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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1116757
審判番号 不服2002-22027  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-14 
確定日 2005-05-09 
事件の表示 平成 6年特許願第233179号「半導体発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月12日出願公開、特開平 8- 97468〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月28日の出願であって、平成14年9月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月14日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年12月16日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成14年12月16日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成14年12月16日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1,3,4に「前記発光部の半導体層より小さく、かつ、前記p側電極の下側のみに設けられてなる」点を付加するものであって、下記のように請求項1を補正する内容を含むものである。
「【請求項1】基板上に少なくともn型層およびp型層を含み発光部を有するチッ化ガリウム系化合物半導体層が積層されるとともに、前記n型層およびp型層にそれぞれ電気的に接続されるn側電極およびp側電極が設けられてなる半導体発光素子であって、前記p側電極と前記発光部との間にコンタクト層を備え、前記コンタクト層の少なくとも前記p側電極側の表面層がp型InxGa1-xN(0<x<1)からなり、前記発光部の半導体層より小さく、かつ、前記p側電極の下側のみに設けられてなる半導体発光素子。」

(2)当審の判断
上記のコンタクト層が「前記発光部の半導体層より小さく、かつ、前記p側電極の下側のみに設けられてなる」との技術的事項に関し、願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「当初明細書」という。)には、図1に示された断面構造に関し、コンタクト層のp側電極側の表面層が、発光部の半導体層より小さく、かつ、前記p側電極の下側に設けられていることは見てとれるとしても、奥行き方向を示す断面図は示されておらず、それを直接説明した記載もないことから、図1に示された断面及びそれと直交する断面の両方において、コンタクト層のp側電極側の表面層が、発光部の半導体層より小さく、かつ、前記p側電極の下側に設けられているとはいえないので、「前記発光部の半導体層より小さく、かつ、前記p側電極の下側のみに設けられてなる」との事項は、当初明細書に記載されたものではない。
よって、本件補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内でなされたものではない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成6年改正法前の特許法第17条の2第2項で準用する特許法第17条第2項の規定に違反するから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年12月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年8月12日付手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のものである。
「【請求項1】基板上に少なくともn型層およびp型層を含み発光部を有するチッ化ガリウム系化合物半導体層が積層されるとともに、前記n型層およびp型層にそれぞれ電気的に接続されるn側電極およびp側電極が設けられてなる半導体発光素子であって、
前記p側電極と前記発光部との間にコンタクト層を備え、前記コンタクト層の少なくとも前記p側電極側の表面層がp型InxGa1-xN(0<x<1)からなる半導体発光素子。」

