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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1116145
異議申立番号 異議2003-70732  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-01-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-20 
確定日 2005-03-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3327713号「眼科撮影装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3327713号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3327713号の請求項1-4に係る発明は、平成6年12月27日(優先権主張、平成6年4月22日)に特許出願され、平成14年7月12日にその特許権の設定登録がされ、その後、異議申立人高柳智明、市橋裕一により特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年10月6日に訂正請求がされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成16年12月3日に手続補正書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
この補正は、訂正請求書に添付した訂正明細書において、【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【発明の詳細な説明】の【0005】の「撮影モード切換手段・フィルタ検知手段」とある記載を「撮影モード切換手段とフィルタ検知手段」と補正し、これに整合するように訂正請求書の記載を補正するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
(2)訂正の内容
特許明細書の記載を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正するもので、すなわち、以下のa-eの事項よりなるものである。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を次のように訂正する。
「【請求項1】
1個のアライメント用或いは1個の合焦用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段(以下、「構成要件A」という。)と、
前記指標と共に被検眼を観察する観察手段(以下、「構成要件B」という。)と、
前記指標用光源を駆動するための光源駆動手段(以下、「構成要件C」という。)と、
撮影用光源の充電完了検知手段(以下、「構成要件D1」という。)又は撮影モード切換手段とフィルタ検知手段(以下、「構成要件D2」という。)と、
前記指標を表示する表示手段(以下、「構成要件E」という。)とを有し、
前記充電完了検知手段により検出された前記撮影用光源の充電状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し(以下、「構成要件F1」という。)、
又は前記撮影モード切換手段と前記フィルタ検知手段により検出された撮影モードとフィルタの組合わせ状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し(以下、「構成要件F2」という。)、
撮影可能な状態であるかどうかを前記観察手段を介して検者に知らせる(以下、「構成要件F3」という。)ことを特徴とする
眼科撮影装置。」
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を次のように訂正する。
「【請求項2】
前記指標の表示状態の変化は、前記光源駆動手段によって前記指標用光源を点滅、点灯させることにより行う(以下、「構成要件G」という。)ことを特徴とする請求項1に記載の眼科撮影装置。」
訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3を次のように訂正する。
「【請求項3】
前記指標の表示状態の変化は、前記光源駆動手段によって前記指標用光源の明るさを変えることにより行う(以下、「構成要件H」という。)ことを特徴とする請求項1に記載の眼科撮影装置。」
訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4を次のように訂正する。
「【請求項4】
前記指標の表示状態の変化は、前記光源駆動手段によって前記指標用光源の波長を切換えることにより行う(以下、構成要件I」という。)ことを特徴とする請求項1に記載の眼科撮影装置。」
訂正事項e
発明の詳細な説明の【0005】【課題を解決するための手段】を次のように訂正する。
「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る眼科撮影装置は、1個のアライメント用或いは1個の合焦用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段と、前記指標と共に被検眼を観察する観察手段と、前記指標用光源を駆動するための光源駆動手段と、撮影用光源の充電完了検知手段又は撮影モード切換手段とフィルタ検知手段と、前記指標を表示する表示手段とを有し、前記充電完了検知手段により検出された前記撮影用光源の充電状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し、又は前記撮影モード切換手段と前記フィルタ検知手段により検出された撮影モードとフィルタの組合わせ状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し、撮影可能な状態であるかどうかを前記観察手段を介して検者に知らせることを特徴とする。」
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1を次の(イ)-(ニ)のように訂正するものである。
(イ)指標投影手段について、投影する指標は、1個であることに限定するとともに、指標を投影する光源は指標用光源であることを明りょうにするもので、これは、明細書の【0009】【0012】【0019】【0020】【0022】【0024】及び図面の記載に基づく。
(ロ)「被検眼を観察する観察手段」は、「前記指標と共に被検眼を観察する」ものであることを明りょうにするもので、これは、明細書の【0011】【0020】【0023】の記載に基づく。
