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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G07F
管理番号 1117960
異議申立番号 異議2003-73440  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-05-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第3426381号「遊戯機制御装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3426381号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3426381号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成7年1月20日に特許出願され、平成15年5月9日にその特許の設定登録(同年7月14日特許掲載公報発行)がなされ、その後、同年12月25日に面沢寿江より特許異議の申立てがなされ、当審における平成16年6月24日付けの取消理由通知(7月26日発送)に対して、その指定期間内の平成16年8月25日に意見書が提出され、さらに同年9月28日に特許異議申立人から上申書が提出されたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、各々「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】 遊戯機毎に隣接して設けられるとともに、前記隣接の遊戯機とコード線により電気接続されて成る遊戯機制御装置であって、
貨幣の投入を受け付ける貨幣受付口と、
前記貨幣受付口より受け付けられた貨幣の金種を判別する判別手段と、
前記判別手段が所定の金種を判別したとき、その金種に相応しかつ金額価値データの読み書きが行われない特定のプリペイドカードを提示した後、そのプリペイドカードを機内へ取り込むカード表示手段と、
前記カード表示手段がプリペイドカードを機内へ取り込んだ後に前記金種の貨幣が受け付けられたことを前記遊戯機へ知らせる伝送手段とを備えて成る遊戯機制御装置。
【請求項2】 遊戯機毎に隣接して設けられるとともに、前記隣接の遊戯機とコード線により電気接続されて成る遊戯機制御装置であって、
貨幣の投入を受け付ける貨幣受付口と、
前記貨幣受付口より受け付けられた貨幣の金種を判別する判別手段と、
前記判別手段が所定の金種を判別したとき、その金種に相応しかつ金額価値データの読み書きが行われない特定のプリペイドカードを提示した後、そのプリペイドカードを機内へ取り込むカード表示手段と、
前記カード表示手段がプリペイドカードを機内へ取り込んだ後に前記金種の貨幣が受け付けられたことを前記遊戯機へ知らせる伝送手段と、
前記プリペイドカードの機内への取込動作を指示するための操作スイッチとを備えて成り、
前記カード表示手段は、前記操作スイッチの操作に応答して、プリペイドカードを機内へ取り込むようにした遊戯機制御装置。

3.特許異議申立の概要
特許異議申立人面沢寿江は、本件発明1及び2は、下記甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であって、本件発明1及び2に係る特許は取り消されるべき旨の主張をしている。
甲第1号証:特開平6-246060号公報
甲第2号証:実願平3-79835号(実開平5-21989号)のCD-ROM
甲第3号証:特開平5-35435号公報
甲第4号証:特開平5-288402号公報
甲第5号証:特開平6-290010号公報
甲第6号証:特開平6-153130号公報

4.引用刊行物
刊行物1:特開平6-246060号公報(異議申立人提出の甲第1号証)
刊行物2:実願平3-79835号(実開平5-21989号)のCD-ROM(異議申立人提出の甲第2号証)

