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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E05F
管理番号 1115139
審判番号 無効2003-35450  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2005-02-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3176043号発明「ドアクローザのストップ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3176043号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1-1)本件特許第3176043号の訂正前の請求項1及び2に係る発明は、平成10年4月17日(優先権主張平成9年6月5日)に出願されたものであって、平成13年4月6日にその発明についての特許の設定登録がされたものである。
(1-2)これに対して、請求人は、「訂正前の本件の請求項1、2に係る各特許発明は、甲第1号証乃至甲第13号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は無効とすべきものである。」旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出している。
(1-3)被請求人は、答弁書を提出すると共に、訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、すなわち、下記のとおりに訂正することを求めるものである。
訂正事項1:
【請求項1】所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品の一方と一対のセレーションを介して連結されるストッパ部材と、ドアの開度が所定角度に達したときに前記ストッパ部材と係合して前記ドアの閉方向の移動を阻止する手段とを備えたドアクローザのストップ装置において、前記ストッパ部材よりも下方の位置において、上下に移動可能に配置され、前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えと、前記ストッパ部材押えの下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり、前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構とを有し、前記カム機構を前記連結位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し、一方、前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持することを特徴とするドアクローザのストップ装置。
訂正事項2:
【0006】請求項1の発明は、所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品(1、2)の一方(1)と一対のセレーション(8a、9a)を介して連結されるストッパ部材(9)と、ドアの開度が所定角度に達したときにストッパ部材(9)と係合してドアの閉方向の移動を阻止する手段(3、4、5)とを備えたドアクローザのストップ装置において、前記ストッパ部材(9)よりも下方の位置において、上下に移動可能に配置され、前記一対のセレーション(8a、9a)の噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押え(10)と、前記ストッパ部材押えの下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり、前記ストッパ部材押え(10)を移動させるためのカム機構とを有し、前記カム機構を前記連結位置側に操作して、前記ストッパ部材押え(10)を前記ストッパ部材(9)と共に上方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品(1、2)と前記ストッパ部材(9)との連結状態を維持し、一方、前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して、前記ストッパ部材押え(10)を前記ストッパ部材(9)と共に下方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品(1、2)と前記ストッパ部材(9)との連結解除状態を維持することによって上述した課題を解決する。
(1-4)
請求人は、請求人の答弁及び訂正請求に対し弁駁書を提出した。

2.訂正の可否に対する判断
上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正事項2は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載を整合させる明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、これらの訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、これら訂正事項は、特許法第134条第2項に掲げる目的に適合し、同法第134条第5項において準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。

3.本件発明
本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」などという。)は、上記訂正が認められることから、訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品の一方と一対のセレーションを介して連結されるストッパ部材と、ドアの開度が所定角度に達したときに前記ストッパ部材と係合して前記ドアの閉方向の移動を阻止する手段とを備えたドアクローザのストップ装置において、前記ストッパ部材よりも下方の位置において、上下に移動可能に配置され、前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えと、前記ストッパ部材押えの下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり、前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構とを有し、前記カム機構を前記連結位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し、一方、前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持することを特徴とするドアクローザのストップ装置。
