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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01M
管理番号 1117919
異議申立番号 異議2003-72389  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-07-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-24 
確定日 2005-05-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第3390506号「ガス漏れ検査装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3390506号の請求項1、5に係る特許を取り消す。 同請求項2ないし4に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3390506号の請求項1〜5に係る発明についての出願は、平成5年12月24日に特許出願され、平成15年1月17日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人佐藤精孝より請求項1ないし5に対し、また、異議申立人インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテルハフツングより請求項1に対し特許異議の申立てがなされ、請求項1および5に対し取消しの理由が通知されたが、指定された期間内に、特許権者から何らの応答もなかったものである。

II.特許異議申立てについての判断

1.本件の請求項に係る発明

本件の請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1〜5」という。)は、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】 検査用ガスを注入した試験体から漏れる検査用ガスを、ガス吸引手段に吸引管路を介して接続した検査プローブにより吸引し、これにより吸引されたガスの一部を分岐回路を介して分析管とターボ分子ポンプと粗引ポンプとを備えた検査器へ導入して該分析管により該吸引された検査用ガスの濃度を測定するガス漏れ検査装置に於いて、上記分岐回路に微小孔を多数備えたフィルターを設けたことを特徴とするガス漏れ検査装置。
【請求項2】 上記ガス吸引手段の吸気口を外部へ解放すると共に該ガス吸引手段の排出口を上記吸引管路に接続して検査プローブへ気体を逆送する逆送回路装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガス漏れ検査装置。
【請求項3】 上記ガス吸引手段は上記検査器に於いて検出する検査用ガスの濃度レベルに応じてその吸引量を変化させる流量可変手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス漏れ検査装置。
【請求項4】 上記ガス吸引手段として複数台の真空ポンプを設け、上記流量可変手段をこれらの真空ポンプを直列と並列に切換えする切換え接続装置で構成したことを特徴とする請求項3に記載のガス漏れ検査装置。
【請求項5】 上記吸引管路にこれを流れる流量を検出する流量計を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のガス漏れ検査装置。」

2.申立ての理由の概要

特許異議申立人佐藤精孝は、証拠として甲第1、2および3号証を提出し、請求項1〜5に係る特許は、甲第1号証、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、したがって、請求項1ないし5に係る特許は取り消されるべきである旨、主張している。

特許異議申立人佐藤精孝が提出した甲第1ないし3号証は以下のとおりである。

甲第1号証:特開平05-223681号公報
甲第2号証:特開昭56-126733号公報
甲第3号証:特開平05-087668号公報

また、特許異議申立人インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテルハフツングは、証拠として甲第1、2および3号証を提出し、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一のものであるか、甲第1号証、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるからこれらの発明の特許は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定に違反してされたものであり、したがって、請求項1に係る特許は取り消されるべきである旨、主張している。

特許異議申立人インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテルハフツングが提出した甲第1ないし3号証は以下の通りである。

甲第1号証:独国特開第24541124号明細書
甲第2号証:米国特許第3690151号明細書
甲第3号証:独国特開3247975号明細書

3.取消しの理由の概要

当審が通知した取消しの理由は、本件発明1、5は、刊行物1(特開昭56-126733号公報、特許異議申立人佐藤精孝の提出した甲第2号証)、刊行物2(特開平05-223681号公報、同甲第1号証)および刊行物3(特開平05-087668号公報、同甲第3号証)記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

4.刊行物に記載された事項

刊行物1:特開昭56-126733号公報
刊行物1には、以下の事項が記載されている。

(1a)「又、透過膜6がフィルターの役割を果たすのでダスト、ヒューム等により質量分析管5の汚染等の不都合を解消できる。」(第2頁左下欄第8から10行目)

(1b)「第3〜6図は本発明の実施例を示したもので、…質量分析管5、拡散ポンプ3およびロータリーポンプ10、11よりなるもので、被試験体A内から管22又は22’を介してプローブガスがテストポート1内に流入する。」(第2頁左下欄第11行目から右下欄第2行目)

(1c)「第5図の実施例は、被試験体A内をヘリウムもしくはヘリウムを成分ガスとするプローブガスにより大気圧以上に加圧し、ヘリウムリークディテクターBのテストポート1に真空ホース41によって接続されたスニファーノズル42により被試験体Aの外部にリークしてくるヘリウムを検知する方法である。」(第3頁左上欄19行目から右上欄第5行目)

刊行物2:特開平05-223681号公報
刊行物2には、以下の事項が記載されている。

(2a)「【0014】本発明によるとこの検出器は、例えばニードル弁又は(図示されるような)多孔膜8aを有する採取装置8を備え、この採取装置の低圧側8bは、導管13によって、ポンプの流れ状態が分子流(例えば10-2mbar)である二次ポンプ2の中間点21に接続されている。
【0015】ガス探知プローブ6は、一方において接続導管7によって、多孔膜8aに関し高圧側8cにおいて採取装置8に接続されている。」

