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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65H
審判 全部申し立て 特123条1項8号訂正、訂正請求の適否  B65H
管理番号 1114633
異議申立番号 異議2003-73297  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-24 
確定日 2005-01-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3448263号「テープカセット」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3448263号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
特許第3448263号の請求項1ないし3に係る発明についての手続の経緯は、およそ次のとおりである。
(1)特許出願 平成12年 6月26日
出願日 平成 4年 1月 8日
(特願平4‐176957の分割出願)
(2)特許権設定の登録 平成15年 7月 4日
(3)特許掲載公報の発行 平成15年 9月22日
(4)村田優子より特許異議の申立て 平成15年12月24日
(5)特許の取消理由の通知の発送 平成16年 6月18日
(6)特許権者より特許異議意見書の提出及び訂正請求(指定期間内)
平成16年 8月17日

II.訂正の適否について
1.訂正の内容
前記の訂正請求は、次の(1)〜(8)のとおり、明細書の記載を訂正することを求めるものである。
(1) 請求項1を以下のように訂正する。
「【請求項1】印字手段と、可動刃及び固定刃からなるテープカッタを備えたテープ印字装置に装着されるテープカセットであって、スプールに巻回された状態でカセットケース本体内に収容されているテープ状の被印字媒体が、その被印字面に前記印字手段により文字等が印字された後、テープカセットから送り出され、前記テープカッタにより裁断されるテープカセットにおいて、
カセットケース本体に、前記印字後の被印字媒体の先端を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はり出して形成されている案内部を備えたことを特徴とするテープカセット。」
(2) 特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3) 明細書の【0006】段落第7行乃至同段落第9行(特許掲載公報第3欄第38行乃至同欄第40行)に、「前記印字後の被印字媒体を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記固定刃に対して」とあるのを、「前記印字後の被印字媒体の先端を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、]と訂正する。
(4) 明細書の【0010】段落(特許掲載公報第4欄第3行乃至同欄第5行)に「まら、請求項3記載のテープカセットは被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ被印字媒体を前記テープカッタまで案内する。」とあるのを削除する。
(5) 明細書の【0042】段落第3行乃至同段落第4行(特許掲載公報第8欄第35行)に、「対抗」とあるのを「対向」と訂正する。
(6) 明細書の【0048】段落第3行(特許掲載公報第9欄第35行)に、「対抗」とあるのを「対向」と訂正する。
(7) 明細書の【0051】段落の第3行乃至同段落第6行(特許掲載公報第10欄第1行乃至同欄第6行)に「印字後の被印字媒体をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記固定刃に対してはり出して形成されている案内部材を備えたので、巻癖の付いている被印字媒体を確実に固定刃と可動刃との間に案内することができ、テープカッタにより確実に裁断することができる。」とあるのを「印字後の被印字媒体の先端をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はり出して形成されている案内部材を備えたので、巻癖の付いている被印字媒体の先端を確実に固定刃と可動刃との間に案内することができ、テープカッタにより確実に裁断することができる。また、案内部が被印刷媒体の表面または裏面と対向しつつ案内するので、より確実に巻癖の付いている被印字媒体を可動刃と固定刃との間に案内することができる。」と訂正する。
(8) 明細書の【0053】段落(特許掲載公報第10欄第13行乃至同欄第17行)を削除する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)の訂正は、訂正前の請求項1の記載における案内部の構成について、「前記固定刃に対してはり出して形成されている案内部」とあるのを、「前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はり出して形成されている案内部」に技術的な限定を行うものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)の訂正は、(1)の訂正に伴い、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(3)〜(8)の訂正は、(1)及び(2)の訂正に整合させて、対応する発明の詳細な説明に所要の訂正を行うものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、これらの訂正は、いずれも願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正前の請求項1ないし3に記載された発明の具体的な目的の範囲を逸脱してその技術的事項を変更するもの等に該当しないから、当該訂正は、特許請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。
3.むすび
以上のとおりであるから、(1)〜(8)の訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


III.特許異議の申立てについて
1.本件発明

本件特許の請求項1ないし2に係る発明(以下「請求項1ないし2に係る発明」という。)は、上記II.においてその訂正が認められた平成16年 8月17日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された、次のとおりのものである。
【請求項1】印字手段と、可動刃及び固定刃からなるテープカッタを備えたテープ印字装置に装着されるテープカセットであって、スプールに巻回された状態でカセットケース本体内に収容されているテープ状の被印字媒体が、その被印字面に前記印字手段により文字等が印字された後、テープカセットから送り出され、前記テープカッタにより裁断されるテープカセットにおいて、
カセットケース本体に、前記印字後の被印字媒体の先端を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はり出して形成されている案内部を備えたことを特徴とするテープカセット。

【請求項2】前記テープカセットは、前記印字後の被印字媒体がカセットケース本体から送り出されるテープ出口を備え、前記案内部は、前記テープ出口に設けられ、テープ出口に面している前記テープカッタ可動刃と固定刃との間に被印字媒体を案内することを特徴とする請求項1に記載のテープカセット。

2.特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人村田優子は、次の甲第1号証及び甲第2号証を提出し、請求項1ないし3に係る発明は、本件出願前に国内において頒布された甲第1号証及び甲第2号証の各刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件請求項1ないし3に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開昭60-188821号公報
甲第2号証:実願昭59-190974号(実開昭61-105355号)のマイクロフィルム