【請求項2】前記カム機構は、前記ストッパ部材押えを上下に変位させるための端面カムを有していることを特徴とする請求項1記載のドアクローザのストップ装置。

4.甲号証及び乙号証
甲第1号証:実願昭56-41463号(実開昭57-153679号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開平9-37号公報
甲第5号証: 実用新案登録第2520331号公報
甲第6号証:実開平5-20号公報
甲第7号証:特開平7-12618号公報
甲第10号証:実願平2-122636号(実開平4-80757号)のマイクロフィルム
甲第11号証:実願昭62-45559号(実開昭63-152791号)のマイクロフィルム
乙第1号証:特開平11-294006号公報

甲第1号証には、次のことが記載されている。
「本考案は扉の開放停止位置を任意に調整できるようにしたドア・クローザの扉開放停止装置に関する」(明細書2頁2ないし4行)、
「第1図に示したように、扉1に固定されるドア・クローザ2・・・と、扉取付枠3とはリンク機構4により連結される。
上記リンク機構4は、・・・ブラケット4bと、・・・突軸・・・6にて連結するリンク4cとからなって、上記リンク4cとブラケット4bとの枢着部7にはカム面8a・・・に第2図(第3図の誤記・・・合議体注。)が示したように切欠凹部8cを設けたカム板8を着脱、かつ回動調整可能に締着してあると共に、上記リンク4cにスプリング9により弾撥付勢して内装した摺動体10先端の転子11を上記カム面8aに常時圧接し、開扉動作によって、上記切欠凹部8cに転子11が係嵌することで扉開放停止が行われるように構成されている。」(同2頁9行ないし3頁4行)、
「上記リンク4c端部に非回転に設けた突軸6に、中心に貫通孔12aを設けた座12を嵌挿し、その座部12bと,上記ブラケット4bとの対接面にセレーション13,14を夫々放射状に設けて相互に脱着、かつ回動調整自在に噛合すると共に、上記座部12bの裏面から真円以外の楕円形又は四角、六角形等の凸部12cを上記貫通孔12aの中心から第2図A、B、Cに夫々示した如く・・・突設し、該凸部12cの外形状に対応させて上記カム板8には透孔8dを貫通形成して、上記凸部12cとカム板8を脱着目在に・・・嵌合可能に嵌合し、上記座12と軸回り方向に固定して締着し、構成したものである。」(同3頁5ないし20行)、
「上記突軸6としては、第1図に示したような段6a付きボルトが適用されるもので、該ボルトの段6aに上記座12の凸部12c下端と、カム板8を受け、ネジ部6bにワッシャ15を介在してナット16を螺着することによりブラケット4b、リンク4c、カム板8、座12を螺着するように形成されている。」(同4頁1ないし7行)、
「而して上記構成において、ドア・クローザ2は扉1に、一方ブラケット4bは扉取付枠3に固定されるから、今閉扉位置から扉1を開き方向へ回動していくことによって、リンク4cが突軸6を支点として回動し、その途中においてリンク4cに支承されている転子11がカム板8におけるカム面8aの周縁突部8bへ臨むにつれ摺動体10はスプリング9を圧縮しながら後退し、もって転子11は切欠凹部8cに嵌合し、開扉停止が行われる。」(同4頁11ないし20行)、
「ナット16による座12及びカム板8の締着を解いて両セレーション12,13の噛合いを解いた後、カム板8を座12と共に周方向へ回動して切欠凹部8cを任意量変位し、然る後締結することで、上述開扉停止位置を所望位置に調整することができる。」(同5頁第1ないし6行)。
したがって、甲第1号証には、「所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結されたブラケット4b及びリンク4cの一方とセレーション13、14を介して連結されるカム板8及び座12と、扉1の開度が所定角度に達したときに前記カム板8及び座12と係合して前記扉1の閉方向の移動を阻止するスプリング9、摺動体10及び転子11とを備えたドア・クローザの扉開放停止装置において、予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である突軸6及びナット16とを有し、前記突軸6及びナット16を前記連結位置側に操作して、前記カム板8及び座12を上方に移動させることにより、前記ブラケット4b及びリンク4cと前記カム板8及び座12との連結状態を維持し、一方、前記突軸6及びナット16を前記連結解除位置側に操作して、前記カム板8及び座12を下方に移動させることにより、前記ブラケット4b及びリンク4cと前記カム板8及び座12との連結解除状態を維持するドア・クローザの扉開放停止装置。」という発明が記載されていると認められる。

また、甲第4号証ないし甲第7号証、甲第10号証及び甲第11号証には、一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え、予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であるカム機構が記載されている。
さらに、甲第4号証には、菊座9a、10aを有する部材とカム部12aとの間にスプリングリテーナ16を介在させること、及び、「【0025】特に、草刈機Aに対する草刈機用ハンドル装置1の装着姿勢の変更は、1本のロックレバー12を起倒操作することでワンタッチで簡単に調節することができる。」ことが記載され、
甲第5号証には、「第1の菊座20を取り付けた支持金具16が不用意に旋回することがなく、ハンドル基杆12の刈取り作業機に対する前後及び左右方向の角度設定が同時に、簡単かつ安全に行われる。しかも菊座20,22の山部が潰れることがないため、長期間にわたって長期間にわたって良好な噛合い状態を維持することができ、菊座20,22の耐久性が向上する。」(6欄46行ないし7欄2行)と記載され、
甲第7号証には、菊座部材18、21を有する部材とカム部材25との間にバネ座金23、座金24を介在させることが記載されている。

