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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B60H
管理番号 1116740
審判番号 無効2003-35087  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-03-11 
確定日 2005-04-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3137189号発明「自動車用空調装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3137189号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯及び本件発明
本件特許3137189号は、平成6年9月22日に特許出願された特願平6-227592号、及び、平成7年8月29日に特許出願された特願平7-220903号を先の出願とする特許法第41条に基づく優先権主張をともなって、平成7年9月13日に特許出願された特願平7-235505号の一部を平成10年6月12日に新たな特許出願とした特願平10-165734号の一部を、新たな特許出願として平成12年2月17日に特許出願としたものであって、平成12年12月8日にその設定登録なされたものであり、これに対して、その一部請求項に係る発明に対する特許に対して特許異議の申立がなされ、取消理由が通知された後、平成14年6月6日付けで訂正請求がなされ、平成14年6月13日に同訂正を認め、請求項1〜3に係る特許を維持する旨の決定がなされ、その後、平成15年3月11日付けで、審判請求人カルソニックカンセイ株式会社より、特許無効審判の請求がなされ、平成15年11月10日に行われた口頭審理において無効理由の通知が告知され、その指定された期間である平成15年12月19日に訂正請求がなされたものである。

2.被請求人が請求した訂正
2-1 訂正の内容
被請求人が請求した訂正は、以下のとおりである。
2-1-1 特許請求の範囲の記載について
訂正事項1
特許請求の範囲の【請求項1】に記載された「・・
前記凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられており、
・・自動車用空調装置。」を「・・
前記凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられるとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり、
・・自動車用空調装置。」と訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の【請求項2】に記載された「・・
前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられており、
・・自動車用空調装置。」を「・・
前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり、
・・自動車用空調装置。」と訂正する。

2-1-2発明の詳細な説明の記載について
訂正事項3
段落番号【0013】に記載された「・・凝縮水排出パイプを設けた構成としているため・・」を「・・凝縮水排出パイプを設け、この凝縮水排出パイプを、冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位あるいはケースの最低部に設けるとともに、凝縮水をこの凝縮水排出パイプから抜き出す構成としているため・・」と訂正する。

2-2 訂正請求に係る被請求人の主張
訂正事項1、2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項3は不明瞭な記載を釈明するものである旨主張している。

2-3 訂正請求に対する請求人の主張
被請求人が請求した訂正は、不明瞭な記載の釈明であるとしても、特許請求の範囲の記載を何等限定するものではないので、訂正が容認されたとしても、本件各発明に対する特許は、無効とされるべきものである旨主張している。

2-4 当審の判断
2-4-1 訂正事項1について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、発明の構成として「前記凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられており、」との記載があり、同構成と関連する事項として、特許明細書の段落番号【0027】に、「そして、エバポレータ21のチューブ21fは、上記した送風空気の送風方向(図2、5の左側から右側に向かう方向)と同一方向に延びるように配置され、これにより凝縮水がチューブ21fの表面上を送風空気に押圧されてスムーズに傾斜前進端(図2、5の右側端部)へ移行するようにしてある。ここで、エバポレータ21で発生した凝縮水はエバポレータ21の下側(空気上流側)において、エバポレータ21の傾斜前進端の下方部位に設けた凝縮水排出パイプ21cから抜き出すようにしてあり、このパイプ21cは樹脂製の下ケース29a(下記図5参照)の最底部に一体成形されている。」と記載されている。
したがって、訂正事項1が請求項1に追記する「凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり」は、特許明細書に記載される事項である。
また、段落番号【0027】の記載中、「エバポレータ21の傾斜前進端の下方部位に設けた凝縮水排出パイプ21c」なる記載のみによっては、凝縮水排出パイプ21cのいかなる部分が同段落に記載される位置に設けられるのか明らかではないところ、「凝縮水は・・凝縮水排出パイプ21cから抜き出す」なる記載により、凝縮水排出パイプのケース29aから凝縮水を抜き出す部分が「・・の下方部位」なる位置に設けられることを明らかとしているので、「凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり」は、「・・の下方部位に設けた」なる記載を補い、その設けられるパイプの部分を特定するものである。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられており、」は、凝縮水排出パイプが冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられることをその構成として記載するものの、凝縮水排出パイプのいかなる部分がその特定された部位に設けられるのかまでは記載されないところ、「凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり、」と記載が加わることにより、凝縮水排出パイプの凝縮水を抜き出す部分に特定するものとなるので、訂正事項1は、特許請求の範囲に記載された構成である「凝縮水排出パイプは、・・設けられ」を、特許明細書に記載された同構成と関連する技術的事項により特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮に該当するものであり、新規事項を追加するものではなく、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-4-2 訂正事項2について
訂正前の特許請求の範囲の請求項2には、その構成として「前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられており、」と記載されており、凝縮水排出パイプのいかなる部分がその最底部に設けられるのかまでは記載されていない。そして、特許明細書の段落番号【0027】に、「そして、エバポレータ21のチューブ21fは、上記した送風空気の送風方向(図2、5の左側から右側に向かう方向)と同一方向に延びるように配置され、これにより凝縮水がチューブ21fの表面上を送風空気に押圧されてスムーズに傾斜前進端(図2、5の右側端部)へ移行するようにしてある。ここで、エバポレータ21で発生した凝縮水はエバポレータ21の下側(空気上流側)において、エバポレータ21の傾斜前進端の下方部位に設けた凝縮水排出パイプ21cから抜き出すようにしてあり、このパイプ21cは樹脂製の下ケース29a(下記図5参照)の最底部に一体成形されている。」と記載されるのであるから、2-4-1示したと同様の理由により、訂正事項2は、特許請求の範囲に記載された構成を、特許明細書に記載された同構成と関連する技術的事項により特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当するものであり、新規事項を追加するものではなく、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-4-3 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1,2の訂正により、明細書の記載が不明瞭となるところそれを明瞭とするものであるから、不明瞭な記載の釈明に該当し、新規事項を追加するものではなく、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-5 むすび
以上のとおり、訂正事項1〜3は、特許法第134条第2項各号に規定する事項を目的とし、同法第126条第2項及び同条第3項に規定する要件に適合するので、当該訂正を認める。

3. 本件発明
平成15年12月19日付け訂正請求は容認されたので、本件各発明は、訂正された特許請求の範囲に記載された以下の事項によりそれぞれ特定されるものである。
【請求項1】 空気を送風する送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器および吹出モード切替部を有するエアコンユニットを設けた自動車用空調装置において、
前記送風機ユニットは、車室内インストルメントパネルの中央部から車両幅方向にオフセット配置され、
前記エアコンユニットは、前記車室内インストルメントパネルの中央部に配置されるとともに、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器および前記吹出モード切替部を収納するケースを備え、
前記冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
前記吹出モード切替部は、前記加熱用熱交換器の空気下流側に配置され、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出を、車室内乗員の頭部に吹き出す上方吹出口と車室内乗員の足元に吹き出す下方吹出口との間で切り替え、
前記冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、
前記冷却用熱交換器は、水平面に対して若干傾斜するようにして配置されており、
前記凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられるとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり、
前記冷却用熱交換器は、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成されていることを特徴とする自動車用空調装置。

【請求項2】 空気を送風する送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器および吹出モード切替部を有するエアコンユニットを設けた自動車用空調装置において、
前記送風機ユニットは、車室内インストルメントパネルの中央部から車両幅方向にオフセット配置され、
前記エアコンユニットは、前記車室内インストルメントパネルの中央部に配置されるとともに、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器および前記吹出モード切替部を収納するケースを備え、
前記冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
前記吹出モード切替部は、前記加熱用熱交換器の空気下流側に配置され、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出を、車室内乗員の頭部に吹き出す上方吹出口と車室内乗員の足元に吹き出す下方吹出口との間で切り替え、
前記冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、
前記冷却用熱交換器は、水平面に対して若干傾斜するようにして配置されており、
前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり、
前記冷却用熱交換器は、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成されていることを特徴とする自動車用空調装置。

【請求項3】 前記冷却用熱交換器は、水平面に対して10°〜30°の微少角度の傾斜をもって斜め配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用空調装置。

【請求項4】 前記冷却用熱交換器におけるチューブが、前記送風機ユニットにより送風される空気の送風方向と同一方向に延びるように配置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の自動車用空調装置。

