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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47J
審判 全部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  A47J
管理番号 1113030
異議申立番号 異議2003-72390  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-22 
確定日 2005-02-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3390692号「電気湯沸かし器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3390692号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3390692号に係る特許出願は、平成4年4月28日に出願された特許出願(特願平4-109795号)の一部を新たな特許出願(特願平11-110547号)として平成11年4月19日に出願したものであって、平成15年1月17日に特許権の設定登録がなされたものである(特許掲載公報発行日:同年3月24日)。

(2)平成15年9月22日付けで特許異議の申立がなされ、平成16年6月17日に口頭審理を行い、意見書提出の期間を指定して本件特許の取消理由を告知したところ、同年8月6日付けで意見書が提出されると共に訂正請求がなされ、更に、この訂正請求に対して同年9月13日付けで意見書提出の期間を指定して訂正拒絶理由を通知したところ、特許権者からは期間内に何の応答もなかった。

2.特許異議の申立ての概要
平成15年9月22日付けで西田穣から特許異議の申立がなされた。その概要は以下のとおりである。

(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)本件明細書は、発明内容の開示が曖昧かつ不十分であるから、本件特許は、改正前の特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないものであり、取り消されるべきものである(この主張は、口頭審理において取り下げられた。)。

3.訂正請求について
(1)請求の趣旨
平成16年8月6日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに訂正することを求めるものである。

「外装体内に配されかつ底面裏側に発熱体を固着した容器と、この容器上方開放部を覆い、前記外装体に軸支される蓋体と、この蓋体の容器側に配した内蓋とを備え、この内蓋周部に配されると共に前記蓋体開放時に前記内蓋に付着した水滴が前記容器内に流れるようにその下端面を前記内蓋底面より下方に突出させ、かつ、その取り付け位置を前記内蓋底面より上方としたパッキンを有した電気湯沸かし器。」

(2)訂正拒絶理由の概要
本件訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明は、甲第3号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件訂正請求の適否
上記訂正拒絶理由を意見書提出の期間を指定して通知したが、特許権者からは期間内に何の応答もなかった。また、上記訂正拒絶理由は妥当なものである。

したがって、本件訂正請求に係る訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条第3項の規定に違反するものであり、認めることはできない。

4.本件発明
上記したとおり本件訂正は認めることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許明細書に記載されたとおりの次のものである。。

「外装体内に配されかつ底面裏側に発熱体を固着した容器と、この容器上方開放部を覆い、前記外装体に軸支される蓋体と、この蓋体の容器側に配した内蓋と、この内蓋周部に配したパッキンとを有する電気湯沸かし器であって、前記パッキンの下端面を前記内蓋底面より下方に突出させ、前記蓋体を開いた際に前記内蓋に付着した水滴が前記パッキン下端面の突出部位を介して前記容器内に流れるように構成したことを特徴とする電気湯沸かし器。」

5.取消理由
口頭審理において告知した特許の取消理由は、次のとおりである。

(1)本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、特許を受けることができない。これは、蓋体を開く動作中において両者が同一であるためである。

(2)本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。これは、甲第2号証に、蓋体が開ききった状態で水滴を容器の内側に落とすという技術事項が記載されており、この点を甲第1号証のものに適用して、蓋体が開ききった状態でも、水滴を容器の内側に落とすことが容易にできたためである。

(3)本件明細書の特許請求範囲には、「前記蓋体を開いた際に前記内蓋に付着した水滴が前記パッキン下端面の突出部位を介して前記容器内に流れるように構成した」という作用が記載されているから、本件明細書は特許法36条第5項第2号の要件を満たしていない。

6.甲各号証に記載された事項
(1)甲第1号証(実願昭58-91052号(実開昭60-2420号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「第1図〜第3図は本考案にかかる電気エアーポットの第1実施例を示し、金属製外装体1の内部には断熱材2を巻装した金属製容器3が収納されている。この容器3の底部外周には電熱ヒータの一例であるバンドヒータ4が巻数されており、」(第3頁第17行-第4頁第1行)

・「12は外装体1の上端部に載置固定された肩体で、この肩体12の後端支軸13によって蓋体14が開閉自在となっており、」(第4頁第11-13行)

・「18は容器3の上端開口部を閉鎖する金属製の中盤で、その中央部には通気孔18aが形成されている。中蓋18の外周部には容器3の上端面に密着する環状のシールパッキン19が取付けられており、このシールパッキン19の上部には上方が拡間した嵌合溝20(嵌合部)が形成され、この嵌合溝20に上記蓋体14の外周部下面に垂設した突条14c(嵌合部)が凹凸嵌合することによって、中蓋18は蓋体14の下面に一体に取付けられる。」(第5頁第4-13行)

