• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B60C
審判 一部申し立て 2項進歩性  B60C
管理番号 1117860
異議申立番号 異議2003-72961  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-03 
確定日 2005-04-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3414839号「自動車用タイヤ」の請求項1ないし10、14、15、17、18に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3414839号の請求項1ないし10、13、14、16、17に係る特許を維持する。 
理由 I.手続きの経緯
特許第3414839号の請求項1ないし10、14、15、17、18に係る発明についての出願は、平成6年5月31日(パリ優先権主張 平成5年5月31日 イタリア)に特許出願され、平成15年4月4日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立て(申立人 株式会社ブリヂストン。以下、「申立人」という。)がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年3月10日に訂正請求がなされたものである。

II.平成17年3月10日付け訂正請求書による訂正の適否について
1.訂正の内容
平成17年3月10日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。
『訂正事項(a)
特許請求の範囲の請求項1の記載について、
「【請求項1】 低い走行ノイズを生ずるトレッドを設けた自動車ホイール用タイヤであって、
該トレッドは、複数の形状ブロック(7)を形成された隆起パターンを具備し、
該ブロックは、タイヤの円周方向に伸びる長手方向溝(2)により境界付けられた平行の円周方向列(3、4、5、6)内に分配され、かつ該各ブロックは個々の横方向カット部分(8、9、10)により互に分離された所定個数の形状ブロック(7)を具備する前記タイヤにおいて、
該各列(3、4、5、6)の形状ブロック(7)の個数は、所定の列の形状ブロックの個数が、トレッド(1)の赤道面(X-X)の方へ並列的関係で連続的に配置された隣接列の形状ブロックの個数よりも大きいことにより、該トレッドは、トレッ外側エッジ部(1a)から前記赤道面へ向かうに従い長手方向剛性が徐々に増加し、
前記列(3、4、5、6)の各々が第1の横方向カット部分(8)を有し、該各カット部分(8)が並列的かつ隣接的に配置されたブロックに属する第1の横方向カット部分(8)の1つに対して連続的に伸びており、
前記ブロック列(5、6)の少なくとも1つは第2の横方向カット部分(9)を有し、該各第2の横方向カット部分(9)は前記第1のカット部分(8)の2つの間の中間位置にあることを特徴とする前記タイヤ。」
とあるのを、
「【請求項1】 低い走行ノイズを生ずるトレッドを設けた自動車ホイール用タイヤであって、該トレッドは、複数の形状ブロック(7)を形成された隆起パターンを具備し、該ブロックは、タイヤの円周方向に伸びる長手方向溝(2)により境界付けられた平行の円周方向列(3、4、5、6)内に分配され、かつ該各ブロックは個々の横方向カット部分(8、9、10)により互に分離された所定個数の形状ブロック(7)を具備する前記タイヤにおいて、
該各列(3、4、5、6)の形状ブロック(7)の個数は、所定の列の形状ブロックの個数が、トレッド(1)の赤道面(X-X)の方へ並列的関係で連続的に配置された隣接列の形状ブロックの個数よりも大きいことにより、該トレッドは、トレッド外側エッジ部(1a)から前記赤道面へ向かうに従い長手方向剛性が徐々に増加し、前記列(3、4、5、6)の各々が第1の横方向カット部分(8)を有し、該各カット部分(8)が並列的かつ隣接的に配置されたブロックに属する第1の横方向カット部分(8)の1つに対して連続的に伸びており、前記ブロック列(5、6)の少なくとも1つは第2の横方向カット部分(9)を有し、該各第2の横方向カット部分(9)は前記第1のカット部分(8)の2つの間の中間位置にあり、
前記連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成し、
前記対応外側エッジ部(1a)から始まる前記横方向溝(13)の各々は、前記長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有することを特徴とするタイヤ。」
と訂正する。

訂正事項(b)
「【請求項10】 請求項1に記載のタイヤにおいて、
前記連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成し、該各横方向溝(13)が、トレッド(1)の対応外側エッジ部(1a)から前記赤道面(X-X)に近接するに至るまで伸びていることを特徴とするタイヤ。」
とあるのを、
「【請求項10】 請求項1に記載のタイヤにおいて、該各横方向溝(13)が、トレッド(1)の対応外側エッジ部(1a)から前記赤道面(X-X)に近接するに至るまで伸びていることを特徴とするタイヤ。」
と訂正する。

訂正事項(c)
「【請求項11】 請求項1に記載のタイヤにおいて、
前記対応外側エッジ部(1a)から始まる前記横方向溝(13)の各々は、前記長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有することを特徴とするタイヤ。」
とあるのを削除する。

訂正事項(d)
「【請求項12】 請求項10に記載のタイヤにおいて、
前記長手方向溝(2)は前記第1の横方向カット部分(8)の幅よりも小さな幅を有することを特徴とするタイヤ。
【請求項13】 請求項11に記載のタイヤにおいて、
前記長手方向溝(2)の幅と前記第1の横方向カット部分(8)の幅との比は、0.6〜0.2の範囲内にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項14】 請求項1に記載のタイヤにおいて、
前記第2のカット部分(9)は、トレッド(1)の外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)と、赤道面(X-X)へ向かって該外方肩列(6)に並列的に配置された内方肩列(5)とに関係していることを特徴とするタイヤ。
【請求項15】 請求項1に記載のタイヤにおいて、
前記第2のカット部分(9)の幅寸法は前記第1のカット部分(8)の幅寸法よりも小さいことを特徴とするタイヤ。
【請求項16】 請求項15に記載のタイヤにおいて、
前記第2のカット部分(9)の幅と前記第1のカット部分(8)の幅との比が0.5〜1.0の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項17】 請求項1に記載のタイヤにおいて、
前記列(4)の少なくとも1つの形状ブロック(7)が夫々少なくとも1つの横方向スロット(9a)を有し、該各横方向スロット(9a)は前記第2のカット部分(9)の1つの伸長部分に対応して、該ブロック自体の幅より小さい幅の部分にわたって赤道面(X-X)に向かって伸長していることを特徴とするタイヤ。
【請求項18】 請求項17に記載のタイヤにおいて、
前記横方向スロット(9a)は外方中央列(4)と関係され、該外方中央列(4)は、トレッド(1)の赤道面(X-X)に向かって内方肩列(5)に連続的かつ並列的に配置されていることを特徴とするタイヤ。
【請求項19】 請求項1に記載のタイヤにおいて、
前記ブロック列(6)の少なくとも1つは、第1及び第2の横方向カット部分(8、9)に平行に伸びる第3の横方向カット部分(10)を更に具備することを特徴とするタイヤ。
【請求項20】 請求項19に記載のタイヤにおいて、
前記第3の横方向カット部分(10)はトレッドの外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)に関係していることを特徴とするタイヤ。」
とあるのを、
「【請求項11】 請求項10に記載のタイヤにおいて、前記長手方向溝(2)は前記第1の横方向カット部分(8)の幅よりも小さな幅を有することを特徴とするタイヤ。
【請求項12】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記長手方向溝(2)の幅と前記第1の横方向カット部分(8)の幅との比は、0.6〜0.2の範囲内にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項13】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記第2のカット部分(9)は、トレッド(1)の外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)と、赤道面(X-X)へ向かって該外方肩列(6)に並列的に配置された内方肩列(5)とに関係していることを特徴とするタイヤ。
【請求項14】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記第2のカット部分(9)の幅寸法は前記第1のカット部分(8)の幅寸法よりも小さいことを特徴とするタイヤ。
【請求項15】 請求項14に記載のタイヤにおいて、前記第2のカット部分(9)の幅と前記第1のカット部分(8)の幅との比が0.5〜1.0の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項16】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記列(4)の少なくとも1つの形状ブロック(7)が夫々少なくとも1つの横方向スロット(9a)を有し、該各横方向スロット(9a)は前記第2のカット部分(9)の1つの伸長部分に対応して、該ブロック自体の幅より小さい幅の部分にわたって赤道面(X-X)に向かって伸長していることを特徴とするタイヤ。
【請求項17】 請求項16に記載のタイヤにおいて、前記横方向スロット(9a)は外方中央列(4)と関係され、該外方中央列(4)は、トレッド(1)の赤道面(X-X)に向かって内方肩列(5)に連続的かつ並列的に配置されていることを特徴とするタイヤ。
【請求項18】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記ブロック列(6)の少なくとも1つは、第1及び第2の横方向カット部分(8、9)に平行に伸びる第3の横方向カット部分(10)を更に具備することを特徴とするタイヤ。
【請求項19】 請求項18に記載のタイヤにおいて、前記第3の横方向カット部分(10)はトレッドの外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)に関係していることを特徴とするタイヤ。」
と訂正する。』
(以下において、訂正後の請求項1ないし19に係る発明を、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明19」ということがある。)

