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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01F
管理番号 1114529
異議申立番号 異議2002-72912  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-02 
確定日 2005-01-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3289088号「コンバイン」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3289088号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3289088号発明についての出願は、昭和63年5月9日に出願された実願昭63-60904号を平成5年8月3日に特許出願(特願平5-212345号)に出願変更し、この特許出願の一部を平成9年3月14日に新たな特許出願(特願平9-82365号)とし、さらにこの出願の一部を平成9年9月24日に新たな特許出願(特願平9-278226号)とし、さらにこの出願の一部を平成10年6月19日に新たな特許出願(特願平10-189676号)とし、さらにこの出願の一部を平成11年4月2日に新たな特許出願としたものであり、その発明の特許権は平成14年3月22日に設定登録され、この特許に対し、異議申立人井関農機株式会社より特許異議の申立てがなされ、当審において取消理由を通知したところ、平成16年4月6日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正請求について
2-1.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである(下線部分が訂正個所である)。
(1)訂正事項a
平成13年7月30日に提出した手続補正書で補正した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された「軸(33)(34)回りにフィードチェン(5)を移動自在に設けると共に、前記軸(33)(34)に連結させるフレーム(27)側にフィードチェン(5)の駆動スプロケット(26)を取付け、また脱穀部(4)に内設させる扱胴(6)側部を覆う側部カバー(38)をフレーム(27)側に取付け、脱穀部(4)の上部カバー(18)と前記フィードチェン(5)の挾扼杆(21)とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェン(5)を、前記軸(33)を中心として外側方へ回動可能に構成したことを特徴とするコンバイン。」を、
「軸(33)(34)回りにフィードチェン(5)を移動自在に設けると共に、前記軸(33)(34)に連結させるフレーム(27)側にフィードチェン(5)の駆動スプロケット(26)を取付け、また脱穀部(4)に内設させる扱胴(6)側部を覆う側部カバー(38)をフレーム(27)側に取付け、前記脱穀部(4)に前記軸(33)(34)と、前記フレーム(27)を係脱可能なガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設け、脱穀部(4)の上部カバー(18)と前記フィードチェン(5)の挾扼杆(21)とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェン(5)を、前記軸(33)を中心として外側方へ回動可能に構成したことを特徴とするコンバイン。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0003】の記載を、
「【課題を解決するための手段】
然るに、本発明は、脱穀部一側で前後方向にフィードチェンを張設させるコンバインにおいて、軸回りにフィードチェンを移動自在に設けると共に、前記軸に連結させるフレーム側にフィードチェンの駆動スプロケットを取付け、また脱穀部に内設させる扱胴側部を覆う側部カバーをフレーム側に取付け、前記脱穀部に前記軸と、前記フレームを係脱可能なガイドレバーとを、側部カバーの前側と後側に設け、脱穀部の上部カバーと前記フィードチェンの挾扼杆とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェンを、前記軸を中心として外側方へ回動可能に構成したもので、フィードチェン(5)及び側部カバー(38)を外側方向に移動させて脱穀部(4)側