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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01B |
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管理番号 | 1114641 |
異議申立番号 | 異議2003-71789 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-08-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-07-14 |
確定日 | 2005-01-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3365443号「3次元位置計測方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3365443号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件特許第3365443号の請求項1に係る発明についての出願は、平成6年1月21日に特許出願され、平成14年11月1日に設定登録され、その後、大木 茂より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成16年10月29日に訂正請求がなされたものである。 【2】訂正の適否 1.訂正事項 A.「【請求項1】 カメラと多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、 第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から測定すべき対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納し、 第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が平行になるような位置にある第2地点のカメラから入力した画像を第2の入力画像とし、 前記テンプレート画像と第2の入力画像とのテンプレートマッチングを、第1の地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に撮像される直線領域の近傍のみにおいて行って前記第2の入力画像上での対応する前記特徴点の位置を求め、 前記特徴点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって前記特徴点の3次元位置を計測することを特徴とする3次元位置計測方法。 」を、 「カメラと多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、 多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け、 測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動かしてその位置を第1地点とし、 前記第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から前記対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納し、 前記ロボットにより、前記カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が前記第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にある第2地点へと前記カメラを移動させた後、前記カメラから入力した画像を第2の入力画像とし、 前記テンプレート画像と前記第2の入力画像とのテンプレートマッチングを、前記第1地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線領域の近傍のみにおいて行って前記第2の入力画像上での対応する前記特徴点の位置を求め、 前記特徴点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって前記特徴点の3次元位置を計測することを特徴とする3次元位置計測方法。」と訂正する。 B.明細書の段落番号【0004】における「 【課題を解決するための手段】本発明は、カメラと多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から測定すべき対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納し、第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が平行になるような位置にある第2地点のカメラから入力した画像を第2の入力画像とし、前記テンプレート画像と第2の入力画像とのテンプレートマッチングを、第1の地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に撮像される直線領域の近傍のみにおいて行って前記第2の入力画像上での対応する前記特徴点の位置を求め、前記特徴点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって前記特徴点の3次元位置を計測することを特徴とするものである。」を、 「【課題を解決するための手段】本発明は、カメラと多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け、測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動かしてその位置を第1地点とし、前記第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から前記対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納し、前記ロボットにより、前記カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が前記第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にある第2地点へと前記カメラを移動させた後、前記カメラから入力した画像を第2の入力画像とし、前記テンプレート画像と前記第2の入力画像とのテンプレートマッチングを、前記第1地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線領域の近傍のみにおいて行って前記第2の入力画像上での対応する前記特徴点の位置を求め、前記特徴点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって前記特徴点の3次元位置を計測することを特徴とするものである。