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審決分類 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B08B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B08B
管理番号 1117854
異議申立番号 異議2003-71199  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-09 
確定日 2005-03-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3348150号「基板処理装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3348150号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3348150号の発明についての出願は、平成6年6月8日に出願された特願平6-151541号の一部を平成12年2月15日に新たな特許出願としたものであって、平成14年9月6日にその発明についての特許権の設定登録がなされたものであり、その後の平成15年5月9日に、永田大樹により特許異議の申立てがなされ、平成16年9月7日付けで当審による取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年11月15日に訂正請求書及び意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否
2-1 訂正の内容
平成16年11月15日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項a
願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1における「基板を引き上げるリフタ機構とを備えた」を、「基板を引き上げるリフタ機構と、前記乾燥室内における上方空間に配置され、基板を保持するチャックを有し、前記リフタ機構によって前記乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板を前記リフタ機構から受け取って保持するチャック機構とを備えた」と訂正する。

(2)訂正事項b
特許明細書の発明の詳細な説明の欄の段落【0009】の第10行に「基板を引き上げるリフタ機構とを備えた」とあるのを、「基板を引き上げるリフタ機構と、前記乾燥室内における上方空間に配置され、基板を保持するチャックを有し、前記リフタ機構によって前記乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板を前記リフタ機構から受け取って保持するチャック機構とを備えた」と訂正する。

(3)訂正事項c
特許明細書の発明の詳細な説明の欄の段落【0011】の第5〜6行に「基板表面に付着している純水は、乾燥室の乾燥雰囲気により乾燥除去される。」とあるのを、「基板表面に付着している純水は、乾燥室の乾燥雰囲気により乾燥除去される。また、リフタ機構によって乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板は、リフタ機構からチャック機構へ受け渡されてチャックで保持され、リフタ機構の基板支持部で保持されていた部分の水分も、乾燥室の乾燥雰囲気により乾燥除去される。」と訂正する。

2-2 訂正の適否
訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された事項に「基板を引き上げるリフタ機構と、前記乾燥室内における上方空間に配置され、基板を保持するチャックを有し、前記リフタ機構によって前記乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板を前記リフタ機構から受け取って保持するチャック機構」をさらに備えるという限定を加えたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることが明らかである。
訂正事項b及びcは、訂正事項aによる特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
そして、訂正事項a〜cは、いずれも、特許明細書に記載されていた事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもないといえる。

2-3 まとめ
以上検討したとおり、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するものであるから、本件訂正を認める。

3.特許異議申立の理由及び当審による取消理由の概要
3-1 特許異議申立の理由の概要
異議申立人は、次の理由及び証拠により、請求項1〜3に係る発明の特許は取り消されるべきと主張している。

(理由)請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(証拠)
甲第1号証:実願平3-93635号(実開平4-99269号公報)の明細書
甲第2号証:特開昭62-198126号公報
甲第3号証:特開平2-291128号公報
甲第4号証:特開平4-80924号公報
甲第5号証:特開平4-22125号公報

3-2 当審による取消理由の概要
平成15年10月17日付け取消理由通知書により通知した当審の取消理由の概要は、次の理由から請求項1〜3に係る発明の特許は取り消されるべきというものである。

(理由1)請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(理由2)請求項1ないし3に係る各発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1〜3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:実願平3-93635号(実開平4-99269号)のマイクロフィルム(異議申立の甲第1号証)
刊行物2:特開昭62-198126号公報(異議申立の甲第2号証)
刊行物3:特開平2-291128号公報(異議申立の甲第3号証)

4.本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件請求項1〜3に係る発明(以下順に、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、それぞれ、平成16年11月15日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである。
(本件発明1)
「基板を純水で洗浄した後に乾燥する基板処理装置において、
基板の表面に付着した純水を乾燥させる乾燥雰囲気に設定する乾燥室と、
前記乾燥室に配置され、基板を洗浄する純水を貯留する洗浄槽と、
基板を載置する基板支持部を有するとともに、前記乾燥室内において閉鎖的に包囲されている前記洗浄槽の上方空間から前記洗浄槽内まで基板を載置した状態の前記基板支持部を下降して、基板を前記洗浄槽の純水に浸漬し、前記基板支持部に基板を載置した状態で基板を純水で洗浄した後、基板の全体が純水から乾燥雰囲気に設定された前記乾燥室内における上方空間へ完全に引き上げられるまで一定速度で基板を引き上げるリフタ機構と、
前記乾燥室内における上方空間に配置され、基板を保持するチャックを有し、前記リフタ機構によって前記乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板を前記リフタ機構から受け取って保持するチャック機構とを備えたことを特徴とする基板処理装置。」
(本件発明2)
「乾燥室に、基板を乾燥させるためのアルコール蒸気を供給するアルコール供給手段を接続した請求項1に記載の基板処理装置。」
(本件発明3)
「アルコール供給手段は、乾燥室に窒素ガスを供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。」