面を大きく開放させることができ、従来のようにフィードチェン及び側部カバーを脱着する負担がなく、脱穀部側面に対しフィードチェン及び側部カバーを離反または接合させる操作を従来よりも軽々と行い得ると共に、従来のようにフィードチェン及び側部カバー越しに受網交換などを行う面倒がなく、脱穀部側面部での作業者の行動がフィードチェン及び側部カバーによって規制される不具合をなくし得、フィードチェンと駆動スプロケットを脱着させることなくフィードチェンの外側方向の移動を行い得、フィードチェンを外側方向に移動させて行う作業性の向上並びにフィードチェンに対する駆動スプロケット取付け精度の維持などを容易に図り得ると共に、側部カバーの外側方向の移動によって受網交換などの作業スペースを容易に確保し得るものである。」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許明細書の段落【0014】の記載を、
「【発明の効果】
以上実施例から明らかなように本発明は、脱穀部(4)一側で前後方向にフィードチェン(5)を張設させるコンバインにおいて、
軸(33)(34)回りにフィードチェン(5)を移動自在に設けると共に、前記軸(33)(34)に連結させるフレーム(27)側にフィードチェン(5)の駆動スプロケット(26)を取付け、また脱穀部(4)に内設させる扱胴(6)側部を覆う側部カバー(38)をフレーム(27)側に取付け、前記脱穀部(4)に前記軸(33)(34)と、前記フレーム(27)を係脱可能なガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設け、脱穀部(4)の上部カバー(18)と前記フィードチェン(5)の挾扼杆(21)とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェン(5)を、前記軸(33)を中心として外側方へ回動可能に構成したもので、フィードチェン(5)及び側部カバー(38)を外側方向に移動させて脱穀部(4)側面を大きく開放させることができ、従来のようにフィードチェン(5)及び側部カバー(38)を脱着する負担がなく、脱穀部(4)側面に対しフィードチェン(5)及び側部カバー(38)を離反または接合させる操作を従来よりも軽々と行うことができると共に、従来のようにフィードチェン(5)及び側部カバー(38)越しに受網(37)交換を行う面倒がなく、脱穀部(4)側面部での作業者の行動がフィードチェン(5)及び側部カバー(38)によって規制される不具合をなくすことができ、フィードチェン(5)と駆動スプロケット(26)を脱着させることなくフィードチェン(5)の外側方向の移動を行うことができ、フィードチェン(5)を外側方向に移動させて行う作業性の向上並びにフィードチェン(5)に対する駆動スプロケット(26)取付け精度の維持などを容易に図ることができると共に、側部カバー(38)の外側方向の移動によって受網(37)交換などの作業スペースを容易に確保できるものである。」と訂正する。

2-2.訂正の適否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、請求項1において、「前記脱穀部(4)に前記軸(33)(34)と、前記フレーム(27)を係脱可能なガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設け」の構成要件を付加し、軸(33)(34)とガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設けたものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この構成は、特許明細書の段落【0006】、【0007】及び【0008】に記載されているので、上記訂正事項aによる訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項b及びcについて
上記訂正事項b及びcは、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項b及びcによる訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3-1.本件発明
