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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B60N
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B60N
管理番号 1116784
審判番号 訂正2004-39213  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-02-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-09-14 
確定日 2005-05-09 
事件の表示 特許第2686979号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下a.およびb.のとおりである。

a.特許請求の範囲の請求項1の「ハウジングと、該ハウジング内に引き出し収納可能に保持され、かつカップ支持手段を備えたテーブルと、該テーブルを引き出し方向に付勢する付勢手段と、該テーブルを前記付勢手段の付勢力に抗して収納状態に係止する係止手段、および前記テーブルの引き出し動作時における引き出し速度を制動する制動手段を設けたことを特徴とするカップホルダー装置。」を、
「ハウジングと、該ハウジング内に引き出し収納可能に保持され、かつカップ支持孔を備えたテーブルと、上記テーブルに設けられ、かつ該テーブルを引き出し方向に付勢する付勢手段と、前記ハウジング後端に設けられ、該テーブルを前記付勢手段の付勢力に抗して収納状態に係止する係止手段と、前記テーブルに設けられ、かつ前記テーブルの引き出し動作時における引き出し速度を制動するオイルダンパーと、該テーブルに揺動可能に支持され、該テーブルを引き出した時、前記カップ支持孔の下方に位置してカップの底面を支持可能なトレイを備えることを特徴とするカップホルダー装置。」と訂正する。

b.発明の詳細な説明の《課題を解決するための手段》の欄(特許第2686979号特許公報第2頁第3欄第6〜12行)の
「前記目的を達成するため、この発明は、ハウジングと、該ハウジング内に引き出し収納可能に保持され、かつカップ支持手段を備えたテーブルと、該テーブルを引き出し方向に付勢する付勢手段と、該テーブルを前記付勢手段の付勢力に抗して収納状態に係止する係止手段、および前記テーブルの引き出し動作時における引き出し速度を制動する制動手段を設けた。」を、
「前記目的を達成するため、この発明は、ハウジングと、該ハウジング内に引き出し収納可能に保持され、かつカップ支持孔を備えたテーブルと、上記テーブルに設けられ、かつ該テーブルを引き出し方向に付勢する付勢手段と、前記ハウジング後端に設けられ、該テーブルを前記付勢手段の付勢力に抗して収納状態に係止する係止手段と、前記テーブルに設けられ、かつ前記テーブルの引き出し動作時における引き出し速度を制動するオイルダンパーと、該テーブルに揺動可能に支持され、該テーブルを引き出した時、前記カップ支持孔の下方に位置してカップの底面を支持可能なトレイを備えた。 」と訂正する。

【2】当審の判断
1.訂正の目的要件について
上記訂正事項a.は、各々
(1)「カップ支持手段」を、より具体的な「孔」及び「該テーブルに揺動可能に支持され、該テーブルを引き出した時、前記カップ支持孔の下方に位置してカップの底面を支持可能なトレイ」へ訂正
(2)「付勢手段」の敷設位置を、より限定的に明示し、「上記テーブルに設けられ」と訂正
(3)「係止手段」の敷設位置を、より限定的に明示し、「前記ハウジング後端に設けられ」と訂正
(4)「制動手段」を、より具体的な「オイルダンパー」へ訂正すると共に、その敷設位置を、より限定的に明示し、「前記テーブルに設けられ」と訂正
という事項からなる訂正であるが、これらの訂正は、
(1)当初より発明の構成要件とされた「カップ支持手段」を、当初明細書乃至図面に記載されている「孔」及び「該テーブルに揺動可能に支持され、該テーブルを引き出した時、前記カップ支持孔の下方に位置してカップの底面を支持可能なトレイ」に限定する訂正
(2)当初より発明の構成要件とされた「付勢手段」に対し、敷設位置の特定がなされていなかった状態から、当初明細書乃至図面に記載されている「テーブル」の箇所に設けられているとの条件を限定明示する訂正
(3)当初より発明の構成要件とされた「係止手段」に対し、敷設位置の特定がなされていなかった状態から、当初明細書乃至図面に記載されている「ハウジング後端」の箇所に設けられているとの条件を限定明示する訂正
(4)当初より発明の構成要件とされた「制動手段」を、当初明細書乃至図面に記載されている「オイルダンパー」に限定すると共に、敷設位置の特定がなされていなかった状態から、当初明細書乃至図面に記載されている「テーブル」の箇所に設けられているとの条件を限定明示する訂正
と認められるため、上記(1)乃至(4)の訂正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、かつ、特許明細書ないし図面に記載されていた範囲内のものであると認められる。
なお、訂正事項bは、前記訂正事項aに伴い明細書の発明の詳細な説明部分を訂正するものであって、それ自体は特許請求の範囲に記載の文言を実質上拡張、変更するものではない。
2.独立特許要件について
上記訂正事項(1)〜(4)につき、訂正後の請求項1に記載された発明(以下、「訂正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下検討する。