3.当審の取消理由において引用した刊行物とその記載内容
当審では、前記I.(5)の特許の取消理由において、前記甲第1号証を引用刊行物1として、また甲第2号証を引用刊行物2として引用した。
(1)引用刊行物1(特開昭60-188821号公報)には、以下の事項が記載されている。
(記載ア)「本発明実施の一例を図面により説明すれば、第1図は実施例の電子秤用プリンタの概観を示すもので、図中(1)は電子秤とプリンタとを一体に構成したプリンタ本体であり、該本体(1)に計量籠(1a)、表示盤(1b)及び操作盤(1c)を設けると共に、本体(1)の側面にカセット(4)を装着する装着部(3)を構成した。 カセット(4)は第4図に示すような箱体に形成し、カセット(4)内にラベル紙又はレシート紙を夫々所定位置に収納装填する。ラベル紙は帯状の台紙にラベルを所定間隔毎に剥離自在に貼付してロールにしたものであり、レシート紙は帯状の用紙をロールにしたものである。」(公報第2頁左上欄第17行目〜右上欄第10行目)
(記載イ)「第5図はレシート紙を収納するカセット(4)であり、カセット(4)のレシート紙発行口(4a)の内側に印字及び印刷用紙移送用プラテンローラ(5)を設けると共に、発行口(4a)の近傍には印字を終了したレシート紙を切断するカッタ(4b)を設ける。」(公報第2頁右上欄第11行目〜右上欄第16行目)
(記載ウ)「カセット(4)内には印刷用紙(a)を供給するロール(A)のセット軸(20)を設けると共に、セット軸(20)から発行口(4a)に至る印刷用紙(a)の移送方向に沿って検出部(21)、ガイドローラ(G1)を配設する。カセット(4)の上面の板(22)は開閉自在に構成し、該板(22)を開放してセット軸(20)にロール紙(A)をセットし、印刷用紙(a)を引出して検出部(21)、ガイドローラ(G1)、プラテンローラ(5)、カッター(4b)を通して発行口(4a)に臨むように装填する。」(公報第2頁右上欄第16行目〜左下欄第7行目)
(記載エ)「第2図及び第3図はカセット(4)を装着する装着部(3)を示す。装着部(3)にカセット(4)を装着した時サーマルヘッド(2)はプラテンローラ(5)と対応する位置に設けられ支軸(2a)を中心に所定量回動自在に取付けられている。」(公報第2頁右下欄第17行目〜第3頁左上欄第2行目)
(記載オ)「プリンタ部(52)はサーマルヘッド(2)により印字を行うもので、プラテンローラ(5)による印刷要旨(”印刷要旨”は、”印刷用紙”の誤記と認められる。)の移送と同期をとって印字を行う用に(”行う用に”は、”行うように”の誤記と認められる。)駆動制御される。」(公報第3頁右下欄第2行目〜同欄第7行目)
(記載カ)「又、レシート用印刷用紙に必要なカッターと、ラベル用印刷用紙に必要なディスペンサとを両方とも、カセット(4)又はプリンタ本体(1)に設けておけば、カセットは同一構造でよく、コストが安く使い勝手のよい商品を提供することが出来る。」(公報第5頁右下欄第12行目〜同欄第17行目)

ここで、上記(記載ア)〜(記載オ)において、サーマルヘッド(2)は、「印字手段」に、カッタ(4b)は、「テープカッタ」に、プリンタ本体(1)は、「テープ印字装置」に、カセット(4)は、「テープカセット」に、ロール紙(A)は、「テープ状の被印字媒体」に、レシート紙発行口(4a)は、「テープ出口」に、それぞれ対応することが明らかであるから、
引用刊行物1には、「印字手段を備えたテープ印字装置に装着されるテープカセットであって、巻回された状態でカセットケース本体内に収容されているテープ状の被印字媒体が、その被印字面に前記印字手段により文字等が印字された後、テープカセットに備えられたテープ出口から送り出され、該テープ出口近傍に備えられたテープカッタにより裁断されるテープカセット」の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されているものと認める。

また、上記(記載カ)から、「テープカッタは、テープカセットに備えるか、又は、テープ印字装置に備えればよいこと」(以下、「技術的事項A」という。)が、記載ないし開示されているものと認める。

(2)引用刊行物2(実願昭59-190974号(実開昭61-105355号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。
(記載キ)「第2図は従来のペーパーガイド構造の一例を示す断面図である。図において、回転刃2は、駆動部(図示せず)により回転軸1を中心にして回転方向11(矢印で図示)に回転する。一方、記録紙4は下部ペーパーガイド6に案内されて回転刃2の刃先10の近くに送り込まれており、回転刃2の回転の途中で刃先10が固定刃3の刃先20を通過するとき記録紙4は切断される。・・・しかし、通常、ロール状に巻かれた記録紙が送り出されてくるため記録紙4はカールが付いた状態になっており、この記録紙の先端が下部ペーパーガイド6に案内されて繰り出されたとき記録紙4のカールによって記録紙の先端が下部ペーパーガイド6と回転刃2の刃先10との隙間に破線図示のように入り込み切断されないばかりでなく紙詰まりを起こすという欠点があった。」(明細書第2頁第2行目〜第19行目)
(記載ク)「すなわち本実施例は従来例(第2図に図示)のロータリーカッタの固定刃3に設ける上部ペーパーガイドの構造を変えることによってなる。この構造を変えた上部ペーパーガイド7を固定刃3に取り付けることによって、・・・カールした記録紙4が下部ペーパーガイド6に案内されて進入すると、カールは上部ペーパーガイド7の下端9により押されカールが矯正されて下部ペーパーガイド6の先端8から回転刃2に渡り回転刃2と下部ペーパーガイド6の先端8との隙間に入りこむ欠点がなくなる。次に記録紙4が回転刃2の刃先10の近くに来て、回転刃2の刃先10と固定刃3の刃先20が接触回転して記録紙4が切断される。」(明細書第3頁第20行目〜第4頁第17行目)

