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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1115521
審判番号 不服2002-8362  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-10 
確定日 2005-04-18 
事件の表示 特願2000- 99989「商品のオークションを行う方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月12日出願公開、特開2001-282956〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は平成12年3月31日の出願であって、平成14年4月10日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成14年5月10日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年5月10日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件手続き補正
平成14年5月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第4号に規定する期間内になされたものであって、平成14年3月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)の請求項1を、次のとおり(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)補正する補正事項を含むものである。

(補正前の特許請求の範囲)
【請求項1】
複数の買い手を識別可能なように構成された複数の端末と前記複数の端末に接続されたコンピュータとを含むコンピュータシステムを用いて、商品のオークションを行う方法であって、
前記コンピュータが、商品のスタート価格を示す情報を受け取るステップと、前記コンピュータが、前記スタート価格を現在の価格の初期値として設定するステップと、
前記コンピュータが、単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップと、
単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を所定の値だけ増加させるステップと、
前記コンピュータが、前記現在の価格で前記商品を売ることを売り手が承認することを示す売り切り情報が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップと、
前記売り切り情報が前記コンピュータに入力されたと判定された場合において、単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を落札価格として前記商品を落札する処理を行うステップと、
前記売り切り情報がコンピュータに入力されていないと判定された場合において、単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記商品を流す処理を行うステップと
を包含する方法。

(補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】
複数の買い手を識別可能なように構成された複数の端末と前記複数の端末に接続されたコンピュータとを含むコンピュータシステムを用いて、商品のオークションを行う方法であって、
前記コンピュータが、商品のスタート価格を示す情報を受け取るステップと、前記コンピュータが、前記スタート価格を現在の価格の初期値として設定するステップと、
前記コンピュータが、単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップと、
単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を所定の値だけ増加させるステップと、
前記コンピュータが、前記現在の価格で前記商品を売ることを売り手が承認することを示す売り切り情報が前記コンピュータに入力された状態であるかまだ入力されていない状態であるかを判定するステップと、
前記売り切り情報が前記コンピュータに入力された状態である場合において、単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を落札価格として前記商品を落札する処理を行うステップと、
前記売り切り情報が前記コンピュータにまだ入力されていない状態である場合において、単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記商品を流す処理を行うステップと
を包含する方法。

(2)当審の判断
本件補正が、特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に規定された事項を目的とするものであるか検討する。
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1の(イ)「売り切り情報が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップ」が(イ-1)「売り切り情報が前記コンピュータに入力された状態であるかまだ入力されていない状態であるかを判定するステップ」に、(ロ)「前記売り切り情報が前記コンピュータに入力されたと判定された場合」が(ロ-1)「前記売り切り情報が前記コンピュータに入力された状態である場合」に、また、(ハ)「前記売り切り情報がコンピュータに入力されていないと判定された場合」が(ハ-1)「前記売り切り情報が前記コンピュータにまだ入力されていない状態である場合」に、それぞれ補正された。
補正前の(イ)「売り切り情報が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップ」、(ロ)「前記売り切り情報が前記コンピュータに入力されたと判定された場合」、および、(ハ)「前記売り切り情報がコンピュータに入力されていないと判定された場合」の記載はいずれも明瞭であり、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は技術的に明瞭に特定されている。それ故、本件補正は明瞭でない記載の釈明に該当するものではない。
また、補正後の(イ-1)、(ロ-1)、および、(ハ-1)の記載は、補正前の特許請求の範囲の発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、更に、当該補正は、請求項の削除および誤記の訂正を目的とするものでもない。

したがって、本件補正は、特許法17条の2第4項第1号乃至第4号に規定されたいずれの事項をも目的とするものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

3.本願発明について
平成14年5月10日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の買い手を識別可能なように構成された複数の端末と前記複数の端末に接続されたコンピュータとを含むコンピュータシステムを用いて、商品のオークションを行う方法であって、
前記コンピュータが、商品のスタート価格を示す情報を受け取るステップと、前記コンピュータが、前記スタート価格を現在の価格の初期値として設定するステップと、
前記コンピュータが、単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップと、
単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を所定の値だけ増加させるステップと、
前記コンピュータが、前記現在の価格で前記商品を売ることを売り手が承認することを示す売り切り情報が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップと、
前記売り切り情報が前記コンピュータに入力されたと判定された場合において、単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を落札価格として前記商品を落札する処理を行うステップと、
前記売り切り情報がコンピュータに入力されていないと判定された場合において、単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記商品を流す処理を行うステップと
を包含する方法。」

4.引用例
(a)原審の拒絶の理由に引用された特開平1-211171号公報(以下、引用例1という。)には、「自動車等の競売システム」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。