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項(a)について
訂正事項(a)のうち、
「トレッ外側エッジ部」を「トレッド外側エッジ部」と訂正することは、「トレッ外側エッジ部」が技術用語ではなく、訂正前の請求項1の記載がトレッドを設けた自動車ホイール用タイヤに係るものであることからすれば、「トレッド外側エッジ部」の誤記であることは明らかであるから、誤記の訂正を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、
訂正により、「前記連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成し、」とすることは、願書に添付した明細書又は図面の段落【0020】〜【0021】、【0041】〜【0042】、【図1】等に、第1の横方向カット部分(8)を有した各列(3、4、5、6)において、連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成している旨記載されていること等に基づき、構成要件を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、
訂正により、「前記対応外側エッジ部(1a)から始まる前記横方向溝(13)の各々は、前記長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有する」とすることは、願書に添付した明細書又は図面の段落【0021】〜【0022】、【0042】〜【0044】、【図1】等に、連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成しており、外側(側方)のエッジ部(1a)から始まる横方向溝(13)の各々は、長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有する旨記載されていること等に基づき、構成要件を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
そして、訂正事項(a)は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項(b)について
訂正事項(b)は、訂正事項(a)により「前記連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成し、」が請求項1に付加され、請求項1が減縮されたことに伴い、請求項1を引用している請求項10において重複することとなった同じ文言について削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。そして、請求項1に係る訂正事項(a)と同様に、請求項10に係る訂正事項(b)は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項(c)について
訂正事項(c)は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項(d)について
訂正事項(d)は、訂正事項(c)に係る請求項11の削除に伴い、請求項の繰り上げと、請求項を引用した形式で記載されていたものについての請求項番号の整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.独立特許要件
特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項12、13、16、19、20についての訂正を見てみると、訂正後はそれぞれ請求項11、12、15、18、19に対応していて、訂正事項(d)によっては引用請求項番号以外に実質上の文言の変更はされていないが、これらはいずれも直接的又は間接的に請求項1を引用して記載されているものであり、訂正事項(a)は少なくとも請求項1の減縮を目的としたものであることからすれば、訂正前の請求項12、13、16、19、20についての訂正は、少なくとも特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、訂正後の請求項11、12、15、18、19に係る発明(本件発明11、・・・本件発明19)の独立特許要件について検討する。

3-1.本件発明11について
(1)本件発明11の構成要件
本件発明11は、訂正後の特許請求の範囲の請求項11に記載されたとおりの以下のものである。
「【請求項11】 請求項10に記載のタイヤにおいて、前記長手方向溝(2)は前記第1の横方向カット部分(8)の幅よりも小さな幅を有することを特徴とするタイヤ。」
訂正後の請求項10は請求項1を引用して記載されているから、本件発明11は、少なくとも本件発明1の構成要件である以下の点をすべて構成要件として含むものである。
「低い走行ノイズを生ずるトレッドを設けた自動車ホイール用タイヤであって、該トレッドは、複数の形状ブロック(7)を形成された隆起パターンを具備し、該ブロックは、タイヤの円周方向に伸びる長手方向溝(2)により境界付けられた平行の円周方向列(3、4、5、6)内に分配され、かつ該各ブロックは個々の横方向カット部分(8、9、10)により互に分離された所定個数の形状ブロック(7)を具備する前記タイヤにおいて、
該各列(3、4、5、6)の形状ブロック(7)の個数は、所定の列の形状ブロックの個数が、トレッド(1)の赤道面(X-X)の方へ並列的関係で連続的に配置された隣接列の形状ブロックの個数よりも大きいことにより、該トレッドは、トレッド外側エッジ部(1a)から前記赤道面へ向かうに従い長手方向剛性が徐々に増加し、前記列(3、4、5、6)の各々が第1の横方向カット部分(8)を有し、該各カット部分(8)が並列的かつ隣接的に配置されたブロックに属する第1の横方向カット部分(8)の1つに対して連続的に伸びており、前記ブロック列(5、6)の少なくとも1つは第2の横方向カット部分(9)を有し、該各第2の横方向カット部分(9)は前記第1のカット部分(8)の2つの間の中間位置にあり、
前記連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成し、
前記対応外側エッジ部(1a)から始まる前記横方向溝(13)の各々は、前記長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有する」点。
そこで、まず、本件発明1について、申立人が提示した甲第1〜5号証に記載された発明との対比を行う。

(2)甲各号証の記載について
申立人が提示した甲第1ないし5号証は以下のとおりである。
甲第1号証:特開平5-69707号公報
甲第2号証:特開平4-2508号公報
甲第3号証:特開平4-193607号公報
甲第4号証:特開平1-275202号公報
甲第5号証:特開平4-317805号公報

(2-1)甲第1号証には、以下のア.〜エ.の記載が認められる。
ア.「平坦に形成されたトレッド部(1)の外表側にトレッド幅方向の間隔をおいて円周方向全長に連続する3本の主溝(2)(3)(4)が形成され、この主溝(2)(3)(4)をトレッド幅方向に連通する複数本の副溝(5)がトレッド中心に対して傾めに交叉されてタイヤの円周方向に間隔をおいて配置され、前記主溝(2)(3)(4)のうち1本はトレッド中心に位置し他の2本はそれぞれトレッド中心に関して対称位置に形成されている・・・車両用タイヤ。」(特許請求の範囲の請求項1)
イ.「本発明は、トレッド部に形成される主溝および副溝の溝巾と溝深さの比および実接地面積と全接地面積の比を特定することによって、降雨時の排水性を損うことなくセミウエット時からドライ路面における繰安特性の向上を図った車両用タイヤを提供することが目的である。」(段落【0004】)
ウ.「図を参照して本発明の実施例を説明すると、トレッド部1を展開して示した図1において、該トレッド部1はタイヤ外径の値以上のトレッド半径をもっていることで平坦に形成されており、このトレッド部1の外表側には、トレッド中心に位置するセンター主溝2とトレッド中心に関して対称位置に形成された両サイド主溝3,4との3本の主溝2,3,4がトレッド幅方向の間隔をおいて円周方向全長にほぼ直線状として連続して形成してある。」(段落【0007】及び図1を参照)
エ.「前記主溝2,3,4をトレッド幅方向に連通する複数本の副溝5が車両の進行方向をA とするとトレッド中心に対して例えば25°〜35°の角度θをもって傾めに交叉されてタイヤの円周方向に間隔をおいて配置され、ここに、タイヤ中心線に関して左右で線対称形状とされた略菱形のブロック6,7と鷹羽形のショルダーブロック8,9が区画形成されている。なお、ショルダーブロック8,9にはサイプ8A,9Aを形成している。」(段落【0008】及び図1を参照)

