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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H04N |
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管理番号 | 1117971 |
異議申立番号 | 異議2003-70678 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-03-14 |
確定日 | 2005-05-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3325260号「画像入力装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3325260号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 特許第3325260号の請求項1に係る発明についての特許は、平成5年4月26日に出願された特願平5-99335号(以下「原出願」という。)の分割出願として平成12年6月6日にされた特願2000-169120号(以下「本件出願」という。)に係り、平成14年7月5日にその発明について特許の設定登録がなされた後、その特許について特許異議申立人渡辺 等より特許異議の申立てがなされたものである。 その後、当審において平成16年3月4日付けで取消理由を通知したところ、特許権者より平成16年5月13日に特許異議意見書が提出された。 そして、請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。(以下「本件発明」という。) 「入力したデジタル画像データに所定の画像処理を施して、前記デジタル画像データを所定の情報とともに通信手段を介してラボに送信し、プリントの注文をすることが可能な画像入力装置であって、 対象画像を読み取ってデジタル画像データに変換する手段と、 前記デジタル画像データに対応する画像を表示する表示手段と、 前記デジタル画像データに対し所定の画像処理を施す処理手段と、 プリントサイズ、プリント枚数の少なくとも一方を表す第1の情報を入力する手段と、 前記ラボとの間で、予め登録されたプリント注文者を表す第2の情報を入力する手段と、 上記第1の情報及び上記第2の情報を前記画像処理後のデジタル画像データとともに送信するためのデータを発生する手段と、を備えたことを特徴とする画像入力装置。」 2.分割要件についての判断 本件出願が特許法44条1項の要件を満たし、したがって同条2項の規定により本件出願が原出願がされた時にされたものとみなすべきか以下検討する。 同条1項は「二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」と規定しており、新たな特許出願の対象となる発明は原出願の明細書又は図面に記載されている発明であると解される。そして、分割出願は原出願の出願の時に出願されたものとみなされるという出願の分割の効果を考慮すると、出願の分割の対象となる発明は、原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていなければならない。 そこで、本件発明が、原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「原出願の当初明細書」という。)に記載されているかどうか検討すると、原出願の当初明細書には以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 フィルムの像を読み取りデジタル画像データに変換するスキャナ手段と、 上記スキャナ手段からのデジタル画像データについて画像処理を行う画像処理手段と、 上記画像処理手段により画像処理された画像データを伝送する伝送手段と、 上記伝送手段により伝送された画像データに基づいてプリントするプリント手段と、 を具備し、上記伝送データは画像データと送信者を識別するデータと少なくとも上記プリントの大きさを示すデータと上記プリントの枚数を示すデータのいずれか一方を含むことを特徴とする画像処理システム。」(特許請求の範囲) イ 「【産業上の利用分野】本発明は、フィルムの像をスキャナで読み取りトリミングや合成などの処理を施した後にプリントする画像処理システムに関する。」(段落0001) ウ 「【従来の技術】従来より、ラボにおいて撮影済のネガフィルムの像をスキャナで読み取ってデジタル画像データに変換し、更にトリミングや合成といった所望とする画像処理を施した後にプリントする種々の技術が提案されている。」(段落0002) エ 「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特開平3-153228号公報により開示された「トリミング写真プリンタ」に関する技術では、撮影時にトリミング情報を書き込むのは非常に面倒であり、また装置も大がかりになりカメラの小型軽量化を実現することができない。 【0006】一方、特開平3-153229号公報により開示された「写真焼付方法」に関する技術では、記録装置が大掛かりになると共に、光質を決めるパラメータが複雑となり、必ずしも高い推定精度は得られない。また、仮に正確に推定したとしても撮影者により微妙に異なる個人の好みには対応することができない。 【0007】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、トリミングや合成、濃度調整などを撮影者の意図通りとした高画質プリントを安価に得ることができる画像処理システムを提供することにある。」