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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  G01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
管理番号 1114643
異議申立番号 異議2003-72862  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-27 
確定日 2005-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3409377号「ナビゲーション装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3409377号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3409377号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年8月9日に特許出願され、平成15年3月20日にその発明について特許権の設定登録がなされ、平成15年5月26日にその特許公報が発行された。これに対し、平成15年11月25日に大西蓉子より特許異議の申立てがなされ、当審において平成16年4月23日付けで取消理由を通知したところ、同年7月9日付けで訂正請求(及び意見書の提出)がなされたものである。

【2】特許異議申立ての概要
異議申立人は、証拠として下記甲第1ないし4号証を提出し、下記の理由(1)、(2)により、本件請求項1に係る発明についての特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである旨主張する。
理由(1):本件請求項1に係る発明は、甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
理由(2):本件請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
(証拠方法)
甲第1号証:特開平3- 39780号公報
甲第2号証:特開平5- 72971号公報
甲第3号証:特開平2-275308号公報
甲第4号証:特願平4-128893号(特開平5-323872号)

【3】取消理由の概要
当審で通知した取消理由の概要は、上記甲第1、3、4号証を証拠として引用し、(1)本件請求項1に係る発明は、上記甲第1号証及び甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない また、(2)本件請求項1に係る発明は、上記甲第4号証に記載の発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない とした。

【4】訂正の適否について
(4-1)訂正事項(訂正の要旨)
上記平成16年7月9日付けの訂正請求による訂正事項は以下のとおりである。
「特許請求の範囲の請求項1における「備えていることを特徴とするナビゲーション装置。」を、
「備えるナビゲーション装置において、
前記制御手段は、
前記経路情報記憶部の経路情報から2点を取り出すために必要なルート設定用データ管理変数iを設定し、
前記ルート設定用データ管理変数iをもとに、自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)とを設定し、
設定された自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)及び自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)をもとに、仮想自車位置を計算するために必要な自車位置計算用変数jの設定し、
設定された自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)とを、下式(1)に代入して、両点間の距離DIFFを計算し、
DIFF=√((LongEnd-LongStart)2+(LatEnd-LatStart)2)・・・(1)
設定された自車位置計算用終点の経度座標LongEnd、自車位置計算用始点の経度座標LongStart、及び計算された距離DIFFを、下式(2)に代入して、両点間における経度方向の割合を示す経度用中心位置計算係数LongKEISUを計算し、
LongKEISU=(LongEnd-LongStart)/DIFF・・・(2)
設定された自車位置計算用終点の緯度座標LatEnd、自車位置計算用始点の緯度座標LatStart、及び計算された距離DIFFを、下式(3)に代入して、両点間における緯度方向の割合を示す緯度用中心位置計算係数LatKEISUを計算し、
LatKEISU=(LatEnd-LatStart)/DIFF・・・(3)
設定された自車位置計算用始点の経度座標LongStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した経度用中心位置係数LongKEISUと、予め定められた更新間隔を示す移動単位とを、下式(4)に代入して、仮想自車位置の経度座標Longを計算し、
Long=LongStart+j*LongKEISU*移動単位・・・(4)
設定された自車位置計算用始点の緯度座標LatStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した緯度用中心位置係数LatKEISUと、前記移動単位とを、下式(5)に代入して、仮想自車位置の緯度座標Latを計算し、
Lat=LatStart+j*LatKEISU*移動単位・・・(5)
計算した仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latをもとに、前記地図情報記憶部の地図情報を表示し、さらに、
自車位置計算用変数jをインクリメントした後、前式(4)及び(5)に従って、次の仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latを計算することを特徴とする、ナビゲーション装置。」と訂正する。(審決注:このもとの請求項に付加された訂正された事項を、以下「事項A」という。)
これに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明細書3ページの段落0005の最終行の「備えているものである。」を、
「備えているものである。
制御手段は、前記経路情報記憶部の経路情報から2点を取り出すために必要なルート設定用データ管理変数iを設定し、前記ルート設定用データ管理変数iをもとに、自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)とを設定し、さらに、設定された自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)及び自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)をもとに、仮想自車位置を計算するために必要な自車位置計算用変数jの設定する。
また、制御手段は、設定された自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)を、下式(6)に代入して、両点間の距離DIFFを計算する。
DIFF=√((LongEnd-LongStart)2+(LatEnd-LatStart)2)・・・(6)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用終点の経度座標LongEnd、自車位置計算用始点の経度座標LongStart、及び計算された距離DIFFを、下式(7)に代入して、両点間における経度方向の割合を示す経度用中心位置計算係数LongKEISUを計算する。
LongKEISU=(LongEnd-LongStart)/DIFF・・・(7)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用終点の緯度座標LatEnd、自車位置計算用始点の緯度座標LatStart、及び計算された距離DIFFを、下式(8)に代入して、両点間における緯度方向の割合を示す緯度用中心位置計算係数LatKEISUを計算する。
LatKEISU=(LatEnd-LatStart)/DIFF・・・(8)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用始点の経度座標LongStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した経度用中心位置係数LongKEISUと、予め定められた更新間隔を示す移動単位とを、下式(9)に代入して、仮想自車位置の経度座標Longを計算する。
Long=LongStart+j*LongKEISU*移動単位・・・(9)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用始点の緯度座標LatStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した緯度用中心位置係数LatKEISUと、移動単位とを、下式(10)に代入して、仮想自車位置の緯度座標Latを計算する。
Long=LatStart+j*LatKEISU*移動単位・・・(10)
また、制御手段は、計算した仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latをもとに、前記地図情報記憶部の地図情報を表示し、さらに、自車位置計算用変数jをインクリメントした後、前式(9)及び(10)に従って、次の仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latを計算することを特徴とする。」と訂正する。

