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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
管理番号 1116214
異議申立番号 異議2003-72216  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-03 
確定日 2005-04-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3383440号「銅張積層板」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3383440号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由
1.手続の経緯

本件特許第3383440号は、平成 6年10月 4日に特許出願され、平成14年12月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成15年 9月 3日に特許異議申立人近藤利喜三から、同日に特許異議申立人新神戸電機株式会社から、同日に特許異議申立人小椋久男から、同日に特許異議申立人杉村由子から、それぞれ特許異議の申立てがされて、平成16年 8月24日付け取消理由が通知され、同年11月 8日に意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年11月30日付け訂正拒絶理由が通知され、これに対して特許権者は応答をしなかった。

2.訂正の適否について

2-1.訂正の内容

平成16年11月 8日付けの本件訂正は、以下の訂正事項a、bを含むものと認められる。

ア.訂正事項a
特許請求の範囲につき、
「【請求項1】ガラス基材にエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグを複数枚積層し、その少なくとも片面に銅箔を重ね合わせて一体に成形する銅張積層板において、前記積層したプリプレグの表面層にガラス織布にジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグ(I)を、中央層にガラス織布又はガラス不織布にノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を塗布・乾燥させたプリプレグ(II)を用いてなることを特徴とする銅張積層板。」
とあるのを
「【請求項1】ガラス織布にエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグを複数枚積層し、その少なくとも片面に銅箔を重ね合わせて一体に成形する銅張積層板において、前記積層したプリプレグの表面層にガラス織布にジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグ(I)を、中央層にガラス織布にノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を塗布・乾燥させたプリプレグ(II)を用いてなり、前記プリプレグ(I)及びプリプレグ(II)の樹脂分が実質的に同一であることを特徴とする銅張積層板。」
と訂正する。

イ.訂正事項b
明細書の段落【0009】につき、
「即ち、本発明は、ガラス基材にエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグを複数枚積層し、その少なくとも片面に銅箔を重ね合わせて一体に成形する銅張積層板において、前記積層したプリプレグの表面層にガラス織布にジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグ(I)を、中央層にガラス織布又はガラス不織布にノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を塗布・乾燥させたプリプレグ(ll)を用いてなることを特徴とする銅張積層板である。」
とあるのを
「即ち、本発明は、ガラス織布にエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグを複数枚積層し、その少なくとも片面に銅箔を重ね合わせて一体に成形する銅張積層板において、前記積層したプリプレグの表面層にガラス織布にジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグ(I)を、中央層にガラス織布にノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を塗布・乾燥させたプリプレグ(II)を用いてなり、前記プリプレグ(I)及びプリプレグ(II)の樹脂分が実質的に同一であることを特徴とする銅張積層板である。」
と訂正する。

2-2.判断

(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aの訂正は、請求項1に係る発明の銅張積層板について、プリプレグ(II)のガラス基材をガラス織布に限定し、プリプレグ(I)及びプリプレグ(II)の樹脂分が実質的に同一であることを発明特定事項とする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
しかし、願書に添付した明細書には、プリプレグ(I)及びプリプレグ(II)の樹脂分が実質的に同一であることは一般的に記載されていない。願書に添付した明細書には、プリプレグの樹脂分について、実施例1に「樹脂分42%のプリプレグ(I)」(【0020】)、「樹脂分42%のプリプレグ(II)」(【0021】)および実施例2に「樹脂分80%のプリプレグ(II′)」(【0023】)の記載があるが、ほかに、プリプレグの樹脂分についての記載はない。そして、上記実施例1ではプリプレグ(I)及びプリプレグ(II)の樹脂分がともに42%と、たまたま同一であるとしても、それぞれ特定のガラス織布と特定のエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ(I)及びプリプレグ(II)の樹脂分がともに42%であったというにすぎず、願書に添付した明細書の請求項1に係る発明は、プリプレグ(I)及びプリプレグ(II)の樹脂分が常に実質的に同一である、とする理由にはならない。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書の範囲内においてした訂正ではない。
また、上記訂正事項aの訂正は、上記に挙げた理由から、実質上特許請求の範囲を変更するものである。