上記「2.訂正請求について」で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、訂正後の特許明細書における特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「脱穀部(4)一側で前後方向にフィードチェン(5)を張設させるコンバインにおいて、軸(33)(34)回りにフィードチェン(5)を移動自在に設けると共に、前記軸(33)(34)に連結させるフレーム(27)側にフィードチェン(5)の駆動スプロケット(26)を取付け、また脱穀部(4)に内設させる扱胴(6)側部を覆う側部カバー(38)をフレーム(27)側に取付け、前記脱穀部(4)に前記軸(33)(34)と、前記フレーム(27)を係脱可能なガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設け、脱穀部(4)の上部カバー(18)と前記フィードチェン(5)の挾扼杆(21)とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェン(5)を、前記軸(33)を中心として外側方へ回動可能に構成したことを特徴とするコンバイン。」

3-2.引用刊行物記載の発明
取消し理由に引用した特開昭61-12213号公報(以下「引用刊行物」という。)には、次の記載が認められる。
(1-a)「前側に穀稈供給口7を、後側に穀稈取出8を形成し、左右側の機壁の一部の上部に挟扼体17を、下部に供給チエン25をそれぞれ取付けたものにおいて、前記挟扼体17および供給チエン25を取付けた機壁の一部は、挟扼体17および供給チエン25ごと上方および下方にそれぞれ開くように軸着した脱穀装置の清掃装置。」(特許請求の範囲)、
(1-b)「1は脱穀室で、・・・内部には扱胴4が前後方向の回転軸5により軸架されている。」(2頁左上欄6〜10行)
(1-c)「前記上側扱胴カバー11は内蓋12、外蓋13、前後取付杆14、上下動杆16、挟扼体17ごと軸10を中心に上方に回動して脱穀室1の左側を大きく開口させる。
19は下側扱胴カバーであり、上側扱胴カバー11と同様に内蓋20と外蓋21とよりなり、下側扱胴カバー19はケース22に対して軸23で軸着されており、下側扱胴カバー19の上部はレール24及びチエン25が掛け回されている。
内蓋20の上部は扱胴室の方に屈曲して扱胴室カバーを形成し、その上端に外方に突出する支持腕26を設け、支持腕26に前記レール24を固定し、さらに支持腕26の突出端に外蓋21を止ネジ27により止着する。外蓋21は下部に軸28で軸着し、上部は止ネジ27で支持腕26に固着されている。
内蓋20にはメタル29が取付けられ、メタル29の内側には歯車30が固定され、メタル29の外側にはスプロケット31が固定され、スプロケット31によりチエン25を回転させる。
前記下側扱胴カバー19は第1図の位置から第2図の位置の間開閉自在であり、第1図のように脱穀室1を包囲する起立位置になると歯車30が噛合う歯車32をケース22側に取付ける。33は歯車32を回転させる軸で、ケース22を横断し端部にプーリー34を取付ける。歯車30は下側扱胴カバー19が第2図のように開くと歯車32との係合が解除される。」(2頁左下欄1行〜同頁右下欄15行)
(1-d)「上側扱胴カバー11を軸10を中心に上方に回動させ、且つ、下側扱胴カバー19を軸23を中心に回動させると、第2図に示したように、脱穀室1の左側は大きく開放する。
そこで、下網3を矢印イのように引き抜けば、簡単に引き抜くことができるので、大きく開いた左側より各部を清掃できるものである。」(3頁右上欄4〜11行)
上記記載及び図面の記載からみて、引用刊行物には、
脱穀室1の内部に扱胴4が軸架され、脱穀室1一側で前後方向に供給チエン25を張設させる脱穀装置において、下側扱胴カバー19は内蓋20と外蓋21とよりなり、下側扱胴カバー19の上部には、レール24及び供給チエン25が掛け回されており、下側扱胴カバー19はケース22に対して軸23で軸着されており、内蓋20の上部は扱胴室の方に屈曲して扱胴室カバーを形成しており、内蓋20にはメタル29が取付けられ、メタル29の外側にはスプロケット31が固定され、スプロケット31により供給チエン25を回転させ、上側扱胴カバー11を軸10を中心に挟扼体17ごと上方に回動させ、且つ、下側扱胴カバー19を軸23を中心に回動させ、脱穀室1の左側を大きく開放できる脱穀装置(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

3-3.対比・判断
本件発明と引用発明とを対比する。
本件発明は、その発明の対象が「コンバイン」であるが、その実質的な構成は「脱穀装置」であり、引用発明は、その発明の対象が「脱穀装置」であるが、その「脱穀装置」がコンバインの脱穀装置として利用できることは明らかであり、実質的な相違があるとは認められない。
