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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01F
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01F
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01F
管理番号 1114571
異議申立番号 異議2003-73475  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-01-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3438231号「低損失磁性材料」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3438231号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続きの経緯
本件特許第3438231号に係る手続きの主な経緯は次のとおりである。
特許出願(特願平4-105371号) 平成 4年 3月31日
特許権設定登録 平成15年 6月13日
特許異議申立(特許異議申立人:吉田 浩史) 平成15年12月26日
取消理由通知 平成16年10月 5日
特許異議意見書・訂正請求書 平成16年12月13日

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の【請求項1】を
「【請求項1】 動作周波数帯域が500kHz〜2MHzである低損失磁性材料において、
酸化鉄、酸化亜鉛及び酸化マンガンを主成分とし、
副成分としてCaO0〜0.5モル%、SiO20〜0.1モル%、Ta2O50.01〜0.1モル%を含み、
焼結後の密度が4.74×103kg/m3以上で、
かつ平均結晶粒径が5.1〜6.8μmである
ことを特徴とする低損失磁性材料。」と訂正する。

(2)訂正事項b
明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】、【0011】、【0012】、【0013】、【0022】における「4.6×103kg/m3」を
「4.74×103kg/m3」と訂正する。

(3)訂正事項c
明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】、【0012】、【0013】、【0022】における「5.0〜7.0μm」を
「5.1〜6.8μm」と訂正する。

(4)訂正事項d
明細書の発明の詳細な説明の段落【0016】における【表1】の試料名中の「試料1」と「試料7」を削除するとともに、「試料2〜6」をそれぞれ「試料1〜5」と、「試料8〜12」をそれぞれ「試料6〜10」と訂正する。

(5)訂正事項e
明細書の発明の詳細な説明の段落【0020】における【表2】の「試料1」と「試料7」の全データを削除するとともに、試料名中の「試料2〜6」をそれぞれ「試料1〜5」と、「試料8〜12」をそれぞれ「試料6〜10」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項a
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に記載された焼結後の密度と平均結晶粒径の数値範囲を狭めて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。
さらに、訂正事項aについては、特許明細書の段落【0020】における【表2】の中の訂正前の「試料8」と「試料12」の記載から明らかであり、新規事項には当たらない。
したがって、訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項b〜e
訂正事項b〜eは、特許請求の範囲の訂正にともなって対応部分を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに当たる。
さらに、訂正事項b〜eは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 訂正の適否のむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議申立についての判断
1 本件発明
上記第2で示したように上記訂正は認められるので、本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 動作周波数帯域が500kHz〜2MHzである低損失磁性材料において、
酸化鉄、酸化亜鉛及び酸化マンガンを主成分とし、
副成分としてCaO0〜0.5モル%、SiO20〜0.1モル%、Ta2O50.01〜0.1モル%を含み、
焼結後の密度が4.74×103kg/m3以上で、
かつ平均結晶粒径が5.1〜6.8μmである
ことを特徴とする低損失磁性材料。」

2 特許異議申立の理由及び取消理由の概要
(1)特許異議申立の理由
特許異議申立人は、証拠として、
1.刊行物1(甲第1号証):特開平1-224265号公報
2.刊行物2(甲第2号証):「Proceedings of the Third Annual High Frequency Power Conversion Conference」での配付資料、1988/05/1-5発行、サンディエゴプリンスリゾートホテル・サンディエゴ・カルフオルニア州にて発行、タイトル:「A NEW POWER FERRITE FOR HIGH FREQUENCY SWITCHING POWER SUPPLIES」、P1-15
3.刊行物3(甲第3号証):日本金属学会誌、第52巻、第9号(1988)835-842、タイトル:「平均結晶粒度評価における結晶粒度分布の影響」
を提出し、本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明であるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、また、本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、本件特許は、明細書の記載が不備なため、特許法第36条第4項及び第5項の規定に違反してなされたものであり、特許を取り消すべき旨主張している。

(2)取消理由の概要
取消理由の概要は、以下のとおりである。
「1)本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
2)本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
3)本件特許は、明細書の記載が下記4の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第5項の規定に違反してなされたものである。


