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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G11B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G11B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G11B
管理番号 1117947
異議申立番号 異議2003-71332  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-19 
確定日 2005-05-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第3347772号「ディスクカートリッジ」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3347772号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3347772号の請求項1,2に係る発明についての出願は、平成4年8月21日に特許出願された特願平4-244057号であって、平成14年9月6日にその発明について特許権の設定がされ、その後、特許異議申立人 赤坂雄司 より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年3月8日に特許異議意見書が提出され、さらに平成16年4月14日に上申書が提出されたものである。


2.特許異議の申し立てについて
1)申立ての理由の概要
(1-1)特許異議申立人赤坂雄司は、証拠方法として、
甲第1号証:実願平1-69361号(実開平3-10377号)のマイクロフィルム,
甲第2号証:実願昭63-56768号(実開平1-162171号)のマイクロフィルム,
甲第3号証:実願昭62-152106号(実開昭63-96665号)のマイクロフィルム,
甲第4号証:日本金型工業会偏,「プラスチック射出成形用金型設計基準(I)(II)」,第1版,日本金型工業会,昭和40年9月30日,p.表紙-目次-p.1〜9-奥付)
を提示し、本件第1発明は、甲第1号証および甲第3号証に、ないしは甲第1号証,甲第3号証および甲第4号証(ならびに必要であれば甲第2号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものに過ぎない。
また、本件第2発明は、甲第1号証,甲第3号証及び甲第4号証(ならびに必要であれば甲第2号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものに過ぎないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(1-2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄の【0009】【(発明の効果】には、「成形で発生しやすいバリを厚さ方向中間部へ移動させることも同時にでき、バリによる削れや傷つきも防止でき、品質向上並びに耐久性向上などがはかられ、製作も容易・安価であるなど実用上の効果がある。」と記載されている。しかし、本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄には、固定金型と可動金型とから成るケース成形用の金型構造についての具体的な記載がなされていないので、当業者が容易にその実施ができる程度にその発明の目的、構成および効果が記載されていないから、平成6年改正前特許法第36条第4項の規定に違反する。
また、本件特許明細書の請求項1には、「開口部の関口緑端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させた」と記載されている。また、同上の請求項2には、「段差部は、ケース内側が後退しているものである」と記載されている。しかし、本件特許明細書および図面からは、「ケース1の内側が後退している段差部14」の意味するところの具体的構造が必ずしも明確でなく、本件特許請求の範囲の請求項1及び2の記載においては何を意味するのか不明確で、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号の規定に違反する。

したがって、特許法第113条第1項第2号及び第4号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

2)本件発明
特許第3347772号の本件請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1,2」という)は、特許公報の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】記録再生用ヘッドや駆動軸などを挿入しうる開口部を有するケース内部にディスク状媒体を回転自在に収納し、前記開口部を開閉するシャッタを摺動自在にケースに備えたディスクカートリッジにおいて、前記開口部のうち少なくともディスク状媒体の回転方向の端面が、ケース内面及び外面の両方に面取り部を備え、該開口部の開口縁端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させたことを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項2】前記段差部は、ケース内側が後退しているものである請求項
1記載のディスクカートリッジ。」

