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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61J |
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管理番号 | 1114411 |
審判番号 | 不服2003-1342 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-03-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-23 |
確定日 | 2005-04-02 |
事件の表示 | 特願2002-230777「乳幼児用おしゃぶりおよびキシリトール入り乳幼児用おしゃぶり」拒絶査定不服審判事件〔平成16年3月4日出願公開、特開2004- 65707号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年8月8日の出願であって、同年11月26日付けの手続補正書により補正され、その後、拒絶査定がなされた。これに対し、平成15年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年1月28日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年1月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年1月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「体内又は口内に摂取可能な成分が、他の成分に包含された状態で乳首部の構成材料中又は乳首部表面に分散して含有されていることを特徴とする乳幼児用おしゃぶり。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明である「体内又は口内に摂取可能な成分が、他の成分に包含された状態で乳首部に分散して含有されていること」における乳首部を「乳首部の構成材料中又は乳首部表面」とする限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特表平2001―511664号公報(以下、「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。 (2-1-1)「1.事実上のマウスピース(10)およびカバーピース(11)または栄養補給瓶に取付けるための部を具備する小児をあやすまたは小児に栄養補給するためのおしゃぶりであって、前記事実上のマウスピースが小児の口内で舌と上顎間に保持できる弾性材料により形成された一片を有しかつ前記おしゃぶりのマウスピースが中空または中実片であるおしゃぶりにおいて、前記中空マウスピースまたは中実マウスピースの壁(13)は活性剤含有投与ユニット(20)の挿入のために形成された空間(14)を含むことを特徴とするおしゃぶり。」点(特許請求の範囲請求項1) (2-1-2)「図1は略自然の寸法で落ち着かせるおしゃぶりとして具体化された本発明のおしゃぶりの垂直長手断面を示す。小児の口へフイットさせるマウスピースは参照番号10、おしゃぶりのカバーを参照番号11、および把手を参照番号12により示されている。この実施形態において、中空マウスピース10はマウスピースの外面を形成する弾性壁13により画定された空所19を有する。図2は図1のマウスピースの拡大図であって、本発明の1形態に近い図を示す。マウスピースの壁13は空所14を有し、この空所へ錠剤20または活性剤、例えばう食防止剤含有の類似の投与ユニットが挿入されている。 図1および2の例示アプローチとして説明した空所(空間)14は、マウスピースの下部13aに位置決めされるポーチ(pouch)として形成される。小児の口に対面するポーチの壁15は1またそれ以上の孔16を有する。活性剤は、他の手段によるその溶解、浸食または分解の結果として、孔16から小児の口へ運ばれる。この孔は活性剤の口への導入速度、従って口内で適正治療レベルの濃度を得るための制御を可能にする。」(第4頁第17行〜第5頁第1行) そして、上記(2-1-1)及び(2-1-2)の記載事項及び図面の図1〜図4の図示内容から、引用例1には、 「活性剤が、マウスピース10の外面を形成する弾性壁13に形成された空所14へ挿入されている小児用のおしゃぶり。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (2-2)次に、同じく拒絶の理由に引用された刊行物である、特開2001―190676号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2-2-1)「上下の歯の外周部を覆うように取付けることができる可撓性材製の前庭プレートとからなることを特徴とする口呼吸防止具。」(特許請求の範囲請求項1) (2-2-2)「本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、上下の歯の外周部を覆うように取付けて、口呼吸できないようにして、本来の鼻呼吸をさせることにより、免疫病等の発症を未然に防止することができる口呼吸防止具を提供することを目的としている。」([0004]) (2-2-3)「図1ないし図7に示す本発明の第1の実施の形態において、1は本発明の口呼吸をできないようにして鼻呼吸させることができる口呼吸防止具で、この口呼吸防止具1は上下の歯2、3の外周部を覆うように取付けることができる、人体に無害のポリエチレン、シリコーン、軟質レジン等の可撓性合成樹脂材製の弧状で中央部が小幅寸法となるように形成された前庭プレート4と、この前庭プレート4の背面ほぼ中央部に薄肉部5を介して一体形成された、ほぼ半円弧形状で舌6を口腔から突き出すのを防止することができる薄肉状の舌ストッパー片7と、前記前庭プレート4の前面ほぼ中央部に前方へ突出するように一体形成された、取付け時に指先でつかむことができるガイド片8とで構成されている。」([0008]) (2-2-4)「上記構成の口呼吸防止具1はガイド片8を持って口を開き、舌ストッパー片7を舌6の下部に位置するように口の中に入れるとともに、前庭プレート4を上下部の歯2、3の外周部を覆うように位置させて、上下部の歯2、3で舌ストッパー片7の根元部分を噛んだ状態で使用する。このような取付け状態では口呼吸を行なおうとしても、前庭プレート4で口の開口部がふさがれた状態となり、口呼吸が阻止され、鼻呼吸をせざるを得なくなる。」