(ハ)「撮影モード検知手段又はフィルタ検知手段」は「撮影モード検知手段とフィルタ検知手段」であることを明りょうにするもので、これは、明細書の【0015】【0016】の記載に基づく。
(ニ)撮影用光源の充電状態又は撮影モードとフィルタの組み合わせ状態を指標の表示状態の変化として表示し、撮影可能な状態であるかどうかを検者に知らせる、ものであることを明りょうにするもので、これは、明細書の【0012】【0015】【0016】【0024】【0025】【0027】の記載に基づく。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項b-dは、訂正事項aにより訂正された請求項1の記載との整合を図るために、請求項2-4の記載を訂正するもので明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項eは、訂正事項aにより訂正された請求項1の記載との整合を図るために、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項a-eは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
本件特許の請求項1-4に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件発明1」・・・・・「本件発明4」のようにいう。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1-4に記載されたとおりのものと認める(上記2.(2)訂正事項a-d参照)。
(2)申立の理由の概要
異議申立人高柳智明は、証拠として甲第1-4号証を提出し、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項の規定により、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから請求項1-4に係る発明についての特許は取り消されるべきである、と主張している。
異議申立人市橋裕一は、証拠として甲第1,2号証を提出して、本件特許の請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1-4に係る発明についての特許は取り消されるべきである、と主張している。
(3)引用刊行物
取消理由で引用した刊行物は次のとおりである。
刊行物1:特開昭54-154187号公報(異議申立人高柳智明及び異議申立人市橋裕一の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭63-260530号公報(異議申立人高柳智明の提出した甲第2号証)
刊行物3:実公平4-20402号公報(異議申立人高柳智明の提出した甲第3号証)
刊行物4:実願平2-124860号(実開平4-80504号)のマイクロフィルム(異議申立人高柳智明の提出した甲第4号証)
刊行物5:特開昭54-156630号公報(異議申立人市橋裕一の提出した甲第2号証)
刊行物1には、眼科用検査装置に関する発明が記載されており、特に、次のような記載がある。
記載1(第2頁、右下欄末行-第3頁、左上欄9行)
「第1図においてEは被検眼、Efは網膜、Epは瞳孔そしてEcは角膜である。また1は収斂性対物レンズ、2は収斂性結像レンズ、3は光軸方向に可動なフォーカシング用レンズ。4は有孔鏡で、第2図に平面図を描くように鏡面中央に開口を備えるものとし、本図では省いているが開口に近接して撮影絞りを有する。
5は写真フィルム。6は跳上げ鏡で、観察時には光路中に斜設して眼底からの光束を導き、撮影時には光路外へ除去する。」
記載2(第3頁、右上欄10行-左下欄2行)
「次に20は発光ダイオード、21は緑色のフィルターで、赤色系の眼底に対して目立つようにこの色にしている。22は細い単オプティカルファイバーで、発光ダイオード20の発光々は緑色のフィルター21を透過してファイバー22の一端に入射し、他端から射出するが、この射出端を後述する位置に設定してPとする。この最終光源(指標)Pの位置の決定方法は前述の出願に記載しているが、第4図に従って、再記する。」
記載3(第3頁、左下欄13行-右下欄8行)
「微小面積の光源Pを発した光束は対物レンズ1によって収斂され、角膜Ecで反射してほぼ平行光束と成り、対物レンズ1に再度入射して眼底結像面F上に光源の像P’を形成する。従ってファインダーを覗いて眼底を観察している者は同時に光源Pの象を観察し得ることになり、その際、角膜Ecと対物レンズ1の間隔が既定の作動距離L1から外れていれば光源の像P’は不鮮明なボケた像となるが作動距離L1に一致すれば鮮明な象を観察できる。またアライメントが崩れていれば光源の像P’は所定の位置から外れて現出するからこれをチェックすることも可能である。」
記載4(第4頁、左上欄4-12行)
「次に23は別の発光ダイオード、24は赤色のフィルターで、緑色系の蛍光に対して目立つようにこの色にしている。25は細い単オプティカルファイバーで、その射光端をQとし、このQの位置は作動距離がL2のときに射光端Qを発した光束が角膜Ecで正規反射して結像面Fに結像するように定められる。またPとQとの光軸方向の間隔dは対物レンズ1の焦点距離と作動距離L1とL2の差から決定される。」
記載5(第4頁、左上欄13行-右上欄15行)
「26は励起フィルターあるいはエキサイターと呼ばれるフィルターで、第7図の曲線Aで示すような透過傾向を持っており、白色光の内から蛍光造影剤を励起するに適した波長域の光を濾光する。またこの励起フィルター26は不図示の案内によって光路中へ装着可能である。27は電気スイッチで、中間の板バネ片27aとその両端にある接触端片27bと27cから成り、通常は板バネ片27aと端片27bが接触しているが、励起フィルター26が装着されると板バネ片27aは撓んでもう一方の端片27cに接触してスイッチは切替る。
28は濾過フィルターあるいはバリヤーフィルターと呼ばれて、例えば第7図の曲線Bで示すような透過傾向を持っており、眼底反射光の内から蛍光々を濾光し励起波長域の光を除去する機能を持ち、同時に角膜で反射した光束を除去することができる。またバリヤーフィルター28は光路に着脱自在である。ただしスイッチ27の切替はバリヤーフィルター28で行なっても良い。」
記載6(第4頁、右上欄末行-左下欄12行)
「第6図はスイッチ27による発光ダイオード20と23の制御回路を示しており、スイッチの各々の端片につながる接点からは導線が延びている。30は直流電源。31と32は可変抵抗で、これら可変抵抗31と32は発光ダイオード20と23の光量を適切にするために設けられているが、特に蛍光撮影の際には発光ダイオード23の光量を少なくしておくものとする。その理由は蛍光眼底撮影時は視野が暗いため、指標用の光源だけが明るいとファインダーを覗いている検者の暗順応に不都合なためで、この実施例では発光ダイオード23の明るさは発光ダイオード20の明るさより暗くする。」
