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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1117931
異議申立番号 異議2003-73757  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-29 
確定日 2005-06-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第3448747号「多層セラミック基板の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3448747号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.事件の経緯と本件発明
本件特許第3448747号(以下、「本件特許」という)は、平成4年8月25日に出願された特願平4-225419号の特許出願に係り、平成15年7月11日に設定登録(請求項の数:2)されたところ、全請求項の特許に関して特許異議の申立があったもので、当該特許異議の申立てに係る本件特許発明は、願書に添付された(本件特許設定登録時)明細書における特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された、次のとおりのものと認める。
【請求項1】
ガラス・セラミック製の基板材料からなり、上面に導体ペーストでパターンを形成した第1のグリーンシートを積層し、この積層された第1のグリーンシートの最上部のパターン形成面側に無機組成物からなり両面にパターンのない第2のグリーンシートを配設するとともに、上面にパターンが形成された第2のグリーンシートを前記積層された第1のグリーンシートの最下部のパターンが形成されていない面に前記第2のグリーンシートのパターン形成面が当接するように配設して複合積層体を形成し、この複合積層体を前記第1のグリーンシートが焼結し、かつ前記第2のグリーンシートが焼結しない温度で焼成した後、前記複合積層体上の前記無機組成物を除去することを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
(請求項1の発明を、以下、「本件発明」という)
【請求項2】
導体ペーストとして、酸化銅、銅、銀、金とパラジウムとの合金、銀と白金との合金のいずれかを主成分とする無機物を使用する請求項1記載の多層セラミック基板の製造方法。

2.特許異議申立に係る証拠と理由
(1)証拠方法
甲第1号証:国際公開第91/10630号パンフレット(1991)
甲第2号証:米国特許第4880684号明細書
甲第3号証:特開平4-71295号公報
(2)申立理由の概要
特許異議申立人は、上記の証拠をもとに、本件各請求項の発明に係る基本的な構成は甲第1号証に記載されており、また、甲第1号証に開示のない構成は甲第2号証以下に記載されているから、本件各請求項の発明は、上記甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件各請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反して受けたものである旨の主張をしている。

3.甲各号証の記載事項
(1)甲第1号証には、「グリーンセラミック体の焼成中の収縮を減少させる方法」に関して、次のア〜オの記載があるものと認められる。(特許異議申立書中に記載されている訳文に基づく。なお、摘示箇所の行数表示は、各頁左端に記載されている数字に従う。)
ア 「Du pont 6142 Ag 導体金属化をスクリーン印刷して」
(第24頁第33行)
イ 「1.下記順次工程からなるグリーンセラミック体の焼成中のX-Y 収縮を減少させる方法
a.揮発させうる固体ポリマー結合剤中に分散させたセラミック固体お よび焼結しうる無機結合剤の微粉砕粒子の混合物を含むグリーンセラミ ック体を用意し;・・・
c.剥離層の露出面に垂直な一方向の圧力を維持しつつ集積体を、グリ ーンテープおよび剥離層の両方からのポリマー結合剤の揮発と、焼結テ ープの放射方向のバルク流れを生じることなしのグリーンテープ中の無 機結合剤の焼結と、剥離層中に相互連通多孔性の形成とを行うのに充分 な温度および時間で焼成し;・・・
f.焼結したセラミックグリーンテープの表面から多孔質剥離層を除去 する。」(第30頁第3〜33行)
ウ 「4.グリーンセラミック体が1またはそれ以上のセラミックグリー ンテープの層からなる請求項1の方法。
5.グリーンテープ中のセラミック固体がAl2O3,SiO2および
それらの混合物および前駆体から選ばれる請求項4の方法。・・・
9.無機結合剤が結晶性ガラスである請求項1の方法。
10.無機結合剤が熔化性ガラスである請求項1の方法。」(第31頁 第9〜32行)、
エ 「23.揮発させうる固体ポリマー結合剤中に分散させたセラミック 固体および焼結しうる無機結合剤の微粉砕粒子の混合物を含むセラミッ クグリーンテープの表面に、揮発させうる固体ポリマー結合剤中に分散 させた非金属無機固体の微粉砕粒子を含む付着性剥離層を付着させた複 合セラミックグリーンテープ。」(第33頁第16〜21行)
オ 「26.グリーンテープの少なくとも1つの層がその上に印刷された 厚膜電気機能性ペーストの未焼成パターンを有し、そして集積体を同時 焼成する、請求項4の方法。
27.厚膜電気機能ペーストが導体である請求項26の方法。
・・・
31.その少なくとも1つの表面に印刷された厚膜電気機能性ペースト の未焼成パターンを有する請求項23の複合グリーンテープ。
32.厚膜パターンがグリーンテープの剥離層側上に印刷される請求項 31の複合グリーンテープ。
33.厚膜パターンが導電性である請求項32の複合グリーンテープ。 」(第34頁第7行〜第35頁第2行)

