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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04R
管理番号 1114554
異議申立番号 異議2003-71496  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-04 
確定日 2005-01-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3361253号「コンデンサマイクロフォンの接続方法、接続構造」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3361253号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3361253号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成9年9月4日に出願され、平成14年10月18日に設定登録され、その後、特許異議申立人遠山タイ子から特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年7月12日に訂正請求がなされたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正事項
(1) 請求項1における「弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、」を「圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80゜Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、」と訂正する。

(2) 請求項2における「コンデンサマイクロフォンの端子電極と実装基板の電極との間にコネクタを配し、該コネクタが、コンデンサマイクロフォンを収納したマイクロフォンホルダー体型コネクタであることを特徴とするコンデンサマイクロフォンの接続構造。」を「コンデンサマイクロフォンの端子電極と実装基板の電極との間にコネクタを配し、該コネクタが、圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80゜Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクロフォンホルダとを一体化したマイクロフォンホルダー体型コネクタであり、コンデンサマイクロフォンを収納してなることを特徴とするコンデンサマイクロフォンの接続構造。」と訂正する。

(3) 段落【0004】の記載を添付した全文訂正明細書のとおり訂正する。

2 訂正事項についての判断
上記訂正(1)及び(2)は、段落0011の記載に基づき、「弾性樹脂」を具体的に特定するために訂正するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また上記訂正(3)は、特許請求の範囲の訂正と整合を図るために行う訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法120条の4第2項及び3項で準用する特許法126条2項及び3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議申立についての判断
1 本件発明
上記のとおり、訂正請求が認められたので、本件発明は次のとおりのものである。
【請求項1】圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80゜Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクロフォンホルダとを一体化したマイクロフォンホルダ一体型コネクタにコンデンサマイクロフォンを収納し、該コンデンサマイクロフォンの端子電極もしくはこれから導かれたリ一ド端子と実装基板の電極との間で圧接型コネクタを圧接することを特徴とするコンデンサマイクロフォンの援続方法。(以下、「本件発明1」という。)
【請求項2】コンデンサマイクロフォンの端子電極と実装基板の電極との間にコネクタを配し、該コネクタが、圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80゜Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクロフォンホルダとを一体化したマイクロフォンホルダー体型コネクタであり、コンデンサマイクロフォンを収納してなることを特徴とするコンデンサマイクロフォンの接続構造。(以下、「本件発明2」という。)

2 引用刊行物
(1) 取消理由通知に引用した国際公開公報(パンフレット)WO95/27323号(以下「刊行物1」という。)には次の事項が記載されている。(なお、異議申立書に添付された抄訳を基に、特許権者の特許異議意見書における翻訳箇所を考慮し摘記する。)

ア 図1は、弾性変形可能で導電性を有する、低抵抗エラストマコネクタ10を示す図であり、このエラストマコネクタは、好適には金あるいは金メッキされた金属でできた高導電性を有する金属ワイヤ11aを間隔を空けて配置したものを充填したエラストマ材料からなる。このような導電性エラストマの有効な特性は、この材料の長さ方向には導電性を有するが、横方向には導電性を持たない複数の微細な導電体を含んでいることである。(公報4頁26〜34行、抄訳1頁4〜9行)
イ 図3及び4は、携帯電話において、マイク15、ブザー、スピーカ等の無線通信機器を組立てた際の一例を示す図である。ここで、マイクは、ゴム製のガスケット16内に配置されている。2つの開孔を有するエラストマコネクタ10は、マイクの背面側と基板(好適にはプリント回路基板17の形態とする)との間に設ける。ここで、エラストマを7〜12%程度機械的に圧縮することによって、エラストマコネクタ10は、マイクの中央接続端子1箇所と周辺接続端子1箇所と接触するように、また、これに対応してプリント回路基板上に接触するように固定される。(公報6頁4〜15行、抄訳2頁7〜14行)
ウ 本発明の第3の実施態様にかかるエラストマコネクタを図9に示す。この場合、エラストマコネクタ10は、導電性エラストマ、例えば、銀あるいは銅の小球を含むシリコンを成型することにより作製される。ガスケット16は、中央円筒部を有するエラストマコネクタの一部分として形成され、該エラストマコネクタは、導電性エラストマの2つの部材の間の間隙21に設けられた絶縁体20により第2導電路14を形成している。
この方法は、エラストマによって、導電体、遮蔽材、マイクあるいはブザーと共にガスケットに対する支持体を提供できる点においていくつかの利点を有する。あるいは、(図示はしていないが)ガスケット16は、非導電性エラストマ材料でできた円筒部として形成することも可能であり、その中にマイクを支持してもよく、このマイクは、導電性エラストマコネクタによってプリント回路基板に接続される。(公報7頁16〜34行、抄訳3頁8〜19行)

