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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1115394 |
審判番号 | 不服2004-7220 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-02-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-08 |
確定日 | 2005-04-14 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第168092号「マイクロ凹面配列をもつ光学デバイスおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 2月 2日出願公開、特開平 8- 29601〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年7月20日の出願であって、平成16年3月3日付けで拒絶査定がなされ、平成16年4月8日付けで審判請求がなされるとともに、平成16年5月10日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年5月10日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年5月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 平成16年5月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、「デバイス材料の平滑な表面上にフォトレジストの層を形成してなる光学デバイス材料の、上記フォトレジストの層にフォトリソグラフィを行って、上記フォトレジストの表面に、微小な凹凸形状が1方向に正弦波状に変化する配列として形成し、次いで、上記フォトレジストとデバイス材料とに対し、等方性および/または異方性のエッチングを行うことにより、デバイス材料の表面形状として、0.1mm以下のピッチを持つ微小な凹シリンダ面の配列を形成することを特徴とする、マイクロ凹シリンダ面配列をもつ光学デバイスの製造方法。」と補正された。 本件補正は、補正前の請求項1の中の「微小な凹シリンダ面の配列」を「0.1mm以下のピッチを持つ微小な凹シリンダ面の配列」と限定したものである。 上記補正に関して請求人は、平成16年5月10日付提出の手続補正書において、当初明細書の段落【0056】中の記載が誤記であること、また、誤記であることの根拠は、当初明細書の段落【0048】〜段落【0049】等に求めることができる、との主張を行った。 しかしながら、当初明細書の段落【0056】中の記載「ピッチ:略0.8mm、略0.6mm」が、たとえ「ピッチ:略0.08mm、略0.06mm」であったとしても、その記載だけから、直ちに「0.1mm以下のピッチを持つ」という技術的事項が当初明細書に記載されていたものとは認められない。 したがって、本件補正は当初明細書において記載されていなかった事項に基づく限定を行ったものであるので、特許法第17条の2第2項の規定に違反してなされたものである。 以上のとおり、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年5月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年2月2日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「デバイス材料の平滑な表面上にフォトレジストの層を形成してなる光学デバイス材料の、上記フォトレジストの層にフォトリソグラフィを行って、上記フォトレジストの表面に、微小な凹凸形状が1方向に正弦波状に変化する配列として形成し、次いで、上記フォトレジストとデバイス材料とに対し、等方性および/または異方性のエッチングを行うことにより、デバイス材料の表面形状として、微小な凹シリンダ面の配列を形成することを特徴とする、マイクロ凹シリンダ面配列をもつ光学デバイスの製造方法。」 4.引用刊行物の発明 これに対して、原審の拒絶査定において引用された特開平5-173003号公報(以下、「引用刊行物」という。)の以下の各段落に、 (1)記載事項1 「【請求項3】 表面に凹弧面が形成された光学材料を有することを特徴とする光学デバイス。 【請求項4】 凹弧面が複数であることを特徴とする請求項3記載の光学デバイス。」 (2)記載事項2 「【0020】ここで、フォトリソグラフィー法で凸弧面、凹弧面を形成する第1の方法として、フォトレジスト膜に円形あるいは楕円形のパターンを露光する露光工程において、露光強度を前記パターンの中心から周辺に行くにつれ次第に変化させる方法がまず例示できる。 【0021】ここで、パターンの中心から周辺に行くにつれ次第に変化させるとは、中心が白く(透明)周辺に行くにつれて黒く(不透明)なる場合と、その逆の場合である。 【0022】この方法としては、例えば、以下の方法を例示できる。 