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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1117666
審判番号 不服2003-17733  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2005-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-11 
確定日 2005-06-10 
事件の表示 特願2001-531761「技術達成レベル表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月14日国際公開、WO01/43002〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年12月8日の出願であって、平成15年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月11日付けで審判請求がなされるとともに同年10月14日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成15年10月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月14日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件手続き補正
平成15年10月14日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第4号に規定する期間内になされたものであって、平成15年6月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を、次のとおり(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)補正する補正事項を含むものである。
(補正前の特許請求の範囲)
【請求項1】
通信ネットワークを介してホストコンピュータと接続された複数のユーザー端末に技術レベルの達成度を表示する技術達成レベル表示システムであって、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザー端末からの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ユーザー端末は、前記ホストコンピュータからの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ホストコンピュータの格納記憶手段は、前記職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値として評価した結果を情報データとして入力する項目(a)および前記職業分野における各技術項目の基準値を数値として入力する項目(b)を有するテーブルを有しており、
前記ユーザの端末から、職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値を入力して記ホストコンピュータに送信されると、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末から入力された前記技術項目のうち少なくとも1つを技術評価プログラムにより数値データを比較評価して、その評価結果を前記項目(a)にデータ入力し、入力した数値データに基づいて、前記技術項目の評価基準値を生成して項目(b)に入力し、
前記ホストコンピュータは、前記項目(a)にデータ入力された数値と、前記項目(b)に入力されている数値との両方を前記ユーザの端末にデータを返信して、前記項目データ(a)に入力した数値と前記項目データ(b)の数値とを比較して前記ユーザー端末に表示させることによって、前記各ユーザの端末に自己の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルの指標データを表示し、
前記テーブルは、前記技術評価項目と別個に新規の技術評価項目を有しており、前記技術評価項目データと新規技術評価項目データから、技術評価の変化の度合いを比較演算して表示することを特徴とする技術達成レベル表示システム。

(補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】
通信ネットワークを介してホストコンピュータと接続された複数のユーザー端末に技術レベルの達成度を表示する技術達成レベル表示システムであって、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザー端末からの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ユーザー端末は、前記ホストコンピュータからの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ホストコンピュータの格納記憶手段は、前記ユーザの職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を数値化された評価基準に基づいて評価した結果を情報データとして入力する項目(a)および前記職業分野における各技術項目の基準値を数値として入力する項目(b)、技術項目一覧表と前記技術項目の重みが入力されている項目(c)及び各技術項目に対する演算結果を保存する項目(d)を有するテーブルを有しており、(1) 前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末と通信回線を介して接続すると、前記項目(b)から技術項目一覧表を取得し、表示HTMLを作成して、少なくとも2以上の技術項目に関する情報を含む情報を前記技術項目の数値化された評価基準とともに前記ユーザ端末に送出し、そして
(2) 前記ホストコンピュータは、前記端末から入力された前記少なくとも2以上の技術項目の数値を前記情報データとして入力する項目(a)に保存するとともに、前記項目(c)に基づいて各技術項目の重み付けを行って前記技術項目の数値評価を行い、前記数値評価結果を保存するとともに、前記ユーザの端末に表示させるかあるいは
(2’) 前記ホストコンピュータは、前記端末から入力された前記少なくとも2以上の技術項目の数値を前記情報データとして入力する項目(a)に保存するとともに、前記技術項目と同じ属性の技術データを抽出して、平均値を保存するとともに、前記ユーザの端末に表示させることによって、前記各ユーザの端末に自己の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルの指標データを表示することを特徴とする技術達成レベル表示システム。