また、引用発明の「脱穀室1」が本件発明の「脱穀部(4)」に対応し、同様に、「軸23」が「軸(33)(34)」に、「供給チエン25」が「フィードチェン(5)」に、「扱胴4」が「扱胴(6)」に、「スプロケット31」が「駆動スプロケット(26)」に、「扱胴室カバー」が「側部カバー(38)」に、「挟扼体17」が「挟扼杆(21)」に、「上側扱胴カバー11」が「上部カバー(18)」に、それぞれ対応している。
そうすると、本件発明と引用発明とは、
脱穀部一側で前後方向にフィードチェンを張設させるコンバインにおいて、軸回りにフィードチェンを移動自在に設けると共に、前記軸に連結させるフレーム側にフィードチェンの駆動スプロケットを取付け、また脱穀部に内設させる扱胴側部を覆う側部カバーをフレーム側に取付け、脱穀部の上部カバーと前記フィードチェンの挾扼杆とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェンを、前記軸を中心として外側方へ回動可能に構成したコンバインで一致しているが、次の点で構成が相違する。
相違点
本件発明が、「脱穀部(4)に前記軸(33)(34)と、前記フレーム(27)を係脱可能なガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設け」ているのに対し、引用発明は、前記構成が不明である点。
上記相違点について検討する。
本件発明は、「軸(33)(34)」が側部カバー(38)の後側に設けられ、「ガイドレバー(49)」が側部カバー(38)の前側に設けられたものに限定されているわけではなく、また、「軸(33)(34)」が縦方向のものに限定されてわけでもない。本件発明は、「軸(33)(34)」と「ガイドレバー(49)」とが側部カバー(38)の前側と後側に設けられていて、フィードチェン(5)が、前記軸(33)(34)を中心として外側方へ回動可能に構成されていればよいものであり、引用発明のようなものをも含むものである。
そして、引用発明においても、下側扱胴カバー19を係止(固定)する手段は当然備えており、また、案内されながら係止する係脱自在なロック装置を前側と後側に設けることは周知であり(例えば、実願昭56-65248号(実開昭57-177433号)のマイクロフイルム、実公昭61-15706号公報参照。)、引用発明において、ロック装置と軸23とを扱胴室カバーの前側と後側に設け、上記相違点における本件発明のように構成することは当業者が容易にできることである。
そして、本件発明が奏する効果は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術から予測できる程度のことであって格別顕著なものではない。
したがって、本件発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コンバイン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 脱穀部(4)一側で前後方向にフィードチ ェン(5)を張設させるコンバインにおいて、軸(33)(34)回りにフィードチェン(5)を移動自在に設けると共に、前記軸(33)(34)に連結させるフレーム(27)側にフィードチェン(5)の駆動スプロケット(26)を取付け、また脱穀部(4)に内設させる扱胴(6)側部を覆う側部カバー(38)をフレーム(27)側に取付け、前記脱穀部(4)に前記軸(33)(34)と、前記フレーム(27)を係脱可能なガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設け、脱穀部(4)の上部カバー(18)と前記フィードチェン(5)の挾扼杆(21)とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェン(5)を、前記軸(33)を中心として外側方へ回動可能に構成したことを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は刈取部で刈取った穀稈を脱穀処理するようにしたコンバインに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来、特開昭61-12213号公報に示す如く、脱穀部の側方を開放させて扱室及び扱胴の保守点検や受網の交換などを行う場合、支点軸を中心にフィードチェン及び扱胴側部カバーを移動させて脱穀部側面を開放させる技術がある。前記従来技術は、フィードチェン及び扱胴側部カバーを取外す面倒な作業手間を省けるが、脱穀部側面外方側にフィードチェン及び扱胴側部カバーを水平に倒伏させて開放させるから、扱胴の保守点検または受網の交換などをフィードチェン及び扱胴側部カバー上方空間から行う必要があり、作業者が脱穀部にフィードチェン及び扱胴側部カバー越しに接近して作業を行う面倒があると共に、作業終了時にフィードチェンを持上げて元の位置に戻す必要があり、重いフィードチェンを持上げる面倒がある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
