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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1117969
異議申立番号 異議2003-73714  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-02-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-30 
確定日 2005-06-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3441441号「電子スチルカメラ」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3441441号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3441441号(平成5年8月9日に特許出願した特願平5-197249号の一部を平成13年6月15日に新たな特許出願とし、平成15年6月20日にその発明について特許権の設定登録がなされた。)の請求項1ないし5に係る発明(以下「本件特許発明1ないし5」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 被写体を撮像して画像データを出力する撮影手段と、画像データを符号化する画像データ符号化手段と、符号化された画像データを記録媒体に記録する手段を備えた電子スチルカメラにおいて、画像データのファイルヘッダ情報を予めメモリに格納しておく手段とダイレクトメモリ転送手段とを有する記録媒体インタフェースを備え、画像データが前記記録媒体インタフェースに入力されたとき当該データに前記ファイルヘッダ情報を付与して記録媒体に記録することを特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項2】 被写体を撮像して画像データを出力する撮影手段と、画像データを符号化する画像データ符号化手段と、符号化された画像データを記録媒体に記録する手段と、音声を電気信号に変換する手段と、電気信号に変換された音声データを符号化する手段と、符号化された音声データを記録媒体に記録する手段を備えた電子スチルカメラにおいて、画像データまたは音声データのファイルヘッダ情報を予めメモリに格納しておく手段とダイレクトメモリ転送手段とを有する記録媒体インタフェースを備え、画像データまたは音声データが前記記録媒体インタフェースに入力されたとき当該データに前記ファイルヘッダ情報を付与して記録媒体に記録することを特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項3】 前記ファイルヘッダ情報が符号化時に用いるハフマンテーブルを含むことを特徴とする請求項1または2記載の電子スチルカメラ。
【請求項4】 前記記録媒体に対して画像ファイルと音声ファイルまたは文字情報ファイルの関連情報を記録した管理情報ファイルを作成する手段を備え、しかも前記管理情報ファイル内のファイル管理にはディレクトリエントリ番号を使用することを特徴とする請求項2記載の電子スチルカメラ。
【請求項5】 被写体を撮像して画像データを出力する撮影手段と、画像データを符号化する画像データ符号化手段と、符号化された画像データを記録媒体に記録する手段と、音声を電気信号に変換する手段と、電気信号に変換された音声データを符号化する手段と、符号化された音声データを記録媒体に記録する手段を備え、ファイル管理作業用ワークエリアとして記録媒体中の未使用領域を使用する電子スチルカメラにおいて、記録モードが設定されたとき、またはレリーズスイッチが押されたときに、前記ファイル管理作業用ワークエリアにおいて記録する連続画像・音声データ容量分の記録媒体空き連続クラスタが確保できない場合、連続した必要クラスタ分の確保ができるように記録媒体内部データを再配置させ、かつ記録媒体内部データの再配置ができない場合、その旨を警告させる手段を備えたことを特徴とする電子スチルカメラ。」

2.特許異議の申立ての概要
申立人小塚浩は、概略「本件特許発明1ないし5は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。よって、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。」旨主張している。
[証拠方法]
甲第1号証:特開平1-252075号公報
甲第2号証:特開平1-191596号公報
甲第3号証:特開昭59-151313号公報
甲第4号証:特開平3-175851号公報
甲第5号証:特開平4-290084号公報
甲第6号証:特開平4-72976号公報
甲第7号証:特開平4-245071号公報

