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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B42C
管理番号 1114707
異議申立番号 異議2003-70357  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-03 
確定日 2005-03-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3312421号「雑誌の製造工程の進行管理システム」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3312421号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3312421号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成5年5月20日に特許出願され、平成14年5月31日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人凸版印刷株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内に意見書が提出されたものである。

2.本件請求項1ないし5に係る発明
特許第3312421号の請求項1ないし5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって構成される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 複数の折丁を組み合わせることにより構成される雑誌について、その製造工程の進行を管理するシステムであって、
頁数・印刷方法・色数・用紙などの属性を示す属性データと、各頁の掲載内容を示す掲載内容データと、からなる台割情報を、1つの雑誌を構成する各折丁のそれぞれについて記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段内に記憶された台割情報について、頁単位または折丁単位での製造工程の進行状況を示す進行情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に対して台割情報の入力および修正を行うとともに、前記第2の記憶手段に対して進行情報の入力および修正を行う入力手段と、
前記第1の記憶手段内に記憶されている台割情報に基づいて、各折丁ごとに属性および各頁の掲載内容を表の形式で表現した台割表を作成し、前記第2の記憶手段内に記憶されている進行情報に基づいて、前記台割表の各部の表示態様を変えて頁単位または折丁単位での進行状況を視覚的に確認できる形式で表現した台割進行表を作成する台割進行表作成手段と、
前記台割進行表をディスプレイ画面または紙面上に出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする雑誌の製造工程の進行管理システム。
【請求項2】 請求項1に記載のシステムにおいて、
同一の折丁に関する属性表示欄と各頁の掲載内容表示欄とを同一の行に配置することにより台割表を作成し、頁単位での進行状況を掲載内容表示欄の表示態様を変えることによって表現し、折丁単位での進行状況を属性表示欄の表示態様を変えることによって表現したことを特徴とする雑誌の製造工程の進行管理システム。
【請求項3】 請求項1または2に記載のシステムにおいて、
特定の雑誌を構成するための折丁の属性を示す属性データをもった基本台割パターン情報を記憶する第3の記憶手段を更に設け、入力手段がこの基本台割パターンを利用して台割情報の入力を行うことができるようにしたことを特徴とする雑誌の製造工程の進行管理システム。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のシステムに対して、通信回線を介して遠隔端末装置を接続し、この遠隔端末装置には、少なくとも第1の記憶手段に対する台割情報の入力機能を設けたことを特徴とする雑誌の製造工程の進行管理システム。
【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載のシステムに対して、通信回線を介して遠隔端末装置を接続し、この遠隔端末装置には、少なくとも第2の記憶手段に対する進行情報の入力機能を設けたことを特徴とする雑誌の製造工程の進行管理システム。」

3.取消理由の概要
当審で通知した取消理由の概要は、本件請求項1ないし3に係る発明は下記の刊行物1〜6に記載された発明に基いて、本件請求項4、5に係る発明は下記の刊行物1〜7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1ないし5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消すべきものと認められる、というものである。

刊行物1:特開昭63-85559号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開昭59-53143号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平2-14358号公報(甲第3号証)
刊行物4:特開昭63-63474号公報(甲第4号証)
刊行物5:特開昭56-91050号公報(甲第5号証)
刊行物6:特開昭62-43768号公報(甲第6号証)
刊行物7:特開平3-256744号公報(甲第7号証)

