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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1116962
審判番号 不服2001-19867  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-06 
確定日 2005-05-12 
事件の表示 平成11年特許願第291591号「フレキシブル配線板」〔平成13年4月20日出願公開(特開2001-111178)〕拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成11年10月13日の出願であって、原審において、平成12年5月22日付で拒絶理由が通知されたところ、請求人(出願人)より平成12年7月24日付で意見書の提出と共に手続補正がされたので、平成13年6月21日付であらためて第2回目の拒絶理由が通知され、この第2回目の拒絶理由によって拒絶査定を受けた。そこで、請求人はこの査定を不服として、本件審判請求をすると共に、当該請求の日から30日以内の平成13年12月3日付で、特許法(平成15年改正前の特許法であって、以下についても同様)第17条の2第1項第4号に規定する手続補正(前置補正)をしたものである。

【2】平成13年12月3日付の手続補正について
【補正却下の決定の結論】
平成13年12月3日付の手続補正を却下する。
【補正却下の決定の理由】
1.平成13年12月3日付手続補正に係る発明
上記平成13年12月3日付手続補正(以下、「本件補正」という)によって補正しようとする、特許請求の範囲の請求項1の発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】導電体層を挟む両面に絶縁体層がそれぞれ設けられているフレキシブル配線板であって、
各前記絶縁体層の少なくとも一方に、このフレキシブル配線板を折り曲げるための切り込みが、前記導電体層の表面が露出しないような深さで、その絶縁体層の厚さ方向の1/3〜2/3の範囲で形成されていることを特徴とする、フレキシブル配線板。」(以下、「本願補正発明」という)
2.独立特許要件の適否について
本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
2-1.引用例及びその記載事項の概要
原査定の拒絶の理由(第2回目の拒絶理由)で引用された、本件特許出願前に頒布された刊行物である、特開平6-277863号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。
「回路基板には、絶縁層と銅箔等の導電層とを積層したものがある。このような回路基板、例えばフレキシブル基板には、その実装密度を高めるために、又、回路基板を折り曲げて装置内部に実装すために、回路基板を折り曲げる溝を形成したり、又、多層の基板ではスルーホールを形成する必要がある。・・・例えば、図5(a) に示すように絶縁層1及び銅箔2から形成される回路基板3に溝等を形成する場合、機械的な工具4を絶縁層1側から切り込んでこの絶縁層1のみを除去加工している。」(第2頁第1欄第18〜29行)
2-2.発明の対比
(1)本願補正発明と引用例の上記記載事項とを対比すると、引用例記載の「回路基板(フレキシブル基板)」は、本願補正発明でいう「導電体層を挟む両面に絶縁体層がそれぞれ設けられているフレキシブル配線板」を含むものとして解すべきである(引用例第3図およびその説明記載参照)。
また、上記引用例で「・・・溝等を形成する場合、・・・絶縁層1側から切り込んでこの絶縁層1のみを除去加工・・・」としているところから、引用例記載の「回路基板を折り曲げる溝」は、本願補正発明でいう「フレキシブル配線板を折り曲げるための切り込み」に相当するものといえる。
(2)上記の対比から、本願補正発明と引用例記載の発明との一致点及び相違点は次のとおりに認定できる。
<一致点> 「導電体層を挟む両面に絶縁体層がそれぞれ設けられているフレキシブル配線板であって、
各前記絶縁体層の少なくとも一方に、このフレキシブル配線板を折り曲げるための切り込みが形成されている、フレキシブル配線板」に係る発明である点。
<相違点> 上記切り込みに関し、本願補正発明では、「前記導電体層の表面が露出しないような深さで、その絶縁体層の厚さ方向の1/3〜2/3の範囲で」形成されるのに対して、引用例記載の発明では、このような範囲については言及されていない(導電体層の表面が露出しないような深さの切り込みは開示されていない)点。
2-3.相違点の検討
引用例では、「絶縁層1側から切り込んでこの絶縁層1のみを除去加工」としているが、およそ導電体表面に絶縁層を設けるのは、導電体表面が露出しないようにするのが主要な目的と考えられる。そうすると、引用例記載の発明においては、上記絶縁層の全てを除去することなく、上記切り込み深さを<導電体層の表面が露出しないような深さ>に止めて、絶縁層の一部を残すようにする対応も、実施態様の一つとして当然考慮されるべきところというべきである。
そして、導電体層の表面が露出しないまでも、上記の切り込み深さが導電体層の表面に近接しすぎると、当該表面の露出につながりやすいし、逆に、切り込みが浅すぎては、折り曲げを容易にする等の効果が十分なものとならない場合も容易に予測できるのであるから、当該切り込み深さを「絶縁体層の厚さ方向の1/3〜2/3」とするのは、当業者において常識的な範囲を設定したものとみることができる。
そうすると、上記相違点に係る本願補正発明の構成は格別のものでなく、本願補正発明は、引用例記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
なお、本願補正発明の上記の構成を示唆する記載が、実開平4-92667号公報、特開平5-335696号公報にある。
([付記]請求人は、当審において発した審尋に対し、導電体層及び絶縁層の厚みや切り込み幅について、具体的な数値の限定に係る補正の用意がある旨回答しているが、当該数値の限定には格別の技術的意義が認められず、かかる補正がなされたとしても、本願の発明が容易であるとする上記判断を左右するものではないので、補正の機会を与える必要は認めない。)
3.独立特許要件の欠如に伴う手続補正の却下
上記検討から明らかなように、本願補正発明は、上記引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえ、本願補正発明については特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反することになり、特許法第159条第1項において一部読み替えて準用する同第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願の発明について
1.本願の発明
平成13年12月3日付の本件手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成12年7月24日付手続補正書の、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 導電体層を挟む両面に絶縁体層がそれぞれ設けられているフレキシブル配線板であって、
各前記絶縁体層の少なくとも一方に、このフレキシブル配線板を折り曲げるための切り込みが、前記導電体層の表面が露出しないような深さで、その絶縁体層の厚さ方向途中まで形成されていることを特徴とする、フレキシブル配線板。
【請求項2】 前記切り込みが、その絶縁体層の厚さ方向の1/3〜2/3の範囲で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブル配線板。
【請求項3】 ハードディスクドライバの磁気ヘッドを搭載するためのサスペンション基板と、前記磁気ヘッドを動作させるための制御回路基板とを中継するために使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載のフレキシブル配線板。」
2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記の【2】2-1.に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願の請求項2に係る発明は、前記【2】で検討した、本願補正発明と実質的に同じものであるから、本願の請求項2に係る発明も、本願補正発明と同様の理由により、上記引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

【4】むすび
以上のとおり、本願請求項2に係る発明は、上記引用例記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、当該請求項2に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-28 
出願番号 特願平11-291591
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 落合 弘之中川 隆司林 茂樹  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 大野 覚美
増岡 亘
発明の名称 フレキシブル配線板  
代理人 岡本 寛之  

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