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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 E04C
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 E04C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 E04C
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 E04C
管理番号 1114159
審判番号 不服2004-2937  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-13 
確定日 2005-03-22 
事件の表示 平成10年特許願第85462号「鉄筋スペーサー」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月12日出願公開、特開平11-280207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年3月31日に出願された特願平10-85462号の特許出願であって、平成15年3月14日付の原審における拒絶理由通知に対して平成15年5月15日付で意見書が提出され、平成16年1月7日付で拒絶査定がなされたところ、前記拒絶査定を不服として、平成16年2月13日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、平成16年3月11日付で手続補正書が提出されて明細書についての補正がなされたものである。

第2 平成16年3月11日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成16年3月11日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の適否の検討
上記平成16年3月11日付の手続補正は、前記拒絶査定に対する審判請求がなされた平成16年2月13日から30日以内である平成16年3月11日になされた手続補正であるから、特許法第17条の2第1項第3号に規定されているところの「第121条第1項〔拒絶査定に対する審判〕の審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にするとき。」に該当する補正であることは、明らかである。
そこで、上記平成16年3月11日付の手続補正による前記補正が、特許法第17条の2第3項ないし第5項に規定する要件を満たしているか否かについて、次に検討する。

2.補正の内容
平成16年3月11日付の手続補正(本件補正)は、出願当初の明細書の
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 略円盤状で内輪部と外輪部とこれらを繋ぐ接続部材を備え、コンクリート打設時にコンクリート構造物の鉄筋と型枠との間のかぶり厚さを保持する鉄筋スペーサーであって、
(イ)前記接続部材又はその周辺の一部又は全部を、前記鉄筋スペーサーのかぶり厚さの数値を表現する形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に形成したこと
(ロ)前記接続部材又はその周辺の一部又は全部を、前記鉄筋スペーサーの適用可能な鉄筋の外径の数値を表現する形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に形成したこと
のうちのいずれかまたはこれらの適宜の組合わせを有することを特徴とする鉄筋スペーサー。」
の記載を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 略円盤状で内輪部と外輪部とこれらを繋ぐ接続部材を備え、コンクリート打設時にコンクリート構造物の鉄筋と型枠との間のかぶり厚さを保持する鉄筋スペーサーであって、
前記接続部材を当該鉄筋スペーサーのかぶり厚さの数値を表現するように形成したことを特徴とする鉄筋スペーサー
【請求項2】 前記接続部材の前記鉄筋スペーサーのかぶり厚さの数値を表現するように形成した部分の色彩をスペーサーの他の部分と異なる色彩にしたこと特徴とする請求項1記載の鉄筋スペーサー」
と補正することを含むものである。

3.本件補正の目的の適否について
本件補正における特許請求の範囲の補正は、補正前の請求項1のみからなる特許請求の範囲と比して、本件補正により新たな請求項2を追加することにより、結果的にみて本件補正後の特許請求の範囲に記載された請求項の項数を増加させる、いわゆる「増項補正」であることは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」、同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」、同項第3号に掲げる「誤記の訂正」、そして同項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」の各事項を目的とする補正のいずれにも該当しない補正であることが明らかであるから、本件補正が、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものに該当する補正であるということができない。

4.むすび
以上のとおりであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とする補正に該当しない補正を含んでいるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成16年3月11日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、当審が審理すべき本願発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 略円盤状で内輪部と外輪部とこれらを繋ぐ接続部材を備え、コンクリート打設時にコンクリート構造物の鉄筋と型枠との間のかぶり厚さを保持する鉄筋スペーサーであって、
(イ)前記接続部材又はその周辺の一部又は全部を、前記鉄筋スペーサーのかぶり厚さの数値を表現する形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に形成したこと
(ロ)前記接続部材又はその周辺の一部又は全部を、前記鉄筋スペーサーの適用可能な鉄筋の外径の数値を表現する形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に形成したこと
のうちのいずれかまたはこれらの適宜の組合わせを有することを特徴とする鉄筋スペーサー。」(以下、構成(イ)に係る発明を「本願発明1」という。)