4.刊行物及び周知例に記載の事項
刊行物1:特開昭63-85559号公報(甲第1号証)
(1-a)「入力される台割情報に基づいて表示器に台割表を描画する台割描画手段と、この台割描画手段が前記表示器に描画した前記台割表上の台割矛盾点を前記台割情報を参照しながら検索する検索手段と、この検索手段が検索した前記矛盾点に対応する前記表示器に表示された台割表上の矛盾位置を表示する矛盾点表示手段と、この矛盾点表示手段が表示した前記矛盾位置を解消するためのサポート情報を前記表示器に表示する情報表示手段と、この情報表示手段が表示器に表示した前記サポート情報に基づいて入力される台割修正情報に応じて前記台割描画手段が描画した前記台割表を修正する修正手段と、この修正手段により修正された修正台割表または前記台割描画手段により描画された台割表を画像出力する画像出力手段とからなることを特徴とする雑誌編集システム。」(特許請求の範囲)
(1-b)「この発明は、雑誌編集における台割を電子的に作成する雑誌編集システムに関するものである。」(1頁右下欄3、4行)
(1-c)「また、雑誌に使用される紙質にはその紙質に合せた版形式があらかじめ決められている。例えば、オフセット,グラビア,活版に対して上質紙,グラビア紙,更紙等が対応付けられている。」(1頁右下欄13〜17行)
(1-d)「入力されるテーマ名称,ページ数,折り指定に基づいて台割表を発生させ、用紙境界における記事のオーバラップまたは記事の不足を表示させることにより、最適な台割表作成をサポートできる雑誌編集システムを得ることを目的とする。」(2頁左上欄11〜16行)
(1-e)「第1図はこの発明の一実施例を示す雑誌編集システムの構成を説明するブロック図であり、1はコンピュータで構成される主制御部で、台割描画手段1a,検索手段1b,矛盾点表示手段1c,情報表示手段1d,修正手段1e等を有している。2は入力手段で、キーボード2a、ポインティングデバイス2b等から構成されている。3は外部メモリで、台割編集プログラムおよび処理データが保存されている。4は表示器で、主制御部1が外部メモリ3に格納された台割編集プログラムに基づいて台割表を表示する。5は画像出力手段で、表示器4上に描画された台割表を2値画像として出力する。なお、台割描画手段1aはキーボード2aより入力される台割情報、すなわちテーマ名称,ページ数,版形式,色数,用紙等の情報に基づいて表示器4に台割表を表示する。」(2頁左下欄11行〜右下欄6行)
(1-f)「第2図(a)〜(d)はこの発明による台割作成動作を説明する模式図であり、・・・同図(a)は台割作成画面で、キーボード2aから入力される台割情報に基づいて台割描画手段1aが台割表11の片折を各用紙別に表示した状態を示し、各折12a〜12dが16ページ単位で構成されているので、ページ数は最大で8ページとなる。各折12a〜12dの上部に付した数値は印刷ページのノンブルである。また、各矢印は記事13a〜13dの区切りを示す。さらに、斜線はCMページを示す。」(2頁右下欄末行〜3頁左上欄11行)
(1-g)「オペレータが今回出版する雑誌の台割表を作成するための台割情報、すなわちすなわちテーマ名称,ページ数,版形式,色数,用紙等をキーボード2aにより入力すると、第1図に示した台割描画手段1aが入力された台割情報に基づいて表示器4に台割表11を第2図(a)に示すように描画する。」(3頁右上欄下から5行〜左下欄2行)
(1-h)「ここで、検索手段1bが描画された折12a〜12dの境界において、各記事13a〜13dが過不足なく配置されたかどうかを検索して行き、第2図(b)に示すように、記事13cが折12dの先頭に配置されてしまうような矛盾点を描出すると、記事13cをブリンクさせるように矛盾点表示手段1cが画面上のデータを制御するとともに、情報表示手段1dが画面上の任意の位置にサポート情報14を表示する。ここで、オペレータがポインティングデバイス2bを操作して、サポート情報14aをピックするとともに、折12c上の記事13aをピックして数字の5をピックすると、記事13a以降を全て1ページ繰り上げ移動させて、記事13cの折12dへの影響を修正して折12cに記事13cを納めた状態に設定する(第2図(c)参照)。」(3頁左下欄2〜17行)
(1-i)「一方、オペレータがポインティングデバイス2bを操作して、サポート情報14bをピックするとともに、折12c上の記事13aをピックして、キーボード2aよりページ数情報、例えば2を入力すると、記事13aのページ数を1ページ削減し、記事13b以降を全て1ページ繰り上げるように修正手段1eが移動させて、記事13cの折12dへの影響を修正して折12cに記事13cを納めた状態に設定する。(第2図(d)参照。)」(3頁左下欄18行〜右下欄7行)
(1-j)「このような修正が完了した時点で、キーボード2aより表示器4に表示された台割表11の出力指令がなされると、画像出力手段5より第3図に示す台割画像21が得られる。」(3頁右下欄8〜11行)
(1-k)「第4図はこの発明による台割作成制御動作手順を説明するフローチャートである。・・・まず、キーボード2aより台割情報が入力されるのを待機し(1)、台割情報が入力されたら、台割描画手段1aが表示器4に台割表11を描画する(2)・・・・次いで、キーボード2aより画像出力指令が入力されるのを待機し(10)、画像出力指令が入力されたら、画像出力手段5より表示器4に描画された台割表11を、例えば記録紙に像出力する。」(4頁左上欄5行〜右上欄10行)

上記の記載及び図面の記載からみて、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「テーマ名称,ページ数,版形式,色数,用紙等の台割情報、及び、各ページの記事13a〜13dの情報を、1つの雑誌を構成する各折12a〜12dのそれぞれについて記憶する外部メモリ3と、
前記外部メモリ3に対して台割情報及び記事13a〜13dの情報の入力および修正を行う入力手段2と、
前記外部メモリ3に記憶されている台割情報及び記事13a〜13dの情報に基づいて、各折12a〜12dごとにテーマ名称,ページ数,版形式,色数,用紙等及び各頁の記事13a〜13dを表の形式で表現した台割表を作成する手段と、
台割表を表示器4の画面または記録紙に出力する出力手段と、
を備える雑誌編集システム。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