また、特許権者は、口頭審理において、「甲第1号証のものは、蓋体が開ききった状態で、水滴が容器の内側に落ちるどうかは不明である。しかし、蓋体を開く動作中においては、水滴は容器の内側に落ちる。」と陳述している。

したがって、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「甲第1号証発明」という。)。

「外装体内に配されかつ底部外周にバンドヒータを巻装した容器と、この容器上方開放部を覆い、前記外装体に軸支される蓋体と、この蓋体の容器側に配した中蓋と、この中蓋周部に配したシールパッキンとを有する電気エアーポットであって、前記シールパッキンの下端面を前記中蓋底面より下方に突出させ、前記蓋体を開く動作中に前記中蓋に付着した水滴が前記シールパッキン下端面の突出部位を介して前記容器内に流れるように構成した電気エアーポット。」

(2)甲第2号証(実願昭60-89239号(実開昭61-205423号)のマイクロフィルム)には、第2図とともに、次の記載がある。

・「第2図に示すように、蓋6を開けた時の水滴は、蓋下部9の外周に設けられた蓋パッキング17の外周端面より、容器4へ復水させることができ、したがって水滴がもれてテーブル等をぬらすおそれもなく、非常に実用的なものである。」(第7頁第15-19行)

7.対比

本件発明と甲第1号証発明とを対比する。

甲第1号証発明の「中蓋」は本件発明の「内蓋」に相当し、以下同様に、「シールパッキン」は「パッキン」に、また、「電気エアーポット」は「電気湯沸かし器」にそれぞれ相当する。

また、特許権者は、口頭審理において、「本願特許請求の範囲に記載した「蓋体を開いた際」には、「蓋体を開放するとき」と「蓋体開放時」とを含み、「蓋体を開放するとき」とは、蓋体を開く動作中のこと、また、「蓋体開放時」とは、蓋体を開く動作の終了時、すなわち「蓋体が開いた」状態のことである。」と陳述している。

したがって、両者は、

「外装体内に配された容器と、この容器上方開放部を覆い、前記外装体に軸支される蓋体と、この蓋体の容器側に配した内蓋と、この内蓋周部に配したパッキンとを有する電気湯沸かし器であって、前記パッキンの下端面を前記内蓋底面より下方に突出させ、前記蓋体を開く動作中に前記内蓋に付着した水滴が前記パッキン下端面の突出部位を介して前記容器内に流れるように構成した電気湯沸かし器。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本件発明では、「底面裏側に発熱体を固着した」のに対して、甲第1号証発明では、「底部外周にバンドヒータを巻装した」点。

[相違点2]
本件発明では、「蓋体を開く動作中」に加えて「蓋体が開ききった状態」でも「内蓋に付着した水滴がパッキン下端面の突出部位を介して容器内に流れる」のに対して、甲第1号証発明では、「蓋体が開ききった状態」では、水滴が容器の内側に落ちるどうか不明な点。

8.判断

上記相違点について検討する。

相違点1について、
甲第1号証発明において、容器の「底部外周にバンドヒータを巻装」することに代えて、容器の「底面裏側に発熱体を固着」することは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2について、
甲第2号証には、電気湯沸し器において、蓋を開けたとき(蓋体が開ききった状態)に、内蓋に付着した水滴を蓋下部の外周に設けられた蓋パッキングの外周端面から容器へ復水させる点が記載されている。

したがって、甲第1号証発明において、「蓋体を開く動作中」に加えて「蓋体が開ききった状態」でも「内蓋に付着した水滴がパッキン下端面の突出部位を介して容器内に流れる」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件発明の作用効果も、甲第1号証及び甲第2号証の記載から当業者が予測できた範囲内のものである。

9.むすび

本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-12-27 
出願番号 特願平11-110547
審決分類 P 1 651・ 856- ZB (A47J)
P 1 651・ 121- ZB (A47J)
最終処分 取消  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 会田 博行
佐野 遵
登録日 2003-01-17 
登録番号 特許第3390692号(P3390692)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 電気湯沸かし器  
代理人 東尾 正博  
代理人 坂口 智康  
代理人 飛永 充啓  
代理人 田川 孝由  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 鎌田 文二  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 鳥居 和久  
代理人 北川 政徳  

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