3)取消理由通知の刊行物に記載された発明
当審で通知した平成15年12月22日付けの取消理由で通知した各刊行物には、それぞれ、以下のとおりの記載が認められる。

[刊行物1]甲第1号証:実願平1-69361号(実開平3-10377号)のマイクロフィルム
(1-1)「本考案は、ディスクを回転自在に収納し、中心部に記録再生装置のディスク回転用のターンテーブルが挿入されるターンテーブル挿入穴とこのターンテーブル挿入穴に連なり半径方向に伸びて読取り書込み用のヘッドが挿入されるヘッド挿入穴が形成され、これら両穴をシャツ夕の摺動によって開閉するようにしたディスクカートリッジにおいて、」(第3頁第19行〜第4頁第6行目)
(1-2)「前記カートリッジ1の中心部分には記録再生装置のディスク回転用のターンテーブルが挿入されるターンテーブル挿入穴4が形成され、該ターンテーブル挿入穴4に連続して読取り書込み用のヘッドが挿入されるヘッド挿入穴5が形成されている。そして、これら両穴4,5はシャツ夕6によって開閉自在となっており、このシャツ夕6の下端はガイド板7によってガイドされるようになっている。」(第5頁第3行〜第11行目)
(1-3)「シャツ夕6のカートリッジ上における摺動によっても切り屑または摺り屑等の発生が防止され、ディスクdの記録面の汚れを防ぐことができる。」(第6頁第11行〜第14行目)
(1-4)「前記ヘッド挿入穴5及び前記ターンテーブル挿入穴4のディスクカートリッジ外側縁は、第3図及び第4図で示されるように、面取り縁cとして形成されている。」(第6頁第5行〜第8行目)
(1-5)「前記面取り縁cはカートリッジ外側縁に設けられているが、内側縁にも設けるようにしてもよい。」(第6頁第19行〜第20行目)

[刊行物2]甲第2号証(実願昭63-56768号(実開平1-162171号)のマイクロフィルム
(2-1)「本考案はディスクを回転自在に収納し、中心部に記録再生装置のディスク回転用のターンテーブルが挿入される回転穴とこの回転穴に連なり半径方向に伸びて読取り書込み用のヘッドが挿入されるヘッド挿入穴が形成され、これら両穴をシャツ夕の摺動によって開閉するようにしたディスクカートリッジにおいて、」(第3頁第9行〜第15行目)
(2-2)「前記カートリッジ1の中心部分には記録再生装置のディスク回転用のターンテーブルが挿入される回転穴4が形成され、この回転穴4に連続して読取り書込み用のヘッドが挿入されるヘッド挿入穴5が形成されている。そして、これら両穴4,5はシャツ夕6によって開閉自在となっており、このシャツ夕6の下端はガイド板7によってガイドされるようになっている。」(第4頁第15行〜第5頁第2行目)
(2-3)「シャツ夕6と前記突起10の先端との摺動によって発生する切り屑または摺り屑等の発生が防止され、ディスクdの記録面の汚れを防ぐことができる。」(第6頁第1行〜第4行目)
(2-4)「前記回転穴4と前記ヘッド挿入穴5の接続部には突起10,10が互いに両穴の内側に向かって伸びており、この突起10は前記ディスクのハブに沿う円弧辺10bと前記ヘッド挿入穴の底端から直角に伸びる直角辺10aの両片からなる三角形状を有している。」(第5頁第8行〜第13行目)
(2-5)「前記突起10の先端は第3図に示すように面取りされて面取り部10cを形成しており、この面取り部10cの形成によってシャツ夕6が左右に摺動するときにシャツ夕先端が前記突起の先端に衝突することを有効に避けることができる。」(第5頁第16行〜第20行目)

[刊行物3]甲第3号証(実願昭62-152106号(実開昭63-96665号)のマイクロフィルム
(3-1)「上記ケース本体1の前部寄りには、記録再生装置(図示せず)の駆動軸Pの侵入を妨げない透孔9,9が上下ケース2,3に形成されている。10は上記透孔9と同心状に位置して上記ケース本体1内に収納されたシート状の磁気ディスク」(第3頁第20行〜第4頁第4行目)
(3-2)「21,21はケース本体1の前部側(第2図右側)に位置して上記ディスク設定領域Sに形成された磁気ヘッド挿入窓であり、上記ディスク10の半径方向(第1図、第2図矢印a方向)へ移動する磁気ヘッドHの上記移動を妨げない長孔で構成されている。」(第5頁第19行〜第6頁第2行目)
(3-3)「24,25は上記上下ケース2,3における各ヘッド挿入窓21,21を開閉可能に閉塞するシャツ夕部材である」(第6頁第4行〜第7行目)
(3-4)「上記各ヘッド挿入窓21の内壁面には、第5図に示すように上下1対の成形金型(図示せず)の接合面跡210a,210bがそれぞれ存在している。(第5頁第19行〜第6頁第2行目)
(3-5)「ケース成形用の上下金型の接合面跡210a,210bを上下両ケース2,3の各ヘッド挿入窓21の内壁面に存在させたから、これら接合面跡210a,210bがばりとなっていても、上下両ケース2,3の内壁面側に突出するおそれはなく、このため各ヘッド挿入窓下を回転走行する磁気ディスク10と上記接合面跡210a,210bとの接触が防止され、」(第15頁第14行〜第16頁第1行目)