4. 審判請求の理由の概要
請求人は、
甲第1号証として、特開昭59-77918号公報、
甲第2号証として、特開平6-156049号公報、
甲第3号証の1として、英国特許第1490336号明細書、並びに、
甲第3号証の2として、甲第3号証の1の訳文、及び、
甲第4号証として、実開昭52-150063号公報
を提出し、甲第1号証に、
空気を送風するプロワの空気下流側に、エバポレータ、ヒータコアおよび吹出モード切替ダンパ群を有する空調用ユニットを設けた自動車用空調装置において、前記ブロワは、車室内の計器盤の中央付近に配置された前記空調用ユニットの側方に隣接設置され、前記空調用ユニットは、前記車室内の計器盤の中央付近に配置されるとともに、前記エバボレータ、前記ヒータコアおよび前記吹出モード切替ダンパ群を収納する空調用ケースを備え、前記吹出モード切替ダンパ群は、前記ヒータコアの空気下流側に配置され、このヒータコアで加熱されて温度調整された空気の吹出を、車室内乗員の頭部に吹き出すベント吹出口と車室内乗員の足元に吹き出す足元吹出口との間で切り替え、前記エバポレータの下側表面よりも下方における空調用ケースに、前記エバポレータで発生して受け皿に集められた凝縮水を排出するドレンホースを設け、前記エバポレータは、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成されている自動車用空調装置
の発明が記載され、甲第2号証に、
空気を送風するブロワの空気下流側に、蒸発器、熱交換器および吹出モード切替制御弁を有するハウジングを設けた自動車車室用の暖房・換気・空調装置において、前記蒸発器は、前記ハウジング内において、前記蒸発器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記熱交換器は、前記蒸発器の上方側に略水平に配置され、この蒸発器からの冷風を加熱し、前記蒸発器の下側表面よりも下方の空気上流側に前記蒸発器で凝集した水分を排出する排出管を設け、前記蒸発器は、水平面に対して若干傾斜するように配置されており、前記排出管は、前記蒸発器の傾斜前進端の下方部位で、ハウジングに連続するブロワのケースの最底部に設けられている自動車車室用の暖房・換気・空調装置
の発明が記載され、甲第3号証の1に、
ケーシング内において蒸発器を傾斜させてその下側に空間を設け、ファンによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方に導出するようにした車両用空気調節制御装置
の発明が記載され、甲第4号証に、
風の流路に沿って前後に並んだ出口タンク部と入口タンク部とを下方に開いたU字形に形成された複数の高平管部で連通し、相隣る扁平管部の間にフィンを挿入した積層型エバポレー夕において、前記扁平管部が、送風される空気の送風方向と同一方向に延びるように配置された積層型エバポレータ
の発明が記載されるとした上で、本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載される発明とを対比し、
相違点1-A
本件請求項1に係る発明は、冷却用熱交換器が、ケース内において,冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置、または、水平面に対して若干傾斜するようにして配置されており、送風機ユニットによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方に導出しているのに対して、甲第1号証記載の発明では略水平に配置されているが下側に空間が形成されていない点。
相違点1-B
本件請求項1に係る発明は、加熱用交換器が冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱するのに対し、甲第1号証記載の発明ではそのような構成を備えていない点。
相違点1-C
本件請求項1に係る発明は、凝縮水排出パイプが冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられているのに対し、甲第1号証記載の発明ではそのような構成を備えていない点。
で訂正前の本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とは相違し、凝縮水排水パイプが凝縮水を抜き出すことは自明の事項であるから、訂正により新たな相違点が構成されるものではないとして、以下の主張をなしている。
冷却用熱交換器を水平面に対して若干傾斜するようにして配置し、送風機ユニットによる送風空気が冷却用熱交換器下部の空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方に導出させることは、甲第3号証の1に記載されており、冷却用熱交換器の上方側に加熱用熱交換器を略水平に配置して冷却用熱交換器からの冷風を加熱するようにすることは、甲第2号証に記載されており、甲第2号証の発明における「排出管」及び「蒸発器」は請求項1に係る発明における「凝縮水排出パイプ」及び「冷却用熱交換器」に相当するのであるから、各相違点は、甲第2、3号証のものに基づいて、当業者が容易になし得たものである旨主張している。

また、本件請求項2に係る発明と甲第1号証に記載の発明とを対比し、上記相違点1-A、Bに加えて、
相違点2-D
本件請求項2に係る発明では凝縮水排出パイプがケースの最底部に設けられているのに対し、甲第1号証に記載の発明ではそのような構成を採用していない点
で訂正前の本件請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明とは相違し、凝縮水排水パイプが凝縮水を抜き出すことは自明の事項であるから、訂正により新たな相違点が構成されるものではないとして、以下の主張をなしている。
甲第2号証に記載の発明における排出管は本件請求項2に係る発明における凝縮水排出パイプに相当し、該排出管は本件請求項2に係る発明におけるケースに相当するハウジングに連続するブロワのケースの最底部に設けられているので、各相違点は、甲第2,3号証のものに基づいて、当業者が容易になし得たものである。
本件請求項3に係る発明にいう「冷却用熱交換器は、水平面に対して10°〜30°の微少角度の傾斜をもって斜めに配置されていること」は、単なる設計事項にすぎないとし、さらに、本件請求項4に係る発明にいう「冷却用熱交換器におけるチューブが、送風機ユニットにより送風される空気の送風方向と同一方向に延びるように配置されている」は、甲第4号証に記載されている旨主張している。
したがって、本件請求項1〜4に係る発明は、甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それら発明に対する特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものであるとしている。
さらに、甲第3号証の1のFig.2について、略水平にエバポレータを設けていないとしても、エバポレータの傾斜させてその下側に空間を設けており、略水平とするか傾斜させるかは、空調装置の寸法をどの方向を意識して設計するかにより定まる事項であり、入口3aを介して空気は略水平に導入されている旨主張している。

5. 当審で通知した無効理由の概要
当審で通知した無効理由の概要は、引用刊行物として、
英国特許第1490336号明細書(甲第3号証の1)
特開平6-156049号公報(甲第2号証)
実願昭55-48681号(実開昭56-149819号)のマイクロフィルム
実開昭52-150063号公報(甲第4号証)
を引用し、送風をオフセットすること以外の本件各請求項の発明の構成は、英国特許第1490336号明細書に実質的に記載または示唆され、本件請求項1でいう傾斜前進端の付近に排出パイプを設けることは文言上、特開平6-156049号公報にあり、最下部に排出パイプを設けることが実開昭56-149819号に記載されている。そして、特開平6-156049号公報及び実開昭56-149819号のものは、共に上昇する空気の流れに対して水平ないしやや傾斜した状態で各熱交換器が配置されている。そうであれば、英国特許第1490336号明細書のものを略水平ないしやや傾斜した状態にすることは容易になし得たことと認める。請求項4の限定については、無効審判請求の理由と同様の理由で実開昭52-150063号公報を引用すると共に請求項4の限定による効果が不明であるので、設計上の事項と認める。
したがって、本件各請求項に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとするものである。

6. 被請求人の主張概要
6-1 本件請求項1、2に係る発明の構成中、凝縮水排水パイプが設けられる旨の構成は、訂正により、凝縮水を抜き出す凝縮水排出パイプの開口が設けられたことが明らかとなったことを前提に、甲第1号証には、「51はエバポレータ12の凝縮水受け皿12dに集められた凝縮水を車外へ排出するドレンホースである。」と記載されているが、甲第1号証のようにエバポレータを立てて配置した空調装置においては、エバポレータで発生した凝縮水は、空気によってエバポレータの空気下流側の面まで押し出され、この下流側の面を伝わって下方へ落下、または、エバポレータの内部をそのまま下方へ落下するので、凝縮水を車外へ排出するドレンホースは、エバポレータの空気下流側に開口を配置する必要があるので、甲第1号証のドレンホース51は、エバポレータ12の空気下流側に配置されていると考えるとし、本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、請求人が指摘する相違点1-A、B及び
相違点1-c
本件特許の請求項1に係る発明では、凝縮水排出パイプが、冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられているのに対し、甲第1号証に記載の発明では、ドレンホース51の設置位置について明記がなく、一般論から考えるとエバポレータ12の空気下流側における凝縮水受け皿12dに設けられている点
相違点1-d
本件特許の請求項1に係る発明では、冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側におけるケースに、冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあるのに対し、甲第1号証に記載の発明では、ドレンホース51の設置位置について明記がなく、一般論から考えるとエバボレータ12の空気下流側における凝縮水受け皿12dに設けられていると思われる点
で両発明は相違し、相違点1-Bについては、甲第2号証に記載されているとしても、甲第3号証の1のものは、エバポレータを略水平に置くものではないから、
・エバポレータ2の下側に空間が設けられていること
・エバポレータ2による冷却空気を上方へ導出すること
を開示するものではなく、さらに、甲第3号証の1には、ファン3からの空気が入口3aに対してどのような方向でもって導入されるのかについて何ら記載されていないので、
・ファン3による送風空気が前記空間に降水平方向に導入されること
についても記載されていないとし、甲第3号証の1に相違点1-Aは記載されていない旨主張している。
また、甲第2号証に記載のものは、蒸発器28を若干傾斜させ、その下方にブロワ18を設け、ブロワからの空気が蒸発器28の下方空間に導入されるようになっているため、
・エバポレータ2の下側に空間が設けられること、および、
・エバポレータ2による冷却空気を上方へ導出すること
は記載されるとしても、甲第2号証の装置は、蒸発器28の下側空間に対してブロワ18からの空気が下から導入されるようになっており、送風機ユニットによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出すること
については、記載されていないので、甲第2号証にも上記相違点1-Aは記載されていない。
次に、相違点1-c、dについて、甲第2号証の排出管68は、蒸発器28の内部を蒸発器28の傾斜下端部側まで伝わる凝縮水、及び、ブロワ18からの風によって蒸発器28の上側表面まで押し上げられ、この上側表面に沿って傾斜下端部側まで伝わる凝縮水を排出するものであるため、甲第2号証のものは、蒸発器18の空気下流側に設けたものであり、甲第2号証には、相違点1-c、dの構成が記載されていない。
また、甲第3号証の1には、凝縮水排出パイプに相当すると思われる構成について記載されていない。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記各相違点の構成を備えることにより、通常はケース内側へ装着されるインシュレータを廃止することができるか、あるいは少なくとも簡素なインシュレータでケースへの露付きを防止できるものであり、また、冷却用熱交換器の下側空間への空気導入方向が略水平方向であるために、甲第2号証のように冷却用熱交換器の下側空間への空気導入方向が下から上のものに比べて、凝縮水を効率良く排出できるという効果を奏するものであるとして、本件請求項1に係る発明は、甲各号証のものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張している。

本件特許の請求項2に係る発明も、相違点1-A、c及び
相違点2-e
本件特許の請求項1に係る発明では、前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあるのに対し、甲第1号証に記載の発明では、ドレンホース51の設置位置について明記がなく、一般論から考えるとエバポレータ12の空気下流側における凝縮水受け皿12dに設けられていると思われる点
で甲第1号証に記載された発明と相違し、これら相違点は、各証拠に基づいて容易に発明することはできないものであり、さらに、本件請求項3及び請求項4に係る発明は、本件請求項1及び請求項2に係る発明が各証拠に基づいて容易に発明できたものでない以上、これらの請求項3及び請求項4に係る発明も各証拠に基づいて容易に発明できたものではない旨主張している。

