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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1115397
審判番号 不服2004-19124  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2005-04-14 
事件の表示 平成11年特許願第103794号「紙葉類分離装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月24日出願公開、特開2000-296929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年4月12日に特許出願され、平成16年8月17日付けで拒絶査定がなされ、同査定を不服とする本件審判の請求がなされ、特許法第17条の2第1項第3号の規定に基づいて、平成16年10月14日付けで明細書の補正がなされたものである。

2.平成16年10月14日付け手続補正についての補正却下の決定

【補正却下の決定の結論】
平成16年10月14日付けの手続補正を却下する。

【理 由】
2-1 補正後の発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおり補正することを含むものである。
【請求項1】
紙葉類を積載するための積載手段と、この積載手段上の前記紙葉類を1枚ずつ繰り出す繰り出しベルトと、この繰り出しベルトに設けられた複数の吸着穴を備えた紙葉類分離装置において、
前記複数の吸着穴が前記繰り出しベルトの周方向に等間隔で設けられ、この吸着穴の通過周期を検出する繰り出しベルト移動検出手段を設け、このベルト移動検出手段が前記吸着穴の通過が長い周期を検出すると、前記繰り出しベルトの駆動を停止する制御手段を設けたことを特徴とする紙葉類分離装置。(以下、「補正発明」という。)

2-2 補正の目的及び新規事項の追加の有無
この部分の補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「吸着穴」なる構成を、願書に最初に添付された明細書または図面に記載された、複数の吸着穴が繰り出しベルトの周方向に等間隔で設けられという技術的事項により限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではない。

2-3 独立特許要件
以下、補正発明について、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項に規定する要件について検討する。

2-3-1 引用刊行物と記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前において頒布された刊行物である「実願昭49-97082号(実開昭51-25382号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)」には、明細書第1頁第5行〜同頁12行に、「真空吸着孔を有しその吸着孔に被取り出し物品を吸着して取り出す定速回転する取り出し無端ベルトと、このベルトの前記吸着孔を検出する検出器と、この検出器から吸着孔検出信号が印加されその信号周期が規定値より変動するとそれを検出して信号を出力する異常検出回路とを具備したことを特徴とする物品取出装置の異常検出装置」と記載され、明細書第2頁第1行〜同頁第9行に、「・・1は紙葉2を立位状態で・・順次供給する供給路で、この供給路1の供給方向側の端部には、供給される紙葉2を1枚ずつ順次取り出す取出装置3が設けられおり、・・取り出しベルト4は・・無端ベルトであり、その所定部位にはそれぞれが一対の長孔からなる吸着孔6,6が設けられている。」と記載され、明細書第3頁第9行〜第10行に、「・・紙葉2が2枚同時に取り出す(重ね取り)のを防止するようになっている。」と記載されている。
これら記載と2対の吸着孔が図示される図面の記載を併せみれば、刊行物1に記載の被取り出し物は、紙葉2であり、重ね取りを防止する旨の記載があることより、供給路において紙葉は積載された状態で順次供給されると解されるので、刊行物1には、
記載事項A
紙葉を積載して供給するための供給路と、この供給路上の紙葉を1枚ずつ順次取り出す取り出しベルトと、この取り出しベルトには、それぞれ一対の長孔からなる吸着孔が2対設けられる取出装置
が記載されるのものと認める。
更に、刊行物1の明細書第5頁第8行〜同第6頁第14行に、「 第3図において、21は前記取り出しベルト4の吸着孔6を検出するための検出器で、・・上記第1,第2の異常検出回路26,27は、・・つまり吸着孔6の検出信号の周期・・があらかじめ定められた所定の周期t0以内であれば信号を出力しないが、上記信号周期が所定の周期t0以上になると信号を出力する回路であって、・・」と記載され、明細書第10頁第5行〜同頁20行に、「これは検出器21から出力される吸着孔6の検出信号の周期が所定の周期t0以上になったことになる。こうなると、・・を介してFF回路30をリセットせしめる。この結果、FF回路30のセット出力b点は・・ようになり、クラッチ8は消勢される。したがって、モータ10からベルト4への動力の伝達がしゃ断される。すなわち、・・第1の異常検出回路26から信号が出力され、よってFF回路30はリセットされて取り出しベルト4は動作を停止し、・・」と記載されており、通常、定速回転中に信号が周期的に発生することを前提に、所定周期より長い異常を検出することを把握可能であるので、刊行物1には、
記載事項B
前記2対の吸着孔は、前記取り出しベルトの周方向に間隔で設けられることにより、定速回転中通常は、吸着孔の出力信号が周期的に発生するものであり、この吸着孔の通過周期を所定の周期t0と比較して、信号を出力する第1,第2の異常検出回路を設け、この異常検出回路が、前記吸着孔の通過周期が所定値より長い周期を検出すると、取り出しベルト4への駆動力の伝達を遮断して停止させるFF回路を設けた物品取出装置
が記載されるものと認める。
したがって、記載事項A、Bから刊行物1には、
紙葉を積載して供給するための供給路と、この供給路上の紙葉を1枚ずつ順次取り出す取り出しベルトと、この取り出しベルトには、それぞれ一対の長孔からなる吸着孔が2対設けられる物品取出装置において、
前記2対の吸着孔は、前記取り出しベルトの周方向に間隔で設けられることにより、正常運転中は、吸着孔の出力信号が周期的に発生するものであり、この吸着孔の通過周期を所定の周期t0と比較して、信号を出力する第1,第2の異常検出回路を設け、この異常検出回路が、前記吸着孔の通過周期が所定値より長い周期を検出すると、取り出しベルトへの駆動力の伝達を遮断して停止させるFF回路を設けた物品取出装置
の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されるものと認める。