(2-2)甲第2号証には、以下のオ.の記載が認められる。
オ.「一対のサイドウォール部に跨がって延びる円筒状をしたトレッド部の外表面に、軸方向に互いに所定間隔離れて配置された複数本の周方向に延びる主溝を形成することにより、周方向に延びる複数本の陸部列を画成するとともに、これら陸部列にトレッド端からタイヤ赤道面に向かうに従いタイヤ回転方向前方に向かって傾斜した複数の横溝を周方向に所定間隔離して形成した高速走行用空気入りタイヤにおいて、少なくともいずれか1本の陸部列における横溝を、両端が主溝に開口する横断溝と、トレッド端に近接する一端が主溝に開口する一方、タイヤ赤道面に近接する他端が陸部列の幅方向途中において終わる中断溝と、から構成し、かつ、前記中断溝の周方向両側に横断溝を配置するようにしたことを特徴とする高速走行用空気入りタイヤ。」(特許請求の範囲)

(2-3)甲第3号証には、以下のカ.〜ク.の記載が認められる。
カ.「1 タイヤ周方向にのびる複数本の縦溝により形成されたリブを、一方のトレッド縁から他方のトレッド縁まで同じ向きでのびる横溝又はタイヤ赤道を中心として対称にのびる横溝により区分したブロックからなるブロック列を形成するとともに、前記ブロック列の内、タイヤ赤道から該タイヤ赤道とトレッド縁との間の距離の半分長さまでのクラウン域にブロックのタイヤ軸方向中間点が含まれるクラウン域のブロック列CBの1つのブロック列に含まれるブロックの数Aと、クラウン域両側のショルダー域にタイヤ軸方向中間点が含まれるショルダー域のブロック列SBの1つのブロック列に含まれるブロックの数Bとの内、数の少ない方のブロックの数N(A、B)と、数の多い方のブロックの数M(A、B)との比N(A、B)/M(A、B)を0.5以上かつ0.9以下とした空気入りタイヤ。」(特許請求の範囲)
キ.「さらにトレッド部2には、第2図に示すように、タイヤ赤道COの両側かつ対称に、トレッド巾TWを略5等分する位置にタイヤ周方向にのびる4本の縦溝G1、G1、G2、G2が設けられる。
これにより、トレッド部2にはタイヤ赤道COを通る中央リブR1と、トレッドの外縁e1、e2に沿う側リブR2、R2と、その間の中間リブR3、R3とが設けられる。」(公報第5頁左上欄第5〜12行及び第2図を参照)
ク.「又中央リブR1、外リブR2、中間リブR3には、本実施例では、一方のトレッドの外縁e1から他方のトレッドの外縁e2まで同じ向き・・・でしかも中央リブR1の中央部の途切れ部を有してのびる横溝g1…が一定の横溝間ピッチP1で周方向に隔設される。又本実施例では、右の外リブR3には縦溝G2とトレッドの外縁e1とを結びかつ前記横溝g1、g1間を2等分する位置でかつ横溝g1と同じ向きしかも同じ傾斜角度で傾く短い横溝g2…が設けられる。」(公報第5頁右上欄第9〜19行)

(2-4)甲第4号証には、以下のケ.〜シ.の記載が認められる。
ケ.「タイヤの周方向に沿って実質的にストレート状に延びた少なくとも1本の主溝、タイヤのセンター部からショルダー部に向かって楔形に屈曲した形状を有する複数のサブ溝とからなり、かつ次の要件を満足するトレッドデザインを有する乗用車用空気入りタイヤ。
(1)前記主溝とサブ溝により形成される、タイヤの全周上のブロック数が30〜45個であること、
(2)溝面積比率が20〜30%の範囲内であること、
(3)・・・サブ溝の屈曲点が・・・主溝位置から外れた位置にあること。」(特許請求の範囲)
コ.「本発明の目的は、タイヤのウェットコーナリング性能を損なわずに、ドライ性能の改良、向上されたタイヤを提供することである。」(公報第1頁右下欄下から3〜1行)
サ.「第1図は、本発明タイヤのトレッドデザインの1例を示す平面図であり、図に示す通り、タイヤの周方向に沿って実質的にストレート状に延びる主溝1、タイヤセンター部からショルダー部に向かって主溝1間を相互に繋ぐ複数のサブ溝2からなっている。」(公報第2頁左上欄下から7〜2行及び第1図を参照)
シ.タイヤのトレッドデザインの平面図として、以下のa)〜g)が示されている第1図。
a)タイヤのセンター部CLで示された線上と重なっている部分にある中央溝。
b)タイヤのセンター部から両側に2本ずつ、計4本の主溝1。
c)タイヤセンター部からショルダー部に向かって主溝1間を相互に繋ぐ複数のサブ溝2。
d)中央溝とセンター部側の2本の主溝それぞれとの間に、それらと並行に円周方向に形成されており、中途で切れる溝(図面上には各3つずつ示されている)を有した2本のリブ。
e)タイヤのセンター部側の主溝それぞれとそのショルダー部側の主溝それぞれとの間にあり、それら主溝とサブ溝により形成されており、センター部両側にあるセンター部側のブロック。ブロックは、タイヤの円周方向にブロック列として延びている。
f)ショルダー部側の2本の主溝それぞれのショルダー部側にあり、それぞれの主溝とサブ溝により形成されており、センター部両側にあるショルダー部側のブロック3。ブロック3は、タイヤの円周方向にブロック列として延びている。
g)ショルダー部側ブロック上であって、該ブロックを形成している2本のサブ溝の間の中間位置にあり、エッジ部から横方向に延びて中途で切れ、該ブロックの幅よりも小さい幅の部分にわたっている溝。

(2-5)甲第5号証には、以下のス.〜セ.の記載が認められる。
ス.「【請求項1】1対のサイドウォール間にまたがってトロイダル状に連なるトレッドに、このトレッドの中央周線とトレッド端との間で該中央周線に沿って延びる複数の周溝及びこれら周溝を横切る向きで延びる多数の横溝にて区画され中央周線に沿って並ぶブロック列をそなえる空気入りタイヤであって、該ブロック列の各ブロックにおいて対辺をなす横溝の一方を含むブロックの周方向長さで定義されるピッチにつき、各ブロック列におけるピッチの平均値が上記中央周線からトレッド端へ順次に減少する組合わせで各ブロックを配置したことを特徴とする騒音を低減した空気入りタイヤ。」(特許請求の範囲の請求項1)
セ.「横溝4〜6は、周溝に対して傾斜しかつ、その傾斜角度α1〜α3が中央周線Oからトレッド端Eへ増大(すなわちα1<α2<α3)し、トレッド端Eから中央周線Oへ実質上収斂する矢筈状の配置になる。これは中央周線O付近におけるブロックと路面との衝突音がタイヤ騒音の大きな部分を占めるため、トレッドの中央を連続したリブ7とし、このリブ7と周溝1,1を介して隣接するブロック8,8からトレッド端Eに向かって横溝の傾斜角を増加させたものである。それによって、ブロックのエッジ部が路面に同時に接することを回避し、ピッチノイズ成分を低減し得るトレッドパターンとした。さらにこのトレッドパターンにおいては、横溝の幅を横溝4から6へと順次広くしたり、あるいはブロック列8〜10のネガティブ比をほぼ等しくすることができる。また横溝の本数は、ブロック列10からトレッド中央(リブ7は横溝なし)に向かって順次減少させることが好ましい。さらにリブ及びブロックのタイヤ軸方向の幅はリブ7からブロック列8,9,10へと順次増加することが望ましい。一方溝深さは、周溝の深さと同等か多少浅くする。」(段落【0007】)