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正Aについて 訂正Aの内容は次のように分けることができる。 A-1.訂正前の特許請求の範囲に「多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け、 測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動かしてその位置を第1地点とし、」を加入する。 A-2.訂正前の特許請求の範囲中、「第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が平行になるような位置にある第2地点のカメラから入力した画像を第2の入力画像とし、」を、「前記ロボットにより、前記カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が前記第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にある第2地点へと前記カメラを移動させた後、前記カメラから入力した画像を第2の入力画像とし、」と訂正する。 A-3.訂正前の特許請求の範囲中、「撮像される」を、「射影される」と訂正する。 訂正A-1.、A-2.は、それぞれ、カメラを第1地点及び第2地点へ設定する方法を具体的に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に相当するものである。 また、訂正A-3.は、訂正前の明細書中、段落番号【0008】の記載から明らかなように、誤記の訂正に相当するものである。 また、この訂正Aは訂正前の明細書に記載された事項(特に、段落番号【0009】及び図4)に基づくものである。 そして、訂正Aは特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正Bについて 訂正Bは、前記特許請求の範囲の訂正(訂正A)に合わせて発明の詳細な説明の対応箇所を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明に相当するものである。 そして、訂正Bは訂正前の明細書に記載された事項に基づくものであり、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、前記訂正(訂正A及びB)は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【3】特許異議の申立てについての判断(取消理由についての判断) 1.本件発明 本件請求項1に係る発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】カメラと多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、 多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け、 測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動かしてその位置を第1地点とし、 前記第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から前記対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納し、 前記ロボットにより、前記カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が前記第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にある第2地点へと前記カメラを移動させた後、前記カメラから入力した画像を第2の入力画像とし、 前記テンプレート画像と前記第2の入力画像とのテンプレートマッチングを、前記第1地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線領域の近傍のみにおいて行って前記第2の入力画像上での対応する前記特徴点の位置を求め、 前記特徴点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって前記特徴点の3次元位置を計測することを特徴とする3次元位置計測方法。」(以下、「本件発明」という。) 2.引用刊行物 2-1.刊行物1 当審が通知した取消理由に刊行物1として引用した特開昭59-182689号公報には、次の事項が記載されている。 a.「〔発明の技術的背景とその問題点〕 ステレオ視処理装置は、複数の異なる視点から被写体(対象物)の像を入力し、これらの画像中における上記被写体の同一部位の対応関係を求める、つまり対応点検出を行って、その対応点位置と前記視点との関係から三角測量の原理に従って前記被写体までの距離を求めるものである。」(1頁右下欄9行〜16行) b.「ところでこの種のステレオ視処理装置にあっては、上記対応点検出を如何にして自動的に、且つ正確に行うかが重要な課題となる。しかして従来装置にあっては、例えば一方の画像4の中から検出対象とする点を定めて、その回りの小領域の部分画像6を取出し、この小領域と同じ大きさの部分画像7を他方の画像5の中からその位置を移動させながらその相関値を計算することが行われている。そして、上記相関値が最大となる位置の小領域の部分画像7の中心を、前記一方の画像4上で定めた点に対応する点として検出している。」(2頁左上欄5行〜16行) c.「第2図は実施例装置の概略構成図であり、図中1は計測対象としての被写体である。