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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1114628
異議申立番号 異議2003-71699  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-07 
確定日 2005-01-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3361556号「回路配線パタ-ンの形成法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3361556号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3361556号(以下、「本件特許」という)は、平成4年9月25日に出願された特願平4-280973号に係り、本件特許について、表記特許異議申立人より特許異議の申立てがあったので、当審において審理の上、平成16年6月8日付で取消理由(取消理由A及びB)を通知したところ、その指定期間内である平成16年8月11日に、意見書の提出と共に訂正請求があったものである。

第2.平成16年8月11日付訂正請求の適否
1.訂正の内容(訂正事項A、B)
<訂正事項A>
特許請求の範囲の請求項1、4、5を削除し、訂正前の請求項2、3を、新たな請求項1、2に繰り上げる。
<訂正事項B>
訂正前の明細書【0011】の記載事項を削除して、同【0012】以下の記載事項を順次繰り上げる。

2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、拡張又は変更の存否
<訂正事項A>について
訂正事項Aの訂正は、特許法第120条の4第2項但し書き第1号(平成15年法律第47号による改正前のもの。以下、特にことわりのない限り、政令を含めて同様である)に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものと認められる。
そして、同訂正事項は、願書に添付した明細書または図面に記載した範囲内の訂正であり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。
<訂正事項B>について
訂正事項Bは、上記訂正事項Aを受けて、明細書の発明の詳細な説明の記載を、訂正後の特許請求の範囲に整合させようとするものである。
従って、訂正事項Bは、特許法第120条の4第2項但し書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明に該当するものと認められる。
また、この訂正事項も、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。

3.訂正請求の認容
上記のとおりであるから、上記各訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の4第3項において準用され、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定で、なお従前の例によるとされることにより適用される、上記平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合するので、平成16年8月11日付の訂正請求を認める。

第3.特許異議申立てについて
1.特許異議申立てに係る本件発明の認定
上記第2.に示したように、上記訂正請求は認容されるから、当該訂正請求に係る訂正明細書を本件特許明細書とし、本件特許異議申立てに係る発明は、当該特許明細書における特許請求の範囲の請求項1、2のそれぞれに記載された事項によって特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成し、上記溝に対する導電性物質の充填処理により回路配線パターンを形成する方法に於いて、上記絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成した後、上記絶縁べース材の表面にメッキでは形成できない機能性皮膜を形成する工程と、上記溝を含む上記機能性皮膜の面上に導電性物質の層を形成する工程と、上記絶縁べース材に形成された上記溝のみに上記機能性皮膜及び導電性物質の層が存在し、且つ上記絶縁べース材の上記溝に形成された上記機能性皮膜及び導電性物質からなる回路配線パターンの間隙部分が露出するように上記導電性物質の側から研磨して上記回路配線パターンの間隙部に上記絶縁べース材を露出させる工程とを有する回路配線パターンの形成法。」(以下、「本件発明1」という)