2.引用刊行物及び該引用刊行物の記載事項
(ア)原審における拒絶査定の理由に引用された本願の特許出願前に頒布された刊行物である実願平3-73821号(実開平5-16937号)のCD-ROM(以下、「引用刊行物1」という。)には、「建築用鉄筋スペーサー」に関し、次の事項が記載されている。
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 一部を開口した半円形の内輪部と、その内輪部から放射状に延びるリブを介して支持された外輪部と、その外輪部の一部を切欠し、その切欠両端から上記内輪部の開口近傍に延びるように対設した支持腕とからなる鉄筋スペーサーにおいて、上記半円形内輪部の開口両端から内側軸心に向かって延びる突出片をそれぞれ対向して形成することを特徴とする建築用鉄筋スペーサー。
【考案の詳細な説明】
【0001】【産業上の利用分野】 この考案は、特に建築物の柱部、または壁部の鉄筋と型枠の間隔を保持するスペーサーに関する。
【0002】【従来の技術】 従来、建築物の柱部、または、壁部の鉄筋と型枠との間のコンクリートのかぶり厚を保持するために、内輪部、外輪部等により構成したほぼ円盤状のスペーサーを壁筋、または、柱筋に対して内輪部の内側に開口より鉄筋を嵌挿すると共に、支持腕で鉄筋を押圧して支持していた。
【0003】【考案が解決しようとする課題】 上記従来の方法では、コンクリートのかぶり厚は同じでも、取り付ける鉄筋の外径の違いにより内輪部の内径の違うスペーサーを使い分けなければならず、非常に面倒であり、しかも、在庫する種類もふえるため保管、管理上合理的でない。
製造面においても、鉄筋の様々な外径に対して個々に専用のスペーサーを製造することは、数種の製造工程が必要になり、しかも在庫する種類もふえるため上記と同様に合理的でないなどの問題点を有する。
【0004】【課題を解決するための手段】 この考案は上記従来の課題に鑑みなされたもので、その目的は、2種類の鉄筋の外径に対して共に、内輪部の内側に開口より鉄筋を嵌挿することができるとともに、確実に鉄筋に取り付けることができ、しかも、コンクリートのかぶり厚の精度にも信頼性が持てる建築用鉄筋スペーサーを提供するものである。
【0005】 その手段として、一部を開口した半円形の内輪部と、その内輪部から放射状に延びるリブを介して支持された外輪部と、その外輪部の一部を切欠し、その切欠両端から上記内輪部の開口近傍に延びるように対設した支持腕とからなる鉄筋スペーサーにおいて、上記半円形内輪部の開口両端から内側軸心に向かって延びる突出片をそれぞれ対向して形成することを特徴とする。
【0006】 上記構造により、半円形内輪部の開口両端から内側軸心に向かって延びる突出片をそれぞれ対向して形成することにより、小径の鉄筋の場合は鉄筋を内輪部の内側に嵌挿して2片の突出片が支持部となり、鉄筋を押圧して支持することができ、大径の鉄筋の場合は2片の突出片を、鉄筋を内輪部の内側に嵌挿する際に折曲し、従来どおり外輪部の一部を切欠した両端から内輪部の開口近傍に延びるように対設した支持腕で嵌挿した鉄筋を押圧して支持することができるなど、前記従来の課題を解消するものである。
【0007】【実施例】 第1図は、本考案に係る建築用鉄筋スペーサーの実施例を示す正面図であり、第2図は、第1図のX-Xの断面を示す縦断面図である。
一部を開口した半円形の内輪部1と、その内輪部1の所要個所から放射状に伸びるリブ2を介して支持された、外周に所要の間隔で突起片6を付設した外輪部3を形成すると共に、その外輪部3の一部を内輪部1の開口方向と同方向を切欠し、その切欠両端から内輪部1の開口近傍に延びるようにした支持腕4、4を一体に形成する。
また、半円形内輪部1の開口両端から内側軸心に向かって延びる突出片5、5をそれぞれ形成する。
【0008】 第3図は、本考案に係る建築用鉄筋スペーサーの内輪部の内側に大小2種類の鉄筋を嵌挿した際のそれぞれの使用状態を示す部分拡大図であり、第4図は、本考案に係る建築用鉄筋スペーサーの使用状態を示す使用状態図である。
第3図に示すように、小径の鉄筋Aを内輪部1の内側に嵌挿する場合は2片の突出片5、5が鉄筋Aの支持部となり、鉄筋Aを押圧して確実に支持することができる。
大径の鉄筋Bを嵌挿する場合は、2片の突出片5、5を、鉄筋Bを内輪部1の内側に嵌挿する際に折曲し、従来のスペーサーと同様、外輪部3の一部を切欠した両端から内輪部1の開口近傍に延びるようにした支持腕4、4で内輪部1に嵌挿した鉄筋Bを押圧して確実に支持することができる。
【0009】【考案の効果】 以上詳細に説明したようにこの考案の建築用鉄筋スペーサーによれば、大小2種類の鉄筋が内輪部の内側に嵌挿することができ、小径の鉄筋の場合は2片の突出片が、大径の鉄筋の場合は2つの支持腕が鉄筋を押圧して確実に支持することができると共に、確実なコンクリートのかぶり厚さを保持することができるため、施工性にすぐれ、現場等での在庫する種類が減り合理的である。
製作面においても製造の工程を合理化することができると共に、在庫する種類が減り、合理的であるためにコストの削減が可能になり、廉価にスペーサーを提供することができるなど実用上有益な建築用鉄筋スペーサーを得ることができる。」
そして、引用刊行物1の第1図ないし第4図には、考案の詳細な説明に記載された本考案の建築用鉄筋スペーサーについての説明を裏付ける図面が図示されおり、特に、第1図には、一部を開口した半円形の内輪部と、その内輪部から放射状に延びるリブを介して支持された略円盤状の外輪部と、その外輪部の一部を切欠し、その切欠両端から上記内輪部の開口近傍に延びるように対設した支持腕とからなる建築用鉄筋スペーサーの正面図が図示されている。
そうすると、上記引用刊行物1における前記摘記事項及び添付図面における記載からみて、引用刊行物1には、「一部を開口した半円形の内輪部と、その内輪部から放射状に延びるリブを介して支持された略円盤状の外輪部と、その外輪部の一部を切欠し、その切欠両端から上記内輪部の開口近傍に延びるように対設した支持腕とからなり、建築物の鉄筋と型枠の間隔であるコンクリートのかぶり厚を保持する建築用鉄筋スペーサー」の発明(以下、これを「引用発明1」という。)の記載が認められる。