(2)当審の判断
本件補正について検討する。

本件補正は、請求項1について、「前記ホストコンピュータの格納記憶手段は、(前記ユーザの職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を数値化された評価基準に基づいて評価した結果を情報データとして入力する項目(a)および前記職業分野における各技術項目の基準値を数値として入力する項目(b)、)技術項目一覧表と前記技術項目の重みが入力されている項目(c)及び各技術項目に対する演算結果を保存する項目(d)を有するテーブルを有しており、(1)前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末と通信回線を介して接続すると、前記項目(b)から技術項目一覧表を取得し、表示HTMLを作成して、(少なくとも2以上の技術項目に関する情報を含む情報を前記技術項目の数値化された評価基準とともに前記ユーザ端末に送出し、)
(2) 前記ホストコンピュータは、(前記端末から入力された前記少なくとも2以上の技術項目の数値を前記情報データとして入力する項目(a)に保存するとともに、)前記項目(c)に基づいて各技術項目の重み付けを行って前記技術項目の数値評価を行い、(前記数値評価結果を保存するとともに、前記ユーザの端末に表示させる)」点を、追加する補正事項を含むものである。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲,又は図面(以下、当初明細書等という)には、「テーブルが、技術項目一覧表と前記技術項目の重みが入力されている項目(c)及び各技術項目に対する演算結果を保存する項目(d)を有する」点、「ホストコンピュータが、前記ユーザの端末と通信回線を介して接続すると、前記項目(b)から技術項目一覧表を取得し、表示HTMLを作成する」点、および、「前記ホストコンピュータが、前記項目(c)に基づいて各技術項目の重み付けを行って前記技術項目の数値評価を行う」点については、何ら記載されていない。また、これらの構成は当初明細書等から自明な事項とも認められない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとは認められない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

3.本願発明について
平成15年10月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「通信ネットワークを介してホストコンピュータと接続された複数のユーザー端末に技術レベルの達成度を表示する技術達成レベル表示システムであって、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザー端末からの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ユーザー端末は、前記ホストコンピュータからの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ホストコンピュータの格納記憶手段は、前記職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値として評価した結果を情報データとして入力する項目(a)および前記職業分野における各技術項目の基準値を数値として入力する項目(b)を有するテーブルを有しており、
前記ユーザの端末から、職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値を入力して記ホストコンピュータに送信されると、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末から入力された前記技術項目のうち少なくとも1つを技術評価プログラムにより数値データを比較評価して、その評価結果を前記項目(a)にデータ入力し、入力した数値データに基づいて、前記技術項目の評価基準値を生成して項目(b)に入力し、
前記ホストコンピュータは、前記項目(a)にデータ入力された数値と、前記項目(b)に入力されている数値との両方を前記ユーザの端末にデータを返信して、前記項目データ(a)に入力した数値と前記項目データ(b)の数値とを比較して前記ユーザー端末に表示させることによって、前記各ユーザの端末に自己の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルの指標データを表示し、
前記テーブルは、前記技術評価項目と別個に新規の技術評価項目を有しており、前記技術評価項目データと新規技術評価項目データから、技術評価の変化の度合いを比較演算して表示することを特徴とする技術達成レベル表示システム。」

4.原審における拒絶の理由
これに対して、原審で平成15年4月7日付けで通知した拒絶理由は、以下のとおりである。
「B.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

本願明細書の「発明の詳細な説明」における「発明の開示」、「発明を実施するための最良の形態」などの記載を参照しても、本願の請求項1〜23に係る「表示プログラムを収納した記録媒体」、「情報表示装置」、「情報表示方法」、「プログラムが収納された媒体」、「ネットワークシステム」、「情報表示システム」に関して、これらの果たすべき機能が概念的に記載され、それらの機能が「可能となる」と記載されているのみであって、これらの機能が、いかなる技術的構成を備えるコンピュータシステムを用い、いかなるソフトウエアによる情報処理により実現されるものであるかについて、例えば、コンピュータシステムのハードウエア構成や、機能を実現するためのプログラムのフローチャートなどを用いて、具体的に記載されているものとは認められない。
そして、本願の各請求項に係る発明は、これらの「機能」を備えることによって、「所定の効果を有する」ものとされているのであるから、これらの「機能」をいかに実現するかについて具体的に記載されていない発明の詳細な説明は、本願の各請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないものである。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1〜23に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(出願時の技術水準を考慮すると、これらの「機能を備える」、「可能となる」などの記載によって当業者が実施可能である旨、意見書において主張する場合には、それぞれの「機能」について、明細書の発明の詳細な説明の記載によって実施可能であることを客観的に示す具体的な技術文献を示すなどした上で行うよう留意されたい。なお、このような技術文献を提示する場合、これらの技術文献の存在を前提としても、本願の各請求項に係る発明が「進歩性」を備えるものか否かについても検討されたい。)」