また2,3は、画像入力装置としてのTVカメラである。これらのTVカメラ2,3は、例えば撮像光軸を平行にし、所定の間隔を隔てて同じ高さに設けられ、前記被写体1に対して視点を異ならせたものである。これらのTVカメラ2,3により、異なる視点からそれぞれ撮像入力された前記被写体1の像信号は、A/D変換器11,12を各別に介してディジタル符号変換されたのち、画像メモリ13,14にそれぞれ一時記憶される。マイクロコンピユータ等からなるディジタル処理回路15は、上記画像メモリ13,14にそれぞれ記憶された所謂左画像と右画像とを入力し、それらの間の対応点検出を行うものである。即ち、基本的には、上記各画像間の対応部位に対する対応度を小領域を設定しながら相関計算によって求め、この相関計算によって求められた対応度に従って対応点の検出判定を行っている。そして、対応点が検出されたときには、その対応点情報から例えば三角測量の原理に基づいて被写体1の上記対応点に対する距離計算を行い、この計算結果によって求められる前記被写体1の所定の距離画像データを距離画像メモリ16に書込んでいる。」(3頁左上欄1行〜右上欄5行) 前記記載c.から、 ・TVカメラ2、3と、A/D変換器11、12、画像メモリ13、14、ディジタル処理回路15から成る装置を用いたステレオ視処理方法、 が読みとれる。 d.「 第3図は上記ディジタル処理回路15による上述した対応点検出の処理を示すものである。この処理は、TVカメラ2を介して入力された左画像を基準とし、この左画像の中から調査点をそのラスタ走査の方向に順次設定し、その調査点を中心とする小領域の部分画像を取出して、この部分画像に対応する右画像中での部分画像位置を求めて対応点検出を行うものである。」(3頁右上欄下から4行〜左下欄4行) 前記記載c.d.から、 ・TVカメラ2から入力した左画像は画像メモリ13に格納されること、 ・TVカメラ3から入力した画像は右画像として画像メモリ14に格納されること、 が読みとれる。 e.「しかして上記左画像および右画像をそれぞれ得るTVカメラ2,3は、同一の高さでその光軸を平行に設けたものであるから、左画像中の調査点に対応する右画像中の対応点は同じ水平走査ライン上にあると言える。そこで、上記左画像の調査点を中心とした小領域の部分画像と、右画像における上記調査点と同じ水平走査ライン上の各点をそれぞれ中心とする小領域の部分画像との間でその相関係数を計算し、これによって求められる計算値(相関係数)を対応点検出用データとする。」(3頁左下欄7行〜17行) 前記記載e.から、 ・左画像と右画像との相関係数の計算を、左画像中の調査点に対応する右画像中の対応点が存在する水平ラインを中心とする小領域においてのみ行って前記右画像上での対応点に対応する調査点の位置を求めること、 が読みとれる。 f.「このようにして左画像と右画像とにおける調査点と、これに対応する対応点が検出されたとき、これらの2点の各画像における位置情報と、上記各画像をそれぞれ得るTVカメラ2,3の位置関係とから、三角測量法に従って前記被写体1の上記調査点(対応点)までの距離が計算される。」(3頁右下欄下から3行〜4頁左上欄4行) 前記記載f.から、 ・調査点の左画像上の位置と対応点の右画像上の位置から三角測量の原理によって被写体1上の調査点までの距離を計測すること、 が読みとれる。 さらに、TVカメラ2、3は撮像光軸が平行であること(記載e.)から、その撮像面は互いに平行であると言え、このことと第1図から、画像4,5を結像する撮像面は、その水平軸、垂直軸がそれぞれ互いに平行であることが伺える。 以上の記載事項から、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。 (刊行物1に記載された発明) TVカメラ2、3と、A/D変換器11、12、画像メモリ13、14、ディジタル処理回路15から成る装置を用いたステレオ視処理方法において、 TVカメラ2から入力した左画像を画像メモリ13に格納し、 カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が、TVカメラ2の撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にあるTVカメラ3から入力した画像を右画像とし、 前記左画像と右画像との相関係数の計算を、左画像中の調査点に対応する右画像中の対応点が存在する水平ラインを中心とする小領域においてのみ行って前記右画像上での対応点に対応する調査点の位置を求め、 前記調査点の左画像上の位置と対応点の右画像上の位置から三角測量の原理によって被写体1上の調査点までの距離を計測するステレオ視処理方法(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)。 2-2.刊行物2 同じく当審が通知した取消理由に刊行物2として引用した、 谷内田正彦 編 「コンピュータビジョン」(丸善(株)、平成2年3月31日発行、120〜122頁)中、「A.視線像による検索範囲の限定」には、要約すると、次の技術的事項が記載されている。 a.同一対象物を二つの視点e1、e2で撮影した2枚の画像をそれぞれI1、I2として、I1上の点P1に対応するI2上の点は、P1とe1を結ぶ直線(視線)を視点e2から観測した時のI2上での像(視線像)上にある。 b.その特別な場合として、2台のカメラの光軸が平行であり、二つの視点をつなぐ直線e1e2が光軸に直交し、さらに画像面上の一つの座標軸がe1e2と平行になるような配置の場合、視線像の対がテレビの水平走査線のような直線になる。 また、「B.対応像類似の仮定」には、以下の記載がある。 c.「対応は、まわりとは異なる特徴的な点に対してのみ探索することができる。そのような点としては、まわりと異なる明るさをもった孤立点、その両側で明るさが急激に変化している点などの特徴点が用いられる。」 d.「上の性質が成り立つという前提のもとで対応点を決定するためには、領域同士の対応探索と特徴同士の対応探索の方法がある。領域同士の探索では、一方の画像のある特徴点に対して、それを含む適当な大きさの領域を切り出し、それと同様な濃淡分布をもった領域をもう一方の画像中で探す。」 3.対比 本件発明と前記刊行物1に記載の発明とを対比する。 3-1.