5.引用刊行物に記載された事項
(1)本件出願前に頒布された上記刊行物2には、次の事項が図面と共に記載されている。
(イ)「【請求項1】 遊戯機に隣接して配置される遊戯カード処理装置であって、貨幣の投入を受け付ける貨幣受付口と、遊戯カードを送り出すためのカード送出口と、前記貨幣受付口より受け付けられた貨幣の金額価値に応じた遊戯カードを発行するカード発行部と、前記遊戯カードを搬送して前記カード送出口より送り出す正逆駆動可能なカード搬送機構と、前記貨幣投入口より受け付けられた貨幣の金額価値データを指定された遊戯機へ伝送する伝送部と、前記金額価値データの伝送を指示するスイッチと、前記カード送出口を機外より囲むように配置される透明カバーと、前記カード送出口より遊戯カードを取込可能な状態で送り出しかつ前記スイッチの操作に応答して前記遊戯カードを機内へ取り込むよう前記カード搬送機構の動作を制御する制御装置とを備えて成る遊戯カード処理装置。」(【請求項1】)、
(ロ)「発行した遊戯カードを遊戯者の指示に応じて取り込み、投入された貨幣の金額価値データのみを隣接位置の遊戯機へ伝送することにより、遊戯者の操作負担を大幅に軽減したスロットマシンを提供することを目的とする。」(段落【0006】)
(ハ)「図2は、遊戯カード処理装置1の外観を示すもので、その前面には表示ランプ10,11、カード送出口12、伝送スイッチ13,14、返却スイッチ15、貨幣受付口16が設けられている。
前記貨幣受付口16は所定の金種の紙幣(たとえば1000円札)の投入を受け付ける部分である。前記表示ランプ10,11は、遊戯カード処理装置1の動作状態をランプの点滅により報知するためのもので、一方の表示ランプ10は遊戯カードを発行している状態であることを、また他方の表示ランプ11は投入された貨幣の金額価値データを伝送している状態であることを、それぞれ遊戯者に報知する。
カード送出口12は遊戯カードを送り出す部分であって、機内のカード搬送機構21(後記する)に機構的に接続されている。このカード送出口12上にはカード送出口12を囲むように透明カバー17が配設されている。」(段落【0013】、【0014】)
(ニ)「遊戯カード18は、片面に磁気塗膜を有しており、この磁気塗膜に金額価値データなどの情報が磁気的に書き込まれる。前記カード発行部20は、遊戯カード18に金額価値データなどを磁気的に書き込むための書込ヘッド24と、遊戯カード18に磁気的に記録された金額価値データなどを読み取るための読取ヘッド25とを有する。」(段落【0016】)
(ホ)「同図において、伝送部41は左右のスロットマシン2L,2Rへの金額価値データの送信と、集計用コンピュータ4との間の必要な情報の交信を行うためのものである。紙幣判別器42は貨幣受付口16より投入された紙幣の真偽を判別するためのもの、また紙幣取込機構43は前記投入紙幣を機内に取り込むためのものである。」(段落【0020】)
(ヘ)「図5は、前記CPU35による遊戯カード処理装置1の制御手順を示すもので、同図のステップ1(図中「ST1」で示す)で貨幣受付口16への紙幣の投入を判断する。紙幣の投入があると、ステップ1の判定は「YES」であり、CPU35は紙幣取込機構43を正駆動させて投入紙幣を機内に取り込み、紙幣判別器42がその真偽を判別する(ステップ2,3)。」(段落【0021】)
(ト)「もし投入紙幣が適正であれば、ステップ4の判定は「YES」であり、CPU35はカード搬送機構21を正駆動させる。この場合、遊戯カード18は待機位置33に待機しており、カード搬送機構21が駆動すると、遊戯カード18はカード送出口12の向けて搬送され、その搬送途中で書込ヘッド24が投入された貨幣の金額価値に応じたデータを遊戯カード18に書き込み、ついで読取ヘッド25がそのデータを読み取ってRAM37に記憶させる。」(段落【0022】)
(チ)「CPU35はステップ8でカード搬送機構21の駆動を停止させる。この停止時、遊戯カード18は、先端より適当長さがカード送出口12より突出し、後端部はカード搬送機構21に位置して取込可能な状態となっている。
【0024】 このようにして遊戯カード18が発行された状態が透明カバー17を介して遊戯者に確認できる状態となったとき、CPU35は伝送スイッチ13,14の内蔵ランプを点灯させ、遊戯者に対しいずれか伝送スイッチ13,14の押操作を促す(ステップ9)。」(段落【0023】、【0024】)
(リ)「いま仮に左側の伝送スイッチ13が押されたと仮定すると、ステップ10の判定が「YES」となり、CPU35はステップ11でその伝送スイッチ13の内蔵ランプを点滅動作させた後、前記金額価値データを左隣のスロットマシン2Lの制御回路部8へ送信するとともに、集計用コンピュータ4と交信して必要な情報を送出する(ステップ12)。左隣のスロットマシン2Lでは送信された金額価値データを受けて、その分だけ遊戯者の保有メダル数を加算する。」(段落【0025】)
(ヌ)「ステップ12の送信動作が完了すると、CPU35はカード搬送機構21を逆駆動させて遊戯カード18を機内に取り込み」(段落【0026】)
(ル)「【0039】 【考案の効果】 この考案は上記の如く、投入貨幣の金額価値に応じた遊戯カードを発行してカード送出口へ取込可能な状態で送り出し、スイッチ操作に応答して金額価値データを遊戯機へ送信するとともに、前記遊戯カードを機内へ取り込むようにしたから、遊戯者は遊戯カードの抜取操作と遊戯機への投入操作を必要とせずに直ちにゲームを開始でき、操作負担が軽減される。この場合に、発行された遊戯カードは透明カバーの内側に存在するので、不当に抜き取られる虞もない。」(段落【0039】)
(ヲ)さらに、図1には、遊戯機の機体2の内部の制御回路部8と遊戯カード処理装置1を電気接続するラインが記載されている。