1.刊行物1(甲第1号証):特開平1-224265号公報
2.刊行物2(甲第2号証):「Proceedings of the Third Annual High Frequency Power Conversion Conference」での配付資料、1988/05/1-5発行、サンディエゴプリンスリゾートホテル・サンディエゴ・カルフオルニア州にて発行、タイトル:「A NEW POWER FERRITE FOR HIGH FREQUENCY SWITCHING POWER SUPPLIES」、P1-15
3.刊行物3(甲第3号証):日本金属学会誌、第52巻、第9号(1988)835-842、タイトル:「平均結晶粒度評価における結晶粒度分布の影響」

特許異議申立人が提出した特許異議申立書の「3.申立の理由」記載の理由により、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明であり、さらに、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.特許異議申立人が提出した特許異議申立書の「3.(6)(6-2)及び(6-3)」記載の点において不明瞭である。」

3 当審の判断
(1)特許法第36条第4項及び第5項についての判断
ア 特許異議申立人は、特許異議申立書第8頁の(6-2)第2の拒絶理由において、「本件特許明細書では、どこにも、平均結晶粒径の算出方法に関する記載は見当たらず、請求項1中で平均結晶粒径の範囲が明確に特定されているとは言えない」旨主張している。
しかし、算出(測定)方法の特定がない場合には、一般的にJISに基づくと推定するのが妥当であり、さらに、本件特許明細書の段落【0021】において、密度をJISで測定していることからも、平均結晶粒径は、JISで測定したものと推定されるので、本件発明が不明確であるとはいえない。

イ 特許異議申立人は、特許異議申立書第8〜9頁の(6-3)第3の拒絶理由において、「本件特許明細書のどこをみても、平均結晶粒径の上限の制御方法に関する記載は見当たらず、実施可能要件を満足しているとは言い難い」旨主張している。
しかし、本件特許明細書の表1と表2を見れば、平均結晶粒径は、焼結温度及びTa2O5の添加量で変化することが分かるので、平均結晶粒径の上限の制御方法は明らかであり、実施可能要件を満足していないとはいえない。

(2)特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項について
ア 刊行物に記載された発明
(ア)刊行物1に記載された発明
刊行物1は、フェライト焼結体に関するものであり、以下の点が記載されている。
「MnO、ZnOおよびFe2O3を主成分とするフェライト焼結体において、
平均結晶粒径が5μm以下であり・・・」(第1頁左欄の特許請求の範囲(1))
「本発明は、低損失のフェライト焼結体を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第4〜5行)
「平均結晶粒径が5μmを超えると、損失が増大する。」(第3頁左上欄第11〜12行)
「以上に説明した本発明のフェライト焼結体は・・・特に、動作周波数500〜1000kHz程度・・・低損失特性が効果的に実現する」(第3頁右下欄第10〜16行)
「MnO37モル%、ZnO9モル%、Fe2O354モル%、TiO23000ppm、Ta2O5600ppm、SiO2200ppm、CaO1200ppm」(第4頁左上欄第17〜20行)
さらに、第5頁の表1のサンプルNo.3(比較)には、「焼結温度1250℃、焼結時間3時間、平均結晶粒径dが6.9μm」である旨が記載されている。

(イ)刊行物2に記載された発明
刊行物2は、フェライトに関するものであり、以下の点が記載されている。
「改良されたフェライト材料」(第1頁「ABSTRACT」の第1行)
「0.5〜1MHzで低損失の新材質を開発した」(同第12〜13行)
「Fe2O3:54モル%、MnO:37モル%、およびZnO:9モル%からなる組成」(第3頁「1.EXPERIMENTAL PROCEDURE」の「1-1.Preparing the specimens」の第6〜7行)
「低損失を目的として添加される添加物(副成分)としてCaO,SiO2,Ta2O5」(同第10行)
「平均結晶粒径が4.6μm、焼結密度が4.74g/cm3」(第6頁の「Table1」の「Sample No.1」)
「平均結晶粒径が6.9μm、焼結密度が4.67g/cm3」(同「Sample No.2」)

(ウ)刊行物3に記載された発明
刊行物3には、平均結晶粒度の評価法は数多く提案されていること、同一組織を測定しても評価法が異なると、得られる平均結晶粒度の値が変わることが記載されている。

