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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1114533
異議申立番号 異議2003-73219  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-24 
確定日 2005-01-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3433587号「表示装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3433587号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3433587号の発明は、平成7年9月20日に特許出願され、平成15年5月30日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、山内 淑子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月2日に訂正請求がなされた後、再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年12月14日に、平成16年7月2日付けの訂正請求を取り下げるとともに、新たに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1の「光学系とを備え、その光学素子の前方に」を、「光学系とを備え、その出射手段は観察者が視認可能な上下若しくは左右方向の瞳の配置領域に対応して所定の光線出射角に画像表示光線を出射し、その光学素子の前方に」と訂正する。
これに伴い、特許明細書の段落【0007】の「光学系とを備え、その光学素子の前方に」を、「光学系とを備え、その出射手段は観察者が視認可能な上下若しくは左右方向の瞳の配置領域に対応して所定の光線出射角に画像表示光線を出射し、その光学素子の前方に」と訂正する。
b.特許請求の範囲の請求項1の「その光学系により画像表示光線の光路を変更する」を、「その光学素子は凹面状の反射面で画像表示光線を反射することで、画像表示光線の光路を変更する」と訂正する。
これに伴い、特許明細書の段落【0007】の「その光学系により画像表示光線の光路を変更する」を、「その光学素子は凹面状の反射面で画像表示光線を反射することで、画像表示光線の光路を変更する」と訂正する。
c.特許請求の範囲の請求項1の「その光学素子は、画像表示光線の光路を変更するプリズムと」を、「前記光学素子は、2つのプリズムからなるものであって、観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とが形成されるとともに」と訂正する。
これに伴い、特許明細書の段落【0007】の「その光学素子は、画像表示光線の光路を変更するプリズムと」を、「前記光学素子は、2つのプリズムからなるものであって、観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とが形成されるとともに」と訂正する。
d.特許請求の範囲の請求項1の2か所の字句「そのプリズム」を「観察者側のプリズム」と訂正する。
これに伴い、特許明細書の段落【0007】の字句「そのプリズム」を、「観察者側のプリズム」と訂正する。
e.特許請求の範囲の請求項1の2か所の字句「別のプリズム」を「他方のプリズム」と訂正する。
これに伴い、特許明細書第3頁の段落【0007】の字句「別のプリズム」を、「他方のプリズム」と訂正する。
f.特許請求の範囲の請求項1の「前面側に貼り合わされる」を、「反射面側に貼り合わされる」と訂正する。
これに伴い、特許明細書の段落【0007】の「前面側に貼り合わされる」を、「反射面側に貼り合わされる」と訂正する。

(2)[訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否]
上記訂正事項aの特許請求の範囲の請求項1における訂正は、観察者が視認可能な瞳の配置領域と画像表示光線との関係を明確化したものであり、特許明細書の段落【0019】に「観察対象の虚像の位置Pはドライバーの瞳13の中心から前方に2mである。また、観察対象の虚像の大きさに対応する表示視野は、上下画角が2.26°、左右画角が3.0°である。また、各瞳サイズは上下方向に40mm、左右方向に110mmであり、この瞳サイズの範囲に瞳があれば、上記表示視野の虚像を欠けることなく観察できる。また、画像表示面の頂点における法線と中心光線とのなす光線出射角は15°である。」という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項aの発明の詳細な説明の記載における訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
上記訂正事項bの特許請求の範囲の請求項1における訂正は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「その光学系により画像表示光線の光路を変更する」をより下位概念である「その光学素子は凹面状の反射面で画像表示光線を反射することで、画像表示光線の光路を変更する」と限定しようとするものである。当該「その光学素子は凹面状の反射面で画像表示光線を反射することで、画像表示光線の光路を変更する」は、図8より一義的に導き出されるものである。また、上記訂正事項bの発明の詳細な説明の記載における訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