乙第1号証は、本件の優先日後で出願日前に出願された発明の公開公報であって、次のことが記載されている。
「【0003】・・・従来装置では、平面セレーションの解放・結合時に締付けボルトの緩め作業や締付け作業が必要であり、工具が必要となって作業が煩雑化する傾向にある。また、ボルトの締付けが不十分な場合、あるいは長期使用によりボルトが緩んだ場合には、動作不良を招くおそれがあり、さらに緩んだボルトが脱落するおそれもある。【0004】そこで、本発明は、ドアの開放停止位置の変更が工具を用いることなく容易に行え、動作の確実性・安定性を向上させることができ、しかもボルトの脱落も起こり得ないドアの停止装置の提供を目的とする。」、
「【請求項1】・・・回転部材およびこれに接触する従動部材からなり、筒体を軸方向の何れか一方に移動させて平面セレーション部での噛み合いを結合、解放するカム機構とを具備することを特徴とするドアの停止装置。」。

5.対比・判断
(5-1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「ブラケット4b及びリンク4c」、「セレーション13、14」、「カム板8及び座12」、「扉1」、「スプリング9、摺動体10及び転子11」、「突軸6及びナット16」、「ドア・クローザの扉開放停止装置」が、本件発明1の「ドアクローザ部品」、「一対のセレーション」、「ストッパ部材」、「ドア」、「ドアの閉方向の移動を阻止する手段」、「予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構」、「ドアクローザのストップ装置」に相当し、甲第1号証記載の発明も、カム板8及び座12よりも下方の位置において、突軸6下面の溝にドライバーを差し込み回動させて、セレーションの連結位置と連結解除をすることができるから、カム板8及び座12よりも下方の位置において、予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を有しているということができ、
両者は、「所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品の一方と一対のセレーションを介して連結されるストッパ部材と、ドアの開度が所定角度に達したときに前記ストッパ部材と係合して前記ドアの閉方向の移動を阻止する手段とを備えたドアクローザのストップ装置において、前記ストッパ部材よりも下方の位置において、予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構とを有し、前記機構を前記連結位置側に操作して、前記ストッパ部材を上方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し、一方、前記機構を前記連結解除位置側に操作して、前記ストッパ部材を下方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持するドアクローザのストップ装置。」である点で一致し、次の相違点を有する。
(相違点1)
予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構は、本件発明1が、カム機構であるのに対し、甲第1号証記載の発明は、突軸6とナット16とからなる点。
(相違点2)
本件発明1が、ストッパ部材よりも下方の位置において、上下に移動可能に配置され、前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えを有し、前記ストッパ部材押えの下方において前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構を有し、前記カム機構を前記連結位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し、一方、前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持する、すなわち、ストッパ部材とカム機構との間にストッパ部材押えを介在させるのに対し、甲第1号証記載の発明は、ストッパ部材押えを有しない点。

上記相違点1を検討すると、一般に、一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え、予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術にあって、カム機構を採用することは、甲第4号証ないし甲第7号証、甲第10号証及び甲第11号証等に記載されているように、周知慣用であるから、甲第1号証記載の発明に該周知慣用技術を採用して、相違点1の本件発明1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
被請求人は、甲第1号証記載の発明と甲第4号証ないし甲第11号証記載の発明のそれぞれの属する技術分野が全く相違する旨(答弁書6頁「3-1」参照)、本件出願当時、ドアクローザのストップ装置において、ネジ締結構造を使用することが業界における技術常識であって、かかる本件出願時の技術水準を考慮すれば、カム機構を採用する本件特許発明が進歩性を有している旨(答弁書6ないし8頁「3-2」参照)、及び、被請求人は、本件発明1が、ドアクローザのストップ装置であって、この停止位置調整作業はストッパ部材とドアとが係合を介して連結されたドアの開放停止状態で行うという特殊性を有することから、従来のネジ締結構造においては、係合が外れてドアのみが回動したり再度係合させるときにセレーションが破損するおそれがあったりするものであった、かかるネジ締結構造を採用していることに起因した調整作業時の問題を解決すべく、本件発明1ではカム機構を採用した旨(答弁書8ないし10頁「3-3」)主張する。
しかしながら、上記のとおり、甲第1号証記載の発明と、甲第4号証以下の発明とは、一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替え、予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能である機構を設ける技術である点で共通しており、両者の属する技術分野が全く相違するとの被請求人の主張は認められない。
そして、第1号証記載の発明と甲第4号証以下記載の周知慣用技術とを組み合わせることに何ら阻害要件も認められないから、カム機構を採用する本件発明1が進歩性を有しているとの被請求人の主張は理由がない。
