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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01H
管理番号 1114590
異議申立番号 異議2003-71437  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-03 
確定日 2005-01-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3352560号「回路遮断器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3352560号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3352560号(請求項の数1)に係る発明についての出願は、平成7年3月13日に特許出願され、平成14年9月20日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1に係る特許について、申立人・西郷純一より特許異議の申立がなされ、平成16年6月7日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月16日に訂正請求がされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1における「前記他方の接触子側よりも前記開口部のほうが大きいか、もしくは等しいこと」を「前記他方の接触子側よりも前記開口部のほうが大きいこと」と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の段落【0006】中の「絶縁部材の中空空間を規定する側壁の内寸は、他方の接触子側よりも開口部のほうが大きいか、もしくは等しい。」を「絶縁部材の中空空間を規定する側壁の内寸は、他方の接触子側よりも開口部のほうが大きい。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、他方の接触子側に対する開口部の大きさの条件につき、「大きい」もしくは「等しい」としていたものを、「大きい」のみに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載した次のとおりのものである。
「接触・開離可能な1対の接触子と、
前記1対の接触子のいずれか一方の接触子側に開口部を有し、かつ前記1対の接触子が接触した状態で側壁がその接触部分の周囲を取囲むように他方の接触子側に配置された中空の絶縁部材とを備え、前記絶縁部材の中空空間を規定する前記側壁の内寸は、前記他方の接触子側よりも前記開口部のほうが大きいことを特徴とする、回路遮断器。」

(2)取消理由の概要
当審が通知した取消しの理由の概要は、以下の通りである。
本件発明は、その出願前に国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その発明の属する分野における通常の知識を有するものが、容易に発明をすることができたものと認められるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

刊行物1:特開平2-181336号公報(異議申立人の提出した
甲第1号証)
刊行物2:特開昭57-98943号公報(同甲第2号証)
刊行物3:特開昭61-195514号公報(同甲第3号証)
刊行物4:特開昭57-180816号公報(同甲第4号証)

(3)引用刊行物に記載された発明
上記刊行物1には、「回路遮断器」に関するものであって、第1、2図と共に以下の事項が記載されている。
ア.「固定接点及び可動接点を囲むようにして固定接触子及び可動接触子に受圧翼をそれぞれ設け、可動接触子の開離時に発生するアークガスを受圧翼に集中的に作用させる。これにより、アークガス圧を可動接触子に対するフローティング力として有効に利用し、特に遮断初期の開離力を増やすことができる。その結果、遮断瞬時に可動接触子が急速反転し、限流開始電流が小さくなる。」(第2頁右下欄第16行〜第3頁左上欄第3行)
イ.「固定接触子2及び可動接触子6には、固定接点1及び可動接点3を囲むように高耐熱性樹脂で作られた受圧翼24及び25が設けられている。固定側の受圧翼24は方形の皿状で、中心部に固定接点3の輪郭に合わせた窓があけられ、この窓に固定接点1を納めて固定接触子2にリベット26で固定されている。また、可動側の受圧翼25は、受圧翼24に対向する方形箱状の受圧部25aとその上面に垂直に一体形成された板状の取付部25bとからなっている。」(第3頁右下欄第8〜17行)
ウ.「可動側の受圧翼25の外側寸法は固定側の受圧翼24の内側寸法よりやや小さく、図示の固定,可動接触子の閉成状態で受圧翼25は受圧翼24の内側に入り込み、固定、可動接点1,3の周囲空間を閉塞している。」(第4頁左上欄第2〜6行)
