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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H04M
管理番号 1117124
審判番号 無効2004-80045  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-10-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-05-12 
確定日 2005-02-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第1647230号着信表示方式の特許無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 無効2004-80012 特許第1647230号の発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。無効2004-80034 特許第1647230号の発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。無効2004-80042 特許第1647230号の発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。無効2004-80043 特許第1647230号の発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。無効2004-80045 特許第1647230号の発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続きの経緯
昭和61年 4月16日 出願
昭和61年 4月16日 審査請求
平成 2年 6月 5日 拒絶理由通知
平成 2年 7月27日 手続補正書
平成 2年10月 2日 公告決定
平成 3年 7月23日 特許査定
平成 4年 3月13日 設定登録
平成16年 4月13日 審判請求(無効2004-80012)
平成16年 4月30日 審判請求(無効2004-80034)
平成16年 5月11日 審判請求(無効2004-80042)
平成16年 5月11日 審判請求(無効2004-80043)
平成16年 5月12日 審判請求(無効2004-80045)
平成16年 6月 7日 併合審理通知
平成16年 8月13日 答弁書(無効2004-80012)
平成16年 8月13日 答弁書(無効2004-80034)
平成16年 8月13日 答弁書(無効2004-80042)
平成16年 8月13日 答弁書(無効2004-80043)
平成16年 8月13日 答弁書(無効2004-80045)
平成16年11月18日 上申書(無効2004-80043)
平成16年12月 8日 書面審理通知
平成16年12月 8日 審理終結通知
第2 本件特許発明
特許1647230号(以下「本件特許」という)に係る発明(以下「本件特許発明」という)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。
「着信時に発信者番号情報が送られてくる電話回線に接続される端末装置において、電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリを設け、着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした着信表示方式。」
第3 無効2004-80012の請求人パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社(以下「請求人A」という)の求めた審判
1.請求人Aの主張
(1)無効理由1(本件特許発明の新規性)について
本件特許に係る発明は、本件特許出願前に頒布された文献である甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(本件特許発明の進歩性1)について
仮に、本件特許に係る発明と甲第1号証に記載された発明とに相違点があるとしても、本件特許に係る発明は、本件特許出願前に頒布された文献である甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(本件特許発明の進歩性2)について
仮に、本件特許に係る発明と甲第1号証に記載された発明とに相違点があるとしても、本件特許に係る発明は、本件特許出願前に頒布された文献である甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜5号証のいずれか一つ以上に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4(本件特許発明の記載不備)について
本件特許発明における「方式」が「物」であると解すると、本件特許請求の範囲に記載された、「物」を構成する要素は、「端末装置」と「メモリ」しか存在しないため、「物」の発明として発明の目的を達成するため及び発明の効果を奏するために必要不可欠な技術手段が、特許請求の範囲に記載されていないことになる。したがって、本件特許請求の範囲の記載は不明瞭であり、発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているとは認められないから、本件特許は、特許法第36条第4項の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第123条第1項第3号に該当し、無効とすべきである。
(5)証拠方法
甲第1号証:発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257
甲第2号証:特開昭57-4639号公報
甲第3号証:特開昭59-168756号公報
甲第4号証:特開昭54-504号公報
甲第5号証:特開昭60-59851号公報
甲第6号証:東京地裁平成16年(ヨ)第22021号特許権仮処分申立事件における平成16年3月10日付けの仮処分命令申立書
甲第7号証:一般審査基準「明細書」(産【1】-13-23)
2.被請求人の主張
(1)無効理由1、2、3(本件特許発明の新規性進歩性)について
本件発明と甲第1号証とでは、少なくとも「発信者番号情報」ではなく「発番」が送られてくる点、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」するのではなく「発番と呼出音ランクを登録」する点、及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」のではなく「呼出音ランクにより呼出音を切替える」点において相違する。
甲第1号証の「発番」は、電話の内容に合わせて適宜変更可能な「発信者がダイヤルする番号」であり、発信者の端末装置毎に固定された「発信者番号情報」と本質的に相違する。加えて甲第1号証においては、固定された「発信者番号情報」を使用すると、緊急電話をかけることができなくなるので、甲第1号証の「発番」を甲第2号証乃至甲第5号証に開示されている「発信者番号情報」に置換することは当業者にとって容易に想到できるものではない。また、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」する点及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」点については、甲第2号証乃至甲第5号証の何れにも開示されていない。
以上のとおり、甲第1号証と甲第2号証乃至甲第5号証とを組み合わせても、本件発明は容易に想到できるものではないので進歩性を有する。
(2)無効理由4(本件特許発明の記載不備について)
「旧審査基準」(甲第7号証)の産【1】-13-23の14行には、「ただし、表現不可能なときにはこの限りでない。」と記載されている。本件発明は、端末装置の着信表示方式に関するものであり、その技術的手段は情報の送受信又は処理動作をもって特定せざるを得ない。そして、本件特許発明は、「応答しなければならない発信者名を着信側で直ちに判断できるような着信表示方式を得る」(乙第3号証(本件特許公報)2欄17〜19行)という目的を達成し、「本発明ではID情報を登録加入者に付き具体的加入者名に変換して端末装置に表示し、また登録加入者にランク付けを行ないランク別の着信表示を行なうようにしているので、電話の受け側において即座に発信者名が判断でき、いたずら電話等の防止、又は応答必要性の緊急度の判断が的確に可能である等」(同号証6欄16〜21行)という効果を得るための技術的手段を請求項に明りょうに記載している。従って、本件特許は、特許法第36条第4項に違反するものではない。
3.当審の判断
(1)無効理由4(特許法第36条第4項違反)について
請求人Aは、本件特許の特許請求の範囲には、「物」の構成要件として「端末装置」と「メモリ」しか存在せず、それだけの構成要件では本件特許発明の目的・効果を達成することができないから、本件特許の特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない、という特許法第36条第4項の規定をみたしていないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第3号に該当する旨を主張している。
そこで検討すると、本件特許の特許請求の範囲には、構成要件として「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」という記載があり、本件特許の発明の詳細な説明には、CPU5が行なう制御動作として「CPU5は上記着信検出回路4から着信を読み込むと、電話回線Lから受信したID情報とメモリ6に登録された電話番号とを照合し、当該ID情報がメモリ6の登録電話番号の1つに一致すればCPU5は当該登録電話番号と対応する加入者名をメモリ6から呼み出してデイスプレイ表示器8に表示する。このときID情報、すなわち上記加入者の電話番号(発信者番号)をも併せて表示してもよい。また、このとき着信音表示器7を鳴動させて着信を可聴的にも表示する。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)2頁4欄43行〜3頁5欄9行)ことが記載されている。
ところで、「物」の発明の構成要件を機能的・作用的に記載することは、それにより特許請求の範囲の記載が不明りょうとならない範囲において許容されるものであるので、構成要件である「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」を「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」CPUと見ることができ、そのCPUを末尾に付加しても本件特許発明の内容が変わるとはいえないので、本件特許の特許請求の範囲には、「物」の構成要件として「端末装置」と「メモリ」以外に、「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」CPUを備えているものと認められる。
よって、本件特許の特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているといえるから、本件特許の特許出願が特許法第36条第4項の規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許は同法第123条第1項第3号に該当するものではない。
(2)無効理由1、2、3(特許法第29条第1項、2項違反)について
[甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明]
ア)甲第1号証
甲第1号証(発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257)には、図面とともに以下の事項aが記載されている。