また、平成15年7月30日付け拒絶査定の備考欄には、以下の点が記載されている。
「「理由Bについて」
発明の詳細な説明の記載に関して、「本発明は、ネットワークに接続可能な周知のホストコンピュータとネットワークに接続可能な周知の端末(ハードウエア)から構成され、周知のオペレーティングシステム、インターネット閲覧ソフトウエアから構成されたものであ」る旨述べているのみであって、具体的な「技術評価プログラム」や「評価基準値を生成する」ことについて、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていることについて、客観的に把握できる主張がなされていない。」

5.審判請求人の主張
(1)平成15年4月7日付けで通知した拒絶理由に対する出願人(審判請求人)の同年6月9日付け意見書中における主張は以下のとおりである。
「2.本願発明の説明
本発明の各請求の範囲第1項を、
「1.通信ネットワークを介してホストコンピュータと接続された複数のユーザー端末に技術レベルの達成度を表示する技術達成レベル表示システムであって、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザー端末からの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ユーザー端末は、前記ホストコンピュータからの情報データを入力する入力手段、入力された情報データを格納する格納記憶手段、格納された情報データを演算する演算手段および格納された情報データおよび演算結果を表示する表示手段を有し、
前記ホストコンピュータの格納記憶手段は、前記職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値として評価した結果を情報データとして入力する項目(a)および前記職業分野における各技術項目の基準値を数値として入力する項目(b)を有するテーブルを有しており、
前記ユーザの端末から、職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値を入力して記ホストコンピュータに送信されると、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末から入力された前記技術項目のうち少なくとも1つを技術評価プログラムにより数値データを比較評価して、その評価結果を前記項目(a)にデータ入力し、入力した数値データに基づいて、前記技術項目の評価基準値を生成して項目(b)に入力し、
前記ホストコンピュータは、前記項目(a)にデータ入力された数値と、前記項目(b)に入力されている数値との両方を前記ユーザの端末にデータを返信して、前記項目データ(a)に入力した数値と前記項目データ(b)の数値とを比較して前記ユーザー端末に表示させることによって、前記各ユーザの端末に自己の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルの指標データを表示し、
前記テーブルは、前記技術評価項目と別個に新規の技術評価項目を有しており、前記技術評価項目データと新規技術評価項目データから、技術評価の変化の度合いを比較演算して表示することを特徴とする技術達成レベル表示システム」、(略)と補正致しました。
この補正により審査官殿がご指摘の29条柱書及び第36条に基づく拒絶理由が解消されたものと考えます。
すなわち、本発明は、ネットワークに接続可能な周知のホストコンピュータとネットワークに接続可能な周知の端末(ハードウェア)から構成され、周知のオペレーティングシステム、インターネット閲覧ソフトウェアから構成されたものであります。
本願発明は、ネットワークに接続されたホストコンピュータ資源において、特定の分野、例えばIT技術者の有する技術レベルの達成度を数値として把握することを特徴とするものであります。本発明においては、複数の同一分野の技術者の各技術レベルの所定の基準値に対比して表示することによって、同一の技術者における技術レベルを基準値と比較して知ることが可能となることを特徴としているものである。すなわち、所定の分野に属する技術者は、自己の有するスキルを他者と比較して表示することが可能となる。従って、例えば技術者が保有しなければならない複数の技術について、自己の達成度を確認することが可能となり、達成度の低い技術についてスキルアップするための指標とすることが可能である。
また、ある特定の技術分野に就職することを希望するユーザーは、その技術分野に必要な技術レベルを視覚的に確認することが可能である。
特に、本願請求の範囲第1項に記載の発明をインターネット等の開かれたネットワーク構成とすることによって、種々の技術レベルを有する技術者の技術レベルのデータを集めることが可能となり、より高い精度で技術レベルの指標を示すことが可能となります。
本願出願人は、実際に、IT技術者に対してインターネットを介して技術レベルの表示システムを実際に運営しています。その結果、かなり高い精度での技術レベルの評価が可能であると評判となっています。
従って、請求の範囲第1項に記載の発明は、公知のネットワークシステムにおいて、前記職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値として評価した結果を入力する項目(a)および前記職業分野における各技術項目の基準値を数値として入力する項目(b)を有するテーブルを設け、技術者に登録させるという簡単な構成で上記のような特筆すべき効果を奏するものである。
さらに、請求の範囲第1項に記載の発明は、前記テーブルは、前記技術評価項目と別個に新規の技術評価項目を有しており、前記技術評価項目と新規技術評価項目から、技術評価の変化の度合いを比較して表示することを特徴とするものであり、例えば一度、以前に技術評価を受けたユーザーがその後、学習・経験等を積んで技術レベルを向上させた場合、技術レベルの向上を視覚的に確認することが可能となるという格段の効果を奏することが可能となります。
請求の範囲第5項に記載の発明は、さらに前記ホストコンピュータと接続可能なユーザーのデータを検索する第三者の端末から構成され、 前記ユーザーまたは第三者の端末より、前記2以上の技術項目のうち任意の項目を選択し、このようにして選択した技術項目に対して任意の数値を入力することによって、前記ホストコンピュータにより選択した技術項目とその数値を有するユーザーを前記テーブルから抽出して、このようにして抽出されたユーザーを表示することを特徴とするものであります。
このように構成することによって、本願明細書の背景技術に記載の課題が解決されます。すなわち、応募者であるユーザーにとって、
1. 求人募集企業の希望する業務に対する要求レベルと応募者の現在持ち合わせているレベルとの格差がどの程度あるのか見当がつかないために、応募者の希望に沿わないあるいは無理のある求人活動を行ってしまう可能性がある。
2. 一度、求人に応募して書類選考や二次選考により不採用になった場合、その後応募者が、学習・経験等を積んで技術レベルを向上させたとしても同一企業に応募することは非常に困難である。
3. 報酬等の応募者の技術レベルに見合った採用条件が一般的にどの程度であるのか予測するのが困難である。
という従来技術の欠点を克服可能であるとともに、第三者の端末である求人募集企業にとっては、
1. 応募者が多数の場合、書類選考、特に二次選考を行うのに非常に手間がかかり、また応募書類の記載内容・記載方式が統一されていないので、比較するのが困難である場合がある。
2. 履歴書等の個人情報に加えて、応募職種に応じた応募者の技能に関する情報、好ましくは客観的な情報が不足している。
また、近年就職や転職等を希望する技術者等の各種情報を登録し、その登録された情報に基づいて求人を行う企業が該当する技術者にアプローチを行ういわゆる人材バンク制度が登場している。
このような人材バンク制度においても同様にして技術者等における各自の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルが不明確であり、採用条件を満たすか否かについて判断するのが困難であった。
という欠点を克服することが可能となり、従って、求人を募集する企業と求人を希望する個人とを適正にマッチングさせることが可能となりました。
請求の範囲第7項に記載の技術達成レベル表示システムは、「ホストコンピュータ、ユーザの端末に加えてさらに、前記ホストコンピュータと接続可能な第三者の端末、例えば企業内のコンピュータから構成され、前記第三者の端末から前記技術項目を任意に選択し、このようにして選択した技術項目に対して任意の数値を入力することによって、前記ホストコンピュータにより選択した技術項目とその数値を有するユーザーを前記テーブルから抽出して、このようにして抽出されたユーザーの個人情報を表示することを特徴とするものであります。
このように構成することによって、前記特徴に加えて、「また企業や技術者を派遣する人材派遣会社等において、例えば新規の事業やプロジェクト等で1人以上の技術者を必要とする場合において、当該プロジェクト等に要求される技術を満足する技術者をピックアップし、またピックアップされた技術者等のスケジュール等を調整・管理することが可能となり、さらに、このような技術者等の各自の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルの指標を表示し、その表示内容に基づいてスキルアップやキャリアアップが図れ、かつ企業等で技術者等を技術力に基づいて正当に評価が可能となり、所定の技術に関して所定以上の技術力を有する技術者をピックアップ可能であり、かつ技術者のスケジュール等の管理が可能となります。
[引用文献1〜3との比較] (略)」

