような部位に亘って引き回す具体的な態様も記載されていないことから、「TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」という構成を有する本件請求項1ないし3に係る発明について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているということはできず、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしているということはできない。
また、本件明細書の発明の詳細な説明に、「TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」との事項に対応する具体的な技術手段が記載されていないことから(本件図面1に記載される導電パターンは、画像表示部の両側辺から上に向けて引き出されているだけであって、これがTFTアレイ基板の下側隅の角部に亘って引き回されていることは示されていない。)、本件明細書が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているともいえない。

3.特許権者の主張
これに対して、特許権者は、平成16年4月27日付けの意見書において、本特許が維持決定されるべきとして、次のように主張している。

理由1(特許法第17条の2第3項違反)について
上記理由1は要するに、平成13年10月3日付の手続補正による補正によって追加された「画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が一定に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍4に亘って上記導電パターンを引き回した」という記載はいわゆる新規事項追加に該当する、とのことであり、後述の理由2を参照すると、本件願書に最初に添付した明細書または図面にTFTアレイ基板の下側隅の角部についての記載が無く、さらには、導電パターンをこのような部位に亘って引き回す具体的な態様も記載されていない点がその判断の根拠と思料される。
なるほど、本件願書に最初に添付した図面における図1では、画像表示部のみが示され、TFTアレイ基板自体は図中で明示的に記載されてはいない。しかしながら、画像表示部がTFTアレイ基板上の大半の領域を占めることは当業者にとって常識的事項であり、それゆえ、画像表示部の下側の辺の端部近傍とTFTアレイ基板の下側の辺の端部近傍が実質的に同一の領域を示していることも当業者に自明である。つまり、当該領域を、TFTアレイ基板側から規定するのか、あるいは画像表示部側から規定するのか、という差異に過ぎない。要するに、本件図1においてTFTアレイ基板をあえて表示せずとも、TFTアレイ基板が本件図1に示された画像表示部および配線領域等を含む最小の矩形を呈した基板に相当することが当業者にとって自明な事項なのである。
本件特許明細書の段落【0002】には「一方、パネルの大きさは、画素表示部(注:画像表示部と同義)の大きさが決まっているため、端子部配線領域等の周辺領域の大きさで決定され、この周辺領域のサイズ縮小が重要な課題である。」との記載があり、本件特許発明が解決しようとする課題の1つが、もともと狭かった画像表示部とTFTアレイ基板間の周辺領域を一層縮小化する点であったのが分かる。さらに、本件特許明細書の段落【0006】の「この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、端子および配線領域等の周辺領域を縮小することによりパネルサイズを縮小し、」との記載からも明らかである。なお、上述のパネルとはTFTアレイ基板およびTFTアレイ基板上に載置された対向電極基板と両基板に挟持された液晶を総称する技術用語であるが、対向電極基板自体はTFTアレイ基板内に設けられるため、パネルの大きさとは実質的にTFTアレイ基板の大きさを意味する。
また、本件特許明細書の段落【0012】の記載によると、画像表示部と周辺領域の実際の寸法の一例として、それぞれ24cmと7.2mm(注:左右両周辺領域の幅の和)という具体的な数値が挙げられている。両者の比率を保ちつつ画像表示部とTFTアレイ基板(パネル)を図示すると、参考図面1のようになるが、図から画像表示部とTFTアレイ基板の間隔は極めて近接していることが一目瞭然に理解できる。つまり、「辺の端部近傍」の「近傍」という語句の意味を鑑みると、画像表示部の下側の辺の端部近傍とTFTアレイ基板の下側の辺の端部近傍が実質的に同一の領域であることは、当業者にとって自明な事項なのである。
さらに、この画像表示部とTFTアレイ基板との間の周辺領域には、プロセス上可能な限り導電パターンが高密度に引き回されているので、「TFTアレイ基板の1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」状態を呈している点もまた、当初明細書および図面の記載から自明な事項である。ちなみに、画像表示部の下側の辺とTFTアレイ基板の下側の辺の間の領域には駆動用集積回路やそれに伴う配線(導電パターン)を何ら設ける必要が無いため、本件特許発明の主たる目的であるパネル面積縮小の観点から、他の部位に比べてプロセス上可能な限り狭くなるように形成されているが(ちなみに、参考図面1ではlmm)、これは上述した本件発明の目的の一つである「この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、端子および配線領域等の周辺領域を縮小することによりパネルサイズを縮小し、」に合致している。
したがって、平成13年10月3日付の手続補正による補正は、当業者にとって当初明細書等の記載から自明な事項の範囲内の補正であり、それゆえ、本件願書に最初に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲内である。よって、かかる補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているので、本件請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第1項第1号の規定に該当しない。