(4-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記訂正事項は、基本的にもとの請求項1の「制御手段」に上記新たな事項Aを付加してこれを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、前記の新たに付加した事項は本件特許明細書の段落0012及び図3に記載されていたものと認められるから、新規事項の追加に該当せず、又、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものでもない。

(4-3)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)付則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項(及び第3項)の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【5】特許異議の申立てについての判断
(5-1)本件請求項1に係る発明
上記のとおり本件訂正は認められるので、本件特許異議の申立ての対象となる請求項1に係る発明は、上記平成16年7月9日付け訂正請求による明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本件発明」という。)と認められる。
【請求項1】 設定された経路情報を記憶する経路情報記憶部と、地図情報を記憶している地図情報記憶部と、前記経路情報記憶部又は前記地図情報記憶部から情報を読み出す情報読み出し手段と、前記経路情報記憶部の経路情報と前記地図情報記憶部の地図情報を用いて仮想的に地図をスクロール表示させるとともに、目的地までのガイダンスを行うように制御する制御手段とを備えるナビゲーション装置において、
前記制御手段は、
前記経路情報記憶部の経路情報から2点を取り出すために必要なルート設定用データ管理変数iを設定し、
前記ルート設定用データ管理変数iをもとに、自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)とを設定し、
設定された自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)及び自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)をもとに、仮想自車位置を計算するために必要な自車位置計算用変数jの設定し、
設定された自車位置計算用始点(LongStart、LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd、LatEnd)とを、下式(1)に代入して、両点間の距離DIFFを計算し、
DIFF=√((LongEnd-LongStart)2+(LatEnd-LatStart)2)・・・(1)
設定された自車位置計算用終点の経度座標LongEnd、自車位置計算用始点の経度座標LongStart、及び計算された距離DIFFを、下式(2)に代入して、両点間における経度方向の割合を示す経度用中心位置計算係数LongKEISUを計算し、
LongKEISU=(LongEnd-LongStart)/DIFF・・・(2)
設定された自車位置計算用終点の緯度座標LatEnd、自車位置計算用始点の緯度座標LatStart、及び計算された距離DIFFを、下式(3)に代入して、両点間における緯度方向の割合を示す緯度用中心位置計算係数LatKEISUを計算し、
LatKEISU=(LatEnd-LatStart)/DIFF・・・(3)
設定された自車位置計算用始点の経度座標LongStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した経度用中心位置係数LongKEISUと、予め定められた更新間隔を示す移動単位とを、下式(4)に代入して、仮想自車位置の経度座標Longを計算し、
Long=LongStart+j*LongKEISU*移動単位・・・(4)
設定された自車位置計算用始点の緯度座標LatStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した緯度用中心位置係数LatKEISUと、前記移動単位とを、下式(5)に代入して、仮想自車位置の緯度座標Latを計算し、
Lat=LatStart+j*LatKEISU*移動単位・・・(5)
計算した仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latをもとに、前記地図情報記憶部の地図情報を表示し、さらに、
自車位置計算用変数jをインクリメントした後、前式(4)及び(5)に従って、次の仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latを計算することを特徴とする、ナビゲーション装置。