3 本件発明1と刊行物1との対比
刊行物1の実施例にはマイク15を組み立てた例について、弾性変形可能なエラストマコネクタが示されており、このエラストマコネクタをマイクと基板との間に機械的に圧縮することにより固定している。
そして、刊行物1には、高導電性を有する金属ワイヤを間隔を空けて配置したものを充填したエラストマ材料からなる実施例1(図1)と、銀あるいは銅の小球を含むシリコンを成型することにより作製されたエラストマ材料からなる実施例3(図9)が示されている。
以上を踏まえ、刊行物1の実施例3を基に検討する。
前記刊行物1の記載ウによれば、エラストマ材料は弾性樹脂であることは明らかであり、本件発明1では、マイクロフォン、コンデンサマイクロフォン等、使用されている用語の表現は刊行物1の発明と異なるが、発明の対象として実質的な相違は認められない。
したがって、本件発明1と刊行物1の実施例3とを対比すると、一致点、相違点は次のとおりである。

【一致点】弾性樹脂中に複数の金属が配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクロフォンホルダとを一体化したマイクロフォンホルダ一体型コネクタにコンデンサマイクロフォンを収納し、該コンデンサマイクロフォンの端子電極と実装基板の電極との間で圧接型コネクタを圧接することを特徴とするコンデンサマイクロフォンの援続方法。

【相違点】
(1) 本件発明1では、弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設されているのに対し、刊行物1の実施例3では、弾性樹脂中に複数の銀あるいは銅の小球を配設している点。

(2) 本件発明1では、弾性樹脂材料として、圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80゜Hの範囲にある特性の樹脂を使用しているのに対し、刊行物1の実施例3では材料の特性が明記されていない点。

4 相違点についての判断
(1) 相違点(1)について
刊行物1の実施例1には、弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設されているエラストマコネクタの技術が示されている。
実施例3のガスケットは、エラストマコネクタと一体に形成されて、この中にマイクを支持しており、エラストマコネクタとして実施例1の複数の金属細線を配した技術を採用することは、採用することに妨げとなる技術的事項も認められないばかりか、実施例1開示の技術を採用してみようとすることは、同一文献中の同種技術であることから普通に思い至る事項である。
したがって、相違点(1)は当業者が普通に採用する技術手段である。

(2) 相違点(2)について
弾性樹脂材料の特性を「圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80゜Hの範囲」と特定することは、シリコーンゴムの一般的性質を述べたにとどまり、相違点2を格別なものとすることはできない。
すなわち、本件発明1の弾性樹脂としてシリコーンゴムが実施例にあり、シリコーンゴムの特性が記載された、伊藤邦雄編「シリコーンハンドブック」(日刊工業新聞社、1990年8月31日)の303頁〜304頁の図9.17〜図9.19から、シリコーンゴムの室温における圧縮永久歪みが20%以下であることが明らかであり、同じく333頁〜337頁には、シリコーンゴムの物性中「物理強度(常態)200℃/4時間、硬さ JIS」の欄には、硬度が20〜80゜Hの範囲に入っているシリコーンゴム製品が大部分であることが示されている。

(3) したがって、相違点(1)及び(2)は、当業者が適宜採用しうる事項であり、本件発明1は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである。
また、本件発明1の効果も格別なものは認められない。