(3)対比、判断
甲第1号証には、上記摘示ア.に係る車両用タイヤにおいて、上記摘示ウ.より、両サイド主溝(3,4)を有し、上記摘示エ.より、副溝(5)、ブロック(6,7)、ショルダーブロック(8,9)及びショルダーブロック(8,9)に形成されたサイプ(8A,9A)を有したものが記載されている。また、上記摘示ウ.、エ.により把握されるタイヤのトレッド部について示された図1を参照すると、ショルダーブロック(8,9)は、その円周方向を境界付けている2つの副溝(5)の間の中間位置にサイプ(8A,9A)が形成されていることにより、その円周方向列の個数はブロック(6,7)の個数よりも大きく、そのトレッドの構造上、トレッドの外側エッジ部から赤道面へ向かうに従い長手方向剛性が徐々に増加するものであると認められるから、甲第1号証には、
「トレッド部(1)を設けた車両用タイヤであって、トレッド部(1)は、両サイド主溝(3,4)及び副溝(5)を有し、ブロック(6,7)、ショルダーブロック(8,9)及びショルダーブロック(8,9)に形成されたサイプ(8A,9A)を有し、トレッドの外側エッジ部から赤道面へ向かうに従い長手方向剛性が徐々に増加するものである車両用タイヤ。」
の発明が記載されていると認められる。
そこで、本件発明1とこの甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明における副溝(5)は、本件発明1における第1の横方向カット部分に対応すると認められるが、両者は、
本件発明1において、第1の横方向カット部分が連続した横方向溝(13)を画成し、外側エッジ部(1a)から始まるその各々は、長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有することを、構成要件としている点(以下、「相違点1」という。)、
で少なくとも相違している。
相違点1に関し、甲第2ないし5号証に記載された事項について検討する。
甲第2号証には、上記摘示オ.に、トレッド端からタイヤ赤道面に向かうに従いタイヤ回転方向前方に向かって傾斜した複数の横溝を周方向に所定間隔離して形成したタイヤについて記載されているが、相違点1については記載も示唆もない。
甲第3号証には、上記摘示カ.〜ク.に、一方のトレッド縁から他方のトレッド縁まで同じ向きでのびる横溝又はタイヤ赤道を中心として対称にのびる横溝を有したタイヤについて記載されているが、相違点1については記載も示唆もない。
甲第4号証には、上記摘示ケ.〜シ.に、タイヤのセンター部からショルダー部に向かって楔形に屈曲した形状を有する複数のサブ溝を有するタイヤについて記載されているが、相違点1については記載も示唆もない。
甲第5号証には、上記摘示ス.〜セ.に、トレッドの中央周線とトレッド端との間で該中央周線に沿って延びる複数の周溝及びこれら周溝を横切る向きで延びる多数の横溝にて区画され中央周線に沿って並ぶブロック列をそなえ、横溝は、周溝に対して傾斜しかつ、その傾斜角度α1〜α3が中央周線Oからトレッド端Eへ増大(すなわちα1<α2<α3)し、トレッド端Eから中央周線Oへ実質上収斂する矢筈状の配置になったタイヤについて記載されているが、相違点1については記載も示唆もない。
以上のとおり、相違点1については、甲第2ないし5号証に記載も示唆もなく、この点が技術常識であるともいえないから、本件発明1は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものではない。
そして、本件発明11は、本件発明1の構成要件をすべて含み、さらに技術的な限定を加える構成要件を有したものであるから、本件発明1が甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものではない以上、本件発明11についても、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。また、本件発明11に係る特許出願の際にこれを拒絶すべき理由は、他にも見当たらない。
よって、本件発明11は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

3-2.本件発明12、15、18、19について
本件発明12、15、18、19は、訂正後の特許請求の範囲のそれぞれの請求項に記載されたとおりの以下のものである。
「【請求項12】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記長手方向溝(2)の幅と前記第1の横方向カット部分(8)の幅との比は、0.6〜0.2の範囲内にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項15】 請求項14に記載のタイヤにおいて、前記第2のカット部分(9)の幅と前記第1のカット部分(8)の幅との比が0.5〜1.0の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項18】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記ブロック列(6)の少なくとも1つは、第1及び第2の横方向カット部分(8、9)に平行に伸びる第3の横方向カット部分(10)を更に具備することを特徴とするタイヤ。
【請求項19】 請求項18に記載のタイヤにおいて、前記第3の横方向カット部分(10)はトレッドの外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)に関係していることを特徴とするタイヤ。」
訂正後の請求項14は請求項1を引用して記載されているから、本件発明12、15、18、19は、いずれも本件発明1の構成要件をすべて構成要件として含み、さらに技術的な限定を加える構成要件を有したものである。
そして、本件発明1は、上記「3-1.本件発明11について」で検討したとおり、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものではないから、同様に、本件発明12、15、18、19についても、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。また、本件発明12、15、18、19に係る特許出願の際にこれを拒絶すべき理由は、他にも見当たらない。
よって、本件発明12、15、18、19は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについて
1.本件発明
上記のとおり訂正は認められるから、本件特許第3414839号の請求項1ないし10、14、15、17、18に係る発明は、それぞれ、本件発明1ないし10、13、14、16、17に対応するものとして訂正された。

2.特許異議申立ての理由の概要
申立人は、証拠として甲第1ないし5号証を提示し、訂正前の本件請求項1ないし10、14、15、17、18に係る発明は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件請求項1ないし10、14、15、17、18に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
なお、申立人の提示した甲各号証については、上記「II.平成17年3月10日付け訂正請求書による訂正の適否について」の「3.独立特許要件」において摘示したとおりである。

3.当審による取消理由通知の概要
平成16年8月31日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
『 本件特許の請求項1、3〜6、10、15、17に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物Aまたは刊行物Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。


引用刊行物
(1)刊行物A:特開平5-69707号公報(特許異議申立人 株式会社ブリヂストンの提示した甲第1号証)
(2)刊行物B:特開平1-275202号公報(特許異議申立人 株式会社ブリヂストンの提示した甲第4号証) 』

4.当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1と、甲第1ないし5号証に記載された発明との対比判断については、上記「II.平成17年3月10日付け訂正請求書による訂正の適否について」の「3.独立特許要件 (3)対比、判断」で述べたとおりであり、本件発明1は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものではない。