エ.「限流遮断時には、固定,可動接点1,3間にアークガスが発生する。このアークガスは固定・可動接点1,3を取り囲む受圧翼25,26に集中的に受圧され、上記電磁反発力と共に可動接触子6に開離力を与える。」(第4頁左上欄第7〜11行)
オ.「アークガス圧を受圧翼25,26(「受圧翼24,25」の誤記)に作用させ、そのフローティング力で可動接触子6を駆動する」(第4頁左上欄第14〜16行)
カ.また、第2図には、可動接触子6に設けられた方形箱状の受圧部25aの開口部が固定接触子2側に位置し、固定接触子2及び可動接触子6の閉成状態で受圧部25aの側壁が固定接点1及び可動接点3の周囲を取囲むように配置された構成が示されている。
これらの記載事項及び図示内容によれば、刊行物1には、以下のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「固定接触子2及び可動接触子6と、固定接触子2側に開口部が位置し、固定接触子2及び可動接触子6の閉成状態で側壁が固定接点1及び可動接点3の周囲を取囲むように可動接触子6側に配置された高耐熱性樹脂で作られた方形箱状の受圧部25aとを備える回路遮断器。」

(4)対比
本件発明と引用発明とを対比すると、後者における「固定接触子2及び可動接触子6」がその作用・機能からみて前者における「接触・開離可能な1対の接触子」に相当し、以下同様に、「固定接触子2側に開口部が位置し」が「1対の接触子のいずれか一方の接触子側に開口部を有し」に、「固定接触子2及び可動接触子6の閉成状態」が「1対の接触子が接触した状態」に、「固定接点1及び可動接点3」が「その接触部分」に、「可動接触子6側」が「他方の接触子側」に、「高耐熱性樹脂で作られた方形箱状の受圧部25a」が「中空の絶縁部材」に、それぞれ相当している。
したがって、両者は、
「接触・開離可能な1対の接触子と、
前記1対の接触子のいずれか一方の接触子側に開口部を有し、かつ前記1対の接触子が接触した状態で側壁がその接触部分の周囲を取囲むように他方の接触子側に配置された中空の絶縁部材とを備える、回路遮断器」
において一致し、次の点で相違する。
(相違点)
中空の絶縁部材に関し、本件発明が、「絶縁部材の中空空間を規定する側壁の内寸は、他方の接触子側よりも開口部のほうが大きい」としたのに対し、引用発明では、方形箱状であるところから、同側壁の内寸は、他方の接触子側と開口部とが等しい関係にある点。

(5)判断
以下、上記相違点について検討する。
ところで、中空の絶縁部材に関し、本件の訂正明細書には、段落【0004】に「【発明が解決しようとする課題】この従来の技術による回路遮断器においては、このガス受圧板が平板状であるため、発生するアークガスは、絶縁成形物のケースの内側に形成される消弧室内に拡散する。このため、そのガス圧力を効率よく利用できず、遮断性能の向上には改善の余地があった。」と、段落【0008】に「【作用】請求項1に記載の回路遮断器では、接触子が開離するとき初期のアークが中空の絶縁部材の中で発生し、同時に発生するガスによってこの絶縁部材の内部圧力が瞬時に高圧となる。このため、その開口部から一方の接触子方向に向けてガスが集中的に噴射される。これにより1対の接触子が開離するようにガス圧が効率的に作用して接触子が高速開離する。しかも、この作用は開離初期ほど有効であるため、極めて遮断性能がよくなる。」と、段落【0026】に「なお、上記の実施例では、中空部材17は錐台状であるが、円錐台状や角錐台状などでもよく、また凹部8bの底部(基端部)に位置する一方端部と開口部をなす他方端部が同じ大きさの柱状であってもよい。」と、段落【0031】に「なお、この図4(a)〜(c)に示される各中空部材は柱状で示されているが、錐台状のものであってもよい。」と、それぞれ記載されている。
これらの記載によれば、従来、ガス受圧板が平板状であるためにガス圧力を効率よく利用できなかったという欠点を解消すべく、本件発明では、中空の絶縁部材を採用し、その開口部から一方の接触子方向に向けてガスを集中的に噴射してガス圧が効率的に作用するようにした点に特徴を有するものであり、中空の絶縁部材の側壁の内寸に関しては、他方の接触子側よりも開口部のほうが大きいか、もしくは等しいものであればよいと解することができる。
また、本件の訂正明細書には、「絶縁部材の中空空間を規定する側壁の内寸は、他方の接触子側よりも開口部のほうが大きい」とする大きさの程度については、数値的な特定が何等なされておらず、かつ、該大きさの程度に基づく作用効果上の違いも説明されていない。
そうすると、本件発明と引用発明との間の中空の絶縁部材の構成の差異に基づく作用効果に格別の相違はないと解するのが相当である。