記載7(第4頁、左下欄末行-第5頁、左上欄8行)
「以上の構成の作用を説明すると、カラー写真撮影の際には被検者に散瞳剤を点眼した後、検査位置に着かせ、他方、白熱球10と発光ダイオード20を点灯する。白熱球10を発した光束はコンデンサーレンズ12によってキセノン管13上に一旦収斂した後、発散し、コンデンサーレンズ14でリングスリット板15上に集光する。スリット板15の環状スリットを発した光束は鏡16で反射し、リレーレンズ17で有孔鏡4上に収斂して反射し、対物レンズ1によって被検眼瞳孔Epにスリットの明環像を形成した後、眼底Efを一様に照明する。次いで眼底Efで散乱反射された光束は対物レンズ1によって1次結像面Fに結像された後、有孔鏡4の開口を通過し、フォーカシングレンズ3、結像レンズ2そして跳上げ鏡6を介してフィールドレンズ7上に眼底像を形成するから接眼レンズ9を覗いている検者は眼底像を観察できる。その際、オプティカルファイバー22の射出端Pを発した緑色光束は上述した光学作用によって結像面F上に光源像P’を形成しているから、検者は眼底像とともにこの光源象を観察し得る。そこで検者は眼底像が鮮明になるようにフォーカシングレンズ3を移動してピント合わせを行なうとともに、光源像P’を見ながら位置合わせを行ない、」
記載8(第5頁、左上欄15行-右上欄9行)
「次に蛍光撮影を行なう場合には、励起フィルター26を装着し、被検者には散瞳剤を点眼するとともに肘の血管に蛍光造影剤を注射する。励起フィルター26の装着によって切替スイッチ27の板バネ片27aは片27bから離れて片27cに接触し、発光ダイオード23が点灯してオプティカルファイバー25の射光端Qからは赤色光束が射出する。また、最適作動距離はL2に切替わっており、上述の調整操作と同じ操作を行なった後、バリヤーフィルター28を装着してキセノン管13を発光させることで蛍光撮影を実施することが可能となる。」
刊行物2には、眼底カメラに関する発明が記載されており、特に、以下のような記載がある。
記載1(第2頁、左下欄16行-右下欄4行)
「一方、観察撮影系2は、前記照明系1によって照明された眼底Fの像を観察撮影するためのものであって、観察撮影光軸19に沿って対物レンズ20、孔あき斜設鏡22、合焦レンズ24、結像レンズ26を有し、眼底像をフィルム28上に形成する。観察時には、反転ミラー30は図中実線で示すように観察撮影光軸19上に斜設され、フィールドレンズ32上に形成された眼底像は反射ミラー34、接眼レンズ36により検者により観察される。」
記載2(第2頁、右下欄10-15行)
「また、指標投影系3は眼底Fにピント合わせ用指標像62を投影するためのものであり、指標投影光軸38上に配置された光源40、コンデンサレンズ42、偏角プリズム44を接着したスリット状開口を有する指標マスク板46、合焦レンズ48、反射ミラー50とを有している。」
記載3(第3頁、左上欄4-12行)
「さらに、指標マスク板46とコンデンサレンズ42との間には、指標投影光の色調及び明るさを変えるためのフィルター部54が設けられている。このフィルター部54には、緑色フィルター56及び減光フィルター58が設けられ、選択的に光路内に挿入可能になっており、一般のカラー撮影での観察の時には緑色フィルター56が光路内に挿入され、又、蛍光撮影の場合には、減光フィルター58が光路内に挿入されるようになっている。」
記載4(第3頁、右上欄3行-左下欄11行)
「操作スイッチ68により蛍光撮影モードの設定がなされると、制御部64により、エキサイターフィルター9が照明系1の光路内に、又、バリアフィルター60が観察撮影系2の光路内に自動的に挿入されると共に、フィルター部54の減光フィルター58が指標投影系3の光路内に挿入されるように構成されている。
また、操作スイッチ68によりカラー撮影モードの設定がなされると、制御部64により、エキサイターフィルター9及びバリアフィルター60は各光路から離脱されるとともに、フィルター部54の緑色フィルター56が指標投影系3の光路内に挿入されるように構成されている。
かかる構成により、カラー撮影時においては、緑色フィルター56が指標投影系3の光路内に挿入されることから、眼底F上には緑色のピント合わせ用指標像62が投影され、眼底像と重ね合わせて第2図に示めすように観察される。この場合には、眼底像は赤色の色調であり、緑色のピント合わせ用指標像62は明瞭に識別される。
また、蛍光撮影の場合には、緑色フィルター56の代わりに減光フィルター58が指標投影系3の光路内に挿入され、眼底F上には白色光で、かつ、カラー撮影の際の明るさにより暗いピント合わせ用指標像62が投影される。この蛍光撮影の際には、眼底血管像は緑色の色調であり、白色光のピント合わせ用指標像62は明瞭に識別でき、かつカラー撮影時に比べて明るさは暗いため、うすく暗い血管像を観察する上でも障害とならない。」
刊行物3には、眼底カメラについて、ピント合わせ用指標像62を眼底に投影する光源40(LED)、指標マスク板46などからなる指標投影系3を設け、観察撮影系2の倍率の変更に応じて濃度フィルター部54による光の通過量を制御することにより、変倍レンズによる変倍に応じてピント合わせ用指標像の明るさを調節する構成が記載されており(第1頁、右欄20行-第2頁、左欄5行、第2頁、右欄23行-第3頁、右欄1行、参照)、さらに、光量の調整手段について次のような記載がある。
記載1(第3頁、右欄7-10行)
「尚、本実施例では、光量の調整手段として濃度フィルターを用いているが、LED事態の発光量を電気的に制御してもよいことは云うまでもない。」
刊行物4には、眼科装置について、可視蛍光用のエキサイターフィルター17あるいは赤外蛍光撮影用のエキサイターフィルター18のいずれが挿入されるかで、異なる色の固指標を提示させるように固視灯29を点灯制御する点灯回路26を設け、その場合、固視灯29には電圧により色調が変化する発光ダイオードを用いてもよく、また、電極を変化させ色調を変化させるものを用いてもよいことが記載されている(第7頁、8-20行参照)。
刊行物5には、自動調光式ストロボの動作表示手段を有するカメラについて、充電が完了するとカメラのファインダー内に配設された発光体P1が点灯あるいは点滅し、また、点滅表示の明るさを変化させることにより、ファインダー視野内の電光マーク13により表示することが記載されている(第3頁、左下欄2行-右下欄3行、第12頁、左下欄5-12行、参照)
(4)比較判断
I.刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)と本件各発明との比較
引用発明1が眼科撮影装置に相当することは明らかである。
引用発明1が本件各発明の構成要件A-F3を有するものであるか否かについて検討する。
構成要件Aについて