また、被請求人は、ドアクローザのストップ装置の停止位置調整作業の特殊性を主張するが、本件発明1の作用効果は、要するに、セレーションの位置調整を容易に行うことができ、セレーションの噛み合い不良も防止するため、カム機構を採用したにすぎず、また、セレーション及びカム機構からなるものは、甲第4号証「【0025】・・・ワンタッチで簡単に調節することができる。」及び甲第5号証「・・・不用意に旋回することがなく、・・・角度設定が同時に簡単且つ安全に行われる。しかも、・・・長期間にわたって良好な噛合い状態を維持することができ・・・」(6欄46ないし49行)等と記載されているように、自明な作用効果にすぎないから、これをドアークローザのストップ装置に採用したからといって、当業者が予測できない作用効果を奏するとはまではいえない。
なお、被請求人は、請求人の合併前の会社を出願人とする乙第1号証を挙げ、ネジ締結構造に代えてカム機構を用いることが当業者にとって容易に推考しえることではないことを請求人も十分に認識している旨(答弁書7ないし8頁「(3)」)主張するが、乙第1号証は、公知文献ではなく、本件発明1の進歩性を判断する上で無関係の文献である。

上記相違点2を検討する。被請求人は、「本件特許発明は、カム機構の動作を一旦ストッパ部材押えの上下動に変換し、該ストッパ部材押えの上下動を介してストッパ部材を上下に移動させる構成にしているので、特にストッパ部材を上方に押し上げるときにスムーズに移動させることができる」(答弁書10頁下から2行ないし11頁2行)と主張する。
しかしながら、一般に、機械分野において、ある部材を押圧するために、他の部材を介在させるか否かは、当業者が、各部材間の円滑な作動を考慮して当然なし得る設計的事項にすぎない。また、セレーションを有する部材とカム機構との間に、他の部材を介在させることも、周知慣用である(例えば、甲第4号証スプリングリテーナ16、甲第7号証の座金24等参照)。したがって、甲第1号証記載の発明において、相違点2の本件発明1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることであるし、その作用効果も格別のものは認められない。

(5-2)本件発明2について
本件発明2と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は上記一致点及び相違点の他に次の相違点を有する。
(相違点3)
本件発明2が、前記カム機構は、前記ストッパ部材押えを上下に変位させるための端面カムを有しているのに対し、甲第1号証記載の発明はこの構成を有しない点。

上記相違点3を検討すると、カム機構において、部材を変位させるための端面カムを有することは、甲第4号証ないし甲第7号証、甲第10号証及び甲第11号証等に記載されているように、周知慣用であるし、ストッパ部材押えを設けることも上記相違点2において検討したとおりであるから、甲第1号証記載の発明に該周知慣用技術を採用して、相違点3の本件発明2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることであるし、その作用効果も格別のものは認められない。

6.むすび
以上のとおり、本件発明1及び2は、その出願前に頒布された甲第1号証及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ドアクローザのストップ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品の一方と一対のセレーションを介して連結されるストッパ部材と、ドアの開度が所定角度に達したときに前記ストッパ部材と係合して前記ドアの閉方向の移動を阻止する手段とを備えたドアクローザのストップ装置において、前記ストッパ部材よりも下方の位置において、上下に移動可能に配置され、前記一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えと、前記ストッパ部材押えの下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり、前記ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構とを有し、前記カム機構を前記連結位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に上方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結状態を維持し、一方、前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して、前記ストッパ部材押えを前記ストッパ部材と共に下方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品と前記ストッパ部材との連結解除状態を維持することを特徴とするドアクローザのストップ装置。
【請求項2】 前記カム機構は、前記ストッパ部材押えを上下に変位させるための端面カムを有していることを特徴とする請求項1記載のドアクローザのストップ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドアを開放状態で保持するためのドアクローザのストップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のストップ装置として、実公平1-30526号公報には、ドアクローザのメインアームとリンクとの連結点に停止カムを介装し、その停止カムとメインアームとを一対のセレーションを介して連結して両者をリンクに対し一体回転可能に設けるとともに、リンクの内部にはドアが所定角度まで開いたときに停止カムと係合してドアの閉方向への復帰を阻止する機構(例えばコイルばねを利用して鋼球を停止カムの外周面に押し付ける機構)を内蔵させたものがある。この装置によれば、一対のセレーションを締め付けるためのボルトを緩め操作してメインアームに対する停止カムの取付角度を変化させることにより、ドアの停止位置を調整できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の装置は一対のセレーションの山同士が当接して両者が全く噛み合っていない状態、あるいは両者が不完全に噛み合っている状態でもボルトを締め付けることができ、しかもセレーション同士の噛み合い状態を外部から視認できないため、正しい噛み合いが得られないままで作業者が作業を完了するおそれがある。この状態でドアが開閉されると、セレーションの山同士が滑って係合がずれたり、セレーションの山が削り取られるおそれがあり、山同士の衝突によって衝撃音が生じることもある。セレーションの噛み合いが不完全なままドアの開閉が繰り返されると、セレーション同士の滑りが繰り返されてセレーションが摩耗するおそれもある。一旦摩耗すれば再度の組付けすらできず、部品交換を余儀なくされる。ドアクローザはドアの上部に装着されるため、一旦組付けた後にボルトを操作してドアの停止位置を調整することは面倒である。