(2)訂正事項bについて
上記訂正事項bの訂正は、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるが、上記(1)に挙げた理由から、願書に添付した明細書の範囲内においてした訂正ではない。

2-3.まとめ

以上のとおりであるから、この訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び同条第2項の規定に適合しないので、この訂正は認められない。

3.特許異議申立てについての判断

3-1.本件の請求項1に係る発明

本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正前の明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「ガラス基材にエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグを複数枚積層し、その少なくとも片面に銅箔を重ね合わせて一体に成形する銅張積層板において、前記積層したプリプレグの表面層にガラス織布にジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグ(I)を、中央層にガラス織布又はガラス不織布にノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を塗布・乾燥させたプリプレグ(II)を用いてなることを特徴とする銅張積層板。」

3-2.取消理由の概要

平成16年 8月24日付け取消理由の概要は、以下のとおりである。

1)本件の請求項1に係る発明は、下記の引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記請求項に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(以下、「理由1」という。)

2)本件の請求項1に係る発明は、下記の引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下、「理由2」という)


1.特開平 5-138795号公報
2.特開昭62- 25132号公報

3-3.引用例に記載された事項

引用例1には、以下の記載が認められる。
1a.「エポキシ樹脂を含浸した中間層の基材がガラス不織布、表面層の基材がガラス織布であるコンポジット積層板において、中間層の樹脂中に比重0.8〜2で平均粒径30μm以下の中空ガラス粉を含有し、表面層の樹脂中にはフェノール類付加ポリブタジエンを含有することを特徴とするコンポジット積層板。」(特許請求の範囲)
1b.「エポキシ樹脂を含浸した中間層の基材がガラス不織布または紙基材、表面層の基材がガラス織布であるコンポジット積層板が、プリント配線板の基板として使用されている。コンポジット積層板は、ガラス織布基材の積層板に比べて加工性に大きな利点があるため、民生機器分野ばかりでなく産業機器分野でも幅広く用いられている。」(【0002】)
1c.「比較例1
樹脂固形分100重量部に対して水酸化アルミニウム(比重2.4)を50重量部配合したエポキシ樹脂(硬化剤はフェノールノボラック樹脂)ワニスを坪量70gのガラス不織布に含浸乾燥して樹脂付着量92重量%のプリプレグ(a’)を得た。また、ジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂を、直径9μのE-ガラスフィラメントのストランドから作られる単糸を平織りした厚さ0.2mmのガラス織布に含浸乾燥して樹脂付着量43重量%のプリプレグ(b’)を得た。そして、プリプレグ(a’)を3枚重ねた両表面にプリプレグ(b’)を各1枚重ね合わせ、この上下面に厚さ0.018mmの銅箔をそれぞれに配置し、これを圧力50Kg/cm2、温度165℃で90分間加熱加圧成形して厚さ1.6mmの銅張り積層板を得た。」(【0012】)