然るに、本発明は、脱穀部一側で前後方向にフィードチェンを張設させるコンバインにおいて、軸回りにフィードチェンを移動自在に設けると共に、前記軸に連結させるフレーム側にフィードチェンの駆動スプロケットを取付け、また脱穀部に内設させる扱胴側部を覆う側部カバーをフレーム側に取付け、前記脱穀部に前記軸と、前記フレームを係脱可能なガイドレバーとを、側部カバーの前側と後側に設け、脱穀部の上部カバーと前記フィードチェンの挾扼杆とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェンを、前記軸を中心として外側方へ回動可能に構成したもので、フィードチェン(5)及び側部カバー(38)を外側方向に移動させて脱穀部(4)側面を大きく開放させることができ、従来のようにフィードチェン及び側部カバーを脱着する負担がなく、脱穀部側面に対しフィードチェン及び側部カバーを離反または接合させる操作を従来よりも軽々と行い得ると共に、従来のようにフィードチェン及び側部カバー越しに受網交換などを行う面倒がなく、脱穀部側面部での作業者の行動がフィードチェン及び側部カバーによって規制される不具合をなくし得、フィードチェンと駆動スプロケットを脱着させることなくフィードチェンの外側方向の移動を行い得、フィードチェンを外側方向に移動させて行う作業性の向上並びにフィードチェンに対する駆動スプロケット取付け精度の維持などを容易に図り得ると共に、側部カバーの外側方向の移動によって受網交換などの作業スペースを容易に確保し得るものである。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1はフィードチェン部の側面説明図、図2はコンバインの全体側面図、図3は同平面図であり、図中(1)は走行クローラ(2)を装設するトラックフレーム、(3)は前記トラックフレーム(1)上に架設する機台、(4)はフィードチェン(5)を左側に張架し扱胴(6)及び処理胴(7)を内蔵している脱穀部、(8)は刈刃及び穀稈搬送機構などを備える刈取部、(9)は排藁チェン(10)終端を臨ませる排藁処理部、(11)は運転席(12)及び運転操作部(13)を備える運転台、(14)は機台(3)の右側後部に配備してエンジン(15)を内設するエンジン部、(16)は前記エンジン部(14)前方に配設して脱穀部(4)からの穀粒を溜める穀粒タンク、(17)は前記穀粒タンク(16)内の穀粒を外側に取出す排出オーガであり、連続的に刈取り・脱穀作業を行うように構成している。
【0005】
図4乃至図6に示す如く、前記脱穀部(4)の上側壁カバー(18)を上方に開放自在に設けると共に、前記フィードチェン(5)を脱穀部(4)左側方に開放自在に設けるもので、前記カバー(18)の支柱(19)にフレーム(20)を介して挾扼杆(21)を連結支持させ、前記カバー(18)の基端を脱穀本体側の固定ブラケット(22)に支点軸(23)を介して開閉自在に支持させている。なお、(24)は挾扼杆(21)の外側を覆う挾扼杆カバー、(25)は前記カバー(18)を閉封保持するロック部材である。
【0006】
また、前部回転体である駆動スプロケット(26)を下部チェンレール(27)前端に備えると共に、下部及び上部チェンレール(27)(28)の後端に固設する巻付防止板である上部枢着板(29)に後部回転体である従動スプロケット(30)を備え、各スプロケット(26)(30)にフィードチェン(5)を張設させるもので、前記枢着板(29)と、該枢着板(29)下方に支柱(31)を介して連結固定する下部枢着板(32)とに、上下の水平回動支点軸(33)(34)をそれぞれ固設し、脱穀本体側の固定ブラケット(35)(36)に前記支点軸(33)(34)を介してフィードチェン(5)を側方に開放可能に支持するように構成している。
【0007】
さらに、前記扱胴(6)下部のクリンプ網(37)の外方側端部(37a)に下端部を圧接させる扱胴側部カバー(38)を、前記チェンレール(27)(28)に取付フレーム(39)(40)を介して一体連結すると共に、前記フィードチェン(5)のテンションローラ(41)及びスプロケット(42)をガイド板(42a)などを介して前記チェンレール(27)に取付け、前記フィードチェン(5)を側方開放時、側部カバー(38)・テンションローラ(41)・スプロケット(42)も側方に一体的に回動させるように構成している。