【0004】
本発明は、ドアの開放時の停止位置の調整を容易に行うことができ、セレーションの噛み合い不良も防止できるドアクローザのストップ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明の実施形態を示す図面に対応付けて本発明を説明する。但し、本発明は図示の形態に限定されない。
【0006】
請求項1の発明は、所定の回転軸線上にて互いに回転可能に連結された一対のドアクローザ部品(1、2)の一方(1)と一対のセレーション(8a、9a)を介して連結されるストッパ部材(9)と、ドアの開度が所定角度に達したときにストッパ部材(9)と係合してドアの閉方向の移動を阻止する手段(3、4、5)とを備えたドアクローザのストップ装置において、前記ストッパ部材(9)よりも下方の位置において、上下に移動可能に配置され、前記一対のセレーション(8a、9a)の噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押え(10)と、前記ストッパ部材押え(10)の下方において予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり、前記ストッパ部材押え(10)を移動させるためのカム機構とを有し、前記カム機構を前記連結位置側に操作して、前記ストッパ部材押え(10)を前記ストッパ部材(9)と共に上方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品(1、2)と前記ストッパ部材(9)との連結状態を維持し、一方、前記カム機構を前記連結解除位置側に操作して、前記ストッパ部材押え(10)を前記ストッパ部材(9)と共に下方に移動させることにより、前記一対のドアクローザ部品(1、2)と前記ストッパ部材(9)との連結解除状態を維持することによって上述した課題を解決する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1のドアクローザのストップ装置において、カム機構は、ストッパ部材押え(10)を上下に変位させるための端面カムを有していることを特徴とする。
【0008】
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1実施形態のストップ装置が組み込まれたドアクローザの全体を示す図である。このドアクローザは、ドアDの上部に装着されるドアクローザ本体18と、ドアDの周囲に設けられたドア枠Fの上枠Fuに下方から固定されるブラケット1とを有している。ブラケット1には角筒状のストップリンク2の一端が回動自在に連結される。ストップリンク2の他端側にはリンク16が螺動可能に装着され、そのリンク16の先端はアーム17の一端と回動自在に連結される。アーム17の他端はドアクローザ本体18の回転軸に連結される。
【0010】
図2はストップリンク2とブラケット1との連結部を斜め下方からみた状態を、図3及び図4は前記連結部の内部構造を、図5は前記連結部分の分解状態をそれぞれ示している。これらの図に示すように、ストップリンク2の内部にはスチールボール3、ボール受け部材4及びコイルばね5が挿入される。コイルばね5は止めねじ6にて圧縮され、その反発力によりボール受け部材4及びスチールボール3がブラケット1側に付勢される。ストップリンク2のブラケット1との連結端にはスリット2aが設けられ、そのスリット2aに開口する貫通孔7、7にはセレーション軸8及びカム押え10がそれぞれ装着される。このカム押え10は、後述するように、ストッパ部材としての板カム9を押さえるためのものであり、従って、厳密には、「ストッパ部材押え」と称されるが、これを以下、単に「カム押え」という。セレーション軸8はその上端においてブラケット1に固定される。カム押え10は貫通孔7に対して軸線方向に移動可能である。
【0011】
セレーション軸8の下端部外周にはストッパ部材としての板カム9が回転自在に装着されてカム押え10により下方から支持されている。この板カム9の外周には上述したスチールボール3が押し付けられる。図6(a)及び(b)に示すように、板カム9の外周には、セレーション軸8に対する嵌合孔9bと同軸の円弧部9cと、その円弧部9cの両端から接線方向に延びる一対の直線部9d、9dと、それらの直線部9d、9dを結ぶ円弧状の嵌合凹部9eとが設けられる。また、板カム9の上面にはセレーション9aが形成される。そして、セレーション軸8には板カム9のセレーション9aと噛み合うセレーション8aが形成される。
【0012】
なお、図6(a)及び(b)ではセレーション9aを嵌合孔9bの軸線と直交する平面に沿って形成しているが、これに代えて図6(c)及び(d)に示すように嵌合孔9bの軸線を取り囲む円筒面に沿ってセレーション9aを設けてもよい。あるいは、図6(e)及び(f)に示すように、嵌合孔9bの軸線を取り囲む円錐面に沿ってセレーション9aを設けてもよい。
【0013】
図3〜図5に示すように、セレーション軸8の中心にはねじ孔8bが形成され、そのねじ孔8bにはレバー軸12のねじ部12aが螺合する。レバー軸12の下端部はカム押え10を貫いて下方に突出する。その突出部分には弾性部材としての皿ばね11がはめ合わされると共に、カム押え10及び皿ばね11を押し上げるカムレバー(カム部材)13がピン14を介して回転操作可能に取り付けられる。
【0014】
レバー軸12のねじ部12aの上端はブラケット1の上方に突出し、その突出部分は調整ナット15と螺合する。調整ナット15を回転させその下面をブラケット1の上面と当接させ、レバー軸12でその上下位置を調整し、調整ナット15を締め付けることにより固定できる。図2及び図4(b)に詳しく示したように、カムレバー13には、皿ばね11に当接する一対の内カム面13a、13aと、カム押え10の下面に当接する一対の外カム面13b、13bとが設けられる。カムレバー13、ピン14、レバー軸12、調整ナット15及び皿ばね11がカム機構を構成し、このカム機構は、セレーション軸8と板カム9との連結状態及び連結解除状態を選択的に保持する保持手段として作用する。