引用例2には、以下の記載が認められる。
2a.「分子内に2個以上のエポキシ基を有するダイマー酸変性エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを反応させて得た樹脂組成物を、ビスフェノール型エポキシ樹脂に配合してワニスを調製し、該ワニスを紙または不織布基材に含浸乾燥して得たプリプレグを一部乃至全部として積層成形することを特徴とする積層板の製造法。」(特許請求の範囲の請求項1)
2b.「紙または不織布基材のプリプレグを中間層とし、その両表面に、エポキシ樹脂を含浸乾燥したガラス布基材のプリプレグを配置して積層成形する特許請求の範囲第1項記載の積層板の製造法。」(特許請求の範囲の請求項2)
2c.「紙基材としてはクラフト紙、リンター紙等があり、不織布としてはセルロースバインダガラス不織布、ガラス不織布、アスベスト紙等がある。」(第2頁上右欄第17行〜第19行)
2d.「実施例1
可撓性を有し、一分子中にエポキシ基を2個以上有するダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名EP-871、油化シェル製)を35部、ノボラック型フェノール樹脂(商品名TD-2093、大日本インキ製)を25部、溶剤としてメチルエチルケトンを20部、反応促進剤として、ジメチルベンジルアミンを0.3部配合し、60℃で2時間反応させた。得られた樹脂組成物に、難燃性エポキシ樹脂(商品名ESB-400、住友化学製)を60部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(商品名ESA-001、住友化学製)を5部、溶剤として、メチルエチルケトンを40部加えてなるワニスを、厚さ10ミルスのリンター紙に含浸乾燥させ樹脂量56重量%のプリプレグ(A)を得た。
次に、前記プリプレグ(A)を8枚重ねた上に厚さ35μの銅箔1枚を置き、圧力100kg/cm2、 温度150℃で45分間積層成形し、厚さ1.6mmの片面銅張積層板を得た。」(第2頁下左欄第13行〜下右欄第13行)
2e.「実施例2
実施例1で得たプリプレグ(A)6枚を芯材とし、その両面に、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸乾燥したプリプレグ(C)を1枚ずつ配置し、更に厚さ35μの銅箔を1枚重ね、実施例1と同様に積層成形して厚さ1.6mmのコンポジット片面銅張積層板を得た。
なお、前記プリプレグ(C)は、平織りガラスクロスに、実施例1のビスフェノール型エポキシ樹脂を45部、難燃性エポキシ樹脂を60部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名DEN-438、ダウケミカル社製)を15部、ジシアンジアミドを3部配合してなる樹脂組成物を樹脂量40重量%となる様含浸乾燥して得たものである。」(第3頁上左欄第6行〜第20行)

3-4.対比・判断

3-4-1.理由1について

引用例1には、記載1b.〜1c.によると、
「樹脂固形分100重量部に対して水酸化アルミニウム(比重2.4)を50重量部配合したエポキシ樹脂(硬化剤はフェノールノボラック樹脂)ワニスを坪量70gのガラス不織布に含浸乾燥して得た樹脂付着量92重量%のプリプレグ(a’)を3枚重ねた両表面に、ジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂を直径9μのE-ガラスフィラメントのストランドから作られる単糸を平織りした厚さ0.2mmのガラス織布に含浸乾燥して得た樹脂付着量43重量%のプリプレグ(b’)を各1枚重ね合わせ、この上下面に厚さ0.018mmの銅箔をそれぞれに配置し、これを圧力50Kg/cm2、温度165℃で90分間加熱加圧成形して得た、厚さ1.6mmの銅張り積層板。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)
が記載されていると認められる。
そして、引用例1に記載された発明の「ガラス不織布」および「ガラス織布」は、いずれも本件発明の「ガラス基材」に相当する。また、引用例1に記載された発明の「樹脂固形分100重量部に対して水酸化アルミニウム(比重2.4)を50重量部配合したエポキシ樹脂(硬化剤はフェノールノボラック樹脂)ワニス」および「ジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂」は、いずれも「エポキシ樹脂組成物」であって、それぞれ本件発明の「ノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物」および「ジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物」に相当する。また、引用例1に記載された発明の「プリプレグ(a’)」および「プリプレグ(b’)」は、それぞれ本件発明の「中央層」の「プリプレグ(II)」および「表面層」の「プリプレグ(I)」に相当する。また、「3枚」、「上下面」は、それぞれ、「複数枚」、「少なくとも片面」といえる。
してみると、本件発明と、引用例1に記載された発明は、
「ガラス基材にエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグを複数枚積層し、その少なくとも片面に銅箔を重ね合わせて一体に成形する銅張積層板において、前記積層したプリプレグの表面層にガラス織布にジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグ(I)を、中央層にガラス不織布にノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を塗布・乾燥させたプリプレグ(II)を用いてなる、上記銅張積層板。」
である点で一致する。
したがって、本件発明は、引用例1に記載された発明である。