3.甲第1ないし7号証記載の発明
上記甲第1ないし7号証には、それぞれ次のことが記載されている。
甲第1号証
電子スチルカメラに関し、撮像素子3でレンズから入力された対象物像を画像信号として撮像し、この画像信号をカメラ信号処理回路5でビデオ信号に変換し、AD変換器7でデジタル信号に変換し、デジタル信号処理回路9でデジタル処理して、メモリインターフェース13を介してメモリ15に記録すること、また、通常の撮像を行う場合、モード切換スイッチ31をA側に倒し、レリーズボタンが押されるとCPU12は、デジタル信号処理回路9に横モード状態を示す信号を送る、一方、撮像素子3で撮像された信号はAD変換器7でデジタル信号に変換され、デジタル信号処理回路9で横モード状態を示す各画像の固有ヘッダ情報が付されメモリインターフェイス13を介してメモリ15に記録されること。
甲第2号証
電子スチルカメラに関し、マスターレンズ12により捕らえられた被写体の光学像は撮像デバイス14により映像信号に変換され、AD変換回路18においてデジタル信号に変換され、ブロック化回路22、直交変換回路24、符号化回路26において、ブロック化、直交変換、符号化され、この符号化された画像データがコネクタ30を介してメモリ32に記憶されること。
甲第3号証
回転ヘッドを用いてテープ上に斜めのビデオトラックを形成してテレビジョン画像信号を記録してなるビデオテープレコーダを計算機システムの外部記憶装置として用いて計算機データを記録するに有用な情報記録方式に関し、1単位をなす計算機データが記録されるビデオトラック上の複数個所に該ビデオトラックに記録される計算機データに関する同一のヘッダ情報をヘッダメモリ5から読み出して記録すること。
甲第4号証
通信制御装置の処理の高速化に好適なメモリ素子に関し、データを送信する場合、上位コンピュータ2は、送信用データ用デュアルポートメモリ4にアクセスして送信データを格納し、その後、上位コンピュータ2はプロトコル処理プロセッサ3に送信要求を発行すること、プロトコル処理プロセッサ3は、送信要求を受け、送信データ用デュアルポートメモリ4にアクセスし、送信データにプロトコルに従ったヘッダ情報等を付加し、DMA制御回路6aに送信起動をかけること、DMA制御回路6aは、シリアルポートアクセスのDMA動作を行い、送信用データ用デュアルポートメモリ4のシリアルポートより送信データを出力させ、送信制御回路9でDMA制御回路6aの制御信号に基づきシリアルデータに変換し、送信回路にデータ送信を行うこと。
甲第5号証
メモリカードを記録媒体とし、撮影した静止画像を記録する電子スチルカメラに関し、音声入力用のマイク、音声信号をディジタル信号化するAD変換器、音声圧縮回路を備え、音声信号も圧縮して記録すること、メモリカードのメモリ回路38の記録領域は、カード管理領域とデータ領域とに区分され、データ領域はクラスタという単位で分割され、記録する画像、音声およびデータなどの情報はパケットという単位で扱われること、カード管理領域はヘッダ、パケット識別、ディレクトリおよびメモリアロケーションテーブルからなり、ディレクトリは各パケットのスタートクラスタの番号からなり、メモリアロケーションテーブルには、各クラスタのそのクラスタに接続するクラスタの番号が記録されること、メインスイッチがオンであって、メモリカードがセットされると記録可能な領域があるか否かを判断し、記録可能な領域がない場合、警告すること。
甲第6号証
DCT圧縮動画データの記録再生装置に関し、可変長量子化変換係数に所定のインデックスやヘッダなどを付加しつつ所定のフォーマットのDCT圧縮動画データとして光ディスク記録部に記録すること、前記ヘッダには圧縮に際し適用された圧縮方法に関する各種の情報(タイプ情報、量子化ステップ幅を含む量子化特性など)を可変長符号化したものが制御コードとして含まれていること。
甲第7号証
書換え可能な情報記憶媒体に情報を記憶する情報記憶装置に関し、情報記憶媒体を所定の記憶単位ごとの領域に分割し、この分割した各領域に情報をグループ分けして記憶し、上記情報記憶媒体に記憶される情報の整理(ガーベージ)の指示に応じて、情報を整理するための第1の処理領域を用意し、この第1の処理領域に同一グループの領域内の情報を順次読出して、第1の処理領域に連続した状態に並び変えて書き込み、その第1の処理領域が満杯となった場合に、少なくとも1つの領域を確保して次の第2の処理領域を用意し、この第2の処理領域に同一グループの領域内の情報を順次読出して、各処理領域に連続した状態に並び変えて書き込むようにすること。