引用発明1のオプティカルファイバー(22、25)の射出端(P、Q)、発光ダイオード(20,23)は、それぞれ、アライメント用指標、指標用光源、ということができるから、引用発明は「アライメント用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段」(以下、「構成要件a」という。)を有するものということができるが、アライメント用指標は2個であり、引用発明1が構成要件Aを有するものということはできない。
構成要件Bについて
引用発明1のフィールドレンズ(7)、接眼レンズ(9)は「指標と共に被検眼を観察する観察手段」(以下、「構成要件b]という。)ということができるが、指標は1個とはされておらず、引用発明1が構成要件Bを有するものということはできない。
構成要件C
引用発明1の直流電源(30)、可変抵抗(31,32)等を有する回路は、「指標用光源を駆動するための光源駆動手段」(以下、「構成要件c]という。)ということができるが、指標用光源は、1個の指標を投影するものとはされておらず、引用発明1が構成要件Cを有するものということはできない。
構成要件D1について
刊行物1には、構成要件D1についての記載はない。
構成要件D2について
引用発明1のスイッチ(27)はフィルタ検知手段ということができる(記載5参照)が、引用発明1が撮影モード切換手段を有するものか否かは明らかでなく、引用発明1が構成要件D2を有するものということはできない。
構成要件E
引用発明1の対物レンズ1やフォーカシング用レンズ(3)、結像レンズ(2)は「指標を表示する表示手段」(以下、「構成要件e]という。)ということができる(記載3,7参照)が、指標は1個とはされておらず、引用発明1が構成要件Eを有するものということはできない。。
構成要件F1について
刊行物1には、構成要件F1についての記載はない。
構成要件F2について
引用発明1は、刊行物1の記載5-8から明らかなように、蛍光撮影モードでは、励起フィルター(26)が装着されるとスイッチ(27)(フィルタ検知手段)が切換り、発光ダイオード(23)が点灯して射出端Q(アライメント用指標)の赤色の像が表示され、カラー撮影モードでは、励起フィルター(26)は装着されず、発光ダイオード(20)が点灯して射出端P(アライメント用指標)の緑色の像が表示される。
したがって、引用発明1は、「フィルタ検知手段により検出された撮影モードとフィルタの組み合わせ状態を光源駆動手段によって指標用光源を駆動して指標の表示状態の変化として表示する」ものということができるが、検出は撮影モード切換手段とフィルタ検知手段によるものか否かは明らかでなく、構成要件F2を有するものということはできない。
構成要件F3について
刊行物1には構成要件F3についての直接の記載はないが、引用発明1は、蛍光モードでは励起フィルターが装着され赤色のアライメント用指標像が表示され、カラー撮影モードでは励起フィルターは装着されず緑色のアライメント用指標像が表示されるものであるから、検者は、観察手段である接眼レンズ(9)を介してアライメント用指標像を観察し、該指標像が緑色であればカラー撮影モードでの撮影が可能であることを知り、赤色であれば蛍光撮影モードでの撮影が可能であることを知ることができる。すなわち、引用発明1は「撮影モードとフィルタの組み合わせ状態を指標の表示状態の変化として表示」し、「撮影可能な状態であるかどうかを観察手段を介して検者に知らせる」機能を有するものである。
[本件発明2についての判断]
以上のことから、本件発明2と引用発明1とを比較すると、両者は、
アライメント用或いは合焦用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段と、
指標と共に被検眼を観察する観察手段と、
指標用光源を駆動するための光源駆動手段と、
指標を表示する表示手段とを有し、
検出された撮影モードとフィルタの組合わせ状態を光源駆動手段によって指標用光源を駆動して指標の表示状態の変化として表示することを特徴とする
眼科撮影装置
である点で一致し、次の4点で相違する。
相違点1
投影する指標の個数が、本件発明2は、1個であるのに対して、引用発明1は2個である点
相違点2
本件発明2は、構成要件D1又はD2を有するのに対して、引用発明1はそのようなものではない点
相違点3
本件発明2は、構成要件F1又はF2を有し、構成要件F3を有するのに対して、引用発明1はそのようなものではない点
相違点4
本件発明2は、構成要件Gを有するのに対して、引用発明1はそのようなものではない点
相違点について検討する。
相違点1について
指標の数を1個とするか2個とするかは、当業者が適宜選択しうる設計上の事項であり、その選択により作用効果において格別の相違があるものとはいえない。
したがって、引用発明1において構成要件aを本件発明2の構成要件Aのようにし、その際、構成要件b、c、eを本件発明2の構成要件B、C、Eのようにすることは当業者にとって格別困難なことではない。
相違点2について
撮影モード切換手段を設けることは周知であり(刊行物2にも撮影モード切換手段に相当する操作スイッチ(68)を設けることが記載されている。)、カラー撮影と蛍光撮影の2つの撮影モードが可能である引用発明1において、撮影モード切換手段を設けるようにすることは当業者が直ちに得られる発想である。
したがって、引用発明1において構成要件D2のようにすることは当業者にとって何ら困難なことではない。
相違点3について
引用発明1は「フィルタ検知手段により検出された撮影モードとフィルタの組み合わせ状態を光源駆動手段によって指標用光源を駆動して指標の表示状態の変化として表示する」構成を有し、指標の表示状態の変化により、「撮影可能な状態であるかどうかを観察手段を介して検者に知らせる」機能を有するものである。
そして、相違点2について検討したように、フィルタ検知手段に加えて撮影モード切換手段を設けることは当業者にとって何ら困難なことではなく、その場合、撮影モードとフィルタの組み合わせ状態の検出を撮影モード切換手段とフィルタ検知手段によりなすことは当然当然考えられることである。
したがって、引用発明1において、構成要件F2及びF3を有するようにすることは当業者にとって格別困難なこととはいえない。
相違点4について
引用発明1は、光源駆動手段によって指標用光源を点灯又は消灯させている。また、一般に、指標の表示状態を変化させるために、指標用光源を点滅あるいは点灯させることは周知技術である(刊行物5参照)から、引用発明1において、構成要件A-F3のようにし、その際、上記周知技術を考慮して、構成要件Gのようにすることは当業者にとって格別困難なこととはいえない。
したがって、本件発明2は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
[本件発明3についての判断]
本件発明3は、構成要件A-F3に加えて、構成要件Hを有するものである。