(2)甲第2号証には、マイクロエレクトロニクス応用のための基板についての、「密封層及びストレス緩和層並びにそれらの利用」に関して、次のカ〜ケの記載があるものと認められる。(特許異議申立書中に記載されている訳文に基づく。なお、摘示箇所の行数表示は、各頁中央に記載されている数字に従った。)
カ 「しかしながら、この追加のグリーンシートとしてはバルクのセラミ ックとは同時に焼結せず、焼結後の本体の表面から容易に除去可能な材 料が選択される。」(第9列第23〜26行)
キ 「41.メタライズされたグリーンシートから焼結した絶縁性基板を 提供する方法であって、金属ベースの内層導体を有し、その金属ベース の導体は基板表面の上に突き出ており次のステップよりなる;互いに整 列されたグリーンシートを積層する;」(第12列第43〜49行)
ク 「スタックの上面と底面の少なくとも一方の表面に、金属を付着した シートを準備する、金属を付着したシートはスタックのグリーンシート が合体する温度では焼結しないシート材料からなり、そして金属ベース の内部金属と金属ベースの内部金属と一列に並んだパターンと同じ金属 ベースパターンを有する;
金属を付着したシートは、スタックに重ね合わせる;」(第12列第5 0〜60行)
ケ 「43.請求項41と請求項42の方法において、基板は結晶性ガラ スを含む基板材料からなる ここで、金属ベースのバイアスと金属ベー スのパターンは銅ベースからなる」(第13列第28〜31行)

(3)甲第3号証には、「セラミック多層配線基板」に関して、次のコ、サの記載がある。
コ 「この発明によれば、所望の導体パターンと同一パターンの静電像を 形成し、その静電像に対し、金属粉と高分子樹脂との混合トナを吸着さ せてトナ像を形成し、そのトナ像を、セラミック焼成時に飛んでしまう 材料からなる補助シートに転写し、そのトナ像を有する補助シートをセ ラミックグリーンシートに重ね、その補助シートおよびセラミックグリ ーンシートを重ねたものを、複数積層して焼成してセラミック多層配線 基板を得る。」(第2頁左上欄第9〜17行)
サ 「補助シート15としては、例えばセラミックグリーンシート作成用 セラミックスラリーに用いる有機結合剤を主剤とするシート(有機結合 剤シート)を用いる。この有機結合剤シートは、セラミックグリーンシ ートの作成と同様の工程で作成することができ、セラミックスラリーに 用いる有機結合剤(ポリピニルブチラール、・・・など)と、可塑剤と 、溶剤とを混ぜてスラリー状にして真空脱泡して粘度調整を行い、つま り粘度を比較的高くして、でき上がったシートが取り扱い易いものとな るようにし、その後、キャステングを行ってシート状とし、乾燥、焼成 、切断して所望形状の有機結合剤シートを得る。」(第2頁右上欄第1 6行〜左下欄第9行)

4.発明の対比
(1)構成事項の対比
本件発明(請求項1の発明)の構成事項と、甲第1号証の上記の記載事項とを対比すると、同号証ウ記載の「(セラミック)グリーンテープ」は、本件発明でいう「グリーンシート」に相当している。そして、同号証では、当該グリーンテープの素材に関して、「結晶性ガラス」や「熔化性ガラス」に言及しているところから、同号証でいう「厚膜パターン」が印刷されたグリーンテープは、本件発明における「ガラス・セラミック製の基板材料からなり、上面に導体ペーストでパターンを形成した第1のグリーンシート」に相当する。
また、同号証エ記載の「揮発させうる固体ポリマー結合剤中に分散させた非金属無機固体の微粉砕粒子を含む付着性剥離層」は、本件発明でいう「積層された第1のグリーンシート」の上下両面に配設される、「第2のグリーンシート」に対応するものといえるが、上記の付着性剥離層は、(第1のグリーンシートの)積層体の上下いずれの面に配設されるものも、パターンを備えているわけではない。
さらに、甲第1号証の上記イの記載等からみて、同号証にも「(第1のグリーンシートと第2のグリーンシートの)複合積層体を前記第1のグリーンシートが焼結し、かつ前記第2のグリーンシートが焼結しない温度で焼成した後、前記複合積層体上の前記無機組成物を除去すること」の実質上の開示があるものと認められる。