5 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の接続方法に係る発明を接続構造に係る発明としたものであり、本件発明1と実質的な相違は認められず、前記本件発明1での判断と同じ理由により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、訂正請求書により訂正された請求項1及び2に係る発明は、前記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2についての特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コンデンサマイクロフォンの接続方法、接続構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80°Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクロフォンホルダとを一体化したマイクロフォンホルダ一体型コネクタに、コンデンサマイクロフォンを収納し、該コンデンサマイクロフォンの端子電極もしくはこれから導かれたリード端子と実装基板の電極との間で圧接型コネクタを圧接することを特徴とするコンデンサマイクロフォンの接続方法。
【請求項2】 コンデンサマイクロフォンの端子電極と実装基板の電極との間にコネクタを配し、該コネクタが、圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80°Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクロフォンホルダとを一体化したマイクロフォンホルダ一体型コネクタであり、コンデンサマイクロフォンを収納してなることを特徴とするコンデンサマイクロフォンの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話機や無線機等の移動体通信機に使用されるコンデンサマイクロフォン(以下、単にマイクという)の端子電極もしくはこれから導かれたリード端子と実装基板の電極との接続方法、接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記用途に使用されるマイクは、図13に示すように、マイクaから導かれたリード端子bが機器ケースに装着された実装基板cの電極dに半田付けeにより接続されている。このような半田付けによる接続方法は、狭い箇所での半田付け工程が煩雑であり、かつ機器の微小化への妨げとなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マイクの電極もしくはこのリード端子と実装基板の電極との確実な接続が得られ、かつ接続の容易なマイクの接続方法、接続構造を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のマイクの接続方法は、圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80°Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクホルダとを一体化したマイクホルダ一体型コネクタにマイクを収納し、マイクの端子電極もしくはこれから導かれたリード端子と実装基板の電極との間で圧接型コネクタを圧接することを特徴としている。
また、本発明のマイクの接続構造は、マイクの端子電極と実装基板の電極との間にコネクタを配し、該コネクタが、圧縮永久歪みが20%以下で硬度が20〜80°Hの範囲にある弾性樹脂中に複数の金属細線が所定のピッチで平行に配設された圧接型コネクタと、弾性樹脂からなるマイクホルダとを一体化したマイクホルダ一体型コネクタであり、マイクを収納してなることを特徴としている。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のマイクの接続方法、接続構造は、圧接型コネクタとマイクホルダとを一体化したマイクホルダ一体型コネクタにマイクを収納し、マイクの端子電極もしくはこれから導かれたリード端子と実装基板の電極との接続を、弾性を有する圧接型コネクタを介して行うものであり、機器ケース等により接続部に圧力を加えて圧接型コネクタを押圧して接続する。
【0006】
【実施例】
本発明のマイクの接続方法を実施例に基づき図1〜図4を用いて詳細に説明する。
実施例1:
図1に示すように、機器ケース1に装着された実装基板2の電極3とマイク4の端子電極から導かれたリード端子5とを、コネクタホルダ6に保持された圧接型コネクタ7を用いて接続している。圧接型コネクタ7は、圧接方向に反撥弾性を有する異方性導電回路をもち、機器ケース1等により押圧力Pを加えて押圧することにより確実に圧接される。なお、8はマイクホルダである。