本件発明3と引用発明1とを比較すると、構成要件A-F3については、本件発明2について検討したとおりである。
構成要件Hについて検討すると、引用発明1は、刊行物1の記載6から明らかなように、アライメント用指標像の明るさは、蛍光撮影モードの際にはカラー撮影モードの際よりも暗くなるものであり、すなわち、「指標の表示状態の変化は、明るさを変えることにより行う」ものであるから、引用発明1及び周知技術に基づいて構成要件A-F3のようにするに際し、構成要件Hのようにすることは当業者が当然なしうることであり、本件発明3は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[本件発明4についての判断]
本件発明4は、構成要件A-F3に加えて、構成要件Iを有するものである。
本件発明4と引用発明1とを比較すると、構成要件A-F3については、本件発明2について検討したとおりである。
構成要件Iについて検討すると、引用発明1は、刊行物1の記載7,8から明らかなように、アライメント用指標像の色は、蛍光撮影モードの際には赤色で、カラー撮影モードの際には緑色であるから、すなわち、「指標の表示状態の変化は、その波長特性を切換えることにより行う」ものであるから、引用発明1及び周知技術に基づいて構成要件A-F3のようにするに際し、構成要件Iのようにすることは当業者が当然なしうることであり、本件発明4は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
II.刊行物2に記載された発明(以下、「引用発明2」という。)と本件各発明との比較
引用発明2が眼科撮影装置に相当することは明らかである。
引用発明2が本件各発明の構成要件A-F3を有するものであるか否かについて検討する。
構成要件Aについて
引用発明2の指標投影系(3)は、眼底Fにピント合わせ用指標像(62)を投影するためのもので、光源(40)、指標マスク板(46)等を有するものであるから、「合焦用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段」(以下、「構成要件a’」という。)ということができる。しかし、投影する合焦用の指標は第2図の記載によれば2個であり、刊行物2には、1個とすることについての記載はなく、引用発明2が構成要件Aを有するものということはできない。
構成要件Bについて
引用発明2の接眼レンズ(36)は「指標と共に被検眼を観察する観察手段」(以下、「構成要件b’」という。)ということができるが、指標は1個とはされておらず、引用発明2が構成要件Bを有するものということはできない。
構成要件Cについて
刊行物2に明記されてはいないが、光源(40)を駆動するための手段が存在することは明らかであり、引用発明2は「指標用光源を駆動するための光源駆動手段」(以下、「構成要件c’」という。)を有するものということができるが、指標用光源は、1個の指標を投影するものとはされておらず、引用発明2が構成要件Cを有するものということはできない。
構成要件D1について
刊行物2には構成要件D1についての記載はない。
構成要件D2について
引用発明2の操作スイッチ(68)は、蛍光撮影モード又はカラー撮影モードの設定をするものであり、「撮影モード切換手段」ということができるが、「フィルタ検知手段」を有するものか否かは明らかでなく、引用発明2が構成要件D2を有するものということはできない。
構成要件Eについて
引用発明2の対物レンズ(20)、合焦レンズ(24)、結像レンズ(26)等は「指標を表示する表示手段」(以下、「構成要件e’」という。)ということができるが、指標が1個であるとはされておらず、引用発明2が構成要件Eを有するものということはできない。
構成要件F1について
刊行物2には構成要件F1についての記載はない。
構成要件F2について
引用発明2は、刊行物2の記載4から明らかなように、操作スイッチ(撮影モード切換手段)によりカラー撮影モードの設定がされると、エキサイターフィルター及びバリアフィルターは光路から離脱され、指標投影系に緑色フィルター(56)が挿入されて緑色のピント合わせ用指標像が表示される。また、蛍光撮影モードの設定がなされると、エキサイターフィルター及びバリアフィルターが光路内に挿入され、指標投影系に減光フィルターが挿入されて暗い白色光のピント合わせ用指標像が表示される。
したがって、引用発明2は、「撮影モード切換手段により検知された撮影モードとフィルタの組み合わせ状態を指標の表示状態の変化として表示する」ものということができるが、検出は撮影モード切換手段とフィルタ検知手段によるものか否かは明らかでなく、また、指標の表示状態の変化として表示するのは、フィルター(緑色フィルター又は減光フィルター)の駆動によるものであって、指標用光源の駆動によるものではなく、構成要件F2を有するものということはできない。
構成要件F3について
刊行物2には構成要件3についての直接の記載はないが、引用発明2は、刊行物2の記載4から明らかなように、操作スイッチ(撮影モード切換手段)によりカラー撮影モードの設定がされると、エキサイターフィルター及びバリアフィルターは光路から離脱され、指標投影系に緑色フィルターが挿入されて緑色のピント合わせ用指標像が表示される。また、蛍光撮影モードの設定がなされると、エキサイターフィルター及びバリアフィルターが光路内に挿入され、指標投影系に減光フィルターが挿入されて暗い白色光のピント合わせ用指標像が表示されるものであるから、検者は、観察手段である接眼レンズを介してピント合わせ用指標像を観察し、該指標像が緑色であれば、カラー撮影モードでの撮影が可能であることを知り、暗い白色光であれば、蛍光撮影モードでの撮影が可能であることを知ることができる。したがって、引用発明2は、「撮影モードとフィルタの組み合わせ状態を指標の表示状態の変化として表示」し、「撮影可能な状態であるかどうかを観察手段を介して検者に知らせる」機能を有するものである。
[本件発明1についての判断]
以上のことから、本件発明1と引用発明2とを比較すると、両者は、
アライメント用或いは合焦用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段と、
指標と共に被検眼を観察する観察手段と、
指標用光源を駆動するための光源駆動手段と、
指標を表示する表示手段とを有し、
検出された撮影モードとフィルタの組合わせ状態を指標の表示状態の変化として表示することを特徴とする
眼科撮影装置
である点で一致し、次の3点で相違する。
相違点1
投影する指標の個数が、本件発明1は、1個であるのに対して、引用発明2は2個である点
相違点2
本件発明1は、構成要件D1又はD2を有するのに対して、引用発明はそのようなものではない点
相違点3
本件発明1は、構成要件F1又はF2を有し、構成要件F3を有するのに対して、引用発明2はそのようなものではない点