上記訂正事項cの特許請求の範囲の請求項1における訂正は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「その光学素子は、画像表示光線の光路を変更するプリズムと」をより下位概念である「前記光学素子は、2つのプリズムからなるものであって、観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とが形成されるとともに」と限定しようとするものである。当該「前記光学素子は、2つのプリズムからなるものであって、観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とが形成されるとともに」は、特許明細書の段落【0019】の「以下の表1に、画像表示面6、各屈折面3a、14a、反射面3b、14b、およびドライバーの瞳13の、曲率半径、頂点位置、法線角度、屈折率およびアッベ数を示す。なお、各頂点位置は、ドライバーの瞳13の中心を原点として、前後方向をZ軸、上下方向をX軸とし、後方および上方に向かう方向が正の座標により示す。また、法線方向は、各頂点位置における法線の方向を、後方に向かう方向を零として示す。」という記載、及び図1、図8、表1から一義的に導き出されるものである。また、上記訂正事項cの発明の詳細な説明の記載における訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
上記訂正事項dの特許請求の範囲の請求項1における訂正は、特許明細書の特許請求の範囲に記載される2つのプリズムの区別を明確化したものであり、当該「観察者側のプリズム」は、図1より一義的に導き出されるものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、上記訂正事項dの発明の詳細な説明の記載における訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
上記訂正事項eの特許請求の範囲の請求項1における訂正は、上記訂正事項dの「観察者側のプリズム」との区別を明確化したものであり、当該「他方のプリズム」は、図1より一義的に導き出されるものであり、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。また、上記訂正事項eの発明の詳細な説明の記載における訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
上記訂正事項fの特許請求の範囲の請求項1における訂正は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された2つのプリズムである「観察者側のプリズム」と「他方のプリズム」との位置関係を明確化したものであり、図1より一義的に導き出されるものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、上記訂正事項fの発明の詳細な説明の記載における訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
したがって、上記訂正事項a〜fは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項、第3項の規定に適合するものである。

(3)[結び]
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する特許法126条第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)[申立ての理由の概要]
特許異議申立人山内 淑子は、下記甲第1号証を提出し、請求項1に係る発明の特許は、甲第1号証記載の発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、また、請求項1に係る発明の特許は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべき旨主張している。
甲第1号証:特開平2-297516号公報

(2)[本件発明]
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「画像表示光線の出射手段と、観察者の前方に配置される半透明の光学素子を有する光学系とを備え、その出射手段は観察者が視認可能な上下若しくは左右方向の瞳の配置領域に対応して所定の光線出射角に画像表示光線を出射し、その光学素子の前方に観察対象の虚像を形成するように、その光学素手は凹面状の反射面で画像表示光線を反射することで、画像表示光線の光路を変更する表示装置において、前記光学素子は、2つのプリズムからなるものであって、観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とが形成されるとともに、観察者側のプリズムの反射面側に貼り合わされる他方のプリズムとを有し、その光学素子を透過する光の観察者側のプリズムにおける屈折と他方のプリズムにおける屈折とは打ち消し合うことを特徴とする画像表示装置。」

(3)[引用刊行物記載の発明]
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物