A.「そこで本発明はかかる従来技術の欠点に鑑み、買手が会場に直接足を運ばずに自宅にて競りに参加することができ、競りに出品する車を直接会場に搬入する必要がなく、かつリアルタイムにて競売を行なうことができるシステムを提供することを目的とする。」(公報第2頁下段右欄第11行〜第16行)
B.「ホストコンピュータに競り対象の自動車等の画像情報及び商品の品質,価格等の文字情報を競り前に入力しておく。競りに際して各端末のコード番号入手手段から買手又は売手識別のためのコード番号が入力される。すると中継コンピュータ21,(略)2nを介して入力されたコード番号はホストコンピュータに登録され、競りシステムがスタートする。まず最初は、ホストコンピュータから中継コンピュータ21,(略)2nを介して端末コンピュータ411,(略)4mnに自動車の画像情報及び文字情報が伝送される。伝送された情報は、各端末のディスプレイに所定時間競り情報として表示される。表示されている間に次の画像情報又は文字情報が、ホストコンピュータから端末コンピュータ411,(略)4mnの記憶手段に格納される。所定時間経過後に競りが開始され、当初は自動的に競り値を所定価格毎に競り上げる形で端末コンピュータ411,(略)4mnに表示される。表示された競り価格に対して各買手は買う意志があるか否かについて応札キーを介して応札のサインを入力する。入力された応札のサインは、中継コンピュータ21,(略)2nを介してホストコンピュータに入力されるが、希望価格に達するまで又は売手がスローダウンキーを入力するまで短い間隔で自動的に競り上がっていく。売手がスローダウンキーを入力した場合には、ホストコンピュータは、応札キーの入力があるまで自動競り上がりをゆっくりと一定の金額まで行なうように切り変わる。応札キーの入力があった時には、応札者のコード番号及び応札価格がコンピュータに記憶され、売り尽くし方式に移行する。スローダウンの後クリヤキーの入力がない時又は一定の金額まで競り上がった時は、自動的に流札とし、次の競売に移行する。またクリヤキーの入力があった後、応札キーの入力があった後又は希望価格到達後は、所定時間内に応札者が二人以上あるときにせり上がる方式に変換され、同一価格について二人以上の応札があるときにはホストコンピュータは最終応札者のコード番号及び応札価格を記憶し、競り値を上げて競りを続行する。そして所定時間内の応札者が二人未満になった時点で競り上げを中止する。競り値が希望価格に達した時には、最終的に応札者としてコンピュータに記憶された者を落札者とする。また競り値が希望価格に達していない時には、売手が既にクリアキーを入力している場合又は売手が表示された価格に対してOKの意味でクリアキーを入力した場合に最終的に応札者としてコンピュータに記憶された者を落札者とする。それ以外は流札として次の競りへ移行する。」(公報第3頁上段右欄第20行〜第4頁上段左欄第20行)
C.「以下第5図及び第7図に基づいて説明する。競売に際して画像情報はそのままの状態で、競り価格及び応札人数に関する表示が変更する形をとる。当初ホストコンピュータ1は、売り手から指示されたスタート価格(例えば80万円)から短い間隔(例えば0.5秒以下の間隔)で80万円,80万3千円,80万6千円,…と自動的に3,000円づつ競り上がる方式にて競り上げし、その競り値は各端末411,(略)4mnのディスプレイに表示される。買手は、表示された価格に対して応札するか否かを応札キーの入力により対応する。この応札の入力がホストコンピュータ1に伝送され、ホストはその数を集計し端末コンピュータ411,(略)4mnに対して競り価格とともに伝送する。しかしこの状態では、価格が短い間隔で刻々と変化するため、又応札者が多数いるために売手は、応札者及びその価格を捕らえることができない。一般的に自動的に競り上がっていくとき売手の販売希望価格(例えば95万円)に近づいていくと共に応札者が減ってくる。そこで、本発明のシステムではスローダウン方式を採用している。すなわち売手からスローダウンキーの入力があった後(例えば92万円で)は、前述よりゆっくりとした間隔(例えば2秒以下)で競り値を3万9千円まで3,000円づつ競り上げていくものである。但しその間に応札者があった時点で売りつくし方式に移行する。また、3万9千円まで競り上がった時には、ホストコンピュータは、流札と判断する。売りつくし方式は、売手からクリアキーの入力があった場合、スローダウン後に応札者があった場合又は応札者がある状態で希望価格に到達した場合に移行する。すなわち売りつくし方式は、競り価格が画面に表示されてから例えば2秒以内に二人以上の応札者から応札があった時にのみ競り値を上げ、応札者が二人未満の時は競り上げを終了させるというもので、売りつくし方式に移行した後の表示された競り価格の最終応札者が逐次ホストコンピュータ1に記憶されていく。(略)そして例えば95万6千円で応札者が二人、95万9千円で応札者がゼロのときには、95万9千円が落札価格でホストコンピュータに記憶された最終応札者を落札者と判断する。例えば95万6千円で応札者が一人のときには、95万6千円が落札価格でその応札者が落札者というように判断している。但し競り価格の競り上げが、希望価格より安い値段にて止まった場合には、ホストコンピュータ1は、売手の端末コンピュータに対して最終応札価格を表示し、売手からの売りか否かのクリアキーの入力を所定時間(例えば3秒)待つ。そして売手からクリアキーの入力があった場合には落札とし、クリアキーの入力がなかった場合には流札というように判断する。競り終了後は、落札者に対しては落札価格と落札者である旨ホスト1から端末4に音とともに6秒間確認の表示がなされる。」(公報第6頁上段左欄第7行〜第7頁上段左欄第4行)