相違点について検討する。
相違点1について
指標の数を1個とするか2個とするかは、当業者が適宜選択しうる設計上の事項であり、その選択により作用効果において格別の相違があるものともいえない。
したがって、引用発明2において、構成要件a’を本件発明1の構成要件Aのようにし、その際、構成要件b’、c’、e’を本件発明1の構成要件B、C、Eのようにすることは当業者にとって格別困難なことではない。
相違点2について
引用発明2は、カラー撮影モードの際には、エキサイターフィルター及びバリアフィルターが光路から離脱され、蛍光撮影モードの際には、これらのフィルターが光路に挿入されるものであり、これを正確に実現するためには、「撮影モード」や「フィルタ」がどのような状態にあるかを知る必要があり、そのために、撮影モード切換手段に加えてフィルタ検知手段を設けるようにすることは当業者が当然考えられる設計上の配慮であり、引用発明2において、構成要件D1を有するものとすることは当業者にとって格別困難なこととはいえない。
相違点3について
引用発明2は、「撮影モード切換手段により検知された撮影モードとフィルタの組み合わせ状態を指標の表示状態の変化として表示する」ものであり、指標の表示状態の変化により、「撮影可能な状態であるかどうかを観察手段を介して検者に知らせる」機能を有するものである。
そして、相違点2について検討したように、撮影モード切換手段に加えてフィルタ検知手段を設けるようにすることは当業者が当然考えられる設計上の配慮であり、その場合、撮影モードとフィルタの組み合わせ状態の検出は、撮影モード切換手段とフィルタ検知手段によりなされることは当然考えられることである。
また、指標の表示状態の変化として表示するための具体的手段をどのようなものとするかは、当業者が適宜設計しうることであり、光源駆動手段によって指標用光源を駆動して行うものも周知のものである(刊行物1(特に記載6参照)、刊行物3(特に記載1参照)にも開示されている。)から、引用発明2において、指標の表示状態の変化をフィルターの駆動で行うことに換えて指標用光源の駆動により行うようにすることは、当業者にとって格別困難なこととはいえず、引用発明2において、構成要件F2及び構成要件F3を有するようにすることは当業者にとって格別困難なこととはいえない。
したがって、本件発明1は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[本件発明3についての判断]
本件発明3は、構成要件A-F3に加えて、構成要件Hを有するものである。
本件発明3と引用発明2とを比較すると、構成要件A-F3については、本件発明1について検討したとおりである。
構成要件Hについて検討すると、本件発明1について相違点3について検討したように、指標の表示状態の変化をフィルターの駆動で行うことに換えて指標用光源の駆動により行うようにすることは当業者にとって格別困難なこととはいえず、その際、指標用光源の明るさを換えるようにすることも当業者が適宜なしえる設計上の事項にすぎない。このことは、指標用光源の明るさを変えるようにすることが普通になされており(刊行物3、5参照)、また、引用発明2は、刊行物2の記載4から明らかなように、ピント合わせ用指標像の明るさは、蛍光撮影モードの際にはカラー撮影モードの際よりも暗くなるものであり、すなわち、「指標の表示状態の変化は、明るさを変えることにより行う」ものであることからも当然いえることである。
したがって、本件発明3は引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[本件発明4についての判断]
本件発明4は、構成要件A-F3に加えて、構成要件Iを有するものである。
本件発明4と引用発明2とを比較すると、構成要件A-F3については、本件発明1について検討したとおりである。
構成要件Iについて検討すると、本件発明1について相違点3について検討したように指標の表示状態の変化をフィルターの駆動で行うことに換えて指標用光源の駆動により行うようにすることは、当業者にとって格別困難なこととはいえず、その際、指標用光源の波長を切り換えるようにすることも当業者が適宜なしえる設計上の事項にすぎない。このことは、指標用光源の波長を切り換えるようにすることが普通になされており(刊行物4参照)、また、引用発明2は、刊行物2の記載4から明らかなように、ピント合わせ用指標像の色は、蛍光撮影モードの際には白色で、カラー撮影モードの際には緑色であるから、すなわち、「指標の表示状態の変化は、その波長特性を切換えることにより行う」ものであることからも当然いえることである。
したがって、本件発明4は引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件の請求項1-4に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
眼科撮影装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 1個のアライメント用或いは1個の合焦用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段と、前記指標と共に被検眼を観察する観察手段と、前記指標用光源を駆動するための光源駆動手段と、撮影用光源の充電完了検知手段又は撮影モード切換手段とフィルタ検知手段と、前記指標を表示する表示手段とを有し、前記充電完了検知手段により検出された前記撮影用光源の充電状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し、又は前記撮影モード切換手段と前記フィルタ検知手段により検出された撮影モードとフィルタの組合わせ状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し、撮影可能な状態であるかどうかを前記観察手段を介して検者に知らせることを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】 前記指標の表示状態の変化は、前記光源駆動手段によって前記指標用光源を点滅、点灯させることにより行うことを特徴とする請求項1に記載の眼科撮影装置。
【請求項3】 前記指標の表示状態の変化は、前記光源駆動手段によって前記指標用光源の明るさを変えることにより行うことを特徴とする請求項1に記載の眼科撮影装置。
