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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04N |
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管理番号 | 1114552 |
異議申立番号 | 異議2003-71973 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-08-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-04 |
確定日 | 2005-01-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3372560号「ビデオカメラ」の請求項1及び請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3372560号の請求項1及び請求項2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第一.手続の経緯 特許第3372560号(請求項の数2)に係る出願は、平成4年1月29日の出願であり、その発明について、平成14年11月22日に特許権の設定の登録があった。 その後、その請求項1および請求項2(全請求項)に係る特許について、平成15年8月4日に特許異議申立人・島田洋から特許異議の申立てがあった。 平成16年5月11日付けで取消しの理由が通知されたところ、同通知において指定された期間内に訂正請求書(平成16年7月20日付け)が提出された。 第二.訂正の請求 〈結論〉 訂正を認める。 〈理由〉 1.請求の趣旨等 (a)請求の趣旨 本件訂正の請求(平成16年7月20日付け)の趣旨は、願書に添付した明細書(特許明細書)を訂正請求書に添付した訂正した明細書(訂正明細書)のとおりに訂正することを求めるものである。 (b)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲を、「【請求項1】ズームレンズ系を有する撮像レンズによって結像される被写体像を光電変換する光電変換手段と、前記光電変換手段によって変換された画像の前記撮像レンズに起因する歪みを画像の各結像点で座標変換することにより補正する補正手段とを有し、前記補正手段は、前記ズームレンズ系を有する撮像レンズの駆動によりフォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど座標変換する量を大きくすることを特徴とするビデオカメラ。【請求項2】請求項1において、前記補正手段は、複数個の象限のうち1つに対して画像の歪みの補正を行い、その補正結果に基づいてその他の象限に関して補正を行うことを特徴とするビデオカメラ。」(訂正後)に訂正する。 訂正事項b 段落0005を、「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ズームレンズ系を有する撮像レンズによって結像される被写体像を光電変換する光電変換手段と、前記光電変換手段によって変換された画像の前記撮像レンズに起因する歪みを画像の各結像点で座標変換することにより補正する補正手段とを有し、前記補正手段は、前記ズームレンズ系を有する撮像レンズの駆動によりフォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど座標変換する量を大きくすることを特徴とする。請求項2の発明は、請求項1において、前記補正手段は、複数個の象限のうち1つに対して画像の歪みの補正を行い、その補正結果に基づいてその他の象限に関して補正を行うことを特徴とする。」(訂正後)に訂正する。 訂正事項c 段落0006を、「【作用】本発明によれば、撮像レンズの駆動によってフォーカスが至近側に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど、画像の歪みを補正するための座標変換の量を大きくする。これによって、ズームレンズ系を有しフォーカスを変更可能なビデオカメラにおいても適切に画像の歪みを補正することができるようになる。」(訂正後)に訂正する。 訂正事項d 段落0013を、「【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、撮像レンズの駆動によってフォーカスが至近側に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど、画像の歪みを補正するための座標変換の量を大きくすることによって、ズームレンズ系を有しフォーカスを変更可能なビデオカメラにおいても適切に画像の歪みを補正することが可能となる。」(訂正後)に訂正する。 2.