刊行物2:特開昭59-53143号公報(甲第2号証)
「複数の加工箇所を有する被工作物を、各加工箇所に応じた数値制御データに基づいて、所定の順序に加工処理を行う指令信号を出力する数値制御装置と、該数値制御装置から、各種の信号を入力し、該信号に応じて被工作物の加工状況を表示する表示部とから成る加工状況監視装置であって、
前記表示部は、前記数値制御装置から、加工前に、全ての加工箇所を示す全加工表示信号を入力し、該信号に応じて全加工箇所を表示する全加工箇所表示部と、
前記数値制御装置から、加工進行に応じて、未加工箇所を示す未加工箇所表示信号、加工開始箇所を示す加工開始箇所表示信号及び加工終了箇所を示す加工終了箇所表示信号を入力し、該信号に応じて、各加工箇所に対応する表示部に未加工表示、加工開始表示、加工済表示をする加工進行表示部と、
から成る数値制御工作機械の加工状況監視装置。」(特許請求の範囲)
「全体の加工箇所の表示との関係において、既加工箇所、現加工箇所、未加工箇所等の各情報を表示する事が生産効率を高める上で必要であるという事を本発明者等は発明した。」(2頁左上欄9行〜13行)
「操作盤10は、数値制御装置20に各種の操作信号を付与するキーボード18を有している。」(3頁左上欄7〜9行)
「数値制御装置20は各種の制御及び演算の機能を有する中央処理装置(CPU)22と所定の制御プログラム及び所定の制御データを予め記憶している記憶装置24及び各種の入出力装置とのインターフェイスを取る入出力インターフェイス26とから成りたっている。」(3頁左上欄13〜18行)
「第2図は、複数の加工箇所を有する多段形状をした被工作物の外型を図示したものである。符号P1〜P4は、それぞれ加工箇所を表示する番号である。D1〜D4は、それぞれの加工箇所における加工外型を表わす。L1〜L4は、それぞれの加工箇所における加工幅を表わす。」(3頁左下欄6〜11行)
「次のデータブロックであるMPITは、各加工箇所に対応して領域がとられ、その中に、未加工、加工開始、加工済を示す情報が入力される様になっている。そしてこれらのデータを基にしてCRT表示管14に加工進行状況を表示する。」(3頁右下欄5〜9行)
「次にステップ102において、MPITテーブルの初期設定、即ちデータテーブルのMPIT領域で、すべての加工箇所を未加工の表示に指定する。次にステップ104において、MPIT及びGDDAのデータに基づいて画面表示する。この結果CRT表示管は、第6図(a)の様な表示になる。CRT表示管には多段の径を有した外形が表示され、全加工箇所が未加工である旨の緑色表示がなされる。」(3頁右下欄14行〜4頁左上欄2行)
「次のステップ110では、その割り出された加工箇所に対応するMPITのデータ領域を加工開始のコードに設定する。そして次のステップ112においては、前ステップ104と同様に、MPITデータ領域を参照して画面の表示を行う。この状態でのCRT画面を第6図(b)に示す。これから加工する箇所に工具の表示をすると共に、その箇所(P2)のみが赤色表示される。その他P1、P3、P4は未加工の表示であるグリーンの表示が成されている。」(4頁左上欄6〜15行)
「その加工箇所の加工が終了した段階でステップ116に移行し、前記のMPITテーブルにおける上記加工箇所に対応した領域を加工終了のコードに書き変える。この後、ステップ118において画面表示を行う。これを行った後のCRT画面は、第6図(c)に示す様に表示される。加工箇所P2の表示部は、既加工状態を示す黄色に表示される。」(4頁左上欄17行〜右上欄4行)
「以上要するに本発明は数値制御工作機械の加工状況に応じて全加工箇所の表示と、未加工箇所表示、加工開始箇所表示、及び既加工箇所表示の加工進行状況の表示を行う様にしたものである。従って、複数の加工箇所がランダムに加工される場合でも数値制御工作機械の作業者は容易に現加工箇所及び既加工箇所、未加工箇所を判読する事ができるため、加工進行状況を全体との関係で把握する事ができる。このため、タイミング良く次の被工作物又は工具の準備をする事ができ生産効率を向上させる事ができる。」(4頁左下欄19行〜右下欄9行)

上記の記載及び図面の記載からみて、刊行物2には、CRT画面上に被工作物の外形を表示し、各加工箇所の表示態様(色)を変え、作業者が加工の進行状況を視覚的に確認できるようにする点、が記載されていると認められる。