(イ)原審における拒絶査定の理由に周知技術文献として引用された本願の特許出願前に頒布された刊行物である実願昭48-92579号(実開昭50-39113号)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、「鉄筋コンクリート工事における配筋用スペーサ」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「2.実用新案登録請求の範囲
硬質材よりなる短筒体(1)の上端縁に切欠(2)、(2)を対向して設けるとともに該切欠(2)、(2)と深さを異にする切欠(3)、(3)を対向して設け、また、短筒体(1)の下端縁には切欠(2)、(3)と深さを異にする切欠(4)、(4)及び切欠(2)、(3)、(4)と深さを異にする切欠(5)、(5)を夫々対向して設けてなる鉄筋コンクリート工事における配筋用スペーサ。」(明細書1ページ4行〜11行)
「本考案は前記のような欠陥のない鉄筋コンクリート工事における配筋用スペーサを目的として完成されたもので、図示の実施例に示すように、……(7)は内鍔部(6)または短筒体(1)の各切欠(2)、(3)、(4)、(5)に対応する位置に必要に応じて設けられる高さ表示部で、該高さ表示部(7)には夫々の短筒体(1)の下端縁から切欠(2)、(3)までの長さと短筒体(1)の上端縁から切欠(4)、(5)までの長さ即ち高さが表示されており、」(明細書2ページ2行〜19行)

(ウ)原審における拒絶査定の理由に周知技術文献として引用された本願の特許出願前に頒布された刊行物である実願平3-97223号(実開平6-12619号)のCD-ROM(以下、「引用刊行物3」という。)には、「鉄筋コンクリート構造物用スペーサブロック」に関し、図面の図示とともに次の事項が記載されている。
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 鉄筋コンクリート工事の配筋をする際において、鉄筋と捨コンクリートまたはスラブ型枠との間に介在される硬質合成樹脂材による一体成形品としてのスペーサブロックであって、縦、横、高さの三辺のうち、少なくとも二辺の長さがそれぞれ異なった略直方体にして、かつそのいずれか一方の上面部と側面部の中央部位に深さがそれぞれ異なった鉄筋を当接する凹溝部と、該凹溝部と直交状に鉄筋を当接するための鉄筋振れ止め突起部が設けられ、鉄筋当接部位を変えることによって被り寸法の異なる4通に使用可能とされた構成を特徴とする鉄筋コンクリート構造物用スペーサブロック。
【請求項2】 前記上面部または鉄筋振れ止め突起部等の適所に、被り寸法の異なる4通に使用される識別表示が設けられたことを特徴とする請求項1の鉄筋コンクリート構造物用スペーサブロック。」
「【0007】 即ち、地中梁鉄筋100(以下、単に鉄筋100という)と捨コンクリート101とのコンクリート被り寸法が30mmの場合には、図12に示されているように、識別表示27の数字「30」(高さ30mmを示す)が正面位置にくるようにして下面部15を捨コンクリート101上に定置させ、上面部14の凹溝部20に鉄筋100を当接させる。被り寸法が40mmの場合には、図13および図14に示されているように、下面部15を捨コンクリート101上に、識別表示27の数字「40」(高さ40mmを示す)を目印として鉄筋100の当接させる方向に対応して縦、横いずれかの向きで定置させ、上面部14上にして、かつ凹溝部20と直交状にその各対の振れ止め突起部24、25間に鉄筋100を当接させる。
【0008】 また、被り寸法が50mmの場合には、図15に示されているように、識別表示27の数字「50」(高さ50mmを示す)を目印として、左側面部17を捨コンクリート101上に載せ、右側面部16を上方として起立定置させ、右側面部16の凹溝部22に鉄筋100を当接させる。また、被り寸法が60mm場合には、図16および図17に示されているように、被り寸法が50mmの場合の状態で、識別表示27の数字「60」(高さ60mmを示す)を目印として、右側面部16上にして、かつ凹溝部22と直交状にその各対の振れ止め突起部24、25間に鉄筋100を当接させる。」
「【0011】 そして、この4通の使用に便ならしめるため、鉄筋振れ止め突起部の適所に、4通の被り寸法に対応した識別表示27が設けられている。即ち、図1及び図2に示されているように、上面部14の凹溝部20と十字形隔壁19との基部端面に数字「30」が、右側面部16の凹溝部22と十字形隔壁19との基部端面に数字「50」が、上面部14の対角線上の2つの振れ止め突起部24の端面に数字「40」が、また右側面部16の対角線上の2つの振れ止め突起部24の端面に数字「60」がそれぞれ刻印等にて表示されている。なお、識別表示27のうち数字「30」は凹溝部20に、数字「40」は上面部14の平坦面適所に、また数字「50」は凹溝部22に、数字「60」は右側面部16の平坦面適所にそれぞれ表示してもよく、また識別表示27は数字の外、任意の記号等であってもよいことは勿論である。」