3-4-2.理由2について

引用例2には、記載2a.〜2e.によると、
「可撓性を有し、一分子中にエポキシ基を2個以上有するダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名EP-871、油化シェル製)を35部、ノボラック型フェノール樹脂(商品名TD-2093、大日本インキ製)を25部、溶剤としてメチルエチルケトンを20部、反応促進剤として、ジメチルベンジルアミンを0.3部配合し、60℃で2時間反応させて得られた樹脂組成物に、難燃性エポキシ樹脂(商品名ESB-400、住友化学製)を60部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(商品名ESA-001、住友化学製)を5部、溶剤として、メチルエチルケトンを40部加えてなるワニスを、厚さ10ミルスのリンター紙に含浸乾燥させて得た樹脂量56重量%のプリプレグ(A)6枚を芯材とし、その両面に、平織りガラスクロスに、ビスフェノール型エポキシ樹脂(商品名ESA-001、住友化学製)を45部、難燃性エポキシ樹脂(商品名ESB-400、住友化学製)を60部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名DEN-438、ダウケミカル社製)を15部、ジシアンジアミドを3部配合してなる樹脂組成物を樹脂量40重量%となる様含浸乾燥して得たプリプレグ(C)を1枚ずつ配置し、更に厚さ35μの銅箔を1枚重ね、圧力100kg/cm2、 温度150℃で45分間積層成形して得た、厚さ1.6mmのコンポジット片面銅張積層板。」(以下、「引用例2に記載された発明」という。)
が記載されていると認められる。
そして、引用例2に記載された発明の「リンター紙」および「ガラスクロス」は、いずれも本件発明の「基材」に相当し、後者の「ガラスクロス」は、さらに、本件発明の「ガラス基材」および「ガラス織布」にも相当する。また、引用例2に記載された発明の「可撓性を有し、一分子中にエポキシ基を2個以上有するダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名EP-871、油化シェル製)を35部、ノボラック型フェノール樹脂(商品名TD-2093、大日本インキ製)を25部、溶剤としてメチルエチルケトンを20部、反応促進剤として、ジメチルベンジルアミンを0.3部配合し、60℃で2時間反応させて得られた樹脂組成物に、難燃性エポキシ樹脂(商品名ESB-400、住友化学製)を60部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(商品名ESA-001、住友化学製)を5部、溶剤として、メチルエチルケトンを40部加えてなるワニス」および「ビスフェノール型エポキシ樹脂(商品名ESA-001、住友化学製)を45部、難燃性エポキシ樹脂(商品名ESB-400、住友化学製)を60部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名DEN-438、ダウケミカル社製)を15部、ジシアンジアミドを3部配合してなる樹脂組成物」は、いずれも「エポキシ樹脂組成物」であって、それぞれ本件発明の「ノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物」および「ジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物」に相当する。また、引用例2に記載された発明の「プリプレグ(A)」および「プリプレグ(C)」は、それぞれ本件発明の「中央層」の「プリプレグ(II)」および「表面層」の「プリプレグ(I)」に相当する。また、「6枚」、「片面」は、それぞれ、「複数枚」、「少なくとも片面」といえる。
してみると、本件発明と、引用例2に記載された発明は、
「基材にエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグを複数枚積層し、その少なくとも片面に銅箔を重ね合わせて一体に成形する銅張積層板において、前記積層したプリプレグの表面層にガラス織布にジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を含浸・乾燥させたプリプレグ(I)を、中央層にリンター紙にノボラック樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物を塗布・乾燥させたプリプレグ(II)を用いてなる、上記銅張積層板。」
である点で一致し、一方、上記中央層に用いるプリプレグについて、本件発明では、基材がガラス織布又はガラス不織布であるプリプレグであることを特定しているのに対し、引用例2に記載された発明では、基材がリンター紙であるプリプレグである点(以下、「相違点」という。)で、相違する。
上記相違点について検討する。
引用例2には、記載2a.〜2c.によると、中央層に相当する層に用いる、紙または不織布基材のプリプレグの、該基材として、リンター紙等の紙基材の他、ガラス不織布があることが記載されている。
してみると、引用例2に記載された発明において、基材のリンター紙を、ガラス不織布で置換することは、当業者には何ら困難なこととは認められない。
したがって、上記相違点は、当業者が容易に想到できたものと認められ、本件発明は、引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4.むすび

以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第1項第3号および第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める法令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-03-08 
出願番号 特願平6-264465
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (B32B)
P 1 651・ 113- ZB (B32B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小石 真弓  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 中田 とし子
石井 克彦
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3383440号(P3383440)
権利者 京セラケミカル株式会社
発明の名称 銅張積層板  
代理人 須山 佐一  

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