「【請求項2】絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成し、上記溝に対する導電性物質の充填処理により回路配線パターンを形成する方法に於いて、上記絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成した後、上記絶縁べース材の表面にメッキでは形成できない機能性皮膜を形成する工程と、上記溝を含む上記機能性皮膜の面上に導電性物質の層を形成する工程と、上記導電性物質の層の上面の所要の位置にレジスト層を形成した後、露出部分を選択的に除去して上記絶縁べース材の上記溝に形成された上記機能性皮膜及び導電性物質からなる回路配線パターンの間隙部分に上記絶縁べース材を露出させる工程とを有する回路配線パターンの形成法。」(以下、「本件発明2」という)

2.引用例とその記載事項の概要
これに対して、当審より通知した、上記の取消理由(取消理由A)では、本件特許に係る出願より前に頒布された刊行物として、特開平1-135092号公報(本件異議申立事件における甲第1号証であって、以下、「刊行物1」という)及び、特開平3-104187号公報(同じく、甲第6号証であって、以下、「刊行物2」という)を引用したが、各刊行物に記載された事項の概要は次のとおりである。
(1)刊行物1(特開平1-135092号公報)の記載事項(イ、ロ)
イ 「導体となるべき部分が溝となるように設計された金型に熱可塑性樹脂を射出成型して基板とする工程と、無電解めっきを施して前記基板表面に導体層を形成する工程と、前記導体層表面に液体エッチングレジストを塗布する工程と、前記エッチングレジストを硬化させた後、前記溝上以外のエッチングレジストを除去する工程と、前記溝上以外の前記導体層の露出部分をエッチング除去する工程と、残りのエッチングレジストを除去する工程とを備えていることを特徴とする印刷配線板の製造方法。」(第1頁左下欄第5〜14行)
ロ 「第2図は本発明の第2の実施例の印刷配線板の製造方法を工程順に示す断面図である。本実施例の印刷配線板の製造方法は、まず第2図(a)のごとく、・・・導体回路形成のための溝3が設けられるよう設計した金型を用いて熱可塑性樹脂を射出成型し、基板1とする。
次に、第2図(b)のごとく、基板1に無電解めっきを施して導体層4を形成する。・・・次に第2図(c)のごとく、基板1の表面の導体層4を研磨除去し、所望の回路パターンを得た。」(第2頁右下欄第17行〜第3頁左上欄第7行)
(2)刊行物2(特開平3-104187号公報)の記載事項(ハ、ニ)
ハ 「本発明により使用した・・・誘電体中に、回路チャンネルのパターンが作られた後、パターン化された全表面は金属により被覆される。
この金属は真空蒸着、スパッタリングおよび電気メッキを含む公知技術により被着することができる。本発明の好ましい態様によれば、比較的うすい・・・約200オングストロームの、クロムまたはチタンの層が付着されついで銅の層が被着される。このクロムまたはチタンは銅と誘電体との間の接着性を促進させる。全体の金属層は回路チャンネルの深さより厚くなければならない。・・・つぎに、不要な区域(すなわち、回路チャンネルを除く全区域)上の金属はマイクロ加工によってとり除かれる。マイクロ加工の例は・・・マイクロ研磨などである。」(第10頁右上欄第18行〜同右下欄第4行)
ニ 「約1ミルの厚さの感光性エポキシフィルムを、厚さ25ミクロンの皮膜を作るため溶液から試料上にスピン塗布した。皮膜は溶剤を除去するために・・・熱板上で乾燥した。・・・1ミルの線幅と2ミルのピアスとを含む回路パターンが、この誘電体中に・・・UV放射線で、ガラスマスクを通じて露光することにより画定され・・・架橋反応を促進させるため・・・焼成した。
未露光の区域は約0.6psi・・・で約60秒間トリクロロエタンを吹き付けることにより現像された。・・・このパターン化した表面に約2ミクロンの銅をスパッタリングにより被着した。接着を強化するために銅の層の下にうすいクロムの層を付与する。この銅層の上に電気メッキにより計25ミクロンの厚さの銅の層を作った。
誘電体表面上の銅は・・・マイクロ研磨することにより・・・毎回5ミクロンの除去を5回行った。
誘電体中に埋め込まれ良く画定された回路パターンが得られた。」(第13頁左下欄第4行〜同右下欄第13行)

3.発明の対比
(1)[構成事項の対比]
本件発明1と刊行物1の記載事項ロとを対比すると、同記載事項中の「導体回路形成のための溝3が設けられるよう設計した金型を用いて熱可塑性樹脂を射出成型」して「基板」としたものは、本件発明1でいう、「絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成」したものに相当する。