(2)引用例記載の発明
原審の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物である特開平6-21511号公報(以下、「引用例」という。)には、半導体発光素子に関し、下記の記載が認められる。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、可視から紫外で発光する化合物半導体発光素子用構造に関する。」、
「【0011】この構造では、アンドープIn0.1Ga0.9N発光層63をこれよりバンドギャップエネルギが大きいn型及びp型GaN電流注入層62及び64で挟む構造となっているため、発光層63に注入された電子及び正孔は電流注入層62または64に流出することなく発光層63内に閉じ込められ、上記のように外部量子効率の高い発光が得られる。このように発光領域と電流注入領域とが明確に分離されているため、n型及びp型電流注入層62及び64に1018〜1019cm-3という高濃度ドーピングを行っても、発光スペクトルの純度に影響を及ぼすことなく電流対電圧特性の良好な素子を作製することができる。また、この構造では発光層としてInGaN層を用いているため、発光波長を360〜600nmの範囲で変化することができる。この構造においてInGaNを発光層に用いているにも拘らず、上記のような良好な特性が得られる最大の原因は、InGaN発光層63を結晶性の良好なn型GaN電流注入層62上に成長している点にある。特に図1の構成において、発光層63の膜厚を10nm以下にすると、格子不整合に起因する結晶構造欠陥が発生する臨界膜厚以下となり、発光層63の結晶性が著しく向上する。この結果、素子特性が向上し、素子寿命も延びる。このように発光層の膜厚が薄い発光素子では、量子閉じ込め効果が現れ、発光波長は375nmまでシフトした。ここでは、62としてGaNを用いることを述べたが、
【化6】(【0009】に【化6】がIn1-xGaxN(0≦X≦1)であることの記載あり。:審決注)を用いても良い。また、発光層として、InGaNを用いたが、
【化4】In1-x-yGaxAlyN(0≦X,Y≦1,X+Y<1)
でも良いことは明らかである。
【0012】〔実施例2〕(分離閉じ込め単一量子井戸構造)
図2は、本発明の第2の実施例の構造を示す図であって、図において、71はサファイア(0001)基板、72は膜厚5μm及び電子濃度5×1018cm-3のSiドープn型GaAlN電流注入及び光閉じ込め層、73は膜厚2μm及び電子濃度1019cm-3のSiドープn型GaNキャリア閉じ込め層、74は膜厚10nmのアンドープIn0.1Ga0.9N単一量子井戸発光層、75は膜厚2μm及びホール濃度1018cm-3のMgドープp型GaNキャリア閉じ込め層、76は膜厚2μm及びホール濃度5×1017cm-3のMgドープp型GaAlN電流注入及び光閉じ込め層、77はn側電極、78はp側電極である。電極77に対して正の電圧を78に加えることにより、電子及び正孔を発光層74に注入した。その結果、立ち上がり電圧4Vの電流対電圧特性が得られ、波長375nm帯にのみ発光ピークを持つ発光を観測できた。最大光出力は3mWであり、外部量子効率は2%であった。また、InGaN発光層73の組成を変化することによって、発光波長を600nmまで長波長化することができた。
【0013】この構造は、実施例1の素子構造において、n型GaN層、InGaN層及びp型GaN層の上下をp型GaAlN層及びn型GaAlN層で挟んだ構造となっており、実施例1の構造で得られたと全く同様の効果を期待できる。さらに、実施例1の構造において、InGaN発光層の膜厚を10nmと薄くすると光閉じ込めが不十分となるが、図2の構造ではn型GaN層73、InGaN層74及びp型GaN層75よりも屈折率の小さいn型及びp型GaAlN層72及び76の存在により光閉じ込めの効果が現れ、上記のように大きな光出力及び高い外部量子効率を得ることができる。ここでは、素子を構成する各層にGaN,GalNを用いたが、バンドギャップエネルギが図2において74<73、75<72,76の関係を保つ限り、【化4】を用いても良いことは明らかである。」

(3)対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
(イ)引用例の「サファイア(0001)基板71」、「Siドープn型GaNキャリア閉じ込め層73」、「単一量子井戸発光層74」、「Mgドープp型GaNキャリア閉じ込め層75」、「n側電極77」、「p側電極78」、「化合物半導体発光素子」が、それぞれ本願発明の「基板」、「n型層」、「発光部」、「p型層」、「n側電極」、「p側電極」、「半導体発光素子」に相当することは明らかである。
(ロ)引用例における「Mgドープp型GaAlN電流注入及び光閉じ込め層」は、その上にp側電極78が設けられるものであり、その位置関係において、本願発明のコンタクト層に対応する層である。
そして、該電流注入及び光閉じ込め層に関し、引用例には、「ここでは、素子を構成する各層にGaN,GalNを用いたが、…【化4】In1-x-yGaxAlyN(0≦X,Y≦1,X+Y<1)を用いても良いことは明らかである。」と記載されており、該一般式は、InxGa1-xN(0<x<1)を含むものであるから、組成において相違するものではない。
したがって、両者は、
「基板上に少なくともn型層およびp型層を含み発光部を有するチッ化ガリウム系化合物半導体層が積層されるとともに、前記n型層およびp型層にそれぞれ電気的に接続されるn側電極およびp側電極が設けられてなる半導体発光素子であって、
前記p側電極と前記発光部との間に層を備え、前記前記p側電極と前記発光部との間の層の少なくとも前記p側電極側の表面層がp型InxGa1-xN(0<x<1)からなる半導体発光素子」である点で一致し、下記の点で一応相違する。