理由2(特許法第36条第4項及び第6項違反)について
理由2についても、上述の説明から平成13年10月3日付の手続補正が適切であると結論付けられるため、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていることが明らかであり、それゆえ、特許法第113条第1項第4号の規定に該当しない。

4.当審の判断
特許権者は、平成13年10月3日付けの手続補正による補正は、当業者にとって当初明細書等の記載から自明な事項の範囲内の補正であり、それゆえ、本件願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内であると主張するが、本件願書に最初に添付した明細書又は図面(特開平9-311341号公報参照)には、TFTアレイ基板の下側の辺についての記載がなく、その端部と導電パターンの関係についての記載がない以上、上記手続補正における「画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が一定に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」との事項が本件願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものでないことは明らかであり、特許権者の主張は採用できない。
仮に、特許権者が主張するように本件図1にTFTアレイ基板を書き込んでみても、少なくとも、本件図1の画像表示部1の左側下部には導電パターンが配されていないのであるから、当該導電パターンがTFT基板の下側の辺の端部近傍に亘って引き回されることにはならないのであって、本件図1が上記手続補正における「画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が一定に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」という事項を意味するものとして記載されたものでないことは明らかである。
また、本件願書に最初に添付した明細書には、導電パターンの引き回しについて、【請求項6】に「導電パターンは、画像表示部周辺部の端部にまで引き回され、TFTアレイ基板と対向電極基板との間隔が均一に保たれるように形成されている」と記載されているところであるが、この導電パターンが引き回される「画像表示部周辺部の端部」とは、当該明細書の段落【0004】の「図8に示す従来の液晶パネル装置の導電パターンでは、ゲート側端子16とソース側端子15の取り出し方向が異なっており、画像表示部1の角の近傍では、ダミー配線31を設ける必要がある。なぜなら、ダミー配線31を設けない場合、基板上の高さの差から対向電極基板との間に数ミクロンのセルギャップの面内不均一が発生し、表示不良の原因となるためである。」との記載及び段落【0012】の「本実施の形態による導電パターンは、画像表示部周辺部の端部にまで引き回され、TFTアレイ基板と対向電極基板との間隔が面内で均一に保たれるように形成されているので、図8に示す従来例の導電パターンで必要であったセルギャップを均一にするためのダミー配線31は不要となる。」との記載並びに図8から、従来ダミー配線31を設ける必要があった画像表示部1の角の近傍のことであり、本件図1でいえば、画像表示部1の上側角の近傍のことであると認められ、TFTアレイ基板の下側辺の端部近傍のことではないから、この点からも、導電パターンの引き回しについての補正後の「画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が一定に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」との事項が本件願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されたものでないことは明らかである。
また、以上のことから、本件特許明細書が特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないことも明らかである。

5.むすび
以上のとおり、本件の平成13年10月3日付けの手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たしておらず、また、本件明細書は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないので、本件の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第1項第1号及び第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-03-31 
出願番号 特願平8-128797
審決分類 P 1 652・ 55- Z (G02F)
P 1 652・ 537- Z (G02F)
P 1 652・ 536- Z (G02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 稲積 義登
瀧本 十良三
町田 光信
向後 晋一
登録日 2002-02-08 
登録番号 特許第3276557号(P3276557)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 児玉 俊英  
代理人 高橋 省吾  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 竹中 岑生  
代理人 村上 加奈子  
代理人 大岩 増雄  
代理人 村上 啓吾  

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