5.引用刊行物に記載された発明
(1)刊行物1(実願平3-93635号(実開平4-99269号)のマイクロフィルム)
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1には、図面の図1〜図12とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【産業上の利用分野】この考案は、半導体基板や液晶用ガラス基板等の薄板状の被処理基板(以下単に基板と称する)を表面処理するのに用いられる浸漬型の基板処理装置に関するものである。」(公報第6頁第4〜6行、段落【0001】参照)
(ロ)「【実 施 例】図2は本考案の第1の実施例を示す概要図である。この浸漬型基板処理装置は、処理液2中に基板Wを浸漬して基板Wの表面処理をなす基板処理槽1と、純水DWの主要通路をなす純水給液管3を介して処理液2を基板処理槽1内へ供給する処理液供給部4と、処理液排出部40とから成る。」(公報第9頁第20〜24行、段落【0009】参照)
(ハ)「【0012】純水給液管3は、基板処理槽1より上流側に向けて順次、給排液切換弁13、スタティックミキサー14、導入弁連結管16、純水フィルタ25、純水圧力測定器26、開閉弁27、純水加熱部28を付設配置して成り、所定温度に加熱した純水DWを供給する純水の主要通路として構成されている。なお、純水DWは基板の表面酸化を防ぐうえで、脱酸素処理を施したものを用いる方がより好ましい。上記給排液切換弁13は常時純水DWや処理液2を基板処理槽1へ供給し、必要に応じて基板処理槽1内の処理液2を排液管42を介して排液ドレン43へ排出するように構成されている。」(公報第10頁第16〜24行参照)
(ニ)「【0022】ちなみに、本実施例では基板の拡散処理の前段の洗浄処理として、次のようなプログラムに基づいて一連の表面処理を実行することができる。
ステップ1:純水+QA+QE
ステップ2:純水
ステップ3:純水+QB
ステップ4:純水
ステップ5:純水5+QC+QE
ステップ6:純水(終了)」(公報第13頁第18〜26行参照)
(ホ)「【0029】図8は本考案に係る浸漬型基板処理装置を具備してなる基板処理ユニット50の斜視図、図9はその要部の縦断正面図である。この基板処理ユニット50は、複数種の基板処理槽を併設するのをやめて、単一の基板処理槽1内で複数種の一連の表面処理をなし、装置全体のコンパクト化を意図したものである。即ち、この基板処理ユニット50は、基板収容カセットCの搬入搬出部51と、カセットCの移載ロボット55と、カセットCから基板Wを取り出し又はカセットC内へ基板Wを装填するローダ・アンローダ装置60と、本考案の第3の実施例に係る浸漬型基板処理装置65と、基板Wの液切り乾燥装置70と、カセットCから取り出した複数の基板Wを保持して搬送する基板搬送ロボット75と、複数種の薬液貯溜容器6A〜6Eとを具備して成り、単一の基板処理槽1内で複数種の一連の表面処理をなし得るように構成されている。」(公報第6頁第3〜15行参照)
(ヘ)「【0032】上記浸漬型基板処理装置65は、カセットレスタイプの処理槽1と、昇降自在に設けられた基板保持具66を備え、基板搬送ロボット75から受け取った複数の基板Wを基板保持具66で保持して処理槽1内に浸漬するように構成されいてる。なお、図9中の部材で図1〜図2中のものと同一の機能を有する部材は、同一符号を付して重複する説明を省略する。また上記乾燥装置70は、例えば本出願人の提案に係る特開平1-255227号公報に開示したもので、基板の主平面の中心近傍を回転中心として、回転遠心力で液切り乾燥するように構成されている。なお、上記乾燥装置70に代えて溶剤を用いて乾燥を促進するものや、後述する減圧方式により乾燥を促進するものを採用することもできる。
【0033】図10は本考案の第4の実施例に係る浸漬型基板処理装置の要部縦断面図である。この実施例装置は、前記実施例と同様に単一の基板処理槽1内で複数種の一連の表面処理を行うとともに、基板処理槽1の上部で基板Wの乾燥を行うことを意図したものである。即ち、この装置は排液槽41の上方を密閉可能なチャンバー80で覆い、排液管42に図示しない強制排気手段と連通する排気管45を接続するとともに、排液管42に開閉弁46を設けて成り、チャンバー80内を減圧して、基板の乾燥を促進するように構成されている。
【0034】この装置で基板の乾燥を行うには、次のようにする。先ず、処理を終えた基板Wを所定速度(約10mm/sec)で引き上げることにより、処理液2がオーバフローする処理槽1内から基板Wを取り出す。これにより、その表面に液滴がほとんど付着することなく、基板Wを取り出すことができる。次に三方弁13を操作して、処理液2を処理槽1から排液管42を介して排出し、その後各弁13及び46を閉じて、排気管45を介してチャンバー80内を約750〜770mmhg程度まで減圧する。これにより、基板Wの表面に僅かに付着していた液滴を蒸発させて、液切り乾燥を促進することができる。」(公報第17頁第6行〜第18頁第7行参照)
(ト)図面の図10には、排液槽41の上方にチャンバー80より密閉された空間部が設けられ、当該空間部に基板処理槽1が配置された態様と、基板保持具66で引き上げられた際の基板Wの最下端の位置が、基板処理槽1の液面よりも高い位置と想定されている態様が示されている。
上記記載事項(イ)〜(ヘ)並びに図面に示された内容を総合すると、上記刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
(引用発明1)
「半導体基板や液晶用ガラス基板等の薄板状の基板を表面処理するのに用いられる浸漬型の基板処理装置であって、排液槽41の上方をチャンバー80で密閉可能に覆って基板Wの乾燥を行う空間部と、当該空間部内に配置されて純水DWや処理液2を供給される基板処理槽1と、基板Wを昇降自在に設けられた基板保持具66で保持して上記処理槽1内に浸漬するように構成されているとともに、基板の乾燥を行うのに、処理を終えた基板Wを所定速度(約10mm/sec)で引き上げることにより、その表面に液滴がほとんど付着することなく、基板Wを取り出した後に、チャンバー80内を減圧して、基板Wの表面に僅かに付着していた液滴を蒸発させ液切り乾燥を行うように構成された基板処理装置。」