刊行物3:特開平05-087668号公報
刊行物3には、以下の事項が記載されている。

(3a)「【0027】一方、図2の場合には、真空バルブ(20)(26)(24)を開いて粗引きポンプ(28)で被試験系(18)を0.1 Pa以下に排気し、同時にターボ分子ポンプ(25)で分析管(21)内を1×10-3Pa以下に排気する。そして、分析管(21)とその制御電源(22)で構成されるマシュー線図の第2安定領域を利用した四重極質量分析計(29)を動作させ、m=4で所望の分解能に設定する。被試験系(18)からの真空配管は、ターボ分子ポンプ(25)の下流側に接続し、ターボ分子ポンプ(25)における圧縮比の気体種依存性を利用する。すなわち、被試験系(18)からヘリウムといっしょに流入する水(H2O)、窒素(N2)、酸素(O2)等は、ターボ分子ポンプ(25)での圧縮比がヘリウムより大きいため、上流側への逆拡散係数がヘリウムよりも著しく小さい。その結果、上流側のヘリウム濃度は下流側より高くなり、分析管(21)でのヘリウムの検出感度を高める効果がある。この四重極質量分析計(29)でヘリウムが検出されると、その信号をデータ処理装置(23)でヘリウムリーク量に換算して表示する。」

5.当審の判断

(1)本件発明1、5について
本件発明1と刊行物1に記載の発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、引用発明1における、「プローブガス」、「被試験体A」、「スニファーノズル42」、「質量分析管5」は、それぞれ、本件発明1における、「検査用ガス」、「試験体」、「検査プローブ」、「分析管」に相当し、刊行物1の第5図には、吸引されたガスの一部を分岐回路を介して分析管へ導入している構成が記載されているから、両者は、

「検査用ガスを注入した試験体から漏れる検査用ガスを、ガス吸引手段に吸引管路を介して接続した検査プローブにより吸引し、これにより吸引されたガスの一部を分岐回路を介して分析管とポンプとを備えた検査器へ導入して該分析管により該吸引された検査用ガスの濃度を測定するガス漏れ検査装置。」である点で一致し以下の点で相違している。

(相違点1)
本件発明1の検査器は、分析管とターボ分子ポンプと粗引ポンプとを備えているのに対し、引用発明1の検査器は、分析管と拡散ポンプと粗引ポンプとを備えている点。

(相違点2)
本件発明1は、分岐回路に微小孔を多数備えたフィルターを設けているのに対し、引用発明1は、分岐回路に透過膜6を設けている点。

上記(相違点1)について検討する。
分析管とターボ分子ポンプと粗引ポンプとからなる検査器は、刊行物3に記載されており、この検査器を引用発明1の検査器として適用する程度のことは、当業者であれば容易に想到できたことである。

上記(相違点2)について検討する。
引用発明1の透過膜6はフィルターの役割を果たしていると記載され((1a)参照)、また、分岐回路に多孔膜を設ける構成は刊行物2に記載され、さらに、多孔膜がフィルターとして機能することは周知であるから、引用発明1の分岐回路に多孔膜からなるフィルターを適用することは、当業者であれば容易に想到できたことである。

本件発明5は、本件発明1に、吸引管路を流れる流量を検出する流量計を設けた構成を加えたものであるから、本件発明5と引用発明1とを比較すると、本件発明1と引用発明1との相違点に加え、以下の点で相違する。

(相違点3)
本件発明5は、吸引管路にこれを流れる流量を検出する流量計を設けているのに対し、引用発明1は、この点に関し何ら記載されていない点。

上記(相違点3)について検討する。
吸引管路を流れるガスの流量はガス漏れ検査装置において当然考慮される量であって、この流量を検出するために流量計を設けることは、常套手段にすぎず、引用発明1の吸引管路に流量計を設けることは、当業者であれば容易に想到できたにすぎないことである。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明1および5は、上記の通り当業者であれば容易に想到できたものである。しかしながら、本件発明の1ないし4に関し、特許異議申立人佐藤精孝が証拠として提出した、甲第1、2および3号証には、本件発明2に記載された、「該ガス吸引手段の排出口を上記吸引管路に接続して検査プローブへ気体を逆送する逆送回路装置」、本件発明3に記載された、「検査器に於いて検出する検査用ガスの濃度レベルに応じてその吸引量を変化させる流量可変手段」および本件発明4に記載された「上記ガス吸引手段として複数台の真空ポンプを設け、上記流量可変手段をこれらの真空ポンプを直列と並列に切換えする切換え接続装置」が記載されておらず、また、フィルターのダストを除去するためのフィルターにガスを逆流させる逆送装置を設けることは、通常行われている手段であるとは認められないので、「該ガス吸引手段の排出口を上記吸引管路に接続して検査プローブへ気体を逆送する逆送回路装置」をガス漏れ検査装置に適用することは、当業者が容易に想到できたものでもない。
したがって、本件発明2ないし4は、甲第1、2及び3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

III.むすび

以上のとおりであるから、本件発明1および5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。

したがって、これらの発明の特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、取り消されるべきものである。

また、本件発明2ないし4は、特許異議の申立ての理由及び証拠によってはこれらの特許を取り消すことはできず、また、他にこれらの発明についての特許を取り消すべき理由を発見しないので、これらの発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものではない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-03-30 
出願番号 特願平5-327544
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (G01M)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 本郷 徹  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 水垣 親房
福島 浩司
登録日 2003-01-17 
登録番号 特許第3390506号(P3390506)
権利者 株式会社アルバック
発明の名称 ガス漏れ検査装置  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 山崎 利臣  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  

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