刊行物3:特開平2-14358号公報(甲第3号証)
「2.一つまたは複数の表示装置と、躯体,機器などの構造物の構成要素の属性データを記憶した第一の記憶装置と、作業データを記憶した第二の記憶装置と、日程計画を記憶した第三の記憶装置と、入力装置と、演算処理装置と、演算装置から呼出し実行する処理手順を記憶した第四の記憶装置からなる電子計算機において、
前記日程計画に対し、 入力装置から入力した任意の計画上の時期に対し、(1)各作業の作業時期から、指定時期までに計画上終了している作業を判定する手段と(2)この結果と、前記各作業の作業種類、前記各作業の対象となる前記躯体、前記機器名から、前記各躯体、前記機器が指定時期までに、どの種類の作業まで終了しているかを判定する手段と、(3)この結果と、前記各機器、前記躯体の構造物内での配置から、前記各機器、前記躯体の終了作業種類を区別できる形で、構造物のレイアウト図面データを作成し、これを表示装置に出力することにより前記日程計画の評価を支援する手段とからなることを特徴とする日程計画支援装置。」(特許請求の範囲 1頁右下欄2行〜2頁左上欄2行)
「本発明の目的は、日程計画に対し、・・・レイアウト図面を作業の進行状況が分かるように表示することにより、日程計画の効率を向上することにある。」(2頁右下欄11〜15行)
「本発明では、ある時期の作業進行状況とレイアウト図面とを一体化して表現できるため、レイアウト図面を見るだけで、次に続く作業に対する搬入の可能性や据付作業スペースの確保などの判断が容易となり、計画作成の効率が向上する。」(3頁左上欄14〜18行)
「演算処理装置2は、演算部2a,処理手順記憶部2b,中間データ記憶部2c,画像データ出力部2d,入力部2eより構成されている。」(3頁右上欄5〜8行)
「処理ステップ6では、この結果から、各構成要素の作業進行状況を示すレイアウト図面データを作成する。この例を第7図に示す。」(3頁左下欄12〜14行)

上記の記載及び図面の記載からみて、刊行物3には、表示装置に構造物内の全体を示すレイアウト図面を表示し、構造物内の各機器、又は、各躯体の表示態様(無地、斑点、複数の線)を変え、各機器、各躯体の作業の進行状況を、視覚的に確認できるようにする点、が記載されていると認められる。

刊行物5:特開昭56-91050号公報(甲第5号証)
「キャリジの移動方向が反転する毎に1個アップもしくはダウンする16進カウンタにより構成された編段カウンタ32a」(2頁右上欄9〜11行)
「今仮に、・・・最下段のマス目21部分横一列全体が特定色記憶装置27に記憶された内容に基づいて黒色のみを表示する。・・・最下段のマス目21部分横一列全体が約1/4秒を周期として点滅表示される。これにより作業者は、現在手編機Nにより編んでいる位置をテレビ受像機20の表示部20a上において知ることができる。」(3頁左下欄17行〜4頁左上欄16行)
「手編機Nのキャリジが一編成操作を終えて移動方向が反転すると、編段カウンタ32aが1つ減算されて3AHが設定される。すると、輝点32aが1マス目分上方へ移動すると共に下から二段目のマス目21部分の横一列全体が、約1/4秒を周期として点滅表示し、手編機Nの編成位置が一段進んだことを作業者は知ることができる。」(4頁左上欄17行〜右上欄5行)
「以上群述したようにこの発明は、表示部を多数のマス目に区画してそのマス目によりモザイク図形を表示可能で、且つその表示部に表示された図形に基づいて手編機に選針信号を出力可能な図形表示装置において、
前記図形表示装置は、前記マス目の横一列全体を点滅表示可能にすると共にその点滅する部分を、手編機の一編成操作完了毎に一マス目づつ縦方向に移動させて前記表示部に手編機の編地編成の進行状況を表示し得るようにしたので、作業者は、表示部上において、手編機の編地編成の進行状況を的確に把握することができる。又、表示部上に進行状況を表示するための特別の装置を必要とせず、更に作業者は、表示部を見ているのみで進行状況が把握でき、作業能率が向上するなど、優れた作用効果を奏するものである。」(4頁右上欄14行〜左下欄11行)

上記の記載及び図面の記載からみて、刊行物5には、表示部を多数のマス目に区画して、マス目の横一列全体が点滅表示されることにより、作業者は、手編機の編地編成の進行状況を、表示装置の表示部上で視覚的に確認できるようにする点、が記載されていると認められる。

刊行物6:特開昭62-43768号公報(甲第6号証)
「3はデータの記憶,進度予測,進行管理,負荷把握の各処理(データの編集,画面表示など)及びこれらの機器の動作制御を行なう制御装置で、内部に格納された第2図のプログラムに従って各機器の動作を制御する。」(2頁左上欄10〜14行)
「製品を選択したときは、選ばれた製品についての各部品の進行状況を示す第5図(b)のようなガントチャートが表示される。第5図(b)は横軸に日付,縦軸に部品名をとったガントチャートである。完了作業,着手中作業,未着手作業に色別けされて表示される(109)。」(2頁左下欄5〜11行)
「CRT等にビジュアルに表示することにより、簡単かつ明瞭に表示でき、マクロから詳細まで迅速に状況が把握できるようになる。この結果、問題工程の早期発見や適切な対策実施を助け、納期順守や稼動率向上を図り職場の生産性を高めることができる。」(3頁左上欄7〜12行)