a)「本技術は,発番による呼出音切替電話機に関するものである。従来の電話機は,発番に関係なく呼出音が同一であった。本技術の目的は,発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。以下,本技術を図により説明する。図は本技術を示すもので,電話端末に登録・記憶機能を持たせ,端末より発番と呼出音ランクを登録して記憶させるものである。交換機から発番が送られると,送られた発番と登録されている発番が端末内で照合され,呼出音ランクが抽出される。そして、呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は,リンギングやボリュ-ムを変化させる方法,ト-キシステムを用いる方法などで行なう。以上,本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。また,緊急電話をかけることも可能となる。」(1頁左欄1行〜右欄12行)
これらの記載事項、及び、電話通信の分野において、交換機から発番が送られて電話端末で呼出音が鳴らされる時は「着信時」であること、電話端末は「電話回線」に接続されていることは技術常識であることを考慮すると、甲第1号証には
「着信時に発番が送られてくる電話回線に接続される電話端末において、発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部を設け、着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした呼出音切替電話機。」の発明(以下、「甲第1号証に記載された発明」という)が開示されているものと認められる。
イ)甲第2号証
甲第2号証(特開昭57-4639号公報)には、以下の事項a、bが記載されている。
a)「電話番号並びに電話番号に対応する名称を複数組記憶する機構、該記憶機構に電話番号と名称を記憶させるための入力機構、局より来る発呼者電話番号を受ける機構、及び前記記憶機構より名称を呼び出し表示する機構を有し、着信時局より来る発呼者電話番号を受けて前記記憶機構に記憶している電話番号と照合し、一致した場合は対応する名称を表示することを特徴とする発呼者名称表示端末装置。」(1頁左下欄4〜12行)
b)「本発明の目的は、上記した従来技術の問題であった発信者名が応答するまで分らないという欠点をなくし、着信時に発信者の名前を表示する電話端末を提供することにある。即ち本発明は、発信局もしくは発端末から、発呼者電話番号を着信局経由で着信電話端末へ送り、その発呼者電話番号を基に発呼者名称を検索し表示するものである。」(1頁右下欄3〜10行)
ウ)甲第3号証
甲第3号証(特開昭59-168756号公報)には、以下の事項aが記載されている。
a)「本発明は以上説明したように、加入者端末に液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等の文字表示デバイスを設け、さらに発呼者番号と、発呼者氏名等の発呼者識別情報を対応させて登録できるメモリを設備し、上記加入者端末への着信時、上記加入者端末にて発呼者番号を受信し、上記発呼者番号により上記メモリより発呼者番号に対応する発呼者識別情報を索引し、上記表示デバイスに発呼者氏名等の発呼者識別情報を文字表示することを可能にするものであり、着信側加入者が着信の相手先を前もって知ることができる効果がある。」(3頁右上欄9〜19行)
エ)甲第4号証
甲第4号証(特開昭54-504号公報)には、以下の事項a、bが記載されている。
a)「受信側においては、呼出信号を検出すると、判定回路9によって記憶装置11を有効にし、送られてくる送信側の電話番号を記憶する。その記憶内容は表示装置12によって電話機の外側に表示され、受信側において受信器1を上げることなく、送信側の電話番号を表示するとともに記憶することができる。」(3頁左下欄16行〜右下欄2行)
b)「このような場合に、記憶装置である書込メモリ20に余裕があれば、電話番号と相手の名前、ニックネームの対照表をこの書込メモリ20に記憶しておくことにより、かかつてきた電話の番号が誰であるかを、表示装置12により文字で表わすことができ、社内外の区別、緊急なものであるか否か、などの素早い判断をすることができる。」(4頁右上欄13〜19行)
オ)甲第5号証
甲第5号証(特開昭60-59851号公報)には、以下の事項aが記載されている。
a)「発ADP2から送出されたID信号は、着ADP14に転送されてID信号受信器18で受信され、プロセッサ24を介して時計20から出される時刻情報と共にID情報(本実施例では電話番号)としてメモリ19に記憶される。メモリ19には、着側加入者があらかじめID情報(電話番号)と対応づけて登録しておいた名前あるいは称号等の他の発呼者識別情報が記憶されており、前述のように受信された発呼者電話番号がメモリ19に入力されると、プロセッサ24は、あらかじめ登録してあるID情報(電話番号)と一致するものがあるかどうかを検索し、もし一致するものがあれば該当する名前あるいは称号等と共に時刻情報及び発呼者電話番号をID情報表示装置21に表示する。」(4頁左下欄3〜17行)
[対比]
本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
ア)本件特許の発明の詳細な説明には、発信者番号情報について「本発明は、・・・特に着信時に呼出信号とともに発信者番号情報(所謂、ID情報)が送られてくる電話回線に使用される」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁1欄12〜15行)、「電話回線のデイジタル化等によって発信者の電話番号情報(以下、ID情報という。)」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁2欄1〜2行)、「このときID情報、すなわち上記加入者の電話番号(発信者番号)をも併せて表示してもよい。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄5〜7行)ことが記載されているので、本件特許の「発信者番号情報」とは、「発信者の電話番号情報」又は「加入者の電話番号(発信者番号)」であると認められる。ところで、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、電話通信の分野において、電話回線に接続されている電話端末には、着信時に発信者電話番号又は発信者番号が送られるという技術常識を考慮すれば、「発信者電話番号」又は「発信者番号」を意味すると解され、このことは、「発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。」(甲第1号証1頁左欄5〜10行)、「本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。」(甲第1号証1頁右欄9〜11行)等の記載からも窺われることである。
したがって、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、本件特許発明の「発信者番号情報」、又は(発信者若しくは加入者)の「電話番号」に相当する。
イ)甲第1号に記載された発明の「記憶部」は、本件特許発明の「メモリ」に相当することは明らかであり、本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」と甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部」とは、メモリに「電話番号」と「ランク」が登録されているといえるから、「電話番号とランクを登録したメモリ」という点で一致する。
ウ)本件特許発明の「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」こととは、メモリに「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした」点で一致する。
エ)甲第1号証に記載された発明の「呼出音切替電話機」は、呼出音を鳴らすもの、すなわち着信音表示を行なうものであるから、本件特許発明の「着信表示方式」に相当する。
そうすると、両者は、
「着信時に発信者番号情報が送られてくる電話回線に接続される端末装置において、電話番号とランクを登録したメモリを設け、着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした着信表示方式。」で一致し、以下の点a、bで相違する。
a)メモリに対して、本件特許発明が「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」しているのに対して、甲第1号証に記載された発明は「発番と呼出音ランクを登録」している点。
b)着信音表示に関して、本件特許発明が発信者番号情報に「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」のに対して、甲第1号証に記載された発明は発番に「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」点。
[判断]
ア)相違点bについて
本件特許の詳細な説明には「メモリへの電話番号の登録を重要度に応じてランク分けして行ない、加入者名の表示とともに上記ランク別の着信表示を行なうようにして、いたずら電話等の排除のみならず、応答必要性の緊急度等をより的確に判断できるようにしたものである。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)2頁3欄2〜7行)、「メモリ6にランク分けして電話番号及び加入者名が登録されている場合には、CPU5はID情報に一致した電話番号のランクをも識別して着信音表示器7又は/及びデイスプレイ表示器8によりランク別に異なった表示を行なう。着信音表示器7によるランク別表示は断続周期、音量又は音色を変えることにより、又デイスプレイ表示器8によるランク別表示は具体的にランクを示す文字の表示、特定キヤラクタのフラツシユ表示等によりそれぞれ行なう。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄20〜29行)の記載があることから、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」とは、加入者(発信者)に応じた着信音を鳴らすようにしたことであると解され、一方、甲第1号証には「呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は」(甲第1号証1頁右欄4〜6行)の記載があることより、呼出音A,B,Cに呼出音ランクA,B,Cが対応して存在することになるので、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」ことには実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点bについての実質的な相違は「対応する加入者名を表示する」点にあるといえるが、着信時に「対応する加入者名を表示する」ことは、甲第2号証乃至甲第5号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「対応する加入者名を表示するととともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
イ)相違点aについて
本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」において、メモリに「電話番号」を「当該加入者のランク別に登録」する意義は、加入者(発信者)に応じた着信音表示を行なうために、メモリに加入者(発信者)のランクをランク別に登録するものと解され、一方、甲第1号証に記載された発明の呼出音ランクには呼出音ランクA,B,Cが対応して存在するため、メモリに対して、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号を、当該加入者のランク別に登録」とは実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点aについての実質的な相違はメモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」したことにあるといえるが、メモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」しておくことは、甲第2号証乃至甲第5号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