(2)本件発明2ないし10、13、14、16、17について
本件発明2ないし10、13、14、16、17は、いずれも本件発明1をさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1が、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものではない以上、本件発明2ないし10は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)当審の通知した取消理由について
当審が平成16年8月31日付けで通知した取消理由については、本件訂正が認められたことにより、妥当性を欠くものとなった。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし10、13、14、16、17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし10、13、14、16、17に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動車用タイヤ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 低い走行ノイズを生ずるトレッドを設けた自動車ホイール用タイヤであって、該トレッドは、複数の形状ブロック(7)を形成された隆起パターンを具備し、該ブロックは、タイヤの円周方向に伸びる長手方向溝(2)により境界付けられた平行の円周方向列(3、4、5、6)内に分配され、かつ該各ブロックは個々の横方向カット部分(8、9、10)により互に分離された所定個数の形状ブロック(7)を具備する前記タイヤにおいて、
該各列(3、4、5、6)の形状ブロック(7)の個数は、所定の列の形状ブロックの個数が、トレッド(1)の赤道面(X-X)の方へ並列的関係で連続的に配置された隣接列の形状ブロックの個数よりも大きいことにより、該トレッドは、トレッド外側エッジ部(1a)から前記赤道面へ向かうに従い長手方向剛性が徐々に増加し、前記列(3、4、5、6)の各々が第1の横方向カット部分(8)を有し、該各カット部分(8)が並列的かつ隣接的に配置されたブロックに属する第1の横方向カット部分(8)の1つに対して連続的に伸びており、前記ブロック列(5、6)の少なくとも1つは第2の横方向カット部分(9)を有し、該各第2の横方向カット部分(9)は前記第1のカット部分(8)の2つの間の中間位置にあり、
前記連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成し、
前記対応外側エッジ部(1a)から始まる前記横方向溝(13)の各々は、前記長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有することを特徴とするタイヤ。
【請求項2】 請求項1に記載のタイヤにおいて、トレッドの中央ライン(X-X)の各軸方向片側上の前記ブロック列(3、4、5、6)の個数は3以上かつ5以下であることを特徴とするタイヤ。
【請求項3】 請求項1に記載のタイヤにおいて、少なくとも1つの連続的円周方向リブ(11)が赤道面(X-X)に近接して配置され、該リブは前記長手方向溝(2)の2つの間に限定配置されることを特徴とするタイヤ。
【請求項4】 請求項3に記載のタイヤにおいて、前記トレッドは、該トレッドの赤道面(X-X)に関して対称的に配置されかつ1つの中央溝(12)により相互に分離された2つの前記円周方向リブ(11)を具備することを特徴とするタイヤ。
【請求項5】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記内方中央列(3)の前記形状ブロックの個数が20〜40の範囲内にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項6】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記形状ブロックの個数は、1つの列から軸方向外側へ向かって連続的に並列関係で配置された列に至る際に倍増されることを特徴とするタイヤ。
【請求項7】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記形状ブロックを有する各列(3、4、5、6)において、横方向カット部分(8、9、10)が隣接する長手方向溝(2)との間でインパクト角度「α」を画成し、所定の列のインパクト角度の広がりは、赤道面へ向かって並列的かつ連続的に配置された隣接ブロック列の横方向カット部分により形成されたインパクト角度の広がりより大きいことを特徴とするタイヤ。
【請求項8】 請求項7に記載のタイヤにおいて、前記赤道面(X-X)に最も近いブロック列(3)のインパクト角度「α」が15°〜25°の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項9】 請求項7に記載のタイヤにおいて、前記側方エッジ部(1a)に最も近いブロック列(6)のインパクト角度「α」が70°〜105°の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項10】 請求項1に記載のタイヤにおいて、該各横方向溝(13)が、トレッド(1)の対応外側エッジ部(1a)から前記赤道面(X-X)に近接するに至るまで伸びていることを特徴とするタイヤ。
【請求項11】 請求項10に記載のタイヤにおいて、前記長手方向溝(2)は前記第1の横方向カット部分(8)の幅よりも小さな幅を有することを特徴とするタイヤ。
【請求項12】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記長手方向溝(2)の幅と前記第1の横方向カット部分(8)の幅との比は、0.6〜0.2の範囲内にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項13】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記第2のカット部分(9)は、トレッド(1)の外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)と、赤道面(X-X)へ向かって該外方肩列(6)に並列的に配置された内方肩列(5)とに関係していることを特徴とするタイヤ。
【請求項14】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記第2のカット部分(9)の幅寸法は前記第1のカット部分(8)の幅寸法よりも小さいことを特徴とするタイヤ。
【請求項15】 請求項14に記載のタイヤにおいて、前記第2のカット部分(9)の幅と前記第1のカット部分(8)の幅との比が0.5〜1.0の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項16】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記列(4)の少なくとも1つの形状ブロック(7)が夫々少なくとも1つの横方向スロット(9a)を有し、該各横方向スロット(9a)は前記第2のカット部分(9)の1つの伸長部分に対応して、該ブロック自体の幅より小さい幅の部分にわたって赤道面(X-X)に向かって伸長していることを特徴とするタイヤ。
【請求項17】 請求項16に記載のタイヤにおいて、前記横方向スロット(9a)は外方中央列(4)と関係され、該外方中央列(4)は、トレッド(1)の赤道面(X-X)に向かって内方肩列(5)に連続的かつ並列的に配置されていることを特徴とするタイヤ。
【請求項18】 請求項1に記載のタイヤにおいて、前記ブロック列(6)の少なくとも1つは、第1及び第2の横方向カット部分(8、9)に平行に伸びる第3の横方向カット部分(10)を更に具備することを特徴とするタイヤ。
【請求項19】 請求項18に記載のタイヤにおいて、前記第3の横方向カット部分(10)はトレッドの外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)に関係していることを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低い走行ノイズを生ずるトレッドを設けた自動車ホイール用タイヤであって、該トレッドは、複数の形状ブロックを形成された隆起パターンを具備し、該ブロックは、タイヤの円周方向に伸びる長手方向溝により境界付けられた平行の円周方向列内に分配され、かつ該各ブロックは個々の横方向カット部分により互に分離された所定個数の形状ブロックを具備する前記タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、道路用自動車タイヤであって、複数の形状ブロックを画成するトレッド上に複数の長手方向溝及び横方向カット部分(cuts)を有し、該ブロックが適切に研究された特別のパターンに応じて分配されたような前記タイヤが知られている。