ここで、引用例1記載の「サイン」、「所定時間内」および「競売」は、それぞれ「信号」、「単位時間内」および「オークション」と同じ意味である。
また、引用例1には自動車等の競売システムが記載されているが、同時にその方法についても記載されているものと認められる。

したがって、これらの記載からして、引用例1には次のような発明が記載されていると認められる。
「複数の買い手を識別可能なように構成された複数の端末コンピュータと前記複数の端末コンピュータに接続されたホストコンピュータとを含むコンピュータシステムを用いて、商品のオークションを行う方法であって、
前記ホストコンピュータが、商品のスタート価格を示す情報を受け取るステップと、
前記ホストコンピュータが、前記スタート価格を現在の価格の初期値として設定するステップと、
前記ホストコンピュータが、単位時間内に前記複数の端末コンピュータのうちの少なくとも1つから買い取り希望を示す信号が前記ホストコンピュータに入力されたか否かを判定するステップと、
単位時間内に前記複数の端末コンピュータのうちの少なくとも1つから前記買い取り希望を示す信号が前記ホストコンピュータに入力されたと判定された場合には、前記ホストコンピュータが、前記現在の価格を所定の値だけ増加させるステップと、
前記ホストコンピュータが、前記現在の価格が希望価格に達しているか否かを判断するステップと、
前記現在の価格が希望価格に達していると判定された場合、所定時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記ホストコンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記ホストコンピュータが、前記現在の価格を落札価格として前記商品を落札する処理を行うステップと、
前記現在の価格が希望価格に達していないと判定された場合、買い取り希望を示す信号が表示された価格に対して売り手がOKの意味でクリアキーを入力しなかった場合には、ホストコンピュータが流札とする処理を行うステップと、
を包含する方法。」

更に、Bの「一定の金額まで競り上がった時は、自動的に流札とし、」の記載、および、Cの「また、3万9千円まで競り上がった時には、ホストコンピュータは、流札と判断する。」の記載は、「応札がない場合」が前提であることは自明である。したがって、引用例1には、「応札がない場合には、価格がある一定の金額まで競り上がった時点で、コンピュータにより自動的に流札の処理を行う。」ことも記載されている。また、この流札の処理を行うのは、「これ以上価格を上げても買い手が現れないことを予期している」ものと認められる。

5. 本願発明と引用例1に記載された発明の対比
引用例1記載の発明の「端末コンピュータ」および「ホストコンピュータ」は、本願発明の「端末」および「コンピュータ」にそれぞれ相当する。
また、引用例1記載の発明の「価格が希望価格に達している」と本願発明の「売り切り情報が入力されている」とは、いずれもオークションの過程の途中の段階(時点)において存在するものであり、また、両者とも落札/流札の判断の基準となっているものである。それ故、両者は「オークションの過程における落札/流札に関する判断基準時に達している」という概念で一致する。したがって、引用例1記載の発明の「ホストコンピュータが、前記現在の価格が希望価格に達しているか否かを判断するステップ」と本願発明の「コンピュータが、前記現在の価格で前記商品を売ることを売り手が承認することを示す売り切り情報が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップ」は、「コンピュータが、オークションの過程における落札/流札に関する判定基準時に達しているか否かを判定するステップ」という概念で一致する。
更に、引用例1記載の発明の「(現在の価格が希望価格に達していないと判定された場合、)買い取り希望を示す信号が表示された価格に対して売り手がOKの意味でクリアキーを入力しなかった場合には、ホストコンピュータが流札とする処理を行うステップ」と本願発明の「(売り切り情報がコンピュータに入力されていないと判定された場合において、)単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記商品を流す処理を行うステップ」は、両者が「(オークションの過程における落札/流札に関する判定基準時に達していないと判断された場合、)コンピュータが商品を流す処理を行うステップ」という概念を含んでいる点で一致する。