刊行物1:特開平2-297516号公報(甲第1号証)
刊行物1は、ヘルメットディスプレイ装置に係るものであって、3頁左下欄4行〜11行には、
「第1図に従えば、視準光学システムは、同一光路に沿って順番に光映像の発生装置又は光源1、対物視準レンズ又は視準器2、第1の放物面鏡4及び第2の放物面鏡5から成る。鏡4及び5は同焦点システム(confocal system)を形成する。それらの共通焦点Fは第1図に示されている。鏡4は全反射性であり、鏡5は外部風景から来る放射を通過させるために半透明である。」、
が記載され、また4頁右下欄11行〜15行には、
「鏡4及び5の作成を容易にするために、プレート10は、第4図に示されるように6つの平面によって境界をつけられた多面体型の容積を全体として形成するべく1つの中央要素及び2つの末端要素10T1、10T2によって適当に形成される。」
が記載されている。

(4)[対比・判断]
異議申立人は、異議申立書中で特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、主張するが、異議申立書の内容から判断すると、該条文は、特許法第29条第1項第3号とするのが正しいと認められるから、異議申立書中の「特許法第29条第1項」とあるのは「特許法第29条第1項第3号」と読み替えて以下に検討すると、
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明が具備する「観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とが形成される」という構成を具備していない。
しかも本件発明は、前記構成を有することで、明細書記載の「特殊非球面を用いることなく、例えば球面や円筒面のような製造容易な面を用いた場合であっても、瞳サイズを広くした場合の各瞳位置における虚像の歪みを小さくできる。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明は、刊行物1に記載された発明と同一であるとも、刊行物1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものとも認められない。
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項のいずれの規定にも違反してなされたものではない。

(5)[結び]
したがって、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像表示光線の出射手段と、観察者の前方に配置される半透明の光学素子を有する光学系とを備え、その出射手段は観察者が視認可能な上下若しくは左右方向の瞳の配置領域に対応して所定の光線出射角に画像表示光線を出射し、その光学素子の前方に観察対象の虚像を形成するように、その光学素子は凹面状の反射面で画像表示光線を反射することで、画像表示光線の光路を変更する表示装置において、前記光学素子は、2つのプリズムからなるものであって、観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とが形成されるとともに、観察者側のプリズムの反射面側に貼り合わされる他方のプリズムとを有し、その光学素子を透過する光の観察者側のプリズムにおける屈折と他方のプリズムにおける屈折とは打ち消し合うことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両や船舶等の乗物に搭載されるヘッドアップディスプレイに適した表示装置に関し、特に、低視野(10°以下)で広い瞳サイズを有する非同軸ヘッドアップディスプレイに適したものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばナビゲーション情報を車両のドライバーに提供する表示装置として、そのナビゲーション情報に対応する画像の表示器と、ドライバーの前方に配置される光路変更素子を有する光学系とを備えるヘッドアップディスプレイ装置を用いることが提案されている。
【0003】
例えば、図22に示すように、その表示器の画像表示面101から出射される画像表示光線の光路を、その光学系を構成する光学素子の反射面102とコンバイナ103とにより変更することで、その画像表示光線をドライバーの瞳104に導き、そのコンバイナーの前方に形成される虚像をドライバーに視認させる。なお、図22における画像表示光線は、観察者の瞳104に至る光線の中で画像表示面101の頂点から出射される中心光線Lを示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、前後方向をX軸、上下方向をZ軸、XZ平面において光路変更素子に入射する画像表示光線と光路変更素子から出射する画像表示光線とのなす角を非同軸角θ、その中心光線Lが画像表示面の頂点における法線となす角を光線出射角ψとした場合、その非同軸角θは瞳104の位置に応じて変化するため、虚像を視認可能な瞳104の配置領域に対応する瞳サイズを広くすると、非同軸角θの最大値は大きくなる。また、その非同軸角θが大きくなると光線出射角ψも大きくなる。しかし、その画像表示面101から出射される画像表示光線の強さは、その光線出射角ψが零の場合に最も強く、その光線出射角ψが大きくなると弱くなる。そのため、瞳サイズを広くすると、瞳の位置によっては視認される虚像が暗くなるという問題があった。
【0005】