【0003】前記パターン内に設けられた複数の長手方向溝は、幾つかの並列した列(several side by side rows)内に形状ブロックが分配される効果により、タイヤに対してホイール軸と平行に指向されるドリフトスラスト(横滑り軸方向力)についての方向制御安定性及び道路保持力における好ましい特徴をもたらす。次に、前記横方向カット部分はタイヤに対して好ましい牽引的特徴、即ち自動車のスピードアップ及びスローダウン期間中に走行方向と平行のタンジェンシャルスラスト(接線方向力)を効率的に伝達する能力をもたらす。原理的には、タイヤの牽引力は、トレッドに配置された横方向カット部分の個数が増加するほどかつカット部分自体の配向が走行方向と直行する方向に近付くほど大きくなる傾向にある。
【0004】加えて、長手方向溝と横方向カット部分とは互いに共働して、濡れた道路ベッド上を走行する期間中に水がタイヤの刻印領域(imprinting area)から効率的に排出される作用を行う。
【0005】しかしながら、横方向カット部分及び長手方向溝は、タイヤの回転走行により生ずる公知のノイズ効果の原因となる。更に詳細には、回転走行ノイズの主原因の1つは、道路ベッド上に形状ブロックのコーナ部が連続的かつ継続的にインパクト(衝撃)を与えるためであることがわかった。
【0006】ノイズを生ずる他の原因は、道路ベッドがタイヤの刻印領域に入りかつ出て行くときに形状ブロックが道路ベッドに接触して受ける摩擦力(rubbings)によりもたらされる。これらの摩擦力はトレッドに必然的に生ずる変形に本質的に起因しており、自由状態で二重曲げを伴う凸状形態(convex conformation with a double bending)を有する外面が、不可避的に道路ベッドに対して平坦状になる。
【0007】刻印領域に対する入口領域及び出口領域間においてトレッドの変形を生ぜしめる動的(dynamic)作用により、更に、形状ブロック間に画成された溝及びカット部分の周期的かつ容積的変化が生じ、これにより、溝及びカット部分内に含まれた空気に周期的な増圧的かつ減圧的作用(compressive and decompressive action)をもたらす。これらの空気の増圧的かつ減圧的現象はタイヤの回転走行により生ずるノイズの発生を助長する。
【0008】公知の技術では、タイヤの回転走行により生ずるノイズを制限するために幾つかの手段を示唆している。
【0009】長い間採用されて来た1つの手段は、単一の形状ブロックの長手方向寸法、即ち円周方向伸長部に沿った各寸法を異ならしめることである。換言すれば、ブロックは、通常は「ピッチ配列(pitch sequence)」と呼ばれる円周方向連続部分内に分配された2つ又はそれ以上の異なるピッチ値に応じてトレッドの円周方向伸長部上に配置され、前記「ピッチ配列」は一般に円周方向伸長部の全体にわたって最大限に可能な不均一性(unevenness)を達成するように考慮される。この態様において、ブロックのインパクト及び摩擦力により生ずる圧力波は、回転走行の結果生ずる殆どの音響的エネルギーが集中される特別の周波数に対応して生ずるのではない。換言すれば、音響的エネルギーは広い周波数範囲にわたって分布(分配)し、これにより「乱暴運転効果(squirrel effect)」として通常知られるやっかいなノイズ効果を除去する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしなお、音響的エネルギーを一層広い周波数範囲にわたって分布させる目的で、連続的かつ並列的に配置された円周方向列に属する複数のブロックを互に対してオフセットさせることが提案されて来た。しかしながら、この解決法によれば、水をトレッドの接触領域の中央部から外側エッジ部の方へ排出するのが困難になり、それゆえ十分な排出作用を達成するには長手方向溝の幅を増加させることが必要である。
【0011】他の手段としては、横方向カット部分に、走行方向と直交する方向に対して適当に傾斜した配向を与えることである。これにより、道路ベッド上のブロックのコーナ部のインパクト(衝撃)が「円滑化(smoothed)」され得るが、他方では、タイヤの牽引的特徴を損ねてしまう。
【0012】回転走行により生ずるノイズが非常に低減されるのは、形状ブロックに通常「サイプ(sipes)」と呼ばれる追加のカット部分を形成することにより達成され、該サイプはブロックの弾性的変形可能性を増加させるものである。この解決法によれば、道路ベッド上のブロックのコーナ部のインパクト(衝撃)が円滑化され、これによりインパクトから生ずるノイズを低減し得る。しかしながら、ブロックの変形可能性が一層大きくなるので、摩擦力から生ずるノイズ効果が増加するであろう。
【0013】前記技術を記述した例については、本出願人のイタリア特許出願第20284A/90を参照されたい。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、タイヤの赤道面又は中央列に近接した円周方向列に配置されたブロックの個数が、トレッドの側方エッジ部又は肩列に隣接した列内に設けられた形状ブロックの個数より少ないことにより、タイヤの牽引的及び方向制御的特徴、及び水排出の効率を損ねることなくタイヤの回転走行により生ずるノイズを重要な低減を達成することが可能であることが見いだされた。
【0015】特に、本発明は、低走行ノイズを生ずるトレッドを設けた自動車ホイール用タイヤであって、各列(3、4、5、6)の形状ブロック(7)の個数は、所定の列の形状ブロックの個数が、トレッド(1)の赤道面(X-X)の方へ並列的関係で連続的に配置された隣接列の形状ブロックの個数よりも大きいことにより、該トレッドは、トレッ外側エッジ部(1a)から前記赤道面へ向かうに従い長手方向剛性が徐々に増加する。
【0016】少なくとも1つの連続的円周方向リブ(11)が、赤道面(X-X)に近接して配置され、該リブは前記長手方向溝(2)の2つの間に限定配置される。
【0017】好ましくは、2つの円周方向リブが設けられ、それらは、トレッドの赤道面(X-X)に関して対称的に配置されかつ1つの中央溝(12)により相互に分離されている。
【0018】本発明の他の特徴によれば、前記形状ブロックを有する各列(3、4、5、6)において、横方向カット部分(8、9、10)が隣接する長手方向溝(2)との間でインパクト角度を画成し、所定の列のインパクト角度の広がりは、赤道面へ向かって並列的かつ連続的に配置された隣接ブロック列の横方向カット部分により形成されたインパクト角度の広がりより大きい。
【0019】更に詳しくは、前記赤道面(X-X)に最も近いブロック列(3)のインパクト角度が15°〜25°の範囲にあり、前記トレッドの側方エッジ部(1a)に最も近いブロック列(6)のインパクト角度が70°〜105°の範囲にある。
【0020】好ましくは、前記列(3、4、5、6)の各々が第1の横方向カット部分(8)を有し、該各カット部分(8)が並列的かつ隣接的に配置されたブロックに属する第1の横方向カット部分(8)の1つに対して連続的に伸びている。
【0021】前記連続的に配列された第1のカット部分(8)が連続した横方向溝(13)を画成し、該各横方向溝(13)が、トレッド(1)の対応外側エッジ部(1a)から前記赤道面(X-X)に近接するに至るまで伸びている。
【0022】前記対応外側エッジ部(1a)から始まる前記横方向溝(13)の各々は、前記長手方向溝(2)に略直交する1つの直線状部分と、曲線状連結部分と、前記長手方向溝(2)に対して傾斜的に配置された第2の直線状部分とを有する。
【0023】加えて、前記ブロック列(5、6)の少なくとも1つは第2の横方向カット部分(9)を有し、該各第2の横方向カット部分(9)は前記第1のカット部分(8)の2つの間の中間位置にある。
【0024】好ましくは、前記第2のカット部分(9)は、トレッド(1)の外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)と、赤道面(X-X)へ向かって該外方肩列(6)に並列的に配置された内方肩列(5)とに関係している。
【0025】前記各第2のカット部分(9)はこれと隣接する第1のカット部分(8)から変化し得る距離だけ離れており、該第1のカット部分よりも小さな幅を有する。特に、第2のカット部分の幅と第1のカット部分の幅との比は50%〜100%の範囲内にある。
【0026】前記列(4)の少なくとも1つの形状ブロック(7)が夫々少なくとも1つの横方向スロット(9a)を有し、該各横方向スロット(9a)は前記第2のカット部分(9)の1つの伸長部分に対応して、該ブロック自体の幅より小さい幅の部分にわたって赤道面(X-X)に向かって伸長している。
【0027】前記横方向スロット(9a)は外方中央列(4)と関係され、該外方中央列(4)は、トレッド(1)の赤道面(X-X)に向かって内方肩列(5)に連続的かつ並列的に配置されていることを特徴とするタイヤ。