[まとめ]
したがって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[被請求人の主張に対して]
被請求人は、答弁書において、以下ア)乃至イ)の旨を主張している。
ア)「発番」について
被請求人は、甲第1号証の「また,緊急電話をかけることも可能となる。」(甲第1号証1頁右欄11〜12行)との記載を根拠として、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、「発せられた番号」、「発信者がダイヤルした番号」を意味するから、本件特許発明の「発信者番号情報」ではない旨を主張している。
しかしながら、被請求人が指摘する個所は意味が明確でないから、これに基づいて「発番」の意味を特定することはできないものであり、また、甲第1号証全体の記載の趣旨に基づけば、甲第1号証に記載された発明のごとく認定すること(第3 3.(2)ア)参照)に誤りはない。
イ)「加入者のランク別に登録」について
被請求人は、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」は、「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」するものでないので、本件特許発明の「加入者のランク別に登録」するものと異なる旨を主張している。
しかしながら、被請求人が主張している「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」すること、特に「加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」することは明細書に何も記載されていないし、しかも、本件特許発明においても、「ランク別」が「重要度の大小又は応答必要性の緊急度別」とは特定されていないから、被請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものといえる。
また、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とは、発信者を分類して記憶し、着信時にその分類を識別するものである点で共通しており、そして、どのように分類するかは必要に応じてなされる選択的事項であるから、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号と、加入者のランク別に登録」するものとは実質的に変わるものでない。したがって、被請求人の主張を採用することができない。
(3)むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとり審決する。
第4 無効2004-80034の請求人弁理士 川浪 薫(以下「請求人B」という)の求めた審判
1.請求人Bの主張
(1)無効理由1(本件特許発明の進歩性)について
本件の請求項1に係る特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)証拠方法
甲第1号証:発明協会公開技報 公技番号85-257
甲第2号証:特開昭60-206254号公報
2.被請求人の主張
(1)無効理由1(本件特許発明の進歩性)について
本件発明と甲第1号証とでは、少なくとも「発信者番号情報」ではなく「発番」が送られてくる点、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」するのではなく「発番と呼出音ランクを登録」する点、及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」のではなく「呼出音ランクにより呼出音を切替える」点において相違する。
甲第1号証の「発番」は、電話の内容に合わせて適宜変更可能な「発信者がダイヤルする番号」であり、各電話装置毎に固有の「電話器コード」と本質的に相違する。加えて甲第1号証においては、固定された「発信者番号情報」を使用すると、緊急電話をかけることができなくなるので、甲第1号証の「発番」を甲第2号証に開示されている「電話器コード」に置換することは当業者にとって容易に想到できるものではない。また、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」する点及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」点については、甲第2号証の何れにも開示されていない。
以上のとおり、甲第1号証と甲第2号証とを組み合わせても、本件発明は容易に想到できるものではないので進歩性を有する。
3.当審の判断
(1)無効理由1(特許法第29条第2項違反)について
[甲第1号証に記載された発明]
ア)甲第1号証
甲第1号証(発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257)には、図面とともに以下の事項aが記載されている。
a)「本技術は,発番による呼出音切替電話機に関するものである。従来の電話機は,発番に関係なく呼出音が同一であった。本技術の目的は,発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。以下,本技術を図により説明する。図は本技術を示すもので,電話端末に登録・記憶機能を持たせ,端末より発番と呼出音ランクを登録して記憶させるものである。交換機から発番が送られると,送られた発番と登録されている発番が端末内で照合され,呼出音ランクが抽出される。そして、呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は,リンギングやボリュ-ムを変化させる方法,ト-キシステムを用いる方法などで行なう。以上,本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。また,緊急電話をかけることも可能となる。」(1頁左欄1行〜右欄12行)
これらの記載事項、及び、電話通信の分野において、交換機から発番が送られて電話端末で呼出音が鳴らされる時は「着信時」であること、電話端末は「電話回線」に接続されていることは技術常識であることを考慮すると、甲第1号証には
「着信時に発番が送られてくる電話回線に接続される電話端末において、発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部を設け、着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした呼出音切替電話機。」の発明(以下、「甲第1号証に記載された発明」という)が開示されているものと認められる。
[対比]
本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
ア)本件特許の発明の詳細な説明には、発信者番号情報について「本発明は、・・・特に着信時に呼出信号とともに発信者番号情報(所謂、ID情報)が送られてくる電話回線に使用される」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁1欄12〜15行)、「電話回線のデイジタル化等によって発信者の電話番号情報(以下、ID情報という。)」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁2欄1〜2行)、「このときID情報、すなわち上記加入者の電話番号(発信者番号)をも併せて表示してもよい。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄5〜7行)ことが記載されているので、本件特許の「発信者番号情報」とは、「発信者の電話番号情報」又は「加入者の電話番号(発信者番号)」であると認められる。ところで、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、電話通信の分野において、電話回線に接続されている電話端末には、着信時に発信者電話番号又は発信者番号が送られるという技術常識を考慮すれば、「発信者電話番号」又は「発信者番号」を意味すると解され、このことは、「発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。」(甲第1号証1頁左欄5〜10行)、「本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。」(甲第1号証1頁右欄9〜11行)等の記載からも窺われることである。
したがって、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、本件特許発明の「発信者番号情報」、又は(発信者若しくは加入者)の「電話番号」に相当する。
イ)甲第1号に記載された発明の「記憶部」は、本件特許発明の「メモリ」に相当することは明らかであり、本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」と甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部」とは、メモリに「電話番号」と「ランク」が登録されているといえるから、「電話番号とランクを登録したメモリ」という点で一致する。
ウ)本件特許発明の「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」こととは、メモリに「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした」点で一致する。
エ)甲第1号証に記載された発明の「呼出音切替電話機」は、呼出音を鳴らすもの、すなわち着信音表示を行なうものであるから、本件特許発明の「着信表示方式」に相当する。
そうすると、両者は、
「着信時に発信者番号情報が送られてくる電話回線に接続される端末装置において、電話番号とランクを登録したメモリを設け、着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした着信表示方式。」で一致し、以下の点a、bで相違する。
a)メモリに対して、本件特許発明が「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」しているのに対して、甲第1号証に記載された発明は「発番と呼出音ランクを登録」している点。
b)着信音表示に関して、本件特許発明が発信者番号情報に「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」のに対して、甲第1号証に記載された発明は発番に「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」点。
[判断]
ア)相違点bについて
本件特許の詳細な説明には「メモリへの電話番号の登録を重要度に応じてランク分けして行ない、加入者名の表示とともに上記ランク別の着信表示を行なうようにして、いたずら電話等の排除のみならず、応答必要性の緊急度等をより的確に判断できるようにしたものである。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)2頁3欄2〜7行)、「メモリ6にランク分けして電話番号及び加入者名が登録されている場合には、CPU5はID情報に一致した電話番号のランクをも識別して着信音表示器7又は/及びデイスプレイ表示器8によりランク別に異なった表示を行なう。着信音表示器7によるランク別表示は断続周期、音量又は音色を変えることにより、又デイスプレイ表示器8によるランク別表示は具体的にランクを示す文字の表示、特定キヤラクタのフラツシユ表示等によりそれぞれ行なう。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄20〜29行)の記載があることから、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」とは、加入者(発信者)に応じた着信音を鳴らすようにしたことであると解され、一方、甲第1号証には「呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は」(甲第1号証1頁右欄4〜6行)の記載があることより、呼出音A,B,Cに呼出音ランクA,B,Cが対応して存在することになるので、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」ことには実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点bについての実質的な相違は「対応する加入者名を表示する」点にあるといえるが、着信時に「対応する加入者名を表示する」ことは周知技術(特開昭57-4639号公報、特開昭59-168756号公報、特開昭54-504号公報、特開昭60-59851号公報参照)であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「対応する加入者名を表示するととともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