2-3-2 対比・判断
補正発明と刊行物1の発明とを対比すると、刊行物1の発明の「紙葉」は、積載される状態から1枚ずつ取り出されるものであるから、補正発明の「紙葉類」に相当し、刊行物1の発明の「供給路」、「取り出しベルト」及び「吸着孔」は、その機能からみて、補正発明の「積載手段」「繰り出しベルト」及び「吸着穴」に相当するものと認められる。
更に、刊行物1の発明の「第1,第2の異常検出回路」は、吸着孔の通過周期を所定値と比較しているのであるから、所定値の比較において通過周期を検出するものということができ、その機能においては、補正発明の「ベルト移動検出手段」に相当すると共に、刊行物1の発明の「FF回路」は、第1,第2の異常検出回路の信号に基づいて、取り出しベルトを停止させるものであるから、補正発明の「繰り出しベルトの駆動を停止する制御手段」に対応するものと認められる。また、一般に「複数」が2を排除するとすることはできず、補正発明は、2を含む「複数」なる用語により特定されるものである。
したがって、両発明は、
紙葉類を積載するための積載手段と、この積載手段上の前記紙葉類を1枚ずつ繰り出す繰り出しベルトと、この繰り出しベルトに設けられた複数の吸着穴を備えた紙葉類分離装置において、
前記複数の吸着穴が前記繰り出しベルトの周方向に間隔で設けられ、この吸着穴の通過周期を検出する繰り出しベルト移動検出手段を設け、このベルト移動検出手段が前記吸着穴の通過が長い周期を検出すると、前記繰り出しベルトを停止する制御手段を設けたことを特徴とする紙葉類分離装置
の発明である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1 補正発明は、吸着穴を繰り出しベルトの周方向に等間隔で複数設けられものであるのに対して、刊行物1の発明の吸着孔は、取り出しベルトの周方向に間隔で2対設けられものでり、その間隔が等間隔であるとの明記はない点
相違点2 補正発明は、制御手段により、繰り出しベルトの駆動を停止するのに対して、刊行物1の発明の「FF回路」は、取り出しベルトへの駆動の伝達を遮断することにより、取り出しベルトを停止させる点
以下、相違点について検討する。
まず、相違点1について検討すると、刊行物1の発明は、吸着孔を周方向に間隔で2対設けており、これら各対の孔が定速回転において、周期的に通過することを前提として開示されている。そして、周期的な通過を得るために、作動方向の間隔を等しくすることは、当業者がその設計に当たり、容易に採用し得た事項と認める。
なお、審判請求人は審判請求の理由において、引用文献1は、添付された図面の第1図、第4図からも明らかなように、取出しベルトに設けられた吸着穴は周方向にダブルの穴が2ヶ所しかなく、補正発明は、吸着穴が複数であり、その数があまりにも相違する旨主張しているが、「複数」が2を排除するとすることはできず、請求人の主張は特許請求の範囲に記載された構成に基づく主張ではなく採用できない。しかも、請求人の主張する複数が、仮に多数を意味するとしても、引用文献1に示される吸着孔の周方向に設ける数の設定は、当業者が必要に応じて適宜なしえた設計上の事項にすぎないものと認める。

