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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  D21H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D21H
管理番号 1117946
異議申立番号 異議2003-72266  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-09 
確定日 2005-05-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3385219号「剥離紙用原紙」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3385219号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続きの経緯
本件の手続きの経緯は、以下のとおりである。

特許出願 平成10年10月 8日
特許権設定登録 平成14年12月27日
特許異議の申立て 平成15年 9月 9日付け
(申立人 王子製紙株式会社)
取消理由通知 平成16年 8月24日付け
意見書 平成16年11月 1日付け
訂正請求 平成16年11月 1日付け
訂正拒絶理由通知 平成17年 1月 7日付け
意見書 平成17年 3月22日付け

II.平成16年11月1日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の適否について

1.訂正の内容
訂正請求書の訂正事項aによれば、本件訂正は、特許請求の範囲の請求項1について、
「木材パルプ系繊維を主体とする基紙の少なくとも片面に、無機顔料(雲母を除く)と水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする片面あたり7〜30g/m2の塗工量の塗工層を設けてなる剥離紙用原紙であって、前記無機顔料とバインダーの重量混合比が7/3〜3/7であると共に、バインダー成分としてガラス転移点が-5℃以上50℃以下であるスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いることを特徴とする剥離紙用原紙。」とあるのを、
「木材パルプ系繊維を主体とする基紙の少なくとも片面に、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及びサチンホワイトからなる群の中から選択された少なくとも1種の無機顔料とスチレン・ブタジエン共重合体を必須成分とする水溶性高分子以外のバインダーを片面あたり7〜30g/m2の塗工量の塗工層として設けてなる剥離紙用原紙であって、前記無機顔料とスチレン・ブタジエン共重合体の重量混合比が7/3〜3/7であると共に、該スチレン・ブタジエン共重合体のガラス転移点が-5℃以上50℃以下であることを特徴とする剥離紙用原紙。」
と訂正することを、少なくとも含むものである。

2.訂正拒絶理由通知の概要
平成17年1月7日付け訂正拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。

平成16年11月1日付け訂正請求に係る訂正は、下記のとおり、特許法第120条の4第2項ただし書並びに同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合していないから、その訂正は認められない。

訂正事項aに係る請求項1の訂正は、以下の(1)〜(4)の点で訂正要件を満たしていない。
(1)無機顔料について
無機顔料について、訂正前は「無機顔料(雲母を除く)」と特定されていたのに対し、訂正後において「カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及びサチンホワイトからなる群の中から選択された少なくとも1種の無機顔料」と特定した点は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるとは認められない。
(2)塗工層について
塗工層について、訂正前は「無機顔料・・・と水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする・・・塗工層」と特定されていたのに対し、訂正後において「・・・無機顔料とスチレン・ブタジエン共重合体を必須成分とする水溶性高分子以外のバインダー・・・の塗工層」と特定した点は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(3)重量混合比について
訂正前は、「無機顔料とバインダーの重量混合比が7/3〜3/7である」と特定されていたのに対し、訂正後において「無機顔料とスチレン・ブタジエン共重合体の重量混合比が7/3〜3/7である」と特定した点は、上記(2)の塗工層に係るバインダーについての要件を考慮すると、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(4)スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いることについて
訂正前は、「スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いること」と特定されていたのに対し、訂正後は、この特定を削除した点は、該ラテックスを用いることが無意味な特定要件であるとはいえず、発明を特定するための事項の削除による上位概念化で実質上特許請求の範囲の拡張がされているものである。