ここで、上記(記載キ)、(記載ク)において、記録紙4は、被印字媒体に対応し、固定刃3と回転刃2とによりテープカッタを構成していることは明らかである。そして、上部ペーパガイド7,5は、その端部が固定刃3に取り付けられておいることから、当該固定刃3の刃先近傍まではり出して形成されていると言える。さらに、前記上部ペーパーガイド7,5は記録紙4の表面と対向しており、一方、下部ペーパーガイド6は該記録紙4の裏面と対向する位置関係にあり、固定刃3及び回転刃2の双方に対してはり出して形成されているといえるから、上部ペーパーガイド7及び下部ペーパーガイド6とが、記録紙4の先端を固定刃3の刃先近傍まではり出して形成され、当該記録紙4を案内する案内部を構成していると理解できる。

以上のことから、引用刊行物2には、「カールすなわち巻き癖がついた被印字媒体を確実にテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するために、該被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ、該被印字媒体の先端をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するべく前記固定刃の刃先近傍まではり出して形成された案内部を備えること」(以下、「技術的事項B」という。)が、記載されているものと認める。

4.対比及び判断
(1)請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と引用発明とを対比すると、両者は、次の(一致点1)で一致し、(相違点1)、(相違点2)、(相違点3)でのみ相違すると認められる。

(一致点1)印字手段を備えたテープ印字装置に装着されるテープカセットであって、巻回された状態でカセットケース本体内に収容されているテープ状の被印字媒体が、その被印字面に前記印字手段により文字等が印字された後、テープカセットから送り出され、テープカッタにより裁断されるテープカセット。

(相違点1)本件請求項1に係る発明では、可動刃及び固定刃からなるテープカッタをテープ印字装置に備えているのに対し、引用発明のテープカッタはその詳細な構造が明記されておらず、テープカッタが備えられている場所、及び、テープカッタは可動刃及び固定刃からなるか否かが不明である点、

(相違点2)本件請求項1に係る発明では、被印字媒体はスプールに巻回された状態でカセットケース本体内に収容されているのに対し、引用発明の被印字媒体はロールになっているが、スプールに巻回されているか否かが明記されておらず不明である点、及び、

(相違点3)本件請求項1に係る発明では、カセットケース本体に、印字後の被印字媒体の先端を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対回しつつ前記固定刃の刃先近傍まではり出して形成されている案内部を備えたのに対し、引用発明では、印字後の被印字媒体をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するための案内部を備える旨の積極的記載ないし開示がない点で相違している。

そこで、上記各相違点について検討する。
(相違点1)について、
被印字媒体を裁断するテープカッタを可動刃及び固定刃から構成することは、例えば、引用刊行物2に記載された技術的事項Bにあるように、本件の特許出願前に周知ないしは慣用の技術であって(必要ならば、特開平3-111368号公報(平成15年2月20日付け拒絶理由通知書で引用された刊行物1)等も併せて参照されたい)、引用発明におけるテープカッタを可動刃及び固定刃から構成することは、当業者にとって単なる設計事項にすぎない。 また、テープカッタをテープ印字装置に備える点についても、「テープカッタは、テープカセットに備えるか、又は、テープ印字装置に備えればよいこと」を教える技術的事項Aに接した当業者ならば、必要に応じて決定し得た事項であるから、上記引用発明において、可動刃及び固定刃からなるテープカッタをテープ印字装置に備えるようにすることは、当業者ならば適宜なし得たことというべきである。

(相違点2)について、
テープ状の被印字媒体をカセットケース本体に収納する際に、該印字媒体をスプールに巻回してロールをなし、該ロールをカセットケース本体に収納すること自体は、例示するまでもなく、本件の特許出願前に周知ないしは慣用の技術であり、引用発明における被印字媒体を巻回する際に、スプールに巻回するか否かは、当業者にとって単なる設計事項にすぎない。

(相違点3)について、
「カールすなわち巻き癖がついた被印字媒体を確実にテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するために、該被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ、該被印字媒体の先端をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するべく前記固定刃の刃先近傍まではり出して形成された案内部を備えること」を教える技術的事項Bに接した当業者であれば、引用発明において、印字後の被印字媒体の先端を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対回しつつ前記固定刃の刃先近傍まではり出して形成されている案内部を備えることは、格別の創意を要することなくなし得たことと言える。
そして、その際に、かかる案内部をカセット本体側に備えることは、当業者が容易に想到し得たことと言うべきであるから、上記(相違点3)に格別な技術的意義を認めることはできず、その作用・効果も引用発明及び技術的事項Bによって奏される作用・効果の範囲を超えるものではない。