【0008】
そして、前記フィードチェン(5)を閉動作時、前記側部カバー(38)の前側板(38a)の係止ピン(43)を脱穀前側板(44)にロック板(45)を介し係合保持させるもので、前側板(44)に支軸(46)・ストッパピン(47)及びバネ(48)を介してロック板(45)が位置保持され、側部カバー(38)が閉封されるとき、ロック板(45)に固設するガイドレバー(49)に前記ピン(43)が当接し、バネ(48)に抗してロック板(45)を下方に押し下げ、ロック板(45)のピン係合溝(50)に前記ピン(43)が係合し、側部カバー(38)及びフィードチェン(5)を閉位置に固定保持するように構成している。
【0009】
また、前記脱穀部(4)本体側に固設する駆動ケース(51)に、前記フィードチェン(5)を駆動する駆動軸(52)を備えるもので、該駆動軸(52)を入力軸(53)にギヤ(54)を介し連結すると共に、前記駆動スプロケット(26)のスプロケット軸(55)にリミットクラッチ(56)を介して継断自在に前記駆動軸(52)を結合連結させ、リミットクラッチ(56)のクラッチ爪による駆動伝達方式とすることにより、従来のピン結合方式に比べ、部品点数を削減させ耐久性向上を図るもので、脱穀用穀稈を搬送するフィードチェン(5)を脱穀部(4)側方に開放可能に設け、フィードチェン(5)を縦軸である水平回動支点軸(33)(34)回りに回転自在に脱穀部(4)の側部に設けると共に、本機側の駆動部である駆動軸(52)に着脱自在に連結させる伝動接続部であるスプロケット軸(55)を前記水平回動支点軸(33)(34)と離れた側に設けている。
【0010】
さらに、前記フィードチェン(5)の後端側を支持する前記支点軸(33)(34)は、前記従動スプロケット(30)のスプロケット軸(57)より寸法(t)後部位置で、フィードチェン(5)より脱穀本体側寄りに配設していて、フィードチェン(5)を開放時、該チェン(5)の最後端部である枢着板(29)(32)の脱穀本体側への入り込み代を最小限にし、機体左右全巾を一定寸法内に抑制しながら脱穀本体とフィードチェン(5)の干渉を防止するように構成するもので、脱穀用穀稈を搬送するフィードチェン(5)を脱穀部(4)側方に開放可能に設ける構造において、脱穀部(4)側方に開放するフィードチェン(5)の水平回動支点軸(33)(34)を、フィードチェン(5)の端部を支持する前記スプロケット(30)のスプロケット軸(57)よりもさらに端部外方位置でフィードチェン(5)よりも脱穀本体寄りに設けている。
【0011】
上記から明らかなように、脱穀部(4)一側で前後方向にフィードチェン(5)を張設させるコンバインにおいて、縦軸である水平回動支点軸(33)(34)回りにフィードチェン(5)を水平方向に回動自在に設けると共に、前記水平回動支点軸(33)(34)に連結させるフレームである下部チェンレール(27)にフィードチェン(5)の駆動スプロケット(26)を軸支させ、また脱穀部(4)に内設させる扱胴(6)側部を覆う扱胴側部カバー(38)を下部チェンレール(27)を介して水平回動支点軸(33)(34)に取付け、脱穀部(4)の上部カバーである上側壁カバー(18)と前記フィードチェン(5)の挾扼杆(21)とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェン(5)を、脱穀部(4)後方に立設した支持部材である支柱(31)の軸(33)を中心として外側方へ回動可能に構成している。そして、フィードチェン(5)及び扱胴側部カバー(38)を外側方向に移動させて脱穀部(4)側面を大きく開放させ、従来のようにフィードチェン(5)及び扱胴側部カバー(38)を下げ上げ操作して脱着する負担がなく、脱穀部(4)側面に対しフィードチェン(5)及び扱胴側部カバー(38)を離反または接合させる操作を従来よりも軽々と行えると共に、従来のようにフィードチェン(5)及び扱胴側部カバー(38)越しに受網であるクリンプ網(37)交換などを行う面倒がなく、脱穀部(4)側面部での作業者の行動がフィードチェン(5)及び扱胴側部カバー(38)によって規制される不具合をなくし、また水平回動支点軸(33)(34)に駆動スプロケット(26)を設け、フィードチェン(5)と駆動スプロケット(26)を脱着させることなくフィードチェン(5)の外側方向の移動を行い、フィードチェン(5)を外側方向に移動させて行う作業性の向上並びにフィードチェン(5)に対する駆動スプロケット(26)取付け精度の維持などを図ると共に、扱胴側部カバー(38)の外側方向の移動によってクリンプ網(37)などの受網交換作業スペースを確保し、かつ水平回動支点軸(33)(34)及び駆動スプロケット(26)を扱胴側部カバー(38)の前後に配置させて伝動機構並びに水平回動支点軸(33)(34)などの取付け構造の簡略化及び支持強度向上などを図る。