【0007】
実施例2:
図2に示す態様は、実装基板2の電極3とマイク4の端子電極9とを圧接型コネクタ7を介して接続するものである。この態様はマイク4のリード端子が不要であり、構成が簡単である。
【0008】
実施例3:
図3に示す態様は、圧接型コネクタ7とマイク4の端子電極9との間に粘着剤層10を設けて、実装基板2の電極3とマイク4の端子電極9とを圧接型コネクタ7を介して接続している。粘着剤層10は、マイク4の端子電極9または圧接型コネクタ7のいずれの側に設けてもよく、この粘着剤層10により振動やショックの影響を受けることなく確実な接続が保証される。この場合、実施例1,2に示した態様のコネクタホルダ6は不要である。
【0009】
実施例4:
また、図4に示す態様は、実施例2,3で示した態様の圧接型コネクタ7とマイクホルダ8とを一体化し、弾性樹脂で形成したマイクホルダ一体型コネクタ11を用いて接続するものであり、マイク4はマイクホルダ一体型コネクタ11の凹部に収納され、接続される。このため、機器ケース1への着脱が極めて容易となり、振動やショックの影響を受けることなく確実な接続が得られる。
【0010】
次に、本発明で用いる圧接型コネクタを図5〜図7を用いて説明する。
図5(a)、(b)に示す圧接型コネクタ7は、いずれも外形が矩形状をなし、弾性樹脂12中に金属細線13がピッチLでそれぞれ平行に埋設され、金属細線13の端面が圧接型コネクタの上面と同一平面ないし図示するように僅かに突出している。このような構成からなる圧接型コネクタ7は、圧接方向に反撥弾性を有し、接続を確実なものとする。なお、図5(a)、(b)は、それぞれ上方に平面図、下方に断面図を対で示している。
図5(b)に示す圧接型コネクタ7は、一方の接続面に粘着剤層10を設けたものであり、金属細線の端面は接着剤層がなす面よりも低く設けられている。接着剤層を設けるのは機器ケースが受ける振動、ショックによる位置ずれや接触のゆるみを防止するためである。
【0011】
弾性樹脂12は、-25〜90℃の環境雰囲気のもとで弾性が維持される材質であって、圧縮永久歪みが20%以下で、硬度は20〜80°Hの範囲にあることが望ましい。このため、シリコーンゴム、フッ素ゴムあるいはウレタンゴム等が用いられ、特にはシリコーンゴムが好ましい。さらに、弾性樹脂12中に含有イオン類が少ないほうがより好ましい。
【0012】
金属細線13は、間隔Lが5〜1000μmで、先端が圧接型コネクタ7の表面から5〜50μm突出するように弾性樹脂12中に、接続面に対して垂直もしくは法線に対して±15°傾斜して埋設されている。金属細線13の材質はベリリウム銅、真鍮あるいはステンレス、ニッケル等が用いられ、なかでもバネ性の強いものが選択される。金属細線13の線径は5〜100μmで、その表面には接触抵抗減、耐腐食性、耐酸化性の観点からニッケル下地の金めっき処理を施すのが好ましい。
図6(a)は、圧接型コネクタ7の他の態様を示す平面図であり、いずれも形状及び金属細線13の配列パターンを異にしている。図6(b)は、金属細線13の端面が、弾性樹脂及び接着剤層よりも突出しているタイプ(b-1)、同一平面にあるタイプ(b-2)、低い位置にあるタイプ(b-3)を断面図で示し、いずれのタイプでも適宜、選択、組み合わせて使用される。なお、(b-3)に示すタイプのコネクタは、金属細線の埋設深さを、圧接時には金属細線の端面が被接続端子と接触できる深さとする。
【0013】
実施例4で示したホルダ一体型コネクタ11は、図7(a)、(b)に示すように、圧接型コネクタ7とマイクホルダ8とが一体化され、弾性樹脂で形成されたホルダ一体型コネクタ11を用いて接続するものである。マイク4の取り付けは、ホルダ一体型コネクタ11の凹部15に、マイク4の端子電極をコネクタ側に向けてマイク4を嵌合し、機器ケース1の所定の箇所に取り付けるだけで容易に装着することができ、マイク4の端子電極9と実装基板2の電極3とを確実に接続するとともに、機器ケース1に加えられる振動や衝撃をも吸収する。
図7(b)は、接続部材16を介して圧接型コネクタ7とマイクホルダ8とを一体化したものであり、(a)に示すものと装着上の差異はなく、製造工程に合わせて適宜選択すればよい。
なお、実施例3と同様に、ホルダ一体型コネクタ11とマイク4との間に粘着剤層10を設けると、接続固定がより確実となる(図示を省略)。
【0014】
本発明の圧接型コネクタを用いるマイクの接続方法、接続構造は、機器ケースへのマイクの組み込みを容易とし、実装基板との接続作業が簡素化され、コスト削減に寄与する。
【0015】
本発明で用いる圧接型コネクタは様々なタイプのものが使用可能であるが、以下、実施例1,2で用いた圧接型コネクタ(以下、圧接型コネクタAという),実施例3で用いた圧接型コネクタ(以下、圧接型コネクタBという)及び実施例4で用いた圧接型コネクタ(以下、圧接型コネクタCという)の製造方法について詳述する。