(2)刊行物2(特開昭62-198126号公報)
また、当審が通知した取消理由に引用した刊行物2には、次の事項が記載されている。
(イ)「本発明は被処理物の表面処理、特に、半導体ウエハの付着水を除去するための表面処理に適用して有効な技術に関する。」(公報第1頁右下欄第13〜15行参照)
(ロ)「また、本実施例2においては、水洗糟4が別体であるためウエハ11の洗浄を、給水管5から純水を供給し、オーバーフローさせながら行うことができる。その際、水洗糟4の上端全体からオーバーフローさせることができるため、該水洗糟4の内部における純水の流れを平均化でき、むらのない洗浄を行うことができる。」(公報第3頁右下欄第17行〜第4頁左上欄第3行参照)

(3)刊行物3(特開平2-291128号公報)
さらに、当審が通知した取消理由に引用した刊行物3には、次の事項が記載されている。
(イ)「本発明は基板を処理する方法に関し、液体を含むバスの中に基板をある時間浸し、その後そのバスに液体の全体の量が実際上残留するようにしてそこからゆっくりと取り出すものである。」(公報第2頁右上欄第3〜6行参照)
(ロ)「〔実施例〕 例を用いて、図面及びいくつかの実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。 第1図および第2図は、基板1を処理する方法を実行する装置を線図的に示している。この方法においてはこれらの基板を液体3を含むバス2内にある時間浸し、その後そこからバス2内に液体3の全体量が実際上残留するようにゆっくりバスから取り出す。この方法は、ガラス、石英または合成物質の板のような全ての種類の基板の処理に使用することが出来るが、本例においてはシリコンウェーハが処理されている。…(中略)…これらのウェーハは、例えば、エッチング用、現像用または洗浄用バスの様な、液体を含むバス内にある時間何回か浸される。これらの処理の後、ウェーハ1は液体3から取り出され乾燥される。」(公報第4頁左下欄第16行〜右下欄第14行参照)
(ハ)「この装置は又、基板をカセット4から補助カセット11に滑り込ませるとき、液体3から離れた直後液体と混合可能で液体と混合すると液体3の表面張力より低い表面張力を有する混合体を生じる物質の蒸気に基板1を接触させる排気ノズル18を設けたガスリード17を有する。」(公報第5頁右上欄第2〜7行参照)
(ニ)「本発明によると、基板1は、液体と混合することが可能で液体と混合すると液体の表面張力より低い表面張力を有する混合体を生じる物質の、表面上に凝縮しない蒸気に液体3から直接に接触させる。これにより基板1は実質上乾燥マークまたは他の汚染を示さないことが判明した。基板1を、当該蒸気の供給無しに水を含むバスから上述した方法によって取り出される場合には、数ミクロンの厚さの水フィルムが基板1上に残留してしまう事が判明した。」(公報第5頁左下欄第5〜14行参照)
(ホ)「実際上、バス2内の液体3には、しばしば、水が使用される。この場合液体と混和できる物質には有機溶剤を使用するのが望ましい。多くのアルコール、アルデヒド、エステルおよびケトン並びに、例えば、またテトラヒドロフランによっても基板を満足に乾燥させることが出来る。」(注:下線は当審が付記した。公報第5頁左下欄第20行〜右下欄第5行参照)
(ヘ)「基板1は、蒸気を通常の方法でキャリアガスと混合しその後その混合体をリード17と排気ノズル18によって液体3上を通過させるようにして、蒸気に接触させるのが望ましい。このようにして、蒸気を、基板1上に蒸気の凝縮を発生させずに局所的にかつ高濃度に供給することが出来る。」(公報第6頁左上欄第3〜8行参照)
(ト)「前述の方法においては、通常の方法により紫外線オゾン室で前もって洗浄されたシリコンウェーハは水に浸された後、約1mm/秒の速度で液体から持ち上げられた。水は、1M NaCl溶液によって強く意識的に汚染させた。液体から離れるとき、基板は、水と混和可能で水の表面張力より小さい表面張力を有する混合体を生じ、異なった溶剤を表面上に凝縮させない蒸気に直接接触させた。この際、1秒間に約0.5lの窒素を有機溶剤を含む洗浄フラスコに通過させ、次にリード17および排気ノズル18を介してそのガス混合体を液体上に通過させている。」(注:下線は当審が付記した。公報第6頁右上欄第7〜18行参照)

(イ)6.対比・判断
6-1 本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、その作用ないし機能からみて、引用発明1の「排液槽41の上方をチャンバー80で密閉可能に覆って基板Wの乾燥を行う空間部」が本件発明1の「乾燥室」に相当し、同様に、「基板処理槽1」が「洗浄槽」に、「基板保持具66」が「リフタ機構」に、それぞれ相当するといえる。
また、引用発明1の「基板処理槽1」は基板に対して表面処理を行うものであるが、この表面処理には「純水」による「洗浄」処理が含まれることが明らかである(上記5.(1)の(ニ)参照)から、引用発明1の基板処理装置は、基板を純水で洗浄した後に乾燥する基板処理装置である点で、本件発明1と共通するものといえる。
さらに、引用発明1における「基板の乾燥を行うのに、処理を終えた基板Wを所定速度(約10mm/sec)で引き上げることにより、その表面に液滴がほとんど付着することなく、基板Wを取り出した後に、チャンバー80内を減圧して、基板Wの表面に僅かに付着していた液滴を蒸発させ液切り乾燥を行う」点は、刊行物1の図10に示されたところの基板保持具66で引き上げられた際の基板Wの最下端の位置が、基板処理槽1の液面よりも高い位置に想定されている態様から見て、本件発明における「前記基板支持部に基板を載置した状態で基板を純水で洗浄した後、基板の全体が純水から乾燥雰囲気に設定された前記乾燥室内における上方空間へ完全に引き上げられるまで一定速度で基板を引き上げる」点に実質的に相当するといえる。
そうすると、両者は、
「基板を純水で洗浄した後に乾燥する基板処理装置において、
基板の表面に付着した純水を乾燥させる乾燥雰囲気に設定する乾燥室と、
前記乾燥室に配置され、基板を洗浄する純水を貯留する洗浄槽と、
基板を載置する基板支持部を有するとともに、前記乾燥室内において閉鎖的に包囲されている前記洗浄槽の上方空間から前記洗浄槽内まで基板を載置した状態の前記基板支持部を下降して、基板を前記洗浄槽の純水に浸漬し、前記基板支持部に基板を載置した状態で基板を純水で洗浄した後、基板の全体が純水から乾燥雰囲気に設定された前記乾燥室内における上方空間へ完全に引き上げられるまで一定速度で基板を引き上げるリフタ機構とを備えた基板処理装置。」である点で一致し、次の点で相違するといえる。
(相違点)
相違点(A):本件発明1が「前記乾燥室内における上方空間に配置され、基板を保持するチャックを有し、前記リフタ機構によって前記乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板を前記リフタ機構から受け取って保持するチャック機構」を備えているのに対して、引用発明1がそのような構成を備えていない点。