3.訂正の適否の判断
(1)無機顔料について
無機顔料について、訂正前は「無機顔料(雲母を除く)」と特定されていたのに対し、訂正後において「カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及びサチンホワイトからなる群の中から選択された少なくとも1種の無機顔料」と特定した点(以下、「訂正事項a-1」という。)は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるとは認められない。
即ち、訂正前の特許明細書の段落【0014】には、「本発明で使用する無機顔料は、・・・一般の印刷用塗工紙に使用されている無機顔料の中から適宜選択することができる。このような無機顔料としては、例えばカオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト等が例示される。・・・」と記載されているが、訂正後の「・・・群の中から選択された少なくとも1種の無機顔料」との記載から明確に解される、例示されている無機顔料のうちの2種以上を組み合わせて選択する点については、訂正前の明細書に明示的な記載は認められない。
特許権者は、訂正拒絶理由通知に対する平成17年3月22日付け意見書において、当業界において、無機顔料を使用する場合に、特に1種のみに限定しなければならないと記載していない場合には混合して使用することができることは技術常識である旨主張しているものと認められるが、当該技術常識を参酌したとしても、訂正前の特許明細書の記載からは、無機顔料を混合して使用することを排除するものではないことが把握できるだけであって、無機顔料の特定の群のうちの2種以上を組み合わせて選択するという技術思想が記載されていたとはいえない。
よって、訂正事項a-1は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであるとは認められず、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に適合していないから、訂正要件を満たしていない。

(2)塗工層について
塗工層について、訂正前は「無機顔料・・・と水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする・・・塗工層」と特定されていたのに対し、訂正後において「・・・無機顔料とスチレン・ブタジエン共重合体を必須成分とする水溶性高分子以外のバインダー・・・の塗工層」と特定した点(以下、「訂正事項a-2」という。)は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
即ち、訂正前は、無機顔料と水溶性高分子以外のバインダーとを合わせたもの、あるいは水溶性高分子以外のバインダー単独で、少なくとも「主成分」を構成していたと解されるのに対し、訂正後は、発明を特定するための事項として「主成分」に対応するものがなくなっていることからすれば、訂正事項a-2により、特許請求の範囲は減縮されておらず、逆に発明を特定するための事項の削除による上位概念化で実質上特許請求の範囲の拡張がされているものである。また、訂正前における「主成分」は、平成16年8月24日付けの取消理由通知で示したように明りょうでない記載であるが、訂正後の「スチレン・ブタジエン共重合体を必須成分とする」ことについては、単に必須成分であるとの要件は例えば微量であっても該成分が存在さえすれば満たされるといえることからすれば、少なくとも主成分であることとは異質の概念であるから、訂正事項a-2は、明りょうでない記載の釈明にも当たらず、実質上特許請求の範囲を変更するものである。そして、訂正事項a-2が誤記又は誤訳の訂正であるとするための理由は見当たらない。
特許権者は、訂正拒絶理由通知に対する平成17年3月22日付け意見書において、訂正事項a-2は、平成16年8月24日付け取消理由に係る「主成分」が多義的に解され明りょうでない記載であることに対してのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである旨主張しているが、訂正後の記載は少なくとも「主成分」とは異質の概念を導入するものであることは上記したとおりであって、特許権者はこの点に反論しておらず、この訂正拒絶の理由は妥当と認められるものである。
よって、訂正事項a-2は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合しておらず、訂正要件を満たしていない。

(3)重量混合比について
訂正前は、「無機顔料とバインダーの重量混合比が7/3〜3/7である」と特定されていたのに対し、訂正後において「無機顔料とスチレン・ブタジエン共重合体の重量混合比が7/3〜3/7である」と特定した点(以下、「訂正事項a-3」という。)は、上記(2)の塗工層に係るバインダーについての要件を考慮すると、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
即ち、訂正前における重量混合比に係るバインダーの重量は、「・・・水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする」を受け、水溶性高分子以外のバインダーの重量と該バインダー以外の他のバインダーの重量との合計量と解されるものであったのに対し、訂正後では、バインダーの合計量は「スチレン・ブタジエン共重合体を必須成分とする水溶性高分子以外のバインダー」を受け、スチレン・ブタジエン共重合体とそれ以外のバインダーとを合わせたものと解されるのにも拘わらず、バインダー全体のうちの特定のスチレン・ブタジエン共重合体のみの重量としているものである。
特許権者は、訂正拒絶理由通知に対する平成17年3月22日付け意見書において、訂正事項a-3は、訂正前の本件明細書の段落【0015】における、無機顔料とバインダーであるスチレン・ブタジエン共重合体の混合比は7/3〜3/7である必要があるとの記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する旨主張しているものであるが、訂正前後の重量混合比に係るバインダーの合計量についての概念が変更されているのは上記したとおりであって、特許権者はこの点に反論しておらず、この訂正拒絶の理由は妥当と認められるものである。
よって、訂正事項a-3は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合していないから、訂正要件を満たしていない。