ところで、特許権者は、この点に関して、前記I.(6)の特許異議意見書の第4頁第16行〜第6頁第16行において、およそ次の(i)〜(iv)のような主張をしている。
(i)引用刊行物2に記載の発明では、引用刊行物2の第1図及び第2図を参照すると分かるように、下部ペーパガイド6は、回転刃2の刃先10の近傍まで延設されているが、上部ペーパガイド7,5は、固定刃3に固定されており、上部ペーパガイド7,5は、固定刃3の刃先20近傍まで延設されていない、すなわち、引用刊行物2には、回転刃2の刃先10近傍まで延設された下部ペーパガイド6の記載はあるが、「前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はりだして形成されている案内部」に関する記載も示唆もない。
(ii)このような構造のペーパガイド構造では、引用刊行物2の第1図及び第2図に示されるように、記録紙4の先端が回転刃2方向に向かうように記録紙4が反っているものでは、記録紙4の先端が固定刃3に引っかかってしまうことがないが、記録紙4の先端が固定刃3方向に向かうように記録紙4が反っているものでは、記録紙4の先端4aが固定刃3に引っかかってしまうという問題点がある(添付の参考図1(乙第1号証)及び参考図2(乙第2号証)参照)。この問題点が生じるのは、引用刊行物2に記載の発明では、上部ペーパガイド7,5が、固定刃3の側面に固定され、当該上部ペーパガイド7,5の先端部が固定刃3の刃先20近傍まで延設されていないためである。
(iii)引用刊行物2記載の発明の目的の詳細は、「下部ペーパガイド6と回転刃2の刃先10との隙間に記録紙の先端が入り込み切断されずに紙詰まりを起こすことを防止すること」であり(引用刊行物2の全文明細書の第2頁第14行乃至同頁19行)、引用刊行物2に記載の発明には、「固定刃の刃先近傍まで、案内部を張り出す」という思想が全くない。
(iv)従って、引用刊行物2に記載の上部ペーパガイド7及び下部ペーパガイド8からなるペーパガイド構造を、引用刊行物1に記載の発明の電子秤用プリンタに組み合わせても固定刃3側に向かって、先端部4aが沿った記録紙4(被印字媒体)では、固定刃3に記録紙4の先端4aが引っかかるペーパガイド構造を備えたプリンタが実現できるだけであり、本件特許の請求項1に係る発明の特有の効果を奏することはできず、例え当業者であっても、発明の目的、構成及び効果が異なる引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて、本件請求項1に記載の発明を容易に想到することは困難である。
しかし、本件請求項1に係る発明における「固定刃の刃先近傍」なる記載について、どの程度の距離をもって近傍とみなすのかについての特段の説明が、本件特許明細書中に記載されていない以上、引用刊行物2の上部ペーパーガイド7,5の端部と固定刃の刃先は多くとも固定刃3の厚み程度の距離しか離れていないことを考慮すると、上部ペーパガイド7,5は、固定刃3の刃先20の近傍まで延設されていると解すべきであり、また、前説示のように、引用刊行物2の上部ペーパーガイド7,5は記録紙4の表面と対向しているのであるから、引用刊行物2には、「前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はりだして形成されている案内部」が記載ないし示唆がされているというべきである。
また、記録紙4の先端が固定刃3方向に向かうように記録紙4が反っているものでは、記録紙4の先端4aが固定刃3に引っかかってしまう場合があることは、確かに想定されるが、このことは、記録紙4の剛性や固定刃3の厚み、更には、上部ペーパーガイド7及び下部ペーパーガイド6間の対向する距離(隙間)等の設定度合いによって、引っかかる場合もあるし、引っかからない場合もあると解するのが相当であるから、「前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はりだして形成されている案内部」を備えることによって、記録紙4の先端4aが固定刃3に引っかかってしまう場合があるという問題が直ちに解消され得ることとは言えない。
したがって、前記主張(i)〜(iv)は、何れも失当であるといわざるを得ない。


(2)請求項2に係る発明について、
本件請求項2に係る発明と引用発明とは、上記(一致点1)の他に、印字後の印字媒体がカセットケース本体から送り出されるテープ出口を備える点で一致しているが、上記(相違点1)〜(相違点3)に加え、さらに、
(相違点4)本件請求項2に係る発明は、前記テープ出口に案内部を備えているのに対し、引用発明では、印字後の被印字媒体をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するための案内部を備える旨の積極的記載ないし開示がない点で相違している。

しかしながら、カセットケース本体に、印字後の被印字媒体をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記固定刃に対してはり出して形成されている案内部を備えることについては、既に、上記(相違点3)の検討において述べたように、当業者が格別の創意を要することなくなし得たことであり、引用発明において、当該案内部をカセットケース本体に備える際に、カセットケース本体のテープ出口に設けることは、当業者が適宜なし得る程度のことであり、上記(相違点3)についての検討とも併せてみれば、上記(相違点4)についても、格別な技術的意義を認めることはできず、その作用・効果も引用発明及び技術的事項Bによって奏される作用・効果の範囲を超えるものではない。