また、その虚像の結像位置がドライバーに近接していると、車両前方の実際の景色を注視している状態から虚像を認識するまでに時間を要し、運転上好ましくない。そのため、その虚像の結像位置をドライバーの前遠方とすることが要求される。そこで、その画像表示面と光学系を構成する光学素子との間の光学距離、光学素子相互間の光学距離、およびコンバイナーとドライバーの瞳との間の光学距離を長くし、画像表示光線の光路長を長くすることが考えられる。しかし、車両におけるドライバーの前方スペースは制限されているため、そのような光学距離を長くすると表示装置が大型化し、車両に搭載するのが困難になる。また、その光学系を構成する光学素子の反射面や回折面として、トリック面や多項式非球面等により表される特殊非球面を用い、その虚像を明瞭に結像できる位置を決定するパラメータを多くすることで、画像表示光線の光路長を調整し、その虚像をドライバーの前遠方において明瞭に結像させることが考えられる。しかし、そのような特殊非球面を有する光学素子は製造が困難であり、特に、瞳サイズを広くした場合、各瞳位置において虚像の歪みを小さくするには特殊非球面を有する光学素子を複数用いる必要があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決することのできる表示装置を提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像表示装置は、画像表示光線の出射手段と、観察者の前方に配置される半透明の光学素子を有する光学系とを備え、その出射手段は観察者が視認可能な上下若しくは左右方向の瞳の配置領域に対応して所定の光線出射角に画像表示光線を出射し、その光学素子の前方に観察対象の虚像を形成するように、その光学素子は凹面状の反射面で画像表示光線を反射することで、画素表示光線の光路を変更する表示装置において、前記光学素子は、2つのプリズムからなるものであって、観察者側のプリズムは、球面若しくは円筒面からなる前記反射面と該反射面より観察者側には前記配置領域内の各瞳位置から見た前記出射手段の画像表示面の各点虚像の収差を小さくするよう前記反射面より曲率半径の小さい球面若しくは円筒面からなる凹面状の屈折面とか形成されるとともに、観察者側のプリズムの反射面側に貼り合わされる他方のプリズムとを有し、その光学素子を透過する光の観察者側のプリズムにおける屈折と他方のプリズムにおける屈折とは打ち消し合うことを特徴とする。
【0008】
本発明の構成によれば、プリズムにより画像表示光線を屈折させることで、屈折させない場合に比べ、光線出射角を大きくすることなく非同軸角を大きくすることが可能になる。これにより、瞳サイズを広くした場合でも、各瞳位置において明るい虚像を視認できる。
【0009】
また、画像表示面から相異なる瞳位置それぞれに致る画像表示光線の光路をプリズムにより変更することで、その各光路長をプリズムにより調整できる。これにより、光学系を構成する光学素子の反射面や回折面として特殊非球面を用いることなく、例えば球面や円筒面のような製造容易な面を用いた場合であっても、瞳サイズを広くした場合の各瞳位置における虚像の歪みを小さくできる。すなわち、光学系を構成する光学素子として製造容易なものを用いて、瞳サイズを広く(例えば上下40mm以上、左右100mm以上)でき、且つ、各瞳位置において虚像の歪みを小さくできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、車両用ヘッドアップディスプレイを構成する第1実施形態の表示装置1を示し、画像表示器2と、光学系とを備え、その光学系は、第1光学素子3と、この第1光学素子3に対向する第2光学素子4とにより構成されている。
【0011】
その画像表示器2はダッシュボード7に内蔵され、例えば透過型液晶表示器により構成され、後ろ向きの画像表示面6からナビゲーション情報等に対応する画像の表示光線を後方に向かって出射する。なお、図1における画像表示光線は、観察者の瞳13に至る光線の中で画像表示面6の頂点から出射される中心光線Lを示す。
【0012】
その第1光学素子3はダッシュボード7に内蔵される第1プリズムであって、前後に相対向する屈折面3aと反射面3bとを有し、画像表示光線は屈折面3aを介して空気中から第1プリズム3内に入射し、その入射時に屈折し、次に反射面3bにおいて反射し、次に屈折面3aを介して第1プリズム3から空気中に出射し、その出射時に屈折する。この第1プリズム3により光路変更された画像表示光線は、ダッシュボード7に形成された開口を覆う透明板9を介して第2光学素子4に至る。
【0013】
その第2光学素子4は、ダッシュボード7上に配置されることでドライバー(観察者)の前方に配置される第2プリズム(光路変更素子)14を有する。その第2プリズム14は、前後に相対向する屈折面14aと反射面14bとを有し、画像表示光線は屈折面14aを介して空気中から第2プリズム14内に入射し、その入射時に屈折し、次に反射面14bにおいて反射し、次に屈折面14aを介して第2プリズム14から空気中に出射し、その出射時に屈折する。この第2プリズム14により光路変更された画像表示光線は、第2光学素子4の前方からの光と共にドライバーの瞳13に導かれる。これにより、その第2光学素子4の前方位置Pの虚像をドライバーは視認する。なお、その第2光学素子4は、第2プリズム14の前面側に貼り合わされている第3プリズム15を有し、第2光学素子4を透過する光の第2プリズム14における屈折と第3プリズム15における屈折とは打ち消しあい、第2光学素子4を透過する光は実質的に直進するものとされている。