6-2 当審で通知した無効理由に対して
英国特許第1490336号明細書の記載からは、2台のファンから、ケーシングの入口3aを通って空気が流れる旨の記載はあるが、2台のファンからの送風空気がどのように入口3aに向かうのかは明らかでなく、入口3aから蒸発器2に向けてどのように流れるかも記載されていないので、英国特許第1490336号明細書には、送風機ユニットを車室内インストルメントパネルの中央から車両幅方向にオフセットする点は記載されていない。英国特許第1490336号明細書のものは、蒸発器を約45度傾けたものであり、冷却用熱交換器を下側に空間を形成するように略水平に配置し、送風機ユニットによる送風空気が略水平に導入され、これを冷却して上方へ導出し、略水平に配置した加熱用熱交換器で加熱する点も記載されていない。
また、加熱用熱交換器を冷却用熱交換器の上方に略水平に配置する点、及び、
冷却用熱交換器の下側表面よりも下側の空気上流側におけるケースに、凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設ける点も記載されず、さらに、本件請求項1、2に係る発明は、その凝縮水排出パイプを設ける位置を特定し、凝縮水を抜き出すようにしたものであり、さらに、冷却用熱交換器は、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させたコルゲートフィンタイプであるのに対して、この点も開示されていない。
さらに、特開平6-156049号公報には、その凝縮水排出パイプを設ける位置としての開口を本件請求項1、2のものの位置とすることは示されず、
実願昭55-48681号(実開昭56-149819号)のマイクロフィルムのものは、オフセットを行うものではなく、凝縮水排出パイプを設ける位置としての開口を本件請求項1,2のものの位置とすることを導き出せるものではなく、実開昭52-150063号公報のものも、オフセットを行うものではなく、本件請求項1,2にいう空気流れに対してチューブの方向を何等開示しない。
また、実願昭55-48681号(実開昭56-149819号)のマイクロフィルムのものは、本件各請求項の発明とは車両の形式を異にするものであるとして、本件請求項1〜4に係る発明は、引用された文献に記載された発明から容易に発明をすることができたものではない旨主張している。

7. 当審の判断
7-1 請求人が主張する無効の理由について
請求人が主張する無効の理由は、甲第1号証に、
空気を送風するブロワの空気下流側に、エバポレータ、ヒータコアおよび吹出モード切替ダンパ群を有する空調用ユニットを設けた自動車用空調装置において、前記ブロワは、車室内の計器盤の中央付近に配置された前記空調用ユニットの側方に隣接設置され、前記空調用ユニットは、前記車室内の計器盤の中央付近に配置されるとともに、前記工バボレータ、前記ヒータコアおよび前記吹出モード切替ダンパ群を収納する空調用ケースを備え、前記吹出モード切替ダンパ群は、前記ヒータコアの空気下流側に配置され、このヒータコアで加熱されて温度調整された空気の吹出を、車室内乗員の頭部に吹き出すベント吹出口と車室内乗員の足元に吹き出す足元吹出口との間で切り替え、前記エバポレータの下側表面よりも下方における空調用ケースに、前記エバポレータで発生して受け皿に集められた凝縮水を排出するドレンホースを設け、前記エバポレータは、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成されている自動車用空調装置
が記載されていることを前提として、甲第1号証のものに、甲第2〜4号証に示されるものを適用して、本件各請求項に係る発明を容易に発明をすることができたとするものである。
したがって、まず、甲第1号証について検討すると、第1図に示されるようにブロワ、エバポレータ、ヒータコア及び吹き出し口を有する混合室を横方向に配置することを従来技術とし、エバポレータ及びヒータコアを垂直に立て並列配置することを開示するとともに、特許請求の範囲の請求項5に「前記ブロワを、・・前記空調ユニットの側方に隣接配置する・・」と記載している。一見すると、従来例の位置から変更がなされていないブロワはオフセットされて見え、「側方に隣接配置」なる記載があるものの、これは、従来より側方に隣接配置されたブロワを有する所謂横置きタイプにおいて、その下流の空気の流れに対してエバポレータ及びヒータコアを並列配置した結果であり、ブロワをオフセットすることを独立した技術として把握することはできないものである。
敢えていえば、ブロワーを側方に有することを前提としないものに対しても、空気の流れに対して、エバポレータとヒータコアの並列配置を示唆すること、及び、個別の構成要素において本件発明の構成の一部を開示することはあるとしても、ブロワーを側方に有することを前提としない配置に対して、ブロワをオフセットすることを開示するものではないので、本件請求項1、2にいう、「空気を送風する送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器および吹出モード切替部を有するエアコンユニットを設けた自動車用空調装置において、
・・
前記冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
・・ 」なる構成を有することにより、垂直方向の空気の流れに対して、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器を直列かつ垂直方向に配置されるものに対して、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器を並列に配置することを示すとしても、「ブロワは、車室内の計器盤の中央付近に配置された前記空調用ユニットの側方に隣接設置され、前記空調用ユニットは、前記車室内の計器盤の中央付近に配置される」ことを、甲第1号証が開示又は示唆するものではない。したがって、その配置に係る技術として、エバポレータ及びヒータコアの並列配置から独立して、ブロワの配置位置のみを把握して、ブロワーを側方に有することを前提としないものに対して、組み合わせるべきブロワの配置位置に係る技術を甲第1号証が開示するものではない。

そして、請求人が主張する理由は、甲第1号証に示される「ブロワを、・・前記空調ユニットの側方に隣接配置する」技術を、その前提とする配置が異なる甲第2、3号証の配置に係る技術と組み合わせることを前提としており、甲第1号証のものから、ブロワをオフセットする技術が独立して把握することを必要とするものであるが、上述のとおり、甲第1号証には、そのような技術開示はなされておらず、請求人が主張する意味での甲第1号証及び甲第2,3号証に係る配置に係る技術を組み合わせることを容易とすることはできない。
したがって、請求人の主張は採用できないので、以下、合議体が通知した無効理由の是非について検討する。

7-2 無効理由に引用された文献に記載される発明
7-2-1 英国特許第1490336号明細書について
無効理由に引用され、本件に係る出願の出願(遡及出願日平成6年9月22日)前に頒布された刊行物である「英国特許第1490336号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、
記載(1)
第1頁左欄第14〜19行に記載の「According to ・・・cooling device.」をみれば、「本発明によれば、加熱装置及び冷却装置からなる空気調節手段を備えている取り囲まれた運転室および/または客室を有する車両のための空気調節制御装置が提供され、」る旨記載されているので、刊行物1には、
1-1
車両のための空気調節制御装置
が記載されるものと認められ、
記載(2)
第2頁左欄第39〜57行に記載の「Referring to drawings, ・・ in detail.」をみれば、「図面を参照すると、図示した構造は、例えば、蒸気圧縮サイクルで動作する冷凍装置の部分を形成する蒸発器2が入っているケーシング1(図1及び図2)を備えており、前記冷凍装置は一般に公知の形態のものであり、したがってこれについて詳細な説明または図解は不要である。空気は2台のファン3(図4)からケーシング1の入口3aを通って吹き出し、蒸発器のフィン付き管系に接して流れるにつれて冷却される。冷却された空気は凝縮液トラップ5を通って蒸発器を離れるが、トラップ5の向こうにはヒータ4がケーシング1の内部に設置されている。ヒータは、車両エンジンの冷却水回路のような便宜の手段によって動作するが、この手段は、冷凍装置と同様に、通常の構成のものであり、したがってこれについては詳細な図解または説明を行わない。」旨記載されており、「空気は2台のファン3(図4)からケーシング1の入口3aを通って吹き出し、蒸発器のフィン付き管系に接して流れるにつれて冷却される」ことから、蒸発器はファンの下流にあることは明らかであり、記載(1)を併せみれば、刊行物1には、
1-2
空気を送風するファン3の空気下流側に、蒸発器およびヒータを有する空気調節手段
が記載されるものと認められ、
記載(3)
第2頁右欄第70〜76行に記載の「The distribution of ・・ onto the vehivcle.」をみれば、「上方レベル、すなわち、防風ガラスおよび面レベルへの排出空気の分布は、この排出空気の少なくとも主要部分を防風ガラスの法に向けるべきか、または車両に乗っているものの方に向けるべきかを決定できる排出モード・フラップ弁14により更に制御される。」旨記載されており、更に、
記載(4)
第2頁右欄第85〜91行に記載の「Discharge air ・・ central mounted passenger.」をみれば、「ケーシング1の下部にあるポートおよび/または12により、下部領域、すなわち、足レベルに向けられる排出空気は、中心取付けケーシングの両側で足下空間通気口を通って客室に入り、運転手および前部座席の乗客に到達することができる。」旨記載されているので、刊行物1の記載から、
1-3
蒸発器およびヒータの空気下流には、排出モードを切り替える部分を有すること
を把握することが可能であり、図面の記載をみれば、1-2、3の各構成がケーシング1に収納される旨図示されること、および、記載(4)に「中心取付ケーシング」とされることから、刊行物1には、
1-4
前記空気調節手段は、中心取付ケーシングに収納され、中心取付ケーシングは、蒸発器、ヒータおよび排出モードを切り替える部分を収納すること、
が記載されるものと認める。
また、記載(2)に「空気は2台のファン3(図4)からケーシング1の入口3aを通って吹き出し、」とされることおよび図面の記載から、
1-5
2台のファン3が設置されており、ファンは、中心取付ケーシングの側方の入口3aからケーシングに空気を吹き出させること、
を把握可能であり、更に、記載(2)および図面の記載から、刊行物1には、
1-6
蒸発器は、前記ケーシング内において、前記蒸発器の下側に空間が形成されるようにして約45度の傾きで配置され、前記ファンによる送風空気が前記空間に導入する入口が、ケーシングの略垂直な部分に開口され、この送風空気を冷却して導出し、ヒータは、前記蒸発器の空気流れ下流に45度より立った状態に傾いて配置され、この蒸発器からの冷風を加熱すること、
が記載されるものと認める。
記載(5)
第5頁左欄第25〜34行に記載の「(e) ・・heating device.」をみれば、「(e)前記管理装置は、前記加熱および冷却装置から前記車室内の上方レベルおよび下方レベルへのそれぞれの出口に導くようになっている複数の空気流導管に関連し、前記弁は、冷却装置からの流の可変の割合を加熱装置を迂回させるよう制御手段の設定値に従って調節可能であり、」とされており、この調節が温度を調節していることは自明の事項であるので、記載(3)、(4)および図面の記載を併せみれば、「可変の割合を加熱装置を迂回さ」せない空気流について、排出モードを切り替える部分は、ヒータの下流といえるから、刊行物1には、
1-7
排出モードを切り替える部分は、ヒータを迂回しない流においてヒータ空気下流側に配置され、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出を、上方レベルの出口と下方レベルの出口との間で切り替えること、
が記載されるものと認める。
また、前記記載(2)に「・・蒸発器のフィン付き管系・・」とされることより、刊行物1には、
1-8
蒸発器はフィン付き前記冷却用熱交換器から構成されていること、
が記載されるものと認める。
従って、1-1〜8を総合すると、刊行物1には、実質的に以下の発明が記載されるものと認める。
空気を送風するファンの空気下流側に、蒸発器、ヒータおよび排出モードを切り替える部分を有する空気調節手段)を設けた車両のための空気調節制御装置において、
前記ファンが、中心取付ケーシングの側方の入口からケーシングに空気を吹き出させるように設けられ、
前記空気調節手段のケーシングは、中心取付されており、蒸発器、ヒータおよび排出モードを切り替える部分を収納しており、
蒸発器は、前記ケーシング内において、前記蒸発器の下側に空間が形成されるようにして約45度の傾きで配置され、前記ファンによる送風空気が前記空間に導入する入口が、ケーシングの略垂直な部分に開口され、この送風空気を冷却して導出し、
ヒータは、前記蒸発器の空気流れ下流に45度より立った状態に傾いて配置され、この蒸発器からの冷風を加熱し、
排出モードを切り替える部分は、前記ヒータを迂回しない流においてヒータ空気下流側に配置され、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出を、上方レベルの出口と下方レベルの出口との間で切り替え、
蒸発器はフィン付き前記冷却用熱交換器から構成されている車両のための空気調節制御装置(以下、「刊行物1の発明」という。)。