(4)スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いることについて
訂正前は、「スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いること」と特定されていたのに対し、訂正後は、この特定を削除した点(以下、「訂正事項a-4」という。)は、該ラテックスを用いることが無意味な特定要件であるとはいえず、発明を特定するための事項の削除による上位概念化で実質上特許請求の範囲の拡張がされているものであるとの訂正拒絶理由通知に対し、特許権者は反論しておらず、この訂正拒絶の理由は妥当と認められるものである。
よって、訂正事項a-4は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないものであって、実質上特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合していないから、訂正要件を満たしていない。

4.むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書並びに同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合していないから、その訂正は認められない。

III.特許異議の申立てについて

1.本件発明
上記のとおり訂正は認められないから、本件特許第3385219号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】 木材パルプ系繊維を主体とする基紙の少なくとも片面に、無機顔料(雲母を除く)と水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする片面あたり7〜30g/m2の塗工量の塗工層を設けてなる剥離紙用原紙であって、前記無機顔料とバインダーの重量混合比が7/3〜3/7であると共に、バインダー成分としてガラス転移点が-5℃以上50℃以下であるスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いることを特徴とする剥離紙用原紙。」

2.平成16年8月24日付け取消理由通知の概要
平成16年8月24日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。

本件の「剥離紙用原紙」に係る特許は、合議の結果、以下の理由によって取り消すべきものと認められます。これについて意見がありましたら、この通知の発送の日から60日以内に意見書の正本1通及びその副本2通を提出して下さい。
理 由
理由1)本件特許は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備な、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願について、特許とされたものである。
理由2)本件特許は、下記の点で特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願について、特許とされたものである。
よって、本件特許は、特許法第113条第1号及び第4号に該当し、本件の請求項1に係る特許は取り消すべきものである。

1.理由1について
本件請求項1において、「無機顔料・・・と水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする・・・塗工層を設けてなる」との記載により、以下の点で、請求項1に係る発明は明確でない。
(1)「主成分」とされている対象について、少なくとも以下のように多義的に解されるものであって、明りょうでない。
(1-a)成分の機能に着目した場合には、例えば、無機顔料とバインダーとが主成分であって、顔料分散剤(段落【0020】のポリアクリル酸ソーダ)がそれ以外の(副)成分となる。
(1-b)成分を構成する具体的な材料に着目した場合には、例えば、バインダーの主成分は、水溶性高分子ではないスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスであって、副成分として他のバインダーが配合されている(段落【0017】〜【0018】)。
(2)「主成分」の概念自体が明りょうでない。
特定量(例えば重量混合比)以上含まれている場合に主成分としているのか、最も量が多い成分を主成分としているのか、その他何らかの技術的意味に基づき主成分が定まるものであるのか分からない。
(3)「水溶性高分子以外の」となっていることについては、上記した(1)(2)の明りょうでない点が存在するため、塗工層における水溶性高分子成分の配合の有無に係る発明の外延が明りょうでない。
(4)「片面あたり7〜30g/m2の塗工量」及び「無機顔料とバインダーの重量混合比が7/3〜3/7」であることについて、固形分量で規定していると考えられる一方で、バインダー成分としてはスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いるとなっているため、バインダーは「ラテックス」の重量で規定していると解されるから、バインダー成分の数量は何によるかが明りょうでない。
2.理由2について
平成14年9月24日付けの手続補正書による、以下の補正した点については、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。
(1)請求項1、段落【0009】に係る「(雲母を除く)」と補正した点、段落【0014】に係る「雲母以外であれば」と補正した点。
(2)請求項1、段落【0009】に係る「水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする」と補正した点。上記した理由1により補正後の記載は多義的に解される不明りょうなものであるが、仮に、補正後のこの発明を特定するための事項が、バインダーにおける主、副成分の概念を一般的に導入したものであるとすれば、それは、願書に最初に添付した明細書(少なくとも、その段落【0017】〜【0018】)に記載した事項から導き出せるものではない。