【0016】
圧接型コネクタAの製造:(図8参照)
(工程a)
シリコーンゴムコンパウンド・DY32-3044 100重量部(東レ・ダウコーニングシリコーン製、商品名)、加硫剤・C-19A 0.5重量部、同・C-19B 2.5重量部、シランカップリング剤・KBM-403 1.0重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)を、ミキシングロールにて混練した後、これを幅300mm、厚さ0.1mmのPETフィルム22上にカレンダーロール23にて0.1mmの厚さにシーティング(分出し)した。これを切断刃24で切断して幅300mm、長さ600mmのシート25を形成した。
【0017】
(工程b)
シート25の先のシーティング面上に、下地ニッケルメッキ0.25μm、表面金メッキ0.15μmのメッキ処理を施した径40μmの真鍮線26を、シートの幅方向に0.1mmピッチで配列し、さらにこの上に別のシート25を先のシーティング面同士で貼り合わせて真鍮線26を挟持した。これを半分の長さ300mmに切断した後、加圧ボックス内で10分間加圧脱気した後、120℃-2分間の熱プレスで加熱硬化した。
【0018】
(工程c)
真鍮線26を挟持して加熱硬化したシートからPETフィルム22を剥離した後、いずれか一方の剥離面に、絶縁性液状シリコーンゴム・KE-1800TA 50重量部と同・KE-1800TB 50重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)を混合した付加反応型のシリコーン接着剤27をスクリーン印刷にて厚さ20μmに塗布し、PETフィルム22を剥離したもう一枚のシートを互いに真鍮線26が平行になるように貼り合わせ、真空ボックス内で2分間真空脱気した後、120℃-2分間の熱プレスで加熱硬化し、シート28を形成した。
【0019】
(工程d)
次に、シート28の一方の両側面に前記シリコーン接着剤27をスクリーン印刷にて厚さ20μmに塗布し、この塗布面にシリコーンゴム板29をそれぞれ貼り付けた後、真空ボックス内で2分間真空脱気し、120℃-2分間の熱プレスで加熱硬化して成形体30を形成した。
なお、シリコーンゴム板29は、シリコーンゴムコンパウンド・KE-1983BL-A 50重量部と同・KE-1983BL-B 50重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)とを混合した後、金型成形して得たゴム硬度35°H、厚さ0.75mm、300mm角のシリコーンゴム板を用いた。
【0020】
(工程e)
成形体30を加熱オーブンで215℃-2時間二次加硫した後、真鍮線26の配列方向に長さ4.2mm、真銀線26の長さ方向に1.1mmで切断し、露出した真鍮線26の端面に、下地ニッケルメッキ0.25μm、表面金メッキ0.15μmのバレルメッキ処理を施し、長さ4.2mm、幅2.0mm、厚さ1.1mmの圧接型コネクタAを製作した。
【0021】
圧接型コネクタBの製造:(図9参照)
(工程a)
シリコーンゴムコンパウンド・KE-153U 100重量部、加硫剤・C-19A 0.5重量部、同・C-19B 2.5重量部、シランカップリング剤・KBM-403 1.0重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)を、ミキシングロールにて混練した後、これを幅300mm、厚さ0.1mmのPETフィルム22上にカレンダーロール23にて0.1mmの厚さにシーティングした。これを切断刃24で切断して幅300mm、長さ600mmのシート31を形成した。
【0022】
(工程b)
シート31の先のシーティング面上に、下地ニッケルメッキ0.25μm、表面金メッキ0.15μmのメッキ処理を施した径20μmのベリリウム銅線32を、シートの幅方向に0.1mmピッチで配列し、さらにこの上に別のシート31を先のシーティング面同士で貼り合わせてベリリウム銅線32を挟持した。これを半分の長さ300mmに切断した後、加圧ボックス内で10分間加圧脱気した後、120℃-2分間の熱プレスで加熱硬化した。
【0023】
(工程c)
ベリリウム銅線32を挟持して加熱硬化したシートからPETフィルム22を剥離した後、いずれか一方の剥離面に、絶縁性液状シリコーンゴム・KE-1800TA 50重量部と同・KE-1800TB 50重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)を混合した付加反応型のシリコーン接着剤27をスクリーン印刷にて厚さ20μmに塗布し、PETフィルム22を剥離したもう一枚のシートを互いにベリリウム銅線32が平行になるように貼り合わせ、真空ボックス内で2分間真空脱気した後、120℃-2分間の熱プレスで加熱硬化し、シート33を形成した。