上記の記載及び図面の記載からみて、刊行物6には、製品を構成する各部品(文字で表示)の作業の進行状況を表示態様(色)を変え、CRT画面上で進行状況を視覚的に確認できるようにする点、が記載されていると認められる。

刊行物7:特開平3-256744号公報(甲第7号証)
「本発明は、各部門間の情報伝達を容易にするとともに、受注から出荷までの工程管理を統合して行うことのできる印刷統合生産管理システムを提供することを目的とする。(2頁右上欄11〜14行)
「本願第1の発明の印刷統合生産管理システムによれば、各部門のコンピュータが工程管理部を中心としてローカルエリアネットワークによって相互接続され、各コンピュータは工程管理部内の共用メモリ内のデータを共用することができる。このため、従来のように、伝票や電話によって各部門間の情報伝達を行う必要はなくなり、受注から出荷までの総合管理が可能になる。」(2頁右下欄12〜19行)
「この実施例では、ホストコンピュータ10は本社に設置され、サブホストコンピュータ20は印刷工場に設置されているため、両者間は通信回線によって接続されている。ホストコンピュータ10には、また、営業部門11の端末が接続されている。営業部門が本社外にある場合には、この接続も通信回線によって行われる。一方、サブホストコンピュータ20には、生産管理部門21、生産計画部門22、資材調達部門23、外注部門24、物流部門25、生産部門26、分析部門27、の各部門に設けられたコンピュータが接続されている。しかも、これらの各部門21〜27は、サブホストコンピュータ20内のメモリを共有できるように、ローカルエリアネットワークを構成するように接続されている。」(3頁左上欄11行〜右上欄5行)
「第2図に示す作業工程の流れ図に基づいて、受注から出荷に至るまでの一品目についての行程を説明する。まず、ステップS1において受注が行われる。すなわち、営業部門11が顧客から印刷物の依頼を受けることになる。営業部門11は、この受注内容を端末に入力する。営業部門11の端末は、ホストコンピュータ10に接続されているため、受注情報は営業部門11からホストコンピュータ10へと転送され、更に、サブホストコンピュータ20内の共用メモリに保存される。・・・なお、営業部門11に、原稿をデジタルデータとして取り込むスキャナ装置などを備え付ければ、原稿をデジタルデータの形で通信回線を介して入稿する方法も可能である。」(3頁左下欄14行〜右下欄13行)
「次に、ステップS2において、仕様作成が行われる。すなわち、生産管理部門21が入稿された原稿に基づいて、印刷対象となる品目について、版サイズ、色数、印刷枚数、納期などの詳細な仕様を作成するのである。この仕様は、共用メモリに書き込まれる。」(3頁右下欄14〜19行)
「生産部門26は、必要な資材の入庫を確認したら、生産作業を開始する。具体的には、製版、刷版、印刷、加工、検査などの処理を生産計画に基づいて各装置を稼働して行うことになる。こうして、装置の稼動によって得られた生産実績(たとえば、印刷枚数)は、逐次サブホストコンピュータ20に与えられ、共用メモリに保存される。」(4頁右上欄18行〜左下欄5行)
「ホストコンピュータ10は、サブホストコンピュータ20に与えられた生産実績を、進捗情報として入力し、これを営業部門11に知らしめる。」(4頁左下欄20行〜右下欄3行)
「生産管理部門21をホストコンピュータ10に接続するような構成にしてもよい。また、ホストコンピュータ10をローカルエリアネットワーク内に配置するような構成にしてもよく、ホストコンピュータ10とサブホストコンピュータ20とに分けずに、ホストコンピュータ1台だけで両方の機能を行わせるような構成にしてもかまわない。」(5頁右上欄5〜12行)
「本発明のシステムの特徴は、複数の部門のコンピュータが、工程管理部内の共用メモリを共通してアクセスできるようにした点にある。これにより、他の部門に関する情報を容易に得ることが可能になる。たとえば、生産部門において、現在どの印刷機、どの製本機、あるいはどの丁合機が稼働中であるかというリアルタイムの情報を生産実績として逐次共用メモリに入れておくようにすれば、他の部門のコンピュータからもこの情報を随時アクセスすることができるのである。」(5頁右上欄15〜左下欄4行)

上記の記載及び図面の記載からみて、刊行物7には、印刷、製本を含む生産管理システムに関して、ホストコンピュータに通信回線を介して端末を接続し、この端末には、前記ホストコンピュータに接続したメモリに対する情報の入力機能を設けた点、が記載されていると認められる。