そして、これらの記載及び図面(図1ないし5)の記載内容を総合すると、刊行物2には、
次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。
「2台の遊戯機2L,2Rの中間に1つ隣接して配置されるとともに、前記隣接の遊戯機とラインにより電気接続されて成る遊戯カード処理装置1であって、所定の金種の紙幣(たとえば1000円札)の貨幣の投入を受け付ける貨幣受付口16と、貨幣受付口16より投入された所定の金種の紙幣の真偽を判別する紙幣判別器42と、前記紙幣判別器42が所定の金種の紙幣が適正であるとしたとき、カード搬送機構21を正駆動させ、遊戯カード18を取込状態からカード送出口12に向けて搬送し、その搬送途中で貨幣の金額価値に応じたデータを遊戯カード18に書き込みヘッド24で磁気的に書き込み、ついで読み込みヘッド25で読み取ってRAM37に記憶させ、カード搬送機構が停止し、取込可能な状態の遊戯カード18は、先端より適当長さがカード送出口12より突出し、遊戯カード18が発行された状態が透明カバー17を介して遊戯者に確認できる状態となったとき、伝送スイッチ13が押されると、該伝送スイッチの操作に応答して、前記所定の金種の金額価値データを遊戯機の制御回路部8へ伝送部41により送信し、送信動作が完了するとカード搬送機構21を逆駆動させて遊戯カード18を機内に取り込む遊戯カード処理装置1。」

(2)本件出願前に頒布された上記刊行物1には、次の事項が図面と共に記載されている。
(ワ)「複数の遊技機を列設してなる島設備1には、複数のパチンコ機2…と各パチンコ機2…に各々接続された遊技媒体貸出処理装置としてのカードユニット3…を並設してある。なお、本実施例においてはパチンコ2とカードユニット3とを別体に構成し、各々接続ケーブル4…を介して接続するものとしたが、カードユニット3…の各機能を適宜に分散させてパチンコ機2本体へ一体的に設けるようにしても良い。」(段落【0007】)
(カ)「一方、紙幣投入口15に紙幣が投入された場合には紙幣識別部23が識別した投入金額データが、硬貨投入口14に硬貨が投入された場合には硬貨識別部22が識別した投入金額データが、各々制御部24に供給され、これらの投入金額データを制御部24が計数して、計数金額が当該カードユニット3の発行するカード金額(例えば5000円)に達していれば、当該金額のカードを発行し、且つ発行したカードを玉貸用にユニット内へ受け入れたものとしてカードデータをパチンコ機2の遊技制御装置28へ供給する。即ち、制御部24は、この段階では発行用カードへの物理的なアクセスを行わずに、内部記憶によって、有効なプリペイドカードを受け入れた場合と同様にカードデータをパチンコ機2の遊技制御装置28へ供給するのである。」(段落【0017】)
(ヨ)「遊技者がカードユニット3に金銭を投入することで購入したカードを使い切ると、このカードは仮想カードのままで処理され、残高を「0」としたカードを発行しない。即ち、制御部24がカード発行に関する情報を内部記憶することで、発行用カードへの物理的なアクセスを行うことなく玉貸動作が可能になり」(段落【0035】)
(タ)「例えば、カード購入動作と玉貸動作との選択スイッチを設けておき、遊技者が玉貸動作を選択した場合には、投入金額に応じた玉貸動作を行えるように構成しても良い。更に、直接現金で遊技媒体の貸出も可能とすることができる。例えば、硬貨投入時には対価分の遊技媒体を直接貸し出すことも可能である。」(段落【0047】)