(1)相違点(A)について
ところで、本件発明の特許明細書の記載(段落【0002】〜【0005】参照)を参酌すると、図8〜10に関して、洗浄槽102から基板Wを引き上げる動作につき、下アーム122で掴まれた基板Wが徐々に上昇し、基板Wの上部が処理液から出て乾燥したときに、上アーム118が基板Wの乾燥した上部を掴むと共に下アーム122が基板Wを放して、下アーム122から上アーム118への基板Wの受け渡しが行なわれることが、従来技術として示されている。
また、本件発明の出願は、平成6年6月8日に出願された特願平6-151541号(以下、「原出願」という。)の一部を平成12年2月15日に新たな特許出願としたものであるところ、当該原出願の審査の過程で引用された周知例(平成13年10月5日付け拒絶理由通知書に示された特開昭63-184350号公報や実願昭61-109681号(実開昭63-16446号)のマイクロフィルム参照)には、本件発明1と同様の基板処理装置において、処理液槽からリフト機構で上昇された基板を、開閉手段によって基板を保持する手段へと受け渡すように構成した点が開示されている。
これらのことを考慮すると、基板Wが洗浄槽や処理液糟からリフト機構により引き上げられた際に、当該引き上げられた基板を当該リフト機構から受け取って保持するための手段(本件発明1のチャック機構に相当する)を設けることは、当該技術分野において、本件発明の出願日前に周知の技術であったといえる。
してみると、相違点(A)に係る本件発明1の構成は、引用発明1に、上記周知の保持手段(チャック機構)を単に付加することにより、当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。

なお、仮に、引用発明1の基板処理装置が基板を純水以外の薬液をも用いて洗浄処理する点で純水(のみ)を用いて洗浄する本件発明1と相違するとしても、このような基板表面に対して各種の処理を終了した後に、純水(のみ)を用いて基板を洗浄し、乾燥させることも、上記刊行物2(上記5.(2)の(ロ)参照)に示されるように、従来より周知の技術であったといえるから、引用発明1における洗浄処理として、当該周知の技術を採用することも、当業者が適宜採用し得た設計的事項であるといえる。(ちなみに、平成16年11月15日付け意見書(第4頁第15行〜第5頁第27行参照)によると、特許権者は、本件発明1と引用発明1とは上記相違点(A)で相違すると主張するものの、他に相違点があるとの主張はしていない。)

6-2 本件発明2について
本件発明1を引用する本件発明2と引用発明1とを対比すると、上記相違点(A)に加えて、次の相違点(B)で相違する。
(相違点)
相違点(B):本件発明2が、「乾燥室に、基板を乾燥させるためのアルコール蒸気を供給するアルコール供給手段を接続した」のに対して、引用発明1はそのようなアルコール供給手段を備えていない点。

上記相違点(A)については、上記6-1で検討したとおりである。
次に、相違点(B)について検討する。
上記刊行物3には、基板処理装置において、基板を洗浄槽で処理した後に、基板を乾燥させる際、窒素を有機溶剤を含む洗浄フラスコに通過させ、次に、混合したガスをリード17及び排気ノズル18を介して基板に接触させるという技術が記載されており(上記5.(3)の(ト)参照)、また、その有機溶剤としてアルコールが使用できることが併せて開示されている(上記5.(3)の(ホ)参照)。
すなわち、刊行物3には、基板を乾燥させるために、アルコール中に窒素という不活性ガスを通過させ混合させた後に基板へ供給する手段を設けることが記載されているといえる。
ところで、本件発明2における「アルコール蒸気を供給する」につき、発明の詳細な説明における実施例の記載を参酌すると、特許明細書の段落【0024】に「アルコール蒸気発生ユニット83におけるアルコール蒸気の発生方法としては、アルコール中に不活性ガスを吹き込む方法、…(中略)…する方法等、適宜の方法を使用することができる。」と記載されていることから、上記刊行物3に記載されたアルコールの供給手段と実質的な相違がないといえる。
そして、上記刊行物1には、「乾燥装置70に代えて溶剤を用いて乾燥を促進するもの」「を採用することもできる」(上記5.(1)の(ヘ)参照)こと、いいかえれば、刊行物3に示されたようなアルコールを用いた乾燥手段を採用できることが示唆されているといえる。
してみると、相違点(B)に係る本件発明2の構成は、引用発明1における基板を乾燥させる手段に代えて、同じ基板処理装置のための乾燥手段を開示するところの刊行物3に示されたアルコールの供給手段を用いて乾燥させるものを採用することにより、当業者が容易に想到し得たものといえる。