5.結論
したがって、本件請求項1ないし2に係る発明は、引用刊行物1〜2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定ににより特許を受けることができないものであるから、本件請求項1ないし2に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであると認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
テープカセット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 印字手段と、可動刃及び固定刃からなるテープカッタを備えたテープ印字装置に装着されるテープカセットであって、スプールに巻回された状態でカセットケース本体内に収容されているテープ状の被印字媒体が、その被印字面に前記印字手段により文字等が印字された後、テープカセットから送り出され、前記テープカッタにより裁断されるテープカセットにおいて、
カセットケース本体に、前記印字後の被印字媒体の先端を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はり出して形成されている案内部を備えたことを特徴とするテープカセット。
【請求項2】 前記テープカセットは、前記印字後の被印字媒体がカセットケース本体から送り出されるテープ出口を備え、前記案内部は、前記テープ出口に設けられ、テープ出口に面している前記テープカッタ可動刃と固定刃との間に被印字媒体を案内することを特徴とする請求項1に記載のテープカセット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テープ印字装置に用いられるテープカセットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明テープの裏面に文字等の虚像印字を行い、剥離紙付きの両面テープを貼り合わせることによりラベルテープを作成するテープ印字装置が提案されている。このように作成されたラベルテープは、ビデオカセット等の背部に貼着されてインデックス等として使用されて好適なものである。
【0003】
ところで、この様なテープ印字装置には、テープカセットが交換可能に装着される。そして、印字が行われる前記透明テープ及び剥離紙付きの両面テープは、各々スプールに巻回された状態でテープカセット内部に収容されている。そして、透明テープはスプールから引き出された後に印字が行われ、剥離紙付き両面テープが貼り合わされた後、テープ印字装置に設けられているテープカッタにより所望の長さに切断される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記透明テープは、巻回された状態にあるため、スプールから引き出された部分に巻き癖がついており、巻回方向に曲がろうとする。一方、前記テープカッタは固定刃とこの固定刃に向かって移動する可動刃とか構成されたハサミ式のものが用いられ、可動刃と固定刃との間に送られてきたラベルテープを可動刃が固定刃に向かって移動することにより、ラベルテープが切断されるが、透明テープに巻き癖がついているため、ラベルテープが可動刃と固定刃との間に送り出されず、切断ができないことがあった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、巻き癖がついた被印字媒体でであっても、確実にテープカッタの可動刃と固定刃との間に被印字媒体を送り出すことができるテープカセットを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載のテープカセットは、印字手段と、可動刃及び固定刃からなるテープカッタを備えたテープ印字装置に装着されるテープカセットであって、スプールに巻回された状態でカセットケース本体内に収容されているテープ状の被印字媒体が、その被印字面に前記印字手段により文字等が印字された後、テープカセットから送り出され、前記テープカッタにより裁断されるテープカセットにおいて、カセットケース本体に、前記印字後の被印字媒体の先端を前記テープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はり出して形成されている案内部を備えている。
【0007】
上記構成を有する請求項1記載のテープカセットは、印字後の被印字媒体が案内部により案内されつつテープカッタの可動刃と固定刃との間に送り出される。
【0008】
また、請求項2記載のテープカセットは、前記印字後の被印字媒体がカセットケース本体から送り出されるテープ出口を備え、前記案内部が、前記テープ出口に設けられている。
【0009】
上記構成を有する請求項2記載のテープカセットは、案内部がテープ出口に面しているテープカッタの可動刃と固定刃との間に被印字媒体を案内する。
【0010】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例に係るテープカセット10の構成を示す平面図である。
【0012】
このテープカセット10は、図示のように、上蓋ケース12と下蓋ケース14とからなる(この図では上蓋ケース12の大部分を取除いた状態を示す)。下蓋ケース14には筒軸98,99及び軸23が設けられている。筒軸99には透明なフィルムテープ18が巻回されたテープスプール20が回転可能に支持され、軸23にはインクリボン22が巻回されたリボンスプール24が回転可能に支持され、筒軸98には剥離紙付き両面粘着テープ26が剥離紙側を外側にして巻回された粘着テープスプール28が回転可能に支持されている。
【0013】
また、各スプール20、24、28の間にリボン巻取スプール30が上蓋ケース12及び下蓋ケース14に設けられた有底孔(図示せず)に嵌合されて回転可能に支持されている。
【0014】
また、このカセットケース本体16の一側に開設されるテープ出口32の近傍には、後述のテープ印字装置に設けられるテープ送りローラ62との協働により前記フィルムテープ18と両面粘着テープ26との貼合わせテープTを前記テープ出口32より送り出すテープ駆動ローラ34がやはり回転可能に配設されている。