そうであれば、引用発明において、アークガス圧を可動接触子に対するフローティング力として有効に利用する(上記(3)ア.参照)との課題の範囲内で、上記相違点に係る本件発明の構成のように改変する程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないといわざるをえない。
したがって、本件発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

なお、本件特許権者は、平成16年8月16日付けの特許異議意見書において、『絶縁部材の側壁の内寸が他方の接触子側と開口部とで等しい構成では、本件訂正特許発明の構成と比較して、アークガスの排出方向を集中できるが、中空空間の断面積が一定であるためあまり断熱膨張が期待できず、排出されるアークガスの量が少ないため接触子を開離させるための反力が大きくならない。』(第6頁第10〜13行)と主張している。
しかしながら、「中空空間の断面積」と「接触子を開離させるための反力」との関係は、訂正明細書に何等記載されていない事項であると共に自明な事項であるとも認められず、また一般に、アークガスの排出方向を集中させたものの方が、それを分散させたものより、接触子を開離させるための反力が得られ易くなると解釈するのが普通であるから、上記反力が引用発明より大きいとする効果を本件発明の特有の効果と認めることはできない。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
回路遮断器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 接触・開離可能な1対の接触子と、
前記1対の接触子のいずれか一方の接触子側に開口部を有し、かつ前記1対の接触子が接触した状態で側壁がその接触部分の周囲を取囲むように他方の接触子側に配置された中空の絶縁部材とを備え、前記絶縁部材の中空空間を規定する前記側壁の内寸は、前記他方の接触子側よりも前記開口部のほうが大きいことを特徴とする、回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、回路遮断器の短絡遮断性能の向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回路遮断器では、短絡電流を遮断するとき開閉接触部において発生する高温のアークによって、周辺金属が気化し開閉接触部付近に多量のガスが発生する。この多量のガスによるガス圧力を利用して短絡遮断性能を向上させる技術が、特開昭60-112222号公報に開示されている。
【0003】
具体的には、この従来技術は、成形絶縁物からなるケースに開閉接触部が収納される配線用遮断器に関するもので、この配線用遮断器は1対の接触子を含んでいる。この1対の接触子は、互いに開離することによって電流を遮断するように対向して配置されている。また、この接触子にはガス受圧板が設けられ、ガス圧力によって接触子の開離速度が高められ、遮断性能が向上されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この従来の技術による回路遮断器においては、このガス受圧板が平板状であるため、発生するアークガスは、絶縁成形物のケースの内側に形成される消弧室内に拡散する。このため、そのガス圧力を効率よく利用できず、遮断性能の向上には改善の余地があった。またアークガスの圧力に耐えるに十分な強度を有するケースを必要とし、高価な絶縁材料と強度的に十分な構造のものとする必要があり、経済上の問題点もあった。
【0005】
したがって、この発明の目的は、短絡電流に対する遮断性能がよく、経済的な回路遮断器を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の回路遮断器は、1対の接触子と、中空の絶縁部材とを備えている。1対の接触子は、接触・開離可能である。中空の絶縁部材は、1対の接触子のいずれか一方の接触子側に開口部を有し、かつ1対の接触子が接触した状態で側壁がその接触部分の周囲を取囲むように他方の接触子側に配置されている。絶縁部材の中空空間を規定する側壁の内寸は、他方の接触子側よりも開口部のほうが大きい。
【0007】
【0008】
【作用】
請求項1に記載の回路遮断器では、接触子が開離するとき初期のアークが中空の絶縁部材の中で発生し、同時に発生するガスによってこの絶縁部材の内部圧力が瞬時に高圧となる。このため、その開口部から一方の接触子方向に向けてガスが集中的に噴射される。これにより1対の接触子が開離するようにガス圧が効率的に作用して接触子が高速開離する。しかも、この作用は開離初期ほど有効であるため、極めて遮断性能がよくなる。
【0009】
また、アークガスの噴射の流れが気体流体力学的にスムースとなる。このため、絶縁部材の強度を適正なものにできる他、ガス圧を効率的に利用することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明による回路遮断器の一実施例を図1ないし図3によって説明する。