[刊行物4]甲第4号証(日本金型工業会偏,「プラスチック射出成形用金型設計基準(I)(II)」,第1版,日本金型工業会,昭和40年9月30日,p.表紙-目次-p.1〜9-奥付)
(4-1)「(5)ピンで突き合せる穴の場合は上下穴の偏心の恐れがあるので、どちらかの一方の穴を大きく取る。」(第7頁左下欄図を除く下から第2〜1行目)
(4-2)図30として、ピンの突き合わせる上下穴で径の相違した図がある

4)上記、2.1)(1-1)の異議申立て理由に対して
(1)対比・判断
(i)本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明における、上記(1-1)(1-2)に記載の各事項は、大要、本件発明1の「記録再生用ヘッドや駆動軸などを挿入しうる開口部を有するケース内部にディスク状媒体を回転自在に収納し、前記開口部を開閉するシャッタを摺動自在にケースに備えたディスクカートリッジ」に相当する。
刊行物1に記載された発明における、上記(1-3)(1-4)(1-5)に記載の各事項は、大要、本件発明1の「開口部のうち少なくともディスク状媒体の回転方向の端面が、ケース内面及び外面の両方に面取り部を備え」に相当する。
しかしながら、刊行物1には本件発明1の「開口部の開口縁端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させた」構成に関する記載はない。
(ii)本件発明1と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明は刊行物1に記載された発明と、概ね、類似の構成を有しているものであって、このものにおいても、本件発明1の「開口部の開口縁端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させた」構成に関する記載はない。
(iii)本件発明1と刊行物3に記載された発明とを対比する。
刊行物3に記載された発明における上記(3-1)(3-2)(3-3)に記載の各事項は、大要、本件発明1の「記録再生用ヘッドや駆動軸などを挿入しうる開口部を有するケース内部にディスク状媒体を回転自在に収納し、前記開口部を開閉するシャッタを摺動自在にケースに備えたディスクカートリッジ」に相当する。
しかしながら、刊行物3に記載された発明には、本件発明1の「開口部のうち少なくともディスク状媒体の回転方向の端面が、ケース内面及び外面の両方に面取り部を備え」に相当する構成、及び「開口部の開口縁端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させた」に相当する構成がない。
この点に関して、特に、異議申立人は「開口部の開口縁端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させた」事項について、刊行物3の(3-4)(3-5)に記載の、接合面跡210a,210bを第5図とともに参照していくと、『ケース成形用の上下金型の接合面跡210a,210bは、上下ケース2,3の各ヘッド挿入窓21,21の内壁面にリング状突起部として形成されている。そして、このリング状突起部としての接合面跡210a,210bは、本件特許の図3に例示されている段差部14ときわめて類似した形状であって、少なくとも広義には、本件第1発明の段差部に含まれるものである。』旨、主張するので検討する。
接合面跡210a,210bについて、上記(3-5)には『接合面跡がばりとなっていても』とあって、これは『ばり』であって、本来はなくしたいものであるが、上下金型の接合面跡として生じてしまう。その為、磁気ディスクの回転走行時での接触を回避するために金型接合部分の配置を工夫したものである。本件発明1でいう『固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させた』段差部の構成は、金型接合部分の合わせ目部分に段差部を介在させて形成していくというもので、接合面跡に生ずるばりではない。そして、ばりと段差部は外見的には明らかに相違するもので、上記「段差部」の構成は刊行物3には存在しないというべきである。
(iv)本件発明1と刊行物4に記載された発明とを対比する。
刊行物4に記載された発明は、『ピンで突き合せる穴の場合は上下穴の偏心の恐れがあるので、どちらかの一方の穴を大きく取る』というものである。ピンで突き合わせる穴の偏心をある程度許容していくための構成のもので、偏心のおそれがなければ不要で、単に、プラスチック射出成形用金型の点で関連するにすぎない。技術分野、構成、目的及び効果は全く相違する。
(v)次に、本件発明1と刊行物1〜4に記載された発明の組合せを対比する。
刊行物1〜4のものには本件発明1の構成要件である「開口部の開口縁端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させた」事項については何れの刊行物にも記載がない。特に、上記刊行物3の発明に記載のものに刊行物4の発明に記載の上下穴の偏心のおそれがある一方の穴を大きく取る構成を適用できるかについては、刊行物3の発明においてのものは『接合面跡がばりとなっていても』との記載があるように、本来ばりをなくしたいものであって、上記刊行物4の発明の構成の採用は、この『ばり』がなくなるという記載なり、示唆がない限り、もしくは刊行物3の発明においても偏心防止の課題があるものでないかぎり、適用していく動機付けが存在しない。
また、本件発明1のものでは、固定側金型と可動側金型とが合わさっている部分は各金型が互いに接する平坦面であり、樹脂を充填して成型品を形成する加工部分に生じる加工精度のばらつきが発生する余地が少なく、互いの金型が限りなく接触していることから、ばりの発生を限りなく解消できるものであるが、刊行物3の「接合面跡」は、成形品表面に金型同士が接する(平担面でない)からばりがこの接合面跡にそって形成し易いものとなる。作用効果の点からみても適宜組合せ可能というものでない。
よって、刊行物1〜4に記載された発明を組み合わせても、本件発明1は当業者が容易に想到することはできない。