【0015】
一方、このテープカセットが装着使用されるテープ印字装置の概略構成は図2に示す通りであり、図2において、テープ印字装置40には文字等を入力するための文字入力キー42、印字キー44、各種のファンクションキーが設けられたキーボード46、キーボード46から入力された文字等を表示する液晶ディスプレイ48及び前記テープカセット10を収納するカセット収納部50が配設されている。かかるカセット収納部50は、テープ印字装置40の後方に回転可能に枢支された収納カバー52により開閉され、開状態でテープカセット10の交換等が行われるようになっている。
【0016】
図3はこのカセット収納部50の概略構成を示す斜視図である。
【0017】
このカセット収納部50には、前記テープカセット10のリボン巻取スプール30に係合し、パルスモータの回転駆動によりこのリボン巻取スプール30を回動させてインクリボン22を巻取るリボン巻取軸54、及び前記テープ駆動ローラ34に係合し、図示しないモータ及びギヤ伝達機構を介してこのテープ駆動ローラ34を回転駆動させるテープ駆動軸56がそれぞれ立設されている。尚、該切換機構については、特願平3-283814号に添付された明細書及び図面にて詳細に説明されているので、ここでの説明は省略する。
【0018】
また、サーマル印字ヘッド58とプラテンローラ60とが対向して立設配置され、更に前記テープ駆動ローラ34との協働により貼合わせテープTを送り出す前記のテープ送りローラ62が配設されている。このプラテンローラ60とテープ送りローラ62は詳述は避けるが、ローラホルダに支持され、図示しない手動の切換機構により印字位置とリリース位置とに切換可能とされている。尚、該切換機構については、特願平3-283414号願書に添付された明細書及び図面にて詳細に説明されているので、ここでの説明は省略する。
【0019】
前記したサーマル印字ヘッド58は多数の発熱素子を有しており、インクリボン22を介してフィルムテープ18に文字等の印字を行うものである。
【0020】
一方、前記テープカセット10のテープ出口32より送り出される貼合わせテープTを裁断するテープカッタ64がやはりこのカセット収納部50の一側内縁寄り部位に設けられる。
【0021】
このテープカッタ64はハサミ固定刃66とハサミ可動刃68とからなり、ハサミ固定刃66の方が前記カセット収納部50に装着されるテープカセット10のテープ出口32縁寄りに位置し、ハサミ可動刃68がテープ出口32から遠い方に位置している。
【0022】
このテープカッタ64の駆動機構については詳細は避けるが、モータの駆動がピニオン及びギヤ機構を介してハサミ可動刃68に伝達され、該ハサミ可動刃68がその枢支軸を支点として開閉作動されるもので、この開閉動作により前記ハサミ固定刃66との協働により、図1に示すように、ハサミ可動刃68とハサミ固定刃66との間に位置する貼合わせテープTが裁断されるものである。
【0023】
前記テープカセット10の内部構造に戻って説明すれば、図1に示すように、前記インクリボン22を展張させるリボン展張レバー70が支軸72を支点として回動可能に配置される。そしてその詳細を図4〜図7に示すように、リボン展張レバー70の支軸72に挿通されるねじりバネ74の両端がそれぞれそのリボン展張レバー70に延設された係合段部76、78に係止させた状態で下蓋ケース14の内底面に設けられた軸受筒80に前記支軸72を挿通するように装着される。
【0024】
このとき、前記ねじりバネ74の一バネ端部74aが下蓋ケース14内底面に立設されるテーパ状係止片82のテーパ面82aに沿って滑り落ち、そのテーパ下傾端に設けられた鉤部84に係止される。これによりリボン展張レバー70は支軸72を中心として図1の時計方向へねじりバネ74の付勢力を受ける。
【0025】
そして、前述のようにねじりバネ74をリボン展張レバー70の支軸72に抜脱不能に装着させた状態でこれを軸受筒80に装着させるものであるから、その装着作業時にねじりバネ74がリボン展張レバー70の支軸72から不意に抜け落ちるということも回避されて組付け作業性もよい。
【0026】
一方、前記リボン展張レバー70の先端に屈曲片86が延設され、該屈曲片86がインクリボン22に当接し、さらに該屈曲片86の基部に設けられる外方突出縁88によりインクリボン22はリボン展張レバー70よりリリースされてリボン巻取スプール30に巻取られるように構成されている。
【0027】
また、該リボン展張レバー70の途中部位には、このテープカセット10が前記テープ印字装置40のカセット収納部50に装着されたときサーマル印字ヘッド58の背面に対向位置するように回動作動片90が突設される。この回動作動片90は、図3に示すように、前記サーマル印字ヘッド58の背面に、高さの異なる一対の傾斜片92a、92bが並設されているが、狭幅テープカセット10Aの場合は、図8及び図9に示すように、背の高い方の傾斜片92aに係合されるように対向配置され、一方幅広テープカセット10Bの場合は、図10及び図11に示すように、背の低い方の傾斜片92bに係合されるように対向配置される。
【0028】
これにより、狭幅テープカセット10Aの場合には、これをテープ印字装置40のカセット収納部50に装着する際の早い時期から図9(a)(b)に示すように、リボン展張レバー70の回動作動片90aとサーマル印字ヘッド58の背の高い方の傾斜片92aとの係合が開始されるので早めにリボン展張レバー70の回動作動が始まる。これに対して幅広テープカセット10Bの場合には、狭幅テープカセット10Aの場合よりも遅いタイミングで図11(a)(b)に示すように、リボン展張レバー70の回動作動片90bとサーマル印字ヘッド58の背の低い方の傾斜片92bとの係合が開始されるので遅目にリボン展張レバー70の回動作動が始まる。
【0029】
このリリースタイミングは、狭幅テープカセット10Aの場合には早くても別に支障ないが、幅広テープカセット10Bの場合には早いとインクリボン22がサーマル印字ヘッド58の端縁に引掛かるおそれがあるので遅くリリースさせるように配慮したものである。