【0014】
図2は、車両用ヘッドアップディスプレイを構成する第2実施形態の表示装置21を示す。上記第1実施形態との相違は、第2光学素子4を第2、第3プリズム14、15に代えてコンバイナ22により構成し、そのコンバイナ22の光路変更面22aにおける反射により画像表示光線の光路を変更する。また、画像表示面6を左右横向きに配置し、その画像表示面6から横方向に向かって出射された画像表示光線を第1プリズム3に導く反射面23aを有するミラー23を配置している。他は第1実施形態と同様で、同一部分は同一符号で示す。
【0015】
図3は、車両用ヘッドアップディスプレイを構成する第3実施形態の表示装置31を示す。上記第1実施形態との相違は、第2光学素子4を第2、第3プリズム14、15に代えてコンバイナ22により構成し、そのコンバイナ22における光路変更面22aにおける反射により画像表示光線の光路は変化する。また、画像表示面6を前向きに配置し、その画像表示面6から前方に向かって出射された画像表示光線を第1プリズム3に導く反射面33aを有するミラー33を配置している。他は第1実施形態と同様で、同一部分は同一符号で示す。
【0016】
図4は、車両用ヘッドアップディスプレイを構成する第4実施形態の表示装置41を示す。上記第3実施形態との相違は、第1プリズム3とミラー33の配置を逆にしている点にある。他は第3実施形態と同様で、同一部分は同一符号で示す。
【0017】
図5は、車両用ヘッドアップディスプレイを構成する第5実施形態の表示装置51を示す。上記第1実施形態との相違は、第1プリズム3をなくし、画像表示面6を前向きに配置し、画像表示面6から出射される画像表示光線を直接第2プリズム14に入射させるようにした点にある。他は第1実施形態と同様で、同一部分は同一符号で示す。
【0018】
なお、上記各実施形態のプリズムにおける反射面や、他の光学素子における反射面を、その反射面と同等の光学特性を有する回折面により構成し、画像表示光線の光路を回折により変更させてもよい。また、そのプリズムの屈折面、反射面、回折面は、フラットな面であってもよいしフラットでなくてもよい。また、上記第2〜第4実施形態において、コンバイナに代えて車両の半透明のフロントガラスにより画像表示光線を反射させて光路を変更してもよい。また、上記各実施形態においてダッシュボード内に配置される画像表示器や光学素子を、ダッシュボード上や他の位置に配置してもよい。また、本発明は自動車以外の例えば船舶等の表示装置にも適用でき、その表示画像の内容もナビゲーション情報に限定されるものではない。
【0019】
【第1実施例】
図6〜図8は第1実施例に関し、上記第1実施形態に対応する画像表示光線の光路を示す。本第1実施例において、観察対象の虚像の位置Pはドライバーの瞳13の中心から前方に2mである。また、観察対象の虚像の大きさに対応する表示視野は、上下画角が2.26°、左右画角が3.0°である。また、各瞳サイズは上下方向に40mm、左右方向に110mmであり、この瞳サイズの範囲に瞳があれば、上記表示視野の虚像を欠けることなく観察できる。また、画像表示面の頂点における法線と中心光線とのなす光線出射角は15°である。以下の表1に、画像表示面6、各屈折面3a、14a、反射面3b、14b、およびドライバーの瞳13の、曲率半径、頂点位置、法線角度、屈折率およびアッベ数を示す。なお、各頂点位置は、ドライバーの瞳13の中心を原点として、前後方向をZ軸、上下方向をX軸とし、後方および上方に向かう方向が正の座標により示す。また、法線方向は、各頂点位置における法線の方向を、後方に向かう方向を零として示す。
【0020】
【表1】

【0021】
図9は、第1実施例において瞳13から画像表示面6に向かい光線を逆追跡し、得られた結果をプロットしたスポット図である。このスポット図は、上記表示視野に分布する15の点虚像を形成し、上記瞳サイズの範囲で瞳を動かして各点虚像を見た場合の各点虚像の収差を示す。この図9より、その収差は小さく、明瞭な虚像をドライバーの前遠方に形成できることを確認できる。
【0022】
【第2実施例】
図10〜図12は第2実施例に関し、上記第2実施形態に対応する画像表示光線の光路を示す。本第2実施例において、観察対象の虚像の位置Pはドライバーの瞳13の中心から前方に2mである。また、観察対象の虚像の大きさに対応する表示視野は、上下画角が2°、左右画角が3.0°である。また、各瞳サイズは上下方向に40mm、左右方向に110mmである。また、画像表示面の頂点における法線と中心光線とのなす光線出射角は8.1°である。以下の表2に、画像表示面6、各屈折面3a、反射面3b、22a、23aおよびドライバーの瞳13の、曲率半径、頂点位置、法線角度、屈折率およびアッベ数を示す。なお、各頂点位置は、ドライバーの瞳13の中心を原点として、前後方向をZ軸、上下方向をX軸、左右方向をY軸とし、後方、上方および左方に向かう方向が正の座標により示す。また、法線方向は、各頂点位置における法線の方向を、Y軸回りの角度θYについては後方に向かう方向を零とし、X軸回りの角度θXについては上方に向かう方向を零とし、Z軸回りの角度θZについては右方に向かう方向を零として示す。また、第1プリズム3の反射面3bは上下方向に湾曲する円筒面で、X軸回りの曲率半径RXが有限でY軸回りの曲率半径RYが無限とされている。
【0023】
【表2】

【0024】