6-3 本件発明3について
本件発明2を引用する本件発明3と引用発明1とを対比すると、上記相違点(A)及び(B)に加えて、次の相違点(C)で相違する。
(相違点)
相違点(C):本件発明3が、「アルコール供給手段は、乾燥室に窒素ガスを供給する」のに対して、引用発明1はそのような構成を備えていない点。

上記相違点(A)及び(B)については、上記6-1又は6-2で、それぞれ検討したとおりである。
次に、相違点(C)について検討する。
ところで、上述したように、刊行物3には、基板を乾燥させるために、アルコール中に窒素という不活性ガスを通過させ混合させた後に基板へ供給する手段を設けることが記載されているといえる。
すなわち、アルコールを供給する手段が乾燥室に窒素ガスを供給する点は、併せて刊行物3に開示されている。
してみると、上記相違点(B)について説示したのと同様に、相違点(C)に係る本件発明3の構成は、引用発明1における基板を乾燥させる手段に代えて、同じ基板処理装置のための乾燥手段を開示するところの刊行物3に示されたアルコールの供給手段を用いて乾燥させるものを採用することにより、当業者が容易に想到し得たものといえる。

そして、本件発明1〜3が奏する作用・効果も、上記刊行物1〜3に記載された事項、並びに従来より周知の技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

6-3 まとめ
以上のことから、本件発明1〜3は、上記刊行物1〜3に記載された事項、並びに従来より周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるといえる。