【0030】
また、いずれの回動作動片90a、90bともその下端縁に上方傾斜面を有し、これに対応して前記サーマル印字ヘッド58の両傾斜片92a、92bともにその上端縁が下方傾斜面を有する。
【0031】
これにより、カセットテープをテープ印字装置40のカセット収納部50に上から嵌め込むように装着するときリボン展張レバー70のそれぞれの回動作動片90a、90bがサーマル印字ヘッド58の傾斜片92a、92bの傾斜面に沿って滑り易いようにし、かつリボン展張レバー70がスムーズに回動される。
【0032】
また、リボン展張レバー70の回動によりインクリボン22のリボンスプール24からリボン巻取スプール30までの経路長がリボン展張レバー70の回動前と同じか回動前よりも長くなる。
【0033】
従って、テープカセットの使用前におけるインクリボンの巻き緩み等があっても実際にテープ印字装置に装着されたときにはその巻き緩みが解消されることとなる。
【0034】
また、インクリボン22は外方突出縁88によりリボン展張レバー70からリリースされているのでインクリボン22が静電気的にリボン展張レバー70の背面にベタッとくっついて離れないとということも回避され、インクリボン22のスムーズな送りが確保される。
【0035】
さらに、テープカセット10の回動作動片90はインクリボン22に用いられるインクの種類によって、サーマル印字ヘッド58に向けての突出幅の大きなものと小さなものとがある。
【0036】
これは、インクリボンに用いられるインクの組成がワックス系と樹脂系とがあり、インクの組成が樹脂系の場合、サーマル印字ヘッドによる印字後、インクの冷えて固まる時間が短いために大きく剥離させる必要がある。そのため、フィルムテープ18とインクリボン22との間の剥離角度が大きくなるように回動作動片90の突出幅が大きく形成されている。
【0037】
一方、インクの組成がワックス系の場合、それ程印字後のインクの冷えて固まる時間が短くないために剥離角度を小さくして、フィルムテープ18にインクリボン22が固着するまでの時間を設ける必要がある。そのため、回動作動片90の突出幅が小さく形成されている。
【0038】
次に、前記リボン巻取スプール30の構成を図1に戻って説明すると、該リボン巻取スプール30の基部にはクラッチコイルバネ94が挿着され、その一端はリボン巻取スプール30に圧接されているものの、他端は下蓋ケース14上の係止片96により止着されている。
【0039】
したがって、リボン巻取スプール30に印字状態時等に一定以上のテンションが掛かれば、前記クラッチコイルバネ94の作動により該リボン巻取スプール30は空回りし、巻取りトルクが調整されるようになっている。
【0040】
また、上蓋ケース12と下蓋ケース14との接合は、図12及び図13に示すように、狭幅テープカセット10Aの場合も幅広テープカセット10Bの場合も、上蓋ケース12の外周には4個のピン29(図には1個のみ示す)が設けられている。また、下蓋ケース14の外周には4個の小孔31(図には1個のみ示す)が設けられており、その小孔31は下方にいくほど直径が小さくなっている。そして、上蓋ケース12のピン29が下蓋ケース14の小孔31に圧入されて、上蓋ケース12と下蓋ケース14とが接合されている。また、粘着テープスプール28が装着される筒軸98a、98bの先端に係合部であるブリッジ部100が形成される一方、上蓋ケース12の下面には該ブリッジ部100を両側から抱え込む弾発性ある一対の係止片102a、102bが突設され、上蓋ケース12を下蓋ケース14に被せる時に前記筒軸98a、98bのブリッジ部100に両側から前記係止片102a、102bが弾発力により嵌まり込むことにより抜脱不能に係止されるように構成されている。
【0041】
これにより、図示のように上蓋ケース12の下面で粘着テープスプール28に巻かれている剥離紙付き両面粘着テープ26の軸方向へのズレ動き(テレスコープと称される。)を規制するようにしている。このことを詳しく説明すると、使用中の印字ヘッドの熱や使用環境の湿度等により両面粘着テープ26の剥離紙が水分を含んで膨張し、粘着テープスプール28に巻回された状態における両面粘着テープ26の内部応力が変化して、両面粘着テープ26の巻回状態が軸方向へズレて円錐状に変形しようとするが、上蓋ケース12の係止片102a、102bが下蓋ケース14の筒軸98a、98bのブリッジ部100に嵌まり込んで、テープカセット10の内側で抜脱不能に係止しているので、両面粘着テープ26の外周が上蓋ケース12を押圧しても上蓋ケース12が膨らむことなくテープカセット10の形が変わらない。したがって、両面粘着テープ26が引き出せなくなることがない。
【0042】
また、テープカセット10のテープ出口32にはくちばし状のテープ受け部36がハサミ固定刃66の刃先端近傍まではり出し形成されている。このテープ受け部36は、図9に示すように、張り合わせテープTの表面と裏面との各々に対向するように構成されており、テープカセット10のテープ出口32より送り出されてきた貼合わせテープTの先端が、丁度このテープ受け部36に受止された状態で前記テープカッタ64のハサミ固定刃66とハサミ可動刃68の両刃先の先端に案内されるようになっている。即ち、図1に示すように、貼合わせテープTは、ハサミ固定刃とハサミ可動刃との間に確実に案内されるようになっている。
【0043】
このように構成されたテープカセット10によれば、今、このテープカセット10をテープ印字装置40のカセット収納部50に装着するとき、はじめにテープカセット10のリボン展張レバー70の回動作動片90がサーマル印字ヘッド58の傾斜片92に当たる。そしてこのテープカセット10を更にカセット収納部50内に嵌め込んでいくとき、前記回動作動片90が前記傾斜片92を滑ることによりリボン展張レバー70が支軸72を支点として所定の位置まで回動されてテープカセット10の装着が完了する。
【0044】
次に、このテープカセット10内に収納されるフィルムテープ18面に文字等を出力印字し、これに両面粘着テープ26を貼り合わせて貼合わせテープTを得る動作を説明する。