したがって、両者は、「複数の買い手を識別可能なように構成された複数の端末と前記複数の端末に接続されたコンピュータとを含むコンピュータシステムを用いて、商品のオークションを行う方法であって、
前記コンピュータが、商品のスタート価格を示す情報を受け取るステップと、
前記コンピュータが、前記スタート価格を現在の価格の初期値として設定するステップと、
前記コンピュータが、単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたか否かを判定するステップと、
単位時間内に前記複数の端末のうちの少なくとも1つから前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されたと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を所定の値だけ増加させるステップと、
前記コンピュータが、オークションの過程における落札/流札に関する判断基準時に達しているか否かを判定するステップと、
オークションの過程における落札/流札に関する判断基準時に達していると判断された場合、所定時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記現在の価格を落札価格として前記商品を落札する処理を行うステップと、
オークションの過程における落札/流札に関する判断基準時に達していないと判断された場合、コンピュータが商品を流す処理を行うステップと、
を包含する方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、「オークションの過程における落札/流札に関する基準時」は、オークションの過程で「売り切り情報が入力される時点」であるが、引用例1記載の発明では、「オークションの過程における落札/流札に関する基準時」は「価格が希望価格に達した時」である点。

(相違点2)
「オークションの過程における落札/流札に関する基準時に達していないと判断された場合、コンピュータが商品を流す処理を行うステップ」の具体的な構成として、本願発明では、「売り切り情報がコンピュータに入力されていないと判定された場合(すなわち、オークションの過程における落札/流札に関する基準時に達していないと判断された場合)、単位時間内に前記買い取り希望を示す信号が前記コンピュータに入力されなかったと判定された場合には、前記コンピュータが、前記商品を流す処理を行う」構成となっている。しかしながら、引用例1記載の発明では、「現在の価格が希望価格に達していないと判定された場合(すなわち、オークションの過程における落札/流札に関する基準時に達していないと判断された場合)、買い取り希望を示す信号が表示された価格に対して売り手がOKの意味でクリアキーを入力しなかった場合には、ホストコンピュータが流札とする処理を行う」構成となっている点。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。

(相違点1) について
コンピュータを用いた自動車等のオークションにおいて、オークションの最中、価格が希望額を超えて「売りつくし」時になった時に、「売りつくし」(本願発明の「売り切り」に相当)の情報を入力し、売り手の画面にその旨表示を行い、これ以降、応札があれば成立するようにすることは、周知である。(例えば、『安倍俊広,「オークネット(中古車情報提供)衛星を使った「仮想セリ」中古車を1台25秒でさばく」,日経情報ストラテジー 第25号,p.84-89,1994年の第86頁左欄の記載および図2』を参照。)
したがって、引用例1記載の発明においても、周知の手段を用い、オークションの最中「売りつくし」の情報を入力し、それ以降、応札があれば成立するようにすることは、当業者が容易に考え得ることと認められる。

(相違点2)について
オークションにおいて、応札価格が売り手の希望する価格より低い場合には、売り手が商品を売らないことは当然のことである。また、この限界の価格をどの値とするかは、当業者が適宜決定できるものであり、この点に格別な技術的な特徴はない。
更に、オークションにおいて、ある価格で応札がない場合には、それ以上価格を上げても買い手が現れないことは当然予期しうることであり、ここで流札とすることも周知である。(例えば、引用例1にも、応札がない場合には、価格がある一定の金額まで競り上がった時点で、コンピュータにより自動的に流札の処理を行うことが記載されており、また、この流札の処理を行うのは、これ以上価格を上げても買い手が現れないことを予期しているものと認められる。)
したがって、引用例1記載の発明において周知の技術を採用し、オークションの最中「売りつくし」の情報を入力するステップを設ける際、「売りつくし」の情報を入力する時点の価格を販売の最低限の価格(すなわち、この価格未満では商品を売らないこと)とし、また、ある価格で応札がなければこれ以上価格を上げても応札はないだろうと予測し、「売りつくし」の情報が入力される以前の段階においては、単位時間内に買い取りを希望する者がいない場合には、商品を流すようにすることは、当業者が適宜実施しうることと認められる。

また、本願請求項1に係る発明の効果についてみても、上記引用例1に記載された発明および周知技術から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。

なお、仮に、平成14年5月10日付け手続補正が特許法17条の2第4項に規定される要件を満たしたとしても、平成14年5月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1記載の発明は、請求人も審判請求書の『「本願発明が特許されるべき理由」の(1)』の項で述べているとおり本願発明とその構成において実質的に変わりがないものであり、それ故、引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

7.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-21 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-08 
出願番号 特願2000-99989(P2000-99989)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 574- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 直也  
特許庁審判長 山下 弘綱
特許庁審判官 深沢 正志
加藤 恵一
発明の名称 商品のオークションを行う方法  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  

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