写真フィルムの引き伸ばし機のような、解像度の低いレンズを露光用レンズとして用い、フォトマスクの円形/楕円形パターンをフォトレジスト膜に結像して露光し、現像する方法。 【0023】フォトレジスト膜上に形成すべき円形/楕円形パターンをデフォーカス状態でフォトレジスト膜に結像しフォトレジスト膜を露光した後、現像する方法。 パターンを形成したフォトマスクを使用してフォトレジスト膜を露光するとき、黒または白抜きの円形/楕円形をフォーカスをずらして写真撮影し、中央部から周辺に行くほど黒化濃度が変化する円形/楕円形パターンを持つネガフィルムを得、このネガフィルムを円形/楕円形パターン転写用原板としてフォトレジスト膜に結像し、あるいは、フォトレジスト膜に原板を近接または密着させた状態で露光し、現像する方法。 【0024】露光用光学系の途中にディフーザを挿入するなどして、散乱光を得て、散乱光で、形成すべきパターンをフォトレジスト膜に結像、露光した後、現像する方法。 【0025】ディフーザとは、BK-7などの光学ガラスの表面をアルミナ砥粒などを用 いて砂ずりし、光を散乱させる光学素子で、例えば、シグマ光器製DFSQー50C02-1500などが例示できる。 【0026】 パターンを形成したたフォトマスクをフォトレジスト膜から離して両者間に間隔を設けた状態でフォトレジスト膜を露光した後、現像する方法。 前記からの方法においてフォトマスクのパタンの白黒の正逆いかんで凸弧面、凹弧面のいずれをも形成できる。」(段落【0020】〜【0026】) (3)記載事項3 「【0029】以上において、エッチングはドライエッチングにて行うことが好ましい。ドライエッチングに使用する気体は、使用する光学材料に依存して適宜決定することができる。エッチングの条件は、光学材料の表面に形成すべき凸弧面または凹弧面の形状に依存する。ドライエッチングの場合エッチング中随時、使用する気体の種類、使用量、流量、高周波出力、閉じ込め磁場の強度、気体イオンの加速電圧、エッチング時間等を連続的にまたは段階的に変えることにより、光学材料の表面に形成すべき凸弧面または凹弧面の断面形状(光学材料の表面と垂直方向の断面形状)を変えることにより凸弧面または凹弧面に歪みを与えることができる。」(段落【0029】) (4)記載事項4 「【0055】凸弧面12を形成すべき光学材料としてガラス基板40を使用した。ガラス基板40表面上に、東京応化工業株式会社製フォトレジストOFPR800をスピンコートした後プリベークして0.6μm厚さのフォトレジスト膜42を形成した(図2(a))。QUINTEL Q6000型マスクアライナーを使用し、フォトマスク60とフォトレジスト膜42との間の間隔を20μmに保持した状態にて露光した(図2(b))。 【0056】尚、このとき、フォトマスク60上に、1mm厚さの光学ガラスBK7の両面を#1500のアルミナ砥粒で砂ずりしたディフーザ62(シグマ光器製 DFSQ-50C02-1500)を置き、ディフーザ62を透過した散乱光がフォトマスク60を介してガラス基板40上のフォトレジスト膜42を露光するようにした。この場合、ソーダライムガラス製、4インチ角、0.09インチ厚さで、直径100μm以下の円形パターンを有するフォトマスク60を使用した。 【0057】次いで、東京応化工業株式会社製NMD-3現像液を使用して、フォトレジスト膜42の現像を行った。現像、純水リンス後、ガラス基板40上には直径100μm以下の円形パターンのフォトレジスト膜42が残った(図2(c))。 【0058】フォトレジスト膜42の表面は、曲率半径約4mmの概ね球面状の凸弧面42aであった。このように散乱光を用い、フォトマスク60とフォトレジスト膜42との間に適当な間隔を設けることによって、概ね球面状の凸弧面42aを有する円形のフォトレジスト膜42を形成することができた。 【0059】このようにして得られたガラス基板40を、日電アネルバ社製 ECR-310型ドライエッチング装置を使用してドライエッチングした。ドライエッチング条件は、ドライエッチング装置を6.5×10-4Pa迄排気した後、装置にC2F6を5SCCM導入し、高周波出力300W、閉じ込め磁界10-2T、イオンの加速電圧700Vとし、エッチング時間を20分間とした。 【0060】この条件でのドライエッチングによって、ガラス基板40表面上に形成されたフォトレジスト膜42はエッチングされて完全に消失した。同時にガラス基板40もエッチングされ、ガラス基板40表面には、直径約100μm、曲率半径約4mmの概ね球面状の凸弧面12が形成された(図2(d))。 <実施例3>図3(a)から(d)にフォトマスクの白黒を反転した場合を示す。この場合、実施例2の場合と同様に直径100μm、曲率半径約4mmの概ね球状の凹弧面12cが形成された。 <実施例4>更に、本発明の光学デバイスの製造方法の第3の実施例を説明する。」 との記載がある。 上記記載事項1および、記載事項4における実施例2に対する記載を参照すると、実施例3として記載された【図3】から、 『平面形状のガラス基板40上のフォトレジスト膜42を露光しエッチングすることによりほぼ球面状の凹孤面を形成し、さらにエッチングすることによりガラス基板上に凹孤面を形成する方法』 を読み取ることができる。 