周知例1:視覚デザイン研究所編,「編集デザインハンドブック」,株式会社視覚デザイン研究所,昭和54年2月15日,p.64-79
「台割り表の役割
企画会議できまった内容や企画テーマを具体化していくのは台割り表からである。
印刷仕様、特にページどりの計画を組んで、何本かの〈折り〉で印刷時のページ数をきめる。このページ数が1版にまとまった状態を〈1台〉という。刷り色や用紙を計算して1台ごとにまとめ、目次と進行表の役割をもたせたのが台割り表である。
雑誌などは、グラビアページとモノクロページ、オフセット印刷、凸版印刷とグラビア印刷の併用、用紙の種類や刷り色、別丁・折り込み・とじ込み付録といった製本など、複雑な組み合わせのものは、各要素に応じたページ数で、テーマの割りふり方をしなければならない。
台割り表ができ上がると、取材などの計画、原稿、写真の手配、納期から逆算されてでてきた印刷日程などと合わせて、全体のスケジュールをきめることができる。
これらの作業日程、計画予定などすべてを書きこみ進行表として用いれば、いっそう便利である。」(69頁左欄1〜20行)

周知例2:デザイン編集室編,「編集ハンドブック」,株式会社ダヴィッド社,1981年1月15日,p.68(甲第9号証)
「雑誌
レイアウトの方法を述べる前に、編集進行表(ページ割進行表・台割表ともいっている)について述べておきたい。
編集進行表-雑誌では、文章の多いところを凸版印刷、カラーページをオフセット印刷、グラフ・ページをグラビア印刷といったように、ものによって印刷版式を使いわけているが、これを適切に配分して、何ページから何ページまでカラー、何ページから何ページまでグラフと、一見して分かるようにした表が必要となる。版式別に色分けしてつくる編集者もいる(これだけなら台割表ともいえるが)。
さらに、1ページめは目次とか、9から14ページまでは「印刷について」のタイトルで〇〇先生の原稿といったことから、その担当編集者名、入稿日、校正(受・返)の日付け(広告がはいるものなら、広告主名・入稿日まで)なども記録できるようにした一覧表である。」(68頁上欄1〜17行)

周知例3:鈴木敏夫著,「基本・本づくり」,印刷学会出版部,昭和42年4月,p.25-29
「■ページ割り予定表と編集進行表 雑誌の場合、プラン決定→取材開始と同時に、一冊を通しての、ページ割り予定表をつくらねばなりません。予定表は、あとでいろいろなことを書きこみます・・・ひと目で一冊の全貌がわかるようにつくります。・・・
この一覧表にページを追って記事のタイトル・筆者名などを書きこんでゆくのです」(27頁上欄9-20行)
「ページ割り予定表に、さらに編集進行予定表をも兼ねさせることができます。右端に入稿・出稿・初校来・初校返し・再校返し……校了などの欄をつくっておき、それぞれの日付を書きこんで、進行状況を一目瞭然たらしめるのです」(29頁上欄17-20行)

5.対比・判断
5-1.本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と刊行物1記載の発明を対比する。
雑誌が、複数の折丁を組み合わせることにより構成される点は周知であり、
刊行物1記載の発明の「テーマ名称,ページ数,版形式,色数,用紙等の台割情報、及び、各ページの記事13a〜13dの情報」、「各折12a〜12d」、「外部メモリ3」、「入力手段2」、「ページ数,版形式,色数,用紙等」、「記事13a〜13d」、「表示器4の画面」、「記録紙」は、それぞれ、本件発明1の「頁数・印刷方法・色数・用紙などの属性を示す属性データと、各頁の掲載内容を示す掲載内容データと、からなる台割情報」、「各折丁」、「第1の記憶手段」、「入力手段」、「属性」、「掲載内容」、「ディスプレイ画面」、「紙面上」に相当すると認められ、
「台割表」と「台割進行表」は、いずれも「画像」といえるから、
両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「複数の折丁を組み合わせることにより構成される雑誌についてのシステムであって、
頁数・印刷方法・色数・用紙などの属性を示す属性データと、各頁の掲載内容を示す掲載内容データと、からなる台割情報を、1つの雑誌を構成する各折丁のそれぞれについて記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に対して台割情報の入力および修正を行う入力手段と、
前記第1の記憶手段内に記憶されている台割情報に基づいて、各折丁ごとに属性および各頁の掲載内容を表の形式で表現した台割表を作成する手段と、
画像をディスプレイ画面または紙面上に出力する出力手段
を備える」点。
<相違点>
本件発明1では、
「雑誌について、その製造工程の進行を管理するシステムであって、
第1の記憶手段内に記憶された台割情報について、頁単位または折丁単位での製造工程の進行状況を示す進行情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に対して進行情報の入力および修正を行う入力手段と、
前記第2の記憶手段内に記憶されている進行情報に基づいて、前記台割表の各部の表示態様を変えて頁単位または折丁単位での進行状況を視覚的に確認できる形式で表現した台割進行表を作成する台割進行表作成手段と、
前記台割進行表をディスプレイ画面または紙面上に出力する出力手段と、
を備える雑誌の製造工程の進行管理システム」であるのに対して、
刊行物1記載の発明では、そうではない点。