訂正の適合性 (a)訂正の目的 訂正事項aは、「撮像レンズ」(訂正前)を「ズームレンズ系を有する撮像レンズ」(訂正後)と、「フォーカスが至近に近づくにつれて座標変換する量を大きくする」(訂正前)を「フォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど座標変換する量を大きくする」(訂正後)と、それぞれ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当する。 訂正事項b、訂正事項c及び訂正事項dは、特許請求の範囲の訂正に対応して、発明の詳細な説明の欄の「課題を解決するための手段」、「作用」及び「発明の効果」の記載をそれぞれ明瞭とするものであり、いずれも、明りょうでない記載の釈明に該当する。 (b)訂正の範囲 訂正事項aは、特許明細書の段落0008および段落0011に記載がある。すなわち、「1は撮像レンズであって、2はそのフォーカスレンズ系、3はズームレンズ系を示す。」(段落0008)および「一方、図6では横軸にズーム量、縦軸に ΔX、ΔYを示した。図6から、ワイド側にあるほどΔX、ΔYは大きくなる。」(段落0011)である。 訂正事項b、訂正事項c及び訂正事項dは、いずれも、訂正事項aについて指摘した上記記載を根拠とするものである。 (c)特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項aから訂正事項dまでは、訂正の前後において、特許請求の範囲に記載された用語の意義の解釈、産業上の利用分野、解決しようとする課題及び効果に変更をもたらすものではない。 したがって、訂正事項aから訂正事項dまでは、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 3.まとめ 以上、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年12月14日法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法(上記法律より改正される前の特許法)第126条第1項及び第2項の規定に適合するから、これを認める。 第三.本件発明 訂正を認める。 訂正後の請求項1および請求項2に係る発明(以下、本件発明1および本件発明2ともいう)は、それぞれ、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1および請求項2に記載された事項によりに特定されるところの、下記のとおりのものである。 記(訂正後の特許請求の範囲) 【請求項1】 ズームレンズ系を有する撮像レンズによって結像される被写体像を光電変換する光電変換手段と、 前記光電変換手段によって変換された画像の前記撮像レンズに起因する歪みを画像の各結像点で座標変換することにより補正する補正手段とを有し、 前記補正手段は、前記ズームレンズ系を有する撮像レンズの駆動によりフォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど座標変換する量を大きくすることを特徴とするビデオカメラ。 【請求項2】 請求項1において、前記補正手段は、複数個の象限のうち1つに対して画像の歪みの補正を行い、その補正結果に基づいてその他の象限に関して補正を行うことを特徴とするビデオカメラ。 第四.特許異議の申立て 1.申立ての概要 特許異議の申立ての理由は、概略、下記のとおりである。 記(申立ての理由) 請求項 :請求項1および請求項2 違反条項:特許法第29条第2項 証拠方法:特開昭60-80374号公報(甲1) 特開平4-23575号公報(甲2) 特開平3-169190号公報(甲3) 2.取消しの理由 (1)当審が通知した取消しの理由は、概略、下記のとおりである。 記(取消しの理由) 請求項1および請求項2に係る発明は、いずれも、下記刊行物に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 刊行物1:特開平4-23575号公報(甲2) 刊行物2:特開昭59-196665号公報 刊行物3:特開昭60-80374号公報(甲1) 刊行物4:特開平3-242526号公報 刊行物5:特開平3-169190号公報(甲3) (2)刊行物の記載 取消しの理由で通知した各刊行物には、以下の事項が記載されている。 (a)刊行物1(特開平4-23575号公報) (ア)「第1図は・・・レンズ1によって、受光部2上に光は結像される。受光部2は、それを電気信号に変換し、映像回路3を経て、A/D変換器4により、ディジタル化され、メモリ5に記憶される。ズーム位置検出装置6は、レンズのズームがどの位置にあるかを検出して、電気信号に変換し、補正制御装置7に入力する。」(2頁左上欄12行〜19行) (イ)「補正制御装置7は、そのズーム位置に基づいて、あらかじめ設定された補正量だけ、メモリ内の映像のデータを補正し、その補正されたデータをD/A変換器8により、映像信号とすることで、出力端子9には、ズーム位置によって変化するわい曲収差が、ズーム位置に応じて、補正された映像が出力される。」