イ)相違点aについて
本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」において、メモリに「電話番号」を「当該加入者のランク別に登録」する意義は、加入者(発信者)に応じた着信音表示を行なうために、メモリに加入者(発信者)のランクをランク別に登録するものと解され、一方、甲第1号証に記載された発明の呼出音ランクには呼出音ランクA,B,Cが対応して存在するため、メモリに対して、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号を、当該加入者のランク別に登録」とは実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点aについての実質的な相違はメモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」したことにあるといえるが、メモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」しておくことは周知技術(特開昭57-4639号公報、特開昭59-168756号公報、特開昭54-504号公報、特開昭60-59851号公報参照)であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
[まとめ]
したがって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[被請求人の主張に対して]
被請求人は、答弁書において、以下ア)乃至イ)の旨を主張している。
ア)「発番」について
被請求人は、甲第1号証の「また,緊急電話をかけることも可能となる。」(甲第1号証1頁右欄11〜12行)との記載を根拠として、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、「発せられた番号」、「発信者がダイヤルした番号」を意味するから、本件特許発明の「発信者番号情報」ではない旨を主張している。
しかしながら、被請求人が指摘する個所は意味が明確でないから、これに基づいて「発番」の意味を特定することはできないものであり、また、甲第1号証全体の記載の趣旨に基づけば、甲第1号証に記載された発明のごとく認定すること(第4 3.(1)ア)参照)に誤りはない。
イ)「加入者のランク別に登録」について
被請求人は、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」は、「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」するものでないので、本件特許発明の「加入者のランク別に登録」するものと異なる旨を主張している。
しかしながら、被請求人が主張している「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」すること、特に「加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」することは明細書に何も記載されていないし、しかも、本件特許発明においても、「ランク別」が「重要度の大小又は応答必要性の緊急度別」とは特定されていないから、被請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものといえる。
また、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とは、発信者を分類して記憶し、着信時にその分類を識別するものである点で共通しており、そして、どのように分類するかは必要に応じてなされる選択的事項であるから、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号と、加入者のランク別に登録」するものとは実質的に変わるものでない。したがって、被請求人の主張を採用することができない。
(2)むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとり審決する。
第5 無効2004-80042の請求人ボーダフォン株式会社(以下「請求人C」という)の求めた審判
1.請求人Cの主張
(1)無効理由1(本件特許発明の新規性)について
本件特許明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下、「本件特許発明」という。)は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載されているから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。本件特許は昭和62年改正(昭和62年法律第27号)前の特許法第123条第1項第1号(以下、「旧特許法第123条第1項第1号」という。)の規定に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(本件特許発明の進歩性)について
仮に、本件特許発明に甲第1号証に開示されていないと認定される事項があったとしても、さらに本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、または甲第6号証のいずれかを参照することによって、いわゆる当業者が本件特許発明に容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。従って、本件特許は旧特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(3)証拠方法
甲第1号証 発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257
甲第2号証 特開昭59-168756号公報
甲第3号証 特開昭60-46160号公報
甲第4号証 特開昭60-59854号公報
甲第5号証 特開昭54-504号公報
甲第6号証 特開昭60-59851号公報
甲第7号証 特許出願公告平3-6711号公報(本件特許公報)
2.被請求人の主張
(1)無効理由1、2(本件特許発明の新規性進歩性)について
本件発明と甲第1号証とでは、少なくとも「発信者番号情報」ではなく「発番」が送られてくる点、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」するのではなく「発番と呼出音ランクを登録」する点、及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」のではなく「呼出音ランクにより呼出音を切替える」点において相違する。
甲第1号証の「発番」は、電話の内容に合わせて適宜変更可能な「発信者がダイヤルする番号」であり、発信者の端末装置毎に固定された「発信者番号情報」と本質的に相違する。加えて甲第1号証においては、固定された「発信者番号情報」を使用すると、緊急電話をかけることができなくなるので、甲第1号証の「発番」を甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証に開示されている「発信者番号情報」に置換することは当業者にとって容易に想到できるものではない。また、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」する点及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」点については、甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証の何れにも開示されていない。
本件発明と甲第3号証とは、両者の技術分野が相違し、甲第3号証には本件発明と甲第1号証との間の相違点である「発信者番号情報」が送られてくる点、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」する点、「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」点も開示されていない。
以上のとおり、甲第1号証と甲第2号証乃至甲第6号証とを組み合わせても、本件発明は容易に想到できるものではないので進歩性を有する。
3.当審の判断
(1)無効理由1、2(特許法第29条第1項、2項違反)について
[甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証乃至甲第6号証に記載された発明]
ア)甲第1号証
甲第1号証(発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257)には、図面とともに以下の事項aが記載されている。
a)「本技術は,発番による呼出音切替電話機に関するものである。従来の電話機は,発番に関係なく呼出音が同一であった。本技術の目的は,発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。以下,本技術を図により説明する。図は本技術を示すもので,電話端末に登録・記憶機能を持たせ,端末より発番と呼出音ランクを登録して記憶させるものである。交換機から発番が送られると,送られた発番と登録されている発番が端末内で照合され,呼出音ランクが抽出される。そして、呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は,リンギングやボリュ-ムを変化させる方法,ト-キシステムを用いる方法などで行なう。以上,本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。また,緊急電話をかけることも可能となる。」(1頁左欄1行〜右欄12行)
これらの記載事項、及び、電話通信の分野において、交換機から発番が送られて電話端末で呼出音が鳴らされる時は「着信時」であること、電話端末は「電話回線」に接続されていることは技術常識であることを考慮すると、甲第1号証には
「着信時に発番が送られてくる電話回線に接続される電話端末において、発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部を設け、着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした呼出音切替電話機。」の発明(以下、「甲第1号証に記載された発明」という)が開示されているものと認められる。
イ)甲第2号証
甲第2号証(特開昭59-168756号公報)には、以下の事項aが記載されている。
a)「本発明は以上説明したように、加入者端末に液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等の文字表示デバイスを設け、さらに発呼者番号と、発呼者氏名等の発呼者識別情報を対応させて登録できるメモリを設備し、上記加入者端末への着信時、上記加入者端末にて発呼者番号を受信し、上記発呼者番号により上記メモリより発呼者番号に対応する発呼者識別情報を索引し、上記表示デバイスに発呼者氏名等の発呼者識別情報を文字表示することを可能にするものであり、着信側加入者が着信の相手先を前もって知ることができる効果がある。」(3頁右上欄9〜19行)
ウ)甲第5号証
甲第5号証(特開昭54-504号公報)には、以下の事項a、bが記載されている。
a)「受信側においては、呼出信号を検出すると、判定回路9によって記憶装置11を有効にし、送られてくる送信側の電話番号を記憶する。その記憶内容は表示装置12によって電話機の外側に表示され、受信側において受信器1を上げることなく、送信側の電話番号を表示するとともに記憶することができる。」(3頁左下欄16行〜右下欄2行)