したがって、本件発明1,2は、上記刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない

5)上記、2.1)(1-2)の異議申立て理由に対して
(1)対比・判断
(i)先ず、「固定金型と可動金型とから成るケース成形用の金型構造についての具体的な記載がなされていないので、当業者が容易にその実施ができる程度にその発明の目的、構成および効果が記載されていない」との申し立てであるが、本件発明1,2は、上記2.2)に記載があるように、デイスクカートリッジであって製造方法に係る発明ではない。
そして、本件明細書には、課題として、大要、「本発明は、ディスク状媒体とシャッタとの両方の摺動を円滑に動作でき、ディスク状媒体の損傷をなくして信頼性を高めると共に、削れ防止でドロップアウトやケース損傷など悪影響をおよぼすことなく、長期にわたり安全に用いることができるディスクカートリッジを提供することを目的としたものである。」(本願明細書【0003】)と、
手段として、「ディスクカートリッジにおいて、前記開口部のうち少なくともディスク状媒体の回転方向の端面が、ケース内面及び外面の両方に面取り部を備え、該開口部の開口縁端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させたディスクカートリッジである。」(本願明細書【0004】)と、
作用として、大要「ケースの開口部には、その開口縁端面の厚さ方向中間部に、ケース内面側が後退した段差部を介在させることで、成形時に発生しやすいバリを段差部に移動させて、バリによる削れや傷つきも防止するものである。」(本願明細書【0005】)と、
具体的実施例として「前記開口部31 は、開口縁端面の厚さ方向中間部13に段差部14が介在されているもので、即ち、ケース成形用の金型の固定側金型と可動側金型との合せ目(パーティング面)を活用した形態とするのが便利であり、該パーティング面が開口31 の厚さ方向の中間部となるので成形で発生しやすいバリを厚さ方向中間部に移動させることもできる。また、前記段差部14としては、ケース内面側を後退させると、カートリッジ外面からは段差部14が見えないので外観が良くなる。」(本件明細書【0007】)の各記載がある。
そして、本願発明1に記載された「該開口部の開口緑端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させたこと」の技術的解釈で、『段差部』は、上記【0007】の実施例として記載のある、パーティング面を活用しての段差部形成で、ケース成形用の金型の固定側金型と可動側金型との合せ目(パーティング面)を活用したものであって、【図3】を参酌しての、金型の水平面に垂直に当接する金型により形成する態様等は通常的に想定でき、容易に実施可能である。そして、この段差部は形成物であるから単なる接合面跡とは明らかに異なる(区別できる)ものであることも判るし、同時に厚さ方向中間部に移動させることで、金型の合わせ目成形により生じるバリを厚さ方向中間部に移動させるようになることも理解できる。
さらに、【図3】を参酌していくと、段差部は14で指示され、パーティング面を活用してケース1の内面側(面取り部11側側)を後退させて段差部14の形成がなされている。パーティング面が開口31の厚さ方向の中間部となるので成形で発生しやすいバリは厚さ方向中間部に移動できることは明らかである。しかも、前記段差部は、ケース内面部を後退させることと、カートリッジ外面(面取り部12側)からは段差部14が見えにくいので外観が良くなることは明らかである。
よって、本件発明1,2の記載に基づいて当業者が、本件特許発明を容易に実施できると共に、本願明細書の上記本願明細書【0005】の欄に記載の効果を奏するものであるから、「当業者が容易にその実施ができる程度にその発明の目的、構成および効果が記載されているもので、平成6年改正前特許法第36条第4項の規定に違反する」という申し立ては認められない。