以上より、引用文献には、 「平面ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成してなる光学デバイス材料の上記フォトレジスト膜に第1のエッチングを行って、上記フォトレジストの表面に、複数の球面状の凹孤面の配列を形成し、次いで、上記フォトレジストと平面ガラス基板とに対し、第2のエッチングを行うことにより、平面ガラス基板の表面形状として、複数の球面状の凹孤面の配列を形成することを特徴とする、球面状の凹孤面配列を有する光学デバイスの製造方法。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 5.対比 引用発明における「平面ガラス基板」は本願発明における「デバイス材料」に相当し、以下同様に、「フォトレジスト膜」は「フォトレジストの層」に、「第1のエッチング」は「フォトリソグラフィ」にそれぞれ相当するし、引用発明における「平面ガラス基板」の表面については特に限定されていないので平滑であるとするのが相当である。 また、複数の球面状の凹孤面が形成されることは、凹凸形状が形成されると言うこともできるので、両者は、 「デバイス材料の平滑な表面上にフォトレジストの層を形成してなる光学デバイス材料の、上記フォトレジストの層にフォトリソグラフィを行って、上記フォトレジストの表面に、凹凸形状の配列を形成し、次いで、上記フォトレジストとデバイス材料とに対し、エッチングを行うことにより、デバイス材料の表面形状として、凹凸形状の配列を形成することを特徴とする光学デバイスの製造方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 (1)相違点1 本願発明では、フォトレジストの表面に「微小な凹凸形状が1方向に正弦波状に変化する配列」として形成し、デバイス材料の表面形状を「微小な凹シリンダ面の配列」とすることで「マイクロ凹シリンダ面配列をもつ光学デバイス」を製造する方法であるのに対し、引用発明ではフォトレジストの表面に「複数の球面状の凹孤面の配列」を形成し、デバイス材料の表面形状を「複数の球面状の凹孤面の配列」することで「球面状の凹孤面配列を有する光学デバイス」を製造する方法である点。 (2)相違点2 本願発明では、「等方性および/または異方性のエッチング」を行うのに対し、引用発明では「等方性および/または異方性」と限定していない「第2のエッチング」を行う点。 6.当審の判断 相違点1は作成される光学デバイスが異なることによる相違点であり、本願発明の「シリンダ面配列をもつ光学デバイス」は周知の光学デバイス(一例をあげれば、実願平2-31135号のマイクロフィルム(実開平3-124401号公報参照)に記載されている)である点、および引用発明がフォトリソグラフィー法により「光学デバイス」を作成するものである点を考慮すると、引用発明における「球面状の凹孤面配列を有する光学デバイス」を作成するフォトレジストパターンに代えて、「凹シリンダ面配列をもつ光学デバイス」を作成するため、「シリンダ面配列」に対応したフォトレジストパターンを採用すること、およびその大きさを「微小」あるいは「マイクロ」とすることに何ら困難はない。 そして、フォトレジストの表面の凹凸形状として「1方向に正弦波状に変化する」ようにすることも、引用文献にはフォトレジストの表面形状を露光方法によって制御できることが記載(記載事項2)されていることから、当業者が容易に行うことができたものである。 また、デバイス材料の表面形状を「凹シリンダ面の配列」とすることは、引用文献中に、エッチング中随時、エッチングに使用する気体の種類、使用量、流量等を変えることにより光学材料の凹孤面の断面形状を変えることにより凹孤面に歪みを与えることができるとの記載(記載事項3)があることから、エッチングにより凹凸形状を制御することは当業者が容易に行うことができるものである。 したがって、本願発明と引用発明との相違点1はフォトリソグラフィー法に関する周知技術および引用発明が開示されている引用文献中の記載に基づけば、当業者が容易に想到することができたものである。 相違点2は引用発明においては「エッチング」についての限定はなされていないので「等方性のエッチング」と解するのが相当であるし、本願発明は「等方性のエッチング」を含むものであるので、実質的に相違点ではない。 また、本願発明の作用効果も当業者が予測できる範囲のものであり、格別のものではない。 7.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-08 |
結審通知日 | 2005-02-15 |
審決日 | 2005-02-28 |
出願番号 | 特願平6-168092 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 3L案件管理書架D、井上 信、森内 正明 |
特許庁審判長 |
上野 信 |
特許庁審判官 |
峰 祐治 瀬川 勝久 |
発明の名称 | マイクロ凹面配列をもつ光学デバイスおよびその製造方法 |
代理人 | 樺山 亨 |
代理人 | 本多 章悟 |