【0015】
以上の構成においては、カムレバー13をピン14の廻りに回転させると、外カム面13bの位相の変化に応じてカム押え10が上下に移動してセレーション8a、9aの噛み合い及びその解除が切り替わる。
【0016】
すなわち、カムレバー13を図7(b)に示す連結位置Ponに操作したときはセレーション8a、9aが噛み合ってブラケット1と板カム9とがセレーション軸8を介して連結される。従って、板カム9をセレーション軸8の廻りに回転させることが不可能となる。この状態でドアD(図1)が開かれると、ブラケット1に対してストップリンク2が回転し、それ伴ってストップリンク2に内蔵されたスチールボール3が板カム9の外周面上を移動する。そして、ドアDの開度が所定位置に達した時点でスチールボール3が板カム9の嵌合凹部9eと嵌合し、ドアDの閉方向の復帰が阻止される。
【0017】
一方、カムレバー13を図7(a)の連結解除位置Poffに移動させると、カム押え10及び板カム9が図7(b)の位置よりも下方に移動してセレーション8a、9aの噛み合いが外れる。この状態で板カム9をセレーション軸8の廻りに任意の角度回転させ、その後にカムレバー13を連結位置Ponに復帰させ、再度セレーション8a、9aを噛み合わせることにより、ドアDの停止位置、すなわちスチールボール3と板カム9の嵌合凹部9eとが嵌合するときのドアDの開度を変化させることができる。
【0018】
カムレバー13が図7(a)の連結解除位置Poffまたは図7(b)の連結位置Ponにあるとき、皿ばね11はカムレバー13の内カム面13aによってカム押え10側に押し込まれ、それに対する反発力でカムレバー13がそれぞれの位置Poff、Ponに保持される。そして、カムレバー13を連結解除位置Poffから連結位置Ponへ操作する過程でセレーション8a、9aが正しく噛み合う場合には、図7(c)及び(d)に示すように内カム面13aの最大リフト点(回転中心から最も遠い点)13cとカムレバー13の回転中心(ピン14の軸線)とが上下に並んだときに皿ばね11が平坦な状態まで押し込まれる。なお、内カム面13aの位相と皿ばね11の変形量との関係は内カム面13aと外カム面13bとの位相差により予め調整されている。
【0019】
一方、カムレバー13を連結解除位置Poffから連結位置Ponへ操作する過程でセレーション8a、9aが正しく噛み合わない場合には、その噛み合いがずれた分だけ板カム9及びカム押え10が図7(c)のときよりも下方に位置する。従って、図7(e)及び(f)に示すように内カム面13aの最大リフト点13cが皿ばね11に当接するよりも早い時期に外カム面13bがカム押え10の下面と当接し、それ以上板カム9が上方へ移動不可となることから、それ以上にカムレバー13を操作することが不可能となる。また、正常な噛み合いが得られる場合と比較してカムレバー13の回転操作の早い段階で皿ばね11からより大きな反発力がカムレバー13に入力されてカムレバー13が連結解除位置Poffへと押し返される。
【0020】
このように、第1実施形態ではセレーション8a、9aの噛み合いの良否がカムレバー13の操作に反映されるから、作業者は容易にセレーション8a、9aの噛み合いの良否を判別でき、噛み合い不良のまま作業を終了するおそれがなく、セレーション8a、9aの欠損や摩耗が防がれる。カムレバー13を操作するだけで板カム9の位置を調整できるので、ボルトにてセレーションを締め付ける従来の装置と比較してドア停止位置の調整を容易に行うことができ、ボルトの締め付け不足によって装置を破損するおそれもない。カムレバー13のてこ作用を利用して皿ばね11及びカム押え10とカム面13a、13bとの接触位置に大きな力を加えることができるから、カムレバー13の操作力を軽減して作業をより容易に行えるようになる。
【0021】
上述した第1実施形態は、種々の変形された形態にて実施できる。例えば、図8に示すようにセレーション軸8とレバー軸12とを一体に形成して調整ナット15を省略してもよい。この場合には、部品点数が削減され、組み立ても容易となる。皿ばね11は、波形ワッシャやスプリングワッシャ等の各種弾性部材に置換可能である。カムレバー13に代えてレバー軸12の下端部に回転可能なカム部材を装着し、その皿ばね11及びカム押え10との対向面にこれらを上下に変位させるための端面カムを設けてもよい。
【0022】
次に、本発明の第2実施形態のストップ装置を、図9乃至図11を参照して説明する。このストップ装置は、下記の点を除き、本発明の第1実施形態のストップ装置と同一である:▲1▼ カム押え10の移動を、カム機構によってではなく、カム押え10を直接的に押し込み、又は、引っ張ることによって行う。
【0023】
▲2▼ セレーション軸8が、その長さ方向中央部における外周面に周方向に形成されたセレーション8aを有している。
【0024】
▲3▼ 板カム9が、嵌合孔9bを限定する内周面に沿ってセレーション9aを有しており、このセレーション9を有する嵌合孔9bにセレーション8aを有するセレーション軸8の中央部が嵌合可能である。
【0025】
▲4▼ セレーション軸8と板カム9との連結状態及び連結解除状態を選択的に保持する保持手段として、セレーション軸8の下部外周にストッパ溝8cを形成し、このストッパ溝8cに弾発的に係合可能なストッパ19をカム押え10に設けている。
【0026】
第2実施形態において、第1実施形態のストップ装置の構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付して、その構造の説明を省略する。
【0027】
即ち、第2実施形態のストップ装置においては、カム押え10を押し上げることによって、ストップリンク2及び板カム9をブラケット1側に持ち上げ、このブラケット1に固定されたセレーション軸8のセレーション8aを板カム9のセレーション9aに噛み合わせるように構成されている。
【0028】
従って、カム押え10は、セレーション軸8に対してその軸線方向に変位可能であるが、これ等両者は、カム押え10が所定のストロークでセレーション軸8から離れるときに、カム押え10の脱落を防止するための連結手段(図示せず)を介して相互に連結されている。
【0029】