(ii)次に、本願発明1に記載された「該開口部の関口緑端面の厚さ方向中間部に固定金型と可動金型との合わせ目による段差部を介在させたこと」の技術的意味が不明確であるとの申し立てであるが、上記(i)でも記載してある、『段差部』とは、本願発明1の記載からは『厚さ方向中間部』で『固定側金型と可動側金型との合わせ目による』というもので、金型の合わせ目に成形で生ずる不可避的なバリはあくまでもバリであって、ここでの段差部というものではない。具体的には、本願明細書【0007】及び【図3】に図示された記載からも明らかで、積極的に設けていく『段差部』の形態が記載されている。このものは、「パーティング面を活用しての段差部形成」であり、パーティング面は、固定側金型と可動側金型との合わせ目(パーティング面)で、不可避的に生じる接合面跡とは区別できることは明らかである。
また、本願発明2に記載された「段差部は、ケース内側が後退しているものである」の技術的意味が不明確であるとの申し立てであるが、上記(i)でも記載してある【図3】を参酌していくと、段差部は14で指示され、パーティング面を活用してケース1の内面側(面取り部11側)を後退させて段差部14の形成がなされており、パーティング面が開口31の厚さ方向の中間部となるので成形で発生しやすいバリを厚さ方向中間部に移動できるとされている。この、段差部は、ケース内面部を後退させることと、カートリッジ外面(面取り部12側)からは段差部14が見えにくいので外観が良くなるというものであれば、上記技術的な意味は、段差部をケース内側に形成される構成であって、明確である。

よって、平成6年改正前特許法第36条第5項第2号の規定に違反するものであるとの申し立ては採用できない。


3.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知で示した理由によっては、本件請求項1,2に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1,2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1,2に係る発明についての特許は拒絶の理由をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。

よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過処置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-04-26 
出願番号 特願平4-244057
審決分類 P 1 651・ 531- Y (G11B)
P 1 651・ 121- Y (G11B)
P 1 651・ 534- Y (G11B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西山 昇  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 片岡 栄一
山田 洋一
登録日 2002-09-06 
登録番号 特許第3347772号(P3347772)
権利者 TDK株式会社
発明の名称 ディスクカートリッジ  
代理人 薬師 稔  
代理人 土屋 勝  

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