6.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「遊戯機2L、2R」は本件発明1の「遊戯機」に相当し、以下同様に「遊戯カード処理装置1」は「遊戯機制御装置」に、「電気接続するライン」は「コード線」に、「遊戯カード18」は「プリペイドカード」に、「貨幣受付口16」は「貨幣受付口」に、「紙幣判別器42」は「判別手段」に、「伝送部41」は「伝送手段」にそれぞれ相当する。
そして、本件発明1における「貨幣の金種を判別する判別手段と、前記判別手段が所定の金種を判別したとき」の構成については、「その紙幣について真偽を判別すると共に決められた金種(ここでは1000円札)であるかどうかを判別する紙幣判別器」(明細書段落【0014】参照。)及び「もし投入された紙幣が真札でありかつ1000円札であれば、ステップ10の判定は「YES」であり、・・・もし投入された紙幣がにせ札であるか、または1000円札以外の真札であれば、ステップ10の判定が「NO」であり、CPU35はエラー表示器18に所定の数値を表示してエラーである旨を知らせる(ステップ12)。」(明細書段落【0021】)の記載からみて、これは、真の1000円札であることを判別するものであると解することができ、これは刊行物2における上記記載事項(ハ)(ヘ)(ト)における1000円札の受付に関する技術的事項と実質的に差異はないことから、引用発明における「所定の金種の紙幣の真偽を判別する紙幣判別器42と、前記紙幣判別器42が所定の金種の紙幣が適正であるとしたとき」は、その作用・機能からみて本件発明1の「貨幣の金種を判別する判別手段と、前記判別手段が所定の金種を判別したとき」を意味するものである。
また、引用発明の「所定の金種の金額価値データを遊戯機の制御回路部8へ伝送部41により送信し」については、その作用・機能からみて本件発明1の「前記金種の貨幣が受け付けられたことを前記遊戯機へ知らせる伝送手段」に相当するものである。
次に、本件発明1の「プリペイドカードを提示した後、そのプリペイドカードを機内へ取り込むカード表示手段」の構成については、「前記カード表示部17は、前記紙幣判別器が1000円札であることを判別したとき、その金種に相応するプリペイドカードを提示した後、そのプリペイドカードを機内へ取り込むためのものである。この実施例では、外側が透明カバーで覆われた表示窓22と、この表示窓22の内側へプリペイドカードを半ば突出させて外部より視認可能な状態に置いた後、そのプリペイドカードを内部に取り込むためのカード作動機構23とで構成される。」(明細書段落【0015】)と記載されている。これに対し、引用発明の「カード搬送機構21を正駆動させ、遊戯カード18を取込状態からカード送出口12に向けて搬送し、」、「カード搬送機構が停止し、取込可能な状態の遊戯カード18は、先端より適当長さがカード送出口12より突出し、遊戯カード18が発行された状態が透明カバー17を介して遊戯者に確認できる状態となった」及び「カード搬送機構21を逆駆動させて遊戯カード18を機内に取り込む」ことは、カードの提示と取込を透明カバー17を介して遊戯者に確認できるものであることから(上記記載事項(ハ)(チ)参照。)、これは本件発明1の「プリペイドカードを提示した後、そのプリペイドカードを機内へ取り込むカード表示手段」を実質的に意味するものである。
してみると、両者は、
「遊戯機に隣接して設けられるとともに、前記遊戯機との間はコード線により電気接続されて成る遊戯機制御装置であって、貨幣の投入を受け付ける貨幣受付口と、前記貨幣受付口より受け付けられた貨幣の金種を判別する判別手段と、前記判別手段が所定の金種を判別したとき、特定のプリペイドカードを提示した後、そのプリペイドカードを機内へ取り込むカード表示手段と、前記金種の貨幣が受け付けられたことを前記遊戯機へ知らせる伝送手段とを備えて成る遊戯機制御装置。」
である点で一致しており、次の点で相違していると認められる。

[相違点1]
遊技機制御装置の遊戯機への隣接配置が、
本件発明1においては「遊技機毎」に隣接して設けるのに対し、引用発明においては「2台の遊戯機の中間に1つ」隣接して設ける点。

[相違点2]
プリペイドカードが、
本件発明1においては、その金種に相応しかつ金額価値データの読み書きが行われない特定のプリペイドカードであるのに対し、引用発明においては、取込状態からの搬送途中で書込ヘッド24が投入された貨幣の金額価値に応じたデータをプリペイドカード(遊戯カード18)に磁気的に書き込み、ついで読取ヘッド25がそのデータを読み取ってRAM37に記憶させる点。
[相違点3]
伝送手段が所定の金種の貨幣が受け付けられたことを前記遊戯機へ知らせるタイミングが、
本件発明1においては、カード表示手段がプリペイドカードを機内へ取り込んだ後であるのに対し、引用発明においては、伝送スイッチ13が押された後に行われ、その後プリペイドカード(遊戯カード18)を機内に取り込む点。