この連結手段は、カム押え10のセレーション軸8に対する相対的な最大変位量を規制するものであれば、その形態は任意であり、例えば、これ等両部材の何れか一方に固定され、何れか他方に摺動可能に取り付けられる、シャフトやボルト等が連結手段として使用される。カム押え10がストップリンク2に固定される構造を採用した場合には、上述した連結手段は、カム押え10に連結されることなく、セレーション軸8に対するストップリンク2の移動を可能にし、且つ、ストップリンク2の最下移動位置を規制するように構成され、例えば、セレーション軸8がその軸線方向に移動可能に挿通される、ストップリンク2の孔に臨むように段部を形成し、一方、セレーション軸8に上記段部に係合可能な突起を形成し、これによって、セレーション軸8がストップリンク2から上方に抜け出ないように構成してもよい。
【0030】
セレーション軸8と板カム9との連結状態及び連結解除状態を選択的に保持する保持手段について以下に詳述する。上述したように、セレーション軸8の下部外周にはストッパ溝8cが形成されているが、図11に示すように、板カム9のセレーション9aがセレーション軸8のセレーション8aに噛み合った状態において、ストッパ溝8cと向かい合うカム押え10の部分には、凹部10aが形成されている。この凹部10aにはストッパ19が圧縮コイルスプリング20を介して出没可能に配置されている。
【0031】
このようにストッパ19がストッパ溝8cに係合することによって、カム押え10の押し上げ状態が保持され、その結果、セレーション軸8と板カム9との連結状態、即ち、セレーション軸8のセレーション8aと板カム9のセレーション9aとの噛み合い状態が保持される。
【0032】
一方、図10に示すように、カム押え10がセレーション軸8に対して下方に移動した状態においては、ストッパ19は凹部10aから外れて、セレーション軸8の下端に当接する。この際、カム押え10の押し下げ状態が保持され、その結果、セレーション軸8と板カム9との連結解除状態、即ち、セレーション軸8のセレーション8aと板カム9のセレーション9aとの噛み合い解除状態が保持される。
【0033】
次に、上述した第2実施形態のストップ装置の使用方法を以下に説明する。
【0034】
先ず、セレーション軸8と板カム9とを連結する場合には、カム押え10を上方に押し上げる。このカム押え10の押し上げによって、ストップリンク2及び板カム9も上方に押し上げられ、板カム9のセレーション9aがセレーション軸9のセレーション9aに噛み合い、更に、ストッパ19がストッパ溝8cに係合することによって、カム押え10の押し上げ状態が保持される。従って、上述した第1実施形態におけると同様に、板カム9をセレーション軸8の廻りに回転させることが不可能となる。この状態でドアが開かれると、ブラケット1に対してストップリンク2が回転し、それ伴ってストップリンク2に内蔵されたスチールボール3が板カム9の外周面上を移動する。そして、ドアの開度が所定位置に達した時点でスチールボール3が板カム9の嵌合凹部9eと嵌合し、ドアの閉方向の復帰が阻止される。
【0035】
一方、セレーション軸8と板カム9との連結を解除する場合には、カム押え10を下方に引き下げる。このカム押え10の引き下げによって、ストップリンク2及び板カム9も下方に引き下げられ、板カム9のセレーション9aとセレーション軸9のセレーション9aとの噛み合いが解除され、更に、ストッパ19がストッパ溝8cから外れて、カム押え10の引き下げ状態が保持される。この状態で板カム9をセレーション軸8の廻りに任意の角度回転させ、その後にカムレバー13を連結位置に復帰させ、再度セレーション8a、9aを噛み合わせることにより、ドアの停止位置、すなわちスチールボール3と板カム9の嵌合凹部9eとが嵌合するときのドアの開度を変化させることができる。
【0036】
上述したカム押え10の引き下げは、カム押え10に直接的に触れることなく、ストップリンク2を引き下げることによっても実現される。又、カム押え10の引き下げを容易にするために、カム押え10に握り部を形成してもよい。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態のストップ装置を、図12及び図13を参照して説明する。このストップ装置は、カム押え10の移動を、カムレバー13によってではなく、スライダ21によって行うことを除き、本発明の第1実施形態のストップ装置と同一である。第3実施形態において、第1実施形態のストップ装置の構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付して、その構造の説明を省略する。
【0038】
即ち、第3実施形態のストップ装置においては、カムレバー13、ピン14、レバー軸12、調整ナット15及び皿ばね11から構成される、第1実施形態におけるカム機構を採用することなく、セレーション軸8の下端には、その中心軸線に沿って軸部10cが下方に向けて一体的に形成されている。
【0039】
上記軸部10cは、カム押え10を貫通し、その下端面10bから下方に突出した部分には、スライド孔10dがセレーション軸8の軸線と直交する方向に形成されている。このスライド孔10dを限定する軸部10cの内周面の下部は、スライダ21の後述する第1当接面21bまたは第2当接面21cに当接して、セレーション軸8をその軸線方向に移動させる作用面10eとして働く。
【0040】
上記スライド孔10dには、スライダ21がセレーション軸8の軸線と直交する方向に摺動可能に取り付けられている。このスライダ21は、上面にカム押え10の下端面10bと接触する平坦面を有しており、一方、下面の両端部に、スライダ21の摺動位置を規制するための一対の突部21a,21aをそれぞれ有している。スライダ21の下面側において、一対の突部21a,21a間には、第1当接面21b、第2当接面21c及びこれ等を連結する傾斜面21dがそれぞれ形成されている。
【0041】
図13から明らかなように、スライダ21の上面から第1当接面21bまでの垂直距離T1は、スライダ21の上面から第2当接面21cまでの垂直距離T2よりも小さい。垂直距離T2及び垂直距離T1は、板カム9のセレーション9aとセレーション軸9のセレーション9aとの噛み合い及びその解除に必要な移動距離に応じて決定される。セレーション軸8の軸部10cに形成されたスライド孔10dの垂直距離は上述した垂直距離T2よりも僅かに大きいことは勿論である。
【0042】
次に、上述した第3実施形態のストップ装置の使用方法を以下に説明する。
【0043】