また、同じく記載事項ロの「基板1に無電解めっきを施して導体層4を形成する。・・・次に・・・基板1の表面の導体層4を研磨除去し、所望の回路パターンを得た」という記載は、<上記溝を含む基板面上に導電性物質の層を形成する工程>と、<基板に形成された上記溝のみに上記導電性物質の層が存在し、且つ上記基板の上記溝に形成された上記導電性物質からなる回路配線パターンの間隙部分が露出するように上記導電性物質の側から研磨して上記回路配線パターンの間隙部に上記基板の絶縁部を露出させる工程>を示すものとみることができる。
したがって、記載事項ロでは、本件発明1でいう「上記溝に対する導電性物質の充填処理により回路配線パターンを形成する方法に於いて、上記絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成した後」、「上記溝を含む」「面上に導電性物質の層を形成する工程と、上記絶縁べース材に形成された上記溝のみに」「上記導電性物質の層が存在し、且つ上記絶縁べース材の上記溝に形成された上記導電性物質からなる回路配線パターンの間隙部分が露出するように上記導電性物質の側から研磨して上記回路配線パターンの間隙部に上記絶縁べース材を露出させる工程とを有する回路配線パターンの形成法」も開示しているといえる。
(2)[一致点と相違点]
上記の対比から、本件発明1と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
【一致点】「絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成し、上記溝に対する導電性物質の充填処理により回路配線パターンを形成する方法に於いて、上記絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成した後、上記溝を含む面上に導電性物質の層を形成する工程と、上記絶縁べース材に形成された上記溝のみに上記導電性物質の層が存在し、且つ上記絶縁べース材の上記溝に形成された上記導電性物質からなる回路配線パターンの間隙部分が露出するように上記導電性物質の側から研磨して上記回路配線パターンの間隙部に上記絶縁べース材を露出させる工程とを有する回路配線パターンの形成法」に係る発明である点。
【相違点】本件発明1は「絶縁べース材の表面にメッキでは形成できない機能性皮膜を形成する工程」を備え、したがって、絶縁べース材の溝に「機能性皮膜及び導電性物質の層が存在」することになる。これに対して、刊行物1には、上記機能性皮膜に係る工程について言及はなく、また、溝中に存在するものとしては「無電解メッキ」を施した「導体層」というにとどまる点。

4.相違点の検討
刊行物2(記載事項ハ)の「真空蒸着、スパッタリング」は、本件発明1でいう「メッキでは形成できない」皮膜を形成することができる工程といえるし、同じく「クロムまたはチタンの層が付着され・・・クロムまたはチタンは銅と誘電体との間の接着性を促進させる」という記載において、上記の「クロムまたはチタンの層」は、「機能性皮膜」に言及したものとみることができる。
また、記載事項ハでは、上記の記載に加えて「約200オングストロームの、クロムまたはチタンの層が付着されついで銅の層が被着される。」「全体の金属層は回路チャンネルの深さより厚くなければならない。」とされ、更に、記載事項ニには、「パターン化した表面に約2ミクロンの銅をスパッタリングにより被着した。接着を強化するために銅の層の下にうすいクロムの層を付与する。この銅層の上に電気メッキにより計25ミクロンの厚さの銅の層を作った」「誘電体表面上の銅は・・・マイクロ研磨する」「誘電体中に埋め込まれ良く画定された回路パターンが得られた」旨の記載があり、このような記載は、回路チャンネルに<機能性皮膜及び導電性物質の層>が形成されることを示したものといえる。
そうすると、刊行物2には、上記相違点に係る本件発明1の構成が、実質上、開示されているといえる。そして、熱可塑性樹脂等の樹脂表面にメッキを施す場合に、メッキ層の接着性を促進するための手段を講じるのは当該技術分野における周知の技術事項であることを考慮すれば、刊行物1記載の発明において、刊行物2に開示された上記の構成を採用することは、当業者が必要に応じて容易になしうる設計事項といえる。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件発明2について
本件発明2と刊行物1の記載事項イとを対比すると、同記載事項の「導体層表面に液体エッチングレジストを塗布する工程と、前記溝上以外のエッチングレジストを除去する工程と、前記溝上以外の前記導体層の露出部分をエッチング除去する工程と、残りのエッチングレジストを除去する工程」は、本件発明2の「上記導電性物質の層の上面の所要の位置にレジスト層を形成した後、露出部分を選択的に除去して上記絶縁べース材の上記溝に形成された」「導電性物質からなる回路配線パターンの間隙部分に上記絶縁べース材を露出させる工程」に相当するものといえる。