7.むすび
以上のとおりであるから、異議申立の他の証拠を検討するまでもなく、本件発明1〜3の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板を純水で洗浄した後に乾燥する基板処理装置において、
基板の表面に付着した純水を乾燥させる乾燥雰囲気に設定する乾燥室と、
前記乾燥室に配置され、基板を洗浄する純水を貯留する洗浄槽と、
基板を載置する基板支持部を有するとともに、前記乾燥室内において閉鎖的に包囲されている前記洗浄槽の上方空間から前記洗浄槽内まで基板を載置した状態の前記基板支持部を下降して、基板を前記洗浄槽の純水に浸漬し、前記基板支持部に基板を載置した状態で基板を純水で洗浄した後、基板の全体が純水から乾燥雰囲気に設定された前記乾燥室内における上方空間へ完全に引き上げられるまで一定速度で基板を引き上げるリフタ機構と、
前記乾燥室内における上方空間に配置され、基板を保持するチャックを有し、前記リフタ機構によって前記乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板を前記リフタ機構から受け取って保持するチャック機構とを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】 乾燥室に、基板を乾燥させるためのアルコール蒸気を供給するアルコール供給手段を接続した請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】 アルコール供給手段は、乾燥室に窒素ガスを供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ウエハや液晶用ガラス板等の基板を処理液に浸漬して洗浄処理等を行なう基板処理装置に関し、詳しくは処理液から基板を引き上げる機構を備えた基板処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の基板処理装置として、基板を微低速で処理液から引き上げて、これを減圧下等の乾燥雰囲気にて基板に付着した水分等を除去する技術が知られている。
【0003】
すなわち、図9及び図10は基板処理装置100を示す概略図である。同図において、基板処理装置100は、基板Wを浸漬する処理液を満たす洗浄槽102と、洗浄槽102の処理液に基板Wを浸漬しその後に引き上げる基板搬送装置110とを備えている。基板搬送装置110は、上下移動ロボット112と、上下移動ロボット112により昇降されるロボットアーム114と、ロボットアーム114の先端に取り付けられた平行型開閉チャックシリンダ116と、平行型開閉チャックシリンダ116により開閉動作される上アーム118及び下アーム122とを備えている。
【0004】
上記基板搬送装置110の構成において、上下移動ロボット112を駆動するとロボットアーム114を介して平行型開閉チャックシリンダ116、上アーム118及び下アーム122が洗浄槽102に対して昇降し、そして、平行型開閉チャックシリンダ116の駆動により上アーム118及び下アーム122が基板Wを掴みまたは放す動作を行なう。
【0005】
次に、洗浄槽102から基板Wを引き上げる動作について説明する。図8は洗浄槽102内の処理液にて基板Wが洗浄されて、下アーム122が基板Wを掴んだ状態を示す。この状態から、上下移動ロボット112の上昇駆動により下アーム122で掴まれた基板Wが徐々に上昇する。そして、図9に示すように、基板Wの上部が処理液から出て乾燥したときに、上アーム118が基板Wの乾燥した上部を掴むと共に下アーム122が基板Wを放す。これにより、下アーム122から上アーム118への基板Wの受け渡しが行なわれる。そして、基板Wは、上アーム118で掴まれた状態にて、上下移動ロボット112の上昇駆動により外部へ搬送される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記基板搬送装置110では、下アーム122から上アーム118への基板Wの掴み替えは、基板Wの下部が洗浄槽102の処理液にまだ浸漬した状態で行われている。こうした動作を確実に行なわせるには、下アーム122の上昇動作を停止するか、下アーム122の上昇速度を遅くして、下アーム122から上アーム118へ受け渡す必要がある。このように、下アーム122から上アーム118への基板Wの受け渡しの際に、基板Wの引き上げ速度が異なると、基板Wの乾燥状態が変化し、基板Wの表面にウォータマークが形成されたり、パーティクル等が付着するという問題があった。
【0007】
また、基板Wの受け渡し動作が処理液に浸漬した状態で行われるため、処理液の液面の乱れや基板Wの微小な揺れにより、基板Wにウォータマークが形成されたり、パーティクル等が付着しやすいという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを課題とし、基板の処理液からの引き上げ時に形成され易い基板上のウォータマークやパーティクルをなくした基板処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、基板を純水で洗浄した後に乾燥する基板処理装置において、基板の表面に付着した純水を乾燥させる乾燥雰囲気に設定する乾燥室と、前記乾燥室に配置され、基板を洗浄する純水を貯留する洗浄槽と、基板を載置する基板支持部を有するとともに、前記乾燥室内において閉鎖的に包囲されている前記洗浄槽の上方空間から前記洗浄槽内まで基板を載置した状態の前記基板支持部を下降して、基板を前記洗浄槽の純水に浸漬し、前記基板支持部に基板を載置した状態で基板を純水で洗浄した後、基板の全体が純水から乾燥雰囲気に設定された前記乾燥室内における上方空間へ完全に引き上げられるまで一定速度で基板を引き上げるリフタ機構と、前記乾燥室内における上方空間に配置され、基板を保持するチャックを有し、前記リフタ機構によって前記乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板を前記リフタ機構から受け取って保持するチャック機構とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2では、請求項1の乾燥室に、基板を乾燥させるためのアルコール蒸気を供給するアルコール供給手段を接続したものである。請求項3では、請求項2のアルコール供給手段が、乾燥室に窒素ガスを供給する。
【0011】
【作用】
本発明の請求項1に係る基板処理装置では、リフタ機構が基板を支持した状態で洗浄槽の純水に浸漬し、または引き上げる。すなわち、このリフタ機構は、基板を洗浄槽の純水で洗浄した後に、基板を支持して純水から引き上げる。そして、基板の全体が純水から引き上げられると、基板の表面に付着している純水は、乾燥室の乾燥雰囲気により乾燥除去される。また、リフタ機構によって乾燥室内における上方空間へ引き上げられた基板は、リフタ機構からチャック機構へ受け渡されてチャックで保持され、リフタ機構の基板支持部で保持されていた部分の水分も、乾燥室の乾燥雰囲気により乾燥除去される。
【0012】
この純水からの引き上げのとき、基板がリフタ機構により、一定速度で純水より引き上げられるから、基板の表面には、引き上げ速度の変化に伴うウォータマークが形成されない。
【0013】
請求項2の発明では、乾燥室に、基板を乾燥させるためのアルコール蒸気を供給するアルコール供給手段を接続することにより、基板に付着した水分を速やかに除去することができる。
【0014】
【実施例】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0015】