(2)また、拒絶査定に対する審判請求人の審判請求の理由書中での主張は以下のとおりである。
「「理由Bについて」
本理由補充書と同時に提出したて続き補正書により、請求項1の内容にあわせて明細書を補正致しましたので、拒絶理由A、Cと同様に拒絶理由が解消したものと確信致します。
本願出願人は、実際に、IT技術者に対してインターネットを介して技術レベルの表示システムを実際に運営しています。その結果、かなり高い精度での技術レベルの評価が可能であると評判となっています。
従って、請求の範囲第1項に記載の発明は、公知のネットワークシステムにおいて、
前記ホストコンピュータの格納記憶手段は、前記職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を数値化された評価基準に基づいて評価した結果を情報データとして入力する項目(a)および前記職業分野における各技術項目の基準値を数値として入力する項目(b)、技術項目一覧表と前記技術項目の重みが入力されている項目(c)及び各技術項目に対する演算結果を保存する項目(d)を有するテーブルを有しており、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末と通信回線を介して接続すると、前記項目(b)から技術項目一覧表を取得し、表示HTMLを作成して、少なくとも2以上の技術項目に関する情報を含む情報を前記技術項目の数値化された評価基準とともに前記ユーザ端末に送出し、
前記ホストコンピュータは、前記端末から入力された前記少なくとも2以上の技術項目の数値を前記情報データとして入力する項目(a)に保存するとともに、
前記項目(c)に基づいて各技術項目の重み付けを行って前記技術項目の数値評価を行い、前記数値評価結果を保存するとともに、前記ユーザの端末に表示させることによって、前記各ユーザの端末に自己の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルの指標データを表示することが可能となります。
さらに、請求の範囲第1項に記載の発明は、前記テーブルは、前記技術評価項目と別個に新規の技術評価項目を有しており、前記技術評価項目と新規技術評価項目から、技術評価の変化の度合いを比較して表示することを特徴とするものであり、例えば一度、以前に技術評価を受けたユーザーがその後、学習・経験等を積んで技術レベルを向上させた場合、技術レベルの向上を視覚的に確認することが可能となるという格段の効果を奏することが可能となります。
本願発明の情報処理方法を明確としましたので、拒絶査定で審査官殿が指摘したものとは認められないということには当てはまりません。
請求の範囲第5項に記載の発明は、さらに前記ホストコンピュータと接続可能なユーザーのデータを検索する第三者の端末から構成され、
前記ユーザーまたは第三者の端末より、前記2以上の技術項目のうち任意の項目を選択し、このようにして選択した技術項目に対して任意の数値を入力することによって、前記ホストコンピュータにより選択した技術項目とその数値を有するユーザーを前記テーブルから抽出して、このようにして抽出されたユーザーを表示することを特徴とするものであります。
このように構成することによって、本願明細書の背景技術に記載の課題が解決されます。すなわち、応募者であるユーザーにとって、
1. 求人募集企業の希望する業務に対する要求レベルと応募者の現在持ち合わせているレベルとの格差がどの程度あるのか見当がつかないために、応募者の希望に沿わないあるいは無理のある求人活動を行ってしまう可能性がある。
2. 一度、求人に応募して書類選考や二次選考により不採用になった場合、その後応募者が、学習・経験等を積んで技術レベルを向上させたとしても同一企業に応募することは非常に困難である。
3. 報酬等の応募者の技術レベルに見合った採用条件が一般的にどの程度であるのか予測するのが困難である。
という従来技術の欠点を克服可能であるとともに、第三者の端末である求人募集企業にとっては、
1. 応募者が多数の場合、書類選考、特に二次選考を行うのに非常に手間がかかり、また応募書類の記載内容・記載方式が統一されていないので、比較するのが困難である場合がある。
2. 履歴書等の個人情報に加えて、応募職種に応じた応募者の技能に関する情報、好ましくは客観的な情報が不足している。
また、近年就職や転職等を希望する技術者等の各種情報を登録し、その登録された情報に基づいて求人を行う企業が該当する技術者にアプローチを行ういわゆる人材バンク制度が登場している。
このような人材バンク制度においても同様にして技術者等における各自の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルが不明確であり、採用条件を満たすか否かについて判断するのが困難であった。
という欠点を克服することが可能となり、
従って、求人を募集する企業と求人を希望する個人とを適正にマッチングさせることが可能となりました。
請求の範囲第7項に記載の技術達成レベル表示システムは、「ホストコンピュータ、ユーザの端末に加えてさらに、前記ホストコンピュータと接続可能な第三者の端末、例えば企業内のコンピュータから構成され、前記第三者の端末から前記技術項目を任意に選択し、このようにして選択した技術項目に対して任意の数値を入力することによって、前記ホストコンピュータにより選択した技術項目とその数値を有するユーザーを前記テーブルから抽出して、このようにして抽出されたユーザーの個人情報を表示することを特徴とするものであります。
このように構成することによって、前記特徴に加えて、
「また企業や技術者を派遣する人材派遣会社等において、例えば新規の事業やプロジェクト等で1人以上の技術者を必要とする場合において、当該プロジェクト等に要求される技術を満足する技術者をピックアップし、またピックアップされた技術者等のスケジュール等を調整・管理することが可能となり、さらに、このような技術者等の各自の有する技術に関連する職業分野の技術達成レベルの指標を表示し、その表示内容に基づいてスキルアップやキャリアアップが図れ、かつ企業等で技術者等を技術力に基づいて正当に評価が可能となり、所定の技術に関して所定以上の技術力を有する技術者をピックアップ可能であり、かつ技術者のスケジュール等の管理が可能となります。」