(2頁左上欄19行〜右上欄5行) (b)刊行物2(特開昭59-196665号公報) (ウ)「電子スチルカメラの光学レンズの歪み情報を一画面分の画像信号の記憶ごとに記憶し、画像再生時に画像信号の読出しアドレスをその歪み情報に基づいて補正するようにしたものである。」(3頁左上欄15行〜19行) (エ)「再生機(注:第5図)は基本的には第2図に示したものと同じであり、異なるいくつかのレンズ歪み処理データ18a、18b、18c・・・を記憶したプログラマブルROMなどのROM18有する点が特徴である。」(4頁左下欄17行〜右下欄1行) (オ)「このとき、・・・すなわちカメラのレンズの種類に応じたいくつかの歪み処理データ18a、18b、18c・・・のうち、いま再生機にセットされているメモリ5から読み出されRAM13に書込まれた歪み情報に対応した歪み処理データを読み出して再生メモリ14に連送される画像情報を処理する。」(4頁右下欄10行〜18行) (c)刊行物3(特開昭60-80374号公報) (カ)「本発明はテレビジョンカメラ装置、特にカメラレンズ及び色分解光学系、撮像素子等の光学系および電気回路系から生じる画質劣化現象を修正する方法に関するものである。」(1頁右下欄17行〜20行) (キ)「カメラ運用時に・・レンズ1の撮像条件(撮像距離、焦点距離、アイリス値等)の情報・・は・・撮像状態識別回路18にて検知され、カメラ運用時の実時間におけるこれらの各情報は補正信号情報発生回路22に与えられる。これらの情報に基づき、補正信号情報発生回路22では予め設定されているディストーション・・の補正信号情報から上記実時間における各情報に対応する補正信号を発生し、これを偏向回路6に与えて・・ディストーション調整回路13を制御し、実時間での像の歪・・を補正する。」(2頁右下欄9行〜3頁左上欄3行) (ク)「2)撮像状態のサンプリング:・・該使用素子を用いたカメラシステムの撮像条件(撮像距離d、焦点距離f、アイリス値F等)を、複数点選出し変化させる。例えば、下記の様に3点ずつ選出する。撮像距離di→無限遠端、中間点、至近端 焦点距離fj→ワイド端、中間点、テレ端 アイリス値Fk→開絞端、中間点、閉絞端・・ 3)該サンプル点における各補正値の導出:・・それぞれの撮像特性のサンプル点の補正値H(di、fj、Fk、・・)を検知する。」(3頁左下欄10行〜右下欄5行) (d)刊行物4(特開平3-242526号公報) (ケ)第5図には、「実際のズームレンズに対する歪み計数の推定結果」が示され、同図によれば、歪み計数は、ズームレンズの焦点距離が値50から小さくなるに連れて大きくなり値18あたりから減少に転ずることが見てとれる。 (e)刊行物5(特開平3-169190号公報) 「3板式固体撮像素子テレビカメラで生ずる画像歪、レジストレーションずれの原因は、本質的には撮像レンズ2に残存している歪曲収差、倍率色収差のみである。レンズの収差は中心軸に関して対称なので、画像歪、レジストレーションずれの発生の仕方も、当然画像の中心に関して対称となる。・・・像の中心と画面の4つの角のうちの1つの角を結ぶ方向の一次元画像から、画像歪、レジストレーションずれの検出を行えば、そのデータで画面全体の画像歪、レジストレーションずれを表すことができる。」(3頁左下欄15行〜右下欄18行) (3)請求項1に係る発明(本件発明1) (3-1)一致点・相違点 (a)記載イによれば、刊行物1には、ズーム位置に基づいて、あらかじめ設定された補正量だけ、メモリ内の映像のデータを補正し、ズーム位置によって変化するわい曲収差を、ズーム位置に応じて補正した映像を出力することが記載されている。もっとも、刊行物1には、「A/D変換器4、メモリ5、補正制御装置6およびD/A変換器6」により実現される補正が、「座標変換すること」によることについては記載がない。 (b)本件発明1と刊行物1記載の発明との一致点および相違点は下記のとおりである。 記(一致点) ズームレンズ系を有する撮像レンズによって結像される被写体像を光電変換する光電変換手段と、 光電変換手段によって変換された画像の撮像レンズに起因する歪みを補正する補正手段とを有し、 補正手段は、ズームレンズ系を有する撮像レンズの駆動により座標変換する量を変化させるビデオカメラ。 記(相違点) 相違点1 本件発明1は「画像の各結像点で座標変換することにより補正する」のに対して、刊行物1には「メモリ内の映像のデータを補正する」とあるものの、「画像の各結像点で座標変換することにより補正する」との記載はない点 相違点2 本件発明1は、座標変換する量を、「フォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど(座標変換する量を)大きくする」のに対して、刊行物1にはそのような記載はない点。 (3-2)相違点等の検討 (a)相違点1について ビデオカメラのレンズの歪みを、「画像の各結像点で座標変換することにより補正する」ことは、上記刊行物2(記載ウ)または特開平2-252375号公報(当審で引用)に記載のとおり周知の事項である。 上記相違点1に係る構成は、刊行物1の「メモリ内の映像のデータを補正する」に上記周知の補正方法を適用することにより、当業者が容易になし得ることと認められる。 (b)相違点2について (b1)まず、歪みの補正を、種々の撮像条件(撮像距離、焦点距離(ズーム比)、アイリス値等)に応じてを行うことは、上記刊行物3(記載カ、キ、ク)または上記特開平2-252375号公報に記載のとおり周知の事項である。刊行物1にはズーム位置についてしか言及されてはいないが、ズーム位置だけでなくフォーカスにも応じて補正をしていることは明らかである。 (b2)本件発明は、ビデオカメラのレンズがもつ光学的な原理により必然的に発生するところの、撮像レンズに起因する歪みを補正するものであるから(請求項1、段落0003)、本件発明の「座標変換する量」が撮像レンズの歪み量(歪み特性)に直接対応したものであることは明らかである。 ところで、撮像レンズではズーム範囲全域において各収差の変動を一斉に零とすることは不可能であって、一般には、各収差にある程度の許容度を与え、全体としてのバランスを見ながら各収差を補正しているのが、撮像レンズの設計における現状であることは周知の事項である(上記許容範囲は、撮像レンズの設計諸元に大きく依存することも明らかである)。このことは、当審決が引用する文献1(特開昭59-212814号公報)または文献2(特開昭51-6564号公報)の後記記載からも窺うことができる。したがって、撮像レンズの歪み特性は、各収差の許容度や設計緒元などにより決まる、個々の撮像レンズに特有のものであると理解するのが自然である。 そうすると、本件発明の「フォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど座標変換する量を大きくする」との構成は、「フォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど歪み量が大きくなる」ような歪み特性を有する撮像レンズ(多様な撮像レンズのひとつ)を採用した際の補正態様を、規定したものあると言うことができる。 (b3)他方、刊行物2に「画像の各結像点で座標変換することにより補正する」(周知技術)が記載されていることは前記のとおりであるが、さらには、異なるレンズ(レンズの種類)の歪み処理データをROMに記憶し、使用するレンズの種類に応じて歪み補正処理を行うことも記載されている。 (b4)以上によれば、上記相違点2に係る構成は、刊行物1において、使用する撮像レンズ(その特有の歪み特性)に応じて当業者が当然に施すべき、単なる設計上の事項にすぎないことが認められる。 なお、上記文献1には、「ズームレンズ系の場合、ワイド側からテレ側へズーミングするにしたがい入射角度が小さくなって行くから歪曲収差が小さくなって行くはずである。しかしながら、実際にはワイド側近傍で負から正へ大きく変化してしまう。この正の歪曲収差は糸巻状であり非常に目立つものである。」(1頁右下欄6行〜13行、第2図)との記載が、上記文献2には、物体距離が無限大の場合と同じく1mの場合における彎曲収差の記載(FIG.2(B)、FIG.3(B))が認められる。 (c)効果等 以上のとおり、上記相違点1及び相違点2に係る各構成は当業者が容易になし得ることであり、また、これら相違点を総合しても格別の作用をなすとは認められない。本件発明の効果も、刊行物1、刊行物2および刊行物3の記載並びに周知技術から予測することができる程度のものにすぎない。 (3-3)以上、本件発明1は、刊行物1、刊行物2および刊行物3に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (4)請求項2に係る発明(本件発明2) (4-1)一致点・相違点 本件発明2と刊行物1記載の発明との一致点および相違点はそれぞれ下記のとおりである。 記(一致点) 本件発明1について指摘した上記一致点と同じ。 記(相違点) 相違点1 本件発明1について指摘した上記相違点1と同じ。 相違点2 本件発明1について指摘した上記相違点2と同じ。 相違点3 本件発明2は、「補正手段は、複数個の象限のうち1つに対して画像の歪みの補正を行い、その補正結果に基づいてその他の象限に関して補正を行う」のに対して、刊行物1には、そのような記載はない点。 (4-2)相違点等の検討 (a)相違点1および相違点2について 本件発明1についてした上記相違点1および相違点2の判断と同じである。 (b)相違点3について 刊行物5には、歪曲収差がレンズの中心軸に関して対称であることに鑑み、像の中心と画面の4つの角のうちの1つの角を結ぶ方向の一次元画像のデータで画面全体の画像歪みを補正することが記載されている。ここで、「像の中心と画面の4つの角のうちの1つの角を結ぶ方向の一次元画像のデータ」は、4つの象限のうちの1つにおける対角方向の「一次元画像のデータ」であり、これを用いて、残る3つの象限の歪みをも補正している。本件発明の「複数個の象限のうち1つに対して画像の歪みの補正を行い、その補正結果に基づいてその他の象限に関して補正を行う」に相当するものである。 上記相違点3に係る構成は、刊行物1の補正方法の一部に上記刊行物5に記載された補正方法を採用することにより、当業者が容易になし得ることと認められる。 (c)効果等 以上のとおり、上記相違点1、相違点2及び相違点3に係る各構成は当業者が容易になし得ることであり、また、これら相違点を総合しても格別の作用をなすとは認められない。本件発明の効果も、刊行物1、刊行物2、刊行物3および刊行物5の記載並びに周知技術から予測することができる程度のものにすぎない。 (4-3)以上、本件発明2は、刊行物1、刊行物2、刊行物3および刊行物5に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 第五.むすび 以上のとおり、訂正後の請求項1および請求項2に係る特許は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定をする。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ビデオカメラ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ズームレンズ系を有する撮像レンズによって結像される被写体像を光電変換する光電変換手段と、 前記光電変換手段によって変換された画像の前記撮像レンズに起因する歪みを画像の各結像点で座標変換することにより補正する補正手段とを有し、 前記補正手段は、前記ズームレンズ系を有する撮像レンズの駆動によりフォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど座標変換する量を大きくすることを特徴とするビデオカメラ。 【請求項2】 請求項1において、前記補正手段は、複数個の象限のうち1つに対して画像の歪みの補正を行い、その補正結果に基づいてその他の象限に関して補正を行うことを特徴とするビデオカメラ。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明はビデオカメラに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、ビデオカメラにおいては、撮像レンズにより得られた空間的な被写体像をCCD等の撮像素子によって光電変換する。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 このようなビデオカメラにおいては、レンズのもつ光学的特徴から、例えば焦点距離の短いワイド系のレンズによって得られた像ほど、現実に人間の見るものと比べて極端に変形してしまう。これは光学的な原理原則により必然的に発生するものであって、従来は自明なものとしてこれを積極的に解消しようとする試みはなされていなかった。 【0004】 そこで本発明の目的は以上のような問題を解消したビデオカメラを提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ズームレンズ系を有する撮像レンズによって結像される被写体像を光電変換する光電変換手段と、前記光電変換手段によって変換された画像の前記撮像レンズに起因する歪みを画像の各結像点で座標変換することにより補正する補正手段とを有し、前記補正手段は、前記ズームレンズ系を有する撮像レンズの駆動によりフォーカスが至近に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど座標変換する量を大きくすることを特徴とする。請求項2の発明は、請求項1において、前記補正手段は、複数個の象限のうち1つに対して画像の歪みの補正を行い、その補正結果に基づいてその他の象限に関して補正を行うことを特徴とする。 【0006】 【作用】 本発明によれば、撮像レンズの駆動によってフォーカスが至近側に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど、画像の歪みを補正するための座標変換の量を大きくする。これによって、ズームレンズ系を有しフォーカスを変更可能なビデオカメラにおいても適切に画像の歪みを補正することができるようになる。 【0007】 【実施例】 以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。 【0008】 図1は本発明実施例のブロック図であり、1は撮像レンズであって、2はそのフォーカスレンズ系、3はズームレンズ系を示す。これらのレンズ系はフォーカス駆動手段4、ズーム駆動手段5によってそれぞれ駆動される。15はフォーカスレンズ系の位置のエンコーダ、16はズームレンズ系3の位置のエンコーダである。かかる構成のレンズ1によって被写体像はCCD6上に結像され、光電変換され、増幅器7で増幅され、カラープロセス回路8およびマトリックス回路9によって輝度信号Yと2つの色差信号R-Y,B-Yに変換される。以下、輝度信号Yのみについて説明するが、他の2つの色差信号も同様の処理を行うので説明を省略する。 【0009】 マトリックス回路9から出力されたアナログの輝度信号は、A/D変換器10によってデジタル信号に変換され、メモリ11に蓄積される。12はゲートアレイ(書き込み,読み出し制御回路)であって、メモリ11の書き込み,読み出しのタイミングおよび書き込み,読み出しのアドレス制御を行う。