(5-2)引用刊行物(引用例)
1.特開平3-39780号公報(異議申立人の提出した甲第1号証。)
当審の取消理由に引用した上記刊行物1には、少なくとも次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「(走行軌跡として)設定された経路情報を記憶する経路情報記憶部(RAM9内のリングバッファ)と、地図情報を記憶している地図情報記憶部(CD-ROM)と、前記経路情報記憶部又は前記地図情報記憶部から情報を読み出す情報読み出し手段と、前記経路情報記憶部の経路情報と前記地図情報記憶部の地図情報を用いて仮想的に地図をスクロール表示させる制御手段とを備えるナビゲーション装置。」

2.特開平5-72971号公報(同、甲第2号証)
上記刊行物2には、次の技術が記載されているものと認められる。
「ナビゲーション装置において、走行経路設定手段4の経路情報と地図情報記憶部(地図データ格納手段2)の地図情報を用いて地図をスクロール表示させるとともに、目的地までのガイダンス(案内)を行うように制御する制御手段を備える」技術。

3.特開平2-275308号公報(同、甲第3号証。)
当審の取消理由に引用した上記刊行物3には、次の技術が記載されているものと認められる。
「ナビゲーション装置において、地図情報記憶部(メモリ5)のガイド情報と地図情報を用いて地図をスクロール表示させるとともに、目的地までのガイダンス(ガイド情報の表示と音声アナウンス)を行うように制御する制御手段を備える」技術。

4.特願平4-128893号(特開平5-323872号)の願書に最初に添付した明細書及び図面(同、甲第4号証。)
同じく当審の取消理由に引用した上記先願明細書4には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「設定された経路情報を記憶する経路情報記憶部(主メモリ27)と、地図情報を記憶している地図情報記憶部(地図メモリ15)と、前記経路情報記憶部又は前記地図情報記憶部から情報を読み出す情報読み出し手段と、前記経路情報記憶部の経路情報と前記地図情報記憶部の地図情報を用いて仮想的に地図をスクロール表示させるとともに、目的地までのガイダンスを行う(経由地の最寄りの交差点をドライバーに知らせる)ように制御する制御手段とを備えるナビゲーション装置。」

(5-3)対比・判断
(5-3-1)29条2項の適用について
上記本件発明と(刊行物1に記載の)引用発明とを対比すると、上記引用発明には本件発明の構成要件である上記事項Aが記載も示唆もされておらず、また、上記刊行物2、3にもかかる事項Aが記載も示唆もされていない。そして、本件発明はこの事項Aを備えることにより、本件特許明細書中に記載された「自動的に(自車位置の)表示中心位置の算出が可能になり、設定された経路について地図スクロールを行うことが実現できる。」(段落0012)という特有の効果を奏するものと認めることができる。
したがって、本件発明は、上記引用発明(及び刊行物2,3に記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(5-3-2)29条の2の適用について
上記本件発明と(先願明細書4に記載の)先願発明とを対比すると、上記先願明細書には本件発明の構成要件である上記事項Aが実質的にも記載されているものとは認められず、また、上記事項Aが先願明細書の記載からみて設計上の微差に該当するものともいえない。
したがって、本件発明は、上記先願発明と同一であると認めることはできない。