次に、相違点2について検討すると、繰り出しベルトを停止するに当たり、駆動を停止するか、駆動力の伝達を遮断するかは、当業者が容易に選定しえたものと認める。

そして、補正発明の奏する効果は、刊行物1の発明から予測し得る以上の格別の効果を奏するものとは認められない。

以上説示のとおり、補正発明は、刊行物1の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第4項に規定する要件を満たしていない。

2-3 むすび
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3. 本願発明
上記のとおり、平成16年10月14日付け手続補正書による補正は却下され、平成16年7月13日付け手続補正書による補正も原審において却下されているので、本願発明は、平成16年3月5日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項に記載された以下の事項により特定されるものであるところ、請求項1には以下のとおり記載されている。
紙葉類を積載するための積載手段と、この積載手段上の前記紙葉類を1枚ずつ繰り出す繰り出しベルトと、この繰り出しベルトに設けられた複数の吸着穴を備えた紙葉類分離装置において、
前記吸着穴の通過周期を検出する繰り出しベルト移動検出手段を設け、このベルト移動検出手段が前記吸着穴の通過が長い周期を検出すると、前記繰り出しベルトの駆動を停止する制御手段を設けたことを特徴とする紙葉類分離装置。(以下、「本願発明」という。)

4. 引用刊行物と記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である上記刊行物1(実願昭49-97082号(実開昭51-25382号)のマイクロフィルム))には、2-3-1に指摘した事項が記載されている。

5. 対比・判断
本願発明と刊行物1の発明とを対比すると、「複数」は、「2」を包含するものと認められるので、2-3-2に記載したように、両発明は、
紙葉類を積載するための積載手段と、この積載手段上の前記紙葉類を1枚ずつ繰り出す繰り出しベルトと、この繰り出しベルトに設けられた複数の吸着穴を備えた紙葉類分離装置において、
前記吸着穴の通過周期を検出する繰り出しベルト移動検出手段を設け、このベルト移動検出手段が前記吸着穴の通過が長い周期を検出すると、前記繰り出しベルトを停止する制御手段を設けた紙葉類分離装置
の発明である点で一致し、
以下の相違点Aにおいて、両発明は相違している。
相違点A 本願発明は、制御手段により、繰り出しベルトの駆動を停止するのに対して、刊行物1の発明の「FF回路」は、取り出しベルトへの駆動の伝達を遮断することにより、取り出しベルトを停止させる点

しかしながら、相違点Aにおける本願発明の構成は、上記相違点2における補正発明の構成と変わるものではなく、2-3-2に記載したように、相違点Aは、当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、本願発明の奏する効果は刊行物1に記載のものから予測し得る程度のものであって、格別ではない。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6. むすび
以上のとおりであるから、本願は原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-01 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-03-01 
出願番号 特願平11-103794
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65H)
P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 則夫上尾 敬彦  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 山崎 豊
溝渕 良一
発明の名称 紙葉類分離装置  
代理人 作田 康夫  

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