【0028】前記各横方向スロット(9a)は個々のブロックの幅寸法の約半分以上を伸びている。
【0029】前記ブロック列の少なくとも1つは更に、前記第1及び第2の横方向カット部分と平行に伸びる第3のカット部分(10)を具備する。
【0030】一層詳しく言えば、前記第3の横方向カット部分(10)はトレッドの外側エッジ部(1a)に隣接した外方肩列(6)に関係している。
【0031】好ましくは、外方肩列とこれに隣接するブロック列とを分離する長手方向溝は、第3のカット部分の各々と第1及び第2の隣接カット部分の何れかとの間に含まれる部分で中断される。
【0032】第3のカット部分は、好ましくは、第1及び第2のカット部分の幅より小さい幅を有する。更に詳しく言えば、前記各第3のカット部分の伸長部に沿って、赤道面に面しかつ1mm以下の幅を有する内方部分と、該内方部分よりも大きな幅を有する外方部分とを画成される。
【0033】更に他の特徴及び効果が、本発明による特に自動車用タイヤのための低い回転走行ノイズを生ずるトレッドパターンの好ましい具体例の記述から明らかになるであろうし、その記述は添付の図面を参照して限定的でない具体例により以下に説明される。
【0034】
【実施例】図面中、1は、本発明による自動車タイヤ用のための特に低い走行ノイズを生ずるトレッドである。
【0035】このトレッド1は、複数の長手方向溝2を有し、該溝2どうしは互に適当な距離だけ離間し、かつトレッドを有するタイヤの円周方向に伸びている。そのような溝2は、トレッド1の幅部分に複数の円周方向列(rows)を画成し、該各列は並列関係で平行に配置されてタイヤの円周方向に伸びており、各列は、長手方向溝2に対して適当に配向された個々の横方向カット部分により互に分離された所定個数の形状ブロック7、7a、7bを具備する。
【0036】本発明によれば、好ましくは、各円周方向列3、4、5、6の形状ブロック7、7a、7bの個数は、これに対して、図1中ラインX-Xにより示されたトレッド1の赤道面の方向へ並列的にかつ連続的に隣接して配置された他の列のブロックの個数より大きい。換言すれば、各列3、4、5、6のブロック7、7a、7bの個数はトレッド1の中央領域から側方領域1aへ向かうに従って徐々に増加する。
【0037】この手段により、トレッド1はその外側エッジ部から赤道面X-Xへ向かうに従い徐々に増加する長手方向剛性を有することになり、これは以下に述べることを目的とする。
【0038】本出願人は、隣接する列どうしのブロックの個数の変化は、タイヤの中央ライン(X-X)の各軸方向片側上の複数のブロック列の個数が3以上でありかつ好ましくは5以下であるときに、仕上がりタイヤ及びその使用中に大きな効果を与えることを見出した。特に、寸法が205/50-R-15のプロトタイプタイヤについて示された具体例では、トレッド1の赤道面X-Xにおいては、少なくとも1つの円周方向連続リブ11が前記領域に配置されるので、ブロック7の個数は実質的にゼロであり、該リブ11は2つの長手方向溝2間に限定配置される。
【0039】しかるに、特に赤道面X-Xに対称的に2つの円周方向リブ11が対称的に配置されることが好ましく、該リブ11は該各リブ11と略同一の幅寸法を有する中央溝12により相互に分離される。明らかに、タイヤの軸方向寸法が増加するに従って、該リブ11の個数もまた増加するが、好ましくはその個数は3つ以下である。
【0040】リブ11即ち赤道面X-Xから離れる外方には、内方中央列3、外方中央列4、内方肩列5及び外方肩列6があり、前記列は並列関係で連続的に配置されている。
【0041】それらの各列3、4、5、6はまず横方向カット部分8を有し、各カット部分8は好ましくは、並列的関係で配置された形状ブロックの隣接列に属する第1の横方向カット部分8の1つに連続的に面する。
【0042】実際には、第1のカット部分8は全体的には連続した横方向溝13を画成し、各溝13は、トレッド1の対応する外側エッジ部1aから赤道面X-Xに近接するまで、一層特別には円周方向リブ11の1つに近接するまで伸びている。この解決手段によれば、好ましくは長手方向溝の幅寸法をタイヤの牽引的特徴の効果を生ずるよう限定されるのを可能とし、濡れた道路ベッド上を走行する期間中の水排出作用は、途中で中断部分が実質的に無い伸長部を有する横方向溝13に依存しており、この横方向溝13により水はトレッド1の外側エッジ部1aの方へ容易に流れ得る。
【0043】この点に関して、図1に見られる如く、長手方向溝2は、第1の横方向カット部分8や該横方向カット部分8により得られた横方向溝13よりも小さな幅寸法を有する。一層詳しくは、長手方向溝2の幅寸法「1」と第1の横方向カット部分8の幅寸法「L」との比は、0.6〜0.2であり、好ましくは0.4である。
【0044】加えて、対応する側方エッジ部1aから始まる横方向溝13の各々は、長手方向溝2に略直角でかつ個々の肩列5、6に近接して伸びる1つの直線状部分と、外方中央列4に近接して伸びる1つの曲がった結合部分と、長手方向溝2に傾斜して配されかつ内方中央列3に近接して配された第2の直線状部分とを有していなければならない。
【0045】前記横方向溝13の直線状部分の中でも、タイヤ側壁へ向かうに従い減少するセクションである軸方向最外側のセクションでは、該直線状部分はタイヤの赤道面に対して90°より大きな傾斜角度を取り得、好ましくは105°以下である。
【0046】結論として、横方向溝13を配置することにより、各ブロック列3、4、5、6において、横方向カット部分8が隣接した長手方向溝2との間にインパクト(衝撃)角度(impact angle)「α」を形成する。このインパクト角の大きさ(amplitude)は、並列的関係で赤道面X-X側へ連続的に配置された(隣接)ブロック列の横方向カット部分8と共に形成されたインパクト角度の大きさよりも大きくなっている。
【0047】換言すれば、異なる列3、4、5、6のブロック7のインパクト角度「α」は赤道面X-Xからトレッド1の外側エッジ部に向かうに従い徐々に増加する。
【0048】さらに詳細には、赤道面X-Xに最も近い内方中央列3のインパクト角度「α」の値は15°〜20°の範囲になければならず、一方トレッド1の側方エッジ部1aに最も近い外方肩列6のインパクト角度「α」の値は70°〜105°の範囲になければならない。
【0049】図示した具体例では、インパクト角度の値は赤道面X-Xから離れるに従い徐々に増加し、内方中央列3では20°であるが、外方肩列6及び内方肩列5では90°となる。
【0050】加えて、外方肩列6及び内方肩列5として示されるブロック列の1つ以上は、第2のカット部分9を設けられなければならず、各第2のカット部分9は、該カット部分9に対して隣接しかつ可変的な距離だけ離れた第1のカット部分8間の中間に位置している。
【0051】この可変的距離により、適当な「ピッチ配列(pitch sequence)」が可能となり、このピッチ配列はできるだけ不均一にトレッド上に画成され、すでに述べた如くタイヤのノイズを大幅に低減する。
【0052】好ましくは、第2の横方向カット部分9は第1のカット部分8より小さな幅寸法「L」を有する。さらに詳しくは、第2のカット部分9の幅寸法と第1のカット部分8の幅寸法との比は、50%〜100%の範囲にあり、好ましくは約70%である。
【0053】肩列5、6に第2のカット部分9が存在することにより、第1のカット部分8により画成されるブロック7、7a、7bの個数を倍増させる。
【0054】この点に関して、2つの並列的ブロック列のブロック個数どうしの比は、主カット部分(第1の横方向カット部分8)どうし間の中間位置の追加のカット部分(第2のカット部分9)の個数の変化に応じて変化するので、もし好都合なら、異なった対の主カット部分8どうし間の前記追加のカット部分9の個数を異なった態様で低減又は増加させることにより、前記比を2とは異なる値にし得る。
【0055】横方向スロット9aが、第2のカット部分9からその隣接列(外方中央列4)に属するブロック7内へ赤道面X-Xへ向かって、対応ブロック7の幅寸法より小さい幅寸法部分だけ伸びている。
【0056】更に詳しくは、各横方向スロット9aは、ブロック自体を境界付ける第1のカット部分8の伸長部分に略平行の伸長部分を形成するよう、個々のブロック7の幅寸法の約半分だけ伸びている。
【0057】外方中央列4にブロック7の横方向カット部分9aを設けたことにより、該列4のブロックの個数を事実上増加させて、タイヤの良好な動作の目的を達成できる。ただし、その個数値は、第1のカット部分8の存在により外方中央列4に設定されるブロックの個数と、第1及び第2のカット部分8、9の存在により内方肩列5に設定されるブロックの個数との間に含まれなければならない。
【0058】外方肩列6としてのブロック列の1つ以上は、また、第1及び第2の横方向カット部分8、9に対して適当な距離だけ離れて平行に伸びる第3のカット部分10を設けられる。各外方肩列6に第3のカット部分10を設けたことにより、第1及び第2のカット部分8、9によりすでに画成されたブロック7a、7bの個数を略倍増させる。