1)引用刊行物記載の発明について
引用刊行物:実願昭60-135048号(実開昭62-43036号)のマイクロフィルム

上記引用刊行物には次の事項が記載されている。
イ.「第1図に示す5は、この考案の要旨を成す容器ホルダ-であり、第6図に示す様に、運転席1のセンタ-ロアパネル3に薄い肉厚で取り付けられて紙コップの装着離脱に用いられるようにされ、大別して横断面冖字型のガイド6とガイド6に長手方向にスライドして押込み、引出し自在の薄板状のスライドパネル7とより成り、両者は適宜金属製の板で形成されても良いが、硬質プラスチックで成形されていても良い。
而して、ガイド6の両側にはアンダ-ハング状のレ-ル8、8が長手方向に一体成形され」ている点(明細書第6頁第9〜19行)、
ロ.「又、その上壁の外端縁側、即ち、手前側にはフックとしての孔10が穿設されている。
而して、上壁の裏面側には弾機としてのト-ションスプリング11がその1端をリテ-ナとしてのピン12により固定されていると共に、他端は第4図に示す様に、垂直に折り曲げられてピン13として上端にフランジを形成されており、フランジ部分は上壁に穿設され、ピン13の旋回動軌跡に沿って設けられた彎曲状のスリット14に係合スライドするようにされ、又、ピン13にはスリット14の下側で回動するローラ15が第4図に示す様に枢支されている。」点(明細書第7頁第3〜14行)、
ハ.「又、後部のヨ-ク状の部分中央にはリテ-ナ19が一体的に上向に形成されてト-ションスプリング11の先端のピン13に枢支されたロ-ラ15に押圧当接されてスライドパネル7をその両側リブ17、17がガイド6の両側レ-ル8、8に係合してスライドする状態で引出し方向に付勢されている。」点(明細書第8頁第11〜16行)、
ニ.「そして、スライドパネル7の略中央部には側面テ-パ状の紙コップ20に対する容器孔21、21が一対穿設されている。」点(明細書第8頁第17〜19行)、
ホ.「而して、スライドパネル7の外端部、即ち、手前部には横方向に隆起部22が形成されると共に、長手方向に所定の長さの一対のスリット23、23が穿設されてその間に弾性的な可撓部の指掛け部24を形成し、その中央部にはガイド6の外端縁側に設けたフックとしての孔10に係合するブッシュ25が一体形成されて上向に突出されている。
したがって、可撓部の指掛け部24に軽く指を当てて下向に押圧することにより、その弾性を介してブッシュ25も上下動し、ガイド6のフックの孔10に係合離脱自在にされるようにされている。」点(明細書第8頁第20行〜第9頁第10行)、
へ.「ト-ションスプリング11の押圧力によるスライドパネル7の引出し方向への進出は本来的には急激に行われるが、この考案においてはガイド6の上壁下面両側に下向に彎曲して設けられた一対の板バネ16、16からスライドパネル7の両側のリブ17、17を押圧してブレ-キ作用を与えるために急激な突出は避けられ、リブ17、17はガイド6の両側のレ-ル8、8に低速でスライド前進」する点(明細書第12頁第8〜16行)、
ト.「第5図に示す様に、ブッシュ25の上端縁に前向きにオ-バ-ハング状にサブブッシュ26を設けてガイド6のフックの孔10に対してオ-バ-ハング状に係止させ、単に、下向の力が指等により不測に印加されても、それだけではスライドパネル7は押し出されず、紙コップ20のセットの際には指掛け部24を斜め前方に軽く押し込むことにより、サブブッシュ26がフックの孔10を後方に僅かにスライドしてからブッシュ25が孔10から外れるようにすることが出来」る点(明細書第14頁第9〜18行)。
チ.「又、センタ-ロアパネル3の上部に上述実施例の容器ホルダ-を設け、所定の下方向距離を介して容器孔21の代わりに凹み部を有するスライドパネルを装備した容器ホルダ-を設ける2段式のものにすることにより、清涼飲料の缶等をセットすることが出来、しかも、その姿勢を安定にすることが出来る等種々の態様が採用可能である。」点(明細書第15頁第1〜7行)。