7-2-2 実願昭55-48681号(実開昭56-149819号)のマイクロフィルムについて
無効理由に引用され、本件に係る出願の出願(遡及出願日平成6年9月22日)前に頒布された刊行物である「実願昭55-48681号(実開昭56-149819号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、明細書第2頁第5〜14行に、
「第1図に示すような空気調和装置においてケース1の内部には上部方向に沿つて順次吸気口2、エバポレータ3、ヒータコア4、エア吹出口5及び送風機6が設けられ、・・・送風機6のファン8が位置される。上記送風機6、エバポレータ3、ヒータコア4は一体にほぼ全体がケース1内に収納されたドリップパン9で被われ、このパン9の下端からはドレーンパイプ13が突出する。」
と記載され、ドレインパイプ13がエバポレータ3から滴下する凝縮水を排出するものであることは、刊行物2の残余の記載より明らかであるとともに、送風機6は、吸気口2よりケース1内のドリップパン9のエバポレータ3下部の空間に空気を導入していることは明らかであり、更に、エバポレータ3が空気を冷却し、その後、上方にあるヒータコア4が加熱することは、自明の事項であるので、刊行物2の記載から以下の発明を把握することができる。
空気を送風する送風機の空気下流側に、エバポレータ、ヒータコアおよびエア吹出口を設けた空気調和装置において、
エバポレータは、前記ドリップパン内において、前記エバポレータの下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機による送風空気により前記空間に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記ヒータコアは、前記エバポレータの上方側に略水平に配置され、このエバポレータからの冷風を加熱し、
前記エバポレータの下側表面よりも下方の空気上流側における前記ドリップパンに、前記エバポレータで発生した凝縮水を排出するドレーンパイプを設け、
前記ドレーンパイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記ドレーンパイプから抜き出すようにしてある空気調和装置(以下、「刊行物2の発明」という。)。

7-3 対比判断
7-3-1 請求項1に係る発明について
本件請求項1の発明と刊行物1の発明とを比較すると、刊行物1の発明の「車両のための空気調節制御装置」および「空気調節手段」はその発明の前提とする技術概念として、本件請求項1に係る発明の「自動車用空調装置」および「エアコンユニット」に相当し、刊行物1の発明の「ファン3」、「蒸発器」、「ヒータ」および「排出モードを切り替える部分」は、空調装置における機能の面からみて、本件請求項1に係る発明の「送風機ユニット」、「冷却用熱交換器」、「加熱用熱交換器」および「吹出モード切替部」に相当するものと認める。
また、自動車の空調装置のモードに係る周知の型式を考慮すれば、刊行物1の発明の「上方レベルの出口」および「下方レベルの出口」は、本件請求項1に係る発明の「車室内乗員の頭部に吹き出す上方吹出口」および「車室内乗員の足元に吹き出す下方吹出口」に相当するものと認められ、更に、刊行物1の発明のいう中央取付がそれにより、「両側で足下空間通気口を通って客室に入り、運転手および前部座席の乗客に到達することができる」ものであり、車室内の取付位置として、インストルメントパネル内に取り付けることは通常であることを考慮すると、本件請求項1に係る発明がいう「車室内インストルメントパネルの中央部に配置される」ことと格別差異は認められないので、両発明は、
空気を送風する送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器および吹出モード切替部を有するエアコンユニットを設けた自動車用空調装置において、
前記送風機ユニットが配置され、
前記エアコンユニットは、前記車室内インストルメントパネルの中央部に配置されるとともに、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器および前記吹出モード切替部を収納するケースを備え、
前記冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして配置され、前記送風機ユニットによる送風空気が前記空間に導入され、この送風空気を冷却して導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
前記吹出モード切替部は、前記加熱用熱交換器の空気下流側に配置され、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出を、車室内乗員の頭部に吹き出す上方吹出口と車室内乗員の足元に吹き出す下方吹出口との間で切り替え、
前記冷却用熱交換器は、傾斜して配置されており、
前記冷却用熱交換器は、フィンタイプにて構成されている
自動車用空調装置。
の発明である点で一致し、以下の4点で両発明は相違するものと認める。

相違点1
本件請求項1に係る発明の送風機ユニットは、車室内インストルメントパネルの中央部から車両幅方向にオフセット配置されるのに対して、刊行物1の発明は、ファンの位置について直接の記載はなく、中央取付されるケーシングの側方にファンからケーシングに空気を吹き出させる入口を有するものである点
相違点2
本件請求項1に係る発明の冷却用熱交換器は、略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気が冷却用熱交換器の下側の空間に略水平方向に導入され、この送風空気を上方へ導出し、加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置されるのに対して、刊行物1の発明の蒸発器は、約45度傾いて配置され、蒸発器の下側の空間に空間があり、入口はケーシングの垂直な部分にファンからの空気が導入される入口があり、この空気は蒸発器へ導出するが、導入・導出の方向は明らかではなく、ヒータは蒸発器の下流に傾いて配置される点
相違点3
本件請求項1に係る発明は、冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、前記冷却用熱交換器は、水平面に対して若干傾斜するようにして配置されており、前記凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられるとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあるのに対して、刊行物1の発明の蒸発器は、45度傾斜するものの凝縮水およびその排出に係る格別の構成が記載されていない点
相違点4
本件請求項1に係る発明の冷却用熱交換器は、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成されているのに対して、刊行物1の発明では、フィンタイプではあるもののコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプの開示はない点

以下、相違点について検討する。
まず、相違点1について検討すると、相違点1は、刊行物1のものにおいて、空気を導入する入口がある方向にファンを設けることに相当するものとなる。そして、一般に入口がある方向にその入口から導入させるための構成を配置することは通常の設計手法と認められる。
しかしながら、自動車のインストルメントパネルの限られた空間において、そのような部位に配置することが、ときとして他の構成部材との配置関係の干渉から困難となることはあり得ることが想定されるので更に検討すると、本件請求項1に係る発明は、そのような他の構成部材との配置関係を特定する構成またはインストルメントパネルの内部空間を拡大する構成を有するものではない。
従って、単に車幅方向にオフセットをいう相違点1は、当業者が適宜なし得た設計上の事項にすぎなものと認められ、格別の事項とは認められない。

次に、相違点2について検討する。
刊行物1の発明は、冷却用熱交換器に相当する蒸発器の下方の空間に空気を導入して、冷却加熱をおこなうものであり、冷却用熱交換器の下部にある空間に空気を導入し、冷却した空気を加熱用熱交換器で加熱する自動車の空調装置において、冷却用熱交換器を略水平に配置し、この送風空気を上方へ導出し、加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置されることは、取消理由に引用した特開平6-156049号公報、実願昭55-48681号(実開昭56-149819号)のマイクロフィルムにもみられるように周知の配置に係る一型式と認められるとともに、周知の配置において外部から導入された空気は、下から上に冷却、次いで加熱されるように流されるものであるから、相違点2は、周知の技術に基づいて当業者が容易になし得たものと認められるので、格別の事項とは認められない。