相違点:
本願発明は、上記p側電極と前記発光部との間の層が、「コンタクト層」と規定されているのに対して、引用例には、コンタクト層との明記がない点。

(4)判断
そこで、上記相違点に付き検討する。
電極と接触する層としてInxGa1-xNからなる層を用いる点は、上記引用例にも記載がある(審査時に引用された文献3(特開平3-203388号公報)も同様。)のは上記のとおりであり、また発光素子を構成する際に、電極と接触する層がオーム性接触するように材料を選定することは技術常識(必要であれば、特開平4-242985号公報、特開平6-268259号公報を参照されたい。)であるから、技術常識を当然に加味した引用例のp型InxGa1-xN層もコンタクト層といえるものであるので、上記相違点は実質的な差異とはいえない。
したがって、本願発明は、引用例に記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、引用例にはコンタクト層は開示されていないと主張するとともに、「すなわち、本願発明は、p側電極とInGaNなどのバンドギャップエネルギーの小さい材料とを接触させるとよいということを提案しているのではなく、AlGaNなどのバンドギャップエネルギーの大きいチッ化ガリウム系化合物半導体層からなる発光部と電極とを接続するのに、たとえ格子不整合が生じても、請求項1〜4に列挙された材料の半導体層を介在させることにより、トータルとして直列抵抗を下げられることを開示しているのであります。しかしながら、引用文献1〜4にも、また、参考文献1〜3にも、そのような構成に関しましては、一切開示も示唆すらもされておりません。
前述のように、審査官殿は、引用文献1や引用文献3〜4にInGaN層上に電極を設けた構造があるため、そのInGaN層がコンタクト層であると述べておられますが、前述のように、コンタクト層とは発光部とは別にコンタクト性を向上させるために設けられる層を意味するもので、発光部に直接電極を形成することができる場合にはコンタクト層は不要であり、本願発明は、発光部に用いられる半導体層のバンドギャップエネルギーの関係から、コンタクト層を必要とする半導体発光素子が前提になっております。さらに、参考文献1および2に示されるように、発光部と格子整合をとることができ、コンタクト性向上の半導体層を任意に選択することができる場合は自由に選択すればよいのですが、チッ化ガリウム系化合物半導体において、発光部の半導体層と格子整合をとれ、しかもコンタクト性が得られるという材料がないにも拘わらず、その直列抵抗をできるだけ下げるために特定の材料からなるコンタクト層を介在させる構造に特徴があるのであります。」(審判請求書8頁)と主張するが、該主張は、本願発明が導かれたバンドギャップエネルギーに関する考察(本願明細書【0027】、【0028】)を自ら否定するものである。また、本願発明のものは発光層とコンタクト層との格子整合をとるものであるとの主張にしても、本願発明の発光部の材料及び組成並びに発光部を含むダブルヘテロ構造の材料及び組成が具体的に規定されていない以上、発光層とコンタクト層との格子整合をとりようがないのであるから、上記主張は特許請求の範囲に基づかない主張にすぎないものである。さらに、同様の理由で、ダブルヘテロ構造のバンドギャップエネルギの関係が不明であることから、これに基づいた本願発明が奏する格別の作用効果は認められないので、結局、請求人の上記主張は採用するに足らないものである。

また、原査定の拒絶理由は、特許法第29条第2項の規定によるもので、特許法第29条第1項第3号ではないが、審判請求人は、平成14年8月12日付意見書において、本願発明と引用例とを対比し、「また、引用文献2には、GaN系化合物を用いたダブルヘテロ構造の半導体発光素子が開示されておりますが、いずれの実施例におきましても、p型GaNクラッド層またはその上に設けられるGaAlNからなる光閉込め層に電極を設ける構造が開示されているだけであり、コンタクト層は開示されておらず、いわんやコンタクト層のp側電極側の表面層が特定の半導体層に形成される構造に関しましては、一切開示も示唆すらもされておりません。」と述べ、容易性の前提として同一性についても検討していることは明らかであるから、上記のとおり特許法第29条第1項第3号の規定により拒絶すべきものとする。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に実質的に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-24 
結審通知日 2005-01-25 
審決日 2005-03-03 
出願番号 特願平6-233179
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 向後 晋一
町田 光信
発明の名称 半導体発光素子  
代理人 河村 洌  
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