前記刊行物1に記載の発明における 「TVカメラ2、3」、「A/D変換器11、12、画像メモリ13、14、ディジタル処理回路15から成る装置」、「ステレオ視処理方法」、「TVカメラ2」、「TVカメラ3」、「左画像」、「右画像」、「小領域」は、それぞれ本件発明における 「カメラ」、「画像処理装置」、「3次元位置計測方法」、「第1地点のカメラ」、「第2地点のカメラ」、「第1の入力画像」、「第2の入力画像」、「直線領域の近傍」に相当する。 3-2.本件発明における「特徴点」も、刊行物1に記載された発明における「調査点」あるいは「被写体上の調査点」も共に「調査点」と言い得るものである。 以上のことを考慮しつつ、刊行物2中の記載事項a.を参照すると、本件発明の「第1の地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線」が「視線」であり、「第2の入力画像上に射影される直線」がその「視線像」であることがわかる。 次に、刊行物1に記載された発明では、前記2-1.c.の記載から、 ・2台のカメラの光軸が平行であること、 ・記載c.における「異なる視点」について、刊行物1には特に記載されていないものの、その第1図、第4図に示されたカメラの配置から見て、2つの視点をつなぐ直線は光軸に直交しており、かつ、該直線が2つの撮像面の水平軸と平行であると推定される。 そうしてみると、刊行物1に記載された発明中の「左画像中の調査点に対応する右画像中の対応点が存在する水平ライン」における「水平ライン」は、刊行物2の記載事項b.における「テレビの水平走査線のような直線」に相当する視線像であることがわかる。 そして、刊行物2に依れば、記載事項b.は記載事項a.の特別な場合なのであるから、結局、刊行物1に記載された発明における「左画像中の調査点に対応する右画像中の対応点が存在する水平ライン」と、本件発明における「第1の地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線」とは、共に「第1の地点のカメラのレンズ中心と調査点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線」と言えるものである。 なお、二つの視点で撮影した2枚の画像から対象点の三次元座標を決定する、いわゆるステレオカメラにおいて、視線像を用いて二つの画像間の対応点検出を容易にすることは周知である(例えば、前記刊行物2以外に、特開平4-138305号公報参照)から、本件発明がこの点において特許性がないことは明らかである。 3-3. ・本件発明における「多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置」も刊行物1に記載された発明における「A/D変換器11、12、画像メモリ13、14、ディジタル処理回路15から成る装置」も共に画像処理装置である。 ・本件発明における「第1の入力画像から測定すべき対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納」することも、刊行物1に記載された発明における「左画像を画像メモリ13に格納」も共に第1の入力画像を格納することである。 ・本件発明における「テンプレートマッチング」も刊行物1に記載された発明における「相関係数の計算」も共にマッチングである。 以上3-1.〜3-3.に述べたことを考慮すると、本件発明と前記刊行物1に記載の発明とは、 (一致点) カメラと画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、 第1地点のカメラから入力した第1の入力画像を格納し、 カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が、第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にある第2地点のカメラから入力した画像を第2の入力画像とし、 前記第1の入力画像と第2の入力画像とのマッチングを、第1の地点のカメラのレンズ中心と調査点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線領域の近傍のみにおいてのみ行って前記第2の入力画像上での対応する前記調査点の位置を求め、 前記調査点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって被写体上の調査点の3次元位置を計測する3次元位置計測方法、 で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本件発明では、多値画像のテンプレートマッチング法を用いて対応点の検出を行っているのに対し、刊行物1に記載された発明では、この点が記載されていない点で相違し、具体的には次の点で構成上の差異がある。 相違点イ.画像処理装置について、 本件発明では「多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置」を備えているのに対し、刊行物1に記載された発明では画像処理装置はそのような機能を備えている旨の記載がない点。 相違点ロ.本件発明では、「第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から測定すべき対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納」しているのに対し、刊行物1に記載された発明では、そのような構成を備えていない点。 相違点ハ.本件発明では、「テンプレート画像と第2の入力画像とのテンプレートマッチング」を行っているのに対し、刊行物1に記載された発明では、第1の画像の調査点を中心とする小領域の部分画像と、第2の入力画像における小領域の部分画像との間で、相関をとるものの、テンプレートマッチングについては記載がない点。 相違点ニ.「第1地点のカメラ」及び「第2地点のカメラ」について、 本件発明では、「多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け、測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動かしてその位置を第1地点とし」ており、かつ、「前記ロボットにより、・・・第2地点へと前記カメラを移動させ」ているのに対し、刊行物1に記載された発明では、2台のカメラをそれぞれ第1地点のカメラ、第2地点のカメラとして設置しており、その設置方法については記載がない点。 