更に、相違点3について検討する。
刊行物2の発明の「送風機6」、「エバポレータ3」および「ヒータコア4」は、その空調装置における機能からみて、本件請求項1に係る発明の「送風機ユニット」、「冷却用熱交換器」および「加熱用熱交換器」に相当し、刊行物2の発明の「ドリップパンを有するケース」および「ドレーンパイプ13」は、内部に冷却加熱のための構成を収納する点および凝縮水に対する機能からみて、本件請求項1に係る発明の「ケース」および「凝縮水排水パイプ」に相当するものと認められるとともに、刊行物2の発明の「エア吹出口」は、その設置位置および切り替え機能はさておいて、冷却加熱された空気を吹き出す口である点においては、本件請求項1に係る発明の「上方吹出口」および「下方吹出口」と格別の差異を認められないので、刊行物2を本件請求項1の記載に合わせて記載すると、
送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、ヒータコア4および吹出口5を設けた空調装置において、
冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気により前記空間に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
前記冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、
前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてある
空気調和装置
となる。
被請求人が主張するように、刊行物2の発明は、その前提とする車両を異にし、そのままインストルメントパネルに配置可能な構成ではないとしても、この被請求人の主張は、刊行物2をインストルメントパネルへの配置に係る技術の開示しないことをいう以上のものではなく、空気調和装置に係る技術である刊行物2に係る技術を刊行物1の発明の空調装置に適用すること一切否定するものではない。
そして、刊行物1の発明は、蒸発器を有するものであり、蒸発器が凝縮水を発生しそれを排出することは、その記載の有無に係わらず当然の事項であり、冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにすることは、刊行物2の発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められる。
また、刊行物2の発明には、冷却用熱交換器を略水平とすることが示されており、刊行物1の発明には、冷却用熱交換器を約45度の傾けて配置することが示されており、更に、取消理由に引用した特開平6-156049号公報には、若干傾斜させるものが示されており、相違点2の検討に示した冷却用熱交換器を略水平に配置する周知の配置の採用にあたり、若干冷却器を傾斜させることは、その事項のみにおいては単なる設計上の事項と認められるところ、相違点3が、前記凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられることを特定しているので、更に検討すると、特開平6-156049号公報のもののような凝縮水の排出においては、傾斜の方向と凝縮水排出パイプの開口の位置関係に一定の技術的意味があるとしても、相違点3においては、冷却用熱交換器の下方のケースから凝縮水を排出するように凝縮水排出パイプを設けるものであるから、冷却用熱交換器の傾斜前進端から凝縮水が滴下するとしてもケースの底の形状に応じて低部へ流れるものとなり、凝縮水排出パイプを冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けることによっても、ドリップパンの底の最低部にドレインパイプを設けることを示す刊行物2の発明以上の格別の効果を奏するものとは認められないので、この点は、単なる設計上の事項にすぎないものと認める。
従って、相違点3は、刊行物1の発明に刊行物2の発明を適用して、当業者が容易になし得たものであって、格別の事項とは認められない。

最後の相違点4について検討する。
冷却用熱交換器として、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプは、特段の例示を待つまでもなく周知の型式であり、相違点4は、格別の事項とは認められない。

そして、本件請求項1に係る発明が奏する効果は、刊行物1、2のものおよび周知の技術から予測される以上の格別のものとは認められない。

従って、本件請求項1に係る発明は、刊行物1、2のものおよび周知の技術に基づいて当業者容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7-3-2 請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明と刊行物1の発明とを比較すると、上記相違点1、2、4に加えて、以下の点で相違し、残余の点で両発明は一致するものと認める。
相違点5
本件請求項1に係る発明は、冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、前記冷却用熱交換器は、水平面に対して若干傾斜するようにして配置されており、前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあのに対して、刊行物1の発明の蒸発器は、45度傾斜するものであり、凝縮水およびその排出に係る格別の構成が記載されていない点
そして、7-3-1に検討したとおり、相違点1、2、4は格別の事項とは認められないので、以下、相違点5について検討する。
刊行物2の発明を本件請求項2の記載に合わせて記載すると、
送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、ヒータコア4および吹出口5を設けた空調装置において、
冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気により前記空間に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
前記冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、
前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてある空気調和装置
となる。
従って、冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すことは、刊行物2に記載される事項である。加えて、刊行物2の発明には、冷却用熱交換器を略水平とすることが示されており、刊行物1の発明には、冷却用熱交換器を約45度傾けて配置することが示されており、更に、取消理由に引用した特開平7-3156049号公報には、若干傾斜させるものが示されており、相違点2の検討に示した周知の冷却用熱交換器の略水平な配置の採用にあたり、若干冷却器を傾斜させることは、単なる設計上の事項と認められるので、相違点5は、刊行物1の発明に刊行物2の発明を適用して、当業者が容易になし得たものであって、格別の事項とは認められない。
そして、本件請求項2に係る発明が奏する効果は、刊行物1、2のものおよび周知の技術から予測される以上の格別のものとは認められない。

従って、本件請求項2に係る発明は、刊行物1、2のものおよび周知の技術に基づいて当業者容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7-3-3 請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明は、選択的に請求項2の記載を引用して特定されるものであるから、本件請求項3に係る発明と刊行物1の発明とを比較すると、本件請求項3に係る発明は、7-3-1、2に検討したとおり格別の事項とは認められない相違点1、2、4、5に加えて、以下の点で刊行物1の発明と相違し、残余の点で両発明は一致するものと認める。
相違点6
本件請求項3に係る発明の冷却用熱交換器は、水平面に対して10°〜30°の微少角度の傾斜をもって斜め配置されるのに対して、刊行物1の発明では約45度傾いて配置される点
しかしながら、傾斜角度を10°〜30°とする点は、当業者が適宜設定し得た設計上の事項にすぎず、相違点6は、格別の事項とは認められない。
従って、本件請求項3に係る発明は、刊行物1、2のものおよび周知の技術に基づいて当業者容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7-3-4 請求項4に係る発明について、
本件請求項4に係る発明は、選択的に請求項2の記載を引用して特定されるものであるから、本件請求項4に係る発明と刊行物1の発明とを比較すると、本件請求項4に係る発明は、7-3-1、2に検討したとおり格別の事項とは認められない相違点1、2、5に加えて、以下の点で刊行物1の発明と相違し、残余の点で両発明は一致するものと認める。
相違点7
本件請求項4に係る発明の冷却用熱交換器は、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成され、冷却用熱交換器におけるチューブが、送風機ユニットにより送風される空気の送風方向と同一方向に延びるように配置されているのに対して、刊行物1の発明では、フィンタイプではあるもののコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプの開示はなく、送風の方向と、チューブの方向との関係は示されていない点