b)「このような場合に、記憶装置である書込メモリ20に余裕があれば、電話番号と相手の名前、ニックネームの対照表をこの書込メモリ20に記憶しておくことにより、かかつてきた電話の番号が誰であるかを、表示装置12により文字で表わすことができ、社内外の区別、緊急なものであるか否か、などの素早い判断をすることができる。」(4頁右上欄13〜19行)
エ)甲第6号証
甲第6号証(特開昭60-59851号公報)には、以下の事項aが記載されている。
a)「発ADP2から送出されたID信号は、着ADP14に転送されてID信号受信器18で受信され、プロセッサ24を介して時計20から出される時刻情報と共にID情報(本実施例では電話番号)としてメモリ19に記憶される。メモリ19には、着側加入者があらかじめID情報(電話番号)と対応づけて登録しておいた名前あるいは称号等の他の発呼者識別情報が記憶されており、前述のように受信された発呼者電話番号がメモリ19に入力されると、プロセッサ24は、あらかじめ登録してあるID情報(電話番号)と一致するものがあるかどうかを検索し、もし一致するものがあれば該当する名前あるいは称号等と共に時刻情報及び発呼者電話番号をID情報表示装置21に表示する。」(4頁左下欄3〜17行)
[対比]
本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
ア)本件特許の発明の詳細な説明には、発信者番号情報について「本発明は、・・・特に着信時に呼出信号とともに発信者番号情報(所謂、ID情報)が送られてくる電話回線に使用される」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁1欄12〜15行)、「電話回線のデイジタル化等によって発信者の電話番号情報(以下、ID情報という。)」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁2欄1〜2行)、「このときID情報、すなわち上記加入者の電話番号(発信者番号)をも併せて表示してもよい。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄5〜7行)ことが記載されているので、本件特許の「発信者番号情報」とは、「発信者の電話番号情報」又は「加入者の電話番号(発信者番号)」であると認められる。ところで、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、電話通信の分野において、電話回線に接続されている電話端末には、着信時に発信者電話番号又は発信者番号が送られるという技術常識を考慮すれば、「発信者電話番号」又は「発信者番号」を意味すると解され、このことは、「発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。」(甲第1号証1頁左欄5〜10行)、「本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。」(甲第1号証1頁右欄9〜11行)等の記載からも窺われることである。
したがって、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、本件特許発明の「発信者番号情報」、又は(発信者若しくは加入者)の「電話番号」に相当する。
イ)甲第1号に記載された発明の「記憶部」は、本件特許発明の「メモリ」に相当することは明らかであり、本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」と甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部」とは、メモリに「電話番号」と「ランク」が登録されているといえるから、「電話番号とランクを登録したメモリ」という点で一致する。
ウ)本件特許発明の「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」こととは、メモリに「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした」点で一致する。
エ)甲第1号証に記載された発明の「呼出音切替電話機」は、呼出音を鳴らすもの、すなわち着信音表示を行なうものであるから、本件特許発明の「着信表示方式」に相当する。
そうすると、両者は、
「着信時に発信者番号情報が送られてくる電話回線に接続される端末装置において、電話番号とランクを登録したメモリを設け、着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした着信表示方式。」で一致し、以下の点a、bで相違する。
a)メモリに対して、本件特許発明が「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」しているのに対して、甲第1号証に記載された発明は「発番と呼出音ランクを登録」している点。
b)着信音表示に関して、本件特許発明が発信者番号情報に「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」のに対して、甲第1号証に記載された発明は発番に「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」点。
[判断]
ア)相違点bについて
本件特許の詳細な説明には「メモリへの電話番号の登録を重要度に応じてランク分けして行ない、加入者名の表示とともに上記ランク別の着信表示を行なうようにして、いたずら電話等の排除のみならず、応答必要性の緊急度等をより的確に判断できるようにしたものである。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)2頁3欄2〜7行)、「メモリ6にランク分けして電話番号及び加入者名が登録されている場合には、CPU5はID情報に一致した電話番号のランクをも識別して着信音表示器7又は/及びデイスプレイ表示器8によりランク別に異なった表示を行なう。着信音表示器7によるランク別表示は断続周期、音量又は音色を変えることにより、又デイスプレイ表示器8によるランク別表示は具体的にランクを示す文字の表示、特定キヤラクタのフラツシユ表示等によりそれぞれ行なう。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄20〜29行)の記載があることから、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」とは、加入者(発信者)に応じた着信音を鳴らすようにしたことであると解され、一方、甲第1号証には「呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は」(甲第1号証1頁右欄4〜6行)の記載があることより、呼出音A,B,Cに呼出音ランクA,B,Cが対応して存在することになるので、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」ことには実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点bについての実質的な相違は「対応する加入者名を表示する」点にあるといえるが、着信時に「対応する加入者名を表示する」ことは、甲第2号証、甲第5号証乃至甲第6号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「対応する加入者名を表示するととともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
イ)相違点aについて
本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」において、メモリに「電話番号」を「当該加入者のランク別に登録」する意義は、加入者(発信者)に応じた着信音表示を行なうために、メモリに加入者(発信者)のランクをランク別に登録するものと解され、一方、甲第1号証に記載された発明の呼出音ランクには呼出音ランクA,B,Cが対応して存在するため、メモリに対して、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号を、当該加入者のランク別に登録」とは実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点aについての実質的な相違はメモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」したことにあるといえるが、メモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」しておくことは、甲第2号証、甲第5号証乃至甲第6号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
[まとめ]
したがって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[被請求人の主張に対して]
被請求人は、答弁書において、以下ア)乃至イ)の旨を主張している。
ア)「発番」について
被請求人は、甲第1号証の「また,緊急電話をかけることも可能となる。」(甲第1号証1頁右欄11〜12行)との記載を根拠として、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、「発せられた番号」、「発信者がダイヤルした番号」を意味するから、本件特許発明の「発信者番号情報」ではない旨を主張している。
しかしながら、被請求人が指摘する個所は意味が明確でないから、これに基づいて「発番」の意味を特定することはできないものであり、また、甲第1号証全体の記載の趣旨に基づけば、甲第1号証に記載された発明のごとく認定すること(第5 3.(1)ア)参照)に誤りはない。
イ)「加入者のランク別に登録」について
被請求人は、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」は、「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」するものでないので、本件特許発明の「加入者のランク別に登録」するものと異なる旨を主張している。
しかしながら、被請求人が主張している「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」すること、特に「加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」することは明細書に何も記載されていないし、しかも、本件特許発明においても、「ランク別」が「重要度の大小又は応答必要性の緊急度別」とは特定されていないから、被請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものといえる。
また、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とは、発信者を分類して記憶し、着信時にその分類を識別するものである点で共通しており、そして、どのように分類するかは必要に応じてなされる選択的事項であるから、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号と、加入者のランク別に登録」するものとは実質的に変わるものでない。したがって、被請求人の主張を採用することができない。
(2)むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとり審決する。
第6 無効2004-80043の請求人株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下「請求人D」という)の求めた審判
1.請求人Dの主張
(1)無効理由1(本件特許発明の新規性)について
特許第1647230号(以下、「本件特許」という)の明細書の特許請求の範囲第1項に係る発明(以下、「本件特許発明」という)は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、本件特許は同法第123条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。