3.当審の判断
(1)特許法第36条第6項第2号に規定する要件の充足性について
(1-1)本件請求項1の「無機顔料・・・と水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする・・・塗工層を設けてなる」との記載は、(a)主成分の対象について、多義的に解されるものであるため、明りょうでない記載であり、(b)この記載における主成分の概念自体が明りょうでないものであり、(c)このため、塗工層における水溶性高分子成分の配合の有無に関する発明の外延を明りょうでないものとする記載である。
よって、本件発明は明確でない。以下、詳述する。
(a)主成分の対象については、例えば、(a-1)無機顔料とバインダーとが主成分であって、その他の機能を有する成分(例えば、明細書の段落【0018】〜【0020】から把握される顔料分散剤としてのポリアクリル酸ソーダ等)を副成分としてみるとする解釈と、(a-2)バインダーのみに着目し、水溶性高分子以外のものとして、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが主成分であって、副成分として他のバインダー(例えば、明細書の段落【0009】、【0017】〜【0018】から把握されるアクリル酸エステル共重合体)が配合されているとする解釈とが少なくとも存在する。
特許権者は、取消理由通知に対する平成16年11月1日付け意見書において、同日付け訂正請求により、「水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする片面あたり」との文言を削除し、代わりに「スチレン・ブタジエン共重合体を必須成分とする水溶性高分子以外のバインダーを片面あたり」と記載することにより、「主成分」とされている対象について明確にした旨主張しているが、上記したように訂正請求は認められなかったものであり、「主成分」とされている対象について、本件請求項1の記載が明確であるとする根拠はない。
さらに、特許権者は、訂正拒絶理由通知に対する平成17年3月22日付け意見書において、「主成分」は後記されている「塗工層」を修飾するものであって、バインダーにおける主、副成分の概念を一般的に導入した補正はしていないと記載していることからみて、上記(a-2)の解釈を否定する主張をしているとも解されるが、「主成分」が後記されている「塗工層」を修飾するものとして解釈しても、「水溶性高分子以外のバインダー」が主成分に含まれていて、それ以外の他のバインダーがあった場合に、該他のバインダーを副成分として解すべきか否かは明りょうでないのであって、「主成分」とされている対象について、本件請求項1の記載が明確であるとする根拠がないことには変わりはない。
(b)「主成分」の概念について、取消理由通知に対し、特許権者は、平成16年11月1日付け意見書において、同日付け訂正請求により「主成分」の文言を削除したことで取り消しの理由が解消したことを述べるだけであって、「主成分」の概念の明りょう性については主張していないが、訂正拒絶理由通知に対する平成17年3月22日付け意見書において、「主成分」とは量的概念であって、全体で50%以上を占める成分であることは当業界の共通概念であることを主張している。しかしながら、仮に、主成分が重量%で50%以上を占める成分であると解される概念であって、「主成分」が後記されている「塗工層」を修飾するものと解釈し、塗工層全体を形成する全成分を100%として考慮しても、上記(a)で述べたように、主成分の対象が明りょうでない以上、どこまでの成分を主成分の概念としてとらえるべきかは明確とはいえないのであって、例えば、無機顔料と水溶性高分子以外のバインダーがあった場合には、少なくとも片方の成分は50%以下となることは明らかであるから、両者を区別した場合に両者が共に主成分となることはないといえるし、両成分を足し合わせて50%以上であることを規定していたとしても、さらに他のバインダー((c)において後述する水溶性高分子のものを含む)があったりした場合に、何を主成分として解すべきか、あるいは副成分として解すべきかの外延は上記したように明りょうでないのであって、特許権者の主張によっても、主成分の概念が明確であるとはいえない。
(c)上記(a)、(b)において、主成分を構成するものがいずれと解されるにしても、「水溶性高分子以外のバインダー」以外の他のバインダー成分として、本件明細書の段落【0017】〜【0018】の記載から把握される、高濃度としない場合のポリビニルアルコールなどの水溶性高分子が、本発明において、主成分に対する副成分として配合可能なものに位置づけられているのか否かが明りょうでない。
この点について、特許権者は、平成16年11月1日付け意見書において、同日付け訂正請求により「主成分」の文言を削除したことで取り消しの理由が解消したことを述べるだけであり、上記したように訂正請求は認められなかったものであり、本件請求項1の記載が明確であるとする根拠はない。