4.当審の判断 相違点イ.〜ハ.について、 二つのカメラを備え、得られた二つの濃淡画像から被写体までの距離を計測する方法は周知である(例えば、特開昭64-23109号公報参照)。 更にその際、テンプレートマッチング法を用いることも周知である(例えば、特開平5-28246号公報、【0031】〜【0035】の記載参照)。 そして、濃淡画像情報はメモリ内では多値信号として格納されることを考慮すると、 ・画像処理装置が多値画像のテンプレートマッチング機能を有すること(相違点イ.の構成)、 ・特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納すること(相違点ロ.の構成) ・テンプレート画像と最も類似する部分をもう一方の画像から検出すること、すなわち、テンプレートマッチングを行うこと(相違点ハ.の構成)、 はいずれも周知であり(前記特開平5-28246号公報参照)、該周知のテンプレートマッチング法による3次元位置計測方法を刊行物1に記載された発明の小領域の部分画像の比較方法として用いることに、格別の創意を要したものとは言えない。 相違点ニ.について、 立体視映像撮影技術分野において、撮像装置として2台のカメラを使う代わりに、1台のカメラを移動させて複数の位置から撮像することは周知であり(例えば、特開平5-28246号公報中、【0075】の記載、特開昭62-162175号公報参照)、その際、カメラをロボットに取り付け、該ロボットにより所定の場所まで移動させることも普通に採用されている構成である(例えば、特開平4-96493号公報、特開昭63-34094号公報参照)。 そうしてみると、刊行物1に記載された発明において、2台のカメラの代わりに、1台のカメラをロボットに装着し、該カメラを第1地点、及び第2地点まで移動させて撮像する構成とすることは、周知技術に基づいて当業者が容易に想起するところの技術的事項と言え、その際、 ・「多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け」ることは、カメラをロボットに取り付ける際に通常採用される構成に過ぎず(例えば、特開平4-12211号公報、第3図)、また、 ・「測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動か」すことは、対象物をカメラで撮像する上での当然の構成を述べたに止まる。 そして、本件発明による効果も当業者が容易に予測し得る程度のことに過ぎない。 したがって、本件発明は刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の技術的事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 【4】むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 3次元位置計測方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】カメラと多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、 多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け、 測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動かしてその位置を第1地点とし、 前記第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から前記対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納し、 前記ロボットにより、前記カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が前記第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にある第2地点へと前記カメラを移動させた後、前記カメラから入力した画像を第2の入力画像とし、 前記テンプレート画像と前記第2の入力画像とのテンプレートマッチングを、前記第1地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線領域の近傍のみにおいて行って前記第2の入力画像上での対応する前記特徴点の位置を求め、 前記特徴点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって前記特徴点の3次元位置を計測することを特徴とする3次元位置計測方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、カメラによって対象物の3次元位置を計測する非接触の計測方法に関する。 【0002】 【従来の技術】カメラからの画像を使って対象物の距離や3次元的位置、形状を計測する場合、まず、二つの異なる視点から撮像した二つの入力画像を微分してエッジを抽出し、2値化して線画像を得る。そして、一つの線画像のエッジ上の点を選び、もう一つの線画像上の対応点を検出して、三角測量の原理によって3次元座標を計算する。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところが、対応点を求める際に対応可能な点が複数存在するため、正しい対応点を検出することが難しいという問題点があった。また、エッジ抽出処理においてノイズ等により他方エッジに対応するエッジが抽出できない場合もあり、対応点が見つからないことも多い。