6.本願明細書の記載事項
本願明細書の発明の詳細な説明には、「技術評価プログラム」及び「評価基準値を生成する」点に関連し、以下のことが記載されている。
(a)「前記ユーザの端末から、職業分野に必要な少なくとも2以上の技術項目の達成度を所定の評価方法により数値を入力して記ホストコンピュータに送信されると、
前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末から入力された前記技術項目のうち少なくとも1つを技術評価プログラムにより数値評価して、その評価結果を前記項目(a)に入力し、入力した数値に基づいて、前記技術項目の基準値を生成して項目(b)に入力し、」(段落0004)
(b)「本発明における技術項目とは、ユーザーに関連する職業分野に通常要求される技術に関する項目であり、これらの項目は、数値評価、例えば、3段階、4段階、5段階、10段階、n段階等の段階評価、得点評価、平均値、百分率等であることができる。例えば、1(まったく技術なし)、2(指示すれば理解できる)、3(指示しなくとも理解できる)、4(コンサルティングができる)等の4段階評価や、1(経験回数0)、2(経験5以下)、3(経験回数10以下)、4(経験回数15以下)、5(経験回数15以上)等の5段階評価や、各種機関等による試験結果の数値等により評価する可能である。
また、本発明において用いられる用語所定の基準値とは、該当する職業分野に最低必要な評価数値であってもよくあるいは一般的な平均値であってもよく、かかる基準値は、各技術項目に対して1ないし複数設けてもよい。また、この際の入力評価は、例えば利用者の自己評価であってもよく、また試験結果等を段階に分けて入力することも可能であり、あるいは別のプログラムにより数値評価を行いその結果を入力する構成であってもよい。」(段落0004)
(c)「(2)技術項目のうち少なくとも1つを技術評価プログラムにより数値評価して、その評価結果を前記テーブル(a)に入力する構成とすると、技術評価がより客観的に行うことが可能となる。」(段落0005)