しかしながら、冷却用熱交換器として、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプは、特段の例示を待つまでもなく周知の型式であり、刊行物1の発明へ周知のコルゲートフィンタイプを採用することは格別の事項とは認められず、通常チューブは、チューブの部分での空気の送風方向と直交する方向に配置されるものであるところ、相違点7のいう方向は、送風ユニットからの方向をいうものであり、刊行物1の発明が側方に空気の入口を有するものであることから、この方向は、通常選択される方向の一つであり、この方向の選択は、当業者が必要に応じて適宜なし得た設計上の事項にすぎない。
よって、相違点7は、格別の事項とは認められない。
そして、本件請求項4に係る発明が奏する効果は、刊行物1、2のものおよび周知の技術から予測される以上の格別のものとは認められない。
従って、本件請求項4に係る発明は、刊行物1、2のものおよび周知の技術に基づいて当業者容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7. むすび
以上説示の通り、本件請求項1〜4に係る発明に対する特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動車用空調装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 空気を送風する送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器および吹出モード切替部を有するエアコンユニットを設けた自動車用空調装置において、
前記送風機ユニットは、車室内インストルメントパネルの中央部から車両幅方向にオフセット配置され、
前記エアコンユニットは、前記車室内インストルメントパネルの中央部に配置されるとともに、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器および前記吹出モード切替部を収納するケースを備え、
前記冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
前記吹出モード切替部は、前記加熱用熱交換器の空気下流側に配置され、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出を、車室内乗員の頭部に吹き出す上方吹出口と車室内乗員の足元に吹き出す下方吹出口との間で切り替え、
前記冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、
前記冷却用熱交換器は、水平面に対して若干傾斜するようにして配置されており、
前記凝縮水排出パイプは、前記冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位に設けられるとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり、
前記冷却用熱交換器は、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成されていることを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項2】 空気を送風する送風機ユニットの空気下流側に、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器および吹出モード切替部を有するエアコンユニットを設けた自動車用空調装置において、
前記送風機ユニットは、車室内インストルメントパネルの中央部から車両幅方向にオフセット配置され、
前記エアコンユニットは、前記車室内インストルメントパネルの中央部に配置されるとともに、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器および前記吹出モード切替部を収納するケースを備え、
前記冷却用熱交換器は、前記ケース内において、前記冷却用熱交換器の下側に空間が形成されるようにして略水平に配置され、前記送風機ユニットによる送風空気が前記空間に略水平方向に導入され、この送風空気を冷却して上方へ導出し、
前記加熱用熱交換器は、前記冷却用熱交換器の上方側に略水平に配置され、この冷却用熱交換器からの冷風を加熱し、
前記吹出モード切替部は、前記加熱用熱交換器の空気下流側に配置され、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出を、車室内乗員の頭部に吹き出す上方吹出口と車室内乗員の足元に吹き出す下方吹出口との間で切り替え、
前記冷却用熱交換器の下側表面よりも下方の空気上流側における前記ケースに、前記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、
前記冷却用熱交換器は、水平面に対して若干傾斜するようにして配置されており、
前記凝縮水排出パイプは、前記ケースの最底部に設けられているとともに、前記凝縮水を前記凝縮水排出パイプから抜き出すようにしてあり、
前記冷却用熱交換器は、複数のチューブ間にコルゲートフィンを介在させてなるコルゲートフィンタイプにて構成されていることを特徴とする自動車用空調装置。
【請求項3】 前記冷却用熱交換器は、水平面に対して10°〜30°の微小角度の傾斜をもって斜め配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用空調装置。
【請求項4】 前記冷却用熱交換器におけるチューブが、前記送風機ユニットにより送風される空気の送風方向と同一方向に延びるように配置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の自動車用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用空調装置に関するもので、特に冷却用熱交換器を略水平に近い角度で設置したエアコンユニットの配置レイアウトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より一般的に供されている自動車用エアコンユニットは、一般に横置きタイプと称されているものが多く採用されている。このタイプのものは図24に見られるごとく送風機ユニット1、クーラユニット2a、ヒータユニット2bの各ユニットを車両横方向(幅方向)に一直線に配置されている。
【0003】
その自動車への搭載状態は図25のごとくであって、自動車のインストルメントパネルP内空間の車両幅方向のほぼ半分(助手席側前方部分)にわたって前記各ユニット1、2a、2bが配置されており、その結果前記各ユニット1、2a、2bはインストルメントパネルP内空間の非常に大きな部分を占有することになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年は、車両のエレクトロニクス化に伴う車載コンピュータの増加・大型化、CDチェンジャーの車室内設置、助手席エアバックの装着率アップ等により、インストルメントパネルP内のエアコンユニット(1、2a、2b)搭載スペースが縮小されてきているので、上記横置きタイプのエアコンユニットは車両への搭載が次第に困難となってきている。
【0005】
また、図26のように、クーラ用エバポレータ21とヒータコア22を車両前後方向に配置して一体化したエアコンユニット2を車両中央部に設置し、送風機1のみを車両中央部から幅方向にオフセットして配置したセンタ置きタイプの構造も考えられている。このセンタ置きタイプのレイアウトによれば、クーラ用エバポレータ21とヒータコア22を車両中央部に集中して設置しているので、インストルメントパネルP内でのスペース確保が容易となるが、その反面、車両前後方向の狭いスペース内に空調用熱交換器(エバポレータ21、ヒータコア22)をほぼ垂直に立てて配置しているため、エバポレータ21の車両前方側に送風機1からの送風空気を導入する送風ダクト部を設置する必要が生じる。同様に、ヒータコア22の車両後方側にも、ヒータコア22を通過した送風空気が流れる送風ダクト部が必要となる。
【0006】
このように、エバポレータ21とヒータコア22の前後に送風ダクト部が必要となるため、車両前後方向の寸法が大きくなってしまうという問題がある。また、車両前後方向の寸法が大きくなってしまうため、ヒータコア22の車両後方側に、吹出モードを切り替える吹出モード切替部を設置することがスペース的に困難となることが多い。そのため、吹出モード切替部をヒータコア22の上方部に設置するという配置を採用する場合があるが、この場合には、垂直に立てたヒータコア22の上方部へさらに吹出モード切替部を設置しているので、高さ方向の寸法が大になってしまうという問題がある。
【0007】
以上のことから、センタ置きタイプのレイアウトにおいても、車両への搭載が困難となり、汎用性に欠けるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記点に鑑み、スペース効率を追求した熱交換器レイアウトとすることにより、狭隘な車室内スペースに対しても搭載が容易となる自動車用空調装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
また、本発明は、エアコンユニットのケースへの露付きを減少させることを別の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1〜4記載の発明では、冷却用熱交換器および加熱用熱交換器をともに略水平方向に配置して、上下方向に重ねるレイアウトにしているため、上下方向の熱交換器部スペースを非常に小さくでき、その結果、従来のセンタ置きユニットよりも高さ寸法を充分小さくすることができる。
【0011】
しかも、上記のごとく上下方向の熱交換器部スペースを非常に小さくできるため、加熱用熱交換器の上方に、この加熱用熱交換器で加熱されて温度調整された空気の吹出方向を切り替える吹出モード切替部を配置しても、空調装置全体としての上下方向寸法を小さく抑えることができる。
【0012】
以上のことから、本発明装置は、車両への搭載が容易となり、その実用上の効果は大である。
【0013】
更に本発明では、冷却用熱交換器の下側表面よりも下方におけるケースに、冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排出する凝縮水排出パイプを設け、この凝縮水排出パイプを、冷却用熱交換器の傾斜前進端の下方部位あるいはケースの最底部に設けるとともに、凝縮水をこの凝縮水排出パイプから抜き出す構成としているため、冷却用熱交換器にて発生した凝縮水は下方へ流れ落ち、上記凝縮水排出パイプから外部へ排出される。このとき、上記落下凝縮水は冷却前の温度の高い送風空気で温められるため、ケースの外表面温度はさほど低下しない。従って、このケースへの露付きが大幅に減少するか、あるいは露付きがなくなるため、通常はケース内側へ装着されるべきインシュレータ(断熱材)を廃止することができ、一層のコストダウンを図ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1〜図5は第1実施形態を示すもので、図3、4において、自動車のエンジンルームAと車室Bは、仕切り板C(一般にファイヤウォールと称され、鉄板製である)にて区画されている。そして、空調装置の送風機ユニット1は車室B内のインストルメントパネルPの中央部から車両幅方向にオフセット(右ハンドル車では車両幅方向の左側にオフセット)して配置されている。
【0016】
上記送風機ユニット1は、その上方部に車室内空気と車室外空気とを切替導入する内外気切替箱11を有し、この内外気切替箱11には外気導入口12と内気導入口13が開口しており、その内部にはこれら両導入口12、13を開閉する内外気切替ドア(図示せず)が設置されている。内外気切替箱11の下方には、図5に示すように、送風機14が配置されており、この送風機14は遠心式多翼ファン(シロッコファン)15、ファン駆動用モータ16、およびスクロールケーシング17から構成されている。
【0017】
ファン15の回転軸は略上下方向に向くように配置され、このファン15の回転により内外気切替箱11からスクロールケーシング17上部のベルマウス状吸入口18(図5参照)を通して吸入された空気はスクロールケーシング17の出口に向かって略水平方向に(図3から理解されるように車室Bの左側から右側へ向かって)送風されるようになっている。
【0018】
一方、後述の空調用熱交換器を内蔵するエアコンユニット2は車室B内のインストルメントパネルPの中央部に配置されている。このエアコンユニット2において、冷凍サイクルのエバポレータ(冷却用熱交換器)21は略水平状態に設置して、その下側より前記送風機ユニット1からの送風空気が流入するようにしてある。
【0019】