【6】むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ナビゲーション装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】設定された経路情報を記憶する経路情報記憶部と、地図情報を記憶している地図情報記憶部と、前記経路情報記憶部又は前記地図情報記憶部から情報を読み出す情報読み出し手段と、前記経路情報記憶部の経路情報と前記地図情報記憶部の地図情報を用いて仮想的に地図をスクロール表示させるとともに、目的地までのガイダンスを行うように制御する制御手段とを備えるナビゲーション装置において、
前記制御手段は、
前記経路情報記憶部の経路情報から2点を取り出すために必要なルート設定用データ管理変数iを設定し、
前記ルート設定用データ管理変数iをもとに、自車位置計算用始点(LongStart,LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd,LatEnd)とを設定し、
設定された自車位置計算用始点(LongStart,LatStart)及び自車位置計算用終点(LongEnd,LatEnd)をもとに、仮想自車位置を計算するために必要な自車位置計算用変数jの設定し、
設定された自車位置計算用始点(LongStart,LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd,LatEnd)とを、下式(1)に代入して、両点間の距離DIFFを計算し、
DIFF=√((LongEnd-LongStart)2+(LatEnd-LatStart)2)
…(1)
設定された自車位置計算用終点の経度座標LongEnd、自車位置計算用始点の経度座標LongStart、及び計算された距離DIFFを、下式(2)に代入して、両点間における経度方向の割合を示す経度用中心位置計算係数LongKEISUを計算し、
LongKEISU=(LongEnd-LongStart)/DIFF
…(2)
設定された自車位置計算用終点の緯度座標LatEnd、自車位置計算用始点の緯度座標LatStart、及び計算された距離DIFFを、下式(3)に代入して、両点間における緯度方向の割合を示す緯度用中心位置計算係数LatKEISUを計算し、
LatKEISU=(LatEnd-LatStart)/DIFF
…(3)
設定された自車位置計算用始点の経度座標LongStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した経度用中心位置計算係数LongKEISUと、予め定められた更新間隔を示す移動単位とを、下式(4)に代入して、仮想自車位置の経度座標Longを計算し、
Long=LongStart+j*LongKEISU*移動単位
…(4)
設定された自車位置計算用始点の緯度座標LatStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した緯度用中心位置計算係数LatKEISUと、前記移動単位とを、下式(5)に代入して、仮想自車位置の緯度座標Latを計算し、
Lat=LatStart+j*LatKEISU*移動単位 …(5)
計算した仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latをもとに、前記地図情報記憶部の地図情報を表示し、さらに、
自車位置計算用変数jをインクリメントした後、前式(4)及び(5)に従って、次の仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latを計算することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、人工衛星からの信号を基に現在位置を判定するGlobal Positioning System(以下、GPSと称する)機能を有し、データ記憶用の光ディスク(以下、CD-ROMと称する)中の地図情報を検索、表示する機能を有するナビゲーション装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、ナビゲーション装置は、車でドライブする場合などにおいて、地理的情報を装置利用者に提供する手段として用いられている。従来のナビゲーション装置では、装置利用者が前もって出発点と目的点を入力し、経路設定手段により、これからドライブで通行するであろう経路についての設定を行っていた。また従来のナビゲーション装置では、経路設定手段と、地図表示手段とが、全く独立の存在として設けられていたので、装置利用者が既に経路設定手段により指定した経路について地図表示手段により地理的情報を得ようとしても、経路設定手段への指定の有無にかかわらず、装置利用者が複雑なキー入力を行うことにより、上記経路に沿って地図表示を装置利用者自身の操作でスクロールする必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成では、操作が煩雑なばかりでなく、車を運転している装置利用者に、運転動作以外の操作を強いることになり、安全上問題である。
【0004】
そこで本発明は、設定された走行経路について地図を自動スクロールできるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を鑑みて、本発明は、設定された経路情報を記憶する経路情報記憶部と、地図情報を記憶している地図情報記憶部と、前記経路情報記憶部又は前記地図情報記憶部から情報を読み出す情報読み出し手段と、前記経路情報記憶部の経路情報と前記地図情報記憶部の地図情報を用いて仮想的に地図をスクロール表示させるとともに、目的地までのガイダンスを行うように制御する制御手段とを備えているものである。