図1は基板処理装置10を示す概略構成図である。基板処理装置10は、洗浄・乾燥処理部20と、純水を供給する純水供給系50と、洗浄・乾燥処理部20内を減圧する減圧系60と、窒素ガス及びアルコール蒸気を供給するガス供給系80とを備えている。
【0016】
まず、洗浄・乾燥処理部20について図2ないし図6を用いて説明する。図2及び図3に示すように、洗浄・乾燥処理部20は、洗浄槽22と、洗浄槽22の外周に設けたオーバーフロー槽23と、密閉チャンバ24と、密閉チャンバ24内で洗浄槽22に基板Wを浸漬または引き上げるためのリフタ機構30と、リフタ機構30との間で基板Wの受け渡しを行なうチャック機構40とを備えている。
【0017】
上記洗浄槽22は、その内部に収容された純水中に複数枚の基板Wを浸漬できる容量を有しており、その上部に越流部22a、その底部に純水供給口22bを備えている。一方、オーバーフロー槽23は、上記洗浄槽22の越流部22aを越えて溢れ出た純水が流れ込むように洗浄槽22に対して二重構造に配置されている。
【0018】
洗浄槽22及びオーバーフロー槽23の上方空間は、密閉チャンバ24によって閉鎖的に包囲されている。図2に示す密閉チャンバ24の前面側には、複数枚の基板Wを出し入れするためのチャンバ開口25が形成されており、そのチャンバ開口25を開閉自在に気密に閉塞することができる密閉蓋26が形成されている。また、密閉チャンバ24の外壁面には、それを被覆するようにラバーヒータ27(図1参照)が配設されている。また、密閉蓋26には、密閉チャンバ24の内壁面の温度を検出するための温度計28が該壁面を貫通して取り付けられている。
【0019】
上記リフタ機構30は、複数の基板Wを並列かつ所定間隙で載置保持するための基板支持部31と、基板支持部31を固定した駆動ロッド32と、駆動ロッド32を摺動自在に支持する軸受機構33と、駆動プーリ34及び従動プーリ35と、駆動プーリ34及び従動プーリ35の間に掛け渡されかつ駆動ロッド32の下端部が固定されたベルト36と、駆動プーリ34を回転駆動する駆動用モータ37とを備えている。
【0020】
また、上記チャック機構40は、図6に示すように、基板Wの両側端から挟持するためのチャック41a,41bと、チャック41a,41bをチャック回転軸42を介して回動駆動するチャック駆動部43とを備えている。チャック41a,41bには、複数枚の基板Wを保持するためのチャック保持溝(図示省略)が形成されている。この構成により、チャック駆動部43が回転駆動すると、チャック回転軸42を介してチャック41a,41bが回動して複数の基板Wを同時に保持または放す動作を行なう。前述したリフタ機構30及びチャック機構40は、図7に示すように、CPU等より成る制御手段99により制御される。
【0021】
次に、洗浄槽22に純水を供給する純水供給系50について説明する。図1に示すように、洗浄槽22の純水供給口22bには、純水供給源に連通接続された給水用配管51a、給水用配管51b及び給水用配管51cを介して連通接続されており、給水用配管51aには、上流側から順に、ボール弁51v1、フィルタ装置52、開閉弁51v2が介設されている。また、給水用配管51aの途中にリターン配管53が分岐接続されており、リターン配管53には、開閉弁53vが介設されている。また、洗浄槽22の純水供給口22bは、給水用配管51cから分岐した排水用配管54aに連通接続されており、排水用配管54aは、排水用配管54bを介してドレンに接続している。
【0022】
一方、オーバーフロー槽23には、排水口23aが形成され、その排水口23aに排水用配管55aを介して排水用配管55bが連通接続しており、排水用配管55bは、排水用配管54aと合流して排水用配管54bを介してドレンに接続している。排水用配管54aには、開閉弁54vが、排水用配管55bには、開閉弁55vがそれぞれ介設されている。
【0023】
次に、減圧系60について説明する。洗浄槽22の純水供給口22bは、給水用配管51bから分岐した排気用配管61に連通接続されており、一方、オーバーフロー槽23の排水口23aは、排水用配管55aから分岐した排気用配管62に連通接続されている。排気用配管61には開閉弁61vが、排気用配管62には開閉弁62vがそれぞれ介設されており、排気用配管61及び排気用配管62は合流し、排気用配管63を介して真空ポンプ64に連通接続している。
【0024】
次に、ガス供給系80について説明する。密閉チャンバ24の蒸気供給口24aには、不活性ガス、例えば窒素ガスの供給源に接続されたガス供給用配管81が連通接続されており、ガス供給用配管81には、上流側から順に、ヒータ82、開閉弁81v、アルコール蒸気発生ユニット83及びガスフィルタ84が介設されている。アルコール蒸気発生ユニット83では、メチルアルコール、エチルアルコール、IPA等のアルコール類の蒸気が生成される。アルコール蒸気発生ユニット83におけるアルコール蒸気の発生方法としては、アルコール中に不活性ガスを吹き込む方法、バブリングする方法、超音波を利用する方法等、適宜の方法を使用することができる。また、アルコール蒸気発生ユニット83には、温度調節機能が備わっており、所定温度に調節されたアルコール蒸気が生成されるようになっている。
【0025】
さらに、ガス供給用配管81の途中には、開閉弁81vとヒータ82との間の区間で分岐し、アルコール蒸気発生ユニット83とガスフィルタ84との間での区間で合流する分岐配管91が設けられており、その分岐配管91にイオナイザー92及び開閉弁91vが介設されている。
【0026】
上記ガス供給系80の構成により、開閉弁81vが開いた状態で、窒素ガス供給源から送られる窒素ガスがヒータ82によって加熱され、その加熱された窒素ガスによりアルコール蒸気発生ユニット83で発生したアルコール蒸気がガス供給用配管81を通して送られ、アルコール蒸気が窒素ガスと共にガスフィルタ84によって清浄化された後、蒸気供給口24aを通して密閉チャンバ24内へ供給される。
【0027】
また、開閉弁91vを開くことにより、窒素ガス供給源から送られヒータ82によって加熱された窒素ガスは、イオナイザー92によってイオン化され、さらにガスフィルタ84によって清浄化されて蒸気供給口24aを通して密閉チャンバ24内へ供給される。
【0028】
次に、上記基板処理装置10を使用して、基板Wを洗浄及び乾燥処理する工程について説明する。まず、開閉弁51v2、開閉弁55vを開き、それ以外のエアー開閉弁を閉じた状態で、純水供給源から給水用配管51a、給水用配管51b、給水用配管51cを通じて、洗浄槽22の底部の純水供給口22bから純水を洗浄槽22内に連続的に供給することにより洗浄槽22内に純水の上昇水流を形成する。
【0029】
このとき、洗浄槽22内を満たした純水は、該洗浄槽22の上部の越流部22aから溢れ出てオーバーフロー槽23内へ流入し、オーバーフロー槽23の排水口23aから排水用配管55a、排水用配管55b及び排水用配管54bを通って、ドレンに排出される。
【0030】
また、純水の供給と同時に、密閉チャンバ24の壁面は、ラバーヒータ27により所定温度に維持するよう加熱される。このラバーヒータ27の加熱制御は、温度計28の検出信号に基づき、温度制御器95によって、密閉チャンバ24の内壁面の温度が所定温度(例えば60℃)以上になるように行なわれる。
【0031】
このように、密閉チャンバ24の内壁面を加熱しておくことにより、後述する基板Wの洗浄中や純水中からの基板Wの引き上げ過程において、密閉チャンバ24の内壁面などへの水蒸気の結露が生じない。水蒸気の結露がないから、その液化に伴って、基板Wの周囲へ供給されたアルコール蒸気の熱エネルギーを奪うこともなく、基板Wの乾燥効率を向上させる。