また、上記記載事項イには、記載事項ロと同様に、「絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成し、上記溝に対する導電性物質の充填処理により回路配線パターンを形成する方法に於いて、上記絶縁べース材の少なくとも一方面に、回路配線パターンを形成する所要の位置に溝を形成した後、上記溝を含む面上に導電性物質の層を形成する工程」とを有する回路配線パターンの形成法」に係る発明が開示されていることは明らかである。
そうすると、本件発明2と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点は、本件発明1と同様のものとなる。
したがって、本件発明2も、本件発明1と同様に、上記刊行物1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもので、請求項1及び2に係る本件特許は、拒絶査定をするべき出願に対してされたことになるから、平成6年12月法律第116号附則第14条の規定に基づき適用される、平成7年5月政令205号第4条第2項の規定によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
回路配線パタ-ンの形成法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】絶縁ベ-ス材の少なくとも一方面に、回路配線パタ-ンを形成する所要の位置に溝を形成し、上記溝に対する導電性物質の充填処理により回路配線パタ-ンを形成する方法に於いて、上記絶縁ベ-ス材の少なくとも一方面に、回路配線パタ-ンを形成する所要の位置に溝を形成した後、上記絶縁ベ-ス材の表面にメッキでは形成できない機能性皮膜を形成する工程と、上記溝を含む上記機能性皮膜の面上に導電性物質の層を形成する工程と、上記絶縁ベ-ス材に形成された上記溝のみに上記機能性皮膜及び導電性物質の層が存在し、且つ上記絶縁ベ-ス材の上記溝に形成された上記機能性皮膜及び導電性物質からなる回路配線パタ-ンの間隙部分が露出するように上記導電性物質の側から研磨して上記回路配線パタ-ンの間隙部に上記絶縁ベ-ス材を露出させる工程とを有する回路配線パタ-ンの形成法。
【請求項2】絶縁ベ-ス材の少なくとも一方面に、回路配線パタ-ンを形成する所要の位置に溝を形成し、上記溝に対する導電性物質の充填処理により回路配線パタ-ンを形成する方法に於いて、上記絶縁ベ-ス材の少なくとも一方面に、回路配線パタ-ンを形成する所要の位置に溝を形成した後、上記絶縁ベ-ス材の表面にメッキでは形成できない機能性皮膜を形成する工程と、上記溝を含む上記機能性皮膜の面上に導電性物質の層を形成する工程と、上記導電性物質の層の上面の所要の位置にレジスト層を形成した後、露出部分を選択的に除去して上記絶縁ベ-ス材の上記溝に形成された上記機能性皮膜及び導電性物質からなる回路配線パタ-ンの間隙部分に上記絶縁ベ-ス材を露出させる工程とを有する回路配線パタ-ンの形成法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種電子機器に広く採用実施されている絶縁ベ-ス材上に所要の回路配線パタ-ンを有する回路配線基板に関し、特には、その回路配線パタ-ンの形成法に関する。
【0002】更に詳述すれば、エッチング処理、又は、メッキ処理等の従来方法による工程では形成できない回路配線パタ-ンの形成方法に関する。
【0003】
【従来の技術】従来、回路配線基板上に形成されている回路配線パタ-ンの形成方法は、図5(1)〜(2)に示す方法がある。先ず、同図(1)に示すとおり、絶縁ベ-ス材21と銅箔22を主要構成部材とする銅張積層板23の銅箔22の表面に所要の回路配線パタ-ン形状を有するレジスト層24を通常のフォトファブリケ-ションによって形成する。次に、同図(2)のように、露出されている部分を、エッチング除去し、上記レジスト層24を剥離除去して回路配線パタ-ン25を形成する所謂サブトラクティブ法が採用されている。
【0004】また、他の方法としては、図6(1)〜(2)に示す方法がある。これは、先ず、同図(1)に示すように、銅箔無しの接着材付絶縁ベ-ス材26上に回路配線パタ-ン形成部を除く部分にメッキレジストパタ-ン27を形成し、続いて同図(2)に示すように、回路配線パタ-ン部のみに無電解メッキ、電解メッキ等の手段によって所要の厚さの導体28を析出させた後、上記メッキレジスト27を除去する、所謂アディティブ法によって形成される。