4.異議申立てに対する当審の判断
(1)本件特許発明1、2について
本件特許発明1、2と甲第1ないし7号証に記載の発明を対比すると、本件特許発明1、2では、いずれにおいても、「画像データ(または音声データ)のファイルヘッダ情報を予めメモリに格納しておく手段とダイレクトメモリ転送手段とを有する記録媒体インタフェース」を備え、「画像データ(または音声データ)が前記記録媒体インタフェースに入力されたとき当該データに前記ファイルヘッダ情報を付与して記録媒体に記録する」点を要件としている。
然るに、甲第1号証記載のものは、電子スチルカメラにおいて、撮像素子3で撮像された信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理回路9で横モード状態を示す各画像の固有ヘッダ情報を付与してメモリ15に記録すること、また、甲第2号証記載のものは、電子スチルカメラにおいて、撮像した映像信号を符号化してメモリに記憶することをいうにすぎず、およそ本件特許発明1、2の前記要件を示唆するものとはいえない。
また、甲第3号証記載のものは、ヘッダ情報をヘッダメモリ5から読み出してデータに付加して記録する点、甲第4号証記載のものは、プロトコル処理プロセッサが送信データにプロトコルに従ったヘッダ情報等を付加し、送信データを送信制御回路9でDMA制御回路6aの制御信号に基づきシリアルデータに変換し、送信回路にデータ送信する点で本件特許発明1、2の前記要件と類似しているといえなくはないものの、甲第3号証記載のものは、計算機データを記録する情報記録方式に関し、1単位をなす計算機データが記録されるビデオトラック上の複数個所に同一のヘッダ情報を記録することを前提とするものであり、また、甲第4号証記載のものは、高速伝送に適した通信制御装置および該制御装置に適したメモリ装置を提供することを目的とし、送信データにプロトコルに従ったヘッダ情報等を付加したり、通信制御装置にDMA制御回路を設けたものであり、本件特許発明1、2のように電子スチルカメラの記録媒体インタフェースにファイルヘッダ情報を予めメモリに格納しておく手段とダイレクトメモリ転送手段とを設け、画像データ(または音声データ)が前記インタフェースに入力されたとき当該データにファイルヘッダ情報を付与して記録媒体に記録することによりリアルタイムに動画像を記録媒体に記録できるようにすることやその必要性についての開示や示唆はない。そうすると、本件特許発明1、2の前記要件が甲第1ないし4号証記載のものから容易に想到されるとはいえないし、また、他の上記各甲号証に記載された事項についてみても、前記要件を容易に想到し得たものとする根拠は見出せない。
したがって、本件特許発明1、2は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。

(2)本件特許発明3、4について
本件特許発明3、4は本件特許発明1または2を引用する形式で記載された発明であって、本件特許発明1、2をさらに限定したものであるから、上記本件特許発明1、2と同様の理由により、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。

(3)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲第1ないし7号証に記載の発明を対比すると、本件特許発明5では、「ファイル管理作業用ワークエリアとして記録媒体中の未使用領域を使用する電子スチルカメラ」において、「記録モードが設定されたとき、またはレリーズスイッチが押されたときに、前記ファイル管理作業用ワークエリアにおいて記録する連続画像・音声データ容量分の記録媒体空き連続クラスタが確保できない場合、連続した必要クラスタ分の確保ができるように記録媒体内部データを再配置させ、かつ記録媒体内部データの再配置ができない場合、その旨を警告させる手段を備えた」点を要件としている。
これに対して、甲第7号証記載のものは、書換え可能な情報記憶媒体に情報を記憶する情報記憶装置に関し、情報記憶媒体の分割した領域に情報をグループ分けして記憶し、情報の整理(ガーベージ)の指示に応じて、同一グループの領域内の情報を順次読出して、所定の処理領域に連続した状態に並び変えて書き込むことにより、データ削除により発生するデータ書き込みができない空き領域をなくし、情報記憶媒体の容量を最大限に活用できるようにすることをいうにすぎず、およそ本件特許発明5の前記要件を示唆するものとはいえない。
さらに、甲第1号証および甲第2号証記載のものは、電子スチルカメラにおいて、撮像素子で撮像された信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理回路で横モード状態を示す各画像の固有ヘッダ情報を付与してメモリに記録すること、撮像した映像信号を符号化してメモリに記憶することをいうにすぎず、また、甲第5号証には、メモリカードを記録媒体とし、撮影した静止画像を記録する電子スチルカメラに関し、メインスイッチがオンであって、メモリカードがセットされると記録可能な領域があるか否かを判断し、記録可能な領域がない場合、警告することが記載されているものの、当該警告はメモリカードに記録可能な領域がない場合に発するものであり、およそ本件特許発明5の前記要件を示唆するものとはいえない。
そうすると、本件特許発明5の上記要件が甲第1、2、5、7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえず、また、他の上記各甲号証に記載された事項についてみても、本件特許発明5の上記要件が容易に想到し得たものとする根拠は見出せない。
したがって、本件特許発明5は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件特許発明1ないし5についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1ないし5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-05-31 
出願番号 特願2001-181996(P2001-181996)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 西谷 憲人
安田 太
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3441441号(P3441441)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 電子スチルカメラ  
代理人 村山 光威  

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