(段落0005〜7) オ 「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の画像処理システムは、フィルムの像を読み取りデジタル画像データに変換するスキャナ手段と、上記スキャナ手段からのデジタル画像データについて画像処理を行う画像処理手段と、上記画像処理手段により画像処理された画像データを伝送する伝送手段と、上記伝送手段により伝送された画像データに基づいてプリントするプリント手段とを具備し、上記伝送データは画像データと送信者を識別するデータと少なくとも上記プリントの大きさを示すデータと上記プリントの枚数を示すデータのいずれか一方を含むことを特徴とする。」(段落0008) カ 「【作用】即ち、本発明の画像処理システムでは、スキャナ手段がフィルムの像を読み取りデジタル画像データに変換すると、画像処理手段が上記スキャナ手段からのデジタル画像データについて画像処理を行い、伝送手段が上記画像処理手段により画像処理された画像データを伝送し、プリント手段が上記伝送手段により伝送された画像データに基づいてプリントする。そして、上記伝送データは画像データと送信者を識別するデータと少なくとも上記プリントの大きさを示すデータと上記プリントの枚数を示すデータのいずれか一方を含んでいる。」(段落0009) キ 「【実施例】 以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は本発明の一実施例に係る画像処理システムの構成を示す図である。この図1に示すように、本実施例の画像処理システムは、ラボ側システムと撮影者側システムとからなり、両システムは端末中継装置16,17、伝送路18を介して接続されている。」(段落0010) ク 「【0012】これに対して、撮影者側システムはラボ側システムから撮影者に例えば郵便で届けられたネガフィルム8の像を読取り、デジタル画像データに変換するためのスキャナ9と、このデジタル画像データを記憶する画像メモリ10と、上記画像データに基づいて合成トリミングなどの画像処理を行う画像処理装置11と、この画像処理装置11の操作部材12と、画像を表示するモニタ装置14と、画像処理された画像データを記憶する画像メモリ13とで構成されている。」(段落0012) ケ 「【0014】そして、撮影者側システムでは、このネガフィルム8を受取ると、当該ネガフィルム8の像をスキャナ9で読み取り、デジタル画像データに変換し、当該デジタル画像データを画像処理装置11を介して画像メモリ10に記憶する。そして、この画像メモリ10に記憶した画像データに係る画像をモニタ装置14により観察しながら、操作部材12を操作して画像処理装置11により他の画像データとの合成やトリミング、濃度調整といった所望とする画像処理を施す。そして、この画像処理された画像データを端末中継装置16、伝送路18、端末中継装置17を介してラボ側システムに伝送し、その画像メモリ5に記憶する。 【0015】さらに、ラボ側システムでは、この画像メモリ5の画像データをコントローラ7の制御に基づいてプリンタ6に送り、当該プリンタ6により上記撮影者により指示された大きさと枚数のプリント19が生成する。そして、こうして生成されたプリント19は撮影者の元に郵送あるいは手渡しで届けられる。 【0016】ここで、上記送信データの構成は図2に示す通りである。即ち、データの先頭には画像処理された画像データのプリント処理の送信先コード20が置かれている。これはラボと依頼人との間で予め登録しておく。そして、次のデータ21は印画紙のサイズを表すデータであり、データ22はプリントの枚数を表すデータである。さらに、データ23は画像処理された画像データである。これらのデータ20乃至23が1組となって、撮影者側システムからラボ側システムに送られる。尚、前述した図1では、この図2に示す1組のデータを「画像データ」と称している。」(段落0014〜16) コ 「【0021】以上詳述したように、本発明の画像処理システムでは、比較的安価なスキャナと多目的のパーソナルコンピュータを組み合わせて画像処理システムを構成することにより、撮影者が各家庭あるいはそれぞれの仕事場でトリミング合成などの画像の編集処理だけでなく、カラーバランスの調整などの画質改善処理までもできるので、撮影者の好みに応じた写真を作成することができる。さらに、プリント処理は伝送ラインを介して画像データを送信することによりラボのプリントシステムを共用する事ができるので高画質のプリントを安価に得ることができる。 【0022】【発明の効果】本発明によれば、トリミングや合成、濃度調整などを撮撮影者の意図通りした高画質のプリントを安価に得ることができる画像処理システムを提供することができる。」(段落0021〜22) これらの記載によれば、原出願の当初明細書には、撮影済みネガフィルム(これは現像まで済んでフィルムにネガ像が可視状態に形成されていることを意味していることは明らかである。)をスキャナで読み取ってデジタル画像データとし、これに撮影者が好みの画像処理を施してそのデータをラボ側に送信し、ラボ側ではそのデータでプリントしプリントしたものを撮影者側へ返送するという技術思想が記載されている。 そこで、原出願当時の状況をみると、撮影済みネガフィルムを印画紙などに焼き付ける(プリントする)手段は、撮影者が占有維持するには非常に高価であったから撮影者は自ら有していないのが普通であり、プリントする手段を有しない撮影者がプリントしたものが欲しいときには撮影済みフィルムをラボあるいはその取次店に渡してプリント自体はラボに行ってもらっていた。そこでこのような状況を前提に、原出願の当初明細書の段落0007の記載(上記エ参照。)を参酌すると、原出願の当初明細書で開示している技術は、撮影者がラボにトリミングや合成、濃度変換を指示してプリントするようにしても、撮影者の意図したとおりのものとなるとは限らず、またこれらは1個毎に異なる指示ということで費用が高価となることに鑑み、撮影者側で現像済みネガフィルムをスキャナで読み取ってデジタル画像データとしこれに撮影者が好みの画像処理を施すようにすることにより上記問題点を回避するようにしたものと解することができる。 