とくにメモリ11の読み出しアドレス指定は座標変換回路13によって行う。14はタイミング制御のためのクロック手段である。 【0010】 ここでこの座標変換回路13における座標変換について説明する。図2は格子状のパターンをもつ被写体を示し、X軸,Y軸方向ともに等ピッチの平行線が書かれており、I,II,III,IVはX軸,Y軸で画された象限を示す。かかる被写体をワイドレンズにより結像させると、図3に示すような糸巻き型形状のパターンが得られる。かかる結像パターンの特徴は、光軸を中心とした点対称となっていることであり、以下ではI象限を代表として説明する。図4に示すように、図3中、A点で示した結像点の座標を(X0,Y0)とすると、これに該当する本来の被写体のポイントA′(X0′,Y0′)までX軸方向でΔX,Y軸方向でΔYだけ、図3の結像を後述のようなメモリの読み出し時に座標変換することによって、もとのパターンに相当する信号がメモリ11から得られる。なお、この座標変換における変換パラメータとしては、撮像レンズ1のフォーカス量およびズーム量を用いる。また、前述した歪(図2,図3)が光軸を中心とした点対称であることから、例えばI象限のみの座標変換処理を行うようにし、他のII,III,IV象限に関しては、I象限で求めた変換値の絶対値を共通とするとともに、その方向のみを各象限に対応するように変換してやればよいことになる。これにより、座標変換回路13の容量も一画面分の1/4の量で済むことになる。 【0011】 座標変換回路13における変換パラメータとして用いるエンコーダ15からのフォーカスレンズ系の位置のエンコード情報および同じくエンコーダ16からのズームレンズ系の位置のエンコード情報に関する座標変換テーブルを図5および図6により説明する。図5では横軸にフォーカス量、すなわち無限大(∞)から至近までの入力を示し、縦軸に図4で説明したΔX,ΔYを示した。図4から、ΔX,ΔYはフォーカス量が∞に近づくにつれて0に近づき、フォーカス量が至近に近づくにつれて大きくなる。一方、図6では横軸にズーム量、縦軸にΔX,ΔYを示した。図6から、ワイド側にあるほどΔX,ΔYは大きくなる。このような変換パラメータを用いて、座標変換回路13ではメモリ11上のA′点の読み出しタイミングで、A点のアドレスの情報を読み出すように、アドレス指定回路21からの読み出しアドレスを補正する。ゲートアレイ12はこのような座標変換回路13からの指定を受けてクロック手段からのクロックに応答してメモリ11の読み出しアドレス制御を行う。これによってメモリ11から読み出された画像データは補間回路18,D/A変換器19を通ってアナログ画像信号として出力端子20に出力される。 【0012】 なお、書き込みアドレス指定はアドレス指定回路21から直接ゲートアレイ12に入力する。また、象限検出回路22は、アドレス指定回路21からのアドレス指定信号によって象限を検出し、その検出結果に応じて、座標変換回路13では、読み出しアドレスの補正量(座標変換量)を、I象限ならそのまま、II象限ならX軸方向のみ方向を反対にし、III象限ならX,Y軸方向共に方向を反対にし、IV象限ならY軸方向のみ方向を反対にする。 【0013】 【発明の効果】 以上説明したように本発明によれば、撮像レンズの駆動によってフォーカスが至近側に近づくにつれて及びズームがワイド側にあるほど、画像の歪みを補正するための座標変換の量を大きくすることによって、ズームレンズ系を有しフォーカスを変更可能なビデオカメラにおいても適切に画像の歪みを補正することが可能となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明実施例のブロック図である。 【図2】 格子状パターンの被写体を示す図である。 【図3】 同被写体の結像パターンを示す図である。 【図4】 座標変換概念を示す図である。 【図5】 座標変換量とフォーカス量との関係を示す図である。 【図6】 座標変換量とズーム量との関係を示す図である。 【符号の説明】 11 メモリ 12 ゲートアレイ 13 座標変換回路 21 アドレス指定回路 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-11-12 |
出願番号 | 特願平4-14195 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(H04N)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 坂東 博司、伊東 和重 |
特許庁審判長 |
新宮 佳典 |
特許庁審判官 |
原 光明 杉山 務 |
登録日 | 2002-11-22 |
登録番号 | 特許第3372560号(P3372560) |
権利者 | キヤノン株式会社 |
発明の名称 | ビデオカメラ |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 谷 義一 |
代理人 | 谷 義一 |