([0009]) (2-2-5)「なお、前記本発明の各実施の形態では前庭プレートを人体に無害の可撓性合成樹脂材で形成したものについて説明したが、本発明はこれに限らず、抗菌性合成樹脂材やキシリトールを含有あるいは付着させた合成樹脂材を用いてもよい。」([0019]) そして、(2-2-1)〜(2-2-5)の記載事項及び図面の図1の図示内容から、引用例2には、 「キシリトールが、合成樹脂材に含有あるいは付着されている上下の歯の外周部を覆うように取付けることができる前庭プレート4等からなる口呼吸防止具1」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比・判断 そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、 それらの機能及び構成からみて、後者の「活性剤」は、、前者の「体内又は口内に摂取可能な成分」に、後者の「マウスピース10」は、前者の「乳首部」に、後者の「小児用のおしゃぶり」は、前者の「乳幼児用のおしゃぶり」にそれぞれ相当している。 また、後者の「マウスピース10の外面を形成する弾性壁13に形成された空所14へ挿入されている」ことも、前者の「他の成分に包含された状態で乳首部の構成材料中又は乳首部表面に分散して含有されていること」も、上記したように、後者の「マウスピース10」が、前者の「乳首部」に相当することから、乳首部に有る点で共通する。 したがって、両者は、「体内又は口内に摂取可能な成分が、乳首部に有ることを特徴とする乳幼児用おしゃぶり」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 [相違点] 体内又は口内に摂取可能な成分が、前者においては、他の成分に包含された状態で乳首部の構成材料中又は乳首部表面に分散して含有されているのに対し、後者においては、前者の乳首部に相当するマウスピース10の外面を形成する弾性壁13に形成された空所14に挿入されている点。 そこで、この相違点について検討する。 本願補正発明と引用発明2とを対比すると、それらの機能及び構成からみて、後者の「キシリトール」は、前者の「体内又は口内に摂取可能な成分」に、後者の「合成樹脂材に含有あるいは付着されている」は、前者の「他の成分に包含された状態」にそれぞれ相当することから、引用発明2は、上記相違点における、体内又は口内に摂取可能な成分が、他の成分に包含された状態で、その構成材料中又はその表面に含有されている点を備えているものと認められる。 また、引用発明2の「前庭プレート4」は、「上下の歯の外周部を覆うように取付けることができる」ものであるから、該「前庭プレート4」と本願補正発明の「乳首部」とは、口内に入れて使用するものである点で共通している。 ところで、本願明細書の[0001]には、「本発明は、・・・(中略)・・・鼻呼吸を促進させることが可能であり、」と記載されているが、引用発明2の「口呼吸防止具1」における口呼吸防止の意味は、上記該「鼻呼吸を促進させること」と同意であることは明らかである。 してみると、引用発明2の「口呼吸防止具1」と本願補正発明の「おしゃぶり」は、体内又は口内に摂取可能な成分を含有するものを、口内に入れて使用するものである点で共通するとともに、「鼻呼吸を促進させる」という発明の機能においても共通点を有するものといえる。 そして、体内又は口内に摂取可能な成分が、他の成分に包含された状態で、その構成材料中又はその表面に含有されているものを分散させることは、本願出願前に周知の技術(要すれば、特開2001-335470号公報、特開2001-322928号公報及び特開2000-69913号公報を参照のこと。)である。 上記のことから、引用発明1における、体内又は口内に摂取可能な成分が、乳首部の外面を形成する弾性壁13に形成された空所14に挿入されている点に替え、上記引用発明2の含有を分散なる態様として本願補正発明のような発明特定事項とすることは、当業者が容易に成し得ることである。また、そうしたことによる作用効果についても当業者の予測し得る範囲内のものといえる。 したがって、本願補正発明は、上記引用例1および2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成15年1月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年11月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「体内又は口内に摂取可能な成分が、他の成分に包含された状態で乳首部に分散して含有されていることを特徴とする乳幼児用おしゃぶり。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、およびその記載事項は、前記 「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「乳首部」の限定事項である、乳首部の「構成材料中又は乳首部表面」との構成を省いたものである。 そうしてみると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに一部の発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1および2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1および2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1および2に記載された発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-03-24 |
結審通知日 | 2004-03-30 |
審決日 | 2004-04-27 |
出願番号 | 特願2002-230777(P2002-230777) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61J)
P 1 8・ 575- Z (A61J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 生越 由美 |
特許庁審判長 |
増山 剛 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 大元 修二 |
発明の名称 | 乳幼児用おしゃぶりおよびキシリトール入り乳幼児用おしゃぶり |
代理人 | 後藤 幸久 |
代理人 | 後藤 幸久 |