(2)一致点と相違点。
上記の対比から、本件発明と甲第1号証記載の発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
<一致点>
「ガラス・セラミック製の基板材料からなり、上面に導体ペーストでパターンを形成した第1のグリーンシートを積層し、この積層された第1のグリーンシートの最上部のパターン形成面側に無機組成物からなり両面にパターンのない第2のグリーンシートを配設するとともに、前記積層された第1のグリーンシートの最下部の面にも第2のグリーンシートが当接するように配設して複合積層体を形成し、この複合積層体を前記第1のグリーンシートが焼結し、かつ前記第2のグリーンシートが焼結しない温度で焼成した後、前記複合積層体上の前記無機組成物を除去する多層セラミック基板の製造方法」に係る発明といえる点
<相違点>
本件発明では、「第1のグリーンシートの最下部のパターンが形成されていない面に前記第2のグリーンシートのパターン形成面が当接するように配設」するのに対して、甲第1号証には、第1のグリーンシートの最下部に「パターンが形成されていない」ことや、第2のグリーンシートが「パターン形成面」を備えることについて言及がない点

5.相違点の検討
上記相違点に係る本件発明の構成について、特許異議申立人は、甲第2号証又は甲第3号証に、開示あるいは示唆がある旨を主張している。そこで、これら各甲号証についてみると、甲第2号証(特に、カ〜ク)の記載は、第2のグリーンシートに形成したパターンを、第1のグリーンシートに転写することを示唆したものとみる余地があるし、また、甲第3号証の記載(コ、サ)は、グリーンシートに形成する配線パターンを、他のシート(補助シート)からの転写によって形成することを開示したものといえる。
ところで、本件発明は、上記相違点に係る構成にとどまらず、「積層された第1のグリーンシートの最上部のパターン形成面側」に「両面にパターンのない第2のグリーンシートを配設する」という構成を併せ採用することによって、「グリーンシートの反転工程なく同方向にグリーンシートを積み重ねるのみで」多層セラミック基板を簡単に製造することができるという作用効果(【0026】参照)を奏するものである。
この点に関し、甲第2号証では、スタック(グリーンシートの積層体)の上面と底面の「少なくとも一方」の表面に、金属を付着したシート(上面にパターンが形成された第2のグリーンシートに相当)を配置するとしているから、一見すると、甲第1号証記載の発明において、底面側のみに甲第2号証記載の「金属を付着したシート」を採用すれば、本件発明と同様の構成と作用効果が実現できるかのようにも思われる。
しかし、上記甲第2号証でいう「少なくとも一方」という記載は、スタックの一方の側のみに配線パターンを形成する場合もありうるから、そのような場合には、当該一方の側のみに、「金属を付着したシート」を適用すればよいという趣旨のものと解するのが相当である。したがって、本件発明のように、スタックの上下両面に配線パターンを形成することが前提となる場合は、「金属を付着したシート」も当然、スタックの両面に配置されるとみるべきであり、底面側のみに甲第2号証記載の「金属を付着したシート」を採用することは想定できない。
しかも、甲第2号証に「少なくとも一方」という記載があるといっても、スタックの「底面側」のみに、金属を付着したシートを適用することが直ちに容易に想到しうることにはならないし、また、このような事情は、甲第3号証の存在を考慮に入れても同様である。
そうすると、本件発明は上記甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて
当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

なお、本件請求項2の発明は、本件発明に更なる限定を加える発明であるから、本件発明と同様の理由により上記甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由も発見しない。
したがって、本件特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-05-25 
出願番号 特願平4-225419
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中川 隆司  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 田々井 正吾
増岡 亘
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3448747号(P3448747)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 多層セラミック基板の製造方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  

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