【0005】また、上記従来の方法に於いて、回路配線パタ-ン表面に、例えば金、ニッケル等の表面処理層を必要とする場合は、メッキ法により皮膜を形成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来方法に於いては、回路配線パタ-ン表面に、例えば、チタン、セラミック、アモルファス金属層等のメッキ形成不可能な皮膜を有する回路配線パタ-ンの形成は不可能である。また、メッキ、エッチングができない物質からなる回路配線パタ-ンを形成することは不可能である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来、不可能とされていた表面処理層を有する回路配線パタ-ンを形成する方法を提供するものである。
【0008】その為に、本発明に於いては、絶縁ベ-ス材の少なくとも一方面に、回路配線パタ-ンを形成する所要の位置に溝を形成した後、上記溝に対する導電性物質の充填処理工程と、上記絶縁性ベ-ス材に形成された溝部のみに、上記工程にて形成されたこれら導電性層が存在し且つ上記絶縁性ベ-ス材の上記溝部に形成された導電性層からなる回路配線パタ-ンの間隙部分が露出するように上記導電性層を除去する工程と、更に該回路配線パタ-ン表面に絶縁性表面保護層を形成する工程を有することを特徴とする回路配線パタ-ンの形成法が採用される。
【0009】また、上記工程に於いて、回路配線パタ-ン表面に各種機能性皮膜を形成する方法としては、絶縁ベ-ス材の少なくとも一方面に、回路配線パタ-ンを形成する所要の位置に溝を形成した後、該絶縁ベ-ス材表面に機能性皮膜を形成する工程を採用することによって形成することが出来る。
【0010】更に、他の形成方法としては、絶縁ベ-ス材の少なくとも一方面に、回路配線パタ-ンを形成する所要の位置に溝を形成した後、該絶縁ベ-ス材表面に導電性皮膜を形成する工程と、上記絶縁性ベ-ス材に形成された溝部のみに、上記工程にて形成されたこれら導電性皮膜が存在し上記絶縁性ベ-ス材が露出するように導電性皮膜を除去する工程と、上記導電性皮膜上に絶縁性表面保護層を形成する工程を有する工程を採用することもできる。
【0011】また、溝を形成する方法としては、絶縁ベ-ス材上に所望の形状にレジスト層を形成したのち、上記絶縁性ベ-ス材のエッチングによっても形成する方法と、絶縁ベ-ス材の、成形加工によって形成することも可能である。
【0012】そして、上記工程に記載の導電性層及び、機能性皮膜、導電性皮膜を除去してパタ-ン間隙に絶縁ベ-ス材層を露出させる工程は、上記導電性層及各種皮膜側からの切削研磨加工と、上記導電性層の所要の位置にレジスト層を形成した後、露出部分を選択的に除去する工程が適宜選択可能である。
【0013】
【実施例】以下、図示の実施例を参照しながら更に詳述する。図1(1)〜(6)に、メッキによっては形成が困難な表面処理金属層を有する銅回路配線パタ-ンを形成した回路配線基板の製造工程図を示す。特に、ここでは絶縁ベ-ス材に形成する溝をエキシマレ-ザ-光の照射によって形成する工程を示す。
【0014】先ず、同図(1)の如く、例えば無接着剤型の銅張積層板を用意し、絶縁ベ-ス材1の少なくとも一方面に、通常のフォトファブリケ-ション法によって、最終的に必要な回路配線パタ-ンのネガパタ-ン形状のメタルマスク層2を形成する。
【0015】続いて、同図(2)の如く、メタルマスク層2側からエキシマレ-ザ-光Aを照射し、回路配線パタ-ンを形成するための溝3をアブレ-ション形成すると共に、不要となったメタルマスク層2をエッチング除去する。
【0016】次に、同図(3)の如く、絶縁ベ-ス材1の表面に、表面処理金属層4となる皮膜、例えば、チタンを蒸着等の薄膜形成手段で所要の厚みを被着形成する。
【0017】更に、同図(4)に示す如く、電気メッキ法によって、銅等の導電性金属層5を析出させる。
【0018】続いて、同図(5)のように、上記工程で析出させた銅等の導電性金属層5側から切削研磨して、溝間隙部に絶縁ベ-ス材1が露出するように処理して、溝部3のみに回路配線パタ-ンが形成されるようにする。
【0019】次に、同図(6)の如く、上記表面処理金属層4および、銅等の導電性金属層5からなる回路配線パタ-ン6表面にポリイミドワニスなどの絶縁性樹脂を塗布するか、ポリイミドフィルム等の絶縁性樹脂フィルムを接着剤で被着形成して絶縁性表面保護層7を形成する。この実施例に於いてはポリイミドワニスの塗布による工程を示してある。
【0020】上記工程に於いて、絶縁ベ-ス材1に溝3を形成する他の方法としては、図2(1)〜(2)に示す方法がある。
【0021】先ず、同図(1)に示すように、絶縁ベ-ス材1の方面に所要の形状にレジスト層8を形成した後、同図(2)に示すように、絶縁ベ-ス材1をエッチングし、上記レジスト層8を剥離することによって形成する方法を採用することも可能である。
【0022】また、他の方法としては通常の成形加工で採用されているような各種絶縁性物質の成形加工によって形成されることも可能である。