制御手段は、経路情報記憶部の経路情報から2点を取り出すために必要なルート設定用データ管理変数iを設定し、ルート設定用データ管理変数iをもとに、自車位置計算用始点(LongStart,LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd,LatEnd)とを設定し、さらに、設定された自車位置計算用始点(LongStart,LatStart)及び自車位置計算用終点(LongEnd,LatEnd)をもとに、仮想自車位置を計算するために必要な自車位置計算用変数jの設定する。
また、制御手段は、設定された自車位置計算用始点(LongStart,LatStart)と、自車位置計算用終点(LongEnd,LatEnd)とを、下式(6)に代入して、両点間の距離DIFFを計算する。
DIFF=√((LongEnd-LongStart)2+(LatEnd-LatStart)2)
…(6)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用終点の経度座標LongEnd、自車位置計算用始点の経度座標LongStart、及び計算された距離DIFFを、下式(7)に代入して、両点間における経度方向の割合を示す経度用中心位置計算係数LongKEISUを計算する。
LongKEISU=(LongEnd-LongStart)/DIFF
…(7)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用終点の緯度座標LatEnd、自車位置計算用始点の緯度座標LatStart、及び計算された距離DIFFを、下式(8)に代入して、両点間における緯度方向の割合を示す緯度用中心位置計算係数LatKEISUを計算する。
LatKEISU=(LatEnd-LatStart)/DIFF
…(8)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用始点の経度座標LongStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した経度用中心位置計算係数LongKEISUと、予め定められた更新間隔を示す移動単位とを、下式(9)に代入して、仮想自車位置の経度座標Longを計算する。
Long=LongStart+j*LongKEISU*移動単位
…(9)
また、制御手段は、設定された自車位置計算用始点の緯度座標LatStartと、現在設定されている自車位置計算用変数jと、計算した緯度用中心位置計算係数LatKEISUと、移動単位とを、下式(10)に代入して、仮想自車位置の緯度座標Latを計算する。
Lat=LatStart+j*LatKEISU*移動単位 …(10)
また、制御手段は、計算した仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latをもとに、地図情報記憶部の地図情報を表示し、さらに、自車位置計算用変数jをインクリメントした後、前式(9)及び(10)に従って、次の仮想自車位置の経度座標Long及び緯度座標Latを計算することを特徴とする。
【0006】
【作用】
本発明は、上記構成により、装置利用者による煩雑なキー操作を必要とすることなく、設定した経路について、道なりに自動的に地図表示をスクロールすることが出来るものである。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の一実施例におけるナビゲーション装置について説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施例におけるナビゲーション装置についての機能ブロック図である。1は装置利用者が設定する目的点及び目的点に至るまでの経路に関する情報を記憶する経路情報記憶部、2は地図情報が格納されたCD-ROM情報記憶部、3は経路情報記憶部1又はCD-ROM情報記憶部2中の情報を必要に応じて読み出す処理を行う情報読み出し手段、4は設定されている経路情報をもとに仮想的に自車位置を計算する仮想自車位置算出手段、5は与えられた自車位置を中心に地図表示を行う自車位置中心表示手段である。
【0009】
また、図2は本発明の一実施例におけるナビゲーション装置の回路ブロック図である。21は中央処理装置、22は入力装置であるキーボード、23は自車位置中心表示手段6としてのLCD、24はLCD23に表示する情報を書き込むための表示メモリ、25はシステムの作業メモリとして中央処理装置21によるアクセスを受けるランダムアクセスメモリ、26は本システムの処理プログラム(図3〜図4のフローチャートに沿う)やフォントが格納されているリードオンリーメモリ、27は地図描画用データが格納されているコンパクトディスクメモリである。なお、図1における経路情報記憶部1はランダムアクセスメモリ25により、CD-ROM情報記憶部2はコンパクトディスクメモリ27により、情報読み出し手段3及び仮想自車位置算出手段4は中央処理装置21がリードオンリーメモリ26内に記憶されている処理プログラムを実行することにより実現される。ここでは仮想的に自車位置を進めて地図スクロールを行うが、その動作説明に先立ち、参考のためにGPSを用いたナビゲーション装置の基本について以下に説明する。
【0010】
まずはGPSの側位原理について述べる。原理としては、人工衛星からの信号として4つの情報(人工衛星の現在位置情報(x,y,z)と現在時刻情報(t))を受信する。GPS信号を受信するナビゲーション装置としては、自分の現在位置(x,y,z)、現在時刻(t)の4情報が未知数である。従って、信号の発生源である人工衛星からの距離について、4つの未知数を含む方程式をたてる。現在、人工衛星は、全天で24個存在する。そのうち異なる4つの人工衛星の情報から4方程式をたて、その4方程式を解くことにより自分の位置情報と時刻情報を知ることが出来る。そうした処理を行うことで、ナビゲーション装置は測位できるので、その測位した地点を現在位置とし、現在位置を中心とした地図表示を行うことが出来る。ナビゲーション装置では、以上に述べた方法で現在位置を測位し、その位置を中心にして地図を表示する処理を一定時間間隔で行う。ここでは前もって設定した経路について出発点から目的点に関するナビゲーション状態を、設定経路情報により仮想的に算出した自車位置をもとに自動的におこなうものである。以下のその処理について図3〜図5を用いて説明する。