先ず、セレーション軸8と板カム9とを連結する場合には、スライダ21を図12(b)に示すように矢印B方向に移動させて、その第2当接面21cをセレーション軸8のスライド孔10dにおける作用面10eに当接させる。これによって、セレーション軸8は下方に押し下げられ、板カム9のセレーション9aがセレーション軸9のセレーション9aに噛み合う。従って、上述した第1実施形態におけると同様に、板カム9をセレーション軸8の廻りに回転させることが不可能となる。この状態でドアが開かれると、ブラケット1に対してストップリンク2が回転し、それ伴ってストップリンク2に内蔵されたスチールボール3が板カム9の外周面上を移動する。そして、ドアの開度が所定位置に達した時点でスチールボール3が板カム9の嵌合凹部9eと嵌合し、ドアの閉方向の復帰が阻止される。
【0044】
一方、セレーション軸8と板カム9との連結を解除する場合には、スライダ21を図12(a)に示すように矢印A方向に移動させて、その第1当接面21bをセレーション軸8のスライド孔10dにおける作用面10eに当接させる。これによって、セレーション軸8は上方に移動し、板カム9のセレーション9aとセレーション軸9のセレーション9aとの噛み合いが解除される。この状態で板カム9をセレーション軸8の廻りに任意の角度回転させ、その後にカムレバー13を連結位置に復帰させ、再度セレーション8a、9aを噛み合わせることにより、ドアの停止位置、すなわちスチールボール3と板カム9の嵌合凹部9eとが嵌合するときのドアの開度を変化させることができる。
【0045】
上述したセレーション軸8の上方への移動を確実にするために、ストップリンク2とブラケット1との間において、セレーション軸8に第1実施形態におけると同様の皿ばね等の弾性手段を配置してもよい。この弾性手段は皿ばねに限定されるものではなく、ストップリンク2をブラケット1に対して離間させる作用を有するものであればその形態は任意であり、例えば、コイルばねを使用してもよい。
【0046】
本発明の上述した第1乃至第3実施形態のストップ装置はブラケット1とストップリンク2との間に限定されず、例えばリンク16とアーム17との間、あるいはアーム17とドアクローザ本体18との間に設けてもよい。
【0047】
以上ではドアDを閉めたときにドアDとリンク16やアーム17とが略平行となるいわゆるパラレルタイプのドアクローザについて説明したが、リンク16やアーム17がドアDに対してほぼ直交するいわゆるスタンダードタイプのドアクローザにも本発明は適用できる。
【0048】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1の発明によれば、ストッパ部材よりも下方の位置において、上下に移動可能に配置され、一対のセレーションの噛み合い及びその解除を切り替えるためのストッパ部材押えと、予め定められた連結位置と連結解除位置との間を選択的に切り替え操作可能であり、ストッパ部材押えを移動させるためのカム機構とを有し、カム機構を連結位置側に操作して、ストッパ部材押えをストッパ部材と共に上方に移動させることにより、一対のドアクローザ部品とストッパ部材との連結状態を維持し、一方、カム機構を連結解除位置側に操作して、ストッパ部材押えをストッパ部材と共に下方に移動させることにより、一対のドアクローザ部品とストッパ部材との連結解除状態を維持するため、ドアの開放時の停止位置に調整を容易に行うことができる。
【0049】
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施形態のストップ装置が組み込まれたドアクローザの全体構成を示す斜視図。
【図2】
図1のドアクローザにおけるブラケットとストップリンクとの連結部を斜め下方からみた斜視図。
【図3】
図2の連結部を拡大して示す図。
【図4】
図3の連結部の詳細を示す図で、(a)は断面図、(b)は(a)のIVb部の拡大図。
【図5】
図3の連結部の分解図。
【図6】
図3の連結部に組み込まれたストッパ部材としての板カムの例を示す図で、(a)は第1の例の平面図、(b)は第1の例の側面図、(c)は第2の例の平面図、(d)は第2の例の断面図、(e)は第3の例の平面図、(f)は第3の例の側面図。
【図7】
図4の連結部の動作状態を示す図。
【図8】
図5の変形例を示す図。
【図9】
本発明の第2実施形態のストップ装置が組み込まれたドアクローザを部分的に示す図で、(a)はセレーション軸と板カムとの噛み合い状態を示す断面図、(b)はセレーション軸と板カムとの噛み合い解除状態を示す断面図。
【図10】
図9に示したストップ装置のセレーション軸と板カムとの噛み合い状態を示す拡大断面図。
【図11】
図9に示したストップ装置のセレーション軸と板カムとの噛み合い解除状態を示す拡大断面図。
【図12】
本発明の第3実施形態のストップ装置が組み込まれたドアクローザを部分的に示す図で、(a)はセレーション軸と板カムとの噛み合い解除状態を示す断面図、(b)はセレーション軸と板カムとの噛み合い状態を示す断面図。
【図13】
図12に示したスライダの斜視図。
【符号の説明】
1 ブラケット
2 ストップリンク
3 スチールボール
4 ボール受け部材
5 コイルばね
8 セレーション軸
8a、9a セレーション
9 板カム(ストッパ部材)
10 カム押え
11 皿ばね(弾性部材)
12 レバー軸
13 カムレバー(カム部材)
14 ピン
15 調整ナット
16 リンク
17 アーム
18 ドアクローザ本体
Poff カムレバーの連結解除位置
Pon カムレバーの連結位置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-04-15 
結審通知日 2004-04-16 
審決日 2004-04-27 
出願番号 特願平10-106818
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (E05F)
最終処分 成立  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 南澤 弘明
山田 忠夫
登録日 2001-04-06 
登録番号 特許第3176043号(P3176043)
発明の名称 ドアクローザのストップ装置  
代理人 岩田 徳哉  
代理人 藤本 昇  
代理人 岩田 徳哉  
代理人 山崎 宏  
代理人 伊藤 晃  
代理人 藤本 昇  

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