【0011】
図1、図2および図3は、本発明の一実施例における回路遮断器の閉路状態、接点が開離初期の状態、および遮断終期の状態における要部側面断面図である。
【0012】
図1を参照して、この実施例における回路遮断器は、多極型回路遮断器である。またこの回路遮断器は、成形絶縁物のベースおよびカバーよりなるケース1の中に収納される導電部と、消弧装置3と、開閉機構部と、ハンドル2と、引外し機構部とを有している。導電部および消弧装置3は各極ごとに設けられ、導電部は開閉接触部を含んでいる。また開閉機構部、ハンドル2および引外し機構部は各極共通に設けられ、開閉機構部は開閉接触部を開閉し、ハンドル2は開閉機構部を手動で操作し、引外し機構部はいずれかの極に過電流が流れたとき開閉機構部を介して開閉接触部を開離する。
【0013】
なお、開閉機構部と引外し機構部とは、本発明の主要部ではないため、図面ならびに詳細説明は省略する。
【0014】
導電部は、電源側端子を兼ねる固定接触子4と、固定接触子4に設けられた固定接点5が固着した接点台6と、固定接点5と接離可能な可動接点7を固着した可動接触子8と、可動接触子8に固着した可とう線9と、図示されない負荷側端子とを有している。
【0015】
可動接触子8は、可動接触子ホルダ10の軸11を支点として回動可能に保持され、可動接触子8に備えられた軸と可動接触子ホルダ10との間に張架された接圧ばね12によって図中反時計方向に偏倚している。この接圧ばね12によって、図1に示す投入状態において可動接点7と固定接点5との間には接触圧力が発生している。なお、可動接触子ホルダ10は固定の軸22によって回動可能に軸支され、開閉機構部によって回動操作される。各極の可動接触子ホルダ10は、クロスバー13によって一体的に連結されている。消弧装置3は、磁性材からなる複数の消弧グリッド14が、対向する絶縁サポート15に取り付けられた構成になっている。
【0016】
次に、本願の特徴部分である開閉接触部の構造について説明する。
図1を参照して、固定接触子4には固定接点5と、接点台6と、絶縁カバー16とが取付けられている。固定接点5は接点台6を介して固定接触子4に取り付けられている。絶縁カバー16は、固定接点5と可動接点7との間に発生する高温のアークによる損傷を防止するため、固定接触子4および接点台6の周囲を覆い、後述する中空部材17の開口端部を囲うように外周が柱状になっている。
【0017】
また可動接触子8の固定接点5と対向する位置には、凹部8bが形成されている。この凹部8bは、底部(基端部)から開口部に向かうほど開口寸法が広くなるように、すなわち末広がりとなるように形成されている。また凹部8bの底部(基端部)には可動接点7を固着する接点台8aが形成されている。可動接触子8の凹部8bの底部(基端部)から開口部への壁面に沿って錐台状の絶縁部材からなる中空部材17が取り付けられている。この中空部材17は、その側面17aが、固定接点5と可動接点7との接触部分よりさらに固定接触子4側へ延在し、可動接点7、固定接点5および接点台6の周囲を取囲んでいる。
【0018】
このように構成される回路遮断器が、図1の投入状態から、▲1▼ハンドル2を操作することにより、または▲2▼短絡電流が流れることにより、固定接点5と可動接点7との開離状態へ移行する動作について以下に説明する。
【0019】
▲1▼まず、ハンドル2を操作し、接触子5と7とを開離させる動作については、本願の主要部ではないので簡単に説明する。ハンドル2を図中時計方向に回動させると図示されない開閉機構部が動作して、可動接触子ホルダ10が可動接触子8とともに図中時計方向に回動し、可動接点7が固定接点5から開離する。
【0020】
▲2▼また、この回路遮断器に短絡電流のような大きな電流が流れたときは、図示されない引外し機構部が動作して開閉機構部が動作し、固定接点5と可動接点7とが開離する動作を開始する。このような動作では、短絡電流の流れ始めから両接点が開離するまでに機械的に時間遅れが生じる。しかし、このような機構の動作と並行して短絡電流が流れると固定接点5と可動接点7との間には電磁反発力が発生し、両接点が瞬時に開離する。この状態が図2に示される。
【0021】
図2を参照して、可動接触子ホルダ10が回動することなく、電磁反発力によって可動接点7が固定接点5から開離してそれらの間にアークが発生する。この温度の高いアークによって固定接点5および可動接点7の一部などが気化する。これにより、中空部材17によって囲まれる小さいスペース内にアークガスが発生する。したがって、中空部材17内では、このアークガスによって圧力が高くなる。
【0022】