そこで、本発明は二つの画像の対応点を容易に見い出し、対象物特徴点の3次元位置の計測を安定に行ない得る3次元位置計測方法を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は、カメラと多値画像のテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置を用いた3次元位置計測方法において、多関節ロボットの先端部に1台のカメラを前記ロボットのエンドエフェクタの先端方向を向くように取り付け、測定すべき対象物が前記カメラの撮像面に写るよう前記ロボットを動かしてその位置を第1地点とし、前記第1地点のカメラから入力した第1の入力画像から前記対象物の特徴点を抽出して特徴点近傍の入力画像をテンプレート画像として格納し、前記ロボットにより、前記カメラ撮像面の水平軸又は垂直軸が前記第1地点のカメラ撮像面の水平軸又は垂直軸と平行になるような位置にある第2地点へと前記カメラを移動させた後、前記カメラから入力した画像を第2の入力画像とし、前記テンプレート画像と前記第2の入力画像とのテンプレートマッチングを、前記第1地点のカメラのレンズ中心と抽出した前記特徴点とを結ぶ3次元空間上の直線が前記第2の入力画像上に射影される直線領域の近傍のみにおいて行って前記第2の入力画像上での対応する前記特徴点の位置を求め、前記特徴点の第1の入力画像上の位置と第2の入力画像上の位置から三角測量の原理によって前記特徴点の3次元位置を計測することを特徴とするものである。 【0005】 【作用】本発明は、第1の入力画像中の特徴点の3次元位置は、レンズ中心と実際の対象物上の特徴点とを結ぶ直線上にあるとの知見によるものである。つまり、この直線は第2の入力画像上に直線として射影され、この射影された直線の方程式は、特徴点の第1の入力画像上での位置と両カメラの相互位置から容易に計算することができる。したがって、上記手段により、特徴点の3次元位置を容易かつ精度良く求めることができる。 【0006】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。本実施例は図1に示すように光軸が並行に設置された2台のカメラとテンプレートマッチング機能を持った画像処理装置から構成される。画像処理装置の内部では、まず、画像入力部によって2台のカメラからの画像が第1入力画像メモリと第2入力画像メモリにそれぞれ格納される。次に、特徴点抽出部によって第1入力画像から対象物の特徴点が抽出される。この処理では従来のエッジ抽出の技法によって、線画像の頂点等が選ばれる。また、予め与えられている特徴点のテンプレート画像によって特徴点を検出しても良い。この特徴点の位置を使って、テンプレート切り出し部により、特徴点近傍の第1入力画像がテンプレート画像として予め与えられた大きさに切りとられテンプレートメモリへ格納される。次に、テンプレートマッチング部によりテンプレート画像と第2入力画像とのテンプレートマッチングが実行され、テンプレート画像の特徴とほぼ一致した特徴の位置が第2入力画像から検出される。最後に、3次元位置計算部によって、第1入力画像の特徴位置と対応する第2入力画像の特徴位置から、特徴点の3次元位置が三角測量の原理によって計算される。 【0007】以上の処理をブロックの計測に応用した例を図2に示す。第1入力画像から、ブロックの一つの頂点Aが特徴点として抽出され、その近傍がテンプレートとして切り出される。このテンプレート画像が第2入力画像でテンプレートマッチングされ、対応する頂点の特徴点が得られる。テンプレートの画像と対応する第2入力画像の特徴は視差のために形状が異なっているが、近似的にほぼ等しくテンプレートマッチングによって十分検出可能である。さらに、テンプレートマッチングでは特徴点近傍の多値画像情報が使われるので、安定した対応点の検出が可能になる。 【0008】本実施例のテンプレートマッチングは第2入力画像の全領域でテンプレートとのマッチングを調べることによって可能であるが、第1入力画像の特徴点と対応可能な領域は第2入力画像上の直線領域となるので全領域を探索するのは無駄である。図3に示すように、第1入力画像中の特徴点Aの3次元位置はレンズ中心と実際の対象物上の特徴点Aとを結ぶ直線上にあることは明らかである。この直線は第2入力画像上に直線として射影される。この射影された直線の方程式は特徴点の第1入力画像上での位置と両カメラの相互位置から容易に計算することができる。この直線領域の近傍のみをテンプレートマッチングの探索領域とすればマッチングに要する探索時間が大幅に削減される。 【0009】第2の実施例として、一つのカメラをロボットの先端に取付け、カメラを移動することによって3次元座標の計測を行なう例を図4に示す。移動前のカメラ画像を第1入力画像メモリに格納し、移動後のカメラ画像を第2入力画像メモリに格納することを除いては、先に示した3次元座標計測方法と全く同一である。本例ではカメラ移動に時間を要するが、カメラが1台になることによってカメラ部分を小さくまとめることができるという利点が生じる。 【0010】 【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、従来安定に検出することが困難であった対応点の検出を、特徴点近傍の多値入力のテンプレート画像と他方の入力画像との間でテンプレートマッチングを行なうことにより、容易かつ正確に行なうことができるという効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の具体的実施例を示す構成図 【図2】テンプレートマッチングによる対応点検出の説明図 【図3】テンプレートマッチングの探索領域を示す説明図 【図4】カメラ移動機構を備えた実施例の構成図 【符号の説明】 1 第1カメラ 2 第2カメラ 3 画像処理装置 4 画像入力部 5 第1入力画像メモリ 6 第2入力画像メモリ 7 テンプレート切り出し部 8 テンプレートメモリ 9 特徴点抽出部 10 テンプレートマッチング部 11 3次元位置計算部 12 第1入力画像 13 第2入力画像 14 対象物 15 特徴点A 16 特徴点近傍テンプレート 17 特徴点Aの対応点 18 ロボット 19 ロボット制御装置 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-12-07 |
出願番号 | 特願平6-21945 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(G01B)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 小野寺 麻美子 |
特許庁審判長 |
上田 忠 |
特許庁審判官 |
後藤 時男 三輪 学 |
登録日 | 2002-11-01 |
登録番号 | 特許第3365443号(P3365443) |
権利者 | 株式会社安川電機 |
発明の名称 | 3次元位置計測方法 |