そこで、まず相違点1について検討する。
遊戯機毎に遊戯機制御装置を設けることは、刊行物1に記載されており(段落【0007】)、しかも、本件特許に係る出願の出願前周知技術(周知例として、実願昭61-23089号(実開昭62-133687号)のマイクロフィルム(「従来の技術」参照。)、実願平3-4732号(実開平4-95087号)のマイクロフィルム参照。)であり、引用発明において、遊戯機毎に遊戯機制御装置を設けるようにすることは当業者が容易になし得たことである。

次に、相違点2について検討する。
刊行物1に、
「一方、紙幣投入口15に紙幣が投入された場合には紙幣識別部23が識別した投入金額データが、硬貨投入口14に硬貨が投入された場合には硬貨識別部22が識別した投入金額データが、各々制御部24に供給され、これらの投入金額データを制御部24が計数して、計数金額が当該カードユニット3の発行するカード金額(例えば5000円)に達していれば、当該金額のカードを発行し、且つ発行したカードを玉貸用にユニット内へ受け入れたものとしてカードデータをパチンコ機2の遊技制御装置28へ供給する。即ち、制御部24は、この段階では発行用カードへの物理的なアクセスを行わずに、内部記憶によって、有効なプリペイドカードを受け入れた場合と同様にカードデータをパチンコ機2の遊技制御装置28へ供給するのである。」(段落【0017】)、
「遊技者がカードユニット3に金銭を投入することで購入したカードを使い切ると、このカードは仮想カードのままで処理され、残高を「0」としたカードを発行しない。即ち、制御部24がカード発行に関する情報を内部記憶することで、発行用カードへの物理的なアクセスを行うことなく玉貸動作が可能になり」(段落【0035】)、
「例えば、カード購入動作と玉貸動作との選択スイッチを設けておき、遊技者が玉貸動作を選択した場合には、投入金額に応じた玉貸動作を行えるように構成しても良い。更に、直接現金で遊技媒体の貸出も可能とすることができる。例えば、硬貨投入時には対価分の遊技媒体を直接貸し出すことも可能である。」(段落【0047】)
と記載されているように、刊行物1には、貨幣を受け付けたら、カードに対するデータの読み書きを行うことが不要なときは、カードデータの読み書きを行うことなしに、遊戯機に対し受け付けた金額価値データを伝送し、遊戯機の処理を行うことが開示されている。

そして、引用発明(刊行物2の図1〜5に対応して記載されたもの)は、1000円札などの所定の金種を受け付けるものであり、しかも、カードは外部から挿入されたり外部に排出されることもなく、透明カバーの内側に存在する特定のプリペイドカード(遊戯カード18)を用いるものであるから、わざわざカードに対して貨幣の金額価値に応じたデータを読み書きを行うことが必要というものではないことは明らかである。
してみれば、貨幣を受け付けたら、カードに対する金額価値のデータの読み書きを行うことが不要なときは、カードデータの読み書きを行うことなしに、遊戯機に対して受け付けた金額価値データを伝送して遊戯機の処理を行う刊行物1に開示された事項を、カード搬送中に貨幣の金額価値に応じたデータを読み書きを行うことが必要ではない引用発明(刊行物2の図1〜5に対応して記載されたもの)に適用して、本件発明1のように読み書きが行われない特定のプリペイドカードとし、データをカードを介さずに遊戯機に伝送して書き込みヘッドや読み込みヘッドを省略した構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