このため、アークガスは、その開口部から矢印A方向に沿って固定接点5および絶縁カバー16の方向に方向性を持って噴射するように排気される。この噴射状の排気の反動によって可動接触子8が、可動接点7と固定接点5とが開離する方向に高速で移動する。これにより、アーク抵抗が急速に増加して遮断時間が短くなり、またアーク電流も制限されアークエネルギも小さくなって遮断性能がよくなる。この遮断の最終段階が図3に示される。
【0023】
図3を参照して、この状態では、アークは消弧装置3に誘引されてアーク長が長くなり、かつ消弧グリッド14によって冷却されてアーク抵抗がさらに大きくなり、アークが消滅して遮断が完了する。
【0024】
なお、この動作の間に、前述の引外し機構部が動作して、開閉機構部を介して可動接触子ホルダ10が図中時計方向に回動して、可動接触子8を開離位置に保持して、図示していないが最終の遮断完了位置になる。
【0025】
このように、この実施例の回路遮断器では、大電流を遮断するときアークエネルギが小さくなり、発生するガス量が少なく、ケース1内の圧力も大きくならないため、その強度を大きくする必要がなくなる。
【0026】
なお、上記の実施例では、中空部材17は錐台状であるが、円錐台状や角錐台状などでもよく、また凹部8bの底部(基端部)に位置する一方端部と開口部をなす他方端部が同じ大きさの柱状であってもよい。
【0027】
上述の実施例では、中空部材を可動接触子側に設けた例について説明したが、本願発明による回路遮断器の中空部材は、この実施例に限定されず、たとえば図4の(a)〜(c)に示される構成のものでもよい。
【0028】
図4(a)〜(c)は、本発明の一実施例における回路遮断器に用いられる中空部材の変形例を示す側面図である。
【0029】
まず図4(a)を参照して、中空部材20aは、固定接点5を固着した固定接触子18側に備えられてもよい。また図4(b)を参照して、中空部材20bを固定接触子18側に設け、さらにこの中空部材20bの外周壁を取囲む壁面を有する中空部材21bが、可動接点7を固着する可動接触子19側に設けられてもよい。また図4(c)を参照して、中空部材20cが可動接触子19側に設けられ、この中空部材20cの外周壁を取囲む壁面を有する中空部材21cが固定接触子18側に設けられてもよい。
【0030】
図4(b)および(c)に示す例では、二重の中空部材により固定接点5と可動接点7との接触部が囲まれている。このため、内側の中空部材20b、20cから噴射されたガスが外側の中空部材21b、21cによって拡散が制限され、可動接触子19の開離駆動力を増加させることができる。
【0031】
なお、この図4(a)〜(c)に示される各中空部材は柱状で示されているが、錐台状のものであってもよい。
【0032】
さらに、いずれの実施例も接触子は一方が固定接触子、他方が可動接触子の回路遮断器であるが、電磁反発力によって双方が可動型の接触子を有する回路遮断器であってもよい。
【0033】
【発明の効果】
この発明によれば、接触子を高速で開離することができるため、遮断性能がよく、さらにケースの内部圧力を低く抑えることができるため強度の小さいケースでよい経済的な回路遮断器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の一実施例における回路遮断器の閉路状態における要部側面断面図である。
【図2】
この発明の一実施例における回路遮断器の接点が開離初期の状態における要部側面断面図である。
【図3】
この発明の一実施例における回路遮断器の遮断終期の状態における要部側面断面図である。
【図4】
この発明の一実施例における回路遮断器に用いられる中空部材の変形例(a)〜(c)を示す図である。
【符号の説明】
4、18 固定接触子
5 固定接点
6 接点台
7 可動接点
8、19 可動接触子
16 絶縁カバー
17、20a、20b、20c、21a、21b、21c 中空部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-09 
出願番号 特願平7-52903
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01H)
最終処分 取消  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 一色 貞好
和泉 等
登録日 2002-09-20 
登録番号 特許第3352560号(P3352560)
権利者 寺崎電気産業株式会社
発明の名称 回路遮断器  
代理人 深見 久郎  
代理人 酒井 將行  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  
代理人 森田 俊雄  
代理人 堀井 豊  
代理人 堀井 豊  
代理人 酒井 將行  
代理人 仲村 義平  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 野田 久登  

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