【0024】
(工程d)
シリコーンゴムコンパウンド・KE-1940-50-A 50重量部と同・KE-1940-50-B 50重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)とを混合した後、金型にてゴム硬度50°H、外周曲率半径2.15mm、高さ2.0mm、長さ300mmのシリコーンゴムからなる半月状のサポート材34を成形した。
【0025】
(工程e)
配列されたベリリウム銅線ピッチを横切る方向にシート33を、幅4.25mmで切断した後一方の面に、シリコーン接着剤27をスクリーン印刷にて厚さ20μmに塗布し、サポート材34を貼付した。さらに、残る他方の面にもシリコーン接着剤27を塗布してサポート材34を貼付した。これを真空ボックス内で2分間真空脱気した後、120℃-2分間の熱プレスで加熱硬化し、成形体35を形成した。
【0026】
(工程f)
成形体35を加熱オーブンで215℃-2時間二次加硫した後、ベリリウム銅線32の長さ方向に厚さ1.1mmで切断し、露出したベリリウム銅線32の端面に、下地ニッケルメッキ0.25μm、表面金メッキ0.1μmのバレルメッキ処理を施してコネクタ36を形成した。
【0027】
(工程g)
このコネクタ36のいずれか片方の切断面にシリコーン系ワニス粘着剤・KR-101-10 (信越化学工業製、商品名)をスクリーン印刷にて30μm厚に塗布して、切断面からのベリリウム銅線32の突出量が20μm、サイズが直径4.3mmで、一方の接続面に厚さ30μmの粘着剤層37を有する圧接型コネクタBを得た。
【0028】
圧接型コネクタCの製造:(図10〜12参照)
(工程a)
前記圧接型コネクタBと同様にしてコネクタ36を形成した。
(工程b)
シリコーンゴムコンパウンド・KE-9410U 100重量部、加硫剤・C-8 2.0重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)を、図10に示すように、ミキシングロール21にて混練した後、2.5mm厚に分出しし、切断刃24で切断して幅120mm、長さ250mmのシート38を形成した。このシート38をマイクホルダ成形金型41内にセットし、180℃-5分間熱プレスしてマイクホルダ部分を成形した後、バリ取り治具42で成形バリを取り除き、マイクホルダ成形体43が連なったマイクホルダシート44を形成した。
【0029】
(工程c)
次に、図11に示すように、シリコーンゴムコンパウンド・SH-851U 100重量部(東レ・ダウコーニングシリコーン製、商品名)、加硫剤・C-19A 0.5重量部と同・C-19B 2.5重量部(前出)をミキシングロールにて混練した後、厚さ75μmのPETフィルム22上にカレンダーロール23にて幅300mm、0.1mmの厚さに塗布し、雰囲気温度150℃の熱風トンネル式乾燥炉(HAV)45で硬化させ、このフィルム46をロール47に巻き取った。
【0030】
さらに、シリコーンゴムコンパウンド・KE-151KU 75重量部と同・KE-76VBS 25重量部、加硫剤・C-1 0.15重量部と同・C-3M 3.0重量部、カラーBB 1.0重量部、さらにSOペースト 3.5重量部(いずれも信越化学工業製、商品名)をミキシングロールにて混練し、フィルム46上に、カレンダーロール23にて厚さ0.5mmに塗布してコート層を設け、ロール48に巻き取った後、これを切断刃24で切断して幅120mm、長さ250mmのシート49を形成した。
このシート49を抜き治具51内にセットし、コート層側からリング状に抜き加工し、不要部を取り去ってPETフィルム22上に多数の接続部材52を有する接続部材シート53を得た。このとき、リングの中穴はPETフィルム22ごと抜かれている。
【0031】
(工程d)
次に、図12に示すように、一体成形用金型の下型54にマイクホルダシート44をセットし、この上に位置決め用中板55を被せ、さらにこの上から接続部材シート53を接続部材52側を下に向けてセットし、接続部材52のリング中穴部分に、前記コネクタ36をセットして上型56を被せ、熱プレスにて150℃-5分間加熱して接続部材52を発泡硬化させることにより、マイクホルダ成形体43とコネクタ36とを一体化して一体成形シート57を形成した。
さらに、一体成形シート57を加熱オーブンで215℃-2時間二次加硫した後、マイクホルダ成形体43の周囲をバリ抜き加工治具58で切り取り、ホルダ一体型コネクタである圧接型コネクタCを形成した。
【0032】