上記イ.〜チ.の記載、および第1〜6図の記載を総合すると、上記引用刊行物には、
「レ-ル8、8が一体成形されたガイド6と、該ガイド6内に引き出し収納可能に保持され、かつ容器孔21、21を備えたスライドパネル7と、該スライドパネル7を引き出し方向に付勢するト-ションスプリング11と、該ガイド6の上壁の外端縁側に設けられ、該スライドパネル7を前記ト-ションスプリング11の付勢力に抗して収納状態に係止するフックの孔10およびサブブッシュ26が設けられたブッシュ25からなる手段、および前記スライドパネル7の引き出し動作時における引き出し速度を制動する板バネ16、16と、所定の下方向距離を介して容器孔21の代わりに凹み部を有するスライドパネルを備える容器ホルダ-」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

2)対比・判断
訂正発明と引用発明とを対比すると、その機能と構造からみて、引用発明の「レ-ル8、8が一体成形されたガイド6」は訂正発明の「ハウジング」に相当しており、以下同様に、「スライドパネル7」は「テーブル」に、「容器孔21、21」は「カップ支持孔」に、「ト-ションスプリング11」は「付勢手段」に、「フックの孔10およびサブブッシュ26が設けられたブッシュ25からなる手段」は「係止手段」に、「凹み部を有するスライドパネル」は「トレイ」に、「容器ホルダ-」は「カップホルダー装置」に、それぞれ相当しているから、両者は、
「ハウジングと、該ハウジング内に引き出し収納可能に保持され、かつカップ支持手段を備えたテーブルと、該テーブルを引き出し方向に付勢する付勢手段と、該テーブルを前記付勢手段の付勢力に抗して収納状態に係止する係止手段、および該テーブルを引き出した時、前記カップ支持孔の下方に位置してカップの底面を支持可能なトレイを備えるカップホルダー装置。」である点で一致している。
してみると、両者は、次の点でのみ相違していると認められる。
(相違点1)「係止手段」の取り付けられる位置に関し、訂正発明では「ハウジング後端に設けられ」るとしているのに対して、引用発明では「ガイド6の上壁の外端縁側に設けられ」ている点
(相違点2)「テーブルの引き出し動作時における引き出し速度を制動する」手段に関し、訂正発明では「オイルダンパー」を用いるものとしているのに対して、引用発明では「板ばね16,16」を用いるものであって、具体的な手段が異なる点
(相違点3)「カップの底面を支持可能なトレイ」について、訂正発明ではテーブルに揺動可能に支持されているのに対して、引用発明ではどの様に支持されているのか不明である点