次に、相違点3について検討する。
特許権者は、「刊行物2に記載のものは、2個の伝送スイッチ13,14のいずれかが操作されたとき、遊戯カードを取り込むより前に金額価値データを一方のスロットルマシンへ送信するから、遊戯者に対して購入したプリペイドカードを投入したという意識を持たせることはできない(意見書第8頁26〜29行)旨を主張している。
しかし、本件発明1において、プリペイドカードを取り込んだ後に金額価値データが送信されているにしても、金額価値データの送信が行われたことが遊戯者に認識されるわけではなく、遊戯者が購入したカードを投入したという意識をもつのはカードが取り込まれることを視認するからであり、金額価値データの送信タイミングとは無関係である。
そして、刊行物2に記載されたものも上記記載事項(チ)ないし(ヌ)からみて、遊戯者にプリペイドカードを購入して投入したという意識をもたせるためのものであることが明らかであるし、伝送スイッチは、この購入した意識をより確実に遊技機制御装置に伝えるためのものといえるから、両者は共に、遊戯者にプリペイドカードを視認できる状態としてプリペイドカードを購入して投入したという意識をもたせ、その後プリペイドカードの機内への取り込みにより投入したという意識をもたせる点で共通するものである。
さらに、プリペイドカードを利用する装置において、投入したカードが機内に取り込まれた後に金額情報を遊戯機へ伝送することは本件特許に係る出願の出願前周知技術であり、格別なことではない。
してみれば、プリペイドカードを取り込む点と、所定の金種の受付を遊戯機へ知らせる点のそれぞれのタイミングの設定を、引用発明のように「プリペイドカードを機内に取り込む」タイミングより前とするか本件発明1のように「カード表示手段がプリペイドカードを機内へ取り込んだ後」とするかは、設計的事項に過ぎず、しかもそれによる作用効果上の差異は認められないので、引用発明において、カード表示手段がプリペイドカードを機内へ取り込んだ後に所定の金種の貨幣が受け付けられたことを遊戯機に知らせるようにすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明1により奏される効果は、刊行物2、刊行物1に記載された発明及び上記周知技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものであるというべきである。

したがって、本件発明1は、刊行物2、刊行物1に記載された発明及び上記周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2は本件発明1に「前記プリペイドカードの機内への取込動作を指示するための操作スイッチとを備えて成り、前記カード表示手段は、前記操作スイッチの操作に応答して、プリペイドカードを機内へ取り込むようにした」という操作スイッチに係る事項を付加したものに相当するものであるが、引用発明の「伝送スイッチ13、14」は本件発明2の「操作スイッチ」に相当するものである。
なお、特許権者は、「刊行物2に記載のものでは、2台のスロットマシンに1台の遊戯カード処理装置が割り当てられるので、金額価値データの送信先を左右どちらのスロットマシンに指定する必要がある。そのような意味合いから刊行物2に記載の遊戯カード処理装置では伝送スイッチが必要不可欠となっているのであり、従って、この伝送スイッチは本件発明における操作スイッチに対応するものではない」(意見書第12頁12〜17行)と主張している。
しかし、刊行物2に記載の伝送スイッチは左右いずれかのスロットマシンを指定するだけでなく、カードの機内への取込を指示するものでもあり、刊行物2においても、伝送スイッチの操作に応答してカードの機内への取込が行われる点で本件発明2の操作スイッチと同じ機能を有するものであるから、特許権者の前記主張は採用できない。

そうすると、本件発明2は、引用発明とを対比すると、両者は、
「遊戯機に隣接して設けられるとともに、前記遊戯機との間はコード線により電気接続されて成る遊戯機制御装置であって、貨幣の投入を受け付ける貨幣受付口と、前記貨幣受付口より受け付けられた貨幣の金種を判別する判別手段と、前記判別手段が所定の金種を判別したとき、特定のプリペイドカードを提示した後、そのプリペイドカードを機内へ取り込むカード表示手段と、前記金種の貨幣が受け付けられたことを前記遊戯機へ知らせる伝送手段と、前記プリペイドカードの機内への取込動作を指示するための操作スイッチとを備えて成り、前記カード表示手段は、前記操作スイッチの操作に応答して、プリペイドカードを機内へ取り込むようにした遊戯機制御装置。」
である点で一致しており、本件発明1における前記相違点1ないし3において相違しているものと認められるが、これら相違点については「(1)本件発明1について」において述べたとおりである。

そして、本件発明2により奏される効果は、刊行物2、刊行物1に記載された発明及び上記周知技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものであるというべきである。
したがって、本件発明2は、刊行物2、刊行物1に記載された発明及び上記周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1、2に係る発明については、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-03-15 
出願番号 特願平7-26256
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G07F)
最終処分 取消  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 今井 義男
長浜 義憲
登録日 2003-05-09 
登録番号 特許第3426381号(P3426381)
権利者 アビリット株式会社
発明の名称 遊戯機制御装置  
代理人 鈴木 由充  

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