(2)無効理由2(本件特許発明の進歩性1)について
本件特許発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。したがって、本件特許は同法第123条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。
(3)無効理由3(本件特許発明の進歩性2)について
本件特許発明は、引用発明1及びいずれも本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明、甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明の一つ、もしくは二つ以上に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。したがって、本件特許は同法第123条第1項第1号に規定により、無効とすべきである。
(4)証拠方法
甲第1号証:発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257
甲第2号証:特開昭59-168756号公報
甲第3号証:特開昭57-4639号公報
甲第4号証:特開昭54-504号公報
甲第5号証:特開昭60-59854号公報
甲第6号証:特開昭58-38055号公報
2.被請求人の主張
(1)無効理由1、2、3(本件特許発明の新規性進歩性)について
本件発明と甲第1号証とでは、少なくとも「発信者番号情報」ではなく「発番」が送られてくる点、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」するのではなく「発番と呼出音ランクを登録」する点、及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」のではなく「呼出音ランクにより呼出音を切替える」点において相違する。
甲第1号証の「発番」は、電話の内容に合わせて適宜変更可能な「発信者がダイヤルする番号」であり、発信者の端末装置毎に固定された「発信者番号情報」と本質的に相違する。加えて甲第1号証においては、固定された「発信者番号情報」を使用すると、緊急電話をかけることができなくなるので、甲第1号証の「発番」を甲第2号証乃至甲第6号証に開示されている「発信者番号情報」に置換することは当業者にとって容易に想到できるものではない。また、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」する点及び「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なう」点については、甲第2号証乃至甲第6号証の何れにも開示されていない。
以上のとおり、甲第1号証と甲第2号証乃至甲第6号証とを組み合わせても、本件発明は容易に想到できるものではないので進歩性を有する。
3.当審の判断
(1)無効理由1、2、3(特許法第29条第1項、2項違反)について
[甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明]
ア)甲第1号証
甲第1号証(発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257)には、図面とともに以下の事項aが記載されている。
a)「本技術は,発番による呼出音切替電話機に関するものである。従来の電話機は,発番に関係なく呼出音が同一であった。本技術の目的は,発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。以下,本技術を図により説明する。図は本技術を示すもので,電話端末に登録・記憶機能を持たせ,端末より発番と呼出音ランクを登録して記憶させるものである。交換機から発番が送られると,送られた発番と登録されている発番が端末内で照合され,呼出音ランクが抽出される。そして、呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は,リンギングやボリュ-ムを変化させる方法,ト-キシステムを用いる方法などで行なう。以上,本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。また,緊急電話をかけることも可能となる。」(1頁左欄1行〜右欄12行)
これらの記載事項、及び、電話通信の分野において、交換機から発番が送られて電話端末で呼出音が鳴らされる時は「着信時」であること、電話端末は「電話回線」に接続されていることは技術常識であることを考慮すると、甲第1号証には
「着信時に発番が送られてくる電話回線に接続される電話端末において、発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部を設け、着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした呼出音切替電話機。」の発明(以下、「甲第1号証に記載された発明」という)が開示されているものと認められる。
イ)甲第2号証
甲第2号証(特開昭59-168756号公報)には、以下の事項aが記載されている。
a)「本発明は以上説明したように、加入者端末に液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等の文字表示デバイスを設け、さらに発呼者番号と、発呼者氏名等の発呼者識別情報を対応させて登録できるメモリを設備し、上記加入者端末への着信時、上記加入者端末にて発呼者番号を受信し、上記発呼者番号により上記メモリより発呼者番号に対応する発呼者識別情報を索引し、上記表示デバイスに発呼者氏名等の発呼者識別情報を文字表示することを可能にするものであり、着信側加入者が着信の相手先を前もって知ることができる効果がある。」(3頁右上欄9〜19行)
ウ)甲第3号証
甲第3号証(特開昭57-4639号公報)には、以下の事項a、bが記載されている。
a)「電話番号並びに電話番号に対応する名称を複数組記憶する機構、該記憶機構に電話番号と名称を記憶させるための入力機構、局より来る発呼者電話番号を受ける機構、及び前記記憶機構より名称を呼び出し表示する機構を有し、着信時局より来る発呼者電話番号を受けて前記記憶機構に記憶している電話番号と照合し、一致した場合は対応する名称を表示することを特徴とする発呼者名称表示端末装置。」(1頁左下欄4〜12行)
b)「本発明の目的は、上記した従来技術の問題であった発信者名が応答するまで分らないという欠点をなくし、着信時に発信者の名前を表示する電話端末を提供することにある。即ち本発明は、発信局もしくは発端末から、発呼者電話番号を着信局経由で着信電話端末へ送り、その発呼者電話番号を基に発呼者名称を検索し表示するものである。」(1頁右下欄3〜10行)
エ)甲第4号証
甲第4号証(特開昭54-504号公報)には、以下の事項a、bが記載されている。
a)「受信側においては、呼出信号を検出すると、判定回路9によって記憶装置11を有効にし、送られてくる送信側の電話番号を記憶する。その記憶内容は表示装置12によって電話機の外側に表示され、受信側において受信器1を上げることなく、送信側の電話番号を表示するとともに記憶することができる。」(3頁左下欄16行〜右下欄2行)
b)「このような場合に、記憶装置である書込メモリ20に余裕があれば、電話番号と相手の名前、ニックネームの対照表をこの書込メモリ20に記憶しておくことにより、かかつてきた電話の番号が誰であるかを、表示装置12により文字で表わすことができ、社内外の区別、緊急なものであるか否か、などの素早い判断をすることができる。」(4頁右上欄13〜19行)
[対比]
本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
ア)本件特許の発明の詳細な説明には、発信者番号情報について「本発明は、・・・特に着信時に呼出信号とともに発信者番号情報(所謂、ID情報)が送られてくる電話回線に使用される」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁1欄12〜15行)、「電話回線のデイジタル化等によって発信者の電話番号情報(以下、ID情報という。)」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁2欄1〜2行)、「このときID情報、すなわち上記加入者の電話番号(発信者番号)をも併せて表示してもよい。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄5〜7行)ことが記載されているので、本件特許の「発信者番号情報」とは、「発信者の電話番号情報」又は「加入者の電話番号(発信者番号)」であると認められる。ところで、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、電話通信の分野において、電話回線に接続されている電話端末には、着信時に発信者電話番号又は発信者番号が送られるという技術常識を考慮すれば、「発信者電話番号」又は「発信者番号」を意味すると解され、このことは、「発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。」(甲第1号証1頁左欄5〜10行)、「本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。」(甲第1号証1頁右欄9〜11行)等の記載からも窺われることである。
したがって、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、本件特許発明の「発信者番号情報」、又は(発信者若しくは加入者)の「電話番号」に相当する。
イ)甲第1号に記載された発明の「記憶部」は、本件特許発明の「メモリ」に相当することは明らかであり、本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」と甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部」とは、メモリに「電話番号」と「ランク」が登録されているといえるから、「電話番号とランクを登録したメモリ」という点で一致する。
ウ)本件特許発明の「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」こととは、メモリに「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした」点で一致する。
エ)甲第1号証に記載された発明の「呼出音切替電話機」は、呼出音を鳴らすもの、すなわち着信音表示を行なうものであるから、本件特許発明の「着信表示方式」に相当する。
そうすると、両者は、
「着信時に発信者番号情報が送られてくる電話回線に接続される端末装置において、電話番号とランクを登録したメモリを設け、着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした着信表示方式。」で一致し、以下の点a、bで相違する。
a)メモリに対して、本件特許発明が「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」しているのに対して、甲第1号証に記載された発明は「発番と呼出音ランクを登録」している点。
b)着信音表示に関して、本件特許発明が発信者番号情報に「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」のに対して、甲第1号証に記載された発明は発番に「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」点。
[判断]
ア)相違点bについて