イ 本件発明と刊行物に記載された発明との対比・判断
本件発明と刊行物1〜3に記載された発明とを対比すると、刊行物1〜3には、本件発明の構成要素である「焼結後の密度が4.74×103kg/m3以上で、かつ平均結晶粒径が5.1〜6.8μmである低損失磁性材料」が、記載も示唆もされていない。
本件発明は、上記構成要素により、ヒステリシス損失及び渦電流損失を抑制することができ、高周波(500kHz〜2MHz)における磁心損失を大幅に低減することが可能になるという顕著な効果を奏する。
刊行物1については、その表1からも明らかなように平均結晶粒径が小さいほど電流損失が減少しており、さらに、「平均結晶粒径が5μmを超えると、損失が増大する。」との記載があるので、本件発明のように平均結晶粒径を5.1〜6.8μmにすることには阻害要因がある。
さらに、刊行物2については、そのSample No.1では、焼結密度が4.74g/cm3で本件発明の範囲内であるが、平均結晶粒径が4.6μmで本件発明の範囲外である。
したがって、本願発明は、刊行物1〜3に記載された発明であるとも、また、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。

4 特許異議申立についての判断のむすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び取消理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
低損失磁性材料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 動作周波数帯域が500kHz〜2MHzである低損失磁性材料において、
酸化鉄、酸化亜鉛及び酸化マンガンを主成分とし、
副成分としてCaO0〜0.5モル%、SiO20〜0.1モル%、Ta2O50.01〜0.1モル%を含み、
焼結後の密度が4.74×103kg/m3以上で、
かつ平均結晶粒径が5.1〜6.8μmである
ことを特徴とする低損失磁性材料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、スイッチング電源のトランスやテレビジョン受像機のフライバックトランス等に用いられる低損失磁性材料に関するものであり、特に高周波数帯域で使用される低損失磁性材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、スイッチング電源やテレビジョン受像機等においては、スイッチング周波数として20〜200kHz程度、最大磁束密度として200mT以下程度が想定されており、これに対応する低損失磁性材料としてMn-Zn系フェライトが多用されている。
【0003】
前記Mn-Zn系フェライトは、酸化鉄(Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化マンガン(MnO)を主たる出発原料とし、必要に応じて副成分を加えた後、混合、仮焼成、粉砕・造粒、プレス成形、本焼結することにより製造されるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のようにスイッチング周波数が比較的低い周波数である場合には、磁心損失はヒステリシス損失が支配的となり、したがってヒステリシス損失を低減することに重点が置かれている。しかしながら、スイッチング電源の小型化等を目的として、スイッチング周波数が500kHzを越えるようになると、ヒステリシス損失を抑制しながら渦電流損失を低減することが必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、500kHzを越える周波数帯域におけるヒステリシス損失及び渦電流損失を抑制することができ、高周波における磁心損失を大幅に低減することが可能な低損失磁性材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明は、動作周波数帯域が500kHz〜2MHzである低損失磁性材料において、酸化鉄、酸化亜鉛及び酸化マンガンを主成分とし、副成分としてCaO0〜0.5モル%、SiO20〜0.1モル%、Ta2O50.01〜0.1モル%を含み、焼結後の密度が4.74×103kg/m3以上で、かつ平均結晶粒径が5.1〜6.8μmとしたものである。
【0007】
本発明の低損失磁性材料は、Fe2O3、ZnO、MnOを主たる出発原料とし、通常の多結晶フェライトの製造プロセスに従って製造されるものである。すなわち、各出発原料を秤量、混合し、熱処理(いわゆる仮焼成)を行った後、粉砕する。しかる後、適当な大きさに造粒し、プレス等の手法によって任意の形状に成形した後、再び熱処理(本焼結)を行う。
【0008】
主成分であるFe2O3、ZnO、MnOの組成範囲は、軟磁気特性を有する組成に限定され、例えばFe2O350〜60モル%、ZnO5〜15モル%、残部MnOとされる。特に、ZnOに関して言えば、大振幅励磁されるため高飽和磁束密度が望まれることから、5〜15モル%とすることが好ましい。
【0009】
上述の磁性材料においては、ヒステリシス損失を減少させるために、1250〜1300℃の比較的高い温度で高密度(4.8×103kg/m3以上)に焼結することが考えられるが、この場合には結晶粒径が大きくなって渦電流損失が増大し、500kHz以上の高周波では磁心損失を低減することはできない。
【0010】
一方、渦電流損失を低減するには、焼結温度を低くして結晶粒を微細化することが有効であるが、単に焼結温度を下げただけでは焼結密度が下がり、ヒステリシス損失が増加するために、結果として磁心損失はあまり低減されない。
【0011】
したがって、本発明においては、焼結後の密度を4.74×103kg/m3以上とし、ヒステリシス損失を減少させて磁心損失を低減することを基本構成とするが、さらに平均結晶粒径の上限を規定し、渦電流損失も抑制して500kHz〜2MHzの高周波での使用に適したものとする。
【0012】
特に、副成分としてCaO0〜0.5モル%、SiO20〜0.1モル%、Ta2O50.01〜0.1モル%を含み、平均結晶粒径が5.1〜6.8μm以下で、かつ焼結後の密度が4.74×103kg/m3以上であるMn-Znフェライトが好適である。
【0013】
【作用】
500kHz〜2MHz程度の高周波で使用する低損失磁性材料においては、ヒステリシス損失と渦電流損失の両者を抑制して磁心損失を低減することが必要である。本発明においては、焼結後の密度を4.74×103kg/m3以上で、かつ平均結晶粒径を5.1〜6.8μmと規定することで、ヒステリシス損失が抑制されるとともに、渦電流損失が抑制され、結果として高周波帯域における低磁心損失が達成される。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を適用した実施例について、具体的な実験結果をもとに詳細に説明する。
【0015】
実験例1
先ず、Fe2O3、ZnO、MnOを主成分とし、副成分としてCaO、SiO2、Ta2O5を添加し、これら出発原料を表1に示す比率になるように秤量した後、ボールミルを用いて12時間混合した。
【0016】
【表1】