なお、マイクホルダ成形体とコネクタを一体化するのに、図7(b)で示したように、必ずしも接続部材を介して行う必要はない。図7(a)のように接続部材を使用しない場合は、マイクホルダ成形体とコネクタのサポート材の少なくともいずれか一方を未加硫状態とし、熱プレスして一体化すればよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明のマイクの接続方法、接続構造は、圧接型コネクタとマイクホルダとを一体化したマイクホルダ一体型コネクタにマイクを収納し、マイクの端子電極もしくはこれから導かれたリード端子と実装基板の電極とを圧接型コネクタを用いて圧接することにより、圧縮された圧接型コネクタの反撥弾性により確実に接続することができる。
また、圧接型コネクタとマイクの端子電極との間に粘着剤層を設けることにより、振動やショックの影響を受けることなく確実な接続が保証され、さらに、機器ケースへの着脱が極めて容易となり、振動やショックの影響を受けることなく確実な接続が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の接続方法、接続構造を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の接続方法、接続構造の他の態様を示す概略断面図である。
【図3】 本発明の接続方法、接続構造の他の態様を示す概略断面図である。
【図4】 本発明の接続方法、接続構造の他の態様を示す概略断面図である。
【図5】 a)、(b)は、本発明に用いられる圧接型コネクタであり、それぞれ平面図(上図)と断面図(下図)を対で示す。
【図6】 (a)は、本発明で用いられる圧接型コネクタの他の態様を示す平面図であり、(b)は断面図である。
【図7】 本発明で用いられる他の態様の圧接型コネクタであり、(a)、(b)いずれもホルダ一体型コネクタを示す断面図である。
【図8】 本発明で用いられる圧接型コネクタAの製造工程の概略を示す工程図である。
【図9】 本発明で用いられる圧接型コネクタBの製造工程の概略を示す工程図である。
【図10】 本発明で用いられる圧接型コネクタCの製造に用いるマイクホルダの製造工程の概略を示す工程図である。
【図11】 圧接型コネクタCの製造に用いる接続部材の製造工程の概略を示す工程図である。
【図12】 マイクホルダ、接続部材及びコネクタを一体化して圧接型コネクタCを製造する製造工程の概略を示す工程図である。
【図13】 従来の、コネクタと実装基板との接続方法、接続構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1‥‥‥‥‥機器ケース
2‥‥‥‥‥実装基板
3‥‥‥‥‥電極
4‥‥‥‥‥マイク
5‥‥‥‥‥リード端子
6‥‥‥‥‥コネクタホルダ
7‥‥‥‥‥圧接型コネクタ
8‥‥‥‥‥マイクホルダ
9‥‥‥‥‥端子電極
10‥‥‥‥‥粘着剤層
11‥‥‥‥‥ホルダ一体型コネクタ
12‥‥‥‥‥弾性樹脂
13‥‥‥‥‥金属細線
15‥‥‥‥‥凹部
16‥‥‥‥‥接続部材
21‥‥‥‥‥ミキシングロール
22‥‥‥‥‥PET フィルム
23‥‥‥‥‥カレンダーロール
24‥‥‥‥‥切断刃
25,28,31,33,38,49‥‥シート
26‥‥‥‥‥真鍮線
27‥‥‥‥‥シリコーン接着剤
29‥‥‥‥‥シリコーンゴム板
30、35‥‥成形体
32‥‥‥‥‥ベリリウム銅線
34‥‥‥‥‥サポート材
36‥‥‥‥‥コネクタ
37‥‥‥‥‥粘着剤層
41‥‥‥‥‥金型
42‥‥‥‥‥バリ取り治具
43‥‥‥‥‥マイクホルダ成形体
44‥‥‥‥‥マイクホルダシート
45‥‥‥‥‥乾燥炉
46‥‥‥‥‥フィルム
47,48‥‥‥ロール
51‥‥‥‥‥抜き治具
52‥‥‥‥‥接続部材
53‥‥‥‥‥接続部材シート
54‥‥‥‥‥下型
55‥‥‥‥‥位置決め用中板
56‥‥‥‥‥上型
57‥‥‥‥‥ホルダ一体成形シート
58‥‥‥‥‥バリ抜き加工治具
a‥‥‥‥‥マイク
b‥‥‥‥‥リード端子
c‥‥‥‥‥実装基板
d‥‥‥‥‥電極
e‥‥‥‥‥半田付け
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-24 
出願番号 特願平9-239435
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H04R)
最終処分 取消  
前審関与審査官 松澤 福三郎  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 藤内光武
橋爪正樹
登録日 2002-10-18 
登録番号 特許第3361253号(P3361253)
権利者 信越ポリマー株式会社
発明の名称 コンデンサマイクロフォンの接続方法、接続構造  
代理人 嶋崎 英一郎  
代理人 山本 亮一  
代理人 嶋崎 英一郎  
代理人 山本 亮一  
代理人 荒井 鐘司  
代理人 荒井 鐘司  

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