本件特許の詳細な説明には「メモリへの電話番号の登録を重要度に応じてランク分けして行ない、加入者名の表示とともに上記ランク別の着信表示を行なうようにして、いたずら電話等の排除のみならず、応答必要性の緊急度等をより的確に判断できるようにしたものである。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)2頁3欄2〜7行)、「メモリ6にランク分けして電話番号及び加入者名が登録されている場合には、CPU5はID情報に一致した電話番号のランクをも識別して着信音表示器7又は/及びデイスプレイ表示器8によりランク別に異なった表示を行なう。着信音表示器7によるランク別表示は断続周期、音量又は音色を変えることにより、又デイスプレイ表示器8によるランク別表示は具体的にランクを示す文字の表示、特定キヤラクタのフラツシユ表示等によりそれぞれ行なう。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄20〜29行)の記載があることから、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」とは、加入者(発信者)に応じた着信音を鳴らすようにしたことであると解され、一方、甲第1号証には「呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は」(甲第1号証1頁右欄4〜6行)の記載があることより、呼出音A,B,Cに呼出音ランクA,B,Cが対応して存在することになるので、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第1号証に記載された発明の「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」ことには実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点bについての実質的な相違は「対応する加入者名を表示する」点にあるといえるが、着信時に「対応する加入者名を表示する」ことは、甲第2号証乃至甲第4号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「対応する加入者名を表示するととともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
イ)相違点aについて
本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」において、メモリに「電話番号」を「当該加入者のランク別に登録」する意義は、加入者(発信者)に応じた着信音表示を行なうために、メモリに加入者(発信者)のランクをランク別に登録するものと解され、一方、甲第1号証に記載された発明の呼出音ランクには呼出音ランクA,B,Cが対応して存在するため、メモリに対して、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号を、当該加入者のランク別に登録」とは実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点aについての実質的な相違はメモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」したことにあるといえるが、メモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」しておくことは、甲第2号証乃至甲第4号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第1号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用し、「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
[まとめ]
したがって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[被請求人の主張に対して]
被請求人は、答弁書において、以下ア)乃至イ)の旨を主張している。
ア)「発番」について
被請求人は、甲第1号証の「また,緊急電話をかけることも可能となる。」(甲第1号証1頁右欄11〜12行)との記載を根拠として、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、「発せられた番号」、「発信者がダイヤルした番号」を意味するから、本件特許発明の「発信者番号情報」ではない旨を主張している。
しかしながら、被請求人が指摘する個所は意味が明確でないから、これに基づいて「発番」の意味を特定することはできないものであり、また、甲第1号証全体の記載の趣旨に基づけば、甲第1号証に記載された発明のごとく認定すること(第6 3.(1)ア)参照)に誤りはない。
イ)「加入者のランク別に登録」について
被請求人は、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」は、「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」するものでないので、本件特許発明の「加入者のランク別に登録」するものと異なる旨を主張している。
しかしながら、被請求人が主張している「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」すること、特に「加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」することは明細書に何も記載されていないし、しかも、本件特許発明においても、「ランク別」が「重要度の大小又は応答必要性の緊急度別」とは特定されていないから、被請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものといえる。
また、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とは、発信者を分類して記憶し、着信時にその分類を識別するものである点で共通しており、そして、どのように分類するかは必要に応じてなされる選択的事項であるから、甲第1号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号と、加入者のランク別に登録」するものとは実質的に変わるものでない。したがって、被請求人の主張を採用することができない。
(2)むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとり審決する。
第7 無効2004-80045の請求人KDDI株式会社(以下「請求人E」という)の求めた審判
1.請求人Eの主張
(1)無効理由1(本件特許発明の新規性)について
本件特許発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭60-46160号公報)に記載されているから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。本件特許発明は旧特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(本件特許発明の進歩性)について
仮に、甲第1号証に記載のない部分があったとしても、更に、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証、甲第3号証、または甲第4号証を参照することによって当業者が本件特許発明に容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。本件特許発明は旧特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(3)証拠方法
甲第1号証 特開昭60-46160号公報
甲第2号証 特開昭59-168756号公報
甲第3号証 特開昭59-175255号公報
甲第4号証 発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257
甲第5号証 特公平3-6711号公報(本件特許公報)
2.被請求人の主張
(1)無効理由1、2(本件特許発明の新規性進歩性)について
本件発明と甲第1号証とでは、「着信時に発信者番号情報が送られてくる電話回線に接続される端末装置」ではなく、「着信後、発呼者と着呼者との間で応答状態を形成した後に、着呼者から発呼者に対して登録番号を送出するようにメッセージを送出し、そのメッセージに応答して予め着呼者側から与えられていた登録番号が送られてくる電話回線に接続される電話装置」である点、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録したメモリ」ではなく、「番号氏名対応表9と話したい相手、話したくない相手が設定された論理制御部5」である点、「着信時に・・・着信音表示を行なう」のではなく、「着信後、発呼者と着呼者との間で応答状態を形成した後に、着呼者側から発呼者に対して登録番号を送出するようにメッセージを送出し、そのメッセージに応答して発呼者から発信されてから行なわれる」点及び「ランク別の着信音表示を行う」のではなく、「話したい相手のときは通話ができるようにし、それ以外の相手の場合には自動的に回線を解放する」点において相違する。
甲第1号証の「登録番号」は、着呼者から特定の発呼者に対して予め与えられたものであるから、本件発明、甲第2号証及び甲第3号証の「発信者番号情報」と本質的に相違し、また、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録したメモリ」及び「ランク別の着信音表示を行う」点については甲第2号証及び甲第3号証に開示されていないので、本件発明は、甲第1号証と甲第2号証及び甲第3号証とを組み合わせても、当業者にとって容易に想到できるものではない。
甲第4号証の「発番」は、電話の内容に合わせて適宜変更可能な「発信者がダイヤルする番号」であり、発信者の端末装置毎に固定された「発信者番号情報」でない。甲第4号証には、「電話番号とその加入者名との対応を加入者のランク別に登録」する点、「ランク別の着信音表示を行なう」点が開示されていない。
以上のとおり、甲第1号証と甲第2号証乃至甲第4号証とを組み合わせても、本件発明は、容易に想到できるものではないので進歩性を有する。
3.当審の判断
(1)無効理由1、2(特許法第29条第1項、2項違反)について
[甲第4号証、甲第2号証に記載された発明]
ア)甲第4号証
甲第4号証(発明協会公開技報Vol.10-1公技番号85-257)には、図面とともに以下の事項aが記載されている。
a)「本技術は,発番による呼出音切替電話機に関するものである。従来の電話機は,発番に関係なく呼出音が同一であった。本技術の目的は,発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。以下,本技術を図により説明する。図は本技術を示すもので,電話端末に登録・記憶機能を持たせ,端末より発番と呼出音ランクを登録して記憶させるものである。交換機から発番が送られると,送られた発番と登録されている発番が端末内で照合され,呼出音ランクが抽出される。そして、呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は,リンギングやボリュ-ムを変化させる方法,ト-キシステムを用いる方法などで行なう。以上,本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。また,緊急電話をかけることも可能となる。」(1頁左欄1行〜右欄12行)
これらの記載事項、及び、電話通信の分野において、交換機から発番が送られて電話端末で呼出音が鳴らされる時は「着信時」であること、電話端末は「電話回線」に接続されていることは技術常識であることを考慮すると、甲第4号証には
「着信時に発番が送られてくる電話回線に接続される電話端末において、発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部を設け、着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした呼出音切替電話機。」の発明(以下、「甲第4号証に記載された発明」という)が開示されているものと認められる。
イ)甲第2号証
甲第2号証(特開昭59-168756号公報)には、以下の事項aが記載されている。
a)「本発明は以上説明したように、加入者端末に液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等の文字表示デバイスを設け、さらに発呼者番号と、発呼者氏名等の発呼者識別情報を対応させて登録できるメモリを設備し、上記加入者端末への着信時、上記加入者端末にて発呼者番号を受信し、上記発呼者番号により上記メモリより発呼者番号に対応する発呼者識別情報を索引し、上記表示デバイスに発呼者氏名等の発呼者識別情報を文字表示することを可能にするものであり、着信側加入者が着信の相手先を前もって知ることができる効果がある。」(3頁右上欄9〜19行)