【0045】
サーマル印字ヘッドとプラテンローラとの間を前記フィルムテープ18とインクリボン22とが重ね合わせた状態で通過する間にサーマル印字ヘッド58に送られる印字情報に基づいてフィルムテープ18面にインクリボン22を介して文字等がサーマル印字される。
【0046】
そして、フィルムテープ18はテープ駆動ローラ34とテープ送りローラ62との協働により剥離紙付き両面粘着テープ26と貼り合わされて、貼合わせテープTとしてテープ出口32より送り出される。テープ印字終了後はテープカッタ64のハサミ可動刃68とハサミ固定刃66とにより貼合わせテープTは裁断される。
【0047】
このとき、フィルムテープ18及び剥離紙付き両面粘着テープ26は各々テープスプール20及び粘着テープスプール28に巻回された状態にあったため、巻癖が付いている。図1に示すように、貼合わせの際、両者の巻癖が相殺されるようになってはいるが、両テープ18,26に付いている巻癖の度合いが必ずしも一致していないので、貼合わせテープTは巻癖の強い側のテープにより表面側あるいは裏面側に向かって湾曲する。従って、貼合わせテープTは、テープ出口から送り出された後に何も案内するものがない状態では、ハサミ固定刃66とハサミ可動刃68との間には送り出されず、貼合わせテープTを裁断することができない。
【0048】
しかしながら、本実施形態では、テープ出口32には丁度ハサミ固定刃66の刃先近くまでテープ受け部36が延設され、且つ、テープ受け部36が貼合わせテープTの表面と裏面との各々に対向しているため、貼合わせテープTは確実にハサミ固定刃66とハサミ可動刃68との間に案内され、確実に裁断することができる。
【0049】
また、裁断後はテープカセット10側の貼合わせテープTの先端はそのテープ受け部36面に保持された状態でテープカセット10外にこのテープTのテープ出口32の突出量は、テープ受け部36により厚さが増している下蓋ケース厚さよりも小さくなる。
【0050】
したがって、裁断後に貼合わせテープTの先端が多少不用意にカセットケース本体内に引っぱられ、あるいは押し込まれても引っ込んでしまって取り出せなくなるようなことは回避される。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、請求項1記載のテープカセットは、カセットケース本体に、印字後の被印字媒体の先端をテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内するように、前記被印字媒体の表面及び裏面と対向しつつ前記固定刃の刃先近傍まで、はり出して形成されている案内部材を備えたので、巻癖の付いている被印字媒体の先端を確実に固定刃と可動刃との間に案内することができ、テープカッタにより確実に裁断することができる。また、案内部が被印刷媒体の表面または裏面と対向しつつ案内するので、より確実に巻癖の付いている被印字媒体を可動刃と固定刃との間に案内することができる。
【0052】
また、請求項2記載のテープカセットは、請求項1の案内部がテープカセットに備えられたテープ出口に設けられているので、カセットケース本体から送り出された巻癖の付いている被印字媒体を確実にテープカッタの可動刃と固定刃との間に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るテープカセットの上蓋ケースの大部分を取除いて示した平面図である。
【図2】
このテープカセットが装着使用されるテープ印字装置の平面図である。
【図3】
図2に示したテープ印字装置のカセット収納部の斜視図である。
【図4】
図1に示したテープカセット内のリボン展張レバーの分解斜視図である。
【図5】
図4に示したリボン展張レバーの支軸にねじりバネを装着した状態の説明図である。
【図6】
図5に示したリボン展張レバーを下蓋ケース上の軸受筒に挿通する途中の説明図である。
【図7】
図5に示したリボン展張レバーを下蓋ケース上の軸受筒に挿通し終えた状態の説明図である。
【図8】
狭幅テープカセットにおけるリボン展張レバーの回動作動片とサーマル印字ヘッドの傾斜片との係合状態を説明する断面図である。
【図9】
この狭幅テープカセットをテープ印字装置に装着するときのリボン展張レバーの回動状態を説明する図である。
【図10】
幅広テープカセットにおけるリボン展張レバーの回動作動片とサーマル印字ヘッドの傾斜片との係合状態を説明する断面図である。
【図11】
幅広テープカセットをテープ印字装置に装着するときのリボン展張レバーの回動状態を説明する図である。
【図12】
狭幅テープカセットの上蓋ケースと下蓋ケースとの係合状態を説明する断面図である。
【図13】
幅広テープカセットの上蓋ケースと下蓋ケースとの係合状態を説明する断面図である。
【符号の説明】
10 テープカセット
16 テープケース本体
18 フィルムテープ
32 テープ出口
36 テープ受け部
58 サーマル印字ヘッド
64 テープカッタ
66 ハサミ固定刃
68 ハサミ可動刃
T 貼合わせテープ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-17 
出願番号 特願2000-191209(P2000-191209)
審決分類 P 1 651・ 831- ZA (B65H)
P 1 651・ 121- ZA (B65H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 千葉 成就吉村 尚  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 渡邊 豊英
山崎 豊
登録日 2003-07-04 
登録番号 特許第3448263号(P3448263)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 テープカセット  
代理人 山本 尚  
代理人 山本 尚  
代理人 中山 千里  
代理人 中山 千里  

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