そうすると、原出願の当初明細書に記載されている入力の段階で作成される「デジタル画像データ」は、撮影済みネガフィルムをスキャナで読み取ったもののみを、発明者は意識していたと認められるとともに、当業者も、原出願時点で原出願の当初明細書に接したならば、入力の段階で作成される「デジタル画像データ」は、撮影済みネガフィルムをスキャナで読み取ったもののみと理解すると認めざるを得ない。 してみれば、入力の段階で作成される「デジタル画像データ」について撮影済みネガフィルムをスキャナで読み取ったものに限定していない本件発明は、原出願の当初明細書で開示していない技術的事項を含んでいることになる。 この点に関し、特許権者は特許異議意見書において、「『デジタル画像データ』には、フィルムの画像情報から変換されたデータに限らず、デジタルカメラ或いはデジタル方式の電子スチルカメラで撮影したデータがあることは挙証するまでもなく周知のことであり、原出願の明細書に『デジタル画像データ』との記載があれば、この『デジタル画像データ』には、フィルムの画像情報から変換されたデータに限らず、かかる周知のデジタルカメラなどで撮影したデジタル画像データが含まれることは、当業者であれば自明なことです。」と主張している。 確かにデジタルカメラ或いはデジタル方式の電子スチルカメラ自体は周知であったといえようが、逆に周知であったのであるから、発明者が入力の段階で作成される「デジタル画像データ」を周知のデジタルカメラなどで撮影したデジタル画像データを含むものと認識していたのであれば、将来権利化を考える場合にも問題が生じないようにそのことを明細書に明記しておくのが普通と考えられるが、原出願の当初明細書・図面には、それを示唆する記載も見あたらないから、発明者は、そのようなことは全く考えていなかったと推認せざるを得ない。 また、原出願の当初明細書の「デジタル画像データ」という文言を当業者が理解する際には、一貫した技術的思想の文脈においてするものであり、その文言だけを抽出して理解するのではない。してみると、原出願の当初明細書には、上述したように、撮影済みネガフィルムをスキャナで読み取ってデジタル画像データとし、これに撮影者が好みの画像処理を施してそのデータをラボ側に送信し、ラボ側ではそのデータでプリントしプリントしたものを撮影者側へ返送するという技術思想が記載されているのであり、この文脈において上記原出願当時の状況を参酌して当業者が「デジタル画像データ」を解釈する際に、前記文脈に無関係のデジタルカメラ或いはデジタル方式の電子スチルカメラで撮影したデジタル画像データを想定することが自明であるとは認められない。 よって、出願人の上記主張は採用することができない。 以上のとおり、本件発明は原出願の当初明細書に記載された発明以外のものを含むものであるから、本件出願は特許法44条1項の要件をみたさず、その出願日は現実の出願日である平成12年6月6日と認める。 3.引用刊行物 取消理由で引用した特開平6-311340号公報(頒布日は平成6年11月4日)は、原出願の公開公報であって、上記2.ア〜コの事項が記載されている。 してみると、上記引用刊行物には、 「フィルムの像を読み取り入力したデジタル画像データに所定の画像処理を施して、前記デジタル画像データを所定の情報とともに端末中継装置及び伝送路を介してラボに送信し、プリントの指示をすることが可能な撮影者側システムであって、 フィルムの像を読み取ってデジタル画像データに変換するスキャナと、 前記デジタル画像データに対応する画像を表示するモニタ装置と、 前記デジタル画像データに対し所定の画像処理を施す画像処理装置と、 プリントの大きさ、プリント枚数の少なくとも一方を表すデータと、 前記ラボとの間で、予め登録された依頼人を表す送信先コードと、 上記データと送信先コードを前記画像処理後のデジタル画像データとともに送信することを特徴とする撮影者側システム。」 が記載されている。 4.対比・判断 本件発明をフィルムの像を読み取ったデジタル画像データに適用した本件発明の実施例と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「端末中継装置及び伝送路」、「指示」、「撮影者側システム」、「デジタル画像データに変換するスキャナ」、「モニタ装置」、「画像処理装置」、「データ」、「依頼人」及び「送信先コード」は、それぞれ前者の「通信手段」、「注文」、「画像入力装置」、「デジタル画像データに変換する手段」、「表示手段」、「処理手段」、「第1の情報」、「プリント注文者」及び「第2の情報」に相当し、後者が各情報を入力する手段や送信するためのデータを発生する手段を有することは自明であるから、両者は一致する。 本件発明の実施例と引用刊行物記載の発明が一致するから、本件発明は上記引用刊行物に記載された発明と認められる。 4.結論 したがって、本件発明は特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、本件発明についての特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-07-20 |
出願番号 | 特願2000-169120(P2000-169120) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Z
(H04N)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 橋爪 正樹 |
特許庁審判長 |
小川 謙 |
特許庁審判官 |
江頭 信彦 深沢 正志 |
登録日 | 2002-07-05 |
登録番号 | 特許第3325260号(P3325260) |
権利者 | オリンパス株式会社 |
発明の名称 | 画像入力装置 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 福原 淑弘 |