図13は、第2実施例において瞳13から画像表示面6に向かい光線を逆追跡し、得られた結果をプロットしたスポット図である。このスポット図は、上記表示視野に分布する15の点虚像を形成し、上記瞳サイズの範囲で瞳を動かして各点虚像を見た場合の各点虚像の収差を示す。この図13より、その収差は小さく、明瞭な虚像をドライバーの前遠方に形成できることを確認できる。
【0025】
【第3実施例】
図14〜図16は第3実施例に関し、上記第3実施形態に対応する画像表示光線の光路を示す。本第3実施例において、観察対象の虚像の位置Pはドライバーの瞳13の中心から前方に2mである。また、観察対象の虚像の大きさに対応する表示視野は、上下画角が2°、左右画角が3.0°である。また、各瞳サイズは上下方向に40mm、左右方向に110mmである。また、画像表示面の頂点における法線と中心光線とのなす光線出射角は17.3°である。以下の表3に、画像表示面6、各屈折面3a、反射面3b、22a、33aおよびドライバーの瞳13の、曲率半径、頂点位置、法線角度、屈折率およびアッベ数を示す。
【0026】
【表3】

【0027】
図17は、第3実施例において瞳13から画像表示面6に向かい光線を逆追跡し、得られた結果をプロットしたスポット図である。このスポット図は、上記表示視野に分布する15の点虚像を形成し、上記瞳サイズの範囲で瞳を動かして各点虚像を見た場合の各点虚像の収差を示す。この図17より、その収差は小さく、明瞭な虚像をドライバーの前遠方に形成できることを確認できる。
【0028】
【第4実施例】
図18〜図20は第4実施例に関し、上記第4実施形態に対応する画像表示光線の光路を示す。本第4実施例において、観察対象の虚像の位置Pはドライバーの瞳13の中心から前方に2mである。また、観察対象の虚像の大きさに対応する表示視野は、上下画角が1.5°、左右画角が3.0°である。また、各瞳サイズは上下方向に40mm、左右方向に110mmである。また、画像表示面の頂点における法線と中心光線とのなす光線出射角は15°である。なお、反射面33aは、Y軸回りの曲率半径RYが無限で2次曲面係数K=233.073の2次曲面とされ、xyz座標空間において、ρ2=x2+y2、c=1/RXとして、z=cρ2/〔1+{1-(1+K)c2ρ2}1/2〕で表される。以下の表4に、画像表示面6、各屈折面3a、反射面3b、22a、33aおよびドライバーの瞳13の、曲率半径、頂点位置、法線角度、屈折率およびアッべ数を示す。
【0029】
【表4】

【0030】
図21は、第4実施例において瞳13から画像表示面6に向かい光線を逆追跡し、得られた結果をプロットしたスポット図である。このスポット図は、上記表示視野に分布する15の点虚像を形成し、上記瞳サイズの範囲で瞳を動かして各点虚像を見た場合の各点虚像の収差を示す。この図21より、その収差は小さく、明瞭な虚像をドライバーの前遠方に形成できることを確認できる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の表示装置によれば、光学系を構成する光学素子として製造容易なものを用いることができ、瞳サイズを広くでき、各瞳位置において明るく歪みのない虚像を視認できる。
【0032】
【本発明の実施態様】
本発明の表示装置において、プリズムは画像表示光線の屈折面と表示面とを有するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の表示装置の構成説明図
【図2】本発明の第2実施形態の表示装置の構成説明図
【図3】本発明の第3実施形態の表示装置の構成説明図
【図4】本発明の第4実施形態の表示装置の構成説明図
【図5】本発明の第5実施形態の表示装置の構成説明図
【図6】本発明の第1実施例の光路を示す側面図
【図7】本発明の第1実施例の光路を示す平面図
【図8】本発明の第1実施例の光路の拡大側面図
【図9】本発明の第1実施例のスポット図
【図10】本発明の第2実施例の光路を示す側面図
【図11】本発明の第2実施例の光路を示す平面図
【図12】本発明の第2実施例の光路の拡大側面図
【図13】本発明の第2実施例のスポット図
【図14】本発明の第3実施例の光路を示す側面図
【図15】本発明の第3実施例の光路を示す平面図
【図16】本発明の第3実施例の光路の拡大側面図
【図17】本発明の第3実施例のスポット図
【図18】本発明の第4実施例の光路を示す側面図
【図19】本発明の第4実施例の光路を示す平面図
【図20】本発明の第4実施例の光路の拡大側面図
【図21】本発明の第4実施例のスポット図
【図22】従来の表示装置の構成説明図
【符号の説明】
1 表示装置
2 画像表示器
3、14 プリズム
13 瞳
P 虚像形成位置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-28 
出願番号 特願平7-267767
審決分類 P 1 651・ 113- YA (G02B)
P 1 651・ 121- YA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 青木 和夫
辻 徹二
登録日 2003-05-30 
登録番号 特許第3433587号(P3433587)
権利者 株式会社島津製作所
発明の名称 表示装置  
代理人 喜多 俊文  
代理人 江口 裕文  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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