【請求項4】 前記指標の表示状態の変化は、前記光源駆動手段によって前記指標用光源の波長を切換えることにより行うことを特徴とする請求項1に記載の眼科撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被検眼にアライメント用指標又は合焦用指標を投影する手段を有する眼科撮影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の眼底カメラとして、被検眼の角膜にアライメント用指標を投影し、アライメント用指標の角膜からの反射像を眼底像に重ね合わせて観察し被検眼と眼底カメラとのアライメントを行うものや、被検眼の眼底と共役な位置に配置された合焦用指標を眼底に投影し、合焦用指標の眼底からの反射像を眼底像に重ね合わせて観察し、合焦を行うものなどが知られている。また、撮影可能状態であるか否かを表示する表示手段を、眼底カメラのステージ部や観察系に設けたものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の従来例では、表示手段がステージ部等に設けられている場合には、検者は眼底を観察しながら表示手段に表示される情報を得ることができない。また、表示手段が観察系に設けられている場合には、装置が複雑になりコストも高くなってしまう。
【0004】
本発明の目的は、上述の問題を解消し、撮影可能な状態か否かを指標を変化させることにより検者に知らせる眼科撮影装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る眼科撮影装置は、1個のアライメント用或いは1個の合焦用の指標を指標用光源から被検眼に投影する指標投影手段と、前記指標と共に被検眼を観察する観察手段と、前記指標用光源を駆動するための光源駆動手段と、撮影用光源の充電完了検知手段又は撮影モード切換手段とフィルタ検知手段と、前記指標を表示する表示手段とを有し、前記充電完了検知手段により検出された前記撮影用光源の充電状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し、又は前記撮影モード切換手段と前記フィルタ検知手段により検出された撮影モードとフィルタの組合わせ状態を前記光源駆動手段によって前記指標用光源を駆動して前記指標の表示状態の変化として表示し、撮影可能な状態であるかどうかを前記観察手段を介して検者に知らせることを特徴とする。
【0006】
【0007】
【作用】
上述の構成を有する本発明の眼科撮影装置は、撮影可能状態であるか否かを検知し、被検眼の角膜に投影されるアライメント用指標又は被検眼の眼底に投影される合焦用指標を変化させることにより、撮影可能状態であるか否かを観察をしている検者に知らせる。
【0008】
【実施例】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は第1の実施例の構成図であり、被検眼Eと対向している対物レンズ1の背後の光路01上には、孔あきミラー2、フォーカスレンズ3、結像レンズ4、クイックリターンミラー5、フィルム6が配置され、クイックリターンミラー5の反射方向の光路02上には観察面7が配置され、観察面7には接眼レンズ等の観察手段8が接続されている。孔あきミラー2の入射方向の光路03上には、リレーレンズ9、10、リング状スリット11、ミラー12、コンデンサレンズ13、ストロボ管から成る撮影用光源14、コンデンサレンズ15、16、ハロゲンランプから成る観察用光源17、リフレクタ18が配置されている。
【0009】
また、光路01の軸外には、被検眼Eの角膜Ecにアライメント用指標を投影するための光ファイバ19、LED等の光源20が配置されている。更に、撮影用光源14には電源21、充電完了検知手段22が接続されており、この充電完了検知手段22の出力は光源駆動回路23を介して光源20に接続されている。
【0010】
位置合わせや眼底観察に際しては、クイックリターンミラー5を光路01内に挿入したまま観察用光源18を点灯すると、観察用光源18からの光束はコンデンサレンズ16、15、13、ミラー12、スリット11、リレーレンズ10、9、孔あきミラー2、対物レンズ1を経て眼底Erを照明し、その反射光は対物レンズ1、孔あきミラー2の孔部、フォーカスレンズ3、結像レンズ4、クイックリターンミラー5を経て観察面7に結像するので、検者は観察手段8を介して眼底Erを観察することができる。
【0011】
この観察時に、光ファイバ19の端部Pから射出された光束L1は、対物レンズ1を介して被検眼Eの角膜Ecに投影され、角膜Ecによって反射された光束L2はアライメントが適切な場合には、平行光となり再び対物レンズ1を通り、フォーカスレンズ3、結像レンズ4、クイックリターンミラー5を介して、被検眼Eの眼底Erと共役な観察面7上に結像し、眼底像と共に観察される。
【0012】
ここで、電源21の充電が完了してない場合には光源駆動回路23により光源20は点滅し、充電が完了した場合には光源20は点灯し続ける。従って、検者は観察面7を監視することにより、光源20の点灯状態から電源21の充電状態を知ることができる。また、電源21の充電が完了していない場合には光源駆動回路23により光源20は低い輝度で点灯し、充電が完了した場合には光源20は高い輝度で点灯するようにしても、検者に充電状態を知らせることができる。
【0013】
フィルム6での眼底像の撮影に際しては、観察面7において電源21の充電状態を確認してから図示しない撮影釦を押すと、クイックリターンミラー5が跳ね上がって光路01から退避する。続いて、撮影用光源14が閃光すると、その光束は観察用光束と略同等の光路を経て眼底Erを照明する。眼底Erからの反射光も観察光と略同等の光路を辿るが、クイックリターンミラー5は上昇しているためにフィルム6上に結像し、フィルム6において眼底像を得ることができる。
【0014】
図2は第2の実施例の構成図であり、被検眼Eと対向している対物レンズ1の背後の光路01には、孔あきミラー2、・・・・、クイックリターンミラー5、フィルム6が配置され、クイックリターンミラー5の反射方向の光路02上には観察面7が配置されている。また、孔あきミラー2の入射方向の光路03上には、リレーレンズ9、・・・・、リフレクタ18が配置されている。更に、光路01の軸外に光ファイバ19、LED等の光源20が配置されており、これらの構成は第1の実施例と同様である。
【0015】
しかし、光路01上には挿脱可能な蛍光用バリアフィルタ24が配置され、その位置は図示しないバリアフィルタ検知手段に接続されており、光路03上には挿脱可能な蛍光用エキサイタフィルタ25が配置され、その位置は図示しないエキサイタフィルタ検知手段に接続されている。更に、眼底カメラステージ部にはカラー撮影か蛍光造影撮影かを選択する図示しない撮影モード切換手段が設けられている。光源20に接続された光源駆動回路23は、撮影モード切換手段、バリアフィルタ検知手段及びエキサイタフィルタ検知手段からの出力を基に、光源20の駆動状態を変化させるようになっている。
【0016】