そこで、上記相違点について検討する。
(相違点1について)当該相違点に係る「係止手段」が果たす役割について検討すると、当該手段はハウジング内にトレイが完全に収納される状態時に、ハウジングとトレイとを相互に移動しないように係止により固定するための手段であると認められる。
とすれば、係止手段は実用上ハウジングとトレイが接触する場所内であればいずこにも配置することができうると言うべきであり、ハウジングの前端部にあろうが後端部にあろうが、その本来機能の上では大差ないと言わざるを得ない。
事実、本件訂正発明が属する技術分野において、付勢手段と係止手段とを併せ持つカップホルダー装置類では、係止手段が配置される場所は様々であり(例えば、特開昭59-145633号公報ではハウジングの側壁部分に、米国特許4494806号明細書ではテーブルの真下のハウジング下側内壁中央部に置かれている。)、係止手段が置かれる位置は比較的自由に選択できることを示している。
よって、当該相違点に係る係止手段の配置位置については、当業者が任意に選定可能な設計的事項に属するものと認められ、格別の困難性は認められない。
(相違点2について)ところで、いわゆる「ダンパー」と称される制動機構の代表例として、オイルやエアを用いることにより「オイルダンパー」、「エアダンパー」と呼ぶ機構が存在することは、当業者ならずとも周知(「エアダンパー」については、特開昭59-145633号公報を、「オイルダンパー」及び「エアダンパー」の双方が周知であることを示す証拠については実願昭54-39310号(実開昭55-140140号)のマイクロフィルムを参照。)の事項である。
とすれば、引用発明の制動機構部分をこれら周知の具体的制動機構の1つであるオイルダンパーと置換して訂正発明のごとき構成をなすことは、当業者が容易になし得る設計的事項と言うべきである。
(相違点3について)訂正発明及び引用発明と同じ技術分野に属する「カップホルダー装置」において、「カップの底面を支持可能な手段をテーブルに揺動可能に支持する」ことは本件特許の出願前周知の技術である。(例えば、実公昭61-23480号公報の「保持プレート9」(第5図)、実願昭60-46292号(実開昭61-161134号)のマイクロフィルムの「副支持体」及び「ステー24」、実願昭61-139205号(実開昭63-44844号)のマイクロフィルムの「可動バー10」あるいは実願昭62-10842号(実開昭63-119133号)のマイクロフィルムの「操作プレート19」についての記載参照。)
そして、上記周知技術が訂正発明の「付勢手段」あるいは「制動手段」に相当するものを備えていないものを対象としているとしても、該「付勢手段」あるいは「制動手段」と「カップの底面を支持可能な手段」とは機構上関連がないことから、前記周知技術を引用発明の「凹み部を有するスライドパネル」(カップの底面を支持可能なトレイ)に適用して相違点のように構成することには、何ら阻害要因が存在せず、当業者ならば容易に想到し得る程度のことに過ぎない。また、該適用により格別の作用効果も奏さない。

よって、訂正発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

なお、上述の認定及び判断は、平成17年1月31日付け訂正拒絶理由通知書で特許権者に既に説示済みであるところ、これに対し特許権者は平成17年3月4日付けの意見書にて、
(イ)「凹み部を有するスライドパネル」を「トレイ」に相当するとした認定の誤り(意見書第3頁の(イ)参照)
(ロ)相違点2に対する判断の誤り(同第3頁の(ロ)参照)
(ハ)相違点3に対する判断の誤り(同第4頁の(ハ)参照)
を主張しているが、いずれの主張も以下に述べるとおり成り立たない。
まず、(イ)については、引用刊行物に関する摘記事項チに示すとおりであり、「凹み部を有するスライドパネル」が、「容器ホルダー」に対し「所定の下方向距離を介して」位置するものであって、その外見から「2段式」と称することができ、「清涼飲料の缶等をセットすることが出来、しかもその姿勢を安定にすることが出来る」という条件から考えると、本件発明の「下方に位置してカップの底面を支持可能なトレイ」のごとき構造物であると十分に認識可能であることが明らかと言えるためである。
次に、(ロ)については、特許権者が言うとおり、「オイルダンパー」と「エアダンパー」、並びに「板ばね」は、制動の効き具合がそれぞれ異なる点については頷けるものの、そのいずれもが効き具合に至っても当業者ならずともよく知られたものであることが明らかと言える。そのため、制動効果が各々異なることだけをもってして適用が困難であるとすることは出来ない。
最後に、(ハ)については、特許権者はテーブル・付勢手段・係止手段その他諸々が構成上関連無く設けられているものではないと主張し、当審が通知した訂正拒絶理由の該当箇所で用いている『該「付勢手段」あるいは「制動手段」と「カップの底面を支持可能な手段」とは機構上関連がないことから、』の判断を誤りとしたものであるが、そもそも該記載箇所は、個々の機構同士が機械的に分離できない程度に一体化したものではない(付勢手段と支持可能な手段とは、メカニカルに一体化したものではない、ということを意味する)、ということを説示した文脈である。そのため、特許権者の主張は当を得たものとは言えない。

【3】むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2005-03-11 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-28 
出願番号 特願昭63-205772
審決分類 P 1 41・ 121- Z (B60N)
P 1 41・ 856- Z (B60N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 利治  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 内藤 真徳
西村 泰英
登録日 1997-08-22 
登録番号 特許第2686979号(P2686979)
発明の名称 カップホルダー装置  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 武通  

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