【0017】
各サンプルの副成分の範囲は、次のような理由で定められている。CaO、SiO2は、所定の量より少ないと結晶粒界の比抵抗が上がらず、渦電流損失が増大する。これらが所定量より多いと焼結時に異常粒成長が起こり、磁心損失が増大する。Ta2O5は、所定量より少ないと低温焼結したときに焼結密度が上がらず、磁心損失が増大する。逆に所定量より多いと、焼結時に異常粒成長が起こり、やはり磁心損失が増大する。
【0018】
次に、これを空気中、1000℃で3時間、仮焼成した。これは、主に混合原料粒子間の固体反応過程である。しかる後、ボールミルにて12時間粉砕し、ポリビニルアルコールを添加して造粒した。
【0019】
次いで、これを120MPaの圧力下で外径30mm、内径20mm、厚さ5mmにプレス成形した後、1150〜1250℃で4時間焼成(本焼結)して密度や平均結晶粒径の異なるMn-Znフェライトを得た。得られた各Mn-Znフェライトについて、密度及び磁心損失を測定した。結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
なお、密度及び磁心損失の測定方法は次の通りである。
密度 :JIS C2561フェライト磁心の材質性能試験方法7.8見掛密度の項において規定される方法のうち、7.8.1液中でひょう量する方法に準じて測定した。
磁心損失 :電子材料工業会標準規格 パワー用フェライト磁心の試験方法(EMAS-5003)「2.1コアロスの測定」において規定される波形記憶装置法に準じて測定した。
【0022】
この結果から、焼結後の密度を4.74×103kg/m3以上、かつ平均結晶粒径を5.1〜6.8μmの範囲とすることによって、高周波における磁心損失が大幅に減少することがわかる。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の低損失磁性材料においては、焼結後の密度や平均結晶粒径を適正なものとしているので、ヒステリシス損失及び渦電流損失を抑制することができ、高周波(500kHz〜2MHz)における磁心損失を大幅に低減することが可能である。
【0024】
したがって、スイッチング電源に用いられるコンバータトランス等を高周波化によって小型化でき、製造コストが低減される他、携帯用の電子機器の電源として非常に有用なものとなる。また、電源の効率が向上するので、電力を節約することができるという効果も得られる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-28 
出願番号 特願平4-105371
審決分類 P 1 651・ 531- YA (H01F)
P 1 651・ 121- YA (H01F)
P 1 651・ 534- YA (H01F)
P 1 651・ 113- YA (H01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 江畠 博竹井 文雄  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 浅野 清
橋本 武
登録日 2003-06-13 
登録番号 特許第3438231号(P3438231)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 低損失磁性材料  
代理人 田村 榮一  
代理人 田村 榮一  
代理人 小池 晃  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 伊賀 誠司  

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