この第2の実施例では、撮影モード切換手段によって蛍光造影撮影が選択され、バリアフィルタ25が光路01上に、エキサイタフィルタ25が光路03上に少なくとも何れか一方が挿入されていない場合に光源20は点滅し、何れも挿入されている場合に光源20は点灯し続ける。これによって、バリアフィルタ24、エキサイタフィルタ25が確実に光路内に挿入されているか否かを、検者は観察面7上における光源20の点灯、点滅によって確認できるため、バリアフィルタ24或いはエキサイタフィルタ25の入れ忘れによる蛍光造影撮影の失敗を防ぐことができる。
【0017】
図3は第3の実施例の構成図であり、被検眼Eと対向している対物レンズ1の背後の光路01上には、孔あきミラー2、・・・・、挿脱可能な蛍光用バリアフィルタ25、・・・・、クイックリターンミラー5、フィルム6が配置され、クイックリターンミラー5の反射方向の光路02上には観察面7が配置されている。また、孔あきミラー2の入射方向の光路03上には、リレーレンズ9、・・・、挿脱可能な蛍光用エキサイタフィルタ25、・・・・、リフレクタ18が配列されており、これらの構成は第2の実施例と同様である。
【0018】
しかし、光路03のリレーレンズ9、10間には、被検眼Eの眼底Erに合焦用指標を投影するために、ミラー30が眼底Erと共役な位置に配置され、ミラー30の反射方向の光路04上には、レンズ31、合焦用指標32、指標32を眼底Erに投影するためのランプから成る光源33が配置されている。
【0019】
また、撮影用光源14には電源21、充電完了検知手段22が順次に接続されており、蛍光用バリアフィルタ25には図示しないバリアフィルタ検知手段が接続されており、蛍光用エキサイタフィルタ25には図示しないエキサイタフィルタ検知手段が接続されている。光源33には光源駆動回路34が接続され、この光源駆動回路34は充電完了検知手段22、撮影モード切換手段、バリアフィルタ検知手段及びエキサイタフィルタ検知手段からの出力を基に、光源33の駆動状態を変化させるようになっている。
【0020】
観察時において、光源33から指標32を介して射出された光束L3は、レンズ31によりミラー30上に結像し、リレーレンズ8、孔あきミラー2、対物レンズ1によって眼底Erに投影され、眼底Erで反射される。眼底Erで反射された光束L4は再び対物レンズ1を通り、フォーカスレンズ3、結像レンズ4、クイックリターンミラー5によって観察面7上に結像し、検者により眼底像と共に観察される。
【0021】
図4は第4の実施例の構成図を示し、被検眼Eと対向している対物レンズ1の背後の光路01には、孔あきミラー2、・・・・、クイックリターンミラー5、フィルム6が配置され、クイックリターンミラー5の反射方向の光路02上には観察面7が配置されている。また、孔あきミラー2の入射方向の光路03上には、リレーレンズ9、・・・・、リフレクタ18が配置されており、これらの構成は第1の実施例と同様である。
【0022】
しかし、第1の実施例とは異なり、光路01の軸外に光ファイバ19、緑色、赤色の2色で発光可能な2色発光LED35が配置され、2色発光LED35はLED駆動回路36に接続されており、これにより発光色が切換えられるようになっている。更に、撮影用光源14には電源21、充電完了検知手段22が接続されており、充電完了検知手段22の出力はLED駆動回路36を介して2色発光LED35に接続されている。
【0023】
光ファイバ19の端部Pから射出された光束L1は、対物レンズ1を介し被検眼Eの角膜Ecに投影され、角膜Ecによって反射された光束L2はアライメントが適切な場合に平行光となり、再び対物レンズ1を通り、フォーカスレンズ3、結像レンズ4、クイックリターンミラー5を介し、眼底Erと共役な観察面7上に結像し、眼底像と共に観察される。
【0024】
ここで第4の実施例では、電源21の充電が完了してない場合には、LED駆動回路36により、2色発光LED35は赤色の光を発光し、充電が完了した場合には2色発光LED35は緑色の光を発光する。従って、検者は観察面7を監視することにより、2色発光LED35の発光色から、電源21の充電状態を知ることができる。
【0025】
第1、第2の実施例では、角膜Ecに指標を投影する指標投影手段のLED等の光源の点灯、点滅又は光源の明るさを変化させることにより表示を行ったが、第3の実施例においては眼底Erに指標を投影する指標投影手段のランプ等の光源の点灯、点滅によって充電完了や蛍光用フィルタの挿脱の状態の表示を行っている。また第4の実施例では、角膜Ecに指標を投影する指標投影手段の光源の2色発光LEDの発光色を変化させることにより表示を行っている。更に、第2、第3の実施例では眼底カメラのステージ部に、カラー撮影か蛍光造影撮影かを選択する図示しない撮影モード切換手段の状態表示を行うこともできる。
【0026】
なお、実施例においては眼底を観察、撮影する場合について説明したが、例えば水晶体を観察、撮影することもできる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る眼科撮影装置は、被検眼にアライメント用指標を投影するアライメント用指標投影手段又は合焦用指標を投影する合焦用指標投影手段を有し、撮影可能な状態であるか否かを検知し、アライメント用指標投影手段又は合焦用指標投影手段により投影された指標を変化させて検者に表示することによって、装置を複雑化することなく眼像を観察しながら撮影可能な状態であるか否かを検者に容易に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
第1の実施例の構成図である。
【図2】
第2の実施例の構成図である。
【図3】
第3の実施例の構成図である。
【図4】
第4の実施例の構成図である。
【符号の説明】
7 観察面
8 観察手段
14 撮影用光源
17 観察用光源
19 光ファイバ
20 光源
21 電源
22 充電完了検知手段
23、34 光源駆動回路
24 蛍光用バリアフィルタ
25 蛍光用エキサイタフィルタ
32 合焦用指標
33 光源
35 2色発光LED
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-01-20 
出願番号 特願平6-338184
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A61B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安田 明央  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 長井 真一
橋場 健治
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3327713号(P3327713)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 眼科撮影装置  
代理人 日比谷 征彦  
代理人 日比谷 征彦  

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