【0032】
次に、基板Wを洗浄槽22の純水で洗浄処理する手順について説明する。いま、密閉チャンバ24の密閉蓋26が開いた状態にあり、リフタ機構30の基板支持部31が上昇位置にある。この状態から、図示しない他の基板処理装置で基板処理された基板Wがリフタ機構30の基板支持部31に載置される(図3の状態)。そして、密閉蓋26が閉じられて密閉チャンバ24内が密閉状態になる。続いて、リフタ機構30の基板支持部31は、洗浄槽22内まで下降して、基板Wを洗浄槽22の純水に浸漬する。そして、基板Wは、上述した純水供給系50により洗浄槽22に供給される純水で洗浄される(図4の状態)。
【0033】
基板Wの洗浄処理が終了した後に、リフタ機構30の基板支持部31が徐々に上昇して基板Wを純水中から一定速度で引き上げる。純水中から基板Wを引き上げはじめるのと同時に、開閉弁81vを開いて、窒素供給源からガス供給用配管81を通して窒素ガスを送り、密閉チャンバ24内へ蒸気供給口24aからアルコール蒸気を送り込んで、純水中から引き上げられている途中の基板Wの周囲へアルコール蒸気を供給する。このアルコール蒸気の供給は、純水中からの基板Wの引き上げが完全に終了するまで行なう。
【0034】
純水中からの基板Wの引き上げが終了すると(図3参照)、開閉弁51v2を閉じると共に開閉弁53vを開いて、洗浄槽22への純水の供給を停止させ、同時に開閉弁54vを開いて、洗浄槽22の純水を排水用配管54a及び排水用配管54bを介してドレンへ排出する。洗浄槽22からの純水の排出が終わると、開閉弁54v及び開閉弁55vを閉じる。
【0035】
また、洗浄槽22から純水を排出し始めると同時に、開閉弁61v及び開閉弁62vを開いて、真空ポンプ64を作動させ、排気用配管61、排気用配管62及び排気用配管63を通して密閉チャンバ24内を真空排気し、密閉チャンバ24内を減圧状態にすることにより、基板Wの表面に凝縮して純水と置換したアルコール蒸気を蒸発させて基板Wを乾燥させる。
【0036】
そして、リフタ機構30の基板支持部31がチャック機構40のチャック41a,41bの位置まで移動すると、基板Wは、純水から完全に引き上げられた状態になる。続いて、チャック機構40のチャック駆動部43によりチャック41a,41bを回動させて基板Wを保持する(図5の状態)。このとき、チャック41a,41bは、基板Wの水分が除去された部位を把持する。
【0037】
次に、リフタ機構30の基板支持部31が下降して基板Wの保持状態から離れる。これにより、基板Wは、基板支持部31からチャック41a,41bへ受け渡される。基板Wは、減圧下にあるから、基板支持部31で保持された部分の水分は、乾燥除去される。
【0038】
基板Wの乾燥が終了すると、真空ポンプ64を停止させて、密閉チャンバ24内が減圧下から大気圧下へ戻される。最後に、開閉弁81vを閉じて、密閉チャンバ24への窒素ガスの供給を停止した後、密閉蓋26を開放する。続いて、基板Wは、チャック機構40から図示しない他の搬送機構に受け渡されて密閉チャンバ24外へ搬送される。なお、上記一連の基板Wの洗浄・乾燥工程におけるタイムチャートを図8に示す。なお、図中、実線は好適な対応を示し、1点鎖線は変形例を示す。
【0039】
上記実施例に係る基板処理装置10では、リフタ機構30の基板支持部31で基板Wを載置して純水で洗浄した後に、一定速度で引き上げ、基板Wの全体が純水から完全に引き上げられると、チャック機構40のチャック41a,41bが基板Wを把持して、その後、リフタ機構30の基板支持部31が基板Wの支持状態を開放する。
【0040】
したがって、基板Wの全体が純水から引き上げられると、基板Wの表面に付着している純水は、密閉チャンバ24内のアルコール蒸気及び減圧下により乾燥除去されるから、チャック機構40のチャック41a,41bは、基板Wの濡れた部分を掴まないので、この部分にパーティクル等が付着したり、ウォータマークが形成されない。また、基板Wがリフタ機構30で一定速度で純水から引き上げられるから、基板Wの表面には、引き上げ速度の変化に伴うウォータマークが形成されない。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る基板処理装置によれば、リフタ機構で基板を支持した状態で、基板の全体が純水から完全に引き上げられるまで、基板を洗浄槽の純水から一定速度で引き上げるので、引き上げ速度の変化に起因する基板の表面にウォータマークが生じることもない。
【0042】
請求項2の発明によれば、乾燥室に基板を乾燥させるためのアルコール蒸気を供給するアルコール供給手段を接続することにより、基板に付着した水分を速やかに除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例に係る基板処理装置を示す概略構成図。
【図2】
同実施例に係る洗浄・乾燥処理部を示す示す断面図。
【図3】
同実施例に係る洗浄・乾燥処理部を示す断面図。
【図4】
図3に続く工程を説明する説明図。
【図5】
図4に続く工程を説明する説明図。
【図6】
同実施例のチャック機構を説明する斜視図。
【図7】
同実施例の制御系を示すブロック図。
【図8】
基板の洗浄乾燥工程を示すタイミングチャート。
【図9】
従来の基板処理装置を示す断面図。
【図10】
図9に続く工程を説明する説明図。
【符号の説明】
10…基板処理装置
20…乾燥処理部
22…洗浄槽
22a…越流部
22b…純水供給口
23…オーバーフロー槽
23a…排水口
24…密閉チャンバ
24a…蒸気供給口
25…チャンバ開口
26…密閉蓋
27…ラバーヒータ
28…温度計
30…リフタ機構
31…基板支持部
32…駆動ロッド
33…軸受機構
34…駆動プーリ
35…従動プーリ
36…ベルト
37…駆動用モータ
40…チャック機構
41a,41b…チャック
42…チャック回転軸
43…チャック駆動部
50…純水供給系
51a…給水用配管
51b…給水用配管
51c…給水用配管
51v1…ボール弁
51v2…開閉弁
52…フィルタ装置
53…リターン配管
53v…開閉弁
54a…排水用配管
54b…排水用配管
54v…開閉弁
55a…排水用配管
55b…排水用配管
55v…開閉弁
60…減圧系
61…排気用配管
61v…開閉弁
62…排気用配管
62v…開閉弁
63…排気用配管
64…真空ポンプ
80…ガス供給系
81…ガス供給用配管
81v…開閉弁
82…ヒータ
83…アルコール蒸気発生ユニット
84…ガスフィルタ
91…分岐配管
91v…開閉弁
92…イオナイザー
95…温度制御器
99…制御手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-01-31 
出願番号 特願2000-36716(P2000-36716)
審決分類 P 1 651・ 832- ZA (B08B)
P 1 651・ 121- ZA (B08B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 内藤 真徳
増山 剛
登録日 2002-09-06 
登録番号 特許第3348150号(P3348150)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 基板処理装置  
代理人 間宮 武雄  
代理人 間宮 武雄  

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