上記相違点について検討する。
i.異議申立人が、当審の審尋に対して提出した回答書(平成16年1月8日付け)に添付した上記周知例1〜3に記載されているように、台割表を利用して、雑誌の製造に必要な作業の種類や作業の日程等を記載した台割進行表を作成することは周知の事項であり、何のために台割進行表を作成するかといえば、雑誌の製造工程の進行を管理するためであることは明らかである。
ii.一方、上記刊行物2には、CRT画面上に被工作物の外形を表示し、各加工箇所の表示態様(色)を変え、作業者が加工の進行状況を視覚的に確認できるようにする点が、上記刊行物3には、表示装置に構造物内の全体を示すレイアウト図面を表示し、構造物内の各機器、又は、各躯体の表示態様(無地、斑点、複数の線)を変え、各機器、各躯体の作業の進行状況を、視覚的に確認できるようにする点が、上記刊行物5には、表示部を多数のマス目に区画して、マス目の横一列全体が点滅表示されることにより、作業者は、手編機の編地編成の進行状況を、表示装置の表示部上で視覚的に確認できるようにする点が、上記刊行物6には、製品を構成する各部品(文字で表示)の作業の進行状況を表示態様(色)を変え、CRT画面上で進行状況を視覚的に確認できるようにする点が、それぞれ記載されていると認められる。これらの記載において、進行情報に基づいて表示態様を変えていることは明らかであるから、これらの記載は、進行情報に基づいて、表示態様を変えて作業の進行状況を視覚的に確認できる形式でディスプレイ画面に表現する技術が周知であるということを示すものであり、該周知の技術は作業の進行を管理するためのものであることは明らかである。
iii.上記「i.」で述べたように、雑誌の製造工程の進行を管理するために、台割表を利用して、雑誌の製造に必要な作業の種類や作業の日程等を記載した台割進行表を作成することは周知の事項であり、上記「ii.」で述べたように、種々の技術分野で、作業の進行を管理をするために、進行情報に基づいて、表示態様を変えて作業の進行状況を視覚的に確認できる形式でディスプレイ画面に表現する技術も周知である。
これら周知の事項及び周知の技術を勘案すると、刊行物1記載の発明において、ディスプレイ画面に出力した台割表を利用して雑誌の製造工程の進行管理をすべく、進行情報に基づいて、表示態様を変えて雑誌の製造工程の進行状況を視覚的に確認できる形式でディスプレイ画面に表現した台割進行表を作成しようとすることは、当業者であれば容易に着想し得ることである。そして、刊行物1記載の発明において、進行情報に基づいて、表示態様を変えて雑誌の製造工程の進行状況を視覚的に確認できる形式でディスプレイ画面に表現した台割進行表を作成しようとすれば、進行情報を記憶する第2の記憶手段、第2の記憶手段に対して進行情報の入力を行う入力手段、台割進行表をディスプレイ画面または紙面上に出力する出力手段を備えることが、設計上必要な事項であることは自明であり、進行情報が変更されることは当然予測できることであるから、入力を行う入力手段に修正を行う機能を持たせることは、設計上当然考慮すべきことである。また、刊行物1記載の発明において、雑誌の製造工程の管理をしようとして、進行情報は、第1の記憶手段内に記憶された台割情報について、頁単位または折丁単位での製造工程の進行状況を示すものとすることは、管理しやすいように当業者が適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。さらに、刊行物1記載の発明において、台割表が各折丁ごとに属性および各頁の掲載内容を表の形式で表現したものであり、上記したように、進行情報が頁単位または折丁単位での製造工程の進行状況を示すものとすることが当業者が適宜になし得る程度の設計的事項にすぎないから、刊行物1記載の発明において、台割表を利用して、進行情報に基づいて、表示態様を変えて雑誌の製造工程の進行状況を視覚的に確認できる形式でディスプレイ画面に表現した台割進行表を作成しようとして、表示態様を変える対象を、各折丁ごとに属性および各頁の掲載内容を表の形式で表現した部分、すなわち台割表の各部とすることも、当業者が適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。

そして、本件発明1によって奏せられる作用・効果は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術から当業者であれば予測可能なものである。