(1-2)本件請求項1の記載において、「片面あたり7〜30g/m2の塗工量」及び「無機顔料とバインダーの重量混合比が7/3〜3/7」であることについて、固形分量で規定していると解されうる一方、バインダー成分としてはスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いるとなっているため、バインダーは「ラテックス」の重量で規定しているとも解されうるから、バインダー成分の数量は何によるかが明りょうでない。
よって、本件発明は明確でない。
この点について、特許権者は、平成16年11月1日付け意見書において、バインダー成分として使用するスチレン・ブタジエン共重合体は、塗工液の段階では、具体的に「スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス」として使用されることから、「スチレン・ブタジエン共重合体」の代わりに誤記されたものである旨主張しており、その根拠として、「ガラス転移点」をラテックスについて定義することは不可能であって、塗工後フィルム化した「スチレン・ブタジエン共重合体」について定義されるべきことは自明であることを述べている。
しかしながら、仮に、ガラス転移点については、「スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス」ではなく、「スチレン・ブタジエン共重合体」についてのものであると解されるとしても、「スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス」と「スチレン・ブタジエン共重合体」とが技術用語として同義のものであるとはいえないから、「片面あたり7〜30g/m2の塗工量」及び「無機顔料とバインダーの重量混合比が7/3〜3/7」であることについてのバインダー成分の数量については、請求項1において「バインダー成分として・・・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを用いる」と記載されている以上、そのすべてについて、ただちに「スチレン・ブタジエン共重合体(の固形分量)」に係るものとして解すことはできない。

(1-3)まとめ
以上のことから、本件発明は明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)特許法第17条の2第3項に規定する要件の充足性について
平成14年9月24日付けの手続補正書による、請求項1、段落【0009】に係る「(雲母を除く)」と補正した点、段落【0014】に係る「雲母以外であれば」と補正した点については、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。
よって、平成14年9月24日付けの手続補正書による補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
この点について、特許権者は、平成16年11月1日付け意見書において、同日付け訂正請求により、無機顔料を当初明細書の段落【0014】に明示されたものに特定したことで取り消しの理由が解消したことを述べるだけであり、平成14年9月24日付けの手続補正書による補正が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであることを主張するものではない。そして、上記したように訂正請求は認められなかったものである。
なお、平成14年9月24日付けの手続補正書による、請求項1、段落【0009】に係る「水溶性高分子以外のバインダーを主成分とする」と補正した点については、補正後の記載が上記(1)で述べたように多義的に解される明りょうでないものであるため、この点が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるか否かは不明である。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであり、また、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第1号及び第4号に該当し、その特許は取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-03-30 
出願番号 特願平10-286521
審決分類 P 1 651・ 537- ZB (D21H)
P 1 651・ 55- ZB (D21H)
最終処分 取消  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 菊地 則義
滝口 尚良
登録日 2002-12-27 
登録番号 特許第3385219号(P3385219)
権利者 日本製紙株式会社
発明の名称 剥離紙用原紙  
代理人 金谷 宥  
代理人 滝田 清暉  
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