3.対比及び一致点・相違点
ここで、本願発明1と前記引用発明1とを対比すると、引用発明1における「一部を開口した半円形の内輪部」、「略円盤状の外輪部」、「内輪部から放射状に延びるリブ」及び「建築物の鉄筋と型枠の間隔であるコンクリートのかぶり厚を保持する建築用鉄筋スペーサー」が、本願発明1の「内輪部」、「外輪部」、「接続部材」及び「コンクリート打設時にコンクリート構造物の鉄筋と型枠との間のかぶり厚さを保持する鉄筋スペーサー」にそれぞれ対応する。
そして、引用発明1の「建築用鉄筋スペーサー」の「外輪部」が「略円盤状」であることは、とりもなおさず、引用発明1の「建築用鉄筋スペーサー」の全体の外形が、概略「略円盤状」であることを意味することは明らかである。
してみると、本願発明1と引用発明1とは、「略円盤状で内輪部と外輪部とこれらを繋ぐ接続部材を備え、コンクリート打設時にコンクリート構造物の鉄筋と型枠との間のかぶり厚さを保持する鉄筋スペーサー」である点で、両者の構成が一致し、次の点で相違する。
相違点1:本願発明1が「前記接続部材又はその周辺の一部又は全部を、前記鉄筋スペーサーのかぶり厚さの数値を表現する形状に形成したこと」を有するのに対し、引用発明1は、前記構成を有していない点。

4.相違点についての判断
(1)相違点1についての検討
「コンクリート打設時にコンクリートのかぶり厚さを確保するためにコンクリート構造物の鉄筋と型枠との間に設けられる鉄筋スペーサーにおいて、鉄筋スペーサーが確保できるかぶり厚さの数値そのものを示す識別表示用の数字、あるいは記号等を、コンクリート打設時のかぶり厚さの確保の目印として、鉄筋スペーサーの一部分に表示しておくことにより、コンクリート打設時のコンクリートのかぶり厚さに間違いがないように確実に施工できるようにするための技術」は、原審における拒絶査定の理由に周知技術文献として引用された前記引用刊行物2の明細書2ページ2行〜19行や、同前記引用刊行物3の段落【0011】に記載されているように、本願の特許出願時の周知技術である。
そして、引用発明1に前記周知技術を適用するに際しての「かぶり厚さの識別表示用の数字、あるいは記号等」の表示手段として、引用発明1の建築用鉄筋スペーサーのリブ又はその周辺の一部又は全部の形状を、前記周知技術に基づいて、かぶり厚さの数値を表現する形状に形成するように変更を加えることにより、本願発明1の上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が格別の困難性を伴うことなく容易になし得ることである。
そして、本願発明1の奏する作用・効果は、上記引用発明1及び周知技術から予測できる範囲のものであって、格別顕著のものということができない。

(2)まとめ
したがって、本願発明1は、上記引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、上記引用刊行物1に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-24 
結審通知日 2005-01-26 
審決日 2005-02-08 
出願番号 特願平10-85462
審決分類 P 1 8・ 571- Z (E04C)
P 1 8・ 572- Z (E04C)
P 1 8・ 574- Z (E04C)
P 1 8・ 121- Z (E04C)
P 1 8・ 573- Z (E04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊波 猛長島 和子古屋野 浩志  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
佐藤 昭喜
発明の名称 鉄筋スペーサー  

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