【0023】更に、上記工程に於いて、溝3と溝3の間隙部に絶縁性ベ-ス材1を露出させて回路配線パタ-ン6のパタ-ン間隙とする他の方法には、図3(1)〜(2)に示す方法がある。
【0024】先ず、同図(1)に示すとおり、通常のフォトファブリケ-ション法にて所要の位置にレジスト層9を形成した後、同図(2)に示すように、露出部分を選択的にエッチング除去する方法によっても形成可能であり、この場合は、回路配線パタ-ン6の導体厚みを厚く形成することができる。
【0025】上記各工程によって構成される回路パタ-ン6を有する回路配線基板は、絶縁性ベ-ス材1の一部をエキシマレ-ザ-照射、又は、樹脂エッチング等の手段を適宜採用することにより回路配線パタ-ン6を露出させる事ができ、外部基板との電気的な接続をするか、各種回路部品を搭載したりすることが可能となる。
【0026】以上の実施例に於いては、回路配線パタ-ン6表面に表面処理金属層4を有する場合に関して記載したが、該表面処理金属層4を形成しない構造のパタ-ンを形成する場合は、図4(1)〜(4)に示す工程を採用することができる。
【0027】先ず、同図(1)に示すように、絶縁ベ-ス材1の一方面に、銅等の導電体層10を、蒸着及びそれに続くメッキ処理によって形成するか、或いは、片面型鋼張り積層板を用意し、上記絶縁ベ-ス材1に絶縁ベ-ス材1を貫通して上記導電体層10に達する溝3を前述の各方法によって形成する。
【0028】次に、同図(2)のように、この溝部3に対して、例えばエッチングが困難な白金等の導電性金属11をメッキ等の手段による充填処理によって形成する。ここに於いて、必要であれば、前述のように切削研磨を施すことも可能である。
【0029】更に、同図(3)に示すように、上記絶縁ベ-ス材1上の導電体層10をエッチング除去する。
【0030】続いて、同図(4)に示すように、両面にポリイミドワニスなどの絶縁性樹脂を塗布するか、ポリイミドフィルム等の絶縁性樹脂フィルムを接着剤で被着形成して絶縁性表面保護層7を形成するにより、エッチングが困難な回路配線パタ-ンを有する回路配線基板を得ることが出来る。
【0031】
【発明の効果】本発明による回路配線パタ-ンの形成法によれば、回路配線パタ-ン表面にメッキ形成が困難な表面金属層を有する回路配線パタ-ンと、エッチングが困難な導体からなる回路配線パタ-ンを形成することが可能となる。
【0032】また、エキシマレ-ザ-によって、溝を形成すれば、パタ-ン厚みが厚くなっても、その上底部の回路パタ-ン幅と下底部の回路パタ-ン幅の差が極めて少なく略長方形の断面構造を持つ回路配線パタ-ンを形成できる。
【0033】更に、導通抵抗が仕様を満足するものであれば、絶縁ベ-ス材に形成された溝部の導電性皮膜だけからなる回路配線パタ-ンを形成することもできるので、極めて可撓性に富む回路配線基板を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1)〜(6)は本発明の一実施例による回路配線パタ-ンの形成方法を示す製造工程図。
【図2】(1)〜(2)は本発明の一実施例による回路配線パタ-ンの形成方法を示す一部の工程の他の方法を説明する為の製造工程図。
【図3】(1)〜(2)は本発明の一実施例による回路配線パタ-ンの形成方法を示す一部の工程の他の方法を説明する為の製造工程図。
【図4】(1)〜(4)は本発明の一実施例による回路配線パタ-ンの形成方法を示す一部の工程の他の方法を説明する為の製造工程図。
【図5】(1)〜(2)は従来の回路配線パタ-ンを形成する方法を説明する為の製造工程図。
【図6】(1)〜(2)は従来の回路配線パタ-ンを形成する他の方法を説明する為の製造工程図。
【符号の説明】
1 絶縁ベ-ス材
2 メタルマスク層
3 溝
4 表面処理金属層
5 導電性金属層
6 回路配線パタ-ン
7 絶縁性表面保護層
8 レジスト層
9 レジスト層
10 導電体層
11 導電性金属
A エキシマレ-ザ-光
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-07 
出願番号 特願平4-280973
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H05K)
最終処分 取消  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
増岡 亘
登録日 2002-10-18 
登録番号 特許第3361556号(P3361556)
権利者 日本メクトロン株式会社
発明の名称 回路配線パタ-ンの形成法  
代理人 鎌田 秋光  
代理人 鎌田 秋光  

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