【0059】特に、本発明によるタイヤのトレッドにおいて重要かつ多大な効果を得るために、内方中央列3のブロックの個数は好ましくは最大40個と最小20個との範囲内に含まれなければならない。
【0060】図1からわかる通り、外方肩列6及び内方肩列5の中間位置に長手方向溝2の伸長部分が、各第3のカット部分10の端部と繰返し配列的に(according toalternate sequence)出会って中断(interrupt)される。それゆえ、各外方肩列6は、隣接肩列5に属するブロック7を有する1ピース構造により形成される連結式ブロック7aと、該ブロック7aから少なくとも部分的に係合解除された形式の自由ブロック7bとから繰返し的に形成される。
【0061】第3の横方向カット部分10は好ましくは、第1及び第2の横方向カット部分8、9の幅寸法より小さな幅寸法「L」を有する。好ましい解決法においては、第3のカット部分10はその軸方向伸長部分に沿って赤道面X-Xに対向する内方部分10aと外方部分10bとを有する。該内方部分10aの幅寸法は好ましくは1mm以下であり、かつ外方部分10bの幅寸法は該内方部分10aの幅寸法より大きい。
【0062】公知の態様では、第1、第2及び第3の横方向カット部分8、9、10はまた、トレッド1の円周方向伸長部に画成されたブロック7が、通常は「段階的配列(stepped sequence)」と言われる所定の配列で繰返す異なった寸法を有するよう、分配して設けられるので、道路ベッド上を走行するタイヤに続いて生ずる音響エネルギーも広い周波数範囲に分布される。
【0063】前述した如く、前記第1、第2及び第3の横方向カット部分8、9、10は、個々の中央列3、4及び肩列5、6に関係したブロック7の個数が、赤道面X-Xからトレッド1の側方エッジ部1aへ向かうに従い徐々に増加し得るようになっている。
【0064】図3は、トレッド幅寸法に画成された異なった列3、4、5、6のブロックの個数の変化を示す。その図において、横座標軸「a」上の符号A、B、C、D、Eにより示されたラインは、円周方向リブ11、内方中央列3、外方中央列4、内方肩列5及び外方肩列6からなるトレッド1の幅部分に対応している。縦座標軸「b」上に数値的に示されたのは、個々の領域A、B、C、D、Eに配置されたブロックの個数であり、これは領域Bに対応する内方中央列3に設けられたブロックの個数を基準とする。
【0065】領域Cについての鎖線C′は、第1のカット部分8及びスロット9aの効果により外方中央列4内で設定可能のブロックの事実上の個数である。
【0066】好ましくは、ブロックの個数を1つの列から次の列へ変化させることにより、これに応じてトレッド幅の対応領域で設定可能の長手方向剛性も変化する。図2のグラフで明らかになる如く、そのような長手方向剛性は、その最大値が円周方向リブ11で達成される限りにおいて、トレッド1の外側エッジ部1aから赤道面X-Xへ向かうに従い徐々に増加する。
【0067】本発明によれば、長手方向剛性のそのような変化は、従来例に比して、トレッド1が関係するタイヤにより生ずる走行ノイズを大幅に低減し得ることがわかったが、これは特に自動車の外方へ伝達されるノイズについてである。
【0068】この点に関して、外方へのノイズを最も生じ易いトレッド領域は赤道面X-Xに最も近い領域であることがわかった。特に、その領域では、走行により生ずるノイズは、接触領域が道路ベッドに対して接触及び分離を行う一時的段階期間中にブロックが摩擦及び変形を受けることにより特に強調される。
【0069】何ゆえ摩擦がトレッドの内方領域で大きくなり易いかをより良く説明するために、次の考察が必要となろう。
【0070】とりわけブロックが地面から分離してしまうような接触領域から出口領域において、赤道面に近接して配置されたブロックにより及ぼされる接触圧力は、トレッド1の外方エッジ部1aに近接したブロックで設定可能の接触圧力よりもはるかに小さい。それゆえ、中央領域に近接して配置したブロック7はトレッド1の側方エッジ部1aに近接したブロックの摩擦力より一層強い摩擦力を受ける傾向にある。
【0071】摩擦力を生ずる他の寄与要因は、接触領域に対する接触及び分離の段階期間中にブロック7により受ける加速度により表される。そのような加速度の値は2乗半径の公式で表されかつブロック7がタイヤ軸の回りにその公式に応じて分配されるので、赤道面X-Xにより近いブロックが最大の加速度を受けるブロックであり、その場合には公知の如くトレッド1は断面において外方へ凸形状のプロフィルを有する。
【0072】それゆえ、本発明によれば、赤道面X-Xに近接した領域に配置したブロック7を大きな寸法とした結果として得られる一層大きな長手方向剛性を与えることにより、該ブロック7により生ずるより大きな摩擦力の傾向を未然に防ぐことが可能であり、そのことは次に中央列3、4のトレッドの円周方向伸長部にわたってブロックを一層小さな個数で分配した結果からも直接的に得られる。
【0073】好ましいことに、トレッド1の中央領域のブロックの個数が少なくなることによっても、タイヤの牽引的特徴をさほど損ねることはない。その特徴は実際、肩列5、6にブロック7、7a、7bが多数配置されることに大きく依存しており、多数のブロック配置により最も大きな接触圧力と最も小さな摩擦力の傾向とが得られる。
【0074】また横方向カット部分8の傾斜方向が変化することは、牽引的特徴を犠牲にすることなく外方走行ノイズを低減する目的のために有利である。実際、カット部分8と中央列3、4に近接した長手方向溝2とにより形成される低減された角度「α」は、正確には外方ノイズが最も依存する領域において、ブロック7の地面へのインパクト(衝撃)を極めて円滑化する。これに反して、カット部分8は側方エッジ部に近接した領域においては長手方向溝2即ち走行方向と直交する方向に伸びており、該側方エッジ部領域では外方ノイズの影響は最も小さく感じられかつ牽引的特徴が最も重要となる。
【0075】明らかに、本発明には多くの修正と変形が可能であり、それら全ては添付のクレームの範囲内にある。
【0076】特に、図1に示されたトレッドパターンは特に横方向溝に関しては対称的であるが、該トレッドはまた赤道面X-Xの2つの側部上の非対称パターン又は鏡像を示すパターンを有してもよい。
【0077】明らかに、本発明のトレッドを製造する際に、走行ノイズを低減するために公知技術によりすでに提供された他の手段を採用する可能性も排除されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるタイヤのトレッド部分の伸長部分の平面図である。
【図2】上記トレッドの横方向伸長部分の異なる地点でのトレッドの長手方向剛性の変化を示す図である。
【図3】トレッドの横方向伸長部分に沿って並列的関係で連続的に配置された異なる円周方向列に設けられた形状ブロックの個数の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 トレッド 1a 側方エッジ部
2 長手方向溝 3、4、5、6 円周方向列
7、7a 7b ブロック 8、9、10 横方向カット部分
11 円周方向リブ 12 中央溝
13 横方向溝
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-03-24 
出願番号 特願平6-118729
審決分類 P 1 652・ 113- YA (B60C)
P 1 652・ 121- YA (B60C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野村 康秀  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 菊地 則義
滝口 尚良
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3414839号(P3414839)
権利者 ピレリ・プネウマティチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
発明の名称 自動車用タイヤ  
代理人 増井 忠弐  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 増井 忠弐  
代理人 今井 庄亮  
代理人 佐久間 滋  
代理人 佐久間 滋  
代理人 小林 泰  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 社本 一夫  
代理人 今井 庄亮  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 杉村 興作  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