[対比]
本件特許発明と甲第4号証に記載された発明とを対比する。
ア)本件特許の発明の詳細な説明には、発信者番号情報について「本発明は、・・・特に着信時に呼出信号とともに発信者番号情報(所謂、ID情報)が送られてくる電話回線に使用される」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁1欄12〜15行)、「電話回線のデイジタル化等によって発信者の電話番号情報(以下、ID情報という。)」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)1頁2欄1〜2行)、「このときID情報、すなわち上記加入者の電話番号(発信者番号)をも併せて表示してもよい。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄5〜7行)ことが記載されているので、本件特許の「発信者番号情報」とは、「発信者の電話番号情報」又は「加入者の電話番号(発信者番号)」であると認められる。ところで、甲第1号証に記載された発明の「発番」は、電話通信の分野において、電話回線に接続されている電話端末には、着信時に発信者電話番号又は発信者番号が送られるという技術常識を考慮すれば、「発信者電話番号」又は「発信者番号」を意味すると解され、このことは、「発番によって呼出音を切替えられる電話機を提供することにあり,その要旨は,予め,発番と呼出音ランクを登録しておき,交換機から発番が送られた時,呼出音ランクに従って呼出音あるいは表示を切替えることにある。」(甲第4号証1頁左欄5〜10行)、「本技術によれば,呼出音や表示により発信者を知ることができるので,受信すべき人が直ちに電話に出られる。」(甲第4号証1頁右欄9〜11行)等の記載からも窺われることである。
したがって、甲第4号証に記載された発明の「発番」は、本件特許発明の「発信者番号情報」、又は(発信者若しくは加入者)の「電話番号」に相当する。
イ)甲第4号に記載された発明の「記憶部」は、本件特許発明の「メモリ」に相当することは明らかであり、本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」と甲第4号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録した発番・呼出しランク記憶部」とは、メモリに「電話番号」と「ランク」が登録されているといえるから、「電話番号とランクを登録したメモリ」という点で一致する。
ウ)本件特許発明の「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第4号証に記載された発明の「着信時に上記発番を上記記憶部に登録された発番と照合し、一致した発番があれば、発番に対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」こととは、メモリに「着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした」点で一致する。
エ)甲第4号証に記載された発明の「呼出音切替電話機」は、呼出音を鳴らすもの、すなわち着信音表示を行なうものであるから、本件特許発明の「着信表示方式」に相当する。
そうすると、両者は、
「着信時に発信者番号情報が送られてくる電話回線に接続される端末装置において、電話番号とランクを登録したメモリを設け、着信時に上記発信者番号情報を上記メモリに登録された電話番号と照合し、一致した電話番号があれば、上記ランクに応じた着信音表示を行なうようにした着信表示方式。」で一致し、以下の点a、bで相違する。
a)メモリに対して、本件特許発明が「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」しているのに対して、甲第4号証に記載された発明は「発番と呼出音ランクを登録」している点。
b)着信音表示に関して、本件特許発明が発信者番号情報に「対応する加入者名を表示するとともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」のに対して、甲第4号証に記載された発明は発番に「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」点。
[判断]
ア)相違点bについて
本件特許の詳細な説明には「メモリへの電話番号の登録を重要度に応じてランク分けして行ない、加入者名の表示とともに上記ランク別の着信表示を行なうようにして、いたずら電話等の排除のみならず、応答必要性の緊急度等をより的確に判断できるようにしたものである。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)2頁3欄2〜7行)、「メモリ6にランク分けして電話番号及び加入者名が登録されている場合には、CPU5はID情報に一致した電話番号のランクをも識別して着信音表示器7又は/及びデイスプレイ表示器8によりランク別に異なった表示を行なう。着信音表示器7によるランク別表示は断続周期、音量又は音色を変えることにより、又デイスプレイ表示器8によるランク別表示は具体的にランクを示す文字の表示、特定キヤラクタのフラツシユ表示等によりそれぞれ行なう。」(本件特許公報(特公平3-6711号公報)3頁5欄20〜29行)の記載があることから、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」とは、加入者(発信者)に応じた着信音を鳴らすようにしたことであると解され、一方、甲第4号証には「呼出音切替機能は,抽出された呼出音ランクにより呼出音を切替える。尚,呼出音A,B,Cの区別は」(甲第4号証1頁右欄4〜6行)の記載があることより、呼出音A,B,Cに呼出音ランクA,B,Cが対応して存在することになるので、本件特許発明の「上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことと甲第4号証に記載された発明の「対応する呼出音ランクの呼出音を鳴らすようにした」ことには実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点bについての実質的な相違は「対応する加入者名を表示する」点にあるといえるが、着信時に「対応する加入者名を表示する」ことは、甲第2号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第4号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第4号証に記載された発明に適用し、「対応する加入者名を表示するととともに上記ランク別の着信音表示を行なうようにした」ことは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
イ)相違点aについて
本件特許発明の「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録したメモリ」において、メモリに「電話番号」を「当該加入者のランク別に登録」する意義は、加入者(発信者)に応じた着信音表示を行なうために、メモリに加入者(発信者)のランクをランク別に登録するものと解され、一方、甲第4号証に記載された発明の呼出音ランクには呼出音ランクA,B,Cが対応して存在するため、メモリに対して、甲第4号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号を、当該加入者のランク別に登録」とは実質的な違いがないといえる。そうだとすると、相違点aについての実質的な相違はメモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」したことにあるといえるが、メモリに「電話番号とその加入者名との対応」を「登録」しておくことは、甲第2号証に開示されているように周知技術であり、この周知技術を甲第4号証に適用することを妨げる理由はないので、この周知技術を甲第4号証に記載された発明に適用し、「電話番号とその加入者名との対応を、当該加入者のランク別に登録」することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
[まとめ]
したがって、本件特許発明は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[被請求人の主張に対して]
被請求人は、答弁書において、以下ア)乃至イ)の旨を主張している。
ア)「発番」について
被請求人は、甲第4号証の「また,緊急電話をかけることも可能となる。」(甲第4号証1頁右欄11〜12行)との記載を根拠として、甲第4号証に記載された発明の「発番」は、「発せられた番号」、「発信者がダイヤルした番号」を意味するから、本件特許発明の「発信者番号情報」ではない旨を主張している。
しかしながら、被請求人が指摘する個所は意味が明確でないから、これに基づいて「発番」の意味を特定することはできないものであり、また、甲第4号証全体の記載の趣旨に基づけば、甲第4号証に記載された発明のごとく認定すること(第7 3.(1)ア)参照)に誤りはない。
イ)「加入者のランク別に登録」について
被請求人は、甲第4号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」は、「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」するものでないので、本件特許発明の「加入者のランク別に登録」するものと異なる旨を主張している。
しかしながら、被請求人が主張している「受け手側が、加入者の重要度の大小又は応答必要性の緊急度等に従って、加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」すること、特に「加入者を分類して、着信時にその分類を識別できるように事前にそれらを登録」することは明細書に何も記載されていないし、しかも、本件特許発明においても、「ランク別」が「重要度の大小又は応答必要性の緊急度別」とは特定されていないから、被請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものといえる。
また、本件特許発明と甲第4号証に記載された発明とは、発信者を分類して記憶し、着信時にその分類を識別するものである点で共通しており、そして、どのように分類するかは必要に応じてなされる選択的事項であるから、甲第4号証に記載された発明の「発番と呼出音ランクを登録」と本件特許発明の「電話番号と、加入者のランク別に登録」するものとは実質的に変わるものでない。したがって、被請求人の主張を採用することができない。
(2)むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとり審決する。
 
審理終結日 2004-12-07 
結審通知日 2004-12-08 
審決日 2004-12-22 
出願番号 特願昭61-87773
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松野 高尚  
特許庁審判長 鈴木 康仁
特許庁審判官 佐藤 秀一
有泉 良三
登録日 1992-03-13 
登録番号 特許第1647230号(P1647230)
発明の名称 着信表示方式  
代理人 大貫 敏史  
代理人 竹田 稔  
代理人 田中 久子  
代理人 志賀 正武  
代理人 伊藤 高英  
代理人 大野 聖二  
代理人 渡邊 隆  
代理人 明石 幸二郎  
代理人 永島 孝明  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 磯田 志郎  
代理人 市橋 智峰  
代理人 伊藤 晴國  
代理人 土屋 徹雄  
代理人 菅原 俊樹  
代理人 青山 正和  
代理人 安國 忠彦  
代理人 小栗 久典  
代理人 中尾 俊輔  
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