そして、エバポレータ21の空気下流側(車室内上側)へ略水平状態にしてヒータコア(加熱用熱交換器)22が設置してあり、このヒータコア22は、エンジン冷却水(温水)を熱源とするもので、ヒータコア22の車室内上方部(空気下流側)に吹出モード切替部23が配置してある。ここで、本例では、空調の温度制御手段として、ヒータコア22への温水流量を制御する温水制御弁24(図5参照)を有しており、この温水制御弁24によりヒータコア22への温水流量を制御して、ヒータコア22による空気加熱量を調整して車室内への吹出空気温度を制御するようにしてある。
【0020】
上記吹出モード切替部23は車室内への吹出モードを切り替えるためのもので、車室内の乗員頭部に向けて空気を吹き出すセンターフェイス(上方)吹出口(図示せず)に連通するセンターフェイス吹出空気通路25およびサイドフェイス吹出口(図示せず)に連通するサイドフェイス吹出空気通路26と、車室内の乗員足元に向けて空気を吹き出すフット(足元)吹出口(図示せず)に連通するフット吹出空気通路27と、窓ガラスに向けて空気を吹き出すデフロスタ吹出口(図示せず)に連通するデフロスタ吹出空気通路28とを有し、これらの複数の吹出空気通路25、26、27、28をドア手段(板状ドア、円弧状外周面を持つロータリドア、フィルム状ドア)により切替開閉するものである。
【0021】
この吹出モード切替部23は公知の構成でよいので、詳細な説明は省略するが、本例では、図6に示すように、吹出モード切替部23を円筒状に形成して、その内部に、円筒状外周面に空気通路開口を開けたロータリドア23aを回転可能に設置し、このロータリドア23aの回転位置の選択により前記複数の吹出空気通路25、26、27、28を切替開閉して、周知のフェイス吹出モード、バイレベル吹出モード、フット吹出モード、デフロスタ吹出モード、フット・デフロスタ併用吹出モード等の複数の吹出モードを選択できるようにしてある。
【0022】
上記エバポレータ21とヒータコア22は、図6に示すように、車室B側で仕切り板Cに隣接して配置され、ヒータコア22に温水を入出させる温水配管22aと、エバポレータ21に冷媒を入出させる冷媒配管21aは、ともにエンジンルームA側に配置され、この温水配管22aと冷媒配管21aは、車両への組付け時に前記仕切り板C(ファイヤウォール)を貫通してエンジンルームAの方向へ突出するように設けられている。
【0023】
従って、自動車用空調装置を車両に搭載する際に、温水配管22aおよび冷媒配管21aへの配管結合作業は、ともにエンジンルームAで行うだけでよく、車室B側では一切行う必要がない。インストルメントパネルP部分の特に狭隘なスペースで配管結合作業を行う必要がなくなるため、配管結合の作業性を向上できる。
【0024】
図6において、仕切り板Cの配管通し穴(図示せず)はゴム等の弾性材で形成されたシール部材(グロメット)Gにてシールするようになっている。また、エバポレータ21と、前記冷媒配管21aとの間には、冷媒を減圧し膨張させる減圧手段としての温度作動式膨張弁21bが配設されている。また、エバポレータ21は、その冷却作用により発生する凝縮水の排出性を良好にするため、水平面より若干傾斜して配置してある。すなわち、図2に示すように、エバポレータ21の下側に前記送風機14により送風される送風空気の送風前方側(図2の右方向)に向かって、エバポレータ21が下方へ傾斜するように配置されている。
【0025】
ここで、エバポレータ21の傾斜角度θは、後述の図7(a)に示すように10〜30°の範囲としてエバポレータ21自身の保水量が少なくなるようにするのが好ましい。また、エバポレータ21は例えば、図7(b)に示すような構造であって、アルミニュウム等の熱伝導性、耐食性に優れた金属の薄板を図示上下方向に積層してチューブ21fを構成するとともに、このチューブ21fの間にコルゲートフィン21gを介在して、コア部21hを構成する積層型のものである。
【0026】
そして、このコア部21hの一端側に、多数のチューブ21fへの冷媒の分配、および多数のチューブ21fからの冷媒の集合を行うタンク部21eを配置し、コア部21hの他端側でチューブ21f内の冷媒の流れをUターン(矢印イ参照)させるようになっている。タンク部21eには、膨張弁21bで減圧された気液2相冷媒が流入する冷媒入口21i、およびコア部21hで蒸発したガス冷媒が流出する冷媒出口21jが設けられている。
【0027】
そして、エバポレータ21のチューブ21fは、上記した送風空気の送風方向(図2、5の左側から右側に向かう方向)と同一方向に延びるように配置され、これにより凝縮水がチューブ21fの表面上を送風空気に押圧されてスムーズに傾斜前進端(図2、5の右側端部)へ移行するようにしてある。ここで、エバポレータ21で発生した凝縮水はエバポレータ21の下側(空気上流側)において、エバポレータ21の傾斜前進端の下方部位に入口を設けた凝縮水排出パイプ21cから抜き出すようにしてあり、このパイプ21cは樹脂製の下ケース29a(下記図5参照)の最底部に一体成形されている。
【0028】
図5は本実施形態装置の組付構造を示すもので、送風機14のファン15はモータ16の回転軸16aに一体に結合された後、樹脂製の下ケース29aに一体成形されたスクロールケーシング17内に配置され、そしてモータ16はそのフランジ部16bにてスクロールケーシング17に取り付けられ固定されている。エバポレータ21は下ケース29aの取付面の上に載置され、その上方から樹脂製の中ケース29bで挟み込むことによりこの両ケース29a、29bの間に固定されるようになっている。
【0029】
中ケース29bに一体成形されたスクロールケーシング17の上蓋部17aには前述したベルマウス状吸入口18が開口しており、そしてこのベルマウス状吸入口18の上方に内外気切替箱11が配置され、一体に取り付けられる。ヒータコア22と温水制御弁24は、中ケース29bの取付面の上に載置され、その上方から樹脂製の上ケース29cで挟み込むことによりこの両ケース29b、29cの間に固定されるようになっている。
【0030】
上ケース29cには、前述した吹出モード切替部23、センターフェイス吹出空気通路25およびサイドフェイス吹出空気通路26と、フット吹出空気通路27と、デフロスタ吹出空気通路28が設けられ、さらにロータリドア23aが内蔵されている。前記各ケース29a、29b、29c、および内外気切替箱11の結合は、周知の弾力性を持った金属クリップ、あるいはねじ等を使用して、脱着可能になっている。
【0031】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。
【0032】
図2において内外気切替箱11から流入した空気は送風機ファン15によってスクロールケーシング17内を略水平方向に流れ、エバポレータ21の下部へ流入する。そして、送風空気はエバポレータ21で除湿・冷却された後、さらに上方へ流れ、ヒータコア22へ導入され、ここで加熱される。
【0033】
本例の場合には、空調温度制御手段として、ヒータコア22への温水量を制御する温水制御弁24を用いており、この温水制御弁24にて温水流量を調節することによって所望の吹出空気温度を得るいわゆる流調リヒート方式を採用している。そして、ヒータコア22で所望温度まで再加熱された空調空気は上ケース部の吹出モード切替部23のロータリドア23aによって所定の吹出口へ分配される。
【0034】
本実施形態では、前述した構成とすることにより、次のような効果が得られる。エバポレータ21およびヒータコア22をともに略水平方向に配置して、上下方向に重ねるレイアウトにしているため、上下方向の熱交換器部スペースを非常に小さくでき、その結果従来のセンタ置きユニットよりも高さ寸法を充分小さくすることができる。従って、車室B内のセンタトンネルを高くすることが可能となり、車両の対衝突安全性が向上する。
【0035】
熱交換器配管21a、22aを直接エンジンルームAへ突出させる構成であるから、車室B内でのサブ配管が不要となり、大幅なコストダウン、配管結合作業の簡略化を実現できる。図5に示すように、空調装置のほとんどの部品が上下方向組付けの形状となっているので、量産時には下から上へ積み上げる、一方向組付によって空調装置の組付けが可能となり、組付けの工数が低減できる。
【0036】
エバポレータ21をその下方へ送風されてくる送風空気の送風方向の前方側へ向かって下方に傾斜しており、またエバポレータ21のチューブ21fも前記送風方向(図2、5の左右方向)に配列してあるので、このチューブ21fの表面上を凝縮水が送風空気に押圧されて、スムーズにエバポレータ21の傾斜前進端(図2、5の右側端)に集まり、落下する。
【0037】
そして、エバポレータ21の傾斜前進端の下方に位置する凝縮水排出パイプ21cから外部へ凝縮水が排出される。そのため、凝縮水をエバポレータ21からスムーズに排出できる。エバポレータ21の凝縮水が下方の空気上流側へ流れ落ちるので、その落下凝縮水は冷却前の温度の高い送風空気で温められる。従って、下ケース29aの外表面温度はさほど低下しないので、この下ケース29aへの露付きが大幅に減少するか、あるいは露付きがなくなるので、通常はケース内側へ装着されるべきインシュレータ(断熱材)を廃止することができ、一層のコストダウンを図ることができる。
【0038】
但し、エバポレータ21の設置時の傾斜角度θによって保水量が図7(a)のごとく変化する。従って、図7(a)に示すごとく、設置角度θは10〜30°としてエバポレータ21への保水量を少なくしておくことも重要である。右ハンドル車と左ハンドル車のいずれにおいても、通常エンジンルームAにおけるエンジンと空調用圧縮機の搭載位置は同一である。そのため、仕切り板Cに開ける配管通し穴は、右ハンドル車でも左ハンドル車でも同一位置に開けることが望まれる。
【0039】
この要求に対して、本実施形態によれば、図8、9に示すように、送風機14のオフセット位置を左右逆転するとともに、エバポレータ21の冷媒配管21aの取り出し位置(エバポレータ21のタンク21eの位置)を左右逆転し、同様にヒータコア22でも温水制御弁24と温水配管22aの取り出し位置を左右逆転することにより、上記要求を容易に満足できる。
【0040】
(第2実施形態)
図10は、温水制御弁24を用いた流調リヒート方式のかわりに、温度制御手段としてエアミックスドア30を用い、吹出モード切替部23の通路切替手段として、ロータリドア23aのかわりに板ドア23b、23cを用いたものである。但し、略水平配置のエバポレータ21下部から送風空気を導入し、略水平に配置したヒータコア22へと流すようにした点は第1実施形態と同じであり、同様の利点を有している。また、エアミックス方式の温度制御により低温域から高温域までの幅広い温度範囲において吹出空気温度を良好に制御できる利点がある。
【0041】
しかし、この第2実施形態の構成によると、エアミックスドア30の使用等によりユニット上下方向の寸法が第1実施形態に比してやや増加し、不利となる。
【0042】
(第3実施形態)
上述した第1、第2実施形態では、エバポレータ21をその下方へ送風されてくる送風空気の送風方向の前方側へ向かって下方に傾斜するように配置しているから、図12に示すように、エバポレータ21からヒータコア22へ送風空気が矢印Dのごとく斜めに流入するので、ヒータコア22における左右(車両幅方向)の風速分布Eにバラツキが発生する。すなわち、エバポレータ21の送風方向の前方側(図12の右側)になるほど、ヒータコア22通過空気の風速が大きくなるという風速分布が発生する。
【0043】
しかも、この風速分布のバラツキによりヒータコア22における左右各部位での熱交換量にバラツキが発生するので、吹出温度のバラツキも発生する。この風速分布および吹出温度のバラツキにより自動車用空調装置の空調フィーリングが車室の左右で異なったものとなり、空調フィーリング悪化の原因となることが分かった。
【0044】
そこで、第3実施形態では図13に示すように、エバポレータ21とヒータコア22との間の空気流路に、複数の配風板31を配設して、ヒータコア22における風速分布を均一化するようにしている。この配風板31の配置構造について具体的に説明すると、この配風板31はヒータコア22の空気流入面に対して垂直となるよう配列してあり、かつ複数(本例では3枚)の配風板31相互の間隔は等間隔に設定してある。この配風板31は、エアコンユニット2の樹脂製のケース、具体的には中ケース29bに一体成形で形成されている。従って、配風板31は簡単に低コストで形成できる。
【0045】
第3実施形態では、エバポレータ21を通過した送風空気がエバポレータ21出口直後に位置する配風板31により強制的に案内されて、ヒータコア22の空気流入面に対して垂直に流入する。これにより、ヒータコア22の吹出風速分布のバラツキを著しく改善でき、吹出風速分布を図13のFに示すように均一化できる。
【0046】
図14は実験に基づく具体的数値性能例を示すもので、ヒータコア22の左右方向の幅を220mmとし、送風量を480m3/hとしたとき、配風板31のない場合は吹出風速比が0.60であったものを、第3実施形態のものによれば、吹出風速比を0.85まで改善できた。ここで、第3実施形態のものでは、配風板31を3枚用いてヒータコア22の空気流入側の流路を4等分に分割した場合について実験をした。
【0047】
なお、吹出風速比は、ヒータコア22の吹出風速のうち、最大風速(Vmax)と最小風速(Vmin)との比である。
【0048】
(第4実施形態)