【0012】
本実施例は上記の如く構成するものにして、前記フィードチェン(5)を開放自在に支持する回動支点軸(33)(34)を、前記従動スプロケット(30)のスプロケット軸(57)より寸法(t)後部位置で、フィードチェン(5)より脱穀本体側寄りに配設するものであるから、前記フィードチェン(5)を開放時に最後端となる枢着板(29)(32)後端の脱穀本体側への入り込み代が最小となり、フィードチェン(5)を脱穀本体外方に張出させることなく機体全巾を一定寸法内に抑制した状態で干渉など不都合のない安全な開放作業を行える。
【0013】
また、前記フィードチェン(5)を回動開放時、前記駆動スプロケット(26)にフィードチェン(5)が巻回された状態でチェンレール(27)(28)などと一体的に開放されるものであるから、フィードチェン(5)開放操作を容易に行えて作業能率に秀れ、しかもフィードチェン(5)開放時、前記扱胴側部カバー(38)も同時に外方に引出され、脱穀部(4)側面が開放状態となり、扱室内の点検保守やクリンプ網(37)の交換作業を至便に行えるものである。
【0014】
【発明の効果】
以上実施例から明らかなように本発明は、脱穀部(4)一側で前後方向にフィードチェン(5)を張設させるコンバインにおいて、軸(33)(34)回りにフィードチェン(5)を移動自在に設けると共に、前記軸(33)(34)に連結させるフレーム(27)側にフィードチェン(5)の駆動スプロケット(26)を取付け、また脱穀部(4)に内設させる扱胴(6)側部を覆う側部カバー(38)をフレーム(27)側に取付け、前記脱穀部(4)に前記軸(33)(34)と、前記フレーム(27)を係脱可能なガイドレバー(49)とを、側部カバー(38)の前側と後側に設け、脱穀部(4)の上部カバー(18)と前記フィードチェン(5)の挾扼杆(21)とを一体的に上方へ移動可能に構成するとともに、前記フィードチェン(5)を、前記軸(33)を中心として外側方へ回動可能に構成したもので、フィードチェン(5)及び側部カバー(38)を外側方向に移動させて脱穀部(4)側面を大きく開放させることができ、従来のようにフィードチェン(5)及び側部カバー(38)を脱着する負担がなく、脱穀部(4)側面に対しフィードチェン(5)及び側部カバー(38)を離反または接合させる操作を従来よりも軽々と行うことができると共に、従来のようにフィードチェン(5)及び側部カバー(38)越しに受網(37)交換を行う面倒がなく、脱穀部(4)側面部での作業者の行動がフィードチェン(5)及び側部カバー(38)によって規制される不具合をなくすことができ、フィードチェン(5)と駆動スプロケット(26)を脱着させることなくフィードチェン(5)の外側方向の移動を行うことができ、フィードチェン(5)を外側方向に移動させて行う作業性の向上並びにフィードチェン(5)に対する駆動スプロケット(26)取付け精度の維持などを容易に図ることができると共に、側部カバー(38)の外側方向の移動によって受網(37)交換などの作業スペースを容易に確保できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィードチェン部の側面説明図。
【図2】コンバインの全体側面図。
【図3】同平面図。
【図4】脱穀部の断面説明図。
【図5】フィードチェン部の平面説明図。
【図6】同部分説明図。
【符号の説明】
(4) 脱穀部
(5) フィードチェン
(6) 扱胴
(18) 上側壁カバー(上部カバー)
(26) 駆動スプロケット
(27) 下部チェンレール(フレーム)
(31) 支柱(支持部材)
(33)(34) 水平回動支点軸(縦軸)
(38) 扱胴側部カバー
(49) ガイドレバー
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-15 
出願番号 特願平11-95780
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡部 葉子
川島 陵司
登録日 2002-03-22 
登録番号 特許第3289088号(P3289088)
権利者 ヤンマー農機株式会社
発明の名称 コンバイン  

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