【0011】
図3,図4は本発明の一実施例におけるナビゲーション装置のフローチャートであり、図5は前もって設定されている経路情報である。図5に示すように設定経路情報は点情報の集まりであり、各情報間は片方向チェーンをはっているものとする。点情報は全部でN点分であるものとする。つまり前もって設定されている経路は折れ線近似されているものとする。以下、設定経路情報の最初の点を出発点、最後の点を目的点と呼ぶことにする。
【0012】
まず主処理である図3を説明し、その後副処理である図4の説明を行う。図3中、まずs31において設定経路の中の2点を取り出してくるために必要な変数であるルート設定用データ管理変数iの初期化を行う。次にs32において初期化したルート設定用データ管理変数iをもとに自車位置計算用始点と自車位置計算用終点の設定を行う。また、s33では、s32で設定した始点、終点を基に仮想自車位置を計算するために必要な自車位置計算用変数jの初期化、他に始点、終点間の緯度経度差DIFFの計算、更に始点、終点の2点間の経度方向の割合を示す経度用中心位置計算計数LongKEISUと緯度方向の割合を示す緯度用中心位置計算計数LatKEISUの計算を行っている。そしてs34において仮想表示中心位置を求める。このs34の中で出てくる移動単位というのは、自車位置を更新していく間隔のことである。s34で算出した表示中心位置をもとに、s35では表示用情報判断および表示処理を行う。s35の内容は図4で示すフローチャートによるものであるので後述することにする。次にs36で自車位置計算用変数jのインクリメントを行い、s37で現在選択している始点、終点上に次の表示中心位置が存在するかどうかの判断を行う。この判断により現在選択している始点、終点間に表示中心位置が存在する間はs34からs36を繰り返し処理する。存在しなくなった場合には新たに始点、終点を設定するためにs38でルート設定用データ管理変数iをインクリメントする。s39では終点が目的点を超えていないかどうかの判断を行い、超えていない場合は、s32からの繰り返し処理、超えた場合は目的点を表示中心位置とするためにs40の判断によりs41の処理を行う。図4については、s42により表示中心位置を中心とした表示画面用の地図描画データがメモリ上に存在しているかどうかを判断し、存在していない場合はs43により不足している描画用データの読み込み処理を行う。更にs44で表示中心位置を基にした地図およびルート表示処理を行う。以上の処理により、自動的に表示中心位置の算出が可能になり、設定された経路について地図スクロールを行うことが実現できる。
【0013】
実施例の具体的な説明を図6を用いて説明することにする。図6において矩形枠で囲まれている複数の灰色線の集合が道路を示している。また図左下にある番号1のついた丸印から順にP2,P3,,,P7とある黒の折れ線が今回予め設定されている経路情報であるとする。つまり番号P1は出発点、P7が目的点、P2からP6が中間点である。図6の角丸矩形枠内をLCD23の表示画面であるとする。最初に、先程述べた自動経路表示処理を用いることにより、先ず表示画面は出発点P1から中間点P2までを設定経路内の点を中心として、道なりにスクロールする。続いて中間点P2と中間点P3の間をスクロールし、最終的には目的点P7を中心とした地図画面の表示で処理を終了する事になる。つまり、装置利用者に対して設定した経路についての出発点から目的点までの地図表示を自動的に提供することができる。
【0014】
また、地図描画情報の他に道路の近くにある店情報、観光情報などをCD-ROM情報記憶部2の中にもっておくことにより、自動経路表示の途中でその情報が出現したタイミングでその情報を画面上に表示してやることにより、より分かりやすい自動経路表示処理することができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば予め設定されている経路情報について、出発点から目的点の地図情報を自動表示する事ができるので、装置利用者の煩わしいキー操作を必要としなくなる。また装置利用者にこれから行くべき場所までのガイダンスを予め自動的に行うことができるので、運転操作に余裕をもたせ交通の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例におけるナビゲーション装置の機能ブロック図
【図2】
本発明の一実施例におけるナビゲーション装置の回路ブロック図
【図3】
本発明の一実施例におけるナビゲーション装置のフローチャート
【図4】
本発明の一実施例におけるナビゲーション装置の表示用情報判断及び表示処理のフローチャート
【図5】
本発明の一実施例におけるナビゲーション装置の設定経路情報図
【図6】
本発明の一実施例におけるナビゲーション装置の表示画面の例示図
【符号の説明】
1 経路情報記憶部
2 CD-ROM情報記憶部
3 情報読み出し手段
4 仮想自車位置算出手段
5 自車位置中心表示手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-01-18 
出願番号 特願平5-197056
審決分類 P 1 651・ 161- YA (G01C)
P 1 651・ 121- YA (G01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 安池 一貴
岩本 正義
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3409377号(P3409377)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 ナビゲーション装置  
代理人 小笠原 史朗  
代理人 小笠原 史朗  

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