第4実施形態は、エバポレータ21に流入する空気の風速分布の均一化とエバポレータ21で発生する凝縮水の排水確保との両立を図ることを意図したもので、図15に示す。
【0049】
送風機ユニット1の送風機14から送風されてくる空気はエバポレータ21の下方部において略直角方向に方向転換して上方へと流れるので、エバポレータ21のうち、送風方向前方側(図15の右側)の風速分布が高くなる。そこで、エバポレータ21の下方部に位置する樹脂製のケース、具体的には下ケース29aに階段状の凹凸面32を一体成形して、エバポレータ21の風速分布の均一化を図るようにしている。
【0050】
この階段状の凹凸面32は、送風機14からの送風空気の流れ方向(図15(b)の矢印G方向)に対して直角方向(車両前後方向)に延びるように形成されている。この階段状の凹凸面32は、図15の例では、階段の頂部が2段に形成されており、この凹凸面32は空気流れの上流側に急傾斜面32aを形成し、空気流れの下流側にゆるやかな傾斜面32bを形成している。
【0051】
また、凹凸面32の階段状の頂部と底部との段差は、本発明者の実験検討によれば、15〜20mm程度の大きさに設定することが風速分布の均一化のために好ましいことが分かった。
【0052】
ところで、図16(a)の例のように、下ケース29aの奥行方向(車両前後方向)の全長にわたって、階段状の凹凸面32′を形成すると、階段状の凹凸面32′の底部に凝縮水Hが溜まることになる。送風機14の作動中は送風空気により凝縮水が凹凸面32′の底部から押し出されて、凝縮水排出パイプ21cからある程度排出できるが、送風機14が停止すると、それまでにエバポレータ21に保持されていた凝縮水が落下して、凹凸面32′の底部に溜まったままとなり、異臭の発生等の原因になる。
【0053】
そこで、第4実施形態では、エバポレータ21に流入する空気の風速分布の均一化とエバポレータ21で発生する凝縮水の排水確保との両立を図るために、図15(a)に示すように、凹凸面32の底部より若干低くした排水路33を凹凸面32の周囲に3箇所形成し、この排水路33をさらに凝縮水排出パイプ21cに連通させている。
【0054】
ここで、下ケース29aは、エバポレータ21の傾斜(空気流れ前方側への下傾斜)に沿って同じように傾斜しているので、排水路33も空気流れ前方側に向かって下方へ傾斜している。そして、排水路33の最も低い部位に凝縮水排出パイプ21cが設けられている。このような構成により、エバポレータ21から落下する凝縮水Hを、凹凸面32の底部より排水路33に導いて、凝縮水排出パイプ21cから外部へスムースに排出できる。
【0055】
なお、図15(a)の例では、排水路33を凹凸面32の周囲に3箇所形成しているが、図15(a)の上下方向の中間位置にさらに排水路33を追加してもよい。また、図15(a)の上下両方向の排水路33、33のうち、一方を廃止して片側のみとしてもよい。また、上記例では、排水路33を凹凸面32の底部より若干低くすると説明したが、排水路33を凹凸面32の底部と同等の高さとしても、凝縮水を排出できることを本発明者は実験的に確認している。
【0056】
(第5実施形態)
図17〜図23は第5実施形態を示すもので、図10に示す第2実施形態におけるエアミックスドア30の作動形態を回動式から、空気流れと直角な方向(ヒータコア22と平行な方向)にスライドするスライド式に変更にして、エアミックスドア30の設置スペースの大幅な縮小を図ったものである。
【0057】
すなわち、図17、18において、ヒータコア22の側方に、ヒータコア22をバイパスして空気が流れるバイパス空気路34が形成されており、ヒータコア22に隣接して、ヒータコア22とバイパス空気路34を通過する空気の風量割合を調整するエアミックスドア30が備えられている。このエアミックスドア30は、ヒータコア22とバイパス空気路34を通過する空気の流れ方向と直角方向(換言すれば、ヒータコア22の配設方向に沿って、略水平方向)に移動するスライド式ドアとして構成されている。
【0058】
エアミックスドア30は、ヒータコア22の空気上流側の直前位置に配置され、そしてエアミックスドア30を前記空気流れ方向と直角方向に移動させるための駆動機構35がヒータコア22とエバポレータ21との間の空間に配置されている。以下、スライド式エアミックスドア30、およびその駆動機構35の具体的構成について説明する。
【0059】
スライド式エアミックスドア30は、図19、20に示すように、樹脂製の平板状の基板30aと、この基板30aの外周縁部に口の字状に突出して一体成形されたシール用の弾性部材30bとを有している。この弾性部材30bは樹脂系弾性材(エラストマゴム)にて成形されている。
【0060】
そして、基板30aのうち、弾性部材30bとは反対側の面に駆動機構35の樹脂製ギヤ30cが一体に設けられている。図20において、30dはギヤ30cのギヤピッチ線を示す。このギヤ30cは、ラック状のギヤであって、その両端部は略円弧状に湾曲している。また、ギヤ30cは基板30aに一体成形できるが、接着等より基板30aに固定してもよい。
【0061】
また、基板30aの側面のうち、ギヤ30cと平行に延びる側面の一方には、2本のガイドピン30eが、十分な間隔を持つように、両端付近に一体成形されている。一方、ヒータコア22とエバポレータ21との間の空間を形成する樹脂製中ケース29b(図5参照)には、図18に示すように、スライド式エアミックスドア30のガイドピン30eが摺動可能に嵌合しているガイド溝37が略水平方向に一体成形されている。このガイドピン30eとガイド溝37との摺動により、スライド式エアミックスドア30が空気流れ方向と直角方向に移動できるようになっている。
【0062】
スライド式エアミックスドア30が樹脂製中ケース29b内に挿入、組付けられた状態では、シール用の弾性部材30bが上部側に位置して、ギヤ30cが下部側に位置するようになっており、そして、樹脂製中ケース29bには、スライド式エアミックスドア30の弾性部材30bの先端(上端)が密着するシール面を形成するシール用のリブ36が一体成形されている。
【0063】
また、ギヤ30cと噛み合う円形ギヤ38、およびこれと一体に結合された軸39が、ヒータコア22とエバポレータ21との間の空間に配置されている。軸39の一端は、前記空間内において、支持板40により回転可能に支持され、軸39の他端は樹脂製中ケース29bの壁面を貫通してケース外へ突出している。軸39の突出端部には、円形ギヤ41が一体に連結されており、この円形ギヤ41には扇形ギヤ42が噛み合っており、この扇形ギヤ42の回転中心部は軸受43にて回転可能に支持されている。
【0064】
さらに、扇形ギヤ42の外周側の所定位置に、操作ピン44が一体に設けられており、この操作ピン44には図示しない操作機構からの操作力が伝達される。例えば、手動操作機構のケーブル、あるいはサーボモータのようなアクチュエータを用いた電動操作機構を操作ピン44に連結するようになっている。
【0065】
以上により、操作ピン44に加えられる操作力により、扇形ギヤ42が回転して、その回転が円形ギヤ41、軸39を経て円形ギヤ38に伝達されて、ギヤ30cを介してスライド式エアミックスドア30を、水平方向(図18の左右方向)に略直線的にスライドさせることができる。なお、図18において、45、46は吹出モード切替部23を構成する板状のドアであり、ドア45はセンターフェイス吹出空気通路25およびサイドフェイス吹出空気通路26に通じる通路と、デフロスタ吹出空気通路28およびフット吹出空気通路27に通じる通路とを開閉する。
【0066】
また、ドア46はデフロスタ吹出空気通路28とフット吹出空気通路27とを開閉する。図21はスライド式エアミックスドア30が最も右側位置に操作されて、ヒータコア22の前面を全閉し、バイパス空気流路34を全開する、最大冷房状態を示す。この状態では、送風空気はすべて矢印Kのように、バイパス空気流路34のみを流れる。
【0067】
図22はスライド式エアミックスドア30が中間位置に操作されて、ヒータコア22の前面と、バイパス空気流路34をそれぞれ半開する、中間温度制御状態(1/2エアミックス状態)を示している。この状態では、矢印L、Mのように、送風空気はヒータコア22側と、バイパス空気流路34側とに2分されて流れて、その後、混合されて所定温度となって上記の各吹出空気通路に流れる。
【0068】
図23はスライド式エアミックスドア30が最も左側位置に操作されて、ヒータコア22の前面を全開し、バイパス空気流路34を全閉する、最大暖房状態を示している。この状態では、送風空気はすべて矢印Nのように、ヒータコア22のみを流れる。(他の実施形態)なお、エバポレータ21は前述した積層型のものに限らず、多穴偏平チューブを蛇行状に曲げ形成し、この蛇行状チューブにコルゲートフィンを組み合わせた、いわゆるサーペインタイプのものなど、他の形式であってもよい。
【0069】
また、第5実施形態では、スライド式エアミックスドア30をヒータコア22の空気上流側直前の位置に配置しているが、ヒータコア22の空気下流側直後の位置にスライド式エアミックスドア30を配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施形態の平面図である。
【図2】
図1の正面図である。
【図3】
第1実施形態の装置を車両に搭載した状態を示す概略平面図である。
【図4】
第1実施形態の装置を車両に搭載した状態を示す概略斜視図である。
【図5】
第1実施形態の装置の組付方法を示す分解図である。
【図6】
第1実施形態の装置と車両エンジンルームの仕切り板との配置関係を示す側面図である。
【図7】
(a)は第1実施形態の装置におけるエバポレータ設置角度と凝縮水保水量との関係を示すグラフ、(b)はそのエバポレータの概略構成を示す斜視図である。
【図8】
第1実施形態の装置を右ハンドル車に搭載したときの配置関係を示す図である。
【図9】
第1実施形態の装置を左ハンドル車に搭載したときの配置関係を示す図である。
【図10】
本発明の第2実施形態の側面断面図である。
【図11】
図10の正面図である。
【図12】
第1、第2実施形態におけるヒータコア吹出風速分布を説明する要部断面図である。
【図13】
本発明の第3実施形態の要部断面図である。
【図14】
第3実施形態によるヒータコア吹出風速分布の改善効果を示すグラフである。
【図15】
(a)は本発明の第4実施形態における下ケースの要部平面図、(b)は第4実施形態の要部断面図である。
【図16】
(a)は第4実施形態の比較例における下ケースの要部平面図、(b)はこの比較例の要部断面図である。
【図17】
本発明の第5実施形態の正面図である。
【図18】
図17の側面図である。
【図19】
第5実施形態で用いるスライド式エアミックスドアの斜視図である。
【図20】
図19のJ矢視図である。
【図21】
第5実施形態で用いるスライド式エアミックスドアの最大冷房状態を示す要部断面図である。
【図22】
第5実施形態で用いるスライド式エアミックスドアの中間温度制御状態を示す要部断面図である。
【図23】
第5実施形態で用いるスライド式エアミックスドアの最大暖房状態を示す要部断面図である。
【図24】
従来の横置きタイプの自動車用空調装置の概略斜視図である。
【図25】
従来の横置きタイプの自動車用空調装置を車両に搭載した状態を示す概略斜視図である。
【図26】
従来のセンター置きタイプの自動車用空調装置を車両に搭載した状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1…送風機ユニット、2…エアコンユニット、14…送風機、21…エバポレータ(冷却用熱交換器)、21c…凝縮水排出パイプ、21f…チューブ、21g…コルゲートフィン、22…ヒータコア(加熱用熱交換器)、22a…温水配管、23…吹出モード切替部、29a…下ケース、29b…中ケース、29c…上ケース、P…インストルメントパネル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2004-03-02 
出願番号 特願2000-39975(P2000-39975)
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (B60H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 水谷 万司  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 井上 哲男
佐野 遵
登録日 2000-12-08 
登録番号 特許第3137189号(P3137189)
発明の名称 自動車用空調装置  
代理人 三好 秀和  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 加藤 大登  
代理人 加藤 大登  
代理人 伊藤 高順  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  

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