7.当審の判断
請求項1記載の発明が備える「技術評価プログラム」や「評価基準値を生成する」点については、上述「6.本願明細書の記載事項」から明らかなように、本願明細書の発明の詳細な説明中には、「機能」が抽象的に記載されてあるだけで、その機能がハードウエアあるいはソフトウエアでどのように実現されるのか、何ら明確かつ十分に記載されていない。
また、平成15年6月9日付け意見書および審判請求の理由書での出願人(審判請求人)の主張も、「技術評価プログラム」や「評価基準値を生成する」点について、具体的にどのようにしてそのような機能を実現するのか何ら説明しているものではない。
したがって、請求項1に係る発明が備える「前記ホストコンピュータは、前記ユーザの端末から入力された前記技術項目のうち少なくとも1つを技術評価プログラムにより数値データを比較評価して、その評価結果を前記項目(a)にデータ入力し、入力した数値データに基づいて、前記技術項目の評価基準値を生成して項目(b)に入力し、」についての記載は、発明の詳細な説明に当業者が当該請求項1に係る発明を実施することが出来る程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

8.むすび
したがって、本願発明は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-30 
結審通知日 2005-04-06 
審決日 2005-04-19 
出願番号 特願2001-531761(P2001-531761)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 531- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 彰  
特許庁審判長 山下 弘綱
特許庁審判官 大野 弘
深沢 正志
発明の名称 技術達成レベル表示システム  
代理人 磯野 道造  

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