したがって、本件発明1は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-2.本件請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、本件発明1の構成に、「同一の折丁に関する属性表示欄と各頁の掲載内容表示欄とを同一の行に配置することにより台割表を作成し、頁単位での進行状況を掲載内容表示欄の表示態様を変えることによって表現し、折丁単位での進行状況を属性表示欄の表示態様を変えることによって表現したこと」との限定事項を付加したものであるが、本件発明1は、上記「5-1.」で述べたように、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項について検討する。
刊行物1記載の発明を認定した上記刊行物1の(1-e)、(1-f)、(1-g)、(1-j)、(1-k)の記載を参酌すると、上記刊行物1の第3図には、複数の横長のますが中央に縦に表示され、この横長の各ますの中には、上から順に「表紙」、「A口絵」、「Aグラ」・・・「Fグラ」、「B口絵」、「C口絵」、「カード」、「D口絵」、「E口絵」、「Fグラ」の文字が表示され、上記中央の横長の各ますの両側に、複数の縦長のますが行を同じくして表示され、この複数の縦長のますのうち1部には、頁を表す「印刷ページのノンブル」がその上部に表示されたものや、ますの中に「CM」の文字が表示されたものや、複数のますを横断して記事の区切りを示す矢印が表示されているものがある。上記「表紙」、「A口絵」、「Aグラ」・・・「Fグラ」、「B口絵」、「C口絵」、「カード」、「D口絵」、「E口絵」、「Fグラ」の文字が、それぞれ表示された各「横長のます」は、本件発明2の「同一の折丁に関する属性表示欄」に相当すると認められ、各「横長のます」と同じ行に表示された各「縦長のます」は、本件発明2の「各頁の掲載内容表示欄」に相当すると認められる。してみると、刊行物1記載の発明は、同一の折丁に関する属性表示欄と各頁の掲載内容表示欄とを同一の行に配置することにより台割表を作成してなる点を備えているということができる。
また、頁単位での進行状況を掲載内容表示欄の表示態様を変えることによって表現し、折丁単位での進行状況を属性表示欄の表示態様を変えることによって表現する点は、雑誌の製造工程の進行状況を視覚的に確認しやすいようにしようとして、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。

そして、本件発明2によって奏せられる作用・効果は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術から当業者であれば予測可能なものである。

したがって、本件発明2は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-3.本件請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という。)は、本件発明1または本件発明2の構成に、「特定の雑誌を構成するための折丁の属性を示す属性データをもった基本台割パターン情報を記憶する第3の記憶手段を更に設け、入力手段がこの基本台割パターンを利用して台割情報の入力を行うことができるようにしたこと」との限定事項を付加したものであるが、本件発明1及び2は、それぞれ上記「5-1.」及び「5-2.」で述べたように、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項について検討する。
特定の雑誌についてみると、毎号掲載記事が異なるものの各折丁の属性は変わらないものが多いことは、一般によく知られていることである。一方、基本パターン情報をテンプレートとして記憶する記憶手段を設け、入力手段がこの基本パターンを利用して情報の入力を行うことができるようにする点は、周知例を挙げるまでもなくコンピュータ技術において周知の技術である。してみると、刊行物1記載の発明において、毎号変わらない各折丁の属性データを基本パターン情報として上記限定事項のように構成する点は、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。

そして、本件発明3によって奏せられる作用・効果は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術から当業者であれば予測可能なものである。

したがって、本件発明3は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-4.本件請求項4に係る発明について
本件請求項4に係る発明(以下、「本件発明4」という。)は、本件発明1ないし本件発明3の構成に、「通信回線を介して遠隔端末装置を接続し、この遠隔端末装置には、少なくとも第1の記憶手段に対する台割情報の入力機能を設けたこと」との限定事項を付加したものであるが、本件発明1ないし本件発明3の各発明は、それぞれ上記「5-1.」、「5-2.」及び「5-3.」で述べたように、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項について検討する。
ホストコンピュータに通信回線を介して端末を接続し、この端末には、前記ホストコンピュータに接続したメモリに対する情報の入力機能を設けた点は、上記刊行物7に、印刷、製本を含む生産管理システムに関して記載されているが、種々の分野で周知の技術であることから、上記限定事項は、刊行物1記載の発明において当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。

そして、本件発明4によって奏せられる作用・効果は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術から当業者であれば予測可能なものである。

したがって、本件発明4は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-5.本件請求項5に係る発明について
本件請求項5に係る発明(以下、「本件発明5」という。)は、本件発明1ないし本件発明3の構成に、「通信回線を介して遠隔端末装置を接続し、この遠隔端末装置には、少なくとも第2の記憶手段に対する進行情報の入力機能を設けたこと」との限定事項を付加したものであるが、本件発明1、2及び3は、それぞれ上記「5-1.」、「5-2.」及び「5-3.」で述べたように、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項について検討する。
上記「5-1.」で述べたように、刊行物1記載の発明において、台割進行表を作成しようとすることは、当業者であれば容易に着想し得ることであり、台割進行表を作成しようとすれば、進行情報を記憶する第2の記憶手段、第2の記憶手段に対して進行情報の入力を行う入力手段を備えることが、設計上必要な事項であることは自明である。また、上記「5-4.」で述べたように、ホストコンピュータに通信回線を介して端末を接続し、この端末には、前記ホストコンピュータに接続したメモリに対する情報の入力機能を設けた点は種々の分野で周知の技術である。したがって、上記限定事項は、刊行物1記載の発明において、台割進行表を作成するにあたり、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。

そして、本件発明5によって奏せられる作用・効果は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術から当業者であれば予測可能なものである。

したがって、本件発明5は、刊行物1記載の発明、上記周知の事項及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし5に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-02-03 
出願番号 特願平5-141340
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B42C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 信田 昌男  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 川島 陵司
白樫 泰子
登録日 2002-05-31 
登録番号 特許第3312421号(P3312421)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 